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*真なるクー異聞 ~モクー=ソトースの招喚~ ありとあらゆる時空間に身を接する窮極の存在モクー=ソトース。 私はその知識を手に入れ、未来の栄達を求めてかの神性を招喚することにした。 禁断の『ネクロノミコン』完全版におけるモクー=ソトース招喚の法――第九の詩その他――を参照し、裏山に築き上げた環状列石内部において所定の儀式を執り行うことにしたが、儀式の詳細は割愛する。もしこの手記を読み、私に続かんとする者がいるのなら、やめておくべきだ。それは不幸しかもたらさず、永劫の苦痛を呼び覚ますだけだ。 儀式はつつがなく終了した。壮烈な気配が列石上空に満ち満ちて、夜空の虚空が震え、爽やかな山の大気が揺らぐ。 それは空に出現した。丸い。球体だ。見るたびに色の変わる、名状しがたき球体の集積だ。 ゆっくりと降りてくる。重力を無視した鬼火のように降りてくる。世界が歪んでいく。 いや、歪んでいるのは世界ではなく、私の視界か。恐ろしい。呼び出すのではなかった。 私よりも遥かに優れた技倆と深き智慧を持ち、クー・リトル・リトルの招喚に成功した同輩の警告を受け容れておくべきであった。 これは彼の述べる通り、私の――人間の扱い、御し得る限界を超えた存在だ。 来た。私の眼前に降り立ったそれは、しばしの時を大地の上を蠢きのた打って過ごし、やがて――何ということか――それは慄然たる不快な波動を発しながら収縮を繰り返し、いつしかその異形の実体を人型のそれへと変じた。 見ているだけで卒倒してしまいそうなまでに美しく、恐ろしく、おぞましい。 それは二十代と思しき長髪の日本人女性の姿へと姿を変じ、じっと私を見ている。 顔には全てを見通す者ならではの酷薄な笑みすら浮かんでいる。 最も恐ろしく、そして不可解なのが、その者が纏う衣装である。 女性としてこれ以上を望むべくもない完璧な肉体は、白いガウンの無垢な布によってのみ秘められていた。半ば肌蹴た合わせ目から深遠な谷間を覗かせ、挙動に合わせて波打つようにして揺れる、量感溢れる乳房が魔性の妖艶さを象徴していた。 「……何か……用……?」 美貌と恐怖に魅入られたようになっていた私は、そのか細い音が眼前の存在の発した言葉であるということに気づくのに、非常に長い時間をかけてしまった。 私はようやくにして言葉を絞り出し、門にして鍵であるモクー=ソトースに応えた。 「貴方様の持つ、時空に跨る知識をお借りしたいのです」 「わかった……君……その歳で……童貞……皮……被ってる……」 「そ、それは……い、一体何を……」 モクー=ソトースは全てを見ている。何もかもを知っている。 だが、それがなぜ私の過去を暴き立てるが如きを行うのか。 「初恋……小学校の頃……手紙……出した……けど……教室内で……朗読される……酷い……失恋……」 やめてくれ。お願いだ。やめてくれ。もう嫌だ。 モクー=ソトースのか細い声による忘却の深淵に葬り去った記憶への言及は続いた。 その中でモクー=ソトースはその中で、ようやくにして家に連れ込むことに成功した女に包茎であることを知られ、侮蔑の言葉と共に去られた記憶や魔術に傾倒したことによって「キモオタ」と罵られ、社会から阻害されてきた記憶、インターネット上では煽られ、叩かれ、何をなそうとも粘着されて潰されてきた記憶、その他諸々の深き傷跡を抉り返すが如き悪夢の言及を続けた。 とても全てを書き留める気にはなれない延々数時間に及ぶその言及が現在の私に追いついた頃には、私は啜り泣き、意味を成さない嗚咽を漏らして大地に平伏していた。 私は一心不乱に祈っていた。この悪夢の終息を。送還呪文の詠唱などは考えられなかった。そのような気力など、残ってはいなかった。 「……大丈夫……」 モクー=ソトースの手が、涙と涎と鼻水に汚れた私の頬を撫でた。 名状しがたき悪寒と共に法外な悦楽が私の身体を貫いた。 「これから……永劫……私と戯れるの……私……君の……全て……知ってる…… 生まれる……前から……今日……君が死ぬまで……見ていた……君が私の…… ものになる……今を……何度も……体験……君が……私の近く……にいる……時間を…… 何度……も経験……そのたび……歓喜に身を……震わせ、永劫の円環……に在って…… ただ……その時だけ……待ち構えて……繰り返してきた……」 優しげな手つきで何度も私の頬を撫でるモクー=ソトースの言葉は人の身には難解であり、或いはクー・リトル・リトルに仕えし同輩ならば理解できるかもしれないが、私の理解の埒外にあった。 ただ一つ理解できることは、私には恐るべきモクー=ソトースの従者となる以外の道が一切合財閉ざされてしまったということだけだ。 ああ、モクー=ソトースが淡い笑みを浮かべて私に圧し掛かってくる。 肌蹴たガウンが脱ぎ捨てられ、一糸纏わぬ、生まれ出でたるままの姿となったモクー=ソトースが、柔らかく滑らかな肉体を私に押し付け、おぞましくも美しい大蛇の如く身を絡ませてきた。 ああ、ああ、ああ、正常な思考が保てない。何だこの快楽は。人間が得てよいものではない。 ああ凄いおぞましい狂おしい身の毛がよだつ心が壊れて直されて時空を超越して世界が歪む意識が曲がっていく助けて誰か気持ちいいもう駄目だ嫌だやめて助けて…… ***written by 適当 ◆iQ7ROqrUTo ---- *[[真なるクー 06]] | [[真なるクー 08]] ----
*~モクー=ソトースの招喚~ ありとあらゆる時空間に身を接する窮極の存在モクー=ソトース。 私はその知識を手に入れ、未来の栄達を求めてかの神性を招喚することにした。 禁断の『ネクロノミコン』完全版におけるモクー=ソトース招喚の法――第九の詩その他――を参照し、裏山に築き上げた環状列石内部において所定の儀式を執り行うことにしたが、儀式の詳細は割愛する。もしこの手記を読み、私に続かんとする者がいるのなら、やめておくべきだ。それは不幸しかもたらさず、永劫の苦痛を呼び覚ますだけだ。 儀式はつつがなく終了した。壮烈な気配が列石上空に満ち満ちて、夜空の虚空が震え、爽やかな山の大気が揺らぐ。 それは空に出現した。丸い。球体だ。見るたびに色の変わる、名状しがたき球体の集積だ。 ゆっくりと降りてくる。重力を無視した鬼火のように降りてくる。世界が歪んでいく。 いや、歪んでいるのは世界ではなく、私の視界か。恐ろしい。呼び出すのではなかった。 私よりも遥かに優れた技倆と深き智慧を持ち、クー・リトル・リトルの招喚に成功した同輩の警告を受け容れておくべきであった。 これは彼の述べる通り、私の――人間の扱い、御し得る限界を超えた存在だ。 来た。私の眼前に降り立ったそれは、しばしの時を大地の上を蠢きのた打って過ごし、やがて――何ということか――それは慄然たる不快な波動を発しながら収縮を繰り返し、いつしかその異形の実体を人型のそれへと変じた。 見ているだけで卒倒してしまいそうなまでに美しく、恐ろしく、おぞましい。 それは二十代と思しき長髪の日本人女性の姿へと姿を変じ、じっと私を見ている。 顔には全てを見通す者ならではの酷薄な笑みすら浮かんでいる。 最も恐ろしく、そして不可解なのが、その者が纏う衣装である。 女性としてこれ以上を望むべくもない完璧な肉体は、白いガウンの無垢な布によってのみ秘められていた。半ば肌蹴た合わせ目から深遠な谷間を覗かせ、挙動に合わせて波打つようにして揺れる、量感溢れる乳房が魔性の妖艶さを象徴していた。 「……何か……用……?」 美貌と恐怖に魅入られたようになっていた私は、そのか細い音が眼前の存在の発した言葉であるということに気づくのに、非常に長い時間をかけてしまった。 私はようやくにして言葉を絞り出し、門にして鍵であるモクー=ソトースに応えた。 「貴方様の持つ、時空に跨る知識をお借りしたいのです」 「わかった……君……その歳で……童貞……皮……被ってる……」 「そ、それは……い、一体何を……」 モクー=ソトースは全てを見ている。何もかもを知っている。 だが、それがなぜ私の過去を暴き立てるが如きを行うのか。 「初恋……小学校の頃……手紙……出した……けど……教室内で……朗読される……酷い……失恋……」 やめてくれ。お願いだ。やめてくれ。もう嫌だ。 モクー=ソトースのか細い声による忘却の深淵に葬り去った記憶への言及は続いた。 その中でモクー=ソトースはその中で、ようやくにして家に連れ込むことに成功した女に包茎であることを知られ、侮蔑の言葉と共に去られた記憶や魔術に傾倒したことによって「キモオタ」と罵られ、社会から阻害されてきた記憶、インターネット上では煽られ、叩かれ、何をなそうとも粘着されて潰されてきた記憶、その他諸々の深き傷跡を抉り返すが如き悪夢の言及を続けた。 とても全てを書き留める気にはなれない延々数時間に及ぶその言及が現在の私に追いついた頃には、私は啜り泣き、意味を成さない嗚咽を漏らして大地に平伏していた。 私は一心不乱に祈っていた。この悪夢の終息を。送還呪文の詠唱などは考えられなかった。そのような気力など、残ってはいなかった。 「……大丈夫……」 モクー=ソトースの手が、涙と涎と鼻水に汚れた私の頬を撫でた。 名状しがたき悪寒と共に法外な悦楽が私の身体を貫いた。 「これから……永劫……私と戯れるの……私……君の……全て……知ってる…… 生まれる……前から……今日……君が死ぬまで……見ていた……君が私の…… ものになる……今を……何度も……体験……君が……私の近く……にいる……時間を…… 何度……も経験……そのたび……歓喜に身を……震わせ、永劫の円環……に在って…… ただ……その時だけ……待ち構えて……繰り返してきた……」 優しげな手つきで何度も私の頬を撫でるモクー=ソトースの言葉は人の身には難解であり、或いはクー・リトル・リトルに仕えし同輩ならば理解できるかもしれないが、私の理解の埒外にあった。 ただ一つ理解できることは、私には恐るべきモクー=ソトースの従者となる以外の道が一切合財閉ざされてしまったということだけだ。 ああ、モクー=ソトースが淡い笑みを浮かべて私に圧し掛かってくる。 肌蹴たガウンが脱ぎ捨てられ、一糸纏わぬ、生まれ出でたるままの姿となったモクー=ソトースが、柔らかく滑らかな肉体を私に押し付け、おぞましくも美しい大蛇の如く身を絡ませてきた。 ああ、ああ、ああ、正常な思考が保てない。何だこの快楽は。人間が得てよいものではない。 ああ凄いおぞましい狂おしい身の毛がよだつ心が壊れて直されて時空を超越して世界が歪む意識が曲がっていく助けて誰か気持ちいいもう駄目だ嫌だやめて助けて…… ***written by 適当 ◆iQ7ROqrUTo ---- *[[真なるクー異聞 01]] | [[真なるクー異聞 03]] ----

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