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【赤い糸~魔法の指~】<br>
Prologue<br>
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手巻きの懐中時計は巻いてくれるものがいない限り止まったままだ<br>
だが、決して壊れてしまったわけではない<br>
ただ眠っているだけである。自身を目指せさせるものを待ちながら<br>
永い永い時を重ねながら……<br>
さあ、止まっていた時間を動かそう<br>
今度は止まってしまわぬように……<br>
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(ワァー ワイワイ キャハハハッ)<br>
ある街の公園の昼下がり、そこでは子どもの遊び声や散歩中の犬の泣き声、<br>
小鳥のさえずり、木々のざわめきと様々な音が奏であっている。<br>
その公園で数人の幼い少年とその中心で涙を浮かべている一人の少女がいた。<br>
その少女は長く美しい金髪を左右で二つに結ってツインテールにし、肌は汚れ一つなく白く、<br>
とても蒼く澄み切った水晶のような瞳を持っていた。<br>
少女は今うっすらと瞳に涙を浮かべながら、胸に抱いたぬいぐるみをギュッと抱きしめていた。<br>
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「おい、また公園に来たのかよお前!」<br>
「もう二度と来るなって言っただろ!」<br>
「外人のくせにいつまでもいるんじゃねえよ。さっさと外国に帰っちゃえよ」<br>
少年たちは、少女を取り囲み口々に悪口や非難を投げつけていた。<br>
うつむいていた少女は気丈にも少年たちをにらみ返し口を開いた。<br>
「うるさいわねっ!公園はみんなのものでしょう。あなたたちにそんなことを<br>
言われる筋合いはないのだわ。それに私は外人ではないわ。お父様は確かに<br>
外国人だけど、私のお母様はれっきとした日本人よ!」<br>
少女の言葉に少年たちは言葉をつまらせた。しかし、それも一瞬のことで<br>
またすぐに、怒りの矛先を少女に向けた。<br>
「生意気言うな!気味悪い目しやがって気持ち悪いんだよ!」<br>
「そうだ、そうだ!大体友達も居ないくせに公園でなにするんだよ?」<br>
「その通りだな。まあいい、帰らないって言うならこうしてやる!」<br>
そして、少年の中の一人が少女の抱いていた人形を取り上げた。<br>
「あっ、くんくん!?何するのくんくんをくんくんを返してちょうだい!!」<br>
少女は懸命に手を伸ばし人形を取り返そうとするが、<br>
少年たちの方が体も大きく、力も強くとりかえすことができない<br>
「なんだ、そんなにこの人形が大事なのかよ」<br>
「はははっ。じゃあさ、壊しちゃおうぜ」<br>
その言葉に少女は取り乱し、声の限りに叫んだ。<br>
「やめてちょうだいっ!!くんくんは、お父様が私の誕生日に送ってくれた私の大事なーーーー……」<br>
しかし、少女のそんな言葉もむなしく、人形は少年らによって壊されてしまった<br>
「あ…あ、ひどい…。くんくん…どうしてこんな…ウッ…グスッ…ヒック…ウワ~ン」<br>
なんで自分はこんなひどいことをされているの?私は何も悪くないのに。<br>
あまりの悲しみに、とうとう少女は泣き出してしまいました。<br>
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ーーーーその時、公園の入り口から一人の少年と一人の少女が叫んだ。<br>
「どうしたんだ真紅っ!大丈夫か!?」<br>
「あんたたち~、よくもまた真紅をいじめてくれたわねぇ~!」<br>
「げっ!?ジュンと水銀燈だ、やべっ逃げろぉー!」<br>
うわーっと少年たちは叫び声を上げながら逃げていった。<br>
「待ちなさぁい!今日は逃がさないわよー!!」<br>
水銀燈と呼ばれた少女は少年たちを追って公園から出て行ってしまった。<br>
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「真紅っ!大丈夫かあいつらに何されたんだ?」<br>
ジュンは泣いている真紅の側にいきその姿をのぞいた<br>
「ヒック…グスッ……ジュ…ン」<br>
泣いている真紅の腕の中には頭が千切れかけ、右腕が完全に取れたくんくんがあった。<br>
「くそっ!あいつらにやられたのか。ひどいな…」<br>
「ウゥッ、お父様が下さった大事なお人形だったのにジャンクになってしまったのだわ………」<br>
「真紅……」<br>
いつまでも泣いている真紅を見て、ジュンは立ち上がって駆けていった。<br>
「真紅!待ってろ、すぐに帰ってくるから!」<br>
「グスッ…ジュ…ン?」<br>
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そして、ジュンはその手に裁縫箱を持ってすぐに帰ってきた。<br>
「貸して真紅。こうして直してあげればいいんだよ」<br>
真紅からくんくんを受け取りジュンは慣れないことに悪戦苦闘しながらも<br>
ちくちく、ちくちくと直していった。<br>
「これで終わり…よしっ。ほら直ったぞ真紅!」<br>
彼の直した人形はちぐはぐだらけで正直素晴らしい出来前ではなかったが、<br>
私は泣き止み、素直に喜んだ。お父様にもらった大事なプレゼントが、くんくんが直ったのだと。<br>
そして私は心からの笑顔で彼にお礼を言った。<br>
「ありがとう!ジュン。」<br>
彼は私の言葉にそっぽ向き手を組みながら照れていた。<br>
「べ、別にたいしたことじゃないよ真紅が泣いてたから。<br>
そうだ、もしあいつらにまたやられたら持ってこいよ何回だって直してやるから」<br>
「ええ、ありがとう。あなたのその指はきっと指は魔法の指だわ。<br>
今に、上等なドレスだってつくれるわ」<br>
「お、大袈裟だな。そんなこと僕には出来ないよ」<br>
「出来るわ。だってあなたは、くんくんを生き返らせてくれたのだもの。<br>
ねぇ、いつか私のためにとっておきのドレスを作ってちょうだい?」<br>
「う~んーーーー」<br>
「……ダメなの?」<br>
「もう、わかったよ作るよ。でも、あんまり期待するなよ」<br>
「本当!?約束よジュン。楽しみにしてるのだわ」<br>
そう言って、私は彼の持ってきた裁縫箱から赤い糸を取り出した。<br>
『赤』私の一番好きな色。<br>
「こうやってお互いの指を繋ぎあって誓いましょう。二人が離れていてもいずれ再会して<br>
約束をはたせるように。私たちは赤い糸で繋がってるのだわ」<br>
お互いの小指に赤い糸をかけ合って二人は指きりをした。<br>
いつまでも離れないようにーーーーー<br>
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「……ん、朝。夢だったのね…」<br>
カーテンの隙間から差す陽光。もうすっかり朝になっていたらしい。<br>
「それにしてもあの頃の夢を見るのも久しぶりなのだわ」<br>
10年以上昔、幼馴染の少年と交わした拙い約束。<br>
結局、あの後ジュンはすぐに親の都合で海外へと引っ越してしまった。<br>
家同士の交流もなかったのであれからぷっつり連絡が途切れてしまい、<br>
水銀燈からその話を聞いた時は、ずっと泣き暮れていたものだ。<br>
「ふふっ、それにしても赤い糸か」<br>
あの時は、赤い糸にあんな意味があるなんて知らなかったわ。でも、ジュンは<br>
顔を真っ赤にしていたけれど、彼はそれの意味することを知っていたのだろう。<br>
しかし、私は意味を知らなくてもよかった。その思いは赤い糸と同じだったのだから。<br>
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「真紅ちゃ~ん。早く起きなさ~い学校遅れちゃうわよ」<br>
「わかったのだわ。お母様」<br>
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さあ、夢の時間はおしまいだ。今日も一日を始めようーーーー<br>