「下僕と幼馴染み」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

下僕と幼馴染み」(2006/02/28 (火) 21:30:07) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

<p>下僕と幼馴染み</p> <p>真紅  「ジュン、紅茶を入れて頂戴」<br> ジュン「ティーセットまで持ってきて……何でわざわざ学校で飲もうとするかなぁ」<br> 真紅 「ほら早く。休み時間が終わってしまうわよ?」<br> 水銀燈「真紅ぅ、あんまりジュンをこき使ったら可哀想じゃない。別にあなたの彼氏ってわけじゃないんでしょ?」<br> 真紅 「ジュンが私に尽くすのは当たり前じゃない。ジュンは私の大切な……下僕だもの」<br> ジュン 「だから違うっていってんだろ!?仕方ないから面倒見てやってるだけだ!」<br> 翠星石「その割にはいつも一緒に居るし……怪しいですぅ」<br> 真紅 「しつこいわね。ジュンとは何でもないって言ってるでしょう?」<br> 水銀燈「あらそう?じゃあ……わたしもジュン狙いでいっちゃおうかしら」<br> 真紅  「――っ!?ちょ、ちょっと人の下僕を誘惑しないで頂戴!」<br> 水銀燈「人使いの荒い真紅なんかよりぃ、べたべたに甘えんぼで胸も大きいわたしの方がいいわよねぇ?」<br> 真紅  「ジュン!こんな胸の大きいだけの泥棒猫、きっぱり振っておしまいなさい!!」<br> ジュン「そりゃあ……付き合うなら水銀燈の方が楽しそうだけどさ」<br> 真紅  「そ、そんな………!?」<br> 水銀燈「ほらぁ♪ やっぱり真紅なんかもうお払い箱なのよ!」</p> <p> ジュン「でも、真紅は一人じゃ何もできないもんなぁ。やっぱり僕が居てやらないと…」<br> 真紅 「な、なによそれ……私が子供だっていうのっ?」<br> ジュン「だってそうだろ。一人で街に出るとすぐ迷子になるし、何でもかんでもすぐ人を頼るし…」<br> ジュン「お嬢様ぶってるけど、基本的にぐうたらなだけなんだよなぁ。誰かがお守りしてやらないと」<br> 真紅  「お、おだまりなさいっ! ……なによ、下僕の癖に皆の前でレディを馬鹿にして…っ!」<br> 真紅 「あなたの力なんか借りなくても、私一人で……っ!」<br> 真紅  「ジュンッ、今日をもってあなたは解雇よ!!後で泣いて謝っても遅いんだから……っ」<br> ジュン 「え、ほんとにいいのか?じゃあお言葉に甘えて、久々にのんびりするかな~」<br> 真紅  「………え?」<br> ジュン「何だよ真紅、やっぱり一人じゃ寂しいのか?」<br> 真紅  「そ、そんな訳ないでしょ!もうあなたとは何の関係もないんだから、気安く話しかけて来ないで頂戴!」<br> ジュン 「はいはい…」<br> 雛苺  「はぅ~~真紅ぅ! 宿題忘れてきちゃったよぉ!ノート見せて~?」<br> 真紅  「あら、私もうっかりしてたわ。ジュン!ノートを…………あっ」<br> ジュン 「あれ?もう僕には頼まないんじゃなかったっけ?」<br> 真紅  「くっ……! ひ、雛苺!ジュンのノートを奪ってきなさいっ」<br> 雛苺  「うよーい」<br> ジュン 「結局僕の見るのかよっ!?」</p> <p>きーんこーんかーんこーん…。<br> 翠星石「やっとお昼ですぅ……ジュン、さっさと机をこっちに移動させて一緒に食うです!」<br> 真紅 「やめて頂戴。…あんなのと一緒だと、おいしい食事も台無しだわ」<br> 翠星石「まだジュンとケンカしてるですかぁ?でも真紅のお弁当、いつもジュンから…」<br> ジュン「そうだよなぁ~。庶民の味をたしなむとかいって、毎日僕の姉ちゃんに作らせてんだもんなぁ」<br> 真紅  「――っ!」<br> ジュン 「どうする?弁当の為に謝るか、意地張り続けて弁当無しか…」<br> 真紅  「兵糧攻めだなんて……卑怯なっ!」<br> 水銀燈「うるさいわねぇ…落ち着いてヤクルトも飲めやしないわ。もう謝っちゃいなさいよ真紅…」<br> 真紅 「………いいもの持ってるじゃない、水銀燈…?」<br> 水銀燈「ひっ!? ………わ、わたしのヤクルトがぁ!?返してぇ――!!」<br> 真紅 「水銀燈の物は真紅のもの、真紅の物は……真紅のものよ!覚えておきなさい」<br> 水銀燈「わたしの乳酸菌がぁ……返してぇ………かえしてよぉっ!………ひっく…」<br> 蒼星石「……なんかしんみりとしちゃったね」<br> 翠星石「せっかくの昼食がぶち壊しですぅ。さっさと謝っちまうです真紅!」<br> 蒼星石「ジュン君が居なくて困るのは君じゃないか真紅。学校以外でも、家族ぐるみでしょっちゅう一緒な訳だし…」<br> 雛苺  「放課後は真紅一人になっちゃうよぉ?独りぼっちはかわいそうなのぉ~」<br> 真紅  「な、仲直りなんて必要ないわ!別にジュンがいなくても、わたしにはくんくんさえ居れば…」<br> 翠星石「そういえばくんくんの再放送、確か今日の今頃だったですね。真紅は録画……って、してる訳ねぇですか」<br> 真紅 「ぬかりないわよ。昨日のうちに、ジュンに任せ……………はっ!?」<br> 蒼星石「…何でもジュン君任せなんだね君は」<br> ジュン「一応予約はセットしてあるけど……見る人がいないんじゃ、消すしかないなぁ」<br> 真紅  「ちょ、ちょっとジュン待ちなさい!?約束したのはケンカする前の昨日だから……まだ約束は有効のはずっ!」<br> ジュン 「そんなへ理屈が通るわけないだろ」<br> 真紅 「うぅ……くんくんと会えないなんて、そんな…………ひっく……」<br> 蒼星石「泣く程悲しいなら謝っちゃえばいいのに…」</p> <p>蒼星石「じゃあジュン君、また明日」<br> 水銀燈「ジュン、明日までに真紅と仲直りしなさいよね。わたしや皆が迷惑するんだから…」<br> 真紅  「……ふんっ」</p> <p> ジュン(んなこと言ったって…向こうが勝手にへそ曲げてるだけじゃないか)<br> ジュン 「…ただいまー」<br> のり 「あらジュン君、聞いたわよ?真紅ちゃんと喧嘩しちゃったんだって…」<br> ジュン 「何でお前が知ってるんだよ?」<br> 真紅  「あら、遅いじゃないジュン」<br> ジュン 「な―――っ、何でお前が居るんだよ!?」<br> のり 「真紅ちゃんね、家の鍵落としちゃって、今晩ウチにお泊まりすることになったから」<br> 真紅 「いつ来ても代わり映えのない狭い家だけど……一晩だけ辛抱してあげるわ」<br> ジュン「偉そうだなお前……っていうかっ!僕に頼らないとか言っておいて、よく顔出せたもんだな?」<br> 真紅 「別にあなたに頼った覚えはないわ。のりに相談しただけだもの」<br> ジュン「こいつ……自分から近づくなとか言った癖に、何かにつけて僕の近くに寄ってくるな」<br> 真紅 「……気のせいよ。わたしの通り道に、ジュンがぽーと突っ立ってるだけなのだわ」<br> ジュン「ああそうかよ…ったく付き合ってられないよ」<br> ジュンは真紅と離れた場所にあるソファーにどっかりと座り、正面のテレビを付ける。<br> すると、真紅がその後を追うように、ジュンの隣にちょこんと座る。<br> ジュン 「…………ついてきてるじゃん」<br> 真紅 「くんくんを見るのに、この場所が絶好の角度なだけだわ。文句があるなら、あなたがどきなさいな」<br> ジュン「僕が先に座ってたじゃないか!?っていうか押してくるな!か、体が密着して…っ」<br> 真紅 「あらやだ、幼なじみに欲情するなんて……節操ないわね」<br> のり  「昔は一緒にお風呂入った仲なのにねぇ」<br> ジュン 「関係無い話すんな!!!」</p> <p>真紅 「いいお風呂だったわ、のり」<br> のり「あらぁ、お風呂上がりの真紅ちゃん色っぽぉ~い!ねぇジュン君?」<br> ジュン「僕にふるなよ…」<br> ジュン(……まあ、可愛いのは認めるけどさ)<br> 真紅の濡れそぼった長い髪、シャンプーと混じって香る女の子の匂いに、ジュンはつい意識してしまう。<br> ジュン(いつもは僕が、あの綺麗な髪をすいてあげてたんだよな……)<br> 自分は喧嘩中だから、やってあげる必要なんてない。<br> 真紅は髪の手入れも人にやらせる、筋金入りのお嬢様だ。絶対自分からはやらないだろう。<br> なら、のりに頼むのだろうか。これからもずっと、自分以外の人に……?<br> 真紅の髪のことで延々と悩む自分に、ジュンは呆れてしまう。<br> ジュン(……っていうか、何で喧嘩なんかしてたんだっけ…)<br> 真紅 「なあに?人の髪をじろじろと……まるで、わたしの髪を梳きたくて、たまらないって顔ね?」<br> ジュン「だ、誰がっ」<br> 真紅 「……してくれないの?」<br> ジュン「だぁっ! そういう顔するなよな! …ったく」<br> のり 「真紅ちゃーん、お電話よぉ~」<br> 真紅は少し残念そうな顔を見せ、受話器の方へ駆けていった。入れ違いにのりが入ってくる。<br> のり 「真紅ちゃんのお父さんからだわ。また遅くなるから娘を宜しくですって」<br> ジュン「…なんで僕に話すんだよ。関係ないだろ」<br> のり 「ジュン君…仲直りしてあげられないかな?真紅ちゃん、きっと寂しがってるだけなのよ」<br> のり 「いつも広いお屋敷に独りぼっちだもの。その分、一杯いっぱいジュン君に構って欲しいのよ…」<br> ジュン「あいつからは、そんなこと一言も言わないじゃないか…」<br> のり 「これ、真紅ちゃんの制服のぽっけに入ってたの……ジュン君に渡しておくね」<br> ジュン「これって……家の鍵? なくしたんじゃ…」<br> のり 「周りを心配させたくないから、自分から寂しいなんて言えないのよ。他の人は無理でも、ジュン君だけはわかってあげて…」<br> ジュン「……あの意地っ張り」</p> <p> 二人きりのリビングで、お互い話すこともなく、ただ流れるテレビを眺めていた。<br> ジュン「…もう寝ないと明日辛いぞ」<br> 真紅 「…ここで寝る」<br> ジュン「部屋はちゃんと用意してやっただろ?」<br> 真紅 「だってあの部屋、ひとりだと薄気味悪くて…とても寝られないのだわ」<br> ジュン「…僕はもう寝るからな」<br> 真紅 「………」<br> ジュンが部屋に戻り、真紅はリビングに一人取り残される。<br> テレビの音だけが響く寂しい空間に、真紅は堪えきれなくなり――。<br> 真紅 「……………待って!ジュンッ……まって…っ」<br> 泣きそうな顔を隠す余裕などなく、泣き声を堪えることもできず、必死にジュンのあとを追うと…、<br> リビングを出たすぐ先の所で、ジュンが待っていた。<br> ジュン「泣くほど寂しいなら、何で最初からそう言わないかな………」<br> 真紅 「――ッ!? ジュン!! だ、騙したのね!?」<br> ジュン「騙したのはお前が先だろ。ほら、鍵」<br> 真紅 「か、返しなさい!!馬鹿!バカ!このっ………おばかぁ!!」<br> ジュン「はいはい、どうせ僕がわるうございました…。お詫びに紅茶いれてやるから………もう泣きやめよな」<br> 真紅 「なによっ………自分で泣かした癖にっ!あなたって本当に最低の下僕だわ!!」<br> 真紅 「まったく…なんでわたしは、こんな気の利かない下僕なんかを………ジュンなんかを…っ」<br> ジュン「…下僕って、お前が勝手に言ってるだけだろ。僕はお前の考えてることなんか読める訳ないし……」<br> ジュン「下僕なんかじゃないから、ちゃんと口に出して言って貰わないと、気持ちなんて判らない」<br> 真紅 「………言葉にさえすれば、してくれるのね?」<br> ジュン「……ものによるけどな」<br> 真紅 「じゃあ、今日は……一緒の部屋で寝てちょうだい…」</p> <p>真紅 「おやすみ、ジュン」<br> ジュン「…ったく、高校にもなって何で一緒に寝ようとか言い出すかな…」<br> 真紅 「……」<br> ジュン「…真紅、寝たのか?」<br> 真紅 「ん……ジュンッ」<br> ジュン(ッ!? 寝言で僕の名前を……?)<br> 真紅 「探偵を辞めたくんくんなんて……くんくんじゃないわ………ただのノラ犬よ………すーすー…」<br> ジュン「何て寝言だよ……ほら、毛布乱れてるぞ」<br> 親に抱かれた子供のように、安心しきった真紅の寝顔をじっと見つめる。<br> ガキの頃なら可愛いですんだかもしれない。でも、今は幼なじみでもあり、男と女でもある。<br> ジュン(意識するのはいつも僕ばっかりだ……)<br> 真紅 「ん…」<br> ジュン「――ッ!?」<br> 突然、真紅の両腕がジュンの首に絡まる。寝ぼけているのか、瞳は閉じたままだ。<br> ジュンは真紅に抱きしめられ、唇がくっつく寸前まで顔を近づけることになる。<br> ジュン「お前は……何でいつもそうなんだよッ」<br> 言うこと聞いてやってるのは、可愛いから。自分だって男だ。下心がない訳無いじゃないか。<br> ジュン「僕の気持ちなんか知らん顔して、人を下僕だのなんだのって……」</p> <p>真紅の小さな唇から目が離せない。<br> ジュン「下僕だなんて油断してるから……」<br> ジュンの唇が吸い込まれるように近づいていく。<br> 真紅 「……ご褒美、欲しかったの?」<br> ジュン「っ!? し、真紅! お前起きて…」<br> 慌てて飛び退こうとするジュンを真紅は離さず、ジュンの唇を奪う。<br> 子供の頃から見慣れた真紅の唇が今、自分の目の前に…。<br> 真紅 「ん……あっ……はぁっ…………………ジュンのキス、妙に手慣れてるけど…まさかあなた」<br> ジュン「…初めてに決まってるだろ」<br> 真紅 「そう……なら、こんな甘くておいしいキス……今後も他の娘になんかしては駄目よ?」<br> ジュン「何でお前にそんなこと、決められなくちゃならないんだよ。付き合ってる訳でもないのに…」<br> 真紅 「あら、わたしに仕える報酬としてキスを望んだのはジュンの方じゃない」<br> ジュン「ぼ、僕はそんなこと…っ」<br> 真紅 「もう遅いわ。報酬を受け取ってしまったのだから……これから一生かけて働いて貰わないと」<br> ジュン「一生って、お前…」<br> 真紅 「…言い方が気に入らないのなら言い直すわ。ちゃんとお願いすれば、聞いてくれるんでしょ?」<br> 真紅 「これは命令じゃなくて真紅からお願い……ジュン、ずっとわたしの側にいてちょうだい?」</p> <p><br> 完</p>

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: