姉 ◆LaBi18zCV.

不思議な世界に突然、連れてこられた挙句に殺し合いを強要される。
この状況に巻き込まれたら常人ならとても平常心を保てそうにない。
だが、そんな中で雨生龍之介は鼻歌を歌いながら平然と病院内の器具を物色していた。

彼にとっては不可思議な事も殺傷沙汰も既に体験済である。
持ち前のポジティブさもあり、龍之介は悩むよりも行動あるのみだと考えた。
病院で使われている器具は材料をアートとして仕上げるのに役立つ。

「さてと、これだけあれば十分だな。……そうだ。このカードは確かランダムカードって言ってたよね。一体何が出てくるのかなぁ」

龍之介が黒いカードを一枚取り出し使用する。
するとカードが消滅し、代わりに支給品の一つが龍之介の目の前に出現した。

「か……かわいい~」

それは『具』と名づけられたタヌキだった。
当たりかハズレで言えば大ハズレと呼べる支給品であるが
受け取った本人は満足しているので良しと言えるのかもしれない。




不安と恐怖で胸が押しつぶされそうになる。
保登心愛は体を震えさせながら病院内を歩いていた。
殺し合いなんて残酷で酷いこと絶対にやりたくない。
でも逆らえばカードにされてしまうのは恐ろしい。
本当は目を閉じて、耳を塞いで、全てから逃避して泣き出してしまいたい。

だけどここには自分と同じく、無理やり連れてこられた大切な人達がいる。
皆と合流して、皆で元の場所に帰りたい。
チノちゃんのお姉ちゃんとして、今くじけるわけにはいかない。

友への想いが心愛の背中を後押しして、歩みを進ませた。
すると病院の一室で明かりが点いているのに気付く。
もしかしたら、そこに友達がいるかもしれない。
心愛は明かりのある部屋へと入っていった。

「あっ……」
「ん?」

室内にいたのは知り合いでは無かった。
オレンジ色の髪をした20代ほどの若い青年がそこにいて、心愛と目が合った。
殺し合いの強要された環境で初めて出逢った男性を見て、心愛は思わず後ずさろうとする。

「ねえ、君も殺し合えって言われて、こんな所に連れてこられたんだよね?」
「あ、はい。そうですけど……」
「俺もなんだよね~ほんとにまいっちゃうよねぇ」

心愛は安堵した。
彼もこの場所に連れてこられて困惑していたから。
少なくても人を殺しまわって動くつもりは無さそうだと
彼の表情を見て心愛は理解できたから。

二人は軽く自己紹介をしたあとで、情報交換をする事になった。
龍之介は知り合いが誰も呼ばれていなかったが
心愛は香風智乃、天々座理世、宇治松千夜、桐間紗路の4人の知り合いが呼ばれている事を伝えた。
ちなみに情報交換をしている間、心愛はずっと具をモフモフしていた。

「皆はどこに行きそうか心当たりはあるの?」
「うん。喫茶店ラビットハウス、ここに集まると思うの
 チノちゃんのお家でね。私の下宿先でもあってリゼちゃんも働いているから」
「じゃあ早速ラビットハウスって場所に一緒に行こうよ。善は急げと言うからね」
「いいの?私の為に付き合ってくれて」
「もちろん!ココアちゃんも、そのお友達も俺がしっかり守護ってあげるよ」
「……あ、ありが……とう」

まだあったばかりなのに、私や友達の為にここまで親身になって助けてくれるなんて
すごい優しい人なのに、一瞬でも怖い人だと思って逃げようとした私は悪い子だ。

「そんな畏まらなくてもいいって、困った時はお互い様って言うでしょ。皆で支えて助け合わなきゃね」
「龍之介さん……私もお姉ちゃんとしてがんばらないと」
「へぇ~ココアちゃんってお姉ちゃんなんだ」
「うん!チノちゃんは私の妹だからね」

「……やっぱり似てるなココアちゃんは、俺の姉ちゃんに」
「そうなんだ。会いたいな……龍之介さんのお姉さんに」
「もう死んじゃったんだ。5年前にね」
「あ、ごめんなさい!」
「気にしなくていいよ。姉ちゃんはきっと満足して天国へ行って、俺のことを見守ってくれているからさ」

そう答える龍之介だが、どこか寂しそうに見える表情だった。
それだけ大切なお姉さんなのだと心愛は理解できた。
一緒に友達を探してくれる龍之介に何か恩返しがしたいと思っていた心愛は

「龍之介さん!今は私のことをお姉ちゃんだと思って甘えていいですよ」

咄嗟に浮かんだ自分の出来る事を言葉に出してしまう心愛。
自分の方が年下なのにお姉ちゃんと呼ばせるのは不自然であると
発言の後で気づいて、羞恥心が湧き上がる。

「お姉ちゃんかぁ。いいねそれ!頼りにしてるよココアお姉ちゃん!」

一瞬きょとんとするが、心愛の気遣いを察知した龍之介は
心愛を姉のように頼ることで、彼女の気持ちに応えた。

「じゃあさ。俺からも一つ頼み事をしてもいいかな?」
「もちろん。私が出来る事なら何でも言って!」
「俺ってさバイトしながら色んな町でアートを作ってるんだよね。
 だから、もしよかったら俺のアート作りにココアちゃんも協力してくれないかなぁ?」
「それならガンガンお手伝いしますよ。私をモデルにするなら可愛く作ってね」
「本当!?嬉しいなぁ~ココアちゃんがいればきっと素敵な作品が作れそうな気がするよ」

龍之介の心はぴょんぴょんと高鳴り、テンションはフォルテッシモに上昇する。
普段は気だるげな態度で、やる気の無い龍之介だが趣味が関わると活発で明るい青年になる変わりようであった。
龍之介は包帯やガーゼ等の医療用具の入った箱を持って病院から出る準備を始めた。

「龍之介さん。これは?」
「緊急の時の為に包帯とかあった方がいいと思ってね」

正確には作品の延命処置に使えると考えて用意した物であるが
旦那がいればそんな問題も簡単に解決するのだが、参加者の一覧に青髭の名前は無かった。

「病院の中には他に誰もいなかったし、そろそろ出発しようか。
 ラビットハウスは、南東にある駅から移動した方が速いね」
「そうですね。あっ龍之介さん。具は私が預かっておきますよ」
「おう。サンキュー」

心愛は龍之介から受け取った具をひたすらモフる。
彼女はモフモフした動物が大好きなのだ。
具に向ける心愛の優しげな表情を見て龍之介は姉を思い浮かべていた。

似ている。本当によく似ている。
昔っから眩しいほどに明るい笑顔を振りまいてくれた姉さん。
小さい頃から俺にとっても優しくしてくれた大切な姉さん。

何一つ夢を持てず、生きているんだが死んでいるんだが分からなかった人生を歩んできた。
そんな俺を夢中にさせるだけの目標を与えてくれた姉さん。
いくら感謝しても足りないぐらい感謝しているよ。

だって……また俺の前に現れてくれたんだから。
ココアちゃんには姉さんと同じように愛してあげるからね。
俺が全身全霊を注いで誰に見せても自慢出来るような立派な作品に作るんだ。
約束したからね。ココアお姉ちゃん。


【A-5/病院内/深夜】

【雨生龍之介@Fate/Zero】
 [状態]:健康
 [服装]:普段着
 [装備]:手術用のメスやハサミ(現地調達)
 [道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)
     黒カード:不明支給品0~2枚、医療用具(現地調達)
[思考・行動]
基本方針: 心愛と一緒にラビットハウスを目指して心愛の友達を探す。
   1: 心愛を使って作品を作りたい。
   2: 作品を延命させる方法を探す。
 [備考]
  ※キャスターが龍之介の知る青髭ということに気づいていません。

【保登心愛@ご注文はうさぎですか?】
 [状態]:精神的疲労(小)
 [服装]:ラビットハウスの制服
 [装備]:なし
 [道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)
     黒カード:1~3枚、具@のんのんびより
 [思考・行動]
基本方針:龍之介と一緒にラビットハウスを目指して友達を探す。
   1:怖いけどお姉ちゃんとして頑張る。

【具@のんのんびより】
宮内 れんげが飼っているタヌキ。
れんげが芸を仕込ませようとしていたが特に覚えた芸は無い。


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雨生龍之介 043:薄氷の殺人
保登心愛 043:薄氷の殺人