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「【赤い糸~魔法の指~】第2話」(2006/06/18 (日) 10:31:47) の最新版変更点
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【赤い糸~魔法の指~】<br>
第2話<br>
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真「…ジュ…ン?」<br>
私は彼から目が離すことが出来なかった。<br>
色褪せることない記憶の中の少年。彼とは別れもなく離れてから、10年以上もたっている。<br>
しかし、私が見間違えるはずがないメガネこそかけてはいるが、彼は間違いなくあの『ジュン』であった。<br>
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梅「え~、それではみんな桜田に何か質問がある人はいるか?」<br>
梅岡が何か言って、数人の生徒が彼に質問をしているようだが、<br>
私の耳にはまったくその内容は入ってはこなかった。<br>
真(…ジュンが帰ってきた……)<br>
私の心は、ただそれだけの言葉と理解不能な感情だけが渦まいていた。<br>
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蒼「――――
…外国から転校してきたのにずいぶん日本語がうまいね、ねえ真紅。…真紅?」<br>
真「っ!?なに、蒼星石?」<br>
隣の席の蒼星石が話しかけてきていることに気づかず、ついついオーバーに反応してしまった。<br>
蒼「なにって、どうしたのさ?ぼーっとして、具合でも悪いのかい?」<br>
真「いいえ、何でもないのだわ。それより何か用かしら?」<br>
蒼「聞いてなかったのか…いや彼は外国暮らしだったのに日本語が上手いんだねって」<br>
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蒼星石の疑問は正しかった。だが、彼の家族は全員日本人だったしなにより<br>
彼は、昔は日本で暮らしていたのだ。日本語が上手いのは当然だろう。<br>
しかし、私は素直にそのことを答えるのを何故か少し戸惑い適当にはぐらかした。<br>
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真「さあ、わからないわ。でも、名前も日本語姓だし何か日本にゆかりがあるんじゃないの?」<br>
蒼「なるほど、それもそうだね。」<br>
とっさに浮かんだことを喋ったが、蒼星石はたいした気にしたそぶりも見せずに納得してくれた。<br>
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それから、数回の質問を終わらせてどうやら彼の自己紹介は終わるらしい。<br>
梅「よし、桜田への質問はそこまでだ。続きは休み時間にでもやってくれ。<br>
それじゃあ、桜田。君の座る席なんだが、え~と窓側の一番後ろの席に座ってくれ。<br>
あの左目に眼帯をしている子の隣だ」<br>
ジ「わかりました」<br>
梅「薔薇水晶。隣の席のよしみで色々桜田を助けてあげてくれ、頼んだぞ」<br>
薔「…わかった」<br>
ジ「色々迷惑かけるかもしれないけど、よろしく」<br>
薔「うん、よろしく…」<br>
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ジュンの席は、薔薇水晶の隣に席が決まったようだ。<br>
少し残念な気もするが、これでいいのだろう。<br>
正直、今隣にでも来られたら私は彼と何を話せばいいのかまったくわからない。<br>
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それから簡単な連絡事項を伝え、授業が開始された。<br>
梅「それでは、授業を開始する教科書の40Pを開いて――――」<br>
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ジ「ごめん。教科書まだ届いてないから僕にも見せてくれないかな?」<br>
薔「ん、わかった。…机くっつけて」<br>
ジ「ありがとう」<br>
薔「なあに、いいってことよ」<br>
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どうやら、うまくいっているようだ。薔薇水晶は、大人しく少々変わった性格で勘違いされやすいが、、<br>
根は素直でとても優しい子だ。彼女が隣ならジュンも心配いらないだろう。<br>
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それよりも、ジュンが帰ってきた。本当に久しぶりだ。<br>
彼は私のことを覚えてくれているだろうか?なにぶん、昔のことなので忘れられているかもしれない。<br>
そうだとしたらそれは、少し悲しいことである。<br>
そうだ、水銀燈と巴は覚えているだろうか?<br>
彼が引っ越したという知らせは水銀燈から聞かされたし、彼女たちも彼とは昔一緒に遊んだこともある。<br>
そう思い水銀燈の方を見ると、私の視線に気づいたのか手をヒラヒラと振ってきた。<br>
まったく授業も聞かず、何を考えているのかしら…。<br>
巴は…さすがに集中している。同じ幼馴染でもこれだけ違うのだ、少しは水銀燈にも巴を見習ってほしいものである。<br>
まあ、覚えてるかは後で休み時間にでもそれとなく聞いてみればいいだろう。<br>
とりあえず今は授業中だ、そちらに集中しよう。<br>
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………………………<br>
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…………………<br>
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……………<br>
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…<br>
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…駄目だ全然集中できない。私はこんなに集中力が散漫だっただろうか?<br>
これでは、水銀燈のことを馬鹿には出来ないわね。<br>
そんなことを考えながらも私は幼い頃の記憶を掘り返していた。<br>
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あれはそう、ジュンと友達になって少し経ったぐらいの頃だったわ。<br>
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真『ジュン、今日からあなたは私の下僕になるのだわ』<br>
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ジ『しもべ?なんだそれ?』<br>
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真『下僕とは、私のそばに居てくれて私のことを守ってくれる人のことよ』<br>
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ジ『そうか、じゃあ僕がそれになれば真紅が一人で泣くことももうないよな。<br>
いいよ。僕真紅の下僕になってあげるよ』<br>
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真『本当!?ありがとうジュン!』<br>
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小さかった私は、ジュンが私のために下僕になってくれると聞いてとても喜んだものだ。<br>
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ふふっ、自然と笑みが浮かんでくる。<br>
当時の私は、彼の言葉でそれはそれは喜んだものだったわね。<br>
お家に帰ってお母様から『下僕』の正しい意味を聞いた時は、顔から火の出るような思いだったけれど。<br>
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(キーンコーンカーンコーン)<br>
梅「――――では、今日はここまで。予習復習もしっかりしておくように」<br>
そういい残し梅岡は教室から出て行った。<br>
どうやら、感慨にふけっている間に授業が終わったようだ。<br>
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翠「ふぅ~っ、や~っと終わったです。相変わらず梅岡の授業はつまらんですね」<br>
私の前の席の翠星石が、だらしなく何か言ってくるがまあいつものことなので放っておこう。<br>
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ふとジュンの席を覗いてみると、何人かのクラスメイト達が薔薇水晶と机を付けたままの彼の席を取り囲んでいた。<br>
彼は転校生しかも帰国子女なので、好奇心旺盛な人たちが集まっているんだろう。<br>
金糸雀と雛苺も輪に交じってジュンに話しかけているし、薔薇水晶の席の横には、姉の雪華綺晶も来ている。<br>
騒がしいので、色々質問されているのがこっちにも丸聞こえだ。<br>
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水「ん~真紅ぅ?そんなに転校生君のことじっと見つめてそんなに気になるのかしらぁ?」<br>
真「そ、そんなことないのだわ。ただ、外国から転校してくるなんて珍しいなと思っただけよ」<br>
急に後ろから話しかけてきた水銀燈に驚いて私はとっさにそんな返答をしてしまった。<br>
翠「そうですよね。翠星石は海外なんか行ったことないから興味津々ですぅ。<br>
しかし、海外生活してた割にはなんか貧弱そうな奴ですね」<br>
蒼「失礼なこと言わないの翠星石。それに、海外生活は関係ないでしょ」<br>
翠「何言ってるですか。海外といえば、毎日大量の肉を食べスカイダイビングを楽しみ、<br>
ホームコメディをしてるですよ。でかくなるに決まってるですぅ!」<br>
真「どこの不思議の国のことよ、そんな愉快な生活を送っている国は?」<br>
そんな国が存在するのなら一度見てみたいものである。<br>
水「まあ、このおばかさんは置いとくにしても珍しいのは確かよねぇ」<br>
巴「そうだね。私も海外旅行とかしたことないから少し気になるかな。<br>
どうやらみんな集まってきたようだ。丁度いい水銀燈と巴に確かめてみよう。<br>
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真「ねえ水銀燈、巴。彼とどこかで会ったような気がしないかしら?」<br>
水「はぁ?なに言ってるのぉ真紅。彼とは今日初対面でしょ、ねえ巴?」<br>
巴「うーん、私も知らないかな。真紅は彼とは知り合いなの?」<br>
巴が何気なく質問してくる。しかし、私はまた何故かはぐらかしてしまった。<br>
真「…いいえ、どうだったかしら。知り合いと少し似てた気がするから<br>
多分私の勘違いなのだわ」<br>
巴「そう?」<br>
私は何を言っているのだろう?<br>
何故、『彼は私たちの幼馴染のジュンよ。2人とも覚えてないの?』と言えなかったのだろうか。<br>
その後、私はしばらく呆然としていた。<br>
そうして、休み時間はあっという間に終わり、次の授業が開始された。<br>
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先「――――――――、―――――――――。」<br>
先生が何か話しているようだが、私の耳にはまったく入ってこない。<br>
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真(何故、2人ともジュンを覚えていないの?私たちはあんなに仲が良かったのに…)<br>
水銀燈と巴はジュンのことを忘れていた。私はその事実に対して予想以上のショックを受けていた。<br>
先ほどからあったジュンと出会えたことに対する不思議な高揚感は、もうすっかりなくなっていた。<br>
私はさっきも思っていたじゃないか、『昔のことなので忘れているかもしれない』と。<br>
しかし、いざ蓋を開いてみればどうだ。その事態に陥ったと思ったら、私は多大なショックを受けている。<br>
真(何故?何故私はこんなにショックを受けているの?何がそんなに私を追い詰めるの?)<br>
いや、本当はそんなことわかっている。私は認めたくないだけなのだ。<br>
私とジュンの思い出を否定されてしまうことを…、彼と遊んだあの日々を否定されることを…。<br>
本当は私一人の勘違いで、『ジュン』なんていう幼馴染の男の子はいなかったのではないか?<br>
そんな馬鹿なことまで考えてしまう。<br>
ありえない。だいたい、私の部屋には彼が直してくれたくんくんの人形も、まだ残っているじゃないか。<br>
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でも、私が本当に恐れていることは…<br>
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『彼も私のことを忘れているかもしれない』<br>
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そのことだけである。<br>
私はただその恐怖と不安を振り払うように、ただじっと俯いていることしか出来なかった。<br>
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