現実の壁は破れない

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現実の壁は破れない」(2015/07/01 (水) 20:27:39) の最新版変更点

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ひやりとした風が吹く深夜の住宅街。 そこに一人の少女が、手に握られたICレコーダーに耳を傾けていた。 頭に被ったカウボーイハットから飛び出るようにして真っ黒な髪が外側にはねており、耳には金色のピアスが開けてある。 首にはスカーフが巻かれていてノースリーブのレザーの革ジャンの下は黒いビキニ一枚という姿が、彼女の露出度を大きく上げていた。 スカートは膝上10cm近く短い、これもまたレザーで出来たもので、靴はやはりレザーのブーツ。 腰のところにはホルスターがつけられており、これだけで彼女はまるでカウガールのように思われた。 「いいじゃないいいじゃないこういうのっ!アタシが待ち望んでたことじゃない!」 そんなカウガール少女、不死原霧人はICレコーダーの音声を聞き終わると喜びを隠せないような素振りを見せ、その場で飛び跳ねた。 彼女はあの有名ヒーローの登竜門である国立ヒーロー養成所の2年生首席である。 そんな優等生である彼女にとって、もはや養成所の座学や実践練習は予習をせずとも簡単な物であった。 先ほど見た参加者候補の名簿の中には自分の家の居候、柳生十兵衛を除くと雨谷いのりや裏切りのクレア、更には早乙女親子(本人はグレービッチと呼んでいる)らが名を連ねている。 いつか捕まえてみたいと思っていた危険人物だ。普段の鍛錬の成果を今こそ見せるときであろう、と彼女は強く決意をしていた。 自分が普段よく使っている二丁のリボルバーが無くなってはいるものの、運良く捕縛に使えるロープは入っていた。これさえあれば、並大抵の敵ならば捕まえることができるだろう。 「んふふ、お姉さま。ご機嫌のようですわね」 そんな機嫌をよくしていた霧人の前に、いつの間にか一人の少女が立っていた。 黒のボンテージに白のマント。髪の毛はピンク色で、唇もラメを含んだ口紅で明るく見える。 顔立ちは幼いが、雰囲気からはそれを一切感じれず、むしろ見た目とは反した淫らな雰囲気を醸し出しており、そのギャップがなおさらその雰囲気を強くさせた。 「ん?誰よアンタ」 「私(わたくし)は闇ツ葉はららと申します。お姉さまは?」 エロティックな少女、はららは会釈をすると、霧人に大して聞き返す。 霧人は手に握ったロープをぶんぶんと振り回しながら、その答えを返す。 「アタシは不死原霧人。早速だけどアンタ、アタシとチーム別じゃん。殺る気?」 霧人が指していたのは、お互いにつけられた首輪の文字のことであった。 霧人の文字は先程確認していて《H》、だが目の前のはららの首輪には《MG》と書いてある。おらくあの音声案内に従うとなるとはららと霧人は敵どうしということになりうる。 霧人はそれを危惧しており、実際に闘うという場合であるならば、やられるだけではいられない。 きちんと応戦する必要があるのだ。 霧人はそれを言い終わると腰を据えて、一旦はららと距離を置く。養成所で習った臨戦態勢の実践だ。 「んふふふふ…♪殺しはしませんわ、ただ───あなたのような気の強いお姉さまを跪かせるのが、私の趣味なのですわっ!」 はららは言い終わる前に、自分の両手の掌からそれぞれ五本はあるだろうと思われる触手を出し、霧人へと向けた。 霧人は距離を置いて、回避行動が可能であったためかそれを横への緊急回避で避ける。 当たらなかったのを確認するように触手がはららの元へと、また戻っていく。 それを見ていた霧人は、余裕の表情ではららに向けて言い放つ。 「へー!いいわねえーそれ!やっぱヴィランの攻撃手段としては映えるわね触手って」 「ヴィラン…?んふ、巷では私のことをそう呼ぶのですわね…」 「そーよ、アンタらはヴィラン、そして私がヒーローなの!」 そして霧人ははららの距離を縮めながら持っていたロープを輪っかにして、それをまるで投げ輪のようにしてはららに投げる。 その速度は早く、はららもよけず、その輪の中に入ってしまう。 そしてそこから霧人が手に残っていたロープを引っ張るとはららは自身の腰のあたりから手の上を通って強く縛りつけられた。 「観念なさいヴィラン闇ツ葉はらら!この殺し合い終わらせたらアンタを刑務所にぶち込んでやるから!」 霧人は自分が憧れたヒーローのように、声高らかに声を挙げる。 これでやっと、自分も幼い頃から憧れていたヒーローに近づける。 《闇ツ葉はらら》というヴィランは有名ではないが、別にいい。実戦経験0の霧人にとってはこの結果は最高の物だろう。 そう、彼女は思った。いや、思ってしまった。 「お姉さま、油断大敵ですことよ」 はららがニヤリと笑うと縛られていた右手から五本の触手をまとめ合わせたような、太い触手が飛び出した。 霧人は手を封じなかったのはしまった、と考えたものの避けることができる速度だ。先程のような緊急回避もいらない。横に飛ぶように避ければいい。 そう思い、行動に移そうとした。だが─── (動かない!?) 正確に言うと、動かないのではない。 本来霧人の反射神経があるならば簡単によける事ができた。 判断も間に合っているはず。しかし、足が動かない。 はららの方に目をやる。片眼が紫色になり彼女から禍々しい気が発せられている。 おそらく魔術か何かを使われたのだろう。霧人はそう判断する。 そして霧人がそう判断した瞬間に、今度ははららの触手が霧人へと襲いかかる。 触手は霧人の手足を縛りつけると、キリストが磔にされたような格好にして、宙ぶらりんにした。 「さぁ、形勢逆転ですわよ、お姉さま?」 はららが縛られていたロープを触手に切らせると、ニコニコと笑って霧人を眺める。 その表情は間違いなく加虐を企もうとするものである。 霧人は失態を犯したと感じていながらも、触手をなんとか離そうともがくが、自分ひとりの力では離すことができない。それほどまでの強い力であった。 「何を…!こんなもんで私を押さえつけたつもり?舐めんじゃないわよ!」 「んふ、いつまで耐えきれるか見ものですわね♪」 霧人が絞り出すように言った言葉を待ってましたというように、はららは残っていた左手の触手を霧人へと向けた。 しかし、その行き先は霧人の首や腹といった急所ではなく、その薄着で大きく主張された、豊満な乳房であった。 「な、やめ───んあっ…!」 「んふふ、薄着で助かりましたわ、破く必要もないんですもの」 触手は霧人の乳房を縛るように、かつ揉みしだくように絡みつく。 前述の通り霧人はレザージャケットの下は黒いビキニ一枚だ。剥ぎ取らずとも、触手による《攻撃》によって快感を与えることははららにとって簡単である。 ここで、快楽を倍増させる魔法を触手にかけた。触手の表面に滑り(ぬめり)ができて、尚更その《攻撃》は加速していく。 「ん、んんんんっ!!あっ…!あっあああっ!!」 「快楽には、人間は逆らえないのですわ。男だろうと女だろうと。赤ん坊でも老人でも。誰だろうと逆らえないのですわ」 くすり、と笑うはらら。 やがてそのまま触手が胸だけでなく霧人の体の様々なところを《攻撃》していると、2、3回ほど霧人は跳ねて、やがて全身の気が抜けたようになっていた。 全身からは汗が吹き出ており、目も虚ろになっていた。 「…ふぅーん。早いのですわね♪」 「…はぁ、はぁ…くっ…」 荒い息を押さえながら、霧人を楽しそうに眺めるはららを、霧人は睨みつける。 はららはそれを見て興奮しているのか更に息を荒らげながら、その触手の力を強くする。 やがて触手の一本が霧人の口の中へと入れられる。 霧人は抗う事も出来ずそれを受け容れる。やがて触手が自らの先端部分を霧人の口内で上下させる。 霧人は喉奥まで入れられて何度も吐きそうになるものの耐える。 やがて、口から触手が引き抜かれたのを確認すると、霧人は咳き込みながらも、はららに言い放つ。 「…げほっ!げほっ…はぁ、はぁ…はぁ…アタシは…負けない!アンタなんかに…負けない!」 息苦しさからか、恐怖からか霧人の目には涙が貯まる。 しかしなんとかしてそれを流すまいと彼女は変わらずに霧人は睨みつける。 はららからすれば、ここまで快楽を倍増させる触手に《攻撃》されて耐えきれる人物はろくに居ないというのに、よくぞ耐えているという印象。 だが、はららとしては早く彼女を自分の方へと堕ちてほしい。それにはまず、彼女の尊厳を、自尊心を更に打ち砕く必要がある。 「んふふ…♪震えてるわよお姉さま♪ただいつまで言ってられるかしら?」 はららの言うとおり、霧人は震えていた。 霧人に実戦経験はない。ゆえに、いつもヴィラン達を倒す事前提で勝負を仮定していた。 しかし、今自分は体の自由を奪われ、こうやって凌辱を受けている。 しかし、誇り高き不死原一族の代表として、ヒーロー養成所首席としてここで屈してはいけない、と。 襲い来る快感と、恐怖に耐えながらも、最後にわずかながら残っていた《勇気》から、霧人はなんとか屈せずに済んだ。 だが、はららはここで容赦をするようなこともしない。はららが舌なめずりをした瞬間、霧人の口内で《攻撃》していた触手の一本が、霧人の股関節へと這い寄った。 ゆっくりと、太ももを伝っていき触手特有の滑りで霧人へ更なる快楽を与えながら、やがて触手が迫ったのは、霧人の短いスカートの下に履かれていた真っ黒の紐下着。 「!?やめっ、そこはっ!」 「あらあ~?男性経験無いのですわねぇ。そんな格好にしては意外ですわぁ」 霧人が今度こそ我慢が出来なくなり、両目から涙を流しながら、必死に触手の侵入を防ごうと足を組もうとする。 だがが、はららは嬉しそうに触手に命令を出すと、それを防ぐように体を磔の状態から大の字にする。 やがて、触手は霧人の下着の薄い布をどけるように、彼女の《ナカ》に侵入していこうと、徐々に迫っていく。 霧人は声にならない声を出しながら、必死に体をじたばたさせて、少しでも挿入を防ごうとするが、押さえつけられている触手が強くてピクリとも動かない。 そして、ついに霧人の《入り口》近くに、触手の先端が触れた。 「やめ、やめて!やめ…やめてえええええええっっ!」 ───パンっ 唐突な銃声だった。その音がした方を見ると、一人のリクルートスーツを着た短髪の女性が高級そうな車の運転席の窓から体を出して、こちらに拳銃を構えていた。 恐らく向けられたのははららだったのだろう。縛りつけていた右手の触手の一本が狙撃されたことに驚き、すべての触手の力が緩む。 それを女性は見逃さない。霧人の近くへと車を走らせると、窓から叫ぶ。 「早く乗って!いいから早く!」 霧人は落ちていた自分のディパックを持ち、後方座席に飛び乗った。 それを確認するやいなや、車は大きな音を立てて走り出すのであった。 ----------------------------------------------------------- 「あらぁ、逃がしちゃったぁ」 一人、残されたはららは自分の加虐を邪魔されたに関わらず、妙にご機嫌であった。 彼女の持つ力は大きく分けて三つ。 一つは触手を操ること。もう一つは相手の身体能力を下げる魔法。そしてもう一つは死者の怨念や恨みを元にしてアクのマスコットを作り上げることである。 それをするには彼女の唾を死者に飲ませること、つまりキスをすることが必要になる。 能力の点で、はららはひとつ疑問があった。 夢野セレナや高村和花。久澄アリアに立花道雪といった正義の魔法少女たちの闘いではもっと多くの触手を出せていたはずであるし、なにより身体能力を下げる魔法も、かけてしまえば無力化させれるほどの効果があるはずだが、先程の霧人の行動を見ると永続していない。 更に普段はない体力の消耗も感じられる。 この様子だとあの主催に制限でもされてしまったのだろう。マスコットを作る際にも何か制限があるかもしれない。 「んふ、まあいいですわぁ。楽しみですわこのイベント。殺し合う気はさらさら無いけれど、私は私の好きなようにやらせてもらうこと致しましょう♪」 しかし、彼女はそんなこと気にはしない。快楽と堕落を愛する彼女が求めるのは多くの人間が快楽に溺れ、堕ちていく姿。 強く正義の心を持った人々が自分のところへ堕ちていく姿をただ見たいだけだ。 あの魔法少女たちも多く参加しているようであるし、先程の霧人のようにまだ見ない《加虐対象》がいるはずだ。 「んふ、んふふふふ♪んふふふふふっ♪………はぁぁぁんっ♪♪♪」 悪の魔法少女は、高らかに、淫らに夜にて笑う。 --------------------------------------------------- 打って変わって先程の車内。 スーツを着た巨乳の女性、西崎詩織は慣れない左ハンドルに苦戦しながらも夜道を駆け抜ける。 まさか自分に支給されたのが自動小銃と車だとは思わず驚いたが、先程の状況を考えて大当たりであったなと考えていた。 ルームミラーを見て、後部座席の少女に目をやる。 右端に小さく縮こまるようにして、虚ろな瞳で一点を見つめている。 (無理もないか…あんなことされてたんだものね…) 見たところ触手?のようなもので色々淫らなことをされていたようであったし、まだ年端もない若い女の子があんな目にあえばそうなるに決まっている。 警察という職業柄、そういう場面は多く見てきてはいるが、そのたびに同じ女性として怒りを感じている。 ただまずはその怒りをぶつけるよりも、この女の子の精神的ケアが必要だ。 (どこか休める場所を探さないと…) 助手席に置いてある地図を見る。すぐ近くには運良く病院がある。 ここに出向いて薬や包帯などの医療品を回収するがてら、この少女の話を聞くのが今の段階ではいいだろう。 車の走らせている方向も会っているし、丁度いい。 「…ほんとにどうなってんのよ…旗も消えてるし…何が起きてるの?」 自分のいた日常に突如発生した《旗》。あの胡散臭い探偵黒田翔琉に頼まれ情報をネットで集めていたところを、呼び寄せられた。 迷惑な話であるが、いま自分にできることはこれを開いた主催を捕まえること。そして、《旗》との関連性を探ることだ。 もし、この場所に黒田翔琉が呼ばれているならば、彼も同じように《旗》との関連性を調べるはず。 普段は迷惑ごとばかり押しつけてくる男だが、こういう窮地では頼りになる、はずの男だ。 夜道の運転は慣れないが、今ばかりは仕方ない。あの男と合流を目指そう。 「…助けて、助けてサムライ…」 一方の霧人は初めての《支配される恐怖》に怯えながら、絞り出されるように、居候の柳生十兵衛の呼び名を呼んだ。 名簿の中に乗っていた、彼女にとって唯一実際の面識がある人物。 普段は喧嘩してばかりで面倒事を押し付けて、それでよく叱られて面倒くさい存在と思っていた。が、恐怖心を植えつけられた霧人にとって、今は無性に、彼に会いたかった。 ───おい霧人!お前さんまたてぃっしゅをポケットに入れたまま洗濯しただろ! ───うるさいわね!アンタこそ着物何着持ってんのよスーツとか着なさいよ! いつも通り喧嘩して。 ───今日はお前さんの好きな《おむらいす》だぞっと…おい!先に手洗ってきやがれ! ───いいじゃない早く食べるわよ。つかアンタこれ誰に習ったの? いつも通りアイツの作ったご飯を食べて。 ───まーた灰色女(グレービッチ)!イライラするわアイツら!でしょ!サムライ! ───あー、そうたなぁー。それよりイライラするのは分かるが俺を殴るのはやめてくんねぇかな? いつも通り有名なヒーローの悪口を聞いてもらえれば。 少しでもこの恐怖心を薄めてもらえるはずだ、と信じたくて。 「…早く、助けて…!」 そんな小さな霧人の言葉に気づいたものの、詩織は何も触れずにアクセルを踏み直す。 やがて夜の道を、一台の真っ黒な車が走り抜けていった。 【F-2/町/1日目/深夜】 【闇ツ葉はらら@アースMG】 [状態]:快感、疲労(極少) [服装]:ボンテージとマント [装備]:なし [道具]:基本支給品、不明支給品1~3 [思考] 基本:《強い存在》を快楽や様々な方法を使い堕落させる 1:霧人お姉さまはまた次の機会ですわね♪ 2:魔法少女達を狙う 3: [備考] ※魔法の効果が大きくダウンしており、使用には体力をやや消耗します。 また触手の数は右手左手それぞれ五本ずつまでです。 【不死原霧人@アースH】 [状態]:ショック、恐怖 [服装]:カウガール、やや乱れ [装備]:ロープ@アースR [道具]:基本支給品、不明支給品1~2 [思考] 基本:この殺し合いを終わらせる 1:サムライ(柳生十兵衛)に会いたい 2:闇ツ葉はららへの恐怖 [備考] ※名簿は確認しています。 【西崎詩織@アースD】 [状態]:やや動揺 [服装]:リクルートスーツ [装備]:ジェリコ941(16 /16)@アースR、ジェリコ941の弾《32/32》スパイダー・コルサ@アースA [道具]:基本支給品 [思考] 基本:困ってる人を助ける 1:黒田翔琉との合流を目指す 2:病院へ行く [備考] 【スパイダー・コルサ】 イタリアの車会社、アルファロメオ社のスパイダーコルサ。 ムッソリーニの愛車。 【ジェリコ941】 イタリアのタンフォリオ社の技術を供与されたイスラエルのIMI社が開発した自動拳銃。警察機関の装備として有名。デザートイーグルに似てるので《ベビーイーグル》と呼ばれてる。 【ロープ】 ただのロープ。
ひやりとした風が吹く深夜の住宅街。 そこに一人の少女が、手に握られたICレコーダーに耳を傾けていた。 頭に被ったカウボーイハットから飛び出るようにして真っ黒な髪が外側にはねており、耳には金色のピアスが開けてある。 首にはスカーフが巻かれていてノースリーブのレザーの革ジャンの下は黒いビキニ一枚という姿が、彼女の露出度を大きく上げていた。 スカートは膝上10cm近く短い、これもまたレザーで出来たもので、靴はやはりレザーのブーツ。 腰のところにはホルスターがつけられており、これだけで彼女はまるでカウガールのように思われた。 「いいじゃないいいじゃないこういうのっ!アタシが待ち望んでたことじゃない!」 そんなカウガール少女、不死原霧人はICレコーダーの音声を聞き終わると喜びを隠せないような素振りを見せ、その場で飛び跳ねた。 彼女はあの有名ヒーローの登竜門である国立ヒーロー養成所の2年生首席である。 そんな優等生である彼女にとって、もはや養成所の座学や実践練習は予習をせずとも簡単な物であった。 先ほど見た参加者候補の名簿の中には自分の家の居候、柳生十兵衛を除くと雨谷いのりや裏切りのクレア、更には早乙女親子(本人はグレービッチと呼んでいる)らが名を連ねている。 いつか捕まえてみたいと思っていた危険人物だ。普段の鍛錬の成果を今こそ見せるときであろう、と彼女は強く決意をしていた。 自分が普段よく使っている二丁のリボルバーが無くなってはいるものの、運良く捕縛に使えるロープは入っていた。これさえあれば、並大抵の敵ならば捕まえることができるだろう。 「んふふ、お姉さま。ご機嫌のようですわね」 そんな機嫌をよくしていた霧人の前に、いつの間にか一人の少女が立っていた。 黒のボンテージに白のマント。髪の毛はピンク色で、唇もラメを含んだ口紅で明るく見える。 顔立ちは幼いが、雰囲気からはそれを一切感じれず、むしろ見た目とは反した淫らな雰囲気を醸し出しており、そのギャップがなおさらその雰囲気を強くさせた。 「ん?誰よアンタ」 「私(わたくし)は闇ツ葉はららと申します。お姉さまは?」 エロティックな少女、はららは会釈をすると、霧人に大して聞き返す。 霧人は手に握ったロープをぶんぶんと振り回しながら、その答えを返す。 「アタシは不死原霧人。早速だけどアンタ、アタシとチーム別じゃん。殺る気?」 霧人が指していたのは、お互いにつけられた首輪の文字のことであった。 霧人の文字は先程確認していて《H》、だが目の前のはららの首輪には《MG》と書いてある。おらくあの音声案内に従うとなるとはららと霧人は敵どうしということになりうる。 霧人はそれを危惧しており、実際に闘うという場合であるならば、やられるだけではいられない。 きちんと応戦する必要があるのだ。 霧人はそれを言い終わると腰を据えて、一旦はららと距離を置く。養成所で習った臨戦態勢の実践だ。 「んふふふふ…♪殺しはしませんわ、ただ───あなたのような気の強いお姉さまを跪かせるのが、私の趣味なのですわっ!」 はららは言い終わる前に、自分の両手の掌からそれぞれ五本はあるだろうと思われる触手を出し、霧人へと向けた。 霧人は距離を置いて、回避行動が可能であったためかそれを横への緊急回避で避ける。 当たらなかったのを確認するように触手がはららの元へと、また戻っていく。 それを見ていた霧人は、余裕の表情ではららに向けて言い放つ。 「へー!いいわねえーそれ!やっぱヴィランの攻撃手段としては映えるわね触手って」 「ヴィラン…?んふ、巷では私のことをそう呼ぶのですわね…」 「そーよ、アンタらはヴィラン、そして私がヒーローなの!」 そして霧人ははららの距離を縮めながら持っていたロープを輪っかにして、それをまるで投げ輪のようにしてはららに投げる。 その速度は早く、はららもよけず、その輪の中に入ってしまう。 そしてそこから霧人が手に残っていたロープを引っ張るとはららは自身の腰のあたりから手の上を通って強く縛りつけられた。 「観念なさいヴィラン闇ツ葉はらら!この殺し合い終わらせたらアンタを刑務所にぶち込んでやるから!」 霧人は自分が憧れたヒーローのように、声高らかに声を挙げる。 これでやっと、自分も幼い頃から憧れていたヒーローに近づける。 《闇ツ葉はらら》というヴィランは有名ではないが、別にいい。実戦経験0の霧人にとってはこの結果は最高の物だろう。 そう、彼女は思った。いや、思ってしまった。 「お姉さま、油断大敵ですことよ」 はららがニヤリと笑うと縛られていた右手から五本の触手をまとめ合わせたような、太い触手が飛び出した。 霧人は手を封じなかったのはしまった、と考えたものの避けることができる速度だ。先程のような緊急回避もいらない。横に飛ぶように避ければいい。 そう思い、行動に移そうとした。だが─── (動かない!?) 正確に言うと、動かないのではない。 本来霧人の反射神経があるならば簡単によける事ができた。 判断も間に合っているはず。しかし、足が動かない。 はららの方に目をやる。片眼が紫色になり彼女から禍々しい気が発せられている。 おそらく魔術か何かを使われたのだろう。霧人はそう判断する。 そして霧人がそう判断した瞬間に、今度ははららの触手が霧人へと襲いかかる。 触手は霧人の手足を縛りつけると、キリストが磔にされたような格好にして、宙ぶらりんにした。 「さぁ、形勢逆転ですわよ、お姉さま?」 はららが縛られていたロープを触手に切らせると、ニコニコと笑って霧人を眺める。 その表情は間違いなく加虐を企もうとするものである。 霧人は失態を犯したと感じていながらも、触手をなんとか離そうともがくが、自分ひとりの力では離すことができない。それほどまでの強い力であった。 「何を…!こんなもんで私を押さえつけたつもり?舐めんじゃないわよ!」 「んふ、いつまで耐えきれるか見ものですわね♪」 霧人が絞り出すように言った言葉を待ってましたというように、はららは残っていた左手の触手を霧人へと向けた。 しかし、その行き先は霧人の首や腹といった急所ではなく、その薄着で大きく主張された、豊満な乳房であった。 「な、やめ───んあっ…!」 「んふふ、薄着で助かりましたわ、破く必要もないんですもの」 触手は霧人の乳房を縛るように、かつ揉みしだくように絡みつく。 前述の通り霧人はレザージャケットの下は黒いビキニ一枚だ。剥ぎ取らずとも、触手による《攻撃》によって快感を与えることははららにとって簡単である。 ここで、快楽を倍増させる魔法を触手にかけた。触手の表面に滑り(ぬめり)ができて、尚更その《攻撃》は加速していく。 「ん、んんんんっ!!あっ…!あっあああっ!!」 「快楽には、人間は逆らえないのですわ。男だろうと女だろうと。赤ん坊でも老人でも。誰だろうと逆らえないのですわ」 くすり、と笑うはらら。 やがてそのまま触手が胸だけでなく霧人の体の様々なところを《攻撃》していると、2、3回ほど霧人は跳ねて、やがて全身の気が抜けたようになっていた。 全身からは汗が吹き出ており、目も虚ろになっていた。 「…ふぅーん。早いのですわね♪」 「…はぁ、はぁ…くっ…」 荒い息を押さえながら、霧人を楽しそうに眺めるはららを、霧人は睨みつける。 はららはそれを見て興奮しているのか更に息を荒らげながら、その触手の力を強くする。 やがて触手の一本が霧人の口の中へと入れられる。 霧人は抗う事も出来ずそれを受け容れる。やがて触手が自らの先端部分を霧人の口内で上下させる。 霧人は喉奥まで入れられて何度も吐きそうになるものの耐える。 やがて、口から触手が引き抜かれたのを確認すると、霧人は咳き込みながらも、はららに言い放つ。 「…げほっ!げほっ…はぁ、はぁ…はぁ…アタシは…負けない!アンタなんかに…負けない!」 息苦しさからか、恐怖からか霧人の目には涙が貯まる。 しかしなんとかしてそれを流すまいと彼女は変わらずに霧人は睨みつける。 はららからすれば、ここまで快楽を倍増させる触手に《攻撃》されて耐えきれる人物はろくに居ないというのに、よくぞ耐えているという印象。 だが、はららとしては早く彼女を自分の方へと堕ちてほしい。それにはまず、彼女の尊厳を、自尊心を更に打ち砕く必要がある。 「んふふ…♪震えてるわよお姉さま♪ただいつまで言ってられるかしら?」 はららの言うとおり、霧人は震えていた。 霧人に実戦経験はない。ゆえに、いつもヴィラン達を倒す事前提で勝負を仮定していた。 しかし、今自分は体の自由を奪われ、こうやって凌辱を受けている。 しかし、誇り高き不死原一族の代表として、ヒーロー養成所首席としてここで屈してはいけない、と。 襲い来る快感と、恐怖に耐えながらも、最後にわずかながら残っていた《勇気》から、霧人はなんとか屈せずに済んだ。 だが、はららはここで容赦をするようなこともしない。はららが舌なめずりをした瞬間、霧人の口内で《攻撃》していた触手の一本が、霧人の股関節へと這い寄った。 ゆっくりと、太ももを伝っていき触手特有の滑りで霧人へ更なる快楽を与えながら、やがて触手が迫ったのは、霧人の短いスカートの下に履かれていた真っ黒の紐下着。 「!?やめっ、そこはっ!」 「あらあ~?男性経験無いのですわねぇ。そんな格好にしては意外ですわぁ」 霧人が今度こそ我慢が出来なくなり、両目から涙を流しながら、必死に触手の侵入を防ごうと足を組もうとする。 だがが、はららは嬉しそうに触手に命令を出すと、それを防ぐように体を磔の状態から大の字にする。 やがて、触手は霧人の下着の薄い布をどけるように、彼女の《ナカ》に侵入していこうと、徐々に迫っていく。 霧人は声にならない声を出しながら、必死に体をじたばたさせて、少しでも挿入を防ごうとするが、押さえつけられている触手が強くてピクリとも動かない。 そして、ついに霧人の《入り口》近くに、触手の先端が触れた。 「やめ、やめて!やめ…やめてえええええええっっ!」 ───パンっ 唐突な銃声だった。その音がした方を見ると、一人のリクルートスーツを着た短髪の女性が高級そうな車の運転席の窓から体を出して、こちらに拳銃を構えていた。 恐らく向けられたのははららだったのだろう。縛りつけていた右手の触手の一本が狙撃されたことに驚き、すべての触手の力が緩む。 それを女性は見逃さない。霧人の近くへと車を走らせると、窓から叫ぶ。 「早く乗って!いいから早く!」 霧人は落ちていた自分のディパックを持ち、後方座席に飛び乗った。 それを確認するやいなや、車は大きな音を立てて走り出すのであった。 ----------------------------------------------------------- 「あらぁ、逃がしちゃったぁ」 一人、残されたはららは自分の加虐を邪魔されたに関わらず、妙にご機嫌であった。 彼女の持つ力は大きく分けて三つ。 一つは触手を操ること。もう一つは相手の身体能力を下げる魔法。そしてもう一つは死者の怨念や恨みを元にしてアクのマスコットを作り上げることである。 それをするには彼女の唾を死者に飲ませること、つまりキスをすることが必要になる。 能力の点で、はららはひとつ疑問があった。 夢野セレナや高村和花。久澄アリアに立花道雪といった正義の魔法少女たちの闘いではもっと多くの触手を出せていたはずであるし、なにより身体能力を下げる魔法も、かけてしまえば無力化させれるほどの効果があるはずだが、先程の霧人の行動を見ると永続していない。 更に普段はない体力の消耗も感じられる。 この様子だとあの主催に制限でもされてしまったのだろう。マスコットを作る際にも何か制限があるかもしれない。 「んふ、まあいいですわぁ。楽しみですわこのイベント。殺し合う気はさらさら無いけれど、私は私の好きなようにやらせてもらうこと致しましょう♪」 しかし、彼女はそんなこと気にはしない。快楽と堕落を愛する彼女が求めるのは多くの人間が快楽に溺れ、堕ちていく姿。 強く正義の心を持った人々が自分のところへ堕ちていく姿をただ見たいだけだ。 あの魔法少女たちも多く参加しているようであるし、先程の霧人のようにまだ見ない《加虐対象》がいるはずだ。 「んふ、んふふふふ♪んふふふふふっ♪………はぁぁぁんっ♪♪♪」 悪の魔法少女は、高らかに、淫らに夜にて笑う。 --------------------------------------------------- 打って変わって先程の車内。 スーツを着た巨乳の女性、西崎詩織は慣れない左ハンドルに苦戦しながらも夜道を駆け抜ける。 まさか自分に支給されたのが自動小銃と車だとは思わず驚いたが、先程の状況を考えて大当たりであったなと考えていた。 ルームミラーを見て、後部座席の少女に目をやる。 右端に小さく縮こまるようにして、虚ろな瞳で一点を見つめている。 (無理もないか…あんなことされてたんだものね…) 見たところ触手?のようなもので色々淫らなことをされていたようであったし、まだ年端もない若い女の子があんな目にあえばそうなるに決まっている。 警察という職業柄、そういう場面は多く見てきてはいるが、そのたびに同じ女性として怒りを感じている。 ただまずはその怒りをぶつけるよりも、この女の子の精神的ケアが必要だ。 (どこか休める場所を探さないと…) 助手席に置いてある地図を見る。すぐ近くには運良く病院がある。 ここに出向いて薬や包帯などの医療品を回収するがてら、この少女の話を聞くのが今の段階ではいいだろう。 車の走らせている方向も会っているし、丁度いい。 「…ほんとにどうなってんのよ…旗も消えてるし…何が起きてるの?」 自分のいた日常に突如発生した《旗》。あの胡散臭い探偵黒田翔琉に頼まれ情報をネットで集めていたところを、呼び寄せられた。 迷惑な話であるが、いま自分にできることはこれを開いた主催を捕まえること。そして、《旗》との関連性を探ることだ。 もし、この場所に黒田翔琉が呼ばれているならば、彼も同じように《旗》との関連性を調べるはず。 普段は迷惑ごとばかり押しつけてくる男だが、こういう窮地では頼りになる、はずの男だ。 夜道の運転は慣れないが、今ばかりは仕方ない。あの男と合流を目指そう。 「…助けて、助けてサムライ…」 一方の霧人は初めての《支配される恐怖》に怯えながら、絞り出されるように、居候の柳生十兵衛の呼び名を呼んだ。 名簿の中に乗っていた、彼女にとって唯一実際の面識がある人物。 普段は喧嘩してばかりで面倒事を押し付けて、それでよく叱られて面倒くさい存在と思っていた。が、恐怖心を植えつけられた霧人にとって、今は無性に、彼に会いたかった。 ───おい霧人!お前さんまたてぃっしゅをポケットに入れたまま洗濯しただろ! ───うるさいわね!アンタこそ着物何着持ってんのよスーツとか着なさいよ! いつも通り喧嘩して。 ───今日はお前さんの好きな《おむらいす》だぞっと…おい!先に手洗ってきやがれ! ───いいじゃない早く食べるわよ。つかアンタこれ誰に習ったの? いつも通りアイツの作ったご飯を食べて。 ───まーた灰色女(グレービッチ)!イライラするわアイツら!でしょ!サムライ! ───あー、そうたなぁー。それよりイライラするのは分かるが俺を殴るのはやめてくんねぇかな? いつも通り有名なヒーローの悪口を聞いてもらえれば。 少しでもこの恐怖心を薄めてもらえるはずだ、と信じたくて。 「…早く、助けて…!」 そんな小さな霧人の言葉に気づいたものの、詩織は何も触れずにアクセルを踏み直す。 やがて夜の道を、一台の真っ黒な車が走り抜けていった。 【F-2/町/1日目/深夜】 【闇ツ葉はらら@アースMG】 [状態]:快感、疲労(極少) [服装]:ボンテージとマント [装備]:なし [道具]:基本支給品、不明支給品1~3 [思考] 基本:《強い存在》を快楽や様々な方法を使い堕落させる 1:霧人お姉さまはまた次の機会ですわね♪ 2:魔法少女達を狙う 3: [備考] ※魔法の効果が大きくダウンしており、使用には体力をやや消耗します。 また触手の数は右手左手それぞれ五本ずつまでです。 【不死原霧人@アースH】 [状態]:ショック、恐怖 [服装]:カウガール、やや乱れ [装備]:ロープ@アースR [道具]:基本支給品、不明支給品1~2 [思考] 基本:この殺し合いを終わらせる 1:サムライ(柳生十兵衛)に会いたい 2:闇ツ葉はららへの恐怖 [備考] ※名簿は確認しています。 【西崎詩織@アースD】 [状態]:やや動揺 [服装]:リクルートスーツ [装備]:ジェリコ941(16 /16)@アースR、ジェリコ941の弾《32/32》スパイダー・コルサ@アースA [道具]:基本支給品 [思考] 基本:困ってる人を助ける 1:黒田翔琉との合流を目指す 2:病院へ行く [備考] 【スパイダー・コルサ】 イタリアの車会社、アルファロメオ社のスパイダーコルサ。 ムッソリーニの愛車。 【ジェリコ941】 イタリアのタンフォリオ社の技術を供与されたイスラエルのIMI社が開発した自動拳銃。警察機関の装備として有名。デザートイーグルに似てるので《ベビーイーグル》と呼ばれてる。 【ロープ】 ただのロープ。

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