前途多難 ◆eNKD8JkIOw


「全く、驚くべきことばかりだね」

そう言って、折原臨也さんはとても楽しそうに笑いました。

「俺からしたら、スタンドが見えているあんたらに驚くがな」

やれやれだぜ。空条承太郎さんはそう呟きながら帽子を深く被り直し、缶ビールに口をつけます。

ここは、映画館のロビー。受付カウンターや待ち合い席が並んでいます。

私たちは、そこでお話をしていました。
なんと、私たち三人はすごく近くの位置からスタートさせられていたのです。当然のように、出会います。出会っちゃいます。
殺し合いだなんてとんでもないとあわあわしながら私が言って。
空条さんが知ったことかって顔で、売店のビールを勝手に飲み始めて。
私は折原さんに言われて名簿を確認し、小毬先輩とれんちゃんが巻き込まれていることを知って。
青い顔をしながら泣きそうになる私を、折原さんが優しく慰めてくれて。
ようやく落ち着いた私を尻目に、空条さんと折原さんは情報交換を始めました。
だけど、そこで、空条さんはとんでもないことを言い出したのです。

いわく、空条承太郎さんは超能力者であるということ。

まず、これだけでびっくりです。当然、折原さんも私も信じられませんでした。
だけど、彼の背後に突然現れた、水色の人形のようなおばけを見せられると、信じざるを得ません。
逆に、空条さんは私たちが青い人形さん、スタープラチナさんと言うそうです、が見えていることに驚いていたんですけど……。
どうも、この『スタンド』という超能力は、普通の人間には見えないものであるそうな。
折原さんが「きっと出来るだけ平等に戦えるようになっているんだろうね」なんて、それらしく説明していました。

そして、空条さんの話はそこでは終わりませんでした。
彼は邪悪の化身(すごい言われようです)であるDIOを倒すために、同じ超能力者の仲間たち、この場にも呼ばれている花京院さんやポルナレフさんと旅を続けていたというのです!
なんて、漫画チックな経歴のお方!
ここが殺し合いの場でさえなければ、いつもの皆と一緒にいれば。
れんちゃんや夏海先輩、小毬先輩と一緒に空条さんを質問攻めしていたことでしょう。
だけど、彼のお話の続きを聞くと、私は今わたしたちが置かれているこの現状を思い知らされました。
実は、この『ゲーム』にはそのDIO本人も参加させられているというのです。
しかも、ホル・ホースさんという、DIOさんの部下も一緒に参加していると。
なんと恐ろしいんでしょうか。少なくともこの会場に2人は、とっても危ない悪人がいるのです。
ここで、ようやく今の状況を正しく理解して、私は、泣きました。
さっきは我慢できましたが、でも、もう無理でした。
私は良いのです。最初の時点で、漫画の主人公のような空条さんと、優しそうな折原さんに出会えたのですから。
だけど、もしかしたら今、私が呑気にお喋りしている間にも、れんちゃんが、先輩が!
その、DIOという人に殺されかけているのかもしれないのです!
いいえ、もしかしたら、もう…………。

空条さんが、イライラした声で「泣き止め」と言いました。でも、無理でした。
折原さんが、私の頭を優しく撫でながら「きっと大丈夫」と言ってくれました。
ゆっくりと、私が「大丈夫」をきちんと頭の中に収められるまで、何度も、何度も、繰り返し、彼は言葉を重ねました。
「きっと良い人たちと一緒に行動しているよ」「もしかしたら、もうこの近くまで来ているかも」「蛍ちゃんが泣いてると、再会した時に先輩やれんげちゃんも悲しむよ」
そのおかげで、少し落ち着きました。確かに、折原さんのいうとおりです。
泣いていても、始まりません。
泣いて、泣いて、泣いて、ようやく顔を上げた私を、お二人は黙って待っていてくれました。

「今の俺たちにできることは、六時間後の放送で知り合いの名前が呼ばれないよう祈りながら、少しでも俺たち自身が生き残る確率を上げることだ」

折原さんの言葉を基に、私たちは話し合いを続けます。
空条さんはとてもめんどくさそうに、ここから出ていきたそうな顔をしていましたが。
また泣きそうになる私と、折原さんの説得により、なんとかかんとか、一緒にお話を続けてくれる気になったようです。

「首なしに妖刀、自販機を投げつける化け物、か。
折原、あんたのとこも中々にクレイジーだな」

折原さんのお話も、空条さんのものと同じく、にわかには信じがたいものでした。
都市伝説にもなっている首なしライダー。切り裂き魔として世間を騒がせた、妖刀使いの女の子。
そして、腕力だけで自販機やガードレールを投げつける、平和島静雄という怖い人。

「首なしのセルティは俺もよく運び屋として仕事を手伝ってもらっていたから、人となりは分かる。殺し合いには乗らないだろうね。
だけど、園原杏里、平和島静雄は、はっきりいって危険だ。
杏里は斬るだけで相手を操れる妖刀、罪歌の持ち主で、最近池袋で多発した切り裂き魔事件の黒幕とも考えられる。
もしかしたら既に何人か斬って、自分の手駒にしているかもしれない。
平和島静雄はさらに危険だ。はっきりいって、何を考えているのかさっぱりわからない男だよ。
俺が分かるのは、あいつは誰であろうと喜び勇んで暴力を振るう悪いやつだってことだけだね。
池袋でやっていたように、もう何人か殴り殺していても何らおかしくない」

怖いだろうけど、隠していても仕方がない、と折原さんは私を見つめながら言います。
変に黙っていて、いざその人たちに出会った時に警戒できないまま死ぬよりはマシだ、と。
私は、もう泣きませんでした。
折原さんは心配そうに私を気遣ってくれましたが、大丈夫です、と鼻声交じりに返事をしました。
少しでも、お二人の迷惑にならないようにしたかったのです。

もっと、いってしまえば。

これ以上お二人の邪魔をして、愛想をつかされるのが、こわかったのです。

折原さんは優しいですし、空条さんも見た目は怖いですが、悪い人ではないことは話していればわかります。
だからこそ、そんな二人に見捨てられてしまうことだけは、嫌だったのです。

私が彼らに提供した情報は、二人の衝撃告白に比べればいたって普通なものでした。
同じ村の友達が二人いる、と、それだけです。
私も、先輩もれんちゃんも、超能力も使えませんし、自販機を投げ飛ばすことなんてできるわけもありません。
ただ、強調して、れんちゃんも先輩も良い子だから、絶対に殺し合いなんてしないということだけを私は熱弁しました。


互いの身の上を話し終わり、ようやく、これからどうするのかというお話になりました。


空条さんは言いました。「この、地図に書かれている『DIOの館』が気になる」と。

「DIOやホル・ホースにしろ、花京院やポルナレフにしろ、縁のある人間はここが気にならないはずがねえ」

「確かにねえ。上手くいけば仲間と合流できるかもしれないし、その場でDIOをとっちめることも、出来るかもしれないわけだ。
良いんじゃないかな。一石二鳥ってやつだね」

とりあえず、その『DIOの館』に行くことに決まったようです。
でも、足手まといにしかならない私もついて行っても良いのでしょうか。
そんな思いを敏感に読み取ったのか、折原さんは手際よく、計画を立てていきます。
他の人に会ったら、戦力を考慮しつつ、DIOの館へ行くグループと別の場所で待機するグループに分けること。
その際に、私は待っているグループに所属させること。
空条さんは、好きにしろといいました。自分は、DIOの館に行くだけだ、と。
折原さんも、空条さんと一緒にDIOの館へ行くグループに入る気満々のようです。

「俺的にも、そのDIOってのは早めに潰しておきたいし、さ」

そう言った、瞬間だけ。
折原さんの笑顔の種類が、変わったような気がしました。
日向のような、見ている私を安心させてくれるようなものから。
冷たい、エモノを狙う蛇を連想させるような、尖った笑顔に。
びっくりして彼の顔を見返すと、その時には、もういつもの優しい折原さんに戻っていたのですけど。

「どうしたの?俺の顔になにかついてた?」

「い、いえ……その計画だと、この中で私だけ待たされることになってて、ちょっと寂しいなって」

なんだか悪いことをした気がして、思わずごまかしてしまいます。
ただ、口をついて出たこの言葉も、嘘偽りない私の気持ちでした。
なんだか、仲間外れにされたような気がしてちょっぴり悲しくなってしまいます。
確かに、私なんかがDIOさんに出会ってしまったら、大変なことになってしまうのでしょうけど。

「まだ他の殺し合いをしないって人と会えるかも分からないし、その辺は臨機応変になると思うけどね」

結局、折原さんがその時何を考えていたのか、私にはわからずじまいでした。
分からない方が良いような気も、したのです。



「そういえば、出発の前に一つ確認しておきたいことがあるんだった」



お話も終わって、さあこれから移動しようというタイミングで。
突然、折原さんは椅子から立ち上がりました。
そのまま、対面に座っていた空条さんのもとへ歩いて行って。
どうしたんだろう。うすぼんやりとした気持ちで見ていた私には、


何が起きたのか、よく理解できませんでした。


「君はどのくらい強いのかな」


私に、見えたのは。


折原さんの手に、魔法のように突然ナイフが現れて。

それに驚く間もなく。悲鳴を上げるなんて思いつきも出来ない私を置き去りにして。

そのナイフが、いつのまにか、瞬きの間に折原さんの手から空条さんの手に移っていた、というものだけでした。

水色の手が、一瞬だけ見えたような気がします。


「素晴らしい」


折原さんは、心底楽しそうに笑っています。
空条さんは、すこし、怖い感じになっていました。
私は、口をほけぇと開けたまま、固まることしかできません。

「どこまで理解できた?」
「何もしなくても当たらねえことも、何もしなかったらナメられることも、だ」
「すごいなあ、それも全部超能力のおかげなのかな?読心術とか?」
「10や20もケンカしてりゃ、テメエが本気かどうかなんざ分かる。
あんたが、手段を選ばない人種だってのもな」
「悪いね。これから力を合わせて行く仲間がどれだけ強いのか、何が出来るのか、正確に知っておかないと信用がおけないタチでさ」


「折原臨也」


「なんだい、空条承太郎君」


ゴゴゴゴゴ、と。
謎の擬音が、聞こえてくるような迫力で。
空条さんが、一回り大きく見えました。




「次はない」



ぽん、と、無造作にナイフを放り捨て、それを折原さんが器用に空中でキャッチ。
あとは無言で、空条さんは立ち上がり出口へと向かっていきます。
私には及びもつかないやりとりが交わされたのだ、としか私には理解できませんでした。
ただ、正直、こわかったです。
空条さんも。折原さんも。
頼りになる人たちのはずなのに、どこか危なげな感じがするのです。

いいえ、きっと私の気のせいなのです。

空条さんも、折原さんも、良い人に決まっているのです。


「ごめんね、蛍ちゃん。びっくりさせちゃって」


ほら、今だって。
折原さんは笑顔で、私の手を取ってくれます。
一緒に行こうと。君を置き去りになんてしないと。
『良い人』じゃないと、こんな危ない場所で、こんなにも優しくはしてくれないでしょう。
彼の手を握り返しながら、私は空条さんの後を追います。
あの怖い感じが気になりましたが、今は出来るだけ離れ離れにならないほうが絶対に安心安全です。

「クールなようでいて、その実熱いところがある」

何かを思い出すような、遠いところを見つめながら、折原さんは独り言をつぶやきました。

「だけど、使える人間である俺や、怖がる蛍ちゃんのことも考えて、怒りを抑えることもできる」

「自分の持つ力が強いと分かっている上で、感情的になりすぎず、己の正義を貫き通す、か」

何か楽しいことを思い描いているように、ニヤニヤしながら。

「俺の睨んだ通り、やはり彼は『アイツ』とは違って、素晴らしい『人間』だよ」

まるで悪戯を思いついた時の夏海先輩のようだ、と。
自分よりも10は年上の人に失礼だとは思いつつ、私は折原さんにそんな印象を受けるのでした。

【G-6/映画館周辺/一日目・深夜】
【空条承太郎@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース】
[状態]:健康
[服装]:普段通り
[装備]:なし
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)
     黒カード:不明支給品0~3
[思考・行動]
基本方針:脱出狙い。DIOも倒す。
   1:DIOの館へ向かう。
   2:折原臨也が気に喰わねえ。
[備考]
※少なくともホル・ホースの名前を知った後から参戦
※折原臨也、一条蛍と情報交換しました

【折原臨也@デュラララ!!】
[状態]:健康
[服装]:普段通り
[装備]:ナイフ(コートの隠しポケットの中)
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)
     黒カード:不明支給品0~2
[思考・行動]
基本方針:生存優先。人間観察。
   1:DIOの館へ向かおうか。
   2:空条承太郎君、面白い『人間』だなあ。
   3:DIOは潰さないとね。人間はみんな、俺のものなんだから。
[備考]
※空条承太郎、一条蛍と情報交換しました。


【一条蛍@のんのんびより】
[状態]:健康
[服装]:普段通り
[装備]:なし
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)
     黒カード:不明支給品0~3
[思考・行動]
基本方針:先輩とれんちゃんと合流したいです。
   1:とりあえず二人についていきます。
   2:少し二人が怖いです(?)
[備考]
※空条承太郎、折原臨也と情報交換しました。


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空条承太郎 047:殺人事件
折原臨也 047:殺人事件
一条蛍 047:殺人事件