アキライブ! ◆7fqukHNUPM


AkiLive!【Kaisar side】


「ファバロオオオオオオオッ!!!」

大声で呼んでみるも、共にあの場所から落とされた幼なじみの姿は見当たらなかった。

前後左右を見回しても、そこには奇妙な丸い天井をした建物と、他には草原があるばかり。
いつもの賞金稼ぎの腕輪の代わりにカードがはめ込まれた腕輪を身に着けていなければ、さっき見たことは悪い夢であり、この景色もまた別の夢の続きではないかと思うところだ。

「ファバロ……アーミラ嬢……私はまだ、お前たちが、貴女が、何者かも分からなかったというのに……」

カイザル・リドファルドはうずくまる。
その背には、混乱であるとか、喪失感であるとか、理解しきれないという憤激が重荷のようにのしかかっていた。
今までにも驚天動地の出来事――遭難したところを拾ってもらった村の人々がすべて操られた死体だったり、嵐の中で船をこぎ出したら空から悪魔が降りてきてそのまま空飛ぶ城へと拉致されたりしたことはあったけれど、
仮にそれらのトラブルがいっぺんにやって来たとしても、今回の驚愕と悲憤とには及ばなかっただろう。
アナティ城に保護されていたところを、突然の拉致に巻き込まれたとか。
一度は護ってみせると誓った少女が、たやすく焼殺され、あまつさえカードにされてしまっただとか。
『バハムート』という存在を――あの三天使が、復活させてはならない存在だと断言していた怪物を、あの繭なる少女が使役していたことだとか。
罪のない何十人の人々が、その少女に理不尽な殺し合いを強いられていることだとか。
それにファバロが――父の仇だったはずであり、それなのに先日はなぜかカイザル達を救けにきた男が、この場にいたことだとか。
未だにこの胸に、確かな憎しみは存在している。だというのに、その憎しみの対象であるファバロのことが、己は分からなくなっていた。
アーミラ嬢が焼き殺された時に浮かべていた表情にしてもそうだ。
それまでのファバロは嫌々アーミラを連れているかのように言っていたが、あの時の表情は、決して情を抱いていない人間が浮かべるそれでは無かった。
己と同じく、繭という少女に怒りを露わにしていたかのように。

「何故、俺はあの場で真っ先に動かなかった。そうすれば最悪でも、アーミラ嬢は死なずに済んだ……!」

ネブルビルでも、ソード・ヴァレイでも、護るべきものを護れない不覚ばかりが続いている。
騎士の身分は喪っても、誇りだけは喪うまいと掲げておきながら、このザマか。
心中で自虐するだけでは足りずに、カイザルは歯を食いしばり、地面へと涙を滴らせていた。
地面へと手をついた視界は、己の無力さを象徴するかのように狭かった。

「あのぉ……大丈夫ですか?」

少女の声が、上から降って来た。
狭くなっていた視界ではその声の主の接近に気付かず、カイザルは不覚のままに顔をあげる。

「そんな風にうずくまってたら、危ないよぉ?」

おずおずとハンカチを差し出す、小柄な少女がいた。




可憐な少女は、蒼井晶と名乗った。
歳の頃は14,5歳だとうか。
その体はナイフやフォークより重たいものを持たせることさえ憚られるほどに小柄で、ふわふわした茶髪につつまれた顔はオレンジぐらいの大きさしかないほどの小顔だった。
瞳だけがくるくると大きく動き、カイザルの話をふむふむと熱心に聞いてくれる。

「そっかぁ……カイザルさん? リドファルドさん? 本当に辛い思いをしたんだね。
さっきまでアキラアンラッキー! とか言ってたあたしが恥ずかしいよ……」
「好きに呼んでくれて構わない。それに君の嘆きは、全く恥ずかしいことなんかじゃない。
むしろ、眼を覚まさせてもらった」
「アキラが?」
「ああ、まだ私にはやるべきことがあると思い出せた。
この場所にはリタや聖女ジャンヌ、ラヴァレイ殿もいる。
護るべき数十の人々がいて、仲間と援けるべき存在もいる。こうなっては、立ち止まってはいられない」

アキラは両手をつよく握りしめて、同調するようにウンウンと相槌を打った。

「アキラにも、ぜぇーったいに守りたい人、いるよ。
ウリ――浦添伊緒奈っていう女の子を探したいんです」

そしてアキラは、話してくれた。
浦添伊緒奈という少女が、いかに優しくてきれいで頭も良い素敵な女の子かということを。
そして、小湊るう子と紅林遊月なる意地の悪い少女たちに嵌められて顔を傷つけられたところを救ってもらい、困窮生活の中で仕事まで仲介してくれて、いかに大切な恩人となっていったかを。
(『ドクモ』だとか『サツエイメイク』だとかいう言葉の意味するところはよく分からなかったが)

「あんなに誰かから大事にされたのはウ――伊緒奈が初めてだよ。
あの子が死んだら、アキラはもうどうしていいか分かんない。アキラはもう、アキラッキーなんて言えないよ」
「そうか……良い御友人なんですね。本当に」

必死に説明する少女を見て、カイザルは素直に感動していた。
なんというまっすぐな友情だろう。
かつては自分とファバロも、決して裏切りなど起こりえない親友同士だと思っていた。
それが今では父の仇となり、命を賭けた決闘をすると約束し、しかも相手の考えていることは全く分からないというふがいない有り様だ。
それに比べれば、彼女たちの絆はとても尊ぶべきものだ。

「安心するといい。君の――アキラ嬢の大切な御友人は、私が探し出して必ず守りましょう。
騎士として……いや、男として、もう貴女がたのような淑女が犠牲になってはならない」
「あ、ありがとうございます!」

アキラはぱっと花が咲いたように笑い、眼じりに浮いた涙を小さくぬぐった。

「で、でも『淑女』だなんて……えへ。なんだかアキラ、照れちゃうな。
アキラあらためアキレディー、がんばります! 騎士さんの探してる人を、一緒に探すよ」

『騎士さん』という呼ばれ方に、背筋の引き締まる思いがする。

「ありがとう。だが、くれぐれも無理はなさらないでください。私が必ず前を歩きますので、誰かが襲ってきたら必ず私の後ろにつくか、私の指示に従って逃げてください」
「はぁーい。リドさんとアキラのアキランデブー、よろしくお願いしまぁーす!」
「リドさん……?」

弱き者を守り、悪魔やあの少女のような存在を挫く。
1人の騎士として……身分は奪われても心は騎士として、それだけは確かなことだ。




「ではひとまず、アナティ城を目指して南下しましょう。
きっとリタやオルレアン騎士団の方々もそこを目指すはず。彼等と合流できればご友人もより安全になるでしょう」
「え? お城のある島に行くんですよね。だったら駅で電車使った方が早くない?」
「『エキ』? 『デンシャ』? 馬の置いてある宿場のようなものですか?」
「えーっと、『駅』っていうのは……」





AkiLive!【Akira side(心の声を添えて)】


「そっかぁ……カイザルさん? リドファルドさん? 本当に辛い思いをしたんだね。
さっきまでアキラアンラッキー! とか言ってたあたしが恥ずかしいよ……」

(どうやらほんっとーにお人好しの脳筋さんみたいだね。
最初に泣きながらあんな独り言言ってた時点で分かったけどー。
それは良いんだけど……こいつ、さっきから感極まりすぎ。さっきの泣き顔もきたなすぎ。マジウゼぇ。
だいたい最初の部屋から思ってたけど、いちいち『ファバロオオオオオオオオオ!!!』ってうるせーんだよ。
幼女趣味でホモとかマジ最悪なんだけどぉ?)

「好きに呼んでくれて構わない。それに君の嘆きは、全く恥ずかしいことなんかじゃない。
むしろ、眼を覚まさせてもらった」

(そうでなきゃこっちも困るっつーの。
でも冷静なのにこーんな感じってことは、もしかしてさっきの話もマジなのかよ。
ゲームの世界とリアルを勘違いした痛いヒトとかじゃなくて?
魔法を使う幼女とか悪魔とか伝説の竜とか……しかもジャンヌ・ダルクって世界史に出てくる名前じゃねぇか……
そんなのが本当にここにいるっていうのかよ……)

「アキラが?」
「ああ、まだ私にはやるべきことがあると思い出せた。
この場所には私と共にいたリタや、聖女ジャンヌ、ラヴァレイ殿もいる。
護るべき人々がいて、援けるべき存在もいる。こうなっては、立ち止まってはいられない」

(でも『ウリス』なら、バケモノの一人や二人なら大丈夫だよね☆
あたしよりずぅーっと頭が良いし、要領が良いし、なんたって本当に『カードゲームから出てきた人』なんだし。
ああ、ウリスに早く会いたいなぁ……でも、会った時にアキラが何もできてなかったらウリスをがっかりさせちゃうだろうなぁ……。
ウリスに会った時のためにも、早く誰かを始末しておかないとなぁ……)

「アキラにも、ぜぇーったいに守りたい人、いるよ。
ウリ――浦添伊緒奈っていう女の子を探したいんです」

(とりあえずコイツにはヤバいヤツが襲ってきたら盾になってもらうとして……隙あらば武器を使って背中から殺っちまうか?
でもそうなると、相手にアタシが殺し合いに乗ったってばれちまうかもしれないし……なるべく、アタシのことがばれないようなやり方を選ぶしかねぇな。
前に警察に見つかった時みたいなことになったら、アタシだけじゃなくて大好きなウリスも危険になるかもしれないんだし。
それに、それにそれに、賢いやり方を選んだ方がきっとウリスも喜んでくれるよね。
例えば他の連中と会った時に、仲間割れが起こって殺し合うように仕向けるとか……いい子ちゃんの振りなら自信あるもんね(はぁと)
……やばっ、なんだかドキドキしてきた)

「安心するといい。君の――アキラ嬢の大切な御友人は、私が探し出して必ず守りましょう。
騎士として……いや、男として、もう貴女がたのような淑女が犠牲になってはならない」
「あ、ありがとうございます!」

(ウリスは、憎しみの感情をまとったアタシが一番素敵だって言ってくれた……だからアタシは、ウリスの為なら素敵になってみせるよ。
みんな、殺すんだから。ウリスが勝ち残れるなら、何だってする。
ウリスが愛してくれるなら、アキラが死んだ時にいっぱい悲しんでくれるなら、死んだっていい。
そして、ウリスが私のことを忘れないでいてくれたら嬉しい。すっげぇ嬉しい)

「で、でも『淑女』だなんて……えへ。なんだかアキラ、照れちゃうな。
アキラあらためアキレディー、がんばります! 騎士さんの探してる人を、一緒に探すよ」
「ありがとう。だが、くれぐれも無理はなさらないでください。私が必ず前を歩きますので、誰かが襲ってきたら必ず私の後ろにつくか、私の指示に従って逃げてください」
「はぁーい。リドさんとアキラのアキランデブー、よろしくお願いしまぁーす!」
「リドさん……?」

(だって私の命を糧にしてウリスが生きるなら……それって、私の命がウリスの中に入っていく……憧れのウリスの、一部になれるってことだよねぇ?)

「ではひとまず、アナティ城を目指して南下しましょう。
きっとリタやオルレアン騎士団の方々もそこを目指すはず。彼等と合流できればご友人もより安全になるでしょう」
「え? お城のある島に行くんですよね。だったら駅で電車使った方が早くない?」
「『エキ』? 『デンシャ』? 馬の置いてある宿場のようなものですか?」
「えーっと、『駅』っていうのは……」



(ウリスを愛して、ウリスの『命』になる……ウリスを『生かす』人に。
そう、アキラは、『アキラブリー』よりもさらに先へ行く。
――今のアキラは、『アキライバー』だ!)


【B-3/地下闘技場近く/深夜】

【カイザル・リドファルド@神撃のバハムートGENESIS】
[状態]:健康
[装備]:なし(支給品の確認はこれから)
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)
    黒カード:不明支給品1~3枚
[思考・行動]
基本方針:騎士道に則り、繭の存在を挫く
0:『駅』に向かえば早く移動できるらしい。まずはそちらへ…。
1:アキラ嬢を守りつつ、アナティ城へと向かう
2:リタ、聖女ジャンヌ、ラヴァレイ殿と合流する(優先順位はリタ>>>ジャンヌ・ダルク、ラヴァレイ)
3:アザゼルは警戒。ファバロについては保留
[備考]
※参戦時期は6話のアナティ城滞在時から。
※蒼井晶から、浦添伊緒奈は善良で聡明な少女。小湊るう子と紅林遊月は人を陥れる悪辣な少女だと教わりました。

【蒼井晶@selector infected WIXOSS】
[状態]:健康
[装備]:中学校の制服
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)
    黒カード:不明支給品1~3枚(武器があるらしい?)
[思考・行動]
基本方針:ウリスを勝ち残らせるために動く
0:利用できそうな参加者は他の参加者とつぶし合わせ、利用価値が無いものはさっさと始末する。
1:カイザルを利用しつつ、機会を見てカイザルと他の参加者を潰し合わせるなり盾にするなりする。
2:ウリスを探し出し、指示に従う。ウリスの為なら何でもする
3:紅林遊月、小湊るう子は痛い目に遭ってもらう
[備考]
※参戦時期は二期の2話、ウリスに焚き付けられた後からです
※カイザル・リドファルドの知っている範囲で、知り合いの情報、バハムートのことを聞き出しました。


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000:royaled カイザル・リドファルド 036:その遭遇は綻び
蒼井晶 036:その遭遇は綻び