人でなし達の宴

巴竜人と道神朱雀は他の参加者の捜索を続けていた。
朱雀の他人格を警戒しつつも、先のような惨劇は避けねばならない。

「やっぱりこの首輪がネックになるか…」

竜人は自身の能力を発揮するにおいての枷に対する苛立ちを漏らす。

「すまんね、巴やん。私の知識でもこれの構造は分からへんわ。せめてサンプルでもあればちゃうんやけど…」
「サンプル、か…」

生きている自分達の首輪が外せない以上、それはすなわち死体から得たものを指すという事になる。
考えたくはないが、そうした事をする必要もあるかもしれない、と竜人は考える。
だがそもそも、首輪を解析しようとする行為自体が主催に対する反逆行為とみなされる可能性もある。
首輪を得ようとしたら自分の首輪が爆破されるなんて笑い話にもならない。
ともかく今は不確定要素が多すぎるので、首輪に関しては今は保留にしようと二人は決めた。


「そう警戒しないでくれよ竜人クン、僕は別に君と事を構えるつもりはないんだ」
「悪いがアンタに対していい話は聞いていないんだ。…青竜の事もあるしな」
「あの馬鹿と一緒くたにされちゃうのは心外だなぁ、戦ったってなんにもならない事くらい分かってるつもりだよ」

そう言って朱雀は…正確には朱雀の別人格の一人、"白虎"は竜人に見せるようにして首輪の「G」の文字の部分をトントンと叩いた。

「だってこれ、チーム戦でしょ?青竜は理解してなかっただろうけど、別に僕一人で勝つ必要なんてないさ」

それを聞き、竜人の目つきは険しくなる。
  、、、
「冗談だよ、そういうのを止めたいってのが君の願いだろ。敵に回せばどんな痛い目にあうかって分かってるさ、危うく朱雀君も死にかけたしね。おっと、青竜だったか」

と、皮肉っぽく言う白虎に対し、竜人はバツの悪い表情を浮かべた。

「それにこの体質はどうしようもないしね、そういう動きをするには不利すぎるよ。いつ入れ替わるかは僕にだって分からない。朱雀君や玄武は止めるだろうし、青竜は何しでかすか分かったもんじゃない」
「まあな。分かってても慣れないな、その人格変化」
「精々気をつけてくれよ、僕が死ぬって事は朱雀君や玄武まで死ぬって事なんだからさ。そりゃ君だって避けたいだろ?…っと、誰か来たみたいだね」

二人の視界に入ったのは、金色の長髪が目を惹く少女の姿であった。


「待ってくれ、俺たちは殺し合いには乗っていない」

竜人と白虎を前にし、明らかに警戒した様子の少女に諭すように竜人は声をかけた。
だが、少女はまるで一切の接触を拒絶するかのような強い口調で叫んだ。

「人間を信用など出来るか!帰れ!!!」
「…人間?」

その、自分は人間ではない、とでも断定するような口調に白虎はいささかの違和感を覚えた。

「さっさと帰れ!醜い人間と話す舌なんて無い!」
「話を聞いてくれ!俺は巴竜人。こっちは道神朱雀、…今は白虎か。話すと長くなるんだが…」
「ちょっと待って竜人君、うん、これはもしかして…」

竜人の発言を遮って白虎は前にズイと出る。そして少女に対しこう尋ねた。

「君の言う人間っていうのはさ…所謂他人を指す代名詞的な意味での"人間"かい?それとも種族そのものを指すって意味かい?」
「はぁ?何言ってんだ、人間は人間だろうが!」
「ふむ、やっぱりか…」

白虎は一人納得した様子で頷き、そしてこう言う。

   、、、、、、、、、
「君…中身は人間じゃないだろう?」


それを聞いて少女―――ライリーは狼狽えた。

「なんでそれを…そんな事どうだっていいだろ!」      、、、、、、、、、
「いやいやどうでもよくない。何故なら僕も…僕達もこう見えて中身は人間じゃないからね」
「達?」
「分かっちゃうんだよね、やっぱり似た者同士、これだ!っていうものを感じるというか」

白虎は続けて自分の中には三体の神獣が宿っており、自分もその神獣の一体である、という事を説明した。
ライリーはにわかには信じられぬ、といった様子であったが―

(確かにこいつの身体からは人間とは違った魔力…いやそれに近い別の力の波動を感じる。あながち嘘じゃないのか…?)

「次にこちらの巴竜人君は人智を超越した能力を持った改造人間なのさ…これが証拠!」

言うや否や、白虎は右の掌を"加速"の能力を用いて超高速で振動させ、竜人の胸元へと突き立てた。
が、竜人はその一撃を一瞬でガイアライナーへと変身を完了し腕を掴んで止めた。

「おい白虎!!」
「ごめんごめん、でも寸止めにするつもりではあったよ?それに止められるって信じてたからね」

事の一部始終を見届けたライリーはポカンと口を開けていた。

「人間が魔物に…変化した?」
「これで分かったろ、僕らが人間じゃないって、じゃあ次は君について教えてもらおうかな

「…なぁ、お前ら本当に人間じゃないのか?」
「君だって似たようなものだろ?見た目だけならどこからどう見たって人間だよ」
「そりゃあ、そうだが…」

渋々、といったていではあるが一応の納得はしたライリーは自分も殺し合いには乗ってはいない事、自分は女勇者と入れ替わったオークである事、アリシアとボーンマンという参加者を探している事を二人へと告げた。

「…俺は一応、まだ人間のつもりなんだけどな。それに何だか騙してるみたいじゃないか」
「しょうがないじゃないか、こうでもしないと彼女は…いや、彼なのかな?どっちでもいいや、とにかくあの子はまともに話してくれなかったよ?」
「まあ、それについては礼を言う」
「どういたしまして」

竜人は礼を述べながらも警戒心は緩めずにいた。そしてそれは白虎だけでなくライリーに対してでもある。

(あの少女の口ぶりの節々に強い憎悪の念を感じる…なにかとても恐ろしい物が潜んでいるかのような…)

一方で白虎はライリーからもたらされた情報を整理していた。

(オークってだけあって頭の出来はそこまで良くはなさそうだな。だが、入れ替わりか…興味深いね。もしかして上手く利用すればこの体質を…)

そして、警戒心持つのは二人だけではなく、ライリーもまたそうであった。

(こいつら…本当の本当に人間じゃない?それとも…)



それぞれの思惑を他所に、時刻は早朝6時―まもなく第一回放送を迎えようとしていた。


【F-1/町/1日目/朝】

【巴竜人@アースH】
[状態]:健康
[服装]:グレーのジャケット
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3
[思考]
基本:殺し合いを破綻させ、主催者を倒す。
1:次の現場を探す。
2:自身の身体の異変をなんとかしたい。
3:クレアに出会った場合には―
4:青龍、白虎、ライリーに警戒
[備考]
※首輪の制限により、長時間変身すると体が制御不能になります。

【道神朱雀@アースG】
[状態]:健康、白虎の人格
[服装]:学生服
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考]
基本:殺し合いを止めさせる。
1:竜人とともに付近を捜索する。
2:他人格に警戒、特に青竜。
(青竜)
基本:自分以外を皆殺しにし、殺し合いに優勝する
(玄武)
基本:若者の行く末を見守る
(白虎)
基本:一応、殺し合いには乗らない。今は
1:多人格体質をなんとかしたい
2:入れ替わりか…
[備考]
※人格が入れ替わるタイミング、他能力については後続の書き手さんにお任せします。

【ライリー@アースF】
[状態]:健康
[服装]:勇者服
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考]
基本:アリシアとボーンマンを探し、護る
1:AKANEと聖十字教会を殺す
2:上記以外であれば自分から襲うつもりはないが、襲ってくるなら容赦しない
3:人間は仲間にしない。信用ならない
4:竜人と白虎は人間…?それとも…?
[備考]
※竜人と白虎を完全には信用していないため、上記以外の事は話していません。

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最終更新:2017年05月28日 11:57