風の王国 > 嵐の夜 上

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風の王国嵐の夜 上 (1) (コバルト文庫 も 2-31)
毛利 志生子
集英社 2008-04-01
評価

by G-Tools , 2008/04/02



購入日:08/04/01
読了日:08/04/02

下巻が出てから読もうと思っていたのに、続きが気になって気になって、冒頭を読んだが最後読まずにはいられなかった。
盛大にネタバレしているので、隠しておきます。

+ ...
前巻での引きに、史実の通りにいくのか、それとも史実よりも虚構路線、リジムと翠蘭のラブ&トラブル吐蕃巡り旅をつづけるのか、非常に気になっていました。
…… 冒頭を読んで、打ちのめされました。この作者はリアリティのある虚構をつくりあげるのも巧いが、曲げられない史実を無視することはできないひとじゃないかと思っていたので、ああ、やはりそう来たか。と、でも、ショックでした。翠蘭に共鳴しちゃって、涙がとまりませんでした。これを書いている今も涙が。
それでも、リジムを殺すなんて、ひどい~!! とは思いません。翠蘭がリジムの死を受け容れられないシーンはとても胸に迫ってきて、人はいつか死ぬという厳然とした事実を目の当たりにした自分の経験と重ねていました。
毛利志生子という作家の凄さを思い知らされました。凄いよ! 少女小説でここまで書くなんて。
心配なのは、メインの読者層である十代にどう受けとめられるかです。リジムの出てこない『風の王国』なんかもう読まない! なんてことにならないか。作者も後書きで不吉なジンクスについて書いてあったし。
はっきりいって、リジムが死んだことで、この物語に凄味が加わり、息つく暇もないほど面白くなってます。翠蘭が底無しの悲しみの沼に沈み込まずに、リジムの思い出を星のように灯して、見守ってくれる友の存在に支えられ、大切な人たちを守ろうと過酷な運命に立ち向かうその胸うつ生き方を私は最後まで見届けたい。
どうか最後までこの物語を読めますように。

更新日:2008-04-03

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コバルト文庫
最終更新:2008年04月03日 11:34