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「『傍に居るから』」(2006/07/08 (土) 22:51:02) の最新版変更点
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<dd>「・・・何を、描いてるんだ?」<br>
「アッガイ」<br>
「・・・アッガイか」<br>
薔薇学園の高等部。そこの美術室でそんな会話があった。<br>
アッガイの絵を描いているのは薔薇水晶。いわゆる不思議系。<br>
そのアッガイの絵を見ているのはJUMである。一言で言えば絶倫超人。<br>
「これって良いのか? 今学期の美術の授業中に描く絵のテーマは確かに自由だけど」<br>
テーマは自由。そのせいか、そうそう普通の絵を描く人間は居ない。<br>
真紅は、ティーセット。水銀燈は、ヤクルト400。<br>
翠星石は、如雨露。蒼星石は、庭師の鋏。<br>
金糸雀は、玉子焼き(黄色一色)。雛苺は、うにゅ~(ゴッホ風味)。<br>
雪華綺晶は、花の絵。巴は、和室の絵。<br>
ベジータは、亀と書かれた服を着た謎の男。<br>
笹塚は、廊下に立たされて何も描けていない。<br>
JUMは既に描き終えている。その絵はまさしく芸術一級品で、大きな大会に出す事が決まっている。<br>
その絵のレベルは見ると何が起きたのか解らないぐらい感動し、大量の涙が溢れるという。<br>
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そんなJUMが<br>
「に、してもリアルだな・・・」<br>
と、舌を巻くぐらいの出来のアッガイの絵。<br>
薔薇水晶は、絵は得意ではない。が、アッガイが関係すると何故か絵の能力が飛躍するらしい。<br>
きーんこーんかーん・・・フォーッ!!<br>
薔薇学園の妙なチャイムが鳴った。授業終了である。<br>
「おーい、銀嬢」<br>
「なぁに、ベジータ」<br>
「銀嬢。次って何だ?」<br>
「数Bよ」<br>
「うわぁ、マジか・・・ま、良いや。ありがとうな」<br>
「どういたしましてぇ」<br>
それぞれが自由な会話を繰り広げながら教室に戻っていく。<br>
「・・・」<br>
そんな中、薔薇水晶一人が美術室の中から生徒達をじっと見ていた。<br>
「・・・薔薇水晶、どうした?」<br>
「あ、ううん。何でもない・・・」<br>
「?」<br>
JUMは案外、人を見る目だけはある。だからこそ、気付いていた。<br>
今日の薔薇水晶は、何か変だと。 <br>
<br>
<br>
学校。放課後の夕暮れ、逢魔が刻。<br>
忘れ物を取りに教室の扉を開けるJUM。<br>
黄昏に染まった、目に飛び込む赤いその光景に、一人の女子生徒が映える。<br>
それは、JUMの席に突っ伏していた。<br>
「・・・薔薇水晶、人の席に寝て何をしているんだ?」<br>
「あ・・・JUM君」<br>
ひょっこりと顔を上げる薔薇水晶。<br>
「なんか、眠いから寝てた」<br>
「自分の席で寝ろよ」<br>
「だって、ここの席の方が心地良いから・・・」<br>
「何処だって同じだろ?」<br>
「JUM君の温もりが心地良いの」<br>
「・・・何気なく恥ずかしいこと言うな、お前は」<br>
「今の本気だよ? 凄く、暖かくて優しい。だから、まどろみに溺れちゃう」<br>
楽しそうに、机に頬擦りしながら薔薇水晶は語る。<br>
それを聞くJUM。その顔には、優しそうな微笑が浮かんでいた。<br>
「じゃあ、その温もりの持ち主が抱きついてやろう」<br>
そう言いながら、近付く。<br>
「その前に抱きつくもん」<br>
と、薔薇水晶が突然立ち上がり、JUMに抱きつく。<br>
「暖かい・・・癖になりそう」<br>
「お前、猫みたいな性格だな」<br>
薔薇水晶は、満足そうな顔をしていた。その笑顔をJUMの胸に埋めたまま。<br>
<br>
しばらくして、ふとその肩が震え始める。<br>
その様子の変化にJUMが気付いた。ふと、すすり泣く声が聞こえる。<br>
「・・・薔薇水晶、どうした?」<br>
「ぐすっ・・・ごめんね。ちょっとだけ、こうさせて・・・」<br>
何も言わない時には、追求しない。<br>
顔をうずめて泣く薔薇水晶を、JUMはただ黙って泣き止むのを待った。<br>
<br>
しばらくして、泣き声は止んだ。<br>
夕暮れだった空に深い蒼が混じって、濃い青紫にその色を鮮やかに変化させる。<br>
地平線の向こうは、まだやや赤が見えるがそれも消えるだろう。<br>
「・・・JUM君。私はどうして私なのかな・・・?」<br>
顔をいまだJUMの胸に埋めたまま、呟くように問う。<br>
「薔薇水晶が薔薇水晶だから。理由なんてそれぐらいしか無いよ」<br>
問いに明確、かつ簡潔に答える。<br>
「嫌な理由だね・・・。あのね、私、自分が嫌いなの。<br>
みんな凄く良い個性ばかりなのに、私だけがどこかずれてる。<br>
アッガイ好きな事や自分の行動が変なのも気付いてる。でも、直せない。自分だから。<br>
このままじゃ、みんなに嫌われそうで・・・。<br>
どうしたら良いのかな? 私、みんなに嫌われたくないよ・・・独りは嫌だよ」<br>
再び、薔薇水晶は泣き始める。と、笑い声がした。その声はJUMのだ。<br>
薔薇水晶は顔を上げる。そこには、優しい笑顔をしたJUMの顔があった。<br>
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<br>
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「・・・馬鹿だなぁ。独りになるのが怖いとか、そんな心配は要らないんだよ」<br>
そう言って、薔薇水晶の頭を撫でる。<br>
子供をあやすように、まるで愛しい何かに触るかのように。<br>
「どうして・・・?」<br>
「みんなが、嫌っても僕だけは嫌わずに傍に居る。そうすれば独りじゃない。だから心配するな」<br>
「・・・本当に傍に居てくれる?」<br>
「もちろん」<br>
「でも・・・そんなの、言葉だけ・・・。信用できないよ・・・ゴメンね」<br>
「ん~・・・そうだな。どうしたら良いのか・・・」<br>
困ったように、苦々しく笑う。<br>
JUMは薔薇水晶の顔をまじまじと見つめる。<br>
そして、ふと思いついたら実行というように行動を起こした。<br>
「なら、これで」<br>
「・・・あ」<br>
自然と、二人の目蓋がそっと下りた。<br>
「・・・」<br>
「・・・」<br>
夕暮れに映える人影。その顔の部位だけが、重なった。<br>
「・・・これでも、駄目か?」<br>
薔薇水晶の目を見つめ、逸らさずに問う。<br>
「・・・ううん。信じてあげる」<br>
そう言って嬉しそうに、笑う。<br>
「あ、悪いな。許可も何も無しにキスしちゃって・・・」<br>
<br>
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「別に良いよ。でも・・・ファーストキス盗った責任だけは果たして欲しいな」<br>
「僕に出来る事ならどうぞ」<br>
沈黙。それは数秒。<br>
薔薇水晶の顔が赤く染まっている。そして、俯きながらぼそりと言う。<br>
「私と付き合って下さい・・・」<br>
JUMは笑う。<br>
「こちらこそ、よろしく」<br>
「ずっと、支えてね。死ぬまで、傍に居てね・・・」<br>
「良いよ。ずっと支えて、傍に居る」<br>
「こんな約束したら、別れられないね」<br>
「だって、別れないしな。だろ?」<br>
「うん。ずっと一緒に居たい。結婚しよう」<br>
「飛躍しすぎだ」<br>
薔薇水晶は明るく返事をする。目からまた涙を落とす。これは、嬉し涙だ。<br>
その顔は、とても綺麗だった。悲愴とは全く逆の泣き顔。いや、笑い顔。<br>
「じゃあ、帰ろうか」<br>
「うん!」<br>
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そして、この二人の物語の始まりこそが、後に「薔(かな奴)薇大戦」と呼ばれる、<br>
薔薇水晶ファン同盟、JUM君LOVE同盟のクラブ同盟派と<br>
JUM達、一般生徒の連合派の喧嘩、<br>
もとい薔薇学園最大の内乱になろうとは誰も知る由が無かった。<br>
続く・・・?<br></dd>
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