BADEND,

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いつからだろうか、彼女のことを放っておけなくなったのは。 いや、彼女は初めて会ったときから何をしでかすのか分からなかったし、すでに放っておけなかったのかもしれないが、それでも今みたいに危なっかしいとか、心配だからなんて理由ではなかったはずだ。 いつも強気で、我侭で、変なとこ純情で、強い意志を持った彼女が、こんなに繊細で今にも壊れそうになったのはいつからだろうか。 そんなことを思いながら彼女の華奢な肩を抱きしめた。 今日も今日で彼女の両親は外出していないらしく、俺が呼び出された。 そう言ったことは特に珍しいことではない。 別に迷惑などもしていないし、好きな子に頼ってもらえるのは俺としても素直に嬉しい。 小「あったかい…」 腕の中で彼女はぽつりと呟いた。 寒さの厳しいこの季節、何の暖房器具もつけていないこの部屋はしんと冷え切っている。 もちろん暖房器具がないと言うわけではないのだが、それでもつけずにいるのは、その方がお互いの存在を感じることが出来るからだ。 時間がゆったりと流れる。 小「ねえ、」 主「ん?」 小「どっか行こ」 彼女の我侭はいつも唐突だ。 それももう慣れたけど。 主「どこに?」 小「…とりあえず散歩とかさ」 主「うん」 小「あ、でも寒いわよね」 主「ああ、ここ以上にな」 ただでさえ室内にいても寒いと言うのに、外に出ればこれ以上の寒さを耐えなければいけないだろう。 小「んー…それじゃあねー…」 主「いや、この季節何処に行っても寒いのは変わらないと思うけど」 小「あ、海行きたい」 人の話を聞かないのは相変わらず。 主「寒いの嫌なんだろ?」 小「別に嫌なんて一度も言ってないわよ」 主「めんどい」 小「行―きーたーいー!」 主「じゃあまた今度な」 小「いーまー!」 主「……………」 小「今行きたいの!」 主「夜だし」 小「関係ないわよ」 主「はあ…」 言い出したら聞かないのも相変わらずだ。 主「…支度するか」 小「うん!」 その一言に満面の笑みを浮かべた彼女を心の底から可愛いと思った。 ----- 『電車とホームの間は、広く開いております。足元にご注意ください』 アナウンスを聞きながら車内に乗り込んだ。 主「人、少ないな」 小「そうね」 先ほどホームで見た向かい側の電車は満員だったのに、この電車はそれの半分も人が乗っていない。 酔いつぶれたサラリーマン、居眠りをしているOL、シャカシャカと軽く音漏れのするヘッドホンで音楽を聴いている学生、何処かのキャバクラの匂いのする女。 それぞれが他人との間合いを保ちながら座席に座っていた。 主「座るか」 小「ん」 俺たちもそれに習い、他人から軽く距離を開け、二人並んで座る。 主「これで終電だけどさ、」 小「うん」 主「帰りどうすんの?」 小「知らない」 そっけない返事をして、彼女は頭を俺の肩へと預けた。 帰りはタクシーでも捕まえるか…少し出費がいたけど。 そんなことを考えつつ、ガタガタと揺れる車内から、窓の景色を眺めていた。 空でも地上でも遠くにキラキラと光る点が疎らに置かれているだけで、何処からが空で何処からが地上なのか見当もつかないような景色だった。 ----- 海に行くには何処の降りるかなんて調べてこなかったから、窓から海が見えたところで適当に降りた。 結果、どこかの堤防へと辿り着くことができた。 引き潮なのか、それとも初めからこうなのか、やけに水面との距離がある。 きっと下から見れば、この堤防は化け物のように大きく聳え立っているのだろう。 小「海―!」 念願の海を見てか、はしゃぐ小兎。 下では黒い波が静かに蠢いている。 主「そんなに楽しいか?」 小「んー…」 曖昧な返事をして、数歩先を歩いていた彼女が俺の隣へと戻ってきた。 主「人いないな」 小「夜だからね」 主「暗いし」 小「夜だからね」 主「…満足したか?」 小「んー…」 またしても曖昧な返事。 そのまましばし無言で海を眺める。 海の黒と空の黒が溶け合い、見えるはずの地平線が見えない。 時折遠くのほうで光るのは何処かの漁船なのか、それとも星なのか。 主「…有栖川、何がしたかったんだ?」 小「なんだろ」 主「なんだよ」 小「さあ?」 主「最近お前可笑しいよ…」 小「そう?」 そうだ、最近の彼女はどことなく可笑しい。 どこか皮肉めいていて、不安定と言うか、彼女らしいんだけど彼女らしくない。 小「ねえ、」 主「何?」 小「あたしが、もしも死んだら、どうなると思う?」 主「え?」 突然、何を言い出すのか。 死んだらどうなる? そんなことを聞いてどうするのか。 小「多分ね、何も変わらないわよ。一時的に変えられたとしても、それは本当に変わったわけではないから」 主「何が…」 小「あたしが死んで、仮に○○が悲しがって、心を痛めたとしても、それは時間と共に風化して、また何もなかったように過ごしていくんだから」 主「なんでそんなこと突然…」 小「突然でもなんでもないわよ。ただ前からずっと思ってたことだもの」 小「ねえ、もしもあたしを殺してって言ったら殺してくれる?」 その言葉に一瞬全てが止まった気がした。 有栖川が放つ言葉の意味が分からない。 考えられない。 主「……………」 小「無言は肯定?それとも否定?…まあ、別にどっちでもいいんだけどね」 そのまま言葉を続ける。 小「本当はね、ずっと○○と一緒にいたかったんだけどね。でも、でもね…、ッ!?」 考えるよりも先に身体が反応した。 気がついたら有栖川を両手で思い切り抱きしめていた。 自分自身、少し驚いているのだが、有栖川はそれ以上に驚いた様子で目を見開いている。 小「○○…?」 主「なあ、」 小「?」 主「死ぬとか言うなよ」 こう言うとき、何をどう言ったらいいのかなんて分からない。 そういうマニュアルがあるわけでもなし、正解なんてきっと存在しない。 ただ自分が少しでも思ったことを、ぽつり、ぽつりと口にする。 主「なあ、」 小「……………」 主「嫌だよ、」 小「○○…」 静かに波の音が聞こえてくる。 暗いながらも表面がキラキラと妖しく光って、まるで有栖川をとられそうな気がしたから、より一層腕に力を込めた。 小「ねえ…」 主「有栖川…」 小「殺してよ」 主「有栖川…!」 再び聞こえてきたその言葉に、ばっと身体を離す。 それでも肩は掴んだまま。 恐る恐る、それでもはっきりと見つめた有栖川はいつもと変わらない表情で、殺して、と懇願してくる。 主「だから、なんで…っ」 小「ごめん」 主「謝るくらいなら、」 小「殺して」 主「お前、」 小「いらないなら捨ててよ」 その言葉に方にかけた手から力が抜ける。 月明かりのない暗闇で、こんなに近くにいるのに彼女の表情が分からない。 何も伝わってこない。 主「いらないはずないだろ!?」 小「でも、そのうちいらなくなる。今のあたしにはあんたしかいないけど、あんたには沢山いるじゃない」 主「そんなこと…!」 小「○○は分かってないだけだわ」 主「なあ、」 小「それでもね…○○があたし殺したらさ、罪悪感とか、そういう汚いものが残るの、ずっと、永遠に」 主「………」 小「それと一緒にあたしの存在も○○の中に残るの、ずっと、忘れないのよ」 主「だから、違う…、なあ、………」 言葉が上手く出てこない。 思うこと、伝えることが沢山あるのに、沢山ありすぎて出てこない。 一瞬吐き出すことをやめて吸い込んだ空気は、塩っぽくてやけに冷たかった。 小「ごめん」 主「だから、」 小「ばいばい」 主「え、…有栖川ッ!?」 数歩下がった彼女は、綺麗な半円を描きながら重力にしたがって落ちていく。 ドプンッ 下の方でやけに大きな波の音が、一際目立って響いた。
小兎side あたしは気付いてしまった。 自分自身の汚いもの。 あたし、○○に対して酷いことしてる。 誰かの代わりになんて…そんなこと……… 本当に馬鹿だあたしは。 こんなの、どうにかしなきゃいけないんだ。 --------- 主人公side いつからだろうか、彼女のことを放っておけなくなったのは。 いや、彼女は初めて会ったときから何をしでかすのか分からなかったし、すでに放っておけなかったのかもしれないが、それでも今みたいに危なっかしいとか、心配だからなんて理由ではなかったはずだ。 いつも強気で、我侭で、変なとこ純情で、強い意志を持った彼女が、こんなに繊細で今にも壊れそうになったのはいつからだろうか。 そんなことを思いながら彼女の華奢な肩を抱きしめた。 今日も今日で彼女の両親は外出していないらしく、俺が呼び出された。 そう言ったことは特に珍しいことではない。 別に迷惑などもしていないし、好きな子に頼ってもらえるのは俺としても素直に嬉しい。 小「あったかい…」 腕の中で彼女はぽつりと呟いた。 寒さの厳しいこの季節、何の暖房器具もつけていないこの部屋はしんと冷え切っている。 もちろん暖房器具がないと言うわけではないのだが、それでもつけずにいるのは、その方がお互いの存在を感じることが出来るからだ。 時間がゆったりと流れる。 小「ねえ、」 主「ん?」 小「どっか行こ」 彼女の我侭はいつも唐突だ。 それももう慣れたけど。 主「どこに?」 小「…とりあえず散歩とかさ」 主「うん」 小「あ、でも寒いわよね」 主「ああ、ここ以上にな」 ただでさえ室内にいても寒いと言うのに、外に出ればこれ以上の寒さを耐えなければいけないだろう。 小「んー…それじゃあねー…」 主「いや、この季節何処に行っても寒いのは変わらないと思うけど」 小「あ、海行きたい」 人の話を聞かないのは相変わらず。 主「寒いの嫌なんだろ?」 小「別に嫌なんて一度も言ってないわよ」 主「めんどい」 小「行―きーたーいー!」 主「じゃあまた今度な」 小「いーまー!」 主「……………」 小「今行きたいの!」 主「夜だし」 小「関係ないわよ」 主「はあ…」 言い出したら聞かないのも相変わらずだ。 主「…支度するか」 小「うん!」 その一言に満面の笑みを浮かべた彼女を心の底から可愛いと思った。 ----- 『電車とホームの間は、広く開いております。足元にご注意ください』 アナウンスを聞きながら車内に乗り込んだ。 主「人、少ないな」 小「そうね」 先ほどホームで見た向かい側の電車は満員だったのに、この電車はそれの半分も人が乗っていない。 酔いつぶれたサラリーマン、居眠りをしているOL、シャカシャカと軽く音漏れのするヘッドホンで音楽を聴いている学生、夜遊び中の軽い格好をした若者達。 それぞれが他人との間合いを保ちながら座席に座っていた。 主「座るか」 小「ん」 俺たちもそれに習い、他人から軽く距離を開け、二人並んで座る。 主「これで終電だけどさ、」 小「うん」 主「帰りどうすんの?」 小「知らない」 そっけない返事をして、彼女は頭を俺の肩へと預けた。 帰りはタクシーでも捕まえるか…少し出費がいたけど。 そんなことを考えつつ、ガタガタと揺れる車内から、窓の景色を眺めていた。 空でも地上でも遠くにキラキラと光る点が疎らに置かれているだけで、何処からが空で何処からが地上なのか見当もつかないような景色だった。 ----- 海に行くには何処の降りるかなんて調べてこなかったから、窓から海が見えたところで適当に降りた。 結果、どこかの堤防へと辿り着くことができた。 引き潮なのか、それとも初めからこうなのか、やけに水面との距離がある。 きっと下から見れば、この堤防は化け物のように大きく聳え立っているのだろう。 小「海―!」 念願の海を見てか、はしゃぐ小兎。 下では黒い波が静かに蠢いている。 主「そんなに楽しいか?」 小「んー…」 曖昧な返事をして、数歩先を歩いていた彼女が俺の隣へと戻ってきた。 主「人いないな」 小「夜だからね」 主「暗いし」 小「夜だからね」 主「…満足したか?」 小「んー…」 またしても曖昧な返事。 そのまましばし無言で海を眺める。 海の黒と空の黒が溶け合い、見えるはずの地平線が見えない。 時折遠くのほうで光るのは何処かの漁船なのか、それとも星なのか。 主「…有栖川、何がしたかったんだ?」 小「なんだろ」 主「なんだよ」 小「さあ?」 主「最近お前可笑しいよ…」 小「そう?」 そうだ、最近の彼女はどことなく可笑しい。 どこか皮肉めいていて、不安定と言うか、彼女らしいんだけど彼女らしくない。 小「ねえ、」 主「何?」 小「あたしが、もしも死んだら、どうなると思う?」 主「え?」 突然、何を言い出すのか。 死んだらどうなる? そんなことを聞いてどうするのか。 小「多分ね、何も変わらないわよ。一時的に変えられたとしても、それは本当に変わったわけではないから」 主「何が…」 小「あたしが死んで、仮に○○が悲しがって、心を痛めたとしても、それは時間と共に風化して、また何もなかったように過ごしていくんだから」 主「なんでそんなこと突然…」 小「突然でもなんでもないわよ。ただ前からずっと思ってたことだもの」 小「ねえ、もしもあたしを殺してって言ったら殺してくれる?」 その言葉に一瞬全てが止まった気がした。 有栖川が放つ言葉の意味が分からない。 考えられない。 主「……………」 小「無言は肯定?それとも否定?…まあ、別にどっちでもいいんだけどね」 そのまま言葉を続ける。 小「本当はね、ずっと○○と一緒にいたかったんだけどね。でも、でもね…、ッ!?」 考えるよりも先に身体が反応した。 気がついたら有栖川を両手で思い切り抱きしめていた。 自分自身、少し驚いているのだが、有栖川はそれ以上に驚いた様子で目を見開いている。 小「○○…?」 主「なあ、」 小「?」 主「死ぬとか言うなよ」 こう言うとき、何をどう言ったらいいのかなんて分からない。 そういうマニュアルがあるわけでもなし、正解なんてきっと存在しない。 ただ自分が少しでも思ったことを、ぽつり、ぽつりと口にする。 主「なあ、」 小「……………」 主「嫌だよ、」 小「○○…」 静かに波の音が聞こえてくる。 暗いながらも表面がキラキラと妖しく光って、まるで有栖川をとられそうな気がしたから、より一層腕に力を込めた。 小「ねえ…」 主「有栖川…」 小「殺してよ」 主「有栖川…!」 再び聞こえてきたその言葉に、ばっと身体を離す。 それでも肩は掴んだまま。 恐る恐る、それでもはっきりと見つめた有栖川はいつもと変わらない表情で、殺して、と懇願してくる。 主「だから、なんで…っ」 小「ごめん」 主「謝るくらいなら、」 小「殺して」 主「お前、」 小「いらないなら捨ててよ」 その言葉に方にかけた手から力が抜ける。 月明かりのない暗闇で、こんなに近くにいるのに彼女の表情が分からない。 何も伝わってこない。 主「いらないはずないだろ!?」 小「でも、そのうちいらなくなる。今のあたしにはあんたしかいないけど、あんたには沢山いるじゃない」 主「そんなこと…!」 小「○○は分かってないだけだわ」 主「なあ、」 小「それでもね…○○があたし殺したらさ、罪悪感とか、そういう汚いものが残るの、ずっと、永遠に」 主「………」 小「それと一緒にあたしの存在も○○の中に残るの、ずっと、忘れないのよ」 主「だから、違う…、なあ、………」 言葉が上手く出てこない。 思うこと、伝えることが沢山あるのに、沢山ありすぎて出てこない。 一瞬吐き出すことをやめて吸い込んだ空気は、塩っぽくてやけに冷たかった。 小「ごめん」 主「だから、」 小「ばいばい」 主「え、…有栖川ッ!?」 数歩下がった彼女は、綺麗な半円を描きながら重力にしたがって落ちていく。 ドプンッ 下の方でやけに大きな波の音が、一際目立って響いた。 -------- 小兎side ごめんね、○○。 私、やっぱり兄貴がいないとダメみたいなの―…………

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