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――の命が尽きてからも彼女は■■を叩いていた。

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ラヴァレイは黒カードを猫車に戻すと、担いでいた少女 小湊るう子をそのままそっと乗せた。
るう子は未だ気絶しており目覚める気配はない。
それに対し、今しがた協力者となった浦添伊緒奈――ウリスは疑念を含んだ眼差しを彼に向けた。


「さっさと起こせばいいじゃない」
「……加減を間違えたようだ。しばらくはそのままにしておいた方がいいだろう」
「はあ?貴方がやった癖によく言うわね」
「いやまったくだ」


嫌味を簡単に流すラヴァレイに、ウリスは不満気だったが気持ちを切り替え一旦黙る。
今のるう子の状態は良くない。何より治りかけた風邪も再発し発熱もしている。
放置してもすぐ死ぬことはないだろうが、尋問するにしても思考が纏まらない状態では情報を聞き出しにくいだろうし、
いざ人質として使う時に不便が生じかねない。だが、この状況は一方で好都合でもあった。

ラヴァレイがるう子を起こさないのは人質として気遣っただけではない。
彼がウリスを協力者として誘ったのは嗜好が共通する同類の匂いを嗅ぎとったのもあるが、主因ではない。
一番の理由はゲームの主催 繭と何かしら関係があり、なおかつ殺し合いに乗った者である人物であった事。
ウリスが自分にとってどれだけ有益であるか観察する為だ。
可能であれば一対一で対話。それが彼の目的である。


「で、北に行くって言ってたけど、何処に出入り口があるのかしら?」
「地下闘技場だ」
「ふぅん、人はあまりいなさそうね」



ウリスは皮肉げに顔を歪ませた。彼には彼女も体調は思わしくないように思えた。
これまでアザゼルの攻撃を受け続けたダメージが見て取れたから。
ただ、るう子と違うのは痛みに意を介してないように振舞っている事。
所々不満を滲ませながらも、何だかんだで楽しくて楽しくてしょうがないという様子。

ラヴァレイは戦力としては期待できないなと分析し、せめて足手まといにならぬようどうしようかと思った。
ウリスは彼の胸中を他所に軽い口調で続ける。


「ねえ、南東に向かうってのはどうかしら」
「……市街地に出るとしても距離がありすぎる、あまり意味は無いな」
「でも、私の知り合いがいる可能性が高いわよ」
「……紅林遊月か」


アザゼルが繭打倒の手札として注目しているセレクターで、ラヴァレイの協力者である針目縫も少なからず執着している少女。
ウリスもるう子を尋問した際に行き先はラビットハウスだろうと見当をつけている。
ウリスにとって遊月は興味のない対象だが、それでもおおまかな性格は把握していた。
迷惑をかける方向性でのまっすぐな性格。
遭遇したとされる桐間紗路亡き後も、罪悪からかよほどの事が無ければあの家に留まっているだろうと想像できた。
だが、ラヴァレイの方針は変わらなかった。


「やはり止めておこう」
「チッ」


今のウリスの提案はあくまで軽口、ゆえに彼女も未練はない。
だが、そのままウリスを伴って北へ向かおうとしたラヴァレイは、それがきっかけである可能性に気づいた。
彼は猫車を操作し逆方向へ向いた。


「あら、止めるんじゃなかったの?」
「気にかかることがあってな」


彼は黙ったまま南へ移動を始め、ウリスも追った。


「気にかかる事って?」
「……闘技場の近くの通路に特別な施設がある。放送局の近辺にも可能性はあるだろう」
「へえ、どういう施設よ」
「見れば解る」


ゲームの脱落者の情報が提示されている施設『死の瞬間を捉えた道』をウリスに伝えるのは抵抗があった。
しかし有能ではないにしろ折角できた協力者、ある程度でも足並みを揃える必要ありと判断し遠回しに告げた。
どの道、単独行動を取らせる気はないし邪魔になったら処理する腹づもりではあるからこその選択。
そして放送局近辺に施設があると思ったもう1つの理由は北東にある『ジョースターの軌跡』の存在。
施設が2カ所確認できていたからこそ向かう。

当初の方針ではゆっくりと北に向かい、放送直後に『死の瞬間を捉えた道』での更新情報を集め。
地下闘技場でしばし休憩しながら駅に向かうつもりであった。
3人は南東へと進む。
しばらくして遠くから何かが崩れる音がした。

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3人の男女が無言で地下通路を進んでいる。るう子はまだ目覚めていない。
通路の左右の壁には映像。六時間ほど前ヴァニラ・アイスが通過していた通路。
『万事屋の軌跡』という映像が設置されている場所。
映像を鑑賞したウリスが嫌味たらしく呟く。


「邦画にしては良くできてるわねえ」
「……君の提案を聞いた甲斐があったな」
「嫌味のつもり?」
「まさか」


先へ進み続け、やがて映像は途切れた。
ラヴァレイは気を良くした様子で猫車を転換させ、ウリスも従う。
思った以上の収穫があった。るう子から強奪した定春は万事屋メンバーと親しい仲。
いざという時の取り引きにも使えるだろう。
彼等が次の放送まで生きてるかはまだ不明だが、死んでいたとしても無駄ではない。
それに神威という男。単純な戦闘力ではアザゼルをも上回るかも知れない彼の存在を知れたのが大きい。
ラヴァレイのような謀略を得意とする者にとっては、もっとも苦手なタイプ戦闘狂。
事前に情報を入手しなければ、仮に遭遇した場合に見かけに惑わされ後手に回っていた可能性が高かった。
今は少なくとも警戒が可能になった。


「ところでこれから何処に向かうのかしら?」
「……」


腕輪を操作し歩きながらウリスはラヴァレイに問う。
白カードには地下通路についての最新情報が記されている。
崩れる音がして数分後。ウリスがライト代わりに腕輪を操作した際、発見したのはたまたま。
放送局にあった地下通路出入り口が使用不可となったとの通知。
更に放送後に放送局に代わる出入り口が開通されるとの通知もあったのだ。
南東は遠方により選択肢にない。

あるのは地下闘技場と代わりの出入り口。
放送局の代わりなら、元の出入り口とはそう離れていない場所にあるだろう。
場所が放送局と同エリアなら、まだアザゼルがいる可能性が高く、地上に出ようとは思わない。
だが、もし別エリアに開通するのなら、あえて地上に出るのも選択に入れようかと彼は思う。
知り合った参加者の大半が死に、物資も心許ない状況。
放送局へ向かっている参加者との接触や、脱落者の遺品を入手する機会が生まれるかも知れないのだから。


「着いたわね」

そこは放送局の地下にある出入り口だった場所。
ラヴァレイは五感を研ぎすませながら慎重に階段を登る。
ドアに手を当てる。動かない。いつのか定かではないがそこに書かれた文章を彼は確認する。


『この出入り口は使用不可となりました。放送後またの確認をお願いします』

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彼女達が斃れていく光景が繰り返される。
それを見るに連れ、自らの至らなさを痛感させられる。
最低。
その言葉よりも下回るものがあると夢の中で、現実の中であるのを少女は悟った

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ここは地下通路C-2とD-2の境目。
ラヴァレイとウリスはここで休憩を取っていた。

「つまりアザゼルの、セレクターバトルを利用しての策は無意味と言いたいのかね」
「ええ、繭単独だろうが協力者がいようがそれに変わりはない。
 夢幻少女になっても繭に支配されるルリグになるだけだし、
 仮に逆らえてもあの竜や協力者をどうこうできるとは思えないしね」
「しかしアザゼルはタマというルリグを利用すれば突破口を開けるみたいな事を言ってたが」


ラヴァレイの疑問にウリスは嘲りの色を見せ答える。
手にはるう子から奪った黒カード。それを元の形に戻し見下しつつ。


「ぷっ、ハハハハハハ。繭は何やら執着していたみたいだけど、コイツにルリグ以上の力も度胸もないわ。
 だってあたしが使っていて観察していたから間違いない。ねぇ、クソッタレさん」
「……っ」


ウリスの嘲笑に対しカードの中のルリグ タマは泣き出しそうな顔で頭を下げ何も言えなかった。


「第一、他にルリグデッキが支給されているかも解らないしね」
「……あの竜、バハムートについて何か知らないかね?」
「知らないわ。ああいうのって神話や創作では珍しくないみたいだけど」
「……」

ラヴァレイはその神話についても聞き出そうと考えたが、その辺に詳しく無さそうと察し止めた。

「るぅ……」

タマが見つめる先は未だ意識を回復しないパートナー るう子。


「薄情なヤツね、るうは」
「……ウリス!」


タマは泣き叫ぶ一歩手前まで声を荒げる。
ウリスはそれに怯むどころか愉しげに顔を歪めながら悪意を向け続ける。

「だって、あの子あれほどあんたを取り戻したいって言ってた割には、あたし達に捕まった時戸惑って何もできないでいたわ」
「そんなのっ」
「嘘じゃない。それにあんたの事頭にないって感じでもあったわ」
「……!」

タマはウリスを睨みつける。だがそれ以上アクションを取ろうとはせず黙る。
ウリスは畳み掛けようとするが、それはラヴァレイに止められた。


「まだ私の質問が終わっていないぞ、ウリス君」
「……はいはい。あんたも楽しんでいた癖に」
「……」

ウリスは弾を黒カードに戻し悪態を付き、ラヴァレイは彼女の肩に置いた手を引っ込めた。
彼の目は笑っている。
苦笑しながらウリスが黒カードを仕舞おうとしたその時だった。


「!」


突如起き上がったるう子の両手がウリスの右腕を掴んでいた。


「こ、こいつ」


ウリスはとっさに引き剥がそうとするが動けない。


「タマを、タマを返して……!」
「何今更、いい子ぶってるの?」

るう子はさっきの2人の会話を聞いていた。
ウリスは殴りつけ離そうとするができない、ダメージもあり逆に押し倒される。
堪りかねたラヴァレイが事態の収拾に当たろうとする。

その時、放送が始まった。

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 次は正子――午前0時に放送を始めるわ。また放送が聞けるといいわね』

放送が終わった。
るう子は黒カードをしっかり手にしながらも項垂れていた。


――アインハルト・ストラトス


桐間紗路に続き、仲間がまた逝った事による衝撃は大きい。
その上、結城友奈や宇治松千夜といった仲間の大切な人が次々と亡くなっている。
紗路の死の辛さも合わさり、るう子の両眼からは涙がポロポロと落ちた。


「――!!――――!」


ウリスは狂喜に顔を歪めつつ、こちらを罵倒しているが、まともに聞こえない。
るう子は顔を上げる。一瞬、ウリスは怒りを滲ませたが、すぐに嘲るような笑顔でこちらに対する中傷を再開した。
しかし、るう子の心には大して響かなかった。発熱していることも原因だった。
ふともう一人の同行者へ顔を向ける。
髭面のドレッドヘアーの騎士風の男は、気味の悪い視線をこちらに向けながらも、忌々しげに口を歪めている。

「ねぇ!こいつからカード取り上げないの?!」
「……」

るう子はすべての所持品を没収された訳ではなかった。
ラヴァレイはウリスの疑問に構わず、今後の計画に思いを馳せる。
るう子の放送への反応は見ものではあったが、同時に放送の内容は彼にとっても不都合であった。
ファバロ・レオーネ、リタ、本部以蔵、坂田銀時、宇治松千夜らの死。
そしてアザゼル、三好夏凛、神威の健在。
前の放送で告げられた遭遇者の大量死の時は、こういう事もあると自らを納得させていた。
だが、ここまで変身対象やコネが絶たれてくると、決して楽観視できる状況ではない。
それに脱落者の出るペースが未だに早い。
こうなると情報操作の効果も存分に発揮できなくなってくる。
一刻も早く未知の参加者の情報を収集し、物資も集めなければ。生存できる選択肢がなくなってしまう。
ラヴァレイはそう決断するや、ゆっくりと2人の少女へ顔を向けるや少女達にとって思いがけない事を言った。


「今は彼女に持たせておこう」
「はあっ?!何言ってんの?」
「タマ君が何もできないと言ったのは君だ。ただしこれ以上返すものは無いがね」
「……ラヴァレイ……さん、あなたがるうを……!」
「悪いが、私にも立場というものがある」


咳き込みながら彼を糾弾するるう子に対し、彼は悪びれない態度で返す。
手には犬の絵が書かれたカードがあった。人質みたいなものかとるう子は思った。


「……君の持ち物を全て没収しなかった理由が解るかね?」
「……」


るう子は睨みつけたまま黙る。カードを握っているのは両手だが痛みに意を返さない。
大人しくすれば悪く扱わないということだろう。るう子はそう推測した。
ウリスは不満タラタラで2人を交互に見つめる。

「君には人質としても、情報源としても我々に協力してもらう」
「……!」
「見返りとしては悪くはないだろう」


ルリグカードだけでなく腹巻きも、白カードも没収されていない。
ウリスは裏切られたかのように顔を歪ませ、叫んだ。

「アンタ、優勝を目指すんじゃなかったの?!」
「……」

確かにラヴァレイはウリスに対し『強い心が折れる音は何よりも、心地好い』と同意を求め、協力を求めた。
しかし優勝を目指すから協力しろとは言っていない。参加者の情報が不十分である今、自らのスタンスをおおっぴらに広げるつもりは毛頭ない。
ウリスの叫びにラヴァレイは虚勢からの笑みを浮かべた。
もし繭に対し、ゲームのルールに対し、何ら手がかりや抜け道が見当たらなければ、僅かな可能性にかけてでもそのスタンスを取り続けていただろう。
しかし事態は彼の予想を大きく超えて終息に向かい、優勝も不確実なものに思えてきた。

今のアザゼルや針目、DIOには勝機は見当たれれど、神威が健在だった場合遭遇すれば勝ち目はほぼ無い。
機会を失う前に賭けに出る必要が出てきた。だから問う、もう一人のセレクターに。


「アザゼルのセレクターバトルを利用しての策は無意味なのかね?」
「…………」


るう子は即答できなかった。
東郷美森から救出されてからのるう子はアザゼルの策に対し、微かな希望を持った。
だが同時に漠然とした不安も抱き、捕らえられるまでその不安は成功の是非から来るものだとばかり思っていた。
しかし先ほどのタマの悲痛な声とウリスの中傷を聞き、それは違うのではと思った。
先程まで抱いた微かな希望は、今は桜色の甘い夢の様な罠に思える。
だから今それを振り切る。


「すぐに答えられないなら、ホワイトホープは……」
「そのままでは意味はないと思います」
「ほう?」
「るう達セレクターは肉体的には普通の人間。
 だからそのまま繭、もしくは別の犯人の所に行っても倒すとかはできないです」
「セレクターは特別な存在だと聞いたのだが」
「何十人もいるゲームができる、ただの人間です」
「……!!」

るう子のその言葉にウリスが強い怒りを滲ませ口を挟みかけるが、ラヴァレイが手を振るとウリスは気絶し沈黙した。

「……」

るう子は今起こったそれに怖気が走ったが、負けずに続ける。
何もしなければ人質として誰かの足を引っ張り続け、用が済めばたぶん殺されるだろう。
アザゼルさん達の救助が来るかもしれないけど確実じゃない。ならいっそ、先にこっちが。


「だけど話し合いはできると思います。ゲームをやめさせるとかじゃなく、多分クリア条件の一つとして」


あの時のアザゼル達に言えなかった、るう子の心の奥に秘めたカードゲームユーザーとしての推理。


「つまりセレクターバトルは主催のルールの範疇だと」
「そうだと思います。るうが知る限り繭はゲーム崩壊に繋がることは簡単に許容したりしませんから」


ラヴァレイは得心した。
少なくとも闇雲に優勝を目指すよりは生還できる可能性が見えてきたから。
ルリグデッキを二人分集め、セレクターバトルをし勝てば主催の元へ行ける。
ゲームの範疇ならばここで主催の誰かと交渉できるに違いない。
そうなれば取れる選択はいくつも増える。
少なくとも僅かな可能性に賭けて優勝を目指すよりはリスクが軽減されるだろう。
ラヴァレイは密かに歓喜した。
ただそれは皆殺し行為への回避から来る安堵ではなく、こちらが有利になりえる状況からの喜びに過ぎないが。


るう子は黒カードをホワイトホープに戻すと、ルリグカードを取り除き、デッキを彼に向けた。
吐く息はこれまで以上に荒い。


「何かね?」
「ラヴァレイ……さんの目的、あなたも含めた全参加者の……破滅なんですか」


ラヴァレイは一瞬、何世迷い言を言ってるのだと思ったが、彼女の視線が倒れたウリス方を向いてるのに気づき問いの意味を察した。


「いや、私は元の居場所に戻れればそれで構わない」


嘘は言っていない。だが真実をすべて伝えきってもいない。
彼は元の世界の帰還が目的であるが、可能であればバハムートを得たいと考えている。
もし仮にこの舞台でバハムートの力を得られれば間違いなく殺戮を行うだろう。そんな男だ。


「……」
「もし、余裕ができれば君達の目的を手伝うのも吝かではないが」


るう子はラヴァレイが悪党だと思っている。
しかし自己を含めた全ての破滅が目的なウリスと違い、自らの保身が優先なプレイヤーなら話が通じると思った。

るう子は命惜しさにゲームに乗った人がいても、それは仕方がないと思っている。
自分はそんな選択は選べないし、いざ襲われれば抵抗するが、そう選ばざるを得なかった人すべて否定する気にはなれない。
それは今も。だから今は協力要請を受託する。
タマの救助も踏み切った理由でもある。そして何よりこれ以上、翻弄され何もできないでいる自分が嫌だった。
るう子は黙って頷いた。言葉には出さない。

「次の質問はいいかね?」
「はい」
「セレクターは誰にでもなれるものかね?」
「ルールを覚えればなれます。夢幻……少女になれるかは人それぞれですけど」
「他のゲームでは代用はできないのか」
「るぅが知るかぎりでは無理ですけど、ここではどうだろ?」


ラヴァレイはタマ除くルリグデッキをるう子から回収する。
そして、先程気絶させたウリスを猫車に乗せた。


「ウリス君の事聞いていいかね」
「……いいですけど」


気が進まない。るう子が知るウリスの経歴はお世辞にも他者に好印象を与えられるものではない。
この場においては善悪問わずだろう。今のウリスは心はともかく、肉体はるう子が好感を抱いた浦添伊緒奈本人のもの。
例えるう子と話しした彼女とは別の時間軸の存在だったとしても、見捨てる気には到底なれない。
それにいくらウリスが悪者とはいえ、むざむざ命を奪わせさせるような行為も許容したくなかった。


「何、悪いようにはならないと思うよ、ウリス君も賢いからね」
「……」


殺されないようにせめてまともな返答はしてほしいと、るう子は思った。
るう子は思うままを説明する。
ラヴァレイはるう子のウリス評を聞き、やはりそのままでは使えないなと思った。
3人は向かう、ある地点へ。


「繭が出したあの竜について心当たりはないかね?ああ、別に似ているものでもいいんだ」
「……ドラゴンならウィクロスにもいますし、
 るぅが知るだけでもあれだけ不思議な現象があったなら、現実のどこかで同じような存在はいてもおかしくない、かな?」
「……時空を超える力は存在するのか?」
「ウィクロスの、たぶん創作ですけどそう取れる表現はあったかな。現実はどうだろう……」
「……伝承だが、私のいた世界のバハムートは時空を超える力があるのだよ」
「えっ」
「恐らく繭はその力を使って我々を拉致したと思われる」
「……何で知ってるんですか?」
「私というか我々はバハムート対策が任務だったからね。ある程度知っていてもおかしくはないだろう」

嘘は言っていない。真実も伝えきってはいないが。
るう子も鵜呑みにはしていないが、頭には入れた。

「そうですか……」
「セレクターバトルはいつから始まったか解るかね」
「何年も前から行われています……ごほっ……」
「……るう子君、水でも飲んではどうかね。このままでは見ていられん」
「……はい」

るう子は足を止め、青カードと黒カードを使い風邪薬を服用する。


「君の思惑が叶うといいな」

一息ついた彼女に掛けられたのは優しい言葉。
ただしそれは見透かそうとする悪意も込められたもの。
その幾つかを察したるう子はそれにしぶしぶ頷くと、これまで忘れていた参加者の事を思い出す。

池田華菜と神代小蒔。
宮永咲いわく友人の一人と、直接試合しなかった対戦チームの一人。
池田はまだしも、小蒔については咲さんからどうこうしたいとは言われていなかった。
だが、おおまかな特徴は伝えられていたし、咲さんを喪った直後はなんとか合流し協力しあいたいと思っていた。

なのにるう子はついさっきまで彼女達の事を忘れていた。
タマの事にしても、元いた世界での目標 全ルリグの救出にしてもそう。
るう子の願いすべてがここでは薄っぺらな物になりかけていた。
ウリスを見る。
今のるう子にしてみれば確かに最低と言われても仕方のないたいらく。
だから忘れない。虐められたタマを前にようやく湧き上がった思いを。
こちらが悪く思われてもいい。これ以上できるのに何もしない選択を選ばないためにも。
他者の悪意を抑える為にも。たとえ不可能に思えても。


るう子はウリスの腕輪を見た。傷一つ無いように見える。
ラヴァレイの腕輪を見た。こちらも傷一つ無いように見える。
最後に自分の腕輪を見る。こちらも傷一つ無い。
思えば壊そうとした咲さんの腕輪はよく確認していなかったと思いだす。
咲さんが亡くなった後も、意地になって自分の腕輪の先端で何度か叩いていたんだっけ?
そういや石で壊そうとした時とどこか違っていたような……。


「ラヴァレイさん」
「?」
「タマが見えるんですよね」
「……普段は見えないのか?」
「はい」
「セレクターバトルもセレクターとルリグ以外は感知できない」
「……」


ラヴァレイは興味深げに見るが、るう子にこれ以上の反応はなく。
様子から推理に行き詰まったと判断し、興味を失い視線を逸らす。
目的地までもうすぐ。
先は『死の瞬間を捉えた道』か未知なる出入口か。



半ば朦朧とした意識の中、彼女は考えた。
白カードは無効化できないけど、腕輪は強力な力で別の腕輪をぶつければ壊せるんじゃないかと。

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【D-2/地下通路/一日目・夜】

【ラヴァレイ@神撃のバハムートGENESIS】
[状態]:健康 、上機嫌、セレクターバトルに興味、主催への好奇心
[服装]:普段通り
[装備]:軍刀@現実、定春(犬質)@銀魂、ホワイトホープ(タマ除くカードデッキ)@selector infected WIXOSS
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(9/10)、青カード(9/10)
    黒カード:猫車@現実、拡声器@現実
[思考・行動]
基本方針:手段を選ばず生還し、可能ならバハムートの力を得る。
0:地下闘技場に向かうか、新しい地下通路出入り口に向かうか。
1:るう子を利用し勝者になるべく立ちまわる。 まずはルリグデッキを探す。それらが無理なら優勝狙い。
2:ウリスが目覚めれば質問をし、その時の反応で今後の扱いを決定する。
3:アザゼルと夏凜と神威は殺したいが無理はしない。
4:本性はるう子とウリス以外には極力隠しつつ立ち回るが、殺すべき対象には適切に対処する。
5:機会があれば別の参加者の『折れる』音を聞きたい。
6:モトベの最期を見れなかったのは残念だった。
[備考]
※参戦時期は11話よりも前です。
※蒼井晶が何かを強く望んでいることを見抜いていました。
※繭に協力者が居るのではと考えました。
※空条承太郎、花京院典明、ジャン=ピエール・ポルナレフ、ホル・ホース、ヴァニラ・アイス、DIOの情報を知りました。 ヴァニラ・アイス以外の全員に変身可能です。
※坂田銀時ら銀魂勢の情報を得ました。桂小太郎、神威らの変身が可能です。
※参加者はバハムートの力を使って召喚されたと思っています。
※ルリグが2人いれば、別のゲームでも工夫次第でセレクターバトルの代用は可能ではと推測してます。


【小湊るう子@selector infected WIXOSS】
[状態]:全身にダメージ(小)、左腕にヒビ、風邪気味(服薬済み)、体力消費(中)、精神的疲労(小)
[服装]:中学校の制服、チタン鉱製の腹巻 @キルラキル 、タマのルリグカード@selector infected WIXOSS
[装備]:
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(8/10)、青カード(7/10)
    黒カード:黒のヘルメット、宮永咲の白カード、キャスターの白カード、花京院典明の白カード、ヴァローナの白カード
          風邪薬(4錠消費)@ご注文はうさぎですか?
[思考・行動]
基本方針:自分は悪く思われてもいいから、これ以上被害を出したくない。繭の思惑が知りたい。
0:どこに向かっているんだろう?
1:悪事を働かない分にはラヴァレイに協力する。有害な参加者による被害拡大を防ぎたい。
2:ゲームの打開方法を模索する。まずは腕輪破壊が可能かどうかを検証する?
3:白カードを集めたい。
4:遊月と夏凛さんが心配。あとアザゼルさんも。
5:死んでしまった人の事は忘れない。
6:左腕の治療をしたい。
[備考]
※チャットの新たな書き込み(発言者:D)にはまだ気付いていません。
※セレクターバトルは主催のゲームの一部と推測しました。
※半信半疑ながら参加者はバハムートの力を使って召喚されたと思っています。


【浦添伊緒奈(ウリス)@selector infected WIXOSS】
[状態]:全身にダメージ(大)、疲労(中)、気絶、ラヴァレイに対する不満(大)、猫車に乗車中
[服装]:いつもの黒スーツ
[装備]:ナイフ@現実
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(17/20)、青カード(17/20)、小湊るう子宛の手紙
    黒カード:うさぎになったバリスタ@ご注文はうさぎですか?、ボールペン@selector infected WIXOSS、レーザーポインター@現実
         宮永咲の不明支給品0~1(確認済、武器ではない)
[思考・行動]
基本方針:参加者たちの心を壊して勝ち残る。
0:…………………
1:使える手札を集める。様子を見て壊す。
2:"負の感情”を持った者は優先的に壊す。
3:使えないと判断した手札は殺すのも止む無し。
4:可能ならばスマホを奪い返し、力を使いこなせるようにしておきたい。
5:それまでは出来る限り、弱者相手の戦闘か狙撃による殺害を心がける
[備考]
※東郷美森が犬吠埼樹を殺したという嘘をチャットに流しました。
※変身した際はルリグの姿になります。その際、東郷のスマホに依存してカラーリングが青みがかっています。
※チャットの書き込み(3件目まで)を把握しました。
※坂田銀時ら銀魂勢の情報を得ました。

※放送局にある地下通路出入口は封鎖されました。仮に放送局の瓦礫を撤去しても利用できません。
※第三回放送直後にE-1、もしくはそう離れていないエリアに新たな地下通路出入口が開通しました。
 場所とラヴァレイ達の行き先は後続の書き手さんにお任せします。
※現在、放送局とホテルの地下通路出入口の封鎖告知と、代わりの出入口の位置情報が
 地下通路を利用中のすべての参加者の腕輪に伝えられています。


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175:虚ろなる生者の嘆き:End in…? ラヴァレイ :[[]]
175:虚ろなる生者の嘆き:End in…? 小湊るう子 :[[]]
175:虚ろなる生者の嘆き:End in…? 浦添伊緒奈 :[[]]