「第4話「YOU ARE MAGIUS」」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
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OPテーマ「機巧励起ローゼンメイデン」<br>
<br>
<br>
<br>
世界識る全ての輪廻<br>
真言操る汝の力<br>
掴め想う全て守るため<br>
<br>
宇宙(そら)駆け巡る情報(コード)の螺旋<br>
魔術疾走(はし)る汝の宇宙<br>
掴め想う覇力(ちから)その胸に<br>
<br>
七つの歯車今動き 道化師が終りの劇開く<br>
哀しみ止めるため<br>
嘆きの乙女救うため<br>
叫べ 正しき魔力込め<br>
砕け 雄雄しき怒り解き放て<br>
立ち上がれ汝<br>
<br>
魔を制するMAGIUS!!!!<br>
<br>
<br>
<br>
<br>
<br>
沸騰するように熱く全身を流れる血液、興奮に歓喜し脈打つ五臓六腑。<br>
溢れんばかりの生命力!<br>
清浄な空気を取り込み、平穏と冷静さが混在する脳内。<br>
全てを紐解く万能思考!<br>
<br>
大気の流れを理解する。<br>
大地の息吹を理解する。<br>
巡る星々の動きを理解する。<br>
今、僕は、今まで感じた事の無い高揚感の中にいた。<br>
ふと、飛び掛り自分を細切れにしようとしていた蜘蛛の姿を視界に認める。<br>
幾つもの複眼の中に僕への恐怖を読み取る。<br>
地球の万有引力、重力、慣性に逆らう事ができずこちらへ向かってくる。<br>
<br>
―――――右手へ術式を<br>
<br>
脳内で僕に語りかける声、それに従う。<br>
僕は右腕を突き出し、力をそこに集めるようなイメージを浮かべる。<br>
瞬間、躰の周りを高速回転する紋様浮かぶ光球が僕の右手に集まり始めた。<br>
分解していく光球は集約し、一つ一つの粒子が輝く布を生み出し、<br>
右腕に絡みつき光の粒子を纏った朱甲と成る。<br>
<br>
<br>
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」<br>
<br>
砕けた光から飛び出し僕はあの異形へ向かって跳躍した。<br>
全身にみなぎる力、空気を裂くほどのスピード、周りの景色が<br>
一瞬で後ろに消え去りすぐ目の前にあのピエロ蜘蛛の姿。<br>
僕は思い切り拳を握り締め右手をこの気色悪い異形に叩き込む。<br>
「喰らええええ!!!!!」<br>
その叫びに危険を感じたのだろう、僕の攻撃に対し蜘蛛は咄嗟に<br>
八本ある肢のうちの二本で防御した。<br>
しかし、それでも僕は構わず拳を固い甲殻へ。<br>
ベキリ<br>
ただの勢いに任せて放った一撃、それは想像以上の破壊力。<br>
鈍い破壊音、硬い甲殻はいとも簡単に割れ、甲殻は飛び散り、<br>
オレンジ色をした筋肉らしき中身が露になった。<br>
「キシャァァァァ!!!!」<br>
甲高い叫びをあげながらまた蜘蛛はあの草叢へと墜落した。<br>
<br>
「すごい・・・・・・なんなんだ・・・・・・・この感覚。」<br>
僕は自分の体を見回した。当社比50%増し程にガッシリとした肉体、<br>
それに合わせた様に仕立てられた黒のボディスーツ、あらゆる破壊から<br>
見を守るように体を覆う朝の暁のように紅いローブ、<br>
その全てに自分の鼓動を感じた。<br>
「それが貴方の力の本当の姿よ、ジュン。」<br>
その声に気付き僕は少し下のほうを向いた。<br>
そこには人形ほどに背の縮んだ先ほどの少女、真紅が<br>
ゴシックロリータ風の服装に身を包んで僕を居上げていた。<br>
「・・・・・・・・縮んだ?」<br>
最初にする質問としては違うのだろうけど言ってみる。<br>
「貴方の力を引き出し、かつ、貴方の魔力特性を引き出したからなのだわ。」<br>
微笑みながら、僕の目の前まで浮かび肩に乗ってくる真紅。<br>
<br>
「私はローゼンメイデン、至高のホムンクルス。契約した魔術師の力を<br>
生命活動の動力として貰い受ける代わりに術者の魔術特性を顕現させ、<br>
魔力を最大限まで引き出す最強の宝具なのだわ。」<br>
そして、真紅は僕の頬に手を添え更に言葉を続ける。<br>
「今の貴方は私の能力との相乗効果で途方も無い力を手にした魔術師なのだわ。<br>
おそらく下手な魔術師を遥かに凌駕する力を持っている。<br>
だけど貴方は魔術の何たるかを全く識らないのだわ。記述持たざる魔導書、<br>
白紙の魔導書を持つ魔術師。だから私が、共有した意識の海を通じて貴方を導く。<br>
さあ、ジュン。もう話している時間は無いわよ。」<br>
あんまり意味は分かってないけど頷き、起き上がってきた蜘蛛へ向かい合う。<br>
蜘蛛は明らかな殺意のオーラを、恐怖を超える殺意を肉体から発し、<br>
僕へと突き刺す。しかし、僕も負ける訳にはいかない。<br>
<br>
「はぁぁぁぁ・・・・・・・・・・・・・」<br>
脳内を疾走る真紅の声、魔術式の理論、世界の式、世界を紐解く解。<br>
目の前の害敵を討ち斃す理論が展開される。<br>
なるほど、導くとはこういう事か、全てが一瞬で理解できた。<br>
構築された理論を全身にインストールし、僕は林の中へ走る。<br>
「行くのだわっっ!!!」<br>
真紅の声、音速に近い唸りをあげ、林の中へ駆ける僕。<br>
魔術で強化されたという肉体は、蜘蛛の視界を翻弄するように動き回り、<br>
林の木々を踏み台に三次元空間を縦横無尽に翔び駆ける。<br>
「とおおおりゃぁああ!!!」<br>
蜘蛛の真後ろを陣取り、僕は蹴りを蜘蛛の腹部へ抉りこむ。<br>
「グォォォォォォ!!!」<br>
硬い甲殻はまたひび割れ、今度は完全に肉体の一部を破壊した。<br>
割れたヒビから飛び散る緑色の血液があたりを汚す。<br>
「よしっ!」<br>
僕は相手にダメージを与えた事を確認し飛び退く。<br>
しかし、次の瞬間。<br>
<br>
<br>
ブオンっ!!<br>
<br>
空気を切り裂く音、同時に身体にめり込む巨木の幹の様な肢。<br>
「ぐっ!!!!がはぁぁあッッ!!!!!!」<br>
「きゃああああああ!!!」<br>
無茶苦茶に振った蜘蛛の肢、おそらく僕への反撃だったのだろう、<br>
ソレは完全に僕のわき腹をとらえていた。<br>
肢の爆砕する空気、衝撃を受けた僕の身体は肢に弾き飛ばされ<br>
林の中を木々をなぎ倒しながら翔んだ。<br>
「うっ・・・・・・げほっ・・・・・・がはっ、ぐぅっ!!」<br>
口に広がる鉄の味。肋骨の1本か2本は折れたんじゃないか?<br>
「大丈夫よ。防御法陣で・・・・・・ある程度のダメージは拡散させたから。」<br>
僕の心を読んだかのように返答する真紅の声。<br>
「さっきも言ったのだわ・・・・・・ジュンと私は意識の海を共有している。<br>
だからある程度貴方の考えている事は分かるのだわ。もちろん名前もだけど。」<br>
痛みに耐えながらも疑問に思っている僕の考えに答える。<br>
なるほどね、下手なことは考えられないってか。<br>
<br>
立ち上がり、僕は愉悦の金切り声を上げる蜘蛛野郎を睨みつける。<br>
少しの油断が命取りって事みたいだ。<br>
僕は気を取り直し、脳内で組み立てられた構えをとる。<br>
「ギシャァァァ!!!!」<br>
6本の肢を巧みに操り一瞬で目の前まで距離を詰める異形。<br>
しかし、慌てない、真紅の声が僕を導く。<br>
サメの歯のように並んだ刃の如き肢を僕に振り下ろす化物、<br>
しかし振り下ろした先には僕はいない。<br>
「ギィッ!!??」<br>
驚きの声をあげる蜘蛛。当たり前だ、最も装甲の薄い腹部に<br>
僕の姿があったのだから。<br>
「うおりゃああああ!!!」<br>
右手の朱甲が再び蜘蛛を捕らえた。三度破壊される蜘蛛の外甲。<br>
しかし今度はそれだけでない。内部までめり込んだ拳を<br>
更に殴りぬけ、腹部に一文字の穴を開けてやる。<br>
「グギィィィィィアァァアァ!!!!」<br>
激痛の咆哮、大ダメージだった。蜘蛛は耐え切れない苦痛に身体をくねらせ、<br>
逃亡するように跳躍し僕達の目の前から姿を消した。<br>
<br>
「や、やったのか………?」<br>
僕は突然訪れた静けさにホっと息をつく。しかし僕の肩にいた真紅は<br>
ゾっとした表情を浮かべて僕にすぐさま振り返る。<br>
「いけないのだわ!!ジュン、早くアレの後を追うのよ!!!」<br>
「え、それってどういう…………」<br>
真紅は青ざめた表情で僕に話す。<br>
「使い魔は手傷を負いすぎると術者の制御を離れて自分の回復を試みる!!<br>
そして、その回復の手段は……………人間よ!!!」<br>
「なっ………!!!!」<br>
驚愕に声を失う僕、その時だ。<br>
<br>
<br>
きゃああああああああああああああああああああ!!!!!!!!<br>
<br>
<br>
つんざくような女性の悲鳴。<br>
「遅かったのだわ!!!!ジュン、早くっっ!!!」<br>
「分かってる!!!!」<br>
僕は一瞬で林を駆け抜け悲鳴の元へ向かう。<br>
爆砕する地面、さっきとは比べ物にはならないほどのスピードで<br>
闇色の緑があっというまに僕の後ろへ消えていく。<br>
<br>
「よし!!抜け……………!!!!」<br>
林を抜けた先、視界が一気に開ける。<br>
しかし奴の姿が無い!!!<br>
どこだ、一体どこに!!<br>
「ジュン、この近くで人が多い場所はどこ…………?」<br>
「公園から近いところって言ったら……あそこか!!!!」<br>
僕は思いつく一点に向かって走る。<br>
風の如く駆ける。<br>
向かう場所からは微かだが叫び声が聞こえている。<br>
あの蜘蛛、こんなに早かったのか!!??<br>
「違うのだわ、奴は自分自身の使い魔としての制御を外したのよ。<br>
まさか、そこまでの顕現を起こすものだったなんて…」<br>
「つまり、さっきのは全然………」<br>
「完全な力じゃないのだわ。アレは仮初めの姿よ。寄り代にした媒体が<br>
弱いものだったのよ。だから、おそらく今は……」<br>
後は言わなくても分かった。<br>
行く先々の全てが破壊されていたから。<br>
目的地が見えた。<br>
見えた先にあったもの、それは地獄だった。<br>
そこは人の賑わう駅前の繁華街の一画に面する道路だった。<br>
いつもならこの時間、会社帰りのサラリーマンやカップルが行き交う<br>
平和な、活気溢れる場所だった。<br>
学校帰りにはセールのために主婦が怒号をあげる街だった。<br>
しかし今は幾台もの車が事故を起こし煙をあげ、道行く人だったものは<br>
ただの肉塊となり、飛び散った血液が建物の壁を汚していた。<br>
阿鼻叫喚図とはこの事だった。<br>
人々が逃げ惑う中、僕は奴の姿を認めた。<br>
奴の肉体は先ほどからは想像もつかないほどに膨張していた。<br>
10階建てのビルと同じほどの巨体。<br>
傷口らしきものはどこにもなく、奴が少し動くたびに建物が破壊される。<br>
テレビの中の怪獣が目の前にいた。<br>
そして、僕は見た。<br>
<br>
若い女性、しかし、もうその瞳に生の光は無い。<br>
あの蜘蛛は、女性の肢体を貪り食ったのだろう。<br>
首筋から腹部の下までバックリと抉り食われていた。<br>
あのピエロの紅い口紅は女性の血糊でべたりと彩られていたに違いない。<br>
ムシャリムシャリと蜘蛛は女性を喰らう。足を、腕を、身体を臓腑を。<br>
彼女の肉体全てが食い尽くされる。<br>
襲う吐き気、地面に吐き出される吐瀉物。<br>
最悪の光景だった。<br>
だが、同時に許せない光景だった。<br>
燃え滾る怒り、血液が沸騰する。<br>
「真紅………奴を倒す手段はあるか?あのデカイ糞野郎をぶち倒す手段。」<br>
「ええ、あるわ……ただ、あの異形を倒すには貴方だけでは無理よ。」<br>
真紅の声にも怒りの色がある。<br>
そして、その怒りは意識の海を通じて僕の心を震わせる。<br>
そして、贈られる一つの術式詠唱(ワード)。<br>
彼女に秘められた最強の力、彼女を守り、彼女が手に執る最強の刃。<br>
人工精霊と呼ばれる意志持つ存在を身に宿す機械の巨人。<br>
僕の中に流れ込む彼女の心が紡ぐ一つの詠唱呪法。<br>
<br>
<br>
機巧神(マキナ)召喚!!!!!!!!<br>
<br>
<br>
蜘蛛は歓喜していた。主から与えられた制御から解き放たれ、<br>
己の力を余す事無く発揮できる事に。<br>
蜘蛛は歓喜した。<br>
人間を喰らい、甘美な美味に酔いしれることに。<br>
蜘蛛は歓喜した。<br>
カタチあるものを破壊し、己の憎むモノを破壊する事に<br>
蜘蛛は歓喜した。<br>
あの魔術師を嬲り殺すだけの力を得た事に。<br>
跪ずかせ、苦渋を飲ませた彼奴を討てる事に。<br>
<br>
だが、それは刹那の夢<br>
<br>
またも襲う悪寒。蜘蛛はまたあの恐怖を覚えた。複眼に捕らえる光。<br>
闇に染まった夜の空、人工の光で照らされ星も見えない空、<br>
その空に巨大な魔術召喚法陣が浮かび上がっていた。<br>
そこから漏れ出す尋常ではない魔力が蜘蛛を呪縛する。<br>
無数の円と多角形で構築された紋様が高速回転する。<br>
逃げ惑う人々はその光り輝く法陣に呆気にとられ足を止める。<br>
ふと、どこからか誰とも知れぬ咆哮が木霊した。<br>
<br>
それは雄雄しく、猛々しき、勇者の雄叫びだった<br>
<br>
<br>
<br>
<br>
――――紅の黄昏より来たり!!!!<br>
<br>
――――燃え立つ怒りを胸に秘め!!!<br>
<br>
――――紅(あか)き空を疾走せよ!!!<br>
<br>
<br>
―――汝、閃紅の鉄鋼(はがね)、ホーリエ!!!!!!!<br>
<br>
<br>
<br>
<br>
<br>
空が、宵闇が、爆砕した<br>
<br>
<br>
<br>
<br>
<br>
<br>
灼鋼<br>
<br>
鋼鉄の巨人<br>
<br>
黄金の鬣<br>
<br>
近接滅壊術式<br>
<br>
ファントムバベル<br>
<br>
<br>
機巧励起ローゼンメイデン 第5話「機巧神ホーリエ」<br>
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<br>
<br>
―――――「これが、ローゼンメイデン・・・・・・・!」<br>
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OPテーマ「機巧励起ローゼンメイデン」<br>
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世界識る全ての輪廻<br>
真言操る汝の力<br>
掴め想う全て守るため<br>
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宇宙(そら)駆け巡る情報(コード)の螺旋<br>
魔術疾走(はし)る汝の宇宙<br>
掴め想う覇力(ちから)その胸に<br>
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七つの歯車今動き 道化師が終りの劇開く<br>
哀しみ止めるため<br>
嘆きの乙女救うため<br>
叫べ 正しき魔力込め<br>
砕け 雄雄しき怒り解き放て<br>
立ち上がれ汝<br>
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魔を制するMAGIUS!!!!<br>
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沸騰するように熱く全身を流れる血液、興奮に歓喜し脈打つ五臓六腑。<br>
溢れんばかりの生命力!<br>
清浄な空気を取り込み、平穏と冷静さが混在する脳内。<br>
全てを紐解く万能思考!<br>
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大気の流れを理解する。<br>
大地の息吹を理解する。<br>
巡る星々の動きを理解する。<br>
今、僕は、今まで感じた事の無い高揚感の中にいた。<br>
ふと、飛び掛り自分を細切れにしようとしていた蜘蛛の姿を視界に認める。<br>
幾つもの複眼の中に僕への恐怖を読み取る。<br>
地球の万有引力、重力、慣性に逆らう事ができずこちらへ向かってくる。<br>
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―――――右手へ術式を<br>
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脳内で僕に語りかける声、それに従う。<br>
僕は右腕を突き出し、力をそこに集めるようなイメージを浮かべる。<br>
瞬間、躰の周りを高速回転する紋様浮かぶ光球が僕の右手に集まり始めた。<br>
分解していく光球は集約し、一つ一つの粒子が輝く布を生み出し、<br>
右腕に絡みつき光の粒子を纏った朱甲と成る。<br>
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「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」<br>
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砕けた光から飛び出し僕はあの異形へ向かって跳躍した。<br>
全身にみなぎる力、空気を裂くほどのスピード、周りの景色が<br>
一瞬で後ろに消え去りすぐ目の前にあのピエロ蜘蛛の姿。<br>
僕は思い切り拳を握り締め右手をこの気色悪い異形に叩き込む。<br>
「喰らええええ!!!!!」<br>
その叫びに危険を感じたのだろう、僕の攻撃に対し蜘蛛は咄嗟に<br>
八本ある肢のうちの二本で防御した。<br>
しかし、それでも僕は構わず拳を固い甲殻へ。<br>
ベキリ<br>
ただの勢いに任せて放った一撃、それは想像以上の破壊力。<br>
鈍い破壊音、硬い甲殻はいとも簡単に割れ、甲殻は飛び散り、<br>
オレンジ色をした筋肉らしき中身が露になった。<br>
「キシャァァァァ!!!!」<br>
甲高い叫びをあげながらまた蜘蛛はあの草叢へと墜落した。<br>
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「すごい・・・・・・なんなんだ・・・・・・・この感覚。」<br>
僕は自分の体を見回した。当社比50%増し程にガッシリとした肉体、<br>
それに合わせた様に仕立てられた黒のボディスーツ、あらゆる破壊から<br>
見を守るように体を覆う朝の暁のように紅いローブ、<br>
その全てに自分の鼓動を感じた。<br>
「それが貴方の力の本当の姿よ、ジュン。」<br>
その声に気付き僕は少し下のほうを向いた。<br>
そこには人形ほどに背の縮んだ先ほどの少女、真紅が<br>
ゴシックロリータ風の服装に身を包んで僕を居上げていた。<br>
「・・・・・・・・縮んだ?」<br>
最初にする質問としては違うのだろうけど言ってみる。<br>
「貴方の力を引き出し、かつ、貴方の魔力特性を引き出したからなのだわ。」<br>
微笑みながら、僕の目の前まで浮かび肩に乗ってくる真紅。<br>
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「私はローゼンメイデン、至高のホムンクルス。契約した魔術師の力を<br>
生命活動の動力として貰い受ける代わりに術者の魔術特性を顕現させ、<br>
魔力を最大限まで引き出す最強の宝具なのだわ。」<br>
そして、真紅は僕の頬に手を添え更に言葉を続ける。<br>
「今の貴方は私の能力との相乗効果で途方も無い力を手にした魔術師なのだわ。<br>
おそらく下手な魔術師を遥かに凌駕する力を持っている。<br>
だけど貴方は魔術の何たるかを全く識らないのだわ。記述持たざる魔導書、<br>
白紙の魔導書を持つ魔術師。だから私が、共有した意識の海を通じて貴方を導く。<br>
さあ、ジュン。もう話している時間は無いわよ。」<br>
あんまり意味は分かってないけど頷き、起き上がってきた蜘蛛へ向かい合う。<br>
蜘蛛は明らかな殺意のオーラを、恐怖を超える殺意を肉体から発し、<br>
僕へと突き刺す。しかし、僕も負ける訳にはいかない。<br>
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「はぁぁぁぁ・・・・・・・・・・・・・」<br>
脳内を疾走る真紅の声、魔術式の理論、世界の式、世界を紐解く解。<br>
目の前の害敵を討ち斃す理論が展開される。<br>
なるほど、導くとはこういう事か、全てが一瞬で理解できた。<br>
構築された理論を全身にインストールし、僕は林の中へ走る。<br>
「行くのだわっっ!!!」<br>
真紅の声、音速に近い唸りをあげ、林の中へ駆ける僕。<br>
魔術で強化されたという肉体は、蜘蛛の視界を翻弄するように動き回り、<br>
林の木々を踏み台に三次元空間を縦横無尽に翔び駆ける。<br>
「とおおおりゃぁああ!!!」<br>
蜘蛛の真後ろを陣取り、僕は蹴りを蜘蛛の腹部へ抉りこむ。<br>
「グォォォォォォ!!!」<br>
硬い甲殻はまたひび割れ、今度は完全に肉体の一部を破壊した。<br>
割れたヒビから飛び散る緑色の血液があたりを汚す。<br>
「よしっ!」<br>
僕は相手にダメージを与えた事を確認し飛び退く。<br>
しかし、次の瞬間。<br>
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ブオンっ!!<br>
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空気を切り裂く音、同時に身体にめり込む巨木の幹の様な肢。<br>
「ぐっ!!!!がはぁぁあッッ!!!!!!」<br>
「きゃああああああ!!!」<br>
無茶苦茶に振った蜘蛛の肢、おそらく僕への反撃だったのだろう、<br>
ソレは完全に僕のわき腹をとらえていた。<br>
肢の爆砕する空気、衝撃を受けた僕の身体は肢に弾き飛ばされ<br>
林の中を木々をなぎ倒しながら翔んだ。<br>
「うっ・・・・・・げほっ・・・・・・がはっ、ぐぅっ!!」<br>
口に広がる鉄の味。肋骨の1本か2本は折れたんじゃないか?<br>
「大丈夫よ。防御法陣で・・・・・・ある程度のダメージは拡散させたから。」<br>
僕の心を読んだかのように返答する真紅の声。<br>
「さっきも言ったのだわ・・・・・・ジュンと私は意識の海を共有している。<br>
だからある程度貴方の考えている事は分かるのだわ。もちろん名前もだけど。」<br>
痛みに耐えながらも疑問に思っている僕の考えに答える。<br>
なるほどね、下手なことは考えられないってか。<br>
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立ち上がり、僕は愉悦の金切り声を上げる蜘蛛野郎を睨みつける。<br>
少しの油断が命取りって事みたいだ。<br>
僕は気を取り直し、脳内で組み立てられた構えをとる。<br>
「ギシャァァァ!!!!」<br>
6本の肢を巧みに操り一瞬で目の前まで距離を詰める異形。<br>
しかし、慌てない、真紅の声が僕を導く。<br>
サメの歯のように並んだ刃の如き肢を僕に振り下ろす化物、<br>
しかし振り下ろした先には僕はいない。<br>
「ギィッ!!??」<br>
驚きの声をあげる蜘蛛。当たり前だ、最も装甲の薄い腹部に<br>
僕の姿があったのだから。<br>
「うおりゃああああ!!!」<br>
右手の朱甲が再び蜘蛛を捕らえた。三度破壊される蜘蛛の外甲。<br>
しかし今度はそれだけでない。内部までめり込んだ拳を<br>
更に殴りぬけ、腹部に一文字の穴を開けてやる。<br>
「グギィィィィィアァァアァ!!!!」<br>
激痛の咆哮、大ダメージだった。蜘蛛は耐え切れない苦痛に身体をくねらせ、<br>
逃亡するように跳躍し僕達の目の前から姿を消した。<br>
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「や、やったのか………?」<br>
僕は突然訪れた静けさにホっと息をつく。しかし僕の肩にいた真紅は<br>
ゾっとした表情を浮かべて僕にすぐさま振り返る。<br>
「いけないのだわ!!ジュン、早くアレの後を追うのよ!!!」<br>
「え、それってどういう…………」<br>
真紅は青ざめた表情で僕に話す。<br>
「使い魔は手傷を負いすぎると術者の制御を離れて自分の回復を試みる!!<br>
そして、その回復の手段は……………人間よ!!!」<br>
「なっ………!!!!」<br>
驚愕に声を失う僕、その時だ。<br>
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きゃああああああああああああああああああああ!!!!!!!!<br>
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つんざくような女性の悲鳴。<br>
「遅かったのだわ!!!!ジュン、早くっっ!!!」<br>
「分かってる!!!!」<br>
僕は一瞬で林を駆け抜け悲鳴の元へ向かう。<br>
爆砕する地面、さっきとは比べ物にはならないほどのスピードで<br>
闇色の緑があっというまに僕の後ろへ消えていく。<br>
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「よし!!抜け……………!!!!」<br>
林を抜けた先、視界が一気に開ける。<br>
しかし奴の姿が無い!!!<br>
どこだ、一体どこに!!<br>
「ジュン、この近くで人が多い場所はどこ…………?」<br>
「公園から近いところって言ったら……あそこか!!!!」<br>
僕は思いつく一点に向かって走る。<br>
風の如く駆ける。<br>
向かう場所からは微かだが叫び声が聞こえている。<br>
あの蜘蛛、こんなに早かったのか!!??<br>
「違うのだわ、奴は自分自身の使い魔としての制御を外したのよ。<br>
まさか、そこまでの顕現を起こすものだったなんて…」<br>
「つまり、さっきのは全然………」<br>
「完全な力じゃないのだわ。アレは仮初めの姿よ。寄り代にした媒体が<br>
弱いものだったのよ。だから、おそらく今は……」<br>
後は言わなくても分かった。<br>
行く先々の全てが破壊されていたから。<br>
目的地が見えた。<br>
見えた先にあったもの、それは地獄だった。<br>
そこは人の賑わう駅前の繁華街の一画に面する道路だった。<br>
いつもならこの時間、会社帰りのサラリーマンやカップルが行き交う<br>
平和な、活気溢れる場所だった。<br>
学校帰りにはセールのために主婦が怒号をあげる街だった。<br>
しかし今は幾台もの車が事故を起こし煙をあげ、道行く人だったものは<br>
ただの肉塊となり、飛び散った血液が建物の壁を汚していた。<br>
阿鼻叫喚図とはこの事だった。<br>
人々が逃げ惑う中、僕は奴の姿を認めた。<br>
奴の肉体は先ほどからは想像もつかないほどに膨張していた。<br>
10階建てのビルと同じほどの巨体。<br>
傷口らしきものはどこにもなく、奴が少し動くたびに建物が破壊される。<br>
テレビの中の怪獣が目の前にいた。<br>
そして、僕は見た。<br>
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若い女性、しかし、もうその瞳に生の光は無い。<br>
あの蜘蛛は、女性の肢体を貪り食ったのだろう。<br>
首筋から腹部の下までバックリと抉り食われていた。<br>
あのピエロの紅い口紅は女性の血糊でべたりと彩られていたに違いない。<br>
ムシャリムシャリと蜘蛛は女性を喰らう。足を、腕を、身体を臓腑を。<br>
彼女の肉体全てが食い尽くされる。<br>
襲う吐き気、地面に吐き出される吐瀉物。<br>
最悪の光景だった。<br>
だが、同時に許せない光景だった。<br>
燃え滾る怒り、血液が沸騰する。<br>
「真紅………奴を倒す手段はあるか?あのデカイ糞野郎をぶち倒す手段。」<br>
「ええ、あるわ……ただ、あの異形を倒すには貴方だけでは無理よ。」<br>
真紅の声にも怒りの色がある。<br>
そして、その怒りは意識の海を通じて僕の心を震わせる。<br>
そして、贈られる一つの術式詠唱(ワード)。<br>
彼女に秘められた最強の力、彼女を守り、彼女が手に執る最強の刃。<br>
人工精霊と呼ばれる意志持つ存在を身に宿す機械の巨人。<br>
僕の中に流れ込む彼女の心が紡ぐ一つの詠唱呪法。<br>
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機巧神(マキナ)召喚!!!!!!!!<br>
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蜘蛛は歓喜していた。主から与えられた制御から解き放たれ、<br>
己の力を余す事無く発揮できる事に。<br>
蜘蛛は歓喜した。<br>
人間を喰らい、甘美な美味に酔いしれることに。<br>
蜘蛛は歓喜した。<br>
カタチあるものを破壊し、己の憎むモノを破壊する事に<br>
蜘蛛は歓喜した。<br>
あの魔術師を嬲り殺すだけの力を得た事に。<br>
跪ずかせ、苦渋を飲ませた彼奴を討てる事に。<br>
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だが、それは刹那の夢<br>
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またも襲う悪寒。蜘蛛はまたあの恐怖を覚えた。複眼に捕らえる光。<br>
闇に染まった夜の空、人工の光で照らされ星も見えない空、<br>
その空に巨大な魔術召喚法陣が浮かび上がっていた。<br>
そこから漏れ出す尋常ではない魔力が蜘蛛を呪縛する。<br>
無数の円と多角形で構築された紋様が高速回転する。<br>
逃げ惑う人々はその光り輝く法陣に呆気にとられ足を止める。<br>
ふと、どこからか誰とも知れぬ咆哮が木霊した。<br>
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それは雄雄しく、猛々しき、勇者の雄叫びだった<br>
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――――紅の黄昏より来たり!!!!<br>
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――――燃え立つ怒りを胸に秘め!!!<br>
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――――紅(あか)き空を疾走せよ!!!<br>
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―――汝、閃紅の鉄鋼(はがね)、ホーリエ!!!!!!!<br>
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空が、宵闇が、爆砕した<br>
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灼鋼<br>
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鋼鉄の巨人<br>
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黄金の鬣<br>
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近接滅壊術式<br>
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ファントムバベル<br>
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機巧励起ローゼンメイデン 第5話「機巧神ホーリエ」<br>
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―――――「これが、ローゼンメイデン・・・・・・・!」<br>
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EDテーマ「想い華」<br>
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泡沫の邂逅 過ごす刹那<br>
平穏な日常 二人の時包む<br>
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生まれた絆 鎖にそれは似て<br>
けどそれは 重荷じゃなくて<br>
抱いた想い ただ繋ぎたくて<br>
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終わらぬ出逢いただ続くように<br>
貴方といつまでもいられるように<br>
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時を超え、世界が許す限り<br>
現在(いま)を生きる二人<br>
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そんな儚い夢願い・・・・・夢見る<br>
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