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~魔術師の手記~



「モクー=ソトース」
門にして鍵。すべてにして一つ、一つにしてすべてなるもの。
モクー=ソトースの招喚は『ネクロノミコン』完全版を参照のこと。
ただし、実行するべきではない。これは人間が御し得る限界を超えた存在であり、これを招くことは滅びを招くことと同義である。
これは主に人間の女性の姿を取って現れるとされているが、その外見に騙されてはならない。この者は招く者の過去から未来にわたる全てを知悉しており、その痛々しい過去を延々と語り続けるであろう。精神と肉体の双方を蝕む忌むべき存在である。

「シュー=ニグラス」
千の仔を孕みし森の黒山羊。
モクー=ソトースと同格ともされる大いなる豊饒の女神である。
この偉大な存在は、腹部が異様なまでに膨れ上がった黒山羊のきぐるみを纏う少女の姿で現れるとされている。
イネアルカトスキップほどではないしろ不可解な性格を持つこの女神は、かの「這い寄り開墾」に匹敵する米好きとしても知られており、その招喚、祈祷の際にはそれらを用意することが望ましい。また、農村部においては田の豊作を祈願してのシュー=ニグラス信仰が現存している地方も存在するという。それがムー大陸におけるシュー=ニグラス信仰の再現かどうかは不明である。

「イネアルカトスキップ」
八十八の米を持つ女。這い寄り開墾。無謀な神。昼行灯なファラオ。
この存在に関してはわかっていることの方が少ない。確実であると言えるのは、この存在の行動原理が混沌としており、一切合財の予測を無効化するということ、定まった形態を持たず、現れるたびにその姿を変えること、そして米を好むということである。
この存在を招喚しようという愚者はまずいないだろうが、もし志す者がいるとしたら警告しておく。やめておくべきだ。これはモクー=ソトースほどの直接的破壊力は持たないが、それを補って余りあるほどの有害さを持っている。

「イクー」
蛇の神。
アステカのケツアルコアトル、マヤのククルカンなどの原型であるともされている。この神は蛇の守護者であり、母である。
主にギリシャ神話におけるラミアに酷似した妖艶な女の姿で出現するとされているが、ラミアとの関連性は不明である。
蛇を害する者には恐るべき呪いをかけ、蛇を愛する者には様々な恩恵を与えるという。また、時には人間と婚姻し、子を産むこともあると言われるが、詳細は不明である。

「モ=クゥ」
忌まわしい雪女。忌むべきモ=クゥ。ユゴスからきたもの。
ユゴス――先日、惑星の列を離れた冥王星と同一視されることもある――から来た存在であり、神々ほどではないにしろ危険な存在である。
基本的に人間と敵対してはいないが友好的でもない。中立と言ってもよいが、その領域を侵す人間に対しては容赦をせず、時には知識人の脳髄を「外科手術と呼んではあまりにも粗雑に過ぎる巧妙な裂開処置」によって摘出し、宇宙へと連れ去るとも言われている。かのラヴクラフトも晩年、後述の女医に擬態したモ=クゥによって脳髄を摘出されたと伝えられている。
先述の通り、モ=クゥは、主に眼鏡をかけた女医の姿に擬態し、実際に病院に勤め、人間の中に潜んでいる者もいる。彼ら(彼女ら)の医療技術は驚嘆すべきものではあるが、あまり頼りすぎてはならない。

「ショゴスー」
原形質の泡の無定型の塊。
古のものが作り出した奉仕種族であるが、積年の使役の果てに知性を獲得し、創造主達を放逐したとされている。恐るべきはその能力であり、本質としては虹色に輝く無定型の泡の集積物という姿を持つが、彼ら(彼女ら)は必要に応じてその肉体を如何様にも変化させることができる。
一般に凶暴であるとされるが、実際はそうでもなく、適切な方法さえ知っていればその制御も難しくはなく、知る者にとってはこれ以上ないほど便利な召使とすることができる。
また、肉体の変形というところに、この奉仕種族との生活を楽しむ鍵がある。筆者の場合を例とするなら、妙齢の美女、もしくは美少女の姿を取らせ、伝統的なメイド服を着用させ、身の回りの世話をさせるということも可能なのだ。
奥義に到達した者は、ショゴスー数体を護衛及び召使として侍らせておくのが望ましい。

「ツントゥグア」
いじきたなきもの。
暗黒世界のン・カイに棲む神であり、古代ヒューペルボリアにおいて邪神とされ、また魔道士エイボンとの関連において記録に残されている存在である。一般に怠惰であるため出歩くことはなく、獲物や生贄をじっと待ち続けている。食欲旺盛であり、最終的には人間も食料の一種でしかないのだが、この存在が満腹の時は、また何らかの食料を持ち、それを差し出した場合には、一見突き放した、しかしその実としては非常に友好的な態度を取ることもある。
この存在は主に萌え特化型のメイド服を纏った金髪の女としてその姿を顕現させる。

「ハスツゥン」
名伏し難きもの。
星間宇宙の象徴ともされ、多くの従者を従えた偉大な存在である。ヒヤデス星団のアルデバラン近くの暗黒星にあるカルコサに近いハリに幽閉されているという。
この者を招喚する手段としては種々あるが、最も手軽である手段と言えばこれである。
ハスツゥンが封じられているハリに通じるものでもある博多名産の黒き張り子の虎を持ち、関西において使用される黒きハリ扇を使用することである。張り子の虎だけでも解放することは可能だが、ハリ扇を用意しておくのが望ましい。なぜならば、ハリ扇こそ、ハスツゥンを従えるために必要な道具であるからだ。これを用意していない場合、生命の保証はできかねる。
なお、このハスツゥンはゴシックロリータを纏った銀髪の少女の形態を取って現れるとされている。

「クー・トゥルー」
クー・トゥルフ、クー・スルー、クー・ルウ、クー・リトル・リトル、クー・トウリュウ、シュー・ルーなどの多くの別名を持つ、偉大なる海の王にしてルルイエの支配者である。
旧支配者の中ではそれほど高位の存在ではないが、人間から見れば宇宙的な力を持っていることに変わりはない。
深きものどもを従えるこの存在を招喚する方法には諸説あるが、最も簡単なものは、所定の容器にいまだ生まれえぬ一億の生命の源を捧げることである。これによってクー・トゥルーは顕現するのだが、この際、スリッパ(できれば旧神の印つき)を用意しておくのが望ましい。これがあればクー・トゥルーの脅威に対抗することも、困難ではあるが不可能ではない。
なお、この存在は旧スクール水着を纏った絶世の美女として顕現するとされ、その性質は夫たる存在に対しては、聖母の如く貞淑であると同時に娼婦をも凌駕する淫乱さをもって接してくると言われる。

「クー・リトル・リトル」
クー・トゥルーと同一視されることもある海の王にしてルルイエの支配者。クー・トゥルーとの詳細な関係は不明だが――


「何をしているのだ、魔術師よ」
夢見るクーを膝に座らせ、書き物をしていたところ、膝の方から眠たげな声がした。どうやら起こしてしまったらしい。
「書き物をしているのです、クー」
「ほう、そうか。何を書いていたのだ?」
甘えるように私に抱きついて、眠たげな瞳でクーが見上げてくる。
「邪神に関する考察を書いていたのです。後進のために」
「そうか。それよりもな、魔術師よ」
それよりも、と軽く流されてしまったが、確かに邪神にとってはどうでもよいことなのだろう。
「何でしょう?」
「我が見た夢の内容を聞いてくれぬか?」
クー・リトル・リトルという神は、もしかしたら夢によって託宣を伝える巫女のような役割を持っているのかもしれない。
「どのような夢をご覧になったのですか?」
「うむ、それがな……」
クーは夢見る乙女というよりは、夢を無邪気に自慢する子供のように語り出した。
「我は夢の中で、ここではなくルルイエにいたのだ。だが、夢の中にはお前がいなくてとても寂しかった。玉座はお前と違って冷たく、抱き締めてもくれず、撫で撫でしてもくれず、話しかけてもくれなかった。だが、だがな、お前の膝に座りたいと一心に願っていたらいつの間にかお前が現れて、私を温かい膝の上に乗せてくれて、抱き締めてくれて、撫で撫でしてくれて、話しかけてくれた。そうしたら我は何やら安心してしまって、お前の膝の上で眠り込んでしまった。夢の中でまた夢を見た。その夢の中にはお前がちゃんといた。我は嬉しかった。嬉しさのあまり、現実のお前にこのことを教えてやりたいと思うあまり、我は目を覚ましてしまったのだ」
目を輝かせてそう語るクーは、邪神とは思えないほどにあどけない表情を浮かべていた。
「光栄です、クー」
私はクーを抱き締め、柔らかい髪と頬とを優しく撫でた。
「うむ。これからもずっと一緒にいてくれ。我の玉座はお前だけだ。ずっと抱き締めていてくれ」
そう言って私のことを一層強く抱き締め、クーは再び寝息を立て始めた。
「そうですね、クー。ずっと一緒に……私が生きている限り、一緒にいましょう」
さてそのためには、差し当たっては、覚書の中から「クー・リトル・リトル」の項目を削除しなければなるまい。
クーが私以外の魔術師に招喚され、どこかに行ってしまうことがないように。
そのようなことをすれば当然、このクー・リトル・リトル発見の名誉は失われるが、学者としての発見、名声、業績など、膝の上の温もりに比べてどれほどの価値があると言うのか。
私はもう、この幼い邪神が膝の上で寝息を立てていてくれさえすれば、他にはもう、何もいりはしないのだ。


written by 適当 ◆iQ7ROqrUTo


真なるクー異聞 03 | 真なるクー