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「ねぇかなりあ、好きってなぁに?」」(2006/02/28 (火) 21:42:02) の最新版変更点

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<p>「ねぇかなりあ、好きってなぁに?」</p> <p>金糸雀のバイオリンを弾く手が止まる。</p> <p> 「ど、どうしたのかしら雛苺~? いつもは皆好きって言ってるのに……」<br>  雛苺は唸り、ベランダの手すりに肘をつく。<br> 「あのね、ひな告白されたのよ」<br>  バイオリンをしまうと、同じくベランダに肘をついてみる金糸雀。<br> 「悔しいけど、雛苺は密かに人気あるから……ついにってところかしらー」<br>  教室内では他の生徒達が雑談をしていた。<br> 「それでひなね、まだ少ししか話してないけど、その人のことも、かなりあ達のことも好きって言ったのよ」<br> 「……雛苺、それは違うかしらぁ……」<br> 「うゆ……金糸雀もそんなこと言うのー?」<br> 「……カナも?」<br> 「その人も、それは違うって言ってたのー……。そういう好きじゃないって……」<br> 「っていうかその人って誰なのかしら?」<br> 「同じクラスの笹塚君なのー」<br> 「何かと廊下に立たされてるあいつかしら……」<br>  ちらり、教室の中を見る金糸雀。<br>  今は昼休みということもあって、平和そうだ。<br> 「それでどこが違うの? かなりあー」<br> 「そ、そう言われると…………」<br>  ふと時計に目を向ければ、昼休みはもうすぐ終わる時間だった。<br> 「とりあえず中に入るかしら。そのことはあとで皆に聞けばいいかしら~」<br> 「うぃ~……」</p> <p>「翠星石、翠星石ぃ」<br>  雛苺は、こっそり制服の裾を引っ張りながら、斜め前の席に座る翠星石に声をかける。<br>  勿論、授業中なので声は小さめだ。<br> 「もう、何ですかちび苺。授業中ですよ?」<br>  翠星石は教科書で口元を隠し、黒板を見たまま返事をする。<br> 「翠星石は好きな人いるの?」<br>  びくっと一瞬翠星石の身体が震え、教科書で顔全体を隠す。<br>  けれどその隙間からはちらり、誰かをみつめている。<br> 「そ、そんなこと聞いてどうするですぅ!」<br> 「好きってなぁに?」<br> 「な……ちび苺にしては珍しいことですぅ……。<br>  でもそれは翠星石にもよくわからんのです……。蒼星石にきいてやるから、待ってるですよ」<br> 「うゆ、お願いなのー」<br>  そう言うと、隣にいる蒼星石に話す翠星石。<br> 「というわけなのですぅ。蒼星石、説明してや……」るですぅ、と言いかけて蒼星石の異常の気付く。<br> 「え、ぼ、僕には無理だよ、そんなの……っ!」<br>  教科書を立てたまま両手で顔を隠しているが、耳が真っ赤になっている。<br> 「……わ、わかったですぅ、しゃあないですねぇ」<br>  そして雛苺のほうを見て<br> 「ちび苺、あとで真紅にきけですぅ」<br> 「うぃ~……」</p> <p>  空が紅く色づく時間、雛苺はとことこ、帰り支度をしている真紅の元へ行く。<br>  ベランダでの金糸雀によるバイオリン演奏が、教室内に響いていた。 </p> <p>「ねぇ真紅、水銀燈と薔薇水晶はいないのー?」<br> 「あら、あの二人なら駅前のケーキを食べに行ったわよ」<br> 「うゆ……真紅にだけでも聞くの。真紅には好きな人いるの?」<br> 「えっ!?」<br>  <br>  声が裏返り、目を泳がせる真紅。顔は夕陽のせいか紅く染まっていて、身体も固まっている。<br> 「その好きな人は一人なの?」<br>  真紅は、はっと一度両手を頬に置くと、こほん、と咳払いをし、平静を装いながら<br> 「え、えぇ、そうよ」<br>  とこたえた。<br> 「ヒナのことは嫌いなの?」<br> 「そ、そういうわけじゃないけれど……ちょ、ちょっと体調がすぐれないわ、先に帰るわね」<br> 「あ、真紅ぅ……!」<br>  ダッと駆け出して、教室を飛び出す真紅。<br> 「うゆ……誰にも教えてもらえないの……」<br>  がっくりと肩を落とすと、自分の机に向かい、鞄を手に取る。<br>  そしてベランダに顔を出すと、<br> 「かなりあ、ヒナもう帰るの。また明日なのよ」<br> 「わかったかしら、また明日かしら~」<br>  挨拶をすませて、学校を出た。</p> <p>「皆してひどいのよ……」<br>  ぽつん、と呟き涙を浮かべる雛苺。<br> 「な、泣かないのよ、ヒナはもう子供じゃ……」<br>  制服の袖で涙を拭っていると、気付く。<br> 「子供だから……わからないの……?」<br>  そう言って立ち止まる雛苺に、声が掛けられる。<br> 「どうしたの?」<br> 「……トゥモエー!」<br> 「相変わらずね、雛苺。私で良かったら話聞くけど……」<br> 「トモエ、大好きなのー!」<br>  雛苺の表情が、ぱっと明るくなった。</p> <p> 二人は手を繋ぎ、歩く。<br> 「それにしても久しぶりね、同じクラスなのに……。<br>  最近部活も勉強も忙しくて、なかなか話せなかったの。ごめんね」<br> 「ううん、いいのよ。トモエと話せて嬉しいの!」<br> 「ふふ……。それで、何があったの?」<br> 「うゆ…………」<br>  途端に雛苺の顔が曇り、俯いてしまう。</p> <p> 「ねぇトモエ、ヒナはトモエも金糸雀も真紅も蒼星石も……皆好きなのよ。<br>  でも告白してくれた人は、その好きとは違う好きって言うのよ……」<br>  雛苺は続ける。<br> 「……それで、どう違うのか皆に聞いてみたのに、誰も教えてくれないの」</p> <p>  心配そうにしていた巴が、柔らかい笑みを浮かべた。<br> 「雛苺はとても難しいことをきいていたのよ。<br>  皆違いを知っているけど、それを説明するのはとても大変なの」<br> 「そう……なの……?」<br> 「そうよ。例外もあるけど、大抵皆自分で知るの。だから雛苺もいつかわかるようになるわ」<br>  少し考えるように、上を向く雛苺。<br> 「……うゆ……わかったなの」<br> 「その告白してきた人にも、正直に言ったほうがいいと思うわ。わかってくれるはずだもの」<br> 「……うん、そうするの。トモエ、ありがとうなのー!」<br> 「ふふ、頑張ってね」</p> <p> 休み時間。笹塚の机へ向かい、話し掛ける雛苺。 <br> 「昨日はごめんなさいなの。ヒナ、まだ好きとかよくわからないのよ……」<br>  そう言って、恥ずかしそうに目をそらす。<br> 「だから、今は友達として仲良くしてほしいのー。<br>  これからたくさん話しかけるから……いいかしら?」<br>  言葉が出ない様子で、何度も大きく頷く笹塚。<br>  雛苺もえへへ、と嬉しそうに笑っている。<br>  </p> <p>「そう・……。よかったわね、雛苺」<br>  昼休み、雛苺の話を聞いて微笑む巴。<br>  しかし、本人はため息をついて続ける。<br> 「でもねトモエ……。笹塚君いつも立たされっぱなしで、なかなか話せないのよー……」<br>  そう言ってがっくり肩を落とす雛苺。<br> 「それは……」巴が言いかけると、廊下から<br> 「お前は次の授業中も立ってろよ」という声がする。<br>  それを聞いた巴は右手で頭をおさえ、<br> 「……それは宿命だもの、仕方無いわ」<br>  と、ため息をつきながら首を左右に振った。<br>  雛苺が首を傾げていると、時計が休み時間の終わりをしめした。</p> <p>                                  終わり</p>

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