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紫の追求
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「まだ、部室に誰かいるかしら?」
紫は夕暮れの渡り廊下を通り、新聞部の部室に向かっていた。
当初は、先生の手伝いがあり今日は部室には行けないとみんなに
言っていたのだが、予定より仕事が早く終わったため、部室に顔を
出してから帰ろうと思ったのだ。
新聞部の部室の前にくると、何か不穏な雰囲気がする。まさか、
はぐれ妖か?空手部か?紫は恐る恐るドアを空けた。
がらがらがら、、
「どうもです~。まだ、誰かいますかぁ?」
すると、そこには月音と萌香が並んでこちらを向いて立っていた。
二人とも妙な笑顔を振りまいている。
「や、やあ。紫ちゃん?どうしたの?今日はこれないんじゃなかったっけ?」
月音がほほをぴくぴくさせながら上ずった声で聞いてきた。
「はい。思ったより仕事が速く終わったので、ちょっと寄ってみたんです。
月音さんと萌香さんは何をしていたんですか?」
「えっつ?何って、ねぇ、月音」
「あ、ああ。そ、そうそう。来週の原稿を書き始めていたところなんだ。」
「う、うん。そうそう」
萌香さんも笑顔を振る巻いているが何かぎこちない。
「じーー、、なんか、二人怪しいですね。」
「え、な、なんで?」
月音の額は汗びっしょりだった。
「なんか、この部屋、臭くないですか?」
「そ、そうかなぁ?今日は気温も高いし、湿度もあるからかな?」
そういいながら、萌香は部室の窓を開け、換気を始めた。
紫は月音に近づき、くんくん身体の匂いをかぎ始めた。
「うっ!月音さんの手なんか臭いですよ?」
「え?あ、ああ、さっき新聞のレイアウトを研究していて、記事の
紙片に糊をつけて、貼り付けたりはずしたりしてたからかな?
あの、糊ってくさいんだよねー。はははは」
「あやしい、、」
紫は今度は萌香をじっと見つめた。
「萌香さん、なんかお肌がつやつやしてますね?何かいいことありました?」
「え?!あ、ああ。さっきちょっと月音に血を吸わせてもらったので、、」
紫は再び月音の方に向き、月音の首の周りをしげしげ観察した。
「おかしいですねぇ、月音さんの首には血を吸われた跡はないようですが、、」
「あ、あ。萌香さんに吸われても、しばらくしたら後は消えちゃうんだよ。」
「ふーん。でもそんなすぐに消えましたっけ?あやしいなぁ、」
「な、何を言ってるんだよ?なんかあやしいことあるかい?」
紫は二人がしていたことをかなり確信していたが、なかなか決定的な証拠を
見つけられず、歯がゆい思いをしていた。
その時、猫目先生が部室に入ってきた。
「あーら。みんなまだいたの?そろそろ下校しなさーい。」
「あら?萌香さん懐かしいモノ履いているわね。そのルーズソックスって
先生が高校生の頃にはやってたのよー。でも、何で片足だけ履いているの?」
みんなの目線が萌香さんの左足首に集まった。そこにはだぶだぶでフリルが
付いた布状のものが付いていたが、それはルーズソックスなどではなく、
片足だけぬいだ萌香の、、、、
「き、きゃーーーーー!はずかしぃいーーーー!」
萌香さんは顔を真っ赤にしたまま、そのまま部室を飛び出していった。
「も、萌香さんっ!」
萌香を呼びかけた月音の口元から、ピンクの縮れ毛がはみ出しているのを
紫は見逃さなかった。
(END)