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~イクーとの遭遇体験談~



ええと、邪神に遭遇した体験談をこれから書きます。
正直、何から書けばいいのか、まだ気分が落ち着いていません。それほどまでにあれは強烈な出来事だったんです。これを書くのは明日に回した方がいいのかもしれませんが、そんなことを言っているといつまで経っても書けそうにありません。だから今の内に書いてしまうことにします。


今朝、僕が目を覚ますと、滅多にならないチャイムが何度も何度も、まるで目覚まし時計か何かのように鳴り響いていた。最初は隣の部屋に客が来ているのかと思って鬱陶しかったが、十秒ほど経過して、我が家のチャイムが鳴らされているのだということに気がついた。
うるさいと思いつつ扉を開けると、そこにはちょっとどう表現すればいいのか迷う人が佇んでいた。
彼女の性別は女で、そして超絶的な美人だ。髪の毛は黒で、胸を覆い、背中の半ばに達するほどに長い。年齢は二十代半ばから三十歳、つまり僕より少し上くらいに見える。
ここまでは別にどうということはない。街で見かけたらついつい視線を向けてしまう美人だというだけのことだ。問題はここから先だ。
まず、服を着ていなかった。母性を感じさせる柔らかそうな巨乳からなだらかな肩の曲線、過不足なく肉のついた腹部まで、全てが剥き出しだった。
次――最も重要な点――に、彼女の下半身は蛇だった。比喩でも何でもなく、彼女の下半身は、まるでギリシャ神話のラミアのような大蛇のそれだった。美しく輝く緑色の鱗に覆われたそれは人間の胴体と変わらないほどの太さで、その長さは十メートル単位に及ぶのではないだろうかとさえ思われた。
「な、な、何なんだ……」
僕は情けないことにその場で腰を抜かし、尻餅を突いたままその異形の美女を見上げることしかできなかった。殺されるかもしれないという恐怖よりも、何か途方もない存在を前にしているような本能的な恐怖の方が強かった。
「私はイクー。全ての蛇の母たるイクー」
イクー。魔術に傾倒している先輩に夏休みの暇潰しようにと貸して貰い、今では読破したことを後悔している、忌まわしいフォン・ユンツトの『無名祭祀書』によれば、蛇の神。蛇の守護神だが決して人間に敵対的な神ではなく、蛇を大切にする者には優しく、祝福を与える存在であるという。
「ほ、本物……?」
「我が名を騙る者には蛇の呪いが訪れよう」
豊かな胸を張ってそう答えると、イクーは這いずる音を立てて僕の部屋に上がり込んできた。扉は開けっ放しで、我が物顔で上がり込み、その恐ろしいくらいに長い身体で部屋を満たした。足の踏み場がないこともないが、これ以上何かを置くことができないくらいになってしまった。
「まあ座るがよい」
どうすることもできず、呆然と突っ立っていたところ、イクーが、まるでここが自分の家であり僕が客人であるかのような態度で座るよう勧めてきた。しかし、座る場所がない。どこもかしこも緑色の蛇の尻尾で一杯だ。
「私の身体に腰掛けてよい」
「あ、ど、どうも……」
お言葉に甘えることにした。これほどの大蛇に触った経験など無論なかったので少し怖かったが、ひんやりとして心地よく、また適度な弾力があり、下手なソファーや座布団よりも余程座り心地がよかった。
「座り心地はどうだ?」
「あ、す、凄く、いいです」
「そうか。それはよかった」
素直な感想を言うと、イクーはしかつめらしく頷いた。その動作で長髪に隠された豊満な胸が揺れ動くのが見えた。いけないとは思いつつも、視線が釘付けになってしまう。
「私の胸が気に入ったか? 触るか?」
「え、あ、いや、その……」
これはとても素直な感想など言えやしない。そこまで羞恥心が欠如しているわけではない。
このままだと何だかまずい方向に話がいきそうなので、話題を替えることにした。
「その、イクー……様は、どうして僕を訪ねていらっしゃったんですか?」
「様はいらない。敬語もだ」
「あ、そ、そうですか……」
そう言われても、仮にも神に対して対等な口を利くというのは、そう簡単なことではない。第一、恐ろしい。
「いらないと言っている」
「あ、う、うん……」
しかし気分を害されても困るので、ここは大人しく従った方がいいに違いない。
「それでよい」
「それでイクー……は、どうして僕の所に?」
本当に謎だ。僕は蛇を虐めたことなどないから祟られる謂われはない。もし祟ろうと言うのならそれは誤解によるものだ。
「お前は以前、我が子を助けた。その褒美を取らせにきたのだ」
我が子――つまり蛇。蛇を助けたことなどあったのだろうか。ああ、そういえばそんなこともあった。ワルガキに殺されかかっていた蛇をドブに蹴落として助けてやったことがあった。
「いや、そんな、大したことじゃないから」
「お前にとってはそうだ。だが私は我が子を救って貰った。我が子は命を救って貰った。我々にとっては重要なことなのだ」
そう語るイクーの目は酷く真剣なものだった。蛇のような瞳が僕を凝視し、強烈な何かを訴えかけてきた。
「だから私はお前に褒美を与えなければならない。いや、与えたいのだ。一人の母として、雌として」
重量のある物体が床を擦るような音を立てて、イクーの上半身――裸の美女――が僕に近づいてきた。蛇の双眸は心なしか潤んでいるように見える。
「お前に褒美を選ばせてやろう。どれがよい。一つはお前が私の夫となること。一つは私がお前の妻となること。一つは我々が夫婦の契りを交わすこと。さあ、好きなものを選べ。いや、全てを与えてやる。私の全てをお前にやろう。だからお前の全てを私に与えてくれ」
よく考えなくても、どれを選んでも一緒の結末になることがわかる。というか、いつの間にか褒美から取引めいたものに話が変わっている。
「いや、あの、権利放棄というのは……?」
「お前は私が嫌いか? 私と契るのは嫌か? 私と交わりたくないか? 子持ちの雌は嫌か?」
そう言った途端、息がかかるほどの至近距離まで顔を近づけられ、これ以上ないほど真剣に問いかけられ――問い詰められた。
「いや、そんなことは……」
イクーは恐ろしいほどの美人だ。顔が美しいだけでなく体型の方も美しい。気立てもよさそうな感じがする。もし人間だったら絶対に結婚したいと思う。しかし相手はイクー――蛇の神だ。人間が手を触れていいような存在ではない。
「お前は私を嫌っていない。私はお前を気に入った。何の問題がある。発情し、つがいとなることを欲する雌を拒絶する必然性がどこにある」
イクーの冷たくさらさらとした尻尾が僕の身体に巻きつき、動きを封じてきた。美しく温かい上半身を密着させ、甘い声で囁いてくる。
「大丈夫だ。私に任せておけ。気持ちよくしてやる――気持ちよくなろう。私と一つになろう、背の君よ」
安物の寝間着が力任せに引き裂かれ、僕もイクーと同じ生まれたままの姿にされてしまった。
「ほら、口では何のかんのと言っても、お前もやはり雄ではないか。おお、とても立派だぞ、お前の『蛇』は。そうか、私の中に入りたいか。よしよし、おいで……」


ここから先が本番なんですが、嫁がさっきから構って欲しそうに尻尾を絡めてくるので、今日はもうここで終わりにします。僕のくだらない話を読んでくださってどうもありがとうございました。


written by 適当 ◆iQ7ROqrUTo


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