ティアマトの逆襲、または如何にして私は淫乱ピンクと怪盗と共に怪獣を追っかけることになったか

燃え盛る真紅の炎。高く高く、暗い夜空を月よりも明るく照らし、
星まで届きそうな程大きな煙が上がる。
建物は崩れ落ち、ガラスも、コンクリートも鉄筋も、乾いた泥のように粉々に
散らばっていた。

ここはA-7飛行場。
いや、「元」A-7飛行場だ。
つい数時間前まで、そこに新品同然の飛行機が並び、眠りにつくかのように
静寂に包まれていたと、誰が想像できようか。


飛行場は完膚なきまでに破壊されていた。
飛行機は一機残らず『踏み潰』され、管制塔を初めとする建築物は粉砕され、
真っ平らだった滑走路には巨大な『足跡』が出来ていた・・・。


そして、飛行場のほぼど真ん中に・・・その「生き物」はいた。

凸凹とした黒い肌、丸太のように太く大きな足とそれとは対照的に細い腕、
50メートル程の大きさで、ほぼ同じ長さの尻尾を持ち、背中には骨がむき出しに
なったかの如き背鰭が存在し、それが尻尾まで伸びている・・・。
その頭部は古代に栄えた肉食恐竜か、伝説に伝わるドラゴンを思わせ、
後頭部にはヤギのような角が生えており、その目は虎や鷲のような全てを射抜く
眼差しをしていた。
その「生き物」は夜空を見上げると、
「グガアァァァァァァァァァァァァァ!!!!」
勝ち誇るかのように雄叫びをあげたのだった。

ティアマト。
アースMで生まれ育った者で、この名を知らない者は、発展途上国に住んでいる人か、
学校に通えないストリートチルドレンぐらいだろう。
1950年代、突如として日本に出現し、破壊の限りを尽くした
史上初の大型怪獣・・・それが「ティアマト」だ。

もちろん、ティアマト以前からアースMには怪獣が出現していた。
戦前の1930年代には、アメリカのニューヨークに巨大なオランウータンが現れたし、
4世紀の朝鮮半島には「プルガサリ」という怪獣が現れたという記録が残っている。
だがそれらは、どんなに大きくても精々身長10mが関の山で、近代兵器による攻撃で
十分ダメージを与えることが可能な存在だった。
だが、ティアマトは・・・そしてティアマト以降に出現しだした怪獣は違った。
平均的な大きさはおよそ50m。最大で100mを超える個体もいる。
体重1万トンは当たり前、20万トンにもなるギガトン怪獣も存在する。
口から火炎や熱線を吐く等の特殊能力を持ち、その皮膚は近代兵器による攻撃を受け付けない・・・。
一般的な生物の常識からかけ離れた、超常的な存在へと変わったのだ。

1954年、太平洋の海底で静かに眠りについていたティアマトは、
アメリカの行った原水爆実験によって覚醒し、日本に上陸。
東京を火の海に変え、死者・行方不明者1万人を超える被害を生んだ。
しかし、最終的に『平沢明助』という科学者が開発した特殊薬物によってティアマトは撃退され、
以後、出現しだしたティアマトと同サイズの怪獣たちに対抗するために各国は対立関係を捨てて
一致団結し、『地球防衛軍』を結成した・・・。
アースMの歴史の教科書にはこう記されている・・・。


「グルルルル・・・」
飛行場を廃墟へと変えたティアマトは、唸り声を挙げてクルリと回れ右すると移動を開始した。
一歩踏み出すごとに大地が大きく凹み、ズン、ズンという地響きが周囲に響く。
その瞳には、赤い炎が燃えていた。
静かに眠っていた自身を叩き起こしておきながら、その自身を敵として攻撃し、
あまつさえ毒を持って殺そうしただけに飽きたらず、このような場に無理やり連れてきた
『小さい者』・・・『人間』への怒りの炎が。
その炎は静かに、しかし強く、燃え続けていたのだ。

【A-7/飛行場から移動中/1日目/深夜】
【ティアマト@アースM】
[状態]:無傷、怒り心頭
[服装]:裸
[装備]:無
[道具]:無
[思考]
基本:人間が憎い
1:邪魔な物は壊す
2:攻撃する奴は潰す
[備考]
※飛行場を廃墟に変えました。どこに移動するかは後の書き手さんに任せます。
皮膚の強度が低下しており、手榴弾でダメージを受けます。

そして、そこから少し離れた位置にある平原で・・・
「ヌフッ、ヌフッ・・・ヌフフフフフフゥ~♪」
白衣を着た男性が双眼鏡でティアマトの姿を眺めながら、不気味な笑いを挙げていた。
「フッフッフッフッフッ・・・いきなり殺し合えなんて言われた時は戸惑ったが・・・
まさかあんな大物に御目にかかれるとは・・・不幸中の幸いとはこの事だ・・・フッフッフッフッ」
その男性―鬼小路 君彦は口の端から垂れたヨダレを拭い、まるで動物園のパンダを
見た子供のような笑みを浮かべていた。
「のぉのぉ君彦ぉ~、妾にも見せておくれ~」
そこにピンク色の髪に巫女服という出で立ちの少女が、鬼小路の服の袖を引っ張った。
「あぁ良いとも。はい」
鬼小路はその少女―卑弥呼に双眼鏡を手渡した。卑弥呼は先程の鬼小路と同じように
双眼鏡を覗いてティアマトの姿を眺め始めた。
「おぉ~♪妾も今まで色んなものを見てきたが、本物の怪獣が見られるとは驚きじゃのぉ~」
卑弥呼は少女らしくない古風な口調で喋っていたが、その言葉には子供らしい好奇心が満ちていた。
「どうじゃ‘ないとおうる’、お主も見ぬかや?」
卑弥呼は自分の横で棒立ち状態になっている仮面とタキシードとマントを身に着けた男性に声をかけた。
「いや・・・遠慮しておきます」
仮面の男性―怪盗ナイトオウルは卑弥呼からの誘いをやんわりと断ると、頭を掻きながら、
「まさかあんな生き物が実在するなんて・・・自分の目が信じられませんねぇ」
タメ息混じりにしみじみと呟いた。
「チッチッチッチッチッ・・・」
ナイトオウルの呟きを耳にした鬼小路は舌打ちをしながら、人差し指を横に振った。
「いかんよぉナイトオウル君・・・卑弥呼君もそうだが、怪獣の存在をフィクションと勘違い
していたとは・・・ちゃんと新聞やニュースに目を通しておきたまえ」
「い・・・一応、新聞は毎日見てるんですが・・・」
「妾はどちらかと言えば、ネットのニュースサイト派じゃからのぉ・・・」
鬼小路の言葉に少々困惑してしまった二人だった。





『Dr.モンスター』の異名を持つ稀代の怪獣マニア・鬼小路 君彦、
秘術によって現代によって現代に蘇った邪馬台国の女王・卑弥呼、
『世界三大怪盗』の一人に数えられる怪盗・ナイトオウル・・・

この三人が出会ったのは、まったくの偶然だった。
たまたま同じエリアに転送された三人は、飛行場からの爆発音に導かれて平原へと移動し、
こうして顔を合わせたのだ。

飛行場の方を向けば、映画に出てくるような巨大怪獣が破壊の限りを尽くしていた。
アースM出身の鬼小路からすれば、地震や台風と同じくらい見慣れた光景だったが、
アースP出身の卑弥呼やアースD出身のナイトオウルからすれば、自分の目が信じられないような光景だった。
怪獣なんて、特撮映画かドラマの中だけの存在だと思っていた。
それが目の前で、自分の眼前で、巨大な体を動かして建物を破壊していた。
鉄筋コンクリートの頑丈そうな建築物が、発泡スチロールか何かの様に、軽々と破壊されていたのだ。
正に映画のような光景だったのだ。

そうこうしている内に飛行場を破壊しつくしたティアマトは移動を開始した。
「おっ!どうやら移動するらしいな・・・こうしちゃいれない!」
ティアマトの移動に気づいた鬼小路は、近くに停車しておいた自分の支給品のジープに駆け寄った。
車体横に白く『MHC』と書かれた黒い車体・・・怪獣が踏んでも壊れない程頑丈といわれる
MHC専用ジープだ。
「二人とも急げ!追いかけるぞ!」
「お、追いかけるって・・・まさか・・・」
「そのまさかさ!アイツを追いかけるのさ!このジープなら余裕で追いつけるぞ!」
「おぉ!面白そうじゃのぉ!」
鬼小路の言葉を聞いた卑弥呼はジープの後部座席に飛び乗った。
続いて鬼小路は助手席に座った。
「ナイトオウル君、運転任せた!」
「えっ?何で私が!?」
「生憎俺は無免許だ!」
「答えになってないんですけど!?」
いきなりの無茶ブリにナイトオウルは困惑した。
「ほれ‘ないとおうる’、速くせんか。逃げられてしまうぞ」
「いや、あの・・・」
卑弥呼にまで急かされ、ナイトオウルは自分に拒否権が無いことを悟った。
(おじいちゃん・・・僕は今スッゴク不幸です)
心の中で今は亡き祖父に呟くと、ジープの運転席に座り、ジープを発進させた。
「お~し!イケイケぇ!」
「行くのじゃぁ!」
ノリノリな鬼小路と卑弥呼と対照的に・・・
「・・・・・・」
ナイトオウルは唇を噛みしめて涙をこらえたのだった・・・。



【F-6/ジープで平原を疾走/1日目/深夜】

【鬼小路 君彦@アースM】
[状態]:健康、興奮
[服装]:白衣
[装備]:双眼鏡@アースR
[道具]:基本支給品一式、ランダムアイテム0~1
[思考]
基本:あの怪獣(ティアマト)を追いかける
1:かぁいじゅううううううう!!
2:イケイケぇ!
[備考]
※卑弥呼とナイトオウルをただの「世間知らず」だと思っています。
ジープの行き先は後の書き手さんに任せます。

【卑弥呼@アースP】
[状態]:健康、興奮
[服装]:巫女服
[装備]:無
[道具]:基本支給品一式、ランダムアイテム0~3
[思考]
基本:怪獣(ティアマト)を追いかける
1:アハハハハ!行け行けぇ!!
[備考]
※怪獣が実在することを知りました。
ジープの行き先は後の書き手さんに任せます。

【怪盗ナイトオウル@アースD】
[状態]:健康、少し悲哀、ジープを運転中
[服装]:仮面、タキシード、マント
[装備]:MHC専用ジープ@アースM
[道具]:基本支給品一式、ランダムアイテム0~3
[思考]
基本:鬼小路さんと卑弥呼ちゃんと怪獣を(嫌々ながらも)追いかける
1:何故私が運転を・・・
2:トホホ・・・
[備考]
※怪獣が実在することを知りました。
ジープの行き先は後の書き手さんに任せます。

015.灰色の楽園を壊したくて 投下順で読む 017.my world is not yours
015.灰色の楽園を壊したくて 時系列順で読む 017.my world is not yours
GAME START ティアマト 019.彼らは幾ら叫べども、灰色世界に抗えない
GAME START 鬼小路君彦 024.楽しさと狂気と
GAME START 卑弥呼 024.楽しさと狂気と
GAME START 怪盗ナイトオウル? 024.楽しさと狂気と

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2015年07月04日 22:14