BADEND;

リヨside

目の前には床で蹲る茨さん。
乱れた髪に汚れた服。
それからチラリと見える赤黒く変色した肌色。

暁「灰塚さん…ごめんなさい…」
リ「―っ…!」

ここまでされておいて、尚も彼女は薄い笑みを浮かべて私に謝る。
逃げれば良いのに、どんなことをされるか分かっているのだから。
それなのに彼女は何事もないかのように私のもとへと足を運んでくる。
毎日のように。
それが余計に私の苛立ちを煽った。
お前の本性なんてとっくの昔に知っているのだから、早く化けの皮を剥がしてしまえば良いのに。

箒を持った手に力を込めた。
仰け反る彼女の身体。

そもそも成績だって、私の方が優っているはずだ。
なのに何故、私が茨さんに対して劣等感を抱かなくてはいけないのか。
学級委員長だって本来私がなるはずだったのに……
そうすれば、父にだって、母にだって………堂々としていられたのに…!
どうして私がこんなに惨めな思いをしなくてはいけないのか。

ふと、茨さんと姉さんの姿が重なった

そうだ、すべてコイツの所為なんだ。
私が悪いわけじゃない。
全部、全部…………

リ「あなたが…、悪いんです………」

手により一層力を込めた。



主人公side

あの日のこと、確かにこの目で見たことなのに、未だに信じられない。
それどころか、あの出来事は夢で、そして俺自身まだその夢の中から覚めていないような、不思議な、そしてひどく不安定な感じだ。

だから、あの日のことは忘れることにした。
何も見てない。
俺は見なかったんだ。

……………これは、責任逃れなのかも知れない。
リヨさんがあんなことをしているのは、俺の所為かもしれない。
そんな考えが心のどこかにある。
だから、それを考えないように。
罪悪感が生まれないように。

夕日が沈みきってすっかり暗くなってしまった空。
校庭から教室を見上げれば、その中にも闇が広がっている。
その中で何が起こっているなんて、見ていない。
俺は、知らない―……………



リヨside

何度も何度も腕を振り下ろす。

こいつの存在が、私の弱さを曝け出す。
いらない。
こんな存在いらないんだ。

小さい頃から…ううん、生まれた時から、ずっと。
こいつがいたから私は………!
いつもいつも良いところばっかり持って行って……そのくせ自分自身は何の苦労もしてないくせに!
その所為で私がどれだけ苦労したと思っている?
嫌な思いをしたと思っている?
分かってたまるか……分かってたまるか!!

リ「おまえさえっ…いなければ…っ!」

こいつの存在を認めるわけにはいかない。
認めれば認めただけ私が惨めになるのだから。
箒が折れそうになるほどに、ただひたすら力を込める。
振り下ろす。
何度も。
何度も。
何度も。
何度も。

リ「っはぁ…っはぁ…っはぁ………」

気がつくころには、それはもう動かなくなっていた。
顔からはあの薄い笑みすらも消えている。

リ「……………」

それどころか醜く腫れ上がり変形していた。

リ「………っふ…」

それとは対照的に、私の心は妙にすっきりと晴れ晴れしている。
自然と笑みがこぼれた。

リ「っふ…ふふふっ…ははっ、あはははははははは!」

そうか、分かった。
もう良いんだ、これで終わりにして。

リ「そうか………そう、だったんですね…ふふっ、あはははははははは!………はぁ…」


リ「…………………さようなら」

両手に全身全霊の力を込めた。

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最終更新:2008年09月10日 07:57