CORE PRIDE

くははっ!やっぱり俺様の考えた通りだったなぁ、俺様の勘はやっぱ他のやつらとはちげぇんだな」

学校の三階職員室。
愛島ツバキは窓際の教員用作業デスクを眺めながら口許を緩ませた。
そしてツバキは普段なら座れない『教頭』というカード立てが置かれているデスクの椅子に腰かけゆったりとしている。

探索を始め、一時間ほどだろうか。
ツバキと陽太が一通りこの学校を回ったが、ツバキにとってこの学校は見覚えがあった。
何故ならばツバキが普段通う高校のそのものなのであるからだ。
ツバキと蓮がいつも居た生徒会室も、学食も、理科室も、教室もそのままの姿でこの殺し合いの会場に姿を現していた。

「…ツバキ、やっぱりこの学校は君の居た学校なのか」
「さぁねっ。AKANEが俺様の世界の学校引っこ抜いてここにドシーンって置いた『学校そのまま』なのか、俺様の世界の学校をそのままコピーして作り上げた『見せかけの学校』なのかまでは分かんねえよ。俺様のはや様エスパーじゃないしさ」

部屋の片隅で資料に目をやりながら、陽太は確認するかのようにツバキに聞いた。
ツバキも返答のようにはっきりとした確証は持てなかったが、そう予想するのは容易かった。

「どっちにしろとんでもない技術と手間がかかってるのに違いはないか」
「んまぁね♪」
「…なんでAKANEたちはここまでしたんだろうな。やる事は単純なのに」

壁に目をやると、おそらく年季からだろう。黒ずんだシミが見受けられる。
職員の机を見ても、職員の家族の写真や、部活動のスケジュール。添削課題までそのままの姿で置かれてある。
まるである学園のその一瞬を、人間だけ取り除いて切り取ったかのように。

陽太としては疑問だった。
殺し合いをたださせるなら、ここまで本格的に用意する必要はないのではないかと。
ただの道楽目的ではない、何か裏があるのではないかと。
深読みかもしれないが、そう思わざるをえないほどこの学校は不自然だった。

「さぁね~。俺様わかんなぁーい。名探偵でも連れてこいよってなっ」

そんな陽太の疑問を差し置いて、ツバキはへらへらと笑いながらバックから双眼鏡やら、薬品やらなんやらを並べていく。
先程寄った理科室で回収してきたものだろうか。陽太は周囲の敵の有無ばかり気を使っていたのでこういった物は忘れていた。
ツバキは双眼鏡を手に取り、椅子から立ち上がると西の窓際へと行き、そこからの風景を覗いた。

「生物の田邊の机の中にあったんだぜ!教師に対するボートク?ってやつか…おっ。こりゃおもしれえ」
「どうした!」

誰か見つけたのか、と思い陽太はツバキへと駆け寄る。
ツバキはわざとらしそうに、「ほへー」と言いながら、望遠鏡を覗き続ける。

「ヘロヘロの女の子が歩いてきてるぜ、しかも…こっちに!くははっ!よく見れば『戦姫たちの夜に』の雨谷いのりじゃん!コスプレかよっ」
「…!いのり!?」

雨谷いのり。結城陽太の弟子仲間の一人で、ともに修行していた仲間だ。
世界渡航に巻き込まれてからは行方も知れなかったが、まさかこの殺し合いに巻き込まれていたとは。

驚くツバキから半ば強引に双眼鏡を取り、覗く。
確かにいのりだった。しかし怪我でもしたのだろう。数箇所の出血と、脇腹を抑えながら苦痛の表情で歩くその姿は、間違いなく危険な状態だった。


「あれ?知り合い?作者どころか媒体も違くね?あんたら 」
「知り合いも何も…俺の弟子仲間の一人だ!なんであんな姿に…っ!」

いのりは強かった。
それでこそ師匠からも毎日のように褒められていたし、彼女としてもヒーローに対して誇りがあった。
そのいのりがあそこまでぼろぼろになったのにはきっと訳があるはずだ。
陽太も知らぬ、敵が。
双眼鏡をツバキに突き返し、陽太はおもむろに出入り口のドアへと走り、その引手に手をかけようとした。


「どこ行くんだよ」

ツバキが、先程までのふざけた様な喋り方ではなく、冷静に、しかしどこか調子が抜けたように尋ねた。
もちろんツバキも、陽太の行き先など知っている。
しかし、この《打ち切りくん》の物語を知っていた。だからこそ、ここで一応、止めておく必要があった。

物語の中で結城陽太は正義感が強い熱血漢だった。
だからこそ、仲間や無実の人々が痛い目にあったり傷つけられたりすれば頭に血が上ったようになり、「彼らを助けるため」の行動をする。
しかしひっくり返せば「正義感が彼の理性を抑圧してしまう」ことになり得る。
故に「サンライズ」の話の中ではその正義感が彼を単独的な行動へと度々追いやったためかファンからの批判に晒されてしまい、打ち切りの原因の一つとなったのだった。

もし、結城陽太がその「サンライズ」の中の本物であるならば、おそらくツバキの話など聞かずに立ち去るだろう。しかし、ツバキとしても何も言及せずに元気に陽太にたいして
「いてらぁーー」と言うわけにもいかない。

ツバキは窓際から陽太へとゆっくりと近寄りながら口を開く。

「…あれが本当にお前の知人の『雨谷いのり』とやらって確証はあるのかよってハナシ。俺様から見たらアニメキャラのコスプレにしか見えないぜぇー?」

ドアの方を向いていた陽太は少し、肩を動かした。
確かにそうだ。世界渡航を経験した自分なら分かる。
ツバキの言う通り、あのいのりは《自分の知っている雨谷いのり》でない可能性だって十二分にある。
それどころか、凶悪的なヴィランであったらどうすればよいのか。
自分がここでやられてしまったら、それでこそツバキも、いのりも、この殺し合いに巻き込まれた人々を助けられないのではないか。

…しかし、それでも陽太は行かねばならなかった。
目の前の困っている人が居るならば、彼は駆けつけなければならなかった。
それが、師匠の教え。
《時が英雄にとっての最大の敵》。
まっすぐに、自分の正義感を信じて、行くしかなかった。

陽太は一旦大きく息を吐いてから、ツバキの方をはっきりと向いた。

「それでも俺は行く!『ヒーロー』だから!助けを求める人が居れば、どんな人でも助けてみせる!」

陽太はそう言うとドアを開け、職員室を走り出ていった。
正義感を胸に抱き、走り抜けていった。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

一人残されたツバキはやれやれと頭を掻きながら、陽太がいつの間にやら降ろしていたディバックも持ち、右手に日輪照らせし蒼穹の銃があるのを確認してゆっくりと職員室を出た。
陽太が走っていって数分後だった。

陽太を最初は追いかけるつもりはなかったが、このままもし死んでしまえば間が悪いし、何よりツバキ自身のせいになりうるのが、なんとなくバツが悪かった。

「…そんなんだから打ち切りくらうんだぜ。『サンライズ』君。
ま、たまにはヒーローの道楽に付き合ってやりますか。くははっ」

ツバキはそう呟くとのらりくらり、ゆっくりと陽太の足跡を追っていった。

【D-7/学校/1日目/早朝】

【愛島ツバキ@アースR】
[状態]:健康
[服装]:女子制服
[装備]:日輪照らせし蒼穹の銃(日光の充電50%)@アースH
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2、陽太の基本支給品&ランダム支給品0~3
[思考]
基本:AKANEをぶっ潰す。
1:陽太と一緒に学校を探索したかったんだけどなぁ…まぁいっかだいたい見れたし。
2:平行世界について調べる。
3:陽太を追う

【結城陽太@アースC】
[状態]:健康
[服装]:制服
[装備]:なし
[道具]: なし
[思考]
基本:AKANEと戦う。
1:いのりの元へ行く。

046.D-MODE 投下順で読む 047.悪魔の中身
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023.日輪纏いしヒーローと二人の元いじめられっ子 愛島ツバキ 次の登場話?
023.日輪纏いしヒーローと二人の元いじめられっ子 結城陽太 次の登場話?

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最終更新:2017年05月24日 17:08