百合じゃない小説


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(誠くん…必ず仇は討ちます……)

大きな薄茶の瞳に決意を秘め、桂言葉はただ恋人の仇を討つために飛び込んだ集団の中虚空を見つめていた。そんな彼女に忍び寄る影が一つ。
「か~つ~ら~さ~ん!」
背後からかけられた声に振り向く間もなく、声の主に抱きつかれたかと思うと言葉はその豊満な両の胸を瞬く間に鷲掴みにされてしまった。
「きゃっ!」
突然の出来事に小さく叫ぶと言葉はようやく声の主が誰なのか認識した。
「す、涼宮さん…!」
北高生では知らぬ者などいない程、超有名人である涼宮ハルヒが不敵な笑みを浮かべならが言葉の胸をもみしだいている。
「ほんと大きいわ!ウチのみくるちゃんと良い勝負…いいえそれ以上かも。あーなんでこんな逸材を見逃してたのかしら!」
嬉々とした声音で彼女、涼宮ハルヒはこう続けた。
「今からでも遅くないわ、我がSOS団に入部なさい!そうすれば我が団は向かうところ敵なしだわ!」
「え?あ、あのっ…私…そんな…いきなり言われても…あっ」
声に悪意は無いものの手は相変わらず激しく動いている。抗おうにも背後からわっしりと胸を掴まれ生来大人しい性格である言葉はどうしていいのか分からず、困惑していた。
「と、とりあえず…や、やめてください涼宮さん…やっ」
「いーじゃない女同士なんだから!」
かわまず続けるハルヒに気圧されそれ以上なにも言えないでいる言葉は、やがて眉を下げ、瞳を潤ませ、顔全体を真っ赤に火照らせほぼ泣き顔になった。ここには自分たち以外にも多数の人間がいるのだ。恥ずかしいどころの騒ぎではないのである。
なんとかハルヒから逃れようともがいてみてはいるものの、彼女は一向に離す気配はないどころか、首筋に息すら吹きかけてくるので、言葉が半ば諦めかけた頃であった。
「おい、いい加減離してやれよ。桂さん嫌がってるぜ」
静かな、だが力強い声が響き渡った。
先に反応したのはハルヒであった。言葉に覆い被さったまま笑みを消し、声のする方に顔を向ける。声の主は、眼前にいた。
 金色の前髪に燃えるように逆毛だつ黒髪。鋭い瞳はまっすぐにハルヒを見据え、険しい表情ながらも落ち着きに満ちたたたずまいで重なる二人の少女の前に彼、武藤遊戯が腕組みのまま立っていた。後方ではめくるめく光景に息をのんで見守っていた谷口が軽く舌打ちをしている。
遊戯の横やりにハルヒは思い切りしかめっつらをしてみせると眉間にしわを寄せ、たっぷり十秒は遊戯を睨み、前のめりの体重を引き戻して
「うるっさいわねーわかったわよ」
と、小さな唇を可愛らしくとがらせてようやく言葉から離れた。
顔中朱に染まった言葉は少しハルヒから距離を取ると己を抱きしめ、息を吐いた。安堵と羞恥心。様々の感情が彼女の中に渦巻く中、自分を助けてくれた武藤遊戯を見る。
「あ、あの……ありが…」
「だいたいねー」
小さな言葉の感謝の意はかき消され、ハルヒの毒が吹き荒れる。
「ヒマなのよ、ヒ・マ!ピコ麻呂達大人はタイガーモス号とかいうのを取りに行ったまま帰ってこないし、他の面白そうな人間はみんな好き勝手どっかいってるし…あ~もうこんなことなら学校に残っていたほうがマシだったわ!退屈で死にそうよ!」

ハルヒ達のいた北高から天空城ラピュタに向かう為、一度EDF本部に戻ったピコ麻呂は旧式飛空母艦タイガーモス号を取りに行くべくストーム1・ハートマン軍曹・阿部・リョウ・富竹・琴姫を伴い本部を離れていた。
その間残りのメンバーは会議室に集まっていたが、暇を持てあました魔理沙・アリス・神男・蜘蛛男は本部周辺を見回るため部屋を後にし、KBC・マリオは落ち着きがないのか身体を動かすため部屋を出て行き、
ロックマンとミクはなんだかいい雰囲気のまま部屋から出て行ったのである。
残るメンバーで広い会議室の中ただピコ麻呂達を待っていた矢先に起きたのが冒頭の出来事であった。
片頬をふくらませながら文句を垂れるハルヒに、遊戯は険しい表情を解くと
「ヒマか…じゃあハルヒ、ゲームしようぜ」
と持ちかけた。
「ゲームぅ?いいけど、あたしはあんたの腕にはまってる妙な機械なんか持ってないし、ルールもわかんないわよ」
仏頂面のまま勢い腕組みをするとハルヒはふんと顔をそむける。そんなハルヒに遊戯は困ったように笑った。
「はは、デュエルモンスターズは自分で組んだデッキじゃないと勝負にならないからな。ゲームといってもデュエルじゃないぜ」
え?と振り返るハルヒに遊戯は説明を続ける。
「今、お前が心に描いた”もの”を10の質問で俺がなにかを言い当てる。どうだ、簡単だろ?」
訝しむハルヒに代わり、ただ二人のやりとりを見守っていた言葉が声を発した。
「たった…10個の質問で心の中の答えを…言い当てるんですか?」
まっすぐハルヒを見ていた遊戯はしっとりとした声の主の方向に顔を動かし、小さく頷いた。
「ただし、はっきりと姿形のあるものだ。感情や出来事はなしだぜ。だがそれ以外ならなにを心の中に描いても自由だ。どうだハルヒ、暇つぶしに俺の挑戦を受けてみるか?」
「面白そうじゃない。いいわよ、その勝負受けて立つわ!」
びしと指を指して、ハルヒは遊戯に言い放った。
「でもそうねぇ、ただやるだけじゃ面白くないわ。負けたほうはなにかペナルティがなきゃあ」
ふふん と鼻で笑うと遊戯は組んでいた腕を解き、ハルヒと対峙する形で向き直った。
「いいだろう。じゃあいくぜ!第一の質問だ。それは 食べ物ですか?」
ハルヒは両手を腰に当てると胸を張り
「ちがうわ!」
と力強く答える。
「では第二の質問にいくぜ…」

「おや?あれは…」
「知ってんのか古泉?」
少し離れた場所で静観していた古泉一樹がつぶやいたのを、そばにいた谷口は聞き逃さなかった。
「ええ、まぁ少しですけどね」
物静かな佇まいのまま、眼だけを谷口に向けて古泉は言葉を続けた。
「僕も詳しくは知らないのですが、あの遊びは普通もう少し質問数が多いはずなんですけどね…」
古泉が言い終えるや否や、ハルヒの素っ頓狂な叫び声があたりにこだました。
「嘘、なんでよ!?なんでこんな質問で分かるのよ!!」
「もう一度言うぜ、ハルヒ。お前が心の中に描いたものは…」
遊戯は人差し指を顔の前に立てると、口の端をゆっくり引き上げる。
「答えは絶海の孤島。さぁハルヒ、当たってるかどうか、はっきり答えてもらおうか」
ぐっと声を詰まらせると、ハルヒは水色をスカートの裾をひらりと翻し、身体全体を遊戯から背けると艶やかな茶髪を跳ね上げて答えた。
「正解よ!」


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