宴の始まり ◆IXB73G6vLY

―――彼女は一人だった。

外に出る事を禁じられ、自室にある本と天窓から見える景色しか世界を知らなかった彼女は
自分の思い描いた空想の友達と遊ぶことが唯一の心の拠り所だった。

外に出て色んな事を知りたい。
沢山の友達を作りたい。
数えきれないぐらいの思い出を作りたい。

なのに……なのに、なのになのになのに、なんで私はずっと閉じ込められないと駄目なの?
なんで私はこんな目に合わないと駄目なの?
私が何か悪いことをしたの?

許せない……。私がこんな苦しい思いをしてるのに、のうのうと暮らしている人たちが……
私の苦しみを少しでも皆に受けてもらわないと気が済まない。
みんな苦しめばいい。私だけ苦しむなんて不公平でしょ?誰にも私を責める資格なんて無い。
だってこんなに苦しんでる私を誰も助けようとしてくれなかったんだから。



彼女の憎悪によって生まれたカードの存在によりセレクターバトルという
悲劇の連鎖を繰り返す呪われた争いが続いた。

そんな悲しい物語を終わらせるためにセレクターとなった少女、るう子との出逢いが彼女を変えた。
憎しみに囚われた心は浄化され、彼女の魂は無数の蝶となり消えた。

セレクターバトルに参加していて全ての少女は解放され
それぞれ平和な日常の世界へと戻っていった。


だが、それで悲劇は終わらなかった。
何者かの存在により彼女の魂は再び現世へと引き摺り下ろされた。

『……さあ起きなさい』

―――誰?

『私は貴女を救いに来たのよ』

救いって、どういうこと?

『このまま貴女が消えて終わるなんてとっても悲しいこと、それじゃ救われないわ
 だから私が貴女を蘇らせる為に、強力してあげる』

……必要ないわ。
私はるう子に抱きしめてもらった……それだけで十分幸せよ。

『フフフ……アーッハハハハハハ!!!遠慮する事なんて無いわ!!
 さあ、私と一緒に楽しみましょう!!この快楽をッこの溢れ出る幸福感をッ!!』

――!?いやっ私の中に入ってこないでぇ!!こんなこと私は望んでっああああ!!
ああっ……染まっていく……私の心が……黒く、塗りつぶされて……いやあああああ!!!!



『フフフフフ……この子はもう、私たちの同志になった。
 これから次の段階への移行を始める』

静かに消える筈だった彼女の魂はドス黒く染め上げられ、精神は歪に歪められた。
それから新たな惨劇が繰り広げられる夜が始まるのはそう遠くなかった。

そこは白い部屋だった。

床も壁も窓も天井も全てが白一色。

いつの間にかそんな異常な部屋に連れてこられていた。

周囲には見知らぬ人達が狼狽え、ざわめき、泣き出しそうになっているのもいる。
自分と同じ、知らない内に連れてこられた状況なのだろうか。

「皆さん お静かに」

服も髪も真っ白な少女が姿を現す。

「皆さんには、あるゲームをしてもらうために集まってもらいました
 そのゲームの内容は簡単に言えば『殺し合い』最後の一人になるまで生き残ったら勝ちのゲームよ」

「ま、まさか……『バトル・ロワイアル』をさせるつもりか!!」

浮浪者のような小汚い風貌の男が声を荒げる。
少女の言う殺し合いゲームを知っているようだ。

「知ってるのかおっさん!?」

「うむ。正式には戦闘実験第六十八番プログラムと呼ばれ、日本政府によって選ばれた中学3年の1クラスに武器を与え
 最後の一人になるまで殺し合わせるという忌むべき実験だった……。
 もう二度と起こりえないと思っていた悪夢が、こんな所で目の当たりにするとは……一体何の目的があってこんな事をするッッッ!!?」

「それは命よ……争い、傷つき、苦しみ、悲しみ、絶望したあなた達の魂があれば私は再び生き返る事が出来るのよッ!!」

「ふぅざけるなァ!!こぉのガキがァァァ!!!!
 私ならともかく、DIO様の命を欲するとは許さん!!許さんぞォォォォッ!!!!」

「―――――ッ!!」

白い少女の発言にレオタードのような服装をした男が激怒した。
今にも蹴り殺してきそうな勢いの中、何処からともなく刀剣が飛び出し
激怒した男の足元に突き刺さり、歩みを止めた。

「相変わらずですねヴァニラ・アイス、DIO様の事になると冷静さを失い、怒りで我を忘れる」

刀剣を投擲した人物が空中を滑空するように移動して現れた。
それはレオタードの男ヴァニラ・アイスをよく知る人物。

「貴様は……テレンス・ダービーッ!!」

「お久しぶりです。DIO様、ヴァニラ・アイス、再び会える日を楽しみに待っていました」

「なぜ貴様がここにいる!?」

「私は、このバトルロワイアルの監視役兼、繭様の世話係としての役割を与えられたのです。
 バトルロワイアルを運営する主催者様達の力を目の当たりにした私は心の底から忠誠を誓ったのです」

「つまり……DIO様を裏切ったのだなァ!!」

「現在、この場所ではあなた達の特殊能力は封じてあります。ヴァニラ・アイス、あなたのスタンドもね
 ……つまりあなたでは私ですら倒すのは不可能です」

アイスの振り下ろされた拳をテレンスは片手で難なく受け止めた。
吸血鬼化して人間を超えた力を持つアイスの拳を涼しげな顔で。

「ば、馬鹿な!!貴様如きに……」

「言い忘れていました。我が主様から貰いうけた特注の服のおかげで私の力は格段に強化されているのです
 元々、小道具を作るのは得意な方でしたが、おかげでこのような芸当も出来る様になりました」

テレンスの右手から一瞬にして刀剣が生成された。
先ほどアイスの足元に投げたのも、同様に生み出した武器であった。

「もうよい、下がれアイスよ」

「しかしDIO様!!」

「テレンスのその力、この特殊な空間を作り出す能力。
 私の元を離れて、新たな主として従いたくなる程の存在が彼の背後にいるのだろう。
 ここは大人しく従ってみようではないか」

「分かりました……DIO様」

「エフッ エフッ エフッ ククク ハハハハハハハッッッ!!!!
 どいつもこいつも相手が怖くて僕逆らえませんってかぁ?
 だったら俺がぶっ潰させてもらうぜぇッッッ!!」

豪快に笑う赤毛の男が闘気を発しながらテレンスに向かって駆け出す。

パンッ

「ッッッ!!!!」

赤毛の男の頭上に大網が投げ降ろされ、俊敏性を封じられる。
その直後、銃声が大量に鳴り響き、男の身体に撃ち込まれる。

「ぬおおおおおおおお!!!!ぐっ……」

「無駄ですよ。一発で巨象を眠らせる麻酔弾を大量に撃ち込まれて耐えられる人間はいません
 ハンターの皆さん。ご苦労様でした」

「では説明を続けさせてもらいます
 これからあなた達を、ある島に送るのでそこで殺し合いをしてもらいます。
 島と言っても、そこは繭様の生み出した空間ですので、島の外に逃げても無意味になります。
 またどんな道具を使い、どんな殺し方でも自由ですが
 指定された進入禁止エリアに1分以上入ったり、無理に首輪を外そうとしないでください。
 おっと、一部の参加者には首以外に付けられてますが同様に外そうとしないでください。
 首輪が爆発してあなた方の命が消える事になります」

「進入禁止エリアに付いてですが0時、6時、12時、18時と1日4回、6時間毎に行われる放送で指示させていただきます。
 うっかり忘れて命を落とす事の無いようメモを取ることをお勧めしますよ。
 それと放送では死んでいった参加者の報告も行いますのでお忘れないように」

「今説明させていただいたルールはこれから島に飛ばす際に渡す支給品の中のルールブックに書かれていますので
 後で確認するといいでしょう。ゲームをするのに説明書を読むのが大事ですからね
 では質問のある方は…………おりませんようなのでバトルロワイアルを開――」

テレンスが言い終えかけた時だった。
金髪の少女が会場を駆け抜け、テレンスの眼前にまで近づき
首を切り落すべく斬りかかった。

「フフフッ……勇ましいですねぇ。だがそれは愚かな選択です。セイバー」

ピッ……ピッ……ピッ……

「夏海!!く、首輪が……」

「あれ?姉ちゃん、なんで私の首輪が?」

夏海と呼ばれた少女の首輪が点滅していた。
点滅速度は徐々に速くなっていく。

「下郎がぁ!!いますぐそれを止めろ!!」

「フッフッフ……セイバー、貴女のせいですよ。
 貴女が余計な事をしたせいでここで一人死ぬんです」

「貴様ァ!!」

「もう一度抵抗しますか?いいでしょう。その時は新たに一人、誰かが犠牲となるでしょうが」

「くっ……」

「そうです。ここは素直に従うのが聡明な判断です」

セイバーはテレンスを睨み付けながら剣を下げた。
相手への憎しみと何もできない己の無念さを合わせたような表情で
テレンスはセイバーのその姿を見て、笑みを隠しきれないでいた。

ピッピッピッピッ

「やだ……いやだよ、助けてぇお姉ちゃん……」

「夏海!夏海ぃぃ!!」

ピピピピ

「死にたくないよぉ!!お姉ちゃん!お姉」

パァンッ!

「な……つみ……?」

夏海の首は小毬の目の前で吹き飛び、頭部を失った夏海の身体から噴水のように溢れ出す鮮血が小毬を赤く染め上げた。

「やあああああああああ!!!!夏海ぃぃぃぃ!!!!いやあああああああああ!!!!」

「大切な家族が目の前で無残に殺される。ああ、とても悲しい事ですね
 ですが心配しないでください。まだ彼女は死んではいませんよ」

テレンスは繭に頼み、自分が利用している棚を出現させると
棚の中から人形を取り出し、小毬に向けてみせた。
人形は夏海そっくりの姿をしている。

『……お姉………ちゃん……』

「夏海……?」

「そうです。貴女の妹さんの魂は人形の中で生きています。
 良い出来でしょう?制服も髪型も本物そっくりに似せて作りました」

『動けないよ……苦しいよ……お姉ちゃぁ……うわああ!!』

「夏海ぃ!!」

「助けたいですか?ならば優勝を目指すことです。優勝すれば再び会える事が出来ますから
 もちろん、皆さんの分の人形も用意しています。
 ですから安心して殺し合い、殺され合ってください」

「では始めましょうか『バトルロワイアル』を!!!!」

「絶対に許さんぞ!!お前のような下種は必ず私が――」

参加者達の姿が次々と消えていき、白い部屋にはテレンスと繭が残った。

「お疲れ様です。繭様」

「悪いわね。説明を殆ど任せてしまって」

「繭様は多数の人達と接した経験が無いのですから仕方のないことです。
 むしろ、初対面の人間にこれだけ見つめられて冷静でいられた繭様は十分立派な方です」

「あ、ありがとう……ねえテレンス、これから一緒にF-MEGAで遊ばない?」

「構いませんよ。それと繭様、私にもWIXOSSのやり方を教えてくれませんか?」

「いいわよ♪ゲームマスターの私がしっかり教えてあげる♪」

「ありがとうございます繭様」

テレンス・ダービーはジョースター家との戦いに敗れリタイアした。

その後、ジョースター家によりDIO、ヴァニラ・アイス両名の死亡を知り
主を失った配下達は、ある者はジョースター家への復讐を誓い
ある者は以前の生活へと戻り、散り散りになって去って行った。

テレンスは復讐を選ばなかった。
それほどDIOへの忠誠心が厚くなかったテレンスはわざわざ危険な橋を渡る気にはなれなかった。
スタンド能力があれば楽に生きていくことなど造作もない。
しばらくはスタンド能力を悪用して気ままに暮らしていた。

ある日、テレンスは彼らと出会った。
彼らの持つ超常的な技術を知ったテレンスは彼らこそ従うべき相手だと確信した。
極制服という特殊な服装を手に入れたテレンスは身体能力及びスタンド能力が格段に強化されていくのを感じた。
テレンスは思った。自身ですらこれだけの力を得られるなら彼らの力は世界……いや宇宙規模まで支配出来るのではないかと。

彼らがバトルロワイアルを企画するのを知った頃、同志として繭が加わった。
繭は肉体を持たない亡霊のような特殊な力を持っていた。
それは繭の想像から世界を構築する力を持ち、とても凄まじく
外部によって邪魔されることのない空間を生み出せるほどであった。

繭は初めは、テレンスを警戒して近づくだけでも拒否反応を示していた。
テレンスに敵意が無い事をしると少しずつ打ち解けていき
そこで趣味であるゲームを見せていくと物凄く食い付いた。
繭はゲームが大好きなようだ。

テレンスは繭と一緒にゲームで遊ぶ事で充分に信頼を得る事が出来た。
それでもあまりスキンシップを図ると嫌がられるので少し距離を置いた接し方が必要だった。
逆に距離を置きすぎると、寂しいのかゲームの催促をされて連れていかれる。
まるで猫みたいな少女だ。


(それが現状の私と繭との関係だ。私としては非常に楽しいじかんだ。
 なにせ彼女はとても脆くて危うい存在だ。彼女の生を望む願いの強さは
 この世界に呼ばれた参加者と比べても一番だろう)

(もし彼女の願いが打ち砕かれ、絶望に打ちひしがれた時
 彼女はどんな表情を見せてくれるでしょうか……。
 私は彼女や参加者達の苦しむ姿を拝めるだけで彼らに従う価値が有ったと心の底から思えます)

【みせしめ】

【越谷 夏海】


【主催】

【繭@selector infected WIXOSS】
【テレンス・T・ダービー@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース】
【???@???】

会場は繭によって想像された箱庭の世界です。
死んだ参加者の魂はテレンスの能力によって人形に封じ込められる為に成仏が出来ません。