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「~文化祭§優しいぬくもり~」(2006/06/10 (土) 08:04:07) の最新版変更点
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~文化祭§優しいぬくもり~<br>
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『君だったんだね。シンデレラ、僕の愛しい人――』<br>
王子は優しくシンデレラの手を握る。<br>
『はい、私がシンデレラです。私も王子様を…あ、愛してるですぅ』<br>
――や、役とはいえ緊張するですぅ。蒼星石に愛の告白なんて…。<br>
「うーん、何か今イチね…」<br>
と、呟いたのはのりだった。<br>
「何か、愛が伝わって来ないわ…そうだわ!蒼星石ちゃん、翠星石ちゃんの手の甲にチュウしてみたら?」<br>
「チュ、チュウですぅぅぅ!?」<br>
手を一つ鳴らして提案したのりに驚きを隠せない翠星石。<br>
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「二人とも、ダメ?」<br>
――そんなの恥ずかしくてできないですぅ…。でもこれはある意味、役得です?<br>
「そ、蒼星石が良いって言うなら翠星石は構わねぇです」<br>
「僕も別に構わないよ」<br>
蒼星石は笑顔でそう言った。<br>
「じゃあ、もう一回やってみてぇ?」<br>
『君だったんだね。シンデレラ、僕の愛しい人…』<br>
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チュッ<br>
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そのキスは小さいものだったけれど、たしかに触れたやわらかい唇。<br>
『はい、…私がシンデレラで、すぅ。私も王子…様をあ、愛してるですぅ』<br>
これ以上、加速できない心臓の音が鼓膜を刺激する。<br>
「どうしたの?翠星石ちゃん、顔真っ赤だよ?」<br>
「な、何でもないですぅ!暑いだけですぅ!顔、冷やしてくるですぅぅぅぅぅぅぅぅ!」<br>
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図星を突かれ、思わず翠星石はそう言いながらとトイレへ逃げた。<br>
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――はぁ、こんなんじゃ、先が思いやられるです。<br>
まだやっていなかったが、この後は抱擁シーンもあるのだ。<br>
翠星石はトイレの個室に引き籠もっていた。<br>
――翠星石が意識しすぎなだけですぅ?<br>
確かに、同性でしかも双子の姉妹。<br>
誰よりも近くて誰よりも遠い存在。意識しろと言う方が無理というもの。<br>
――何をぐちぐちしてるですか!こんなの翠星石らしくないです!<br>
自分の両頬をペチリと叩いて、気合いを入れると立ち上がった。<br>
「翠星石?いる?」<br>
「…!」<br>
いきなり聞こえた蒼星石の声に翠星石は驚いて声が出なかった。<br>
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「翠星石、いるんでしょ?」<br>
何と言っていいか分からず、翠星石は黙ったまま。<br>
――どうするですぅ…?<br>
何となく気まずくて出ていけない。<br>
「さっきはごめんね」<br>
「えっ!?」<br>
予感していなかった言葉に思わず翠星石は声をあげた。<br>
「キス、そんなに嫌がると思ってなかったんだ…」<br>
――別に嫌なわけじゃないです!<br>
と、言おうとして声が出ない。<br>
「のりさんに言ってキスはなくしてもらうよ…」<br>
「ま、待つですっ!」<br>
バタン、と勢い良くドアを開け、蒼星石を制止しようと思ったら、勢い余って体勢を崩した。<br>
「…っと、大丈夫?」<br>
ふわ、と蒼星石に受けとめられてしまい、抱き合った形になってしまった。<br>
「す、翠星石は!蒼星石にチ、チュウされたのが嫌だったわけじゃねぇです!」<br>
――顔を見なければこのくらいの事言えるです!<br>
「…じゃあ、何で?」<br>
背中に回された腕の力が少し強くなったことに疑問を持ちながらも翠星石は答えた。<br>
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「そ、それは…恥ずかしかったからです…」<br>
良い言い訳が思いつかず真実を話す。<br>
「そっか、じゃあ僕の事、嫌ってる訳じゃないんだよね?」<br>
「あ、当たり前ですぅ。翠星石が蒼星石の事嫌う訳ねぇです!」<br>
「ありがと、翠星石」<br>
と、蒼星石は呟いた。<br>
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「翠星石、蒼星石、今日家にきてくれるかしら?」<br>
練習後、みっちゃんが二人に声をかける。<br>
「何で、です?」<br>
「衣裳の型ができたの。もちろん、まだ装飾はするけど。試着しにきてくれない?」<br>
「わかったよ。このまま、行っていいのかな?」<br>
「えぇ、一緒に帰りましょ」<br>
みっちゃんはそう、笑顔で伝えた。<br>
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「よし、大丈夫みたいね」<br>
みっちゃんは衣裳を試着した二人を見て満足そうに頷いた。<br>
「これが、本番の衣裳なのです?」<br>
「あら、どうして?」<br>
不思議そうに問う翠星石にみっちゃんは聞き返した。<br>
「なんか、この衣裳、物足りないです」<br>
翠星石が着ているのは裾が広がった真っ白のドレス。<br>
確かに、複数の布が折り重なっている分ボリュームもあり、なかなか凄いのだが、簡易的すぎる気もした。<br>
蒼星石の着ている衣裳も蒼の上着に薄いクリーム色のズボン。<br>
二着とも、よくできているのだが、何となく味気ない。<br>
「あら、言ったでしょ?型、って。装飾はこれから時間をかけてたっぷりやるわ」<br>
たっぷり、を強調して言った口調から、本当に時間をかけてやることが想像できた。<br>
「後、翠星石はそのままもう一回サイズを測らせてくれる?」<br>
「脱がなくていいですか?」<br>
「変身する時用にドレスの上にボロ服を着るからちょっと苦しいけど我慢してね」<br>
そう、言いながらみっちゃんはメジャーで翠星石のサイズを測っている。<br>
「よし、ありがと。また仕掛けは説明するわね…さて、…」<br>
みっちゃんはじりじりと二人に近づくといきなり強い力で抱き締めた。<br>
「二人とも可愛いぃぃぃぃいいいい!!」<br>
「きゃあぁぁぁぁぁぁあああ!摩擦熱、摩擦熱!まさちゅーせっつですぅぅぅぅ!」<br>
文化祭まで、後一ヵ月<br>