気高き君の呪縛   第三話『桂言葉』


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「2人部屋が3つ…。これで全部か…」
瀬人は溜め息混じりの「ふぅん」をボヤいた。

ここはベルゼバブ城。一行は四天王を倒し、ドクターSに逃げられたあと、この城で働かされていた男から
「ムスカが生きていて、世界征服を再び企んでいる」
という情報を得た。
加えて男が代価として求めてきたもの…「マジカルハートのサインとツーショット写真」を与えることで、ムスカの潜伏先など、さらに詳しい情報もわかった。
しかし、こうして次の目的地が定まった頃には既に日が暮れていたので、一行はベルゼバブ城で夜を明かすことになった。
そしてその為の部屋が「2人部屋で3つ」だったのだ。他の部屋はその3つより汚れていて使う気にならなかった。
否、足りない訳ではない。むしろ丁度なのだが、問題は部屋割りである。
「言葉~。俺と相部屋でいいよな?」
「わ、私は構いませんけど…」
年頃のカップル(しかも片方は職業:下半身男)を密室に入れればどうなるか…それがわからぬ海馬瀬人ではない。
「貴様らぁ!まだ旅も戦いも終わっておらんぞ!それにモクバもいるんだ、自重しろ!」
しかし、誠から思わぬ提案をされる。
「え~?海馬さんもキサラさんと相部屋になればお互い様だろぉ?」
「…!なっ…ななっ…!貴様と一緒にするなっ!」
口ではそう言った瀬人だが、どんどん紅潮していく頬を見せながら言っても説得力がない。
「兄サマ、別に俺は大丈夫だぜぃ?どうせそういうことになっても部屋は別なんだし」
「セト様…あの…。わ、私は別に構いません…いや、むしろ…いや…あの…!」
瀬人の思いを汲んでモクバとキサラまで気を遣う始末。そこに助け舟―Nice boat.―が来た。
「う~ん、なんかいろいろめんどくさそうだね~。クジでバシッと決めちゃえばいいんじゃないかなぁ?」
こころの提案である。反対なしで早速瀬人のメモ帳からクジが作られた。

(絶対言葉と相部屋になってやる!)
決意を新たにクジを選ぶ誠。
(こころと伊藤以外なら…キサラが来たらどうしたものか…)
こころか誠が来たら騒がしいと思っている瀬人。
(誠でも別にいいけど…他4人のほうがいいかな~)
そんなにこだわっていないが、誠よりは他の4人がいいモクバ。
(誰でも構わないけれど…せっかくだからセト様と…)
そんなにこだわっていないが、他の4人よりは瀬人がいいキサラ。
(誠君…焦らなくても私は逃げないのに…)
誠ほどはこだわっていない言葉。
(誰が来るかな~?楽しみ~♪)
誰と相部屋になっても楽しむ気のこころ。
引き抜きタイプのクジ。持っているこころの手から、シュッ―とクジが抜かれた。
「俺は…A!言葉は?」「私はCでしたよ」「あ、Cって俺だぜぃ!」
「わたしAだよ~」「び、Bはまさか…っ!?」「わ、私です!セト様…!」
つまり、
A:誠・こころ
B:瀬人・キサラ
C:言葉・モクバ
「チクショオオ!海馬さんの1人勝ちじゃねえか!」
「まあまあ、わたしは誠君もお姉ちゃんも応援してるよ~」
「ま、待て!これは勝ちなのか!?」
「…セト…様…」
「よろしくお願いしますね、モクバ君」
「よろしくだぜぃ」
こうして6人はそれぞれの部屋に入った。
戦いなどで疲れているとはいえ、まだ寝るには少し早く、せっかく2人きりになったのだから、どの部屋も何の話もしないはずがなかった。

―B室の瀬人とキサラは―
(2人きりか…一体寝るまでどうしろと…?)
瀬人は妙に落ち着かなかった。なぜなら、初対面のときの胸騒ぎがこの状況下でまたぶり返してきたからである。
その胸騒ぎを抑える為に、キサラには背を向けていたが…
「セト様…」
「ど、どうした…キサラ」
呼び掛けられたので振り返る。最初、視線は宙を泳いでいたが、キサラの青い瞳を見つめていると、吸い込まれるようにしてそこに落ち着いた。
「あなた様のお側にいられること、とても感謝しています…。嬉しくて、たまらないのです」
「そ、そこまで感謝せずともいい。雑魚や凡骨は嫌いだが…お前のような…つ、強い者なら…」
その続きは、とてもではないが言えなかった。しかしキサラも気を利かせて、その先は聞かなかった。かわりに…
「…たとえ私が強かったとしても、それはあなた様のおかげですよ?」
「なに…?」
「私の過去は…つらいことばかり、すさんだ、孤独な日々でした。弱々しく泣くしか…出来なかった。でも、あなた様に助けていただいたこと、初めて優しさに触れられたこと。そのおかげなんですよ?私が強くなれたのは」
「優しさに触れたことと、強くなれたこと、どう関係あると?」
「強くあることで守れるものがあると、伝えられる優しさがあると知りました。あなたが私の為にその強さを使ってくださったように、私もあなた様の為に強くありたくて…」
(…よくできた女だ…)
瀬人は心の中で呟いた。キサラの言葉は彼の持論と共感できる部分が多かったからだ。


―弱い者に守れるものはない。
―己のロードを歩む者にはそれに見合った強さが必要だ。
―例えば、凡骨決闘者にはそれがない。
―友情と称して、遊戯の強さで自分の弱さを誤魔化している…
―そんな奴は本来なら決闘者や兄の風上に置けない。

「でも、セト様。私はあなたが望むなら、あなたから離れる覚悟も…死ぬ覚悟も出来ています」
「そんな覚悟は決めるな」
「…?」
キサラの決意に対し、即答した。
『離れる覚悟』『死ぬ覚悟』という言葉に反応した結果だが、なぜ反応したのかまではわからなかった。だから、
「…お前が俺の側にいたいなら、そうすればいい。それが許されるだけの強さは持っているんだからな」
とっさにそれらしい理由を作った。
「でも、私が足枷になったら、いつでも言ってください。あなたには未来へのロードを歩んでいって欲しい、たとえ私を切り捨ててでも。それが私の望みですから…」
(未来へのロードの為に、キサラを切り捨てるだと…?)
確かに瀬人は今まで、あらゆるものを切り捨てて来た。
最たる例が義理の父、海馬剛三郎である。瀬人はモクバと誓った夢―ロード―

『世界中に遊園地を造り、世界中の子供たちを喜ばせる』
そのために海馬コーポレーションを奪い取り、剛三郎を死に追いやった。
それに対し、絶対に切り捨てないと誓ったものもあった。
「そんな日が来るとはなかなか思えんがな。例えばモクバなどは、あいつが側にいてくれたからこそ俺は戦ってこれたというものだ」
「それは…なぜ?」
「…俺の過去も、ろくでもないものだったが…」
そうして、瀬人は珍しくも昔語りを始めた。自分を強くしてくれた過去を、
モクバがいたから自分は強くなれたということを思い出す為に…。

―A室の言葉とモクバは―
「モクバ君」
「何?言葉さん?」
「瀬人君とモクバ君って、どうしてそんなに仲がいいんですか?」
話題に上ったのは海馬兄弟の絆である。
「俺は…特別なにかしてる訳じゃないけど、昔兄サマが言ってたぜぃ、
『俺がお前の父親の代わりになってやる』って。それで俺は泣いてた時も落ち込んでた時も、兄サマのことを信じていたから挫けなかったんだぜぃ」
「…お母さんやお父さん、剛三郎さんのことは瀬人君から聞いたことがあります」
瀬人に妹の話をした時にモクバの話といっしょに聞いたのだった。といっても、他界していることぐらいしかわからないのだが。
「私も…もし家族がこころしかいなかったら母親代わりになろうとしたかもしれませんね…」
「…じゃあ誠は?」
「え…?」
家族の話をしていたのに何故恋人の名が出てきたのだろうか?言葉が不思議に思っていると、
「俺、恋人とかよくわかんないんだけどさ、家族とおんなじぐらい大切なものなの?」
モクバが質問に補足を加えた。そこで言葉は考えた。
―自分が男子に嫌がらせをされても、女子からいじめられても、
―誠君を信じていたから挫けなかった。
―モクバにとっての兄、自分にとっての恋人、どれほどの差があるだろうか…?
「兄サマと誠なら、どっちが好きなの?」
「え…!?ちょ、ちょっと!何てこと聞くんですか!?」
「いや、もし女の人から兄サマを恋愛対象として見たらどんな感じなのかとおもってさ」
全く予想していなかった追加の質問だった。
まさか瀬人と誠を天秤に掛けることになるとは思わなかった。しかし一度掛けてみれば
―誠君の仇討ちが終わったら死ぬつもりだった自分に、
―未来を信じることを教えてくれたのは彼だった。
―魔王との戦いであの魔砲から自分を守り、魔砲を制していたのは彼だった。
―いや…それでも…自分は…
「瀬人君は、いい人ですよ。でも今は…私は誠君のことが好きです。
そしてもし、私が瀬人君を好きなっても、私は誠君の彼女であり続けます」
「…なんで?」
「好きとか嫌いとか…そんなことで別れちゃいけないし、浮気しちゃダメだと思うんです。
誠君を私の二の舞にはしたくないから、恋人は…家族とおんなじぐらい大切なものだから…」
モクバの質問に対する答えでありつつも、自分に言い聞かせる言葉でもあった。
「そうなんだ…。ありがと言葉さん、それにいろいろ聞いて悪かったぜぃ」
「いえいえ、いいんですよ!私も、自分でいろいろ考えられましたし」

―C室の誠とこころは―
「海馬さんがうらやましい…」
結構がっかりした様子の誠を
「誠くーん、まだまだチャンスはあるよ!ファイトファイト♪」
こころが励ましていた。
「お姉ちゃんね、誠君のことホントに好きなんだよ~。だからだいじょーぶ!」
「そ、そんなに?こころには俺のこと、なんて言ってた?嫌いになってない?」
と誠が聞くのは、言葉に嫌われたのではなかろうかという不安からだった。
彼は言葉と付き合い始めた頃、彼女の男性恐怖症に気づかずに無茶をしたこともあったし、
言葉の数少ない友人“西園寺世界”と浮気していた。しかも言葉は自分と付き合っていることが原因で西園寺の周囲の人間からいじめを受けていた。
しかし、こころ曰く
「嫌いなんてとんでもないよ~!お姉ちゃん、最近『誠君の為ならなんでもしてみせる』とかまで言ってたんだよ?」
「なんでもしてくれる…のか」
思い出してみれば、誠が言葉から世界に流れたのは、奥手な言葉より誠を心配してくれる世界に惹かれたからだった。

しかし今となっては…
―誠君は私の彼氏ですよ…?これ以上に親密な関係がありますか…?
―誠君のそういう優しい所、好きですよ
―大丈夫ですよ、誠君は私が守ります
―瀬人君許してあげてください!誠君も反省してますから!
―ま、まあ仕方ないですよ。また…今度にでも…
言葉は誠によく尽くしてくれるようになった。

対する世界は…
―いつまで桂さんと付き合ってるのよ!
―桂さんより私のほうが誠のこと考えてるのよ!?
―そういう優柔不断な所が嫌いなのよ!
―私たち学生なのよ!?いい加減にしてよ!
そして極めつけは…
―ずるいよ…自分だけ桂さんと幸せになろうだなんて…!
空飛ぶ船から放たれる光を見る少し前、世界に包丁で刺されたのだ。

(言葉には…悪いことしてきたな…。俺に出来ることは…ちゃんと世界とケリをつけて、言葉の彼氏になることかな…)
「だから誠くん、お姉ちゃんのこと、嫌いにならないでね…?浮気とかしないでね…?
お姉ちゃんからもし誠君がいなくなったら…」
「安心しろ、こころ」
不安な表情を浮かべるこころに誠は力強く言った。
「俺も言葉の為に、1つ頑張ることを決めたよ」
「ほんと!?良かったぁ…!」
こころは「1つ頑張る」を、「根性を据える」ぐらいに考えていた。しかし誠が考えていたのは、もっと具体的な「1つ」だった。

―そうして、夜が明けた―
「まことく~ん!朝だよ~!」
「うぅ~ん…あと5分…」
一番朝寝坊していたのは誠だったが…
「起きるんDA!」
「!!」
瀬人の一喝で目を覚ました。あまり良い目覚めとは言い難い。
「うわっ!耳元で大声だすな!」
「でしたら『滅びの威光』のほうがよろしかったでしょうか?目が覚めますよ?」
「それか朝の運試しも兼ねて『ジャジャン拳』のほうが良かった?」
「もう…これから倒しに行くムスカさんは3分しか待ってくれませんよ?」
こうして準備もそこそこに、一行はベルゼバブ城を後にした。
スタスタと草原を歩き出す一行…。
「あれ?今日はあの龍に乗らないのか?」
誠が聞いたが、他5人は―何を今更―といった様子である。
「ふぅん、相手は策士ムスカ…。昨日のように6人で袋叩きには出来ず、奴もそれなりの戦力を持っているはず。多数VS多数の戦いに慣れるために、雑魚モンスターを粉砕しながら行くことにした」
「ごめんなさい、誠君が寝てる間に決めてしまったんです」
「そ、そうなんだ…」
『戦い』と聞いて、誠は思わず天を仰いだ。しかし
「あ、そうそう、役割も決まってて~

誠くんって盾持ってるよね
なんだか打たれ強そうだし
私たちを守ってね←これで把握してね」

「いやいや!ちょっと待て!」
こころの産業の『盾になれ』発言で焦りだす。だが、全員の役割を聞くと…

海馬瀬人は後衛。魔法・罠カードやモンスター効果などでサポートしつつ、
要所で『青眼の白龍』や『オベリスクの巨神兵』で敵を蹴散らす。

桂言葉は前衛。古青江で敵に斬り込んでいかなければならない。たとえ団体相手でも。

海馬モクバも前衛。『螺旋丸』や『ジャジャン拳』で物理的に敵にダメージを与えていく役割だ。

桂こころは後衛。『E・F・ブリザード』や『マジカル引力光線』など属性豊かな攻撃魔法の他、『不思議な擬音』で回復もする。

キサラも後衛。『縛りの妖光』『滅びの威光』などで敵全体を攻撃する他、
『恵みの陽光』『守りの七光』などで味方全体を支援する。

―言葉が一番危ないんじゃないのか?
同じ攻撃なら言葉より打たれ強い自分が盾で受けたほうがいいに決まっている…。
(まあ、こころと約束もしたしな)
誠は『盾』としての役割を受け入れた。


こうして一行は雑魚モンスターを粉砕しながらムスカの潜伏場所…『地中要塞バハムート』への歩みを進めていった。


「死んじゃえ…!」
言葉が斬り込み、その隙をついてくる敵の攻撃を
「守りの七光!!」「うおっと!」
キサラが放った七色の光で守られた誠が盾で受け止める。

「ブラック・バーニング!!」
こころが魔法で牽制して
「じゃんけん、グー!!」「滅びのバーストストリーム!!」
海馬兄弟の出は遅いが強力な攻撃で仕留める。

「あはははははははは!!」
言葉様の高笑いと
「逝け☆オベリスク!青眼の究極竜!」
海馬デッキ死亡フラグ揃い踏み、
「パンツだけは、許さない!」
誠のセクハラ発言により、敵は戦わずして逃げ出すこともあった。
「あら、逃げましたね…」
「フン、やられ専門の雑魚モンスター共が…」

彼らの連携は強力なものだった。とても成り行きから成立したパーティーとは思えない破壊力、安定した支援。本人達は把握のしようもないが、古城エリアの4人などと比べても互角以上の強さだっただろう。
―ある戦闘が終わったときのことだった。
「あれ、瀬人君、魔力が切れ始めていませんか?」
瀬人に言葉が声をかけた。
「い、いや…ま、まだ大丈夫だが…?」
顔を青ざめながら瀬人は答えるが
「顔が青いですよ!?やっぱりおでん食べなきゃダメです!」
ゴソゴソとアイテム袋を漁り、言葉の手におでんが握られた…

「瀬人君、あ~ん♪」
笑顔でおでんを突きつけてくる。
「い、いや言葉よ…だからまだ大丈夫だと…」
「…あ~ん…」
言葉、いや言葉様の目は真っ黒だ。恐ろしくなった瀬人が顔を背けると…

「セト様!あ~ん♪」
言葉様と寸分違わぬ姿勢で満面の笑みを浮かべておでんを突きつけてくるキサラがいた。
「き、キサラ…っ!お、俺はおでんがだな…!」
「魔力切れで倒れるあなた様を見たくはないのです!…あ~ん…」
青色の瞳を光らせて迫ってくる。瀬人がさらに違う方向に向き直ると…

「兄サマ!あ~ん!」
「!?」
そこにはおでんを突きつけてくるうら若き乙女がいた。しかし自分を『兄サマ』と呼んだということはモクバである。『おいろけの術』で変身しているのだ。
しかもサイアーク戦の時と違って弟としての面影がある。それはまあ結構なことなのだが…
「も、モクバ…!お前なら知ってるだろう!?俺はおでんが嫌いということぐr」
「兄サマ!おでんなんかに負けないで!」

そして全方位を美女とおでんに囲まれた瀬人は…
「瀬人君…」「セト様…」「兄サマ…」
『あ~ん…』
「や、やめろ…く、来るな…!あ…ああ…!ぐわあああああああ――ッ!!!」

海馬瀬人のMPが300回復した!

海馬瀬人のMPが300回復した!

海馬瀬人のMPが300回復した!

海馬瀬人のMPが300回復した!

海馬瀬人のMPが300回復した!

海馬瀬人のMPが…


「愛なら仕方ないね~」
「うらやましいなあ…海馬さん…」
本人の事情など露知らぬこころと誠がボヤいたそうな。
―*―
そんなことをして歩いている間に半日が経ち、一行は『地中要塞バハムート』の入り口に辿り着いた。予想通り入り口には警備兵が2人いて、
「おい、貴様ら何者だ!」
「ここは関係者以外立入禁止だ!」
呼び止められたが…
「大いに関係者ですよ…?」
「…?」
2人の兵が見たのはうっすら笑う黒髪の少女。次に見たのは…自らの鮮血。
言葉が居合いを放ち、2人の兵の背後に斬り抜けたのだった。
「ムスカさんは…私の誠君を傷つけた人ですから…」
その声も、すでに2人には聞こえていない。こうして一行は要塞への侵入を果たした。

要塞内部は迷宮とも呼べる障害と罠で一行を迎えた。加えて彼らの侵入に気づいた雑兵も迫ってくる。しかし、この6人を前にそれらは無力だった。例えば…

セキュリティーロックが施された扉は海馬兄弟の得意分野である。
「よし、ロック解除できたよ、兄サマ!」
「ふぅん、KCの技術にはやはりかなわんようだな!ワハハハハハ!」
落とし穴はこころにモクバと言葉が掴まり、瀬人の青眼の白龍の翼で落ち行くキサラと誠を受け止めて落下を免れる。
「サンキューな、海馬さん」
青眼の白龍の上で誠は瀬人に礼を述べたが
「勘違いするな。貴様などキサラのついでに過ぎん」
「え…?では私は…?」
「…俺についてくると言った以上、勝手に死ぬことは許さん…」

落下物で押しつぶそうにもキサラの『守りの七光』で止められ、
雑兵は6人の力を前に次々になぎ倒された。

…そんな様子を監視カメラ越しに見ながら、もう何度目かわからない舌打ちをした男がこの要塞の最深部の一際大きな部屋にいた。
「くそー、雑兵め、何をやっている!」
彼こそ、ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ…もといムスカ大佐である。
彼の見ている画面が、またも一瞬の閃光の後、一面のノイズに変わった。
「くそっ!奴らのせいで要塞内部がゴミのようだ!」
その時、ふとムスカは大事なことに気がついた。
(…今の防衛線を突破されたら、侵攻速度次第ではもうすぐ奴らはここに来るな…。
『アレ』を準備するか…)
机の上の資料を隣の小部屋に移した後、大部屋の奥の壁でムスカは何かの操作を始めた。

そしてそれが終わった頃…
「マジカルハート!悪の現場にただいま参上ーっ!」
6人の侵入者のうち、先頭を切って入ってきたのはこころだった。
「終点が玉座の間(?)とは上出来じゃないか」
「違いますよ、ムスカさん。ここはお墓ですよ。…あなたの」
冷え切った眼で言葉はムスカを見た。
「ムスカよ、何故貴様が生きている?言葉は『仕留めた』と言っていたのだが?」
瀬人が尋ねたが
「はっはっは!ムスカは滅びぬ!何度でも蘇るさ!」
「…もう1つ、一応聞いておくが、
俺と言葉以外の22人…いや、お前が知っているのは21人か。行方を知っているか?」
「言葉を慎みたまえ、君たちに教えてやる義理などないのだからな!」
「やはり真剣に答える気はないか…」
「私は常に真剣なのだがね」
まともな答えは帰ってこない。しかし
「じゃあこの要塞は何なんだぜぃ?ラピュタって何のことだぜぃ?」
モクバの質問には
「いいだろう…教えてやろう見せてやろう!私と人類の夢を!」
調子を良くして答えた。

「ラピュタとはかつて、圧倒的科学力で地上を支配していた、我が血族の帝国!
そして私はもうまもなくこの要塞で次世代ラピュタを作り上げ、その力を以て地上…いや、
ニコニコを含むあらゆる宇宙を支配するラピュタ王となるのだ!!
はっはっは!世界は再びラピュタにひれ伏すこととなるだろう!」

相変わらずの野望をムスカは抱いていたのだった。当然それを許す6人ではない。
「ムスカ!その力を以て俺のロードの前に立ちふさがるというのなら、俺が、この手で、倒す!」
「ムスカさん…誠君を傷つけた以上は、潔く成仏してくださいね…?」
「前みたく、一方的にやられる訳にはいかないぜ?」
瀬人がデュエルディスクを、言葉が古青江を、誠が盾を構えた。
それにあわせてキサラはロッドを、こころはステッキを、モクバは…

「ほぉう?小僧、その大砲で私と勝負しようというのかn」
ムスカが言い切るより早く、モクバが構えたランチャー―要塞内でかっぱらった品だ―が
炸裂した。放たれたミサイルはムスカに向かって直進して…
…中空で弾けた。
「はっはっは!」
「ちくしょう!一発しかなかったのに!でも何で…?」
そのモクバの問いの答えが、ムスカの背後にいた。問いの答えは1つだが、茶色の人型の影は1つではない。その姿に言葉と瀬人は見覚えがあった。
「ラピュタのロボット兵…!」
「なるほど、奴のビームでミサイルを撃ち落としたのか…」
「はっはっは!さあ、ロリごっこは終わりだ!死ねぇ!」
そのムスカの号令に従って、10体ほどのロボット兵が獲物を狙う烏のように飛び立つ。
そう、飛んでいた。それほどにこの戦いの部屋は大きかった。それほど大きければ…龍を喚ぶのも造作のないことだった。
「ロボット兵如き、俺の敵ではないわ!出でよ、我がデッキに宿る青き炎の化身…!」
瀬人がデュエルディスクにカードを叩きつけ、それにあわせて現れたのは青き瞳の白龍…
「青眼の白龍!滅びのバーストストリーム!!」
青眼の白龍の口から青き炎が迸り、ロボット兵を全て粉砕…
…出来なかった。
白い煙は少し出ていたが、ロボットの動きに変化は見られない。
「な、なんだと!?」
「はっはっは!君のアホ面には心底うんざりさせられる…。ロボット兵には炎、雷、光などに耐性を持たせたのだ!」
自慢気に語るムスカに対し、

(青眼の白龍が通じないだと…!)
(わたしの『ブラック・バーニング』も…)
(私の『滅びの威光』も…)
瀬人、こころ、キサラは唇を噛んだ。
「風遁…螺旋手裏剣!」
なるほどモクバが放った風の刃は効いた。ロボット兵の装甲が砕ける音がした。
しかし敵の数についていけないうえに、いくつかの風はまたもビームで撃ち落とされる。
一回の攻撃でロボット兵を3体ほど葬るのが関の山だった。
「なんかロボット兵の相手するのって…疲れる」
「ロボット兵が邪魔なら、ムスカだけを狙います!」
飛行能力を持つロボット兵に攻撃する術を持たない言葉は誠を伴ってムスカに向かって突き進んだが
「行動を慎みたまえ。君達はラピュタ王の前にいるのだ…!」
確かに慎まざるを得ないらしかった。
「くっ…!」
「うおおおっ!」
ムスカを目指した2人はロボット兵達の集中砲火を受けたからだ。頭上から狙い撃ちにされ、後退を余儀なくされた。しかし後退しても状況は明るくならない。
『ロード・オブ・ドラゴン』『守りの七光』そして誠の盾で攻撃を凌ぎ、
モクバの『風遁・螺旋手裏剣』でわずかに反撃するのみだった。

「はっはっは!その程度かね?!」
(オベリスクならば…!)
瀬人は自分のデッキに眠る破壊神を思った。神の鉄槌は光属性ではない。間違いなくあの金属か粘土か分からないロボット兵のボディを粉砕できる。しかし…
(いや…駄目だ…)
瀬人は神を出さなかった。確かにロボット兵は倒せるだろうが、
果たして何体倒せるというのだろう?
次々に出てきて、既に20体を超えようかというロボット兵全てを一撃で葬るのは無理だ。
だが情けないことに既に『青眼の白龍』と『ロード・オブ・ドラゴン』を召喚した瀬人の残りの魔力では、オベリスクによる攻撃は一回しか許されないだろう。
(冷静になれ…!策はあるはずだ…!)
頭を巡らせ、勝利への手を考える瀬人の耳に、声が響いた。

「皆さん、私に少し時間を下さい!私の秘技で、ロボット兵を全て倒せるはずですから!」
キサラのよく透き通った声だった。その声は他の5人の耳にも届いた。
四天王を3人瞬殺し、攻めに守りに活躍してきたキサラの言葉は信ずるに足りた。
「…わかりました!お願いしますね!」
「期待してるよ!」
「キサラさんを守ってみせるってばよ!」
「任せたぜ、キサラさん!」
「…キサラ!お前に俺の命運、かけさせてもらうぞ!」
「…はい!」
キサラは返事の後、七色の光を止めて何かを唱え始めた…。だが流石にムスカはEDFで特務大佐になっただけあった。キサラの策を黙って見過ごそうとはせず、
「無駄だ!見せてあげよう、ラピュタの弾幕を!」
全てのロボット兵がキサラめがけてビームを放ってきた。他5人はキサラを守るべく動く。
「ロード・オブ・ドラゴン!守備表示!」
「俺も守備表示!」
瀬人のモンスターと誠がキサラを守護する。
「E・F・ブリザード!!」
こころがロボット兵を凍てつかせて時間を稼ぐ。
「忍法…影分身の術!」
モクバの分身がロボット兵を惑わした。
「グランドソード…時空を開け!」
言葉は―先代魔王から「無闇に使わないほうがいい」と言われていた―グランドソードで時空の渦を作り出し、そこに弾幕をいざなった。
「無闇に使わないほうがいい」とは言っても、グランドソードで直接敵を斬ることは難しく、言葉にとっての使い方はこれぐらいしかない。今がまさに使いどきだった。

そうした激しい防衛戦が3分経ったとき、瀬人の目にキサラが写った。ただそれだけならとりとめもないことだが、キサラの目は瀬人を捉えていた。

―今です…!
そう呼びかけるように。だが…
(キサラ…お前は…何を…?)
キサラの意を汲み取れず、瀬人は途方にくれて戦況を冷静に見た。

―キサラを狙って、全てのロボット兵が集中砲火を行っているのを他5人が必死に守っている
―キサラを狙って…
―全てのロボット兵が…
(…!そうか!)
瀬人は意を決して、2枚のカードをデュエルディスクに差し込んだ…。

「はっはっは!いい加減諦めたまえ!跪け!命乞いをしろ!」
絶好調の大佐節に答えたるは、社長節。
「黙れ天パ!跪くのは貴様だ!」
その背後に轟音と共に出でたるは、
真紅眼を光らせた蒼き巨人…いや、巨神。
「いけ!破壊神オベリスク!」
一度の攻撃しか許されない神を、ついに瀬人は出した。
だがなぜかムスカはその強さと欠陥を知っていた。
「はっはっは!オベリスクか!確かに強力だろうが、一度限りの神で葬れるロボット兵の数…はっ…!?」
そこでムスカも戦況を見た。

―キサラを狙って、全てのロボット兵が集中砲火を行っているのを他5人が必死に守っている
―キサラを狙って…
―全てのロボット兵が…


―1カ所に密集している!

「消えろザコどもぉ!」
『…え!?』
4人は神の鉄槌の射程圏から逃れた。しかしその他に逃れる時間はなかった。

―数多のロボット兵と

―その中心のキサラには…

『まっ…!待っ!』
「ゴッド・ハンド・クラッシャー!!」
全てを粉砕する神の鉄槌は今、

振りおろされた…。

大爆発とともに全てのロボット兵が砕け散る。
「くっ!だがまだ追加のロボット兵は出せr」
その声は、ムスカの前に突如現れた銀の光で遮られた。

いや、正しくは…銀髪の乙女によって。

「!!?へぇあ?!さ、3分間待って…」
「滅びの威光!!」
全てを滅ぼす聖なる輝きが、ムスカの目を焼いた。
「あがああああ!!目がぁ…!目がああああ!」
技を出し終えたキサラは、サッと横に体を流した。そこにいたのは黒き乙女…桂言葉。
「ヒテンミツルギスタイル…」
「目が!目が~!」
「お取り寄せえええええ!!!」
神速の九斬撃は全てムスカの急所を捉え、斬り裂く。
ブシャアア!
嵐のような攻撃の後には肉塊がだけが残った。

ムスカは倒れた!

敵をフルボッコした!

経験値を**手に入れた!

お金を**円手に入れた!

ムスカの拳銃を拾った!


「誠君…今度こそ仇はとりましたよ…」
決め台詞のように言葉は言ってみせるが
「いや、俺、死んでないんだけど…」
誠は否定した。
「ぷぷ…」「フフ…」「くはは…」「ワハハハハハ!」
激しい戦いの後の余興としては充分なやりとりだった。
―*―
回復なども一通り済み、一段落着いたところで…
「それにしてもキサラさん!どうやってあのでっかいのから逃げたんだよ?」
「あ~!それわたしも聞きた~い!」
誠とこころがキサラに質問をぶつけたのだが、答えたのは瀬人だった。
「ふぅん、このカードを発動しただけだ」
瀬人の手には罠カードがあった。

『亜空間物質転送装置』

これでキサラを逃がしたあと、時間差でムスカの目の前に出した…。そういうトリックだった。
「でもキサラさんは怖かったんじゃないですか?」
「頭の上にオベリスクがいたら、気絶したっておかしくないぜぃ?」
言葉とモクバが問う。今度はちゃんとキサラが答えた。
「いいえ、はじめからこうしてもらうつもりだったんです。『秘技』というのも、あの男を騙すためのハッタリです。セト様を信じていましたから、死ぬ覚悟もしていませんでしたよ」
「…ふぅん」
なんとなく嬉しそうな『ふぅん』だった。
「でも俺まで騙されたんだぜ~?」
「てきをだますには、まず味方から…お姉ちゃん、これで合ってるよね?」
「合ってるわよ。普段はあまり使わない言葉だけどね」
そんな話をしたあと、やがて6人は部屋を調べ始めた。もちろん何かしらの情報を求めてのことである。
まもなく隣の小部屋も…。
「ん?」
瀬人が小部屋の机の地図を手に取り、目を通した。
「…ムスカめ、これで何が真剣なものか…」
「兄サマ、どうしたの?」
モクバが瀬人に尋ねると、答えるかわりに地図を渡してくれた。

それはこの『地中要塞バハムート』の周辺地図だった。
そしてバハムートからそう離れていない所に、バツ印がしてあり、こうメモ書きが添えられていた。


『学校(武藤遊戯)』



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