サカサマオツキサマ ◆DGGi/wycYo


♪  ♪  ♪


そう…あの日 おなじ夢を描いたんだ


輝く瞳は ■■を信じてた


 ♪  ♪


東條希は荒野を走っていた。
目的地に向けて、ただひたすらに。

ここに来てから半日以上、色々なことがあった。ありすぎた。
散々な目に遭った彼女の胸中のほとんどを占めるのは、この地でただ一人生き残っている、大切な親友。

「絵里ち……」

時折呟かれる名前は、荒い呼吸となって溶けてゆく。
一般人なら既に音を上げそうなほどの距離を移動したが、そこはスクールアイドル“だった”身。
体力や運動神経は人並み以上だと自負しているつもりだ。

けれども、音ノ木坂学院までの道は遠い。
ヴィマーナは再使用までに時間が掛かる。今の希にそれを待つという選択肢はない。
自転車か何かがあればとも考えた。右手を負傷している現状、危険極まりない。
結局、走ることしかできないのだ。

荒れ地を抜けて、建物――ガソリンスタンドに差し掛かった頃。
漆黒の弾丸が、高速でこちらへ向かって来ていることに気が付いた。
影を纏いながら嘶くバイク。乗っている主は……ヘルメットを被っていて、素性が解せない。

乗せてもらおうか。そんな選択肢が浮かぶ、が。

もしヘルメットの内が自分の右腕をこんなにしたような奴の同類だったり、ことりの首を絞めた筋肉男だったり。
或いは神父、その同行者の仲間、彼に一太刀浴びせた化け物――果ては、バーテン服の男だったりしたら。
結果、彼女の取った一手は逃走だった。

「あ、れ?」

だが、正体不明への恐怖に足が竦む。
動けない希の十メートルほど先でバイクが止まり、ヘルメットの……男? 女?が降りてくる。

九メートル、八メートル。徐々に彼我の距離が詰まってゆく。
やがてライダースーツの膨らみから女だと分かったが、そんなことを考えている場合ではない。
突き刺さったコンパスのような足を強引に動かし、希は脱兎と化す。

少女は走り、影はそれを追う。
二人のチェイス……いや、鬼ごっこにもならないそれは、ものの一分足らずで終わりを告げた。

「嫌や、離して!」
「……」

振りほどこうにも片手ではどうすることも出来ず、希はじたばたもがく。
何とか剥がそうとして蹴りを入れるが、まるで手ごたえが感じられない。
その上、幾ら喚いたところで相手が無言を貫き通すものだから、恐怖は余計に増す一方だった。

こんなところで殺されてしまうのか。と、ある種諦めのような気持ちが心中に芽生える。
希の予想に反して、しかし影は暴行を働くでもなく、ただ液晶画面を見せた。


『大丈夫なのか、その右手』
「……え?」

涙目で振り返る希。女は、PDAに新たな文字を綴った。

『私はセルティ・ストゥルルソン。安心しろ、危害を加えるつもりはない』
「……ホントに?」
『本当だ』
「ホントにウチに何もしないんよね?」
『本当に何もしない。何処かに行きたいなら乗せて行ってやる』
「ホントにホントなんよね?」
『くどい』

良かった……。
へなへなと倒れ込む希を支え、セルティはバイクへと戻る。
いつも(シューター)なら向こうから来てくれるのに、と僅かな不便さを感じながら。


『それで、何処に行きたいんだ』

V-MAXに跨ったセルティが問うと、後部座席からの返事は“音ノ木坂学院”。

「きっと、音ノ木坂やったら絵里ちもおる筈。せやからそこに行けば――」
『そこなら会えるかも知れない、というわけか』

こくり、と頷く希。
確認したセルティは『しっかり掴まっていろよ』と画面に指を滑らせ、バイクを走らせる。


無口な妖精の背後で、希はセルティに対して多少の不信感を抱いていた。
彼女はどうして、ここまで自分に優しく接してくれるのだろう。
もしかしたら表向きは親切を装って、人気の無いところで希を殺すかも知れない。
そもそも何故筆談なのか、右手を怪我している理由に触れようとしないのか、ヘルメットを外さないのだって怪しさ満点。

セルティの人となり、もといデュラハンとなりを知っている人間ならば、その心配は杞憂だと笑い飛ばしただろう。
生憎と希は闇医者でもなければ、情報屋でも喧嘩屋でも、まして製薬会社の者でもない。
池袋とは離れていないようで少し離れた、秋葉原に住む、普通の少女。
この島で彼女が心を許せる人間は、もはや絢瀬絵里以外には残っていないのだ。

それでも、救いの手を差し伸べてくれるなら。
親友に再び会うための手助けをしてくれるのなら。
藁か茨か分からないものにでも縋ってやるという思いで、振り落とされないようセルティの肩をぎゅっと掴む。


一方のセルティは、悩んでいた。
未だ名前すら聞けていない少女に対し、どう接したものか。

邂逅した時点での直感だが、応急処置こそされているものの、少女の右手は間違いなく粉砕骨折している。
何より、身体より心の方が酷く疲弊しているようだった。
曲がりなりにも医者(非合法だが)と同棲しているのだから、そのくらいは自然と理解出来る。

何があったか問いただすべきなのだろうが、彼女の怯えようからして、簡単に口を割ってはくれないだろう。
大体、セルティ自身の外見が外見だ。ヘルメットの下を晒すわけにはいかないが、怪しいと言われる材料としては十分。
先程希を捕まえた時だって、なるべく怖がられないよう影を使わなかった。
結局あまり信用してくれている風には見えないが、下手に刺激してしまうのは少女のためにならない。

それでも首無しライダーは、こんなところを一人で行動している非力な一般人を放っておけなかった。
見たところ少女の着ている服は、来良とは違うがどこかの学生服のようだ。目的地が音ノ木坂学院だから、恐らくは。
ならば彼女の捜し求める人も、同じ服を着ている可能性は高いと踏む。

(せめて、彼女の友達が無事だったらいいが)

二人の思惑を知ってか知らずか。
夕焼けに照らされた道を、マシンは歌うように叫ぶ。






倒壊しないのが不思議な闘技場に、二人と一人。
闘い、怒り、悲しみの後に残されたのは、空しさ。

神威は安息に耽り、宇治松千夜は無言で俯いている。
短時間で四人もの魂が散った。哀しい出来事が、津波の如く押し寄せた。
その中でも絢瀬絵里は、つとめて気丈に振舞った。


『そんな諦めたような顔して、あっさり殺されて終わりなんて……絶対に許さない』
『絶対……全部、償わせてやるんだから!』


惨事を引き起こし、三人の命を奪った元凶にあんな啖呵を切った手前、というのも理由の一つ。
ただの意地と言ってしまえばそこまでだが、本当の理由はそこではない。

「ゆっくり、休んでください」

本部の亡骸の手を合わせ、ちら、と千夜の方を見る。


『……名前も知らねぇ嬢ちゃん。千夜のことは、頼んだぜ』


もう一つは、抜け殻のような彼女を支えてやるため。
それが本部以蔵から託された、絵里へのメッセージだったから。

羅刹と化す以前の武闘家と、悲業を背負う前の高校生。
二人がどういう形で出会い、どんな道を歩んで来たのかは判らない。
絵里は二人の決着に寄り添い、守護者は満足に逝った。
千夜がそれで満足か、と言われれば……きっと違うのだろう。

絵里だってこの結末を良しとは思わない。
しかし、泣き叫んだところで銀時たちは帰ってこないのだ。

最後に、眠る白夜叉に手を合わせる。
ゲームが始まり、一昔前のコントのような出会い方をしてから、彼とはずっと一緒に行動してきた。
彼の死は……きっと、無駄ではない。

せめて自分だけでもしっかりしなければ。パシンと頬を軽く叩く。
勇者も、侍も。涙を見せられる相手は、ここにはいないから。
それが出来るとすれば、親友に会ってからだ。


しんみりとした雰囲気が辺りを包み込み――

――それは、思いもよらぬ形で破られた。

「……あ」

全てが終わって安心しきったのだろう。
絵里の腹の虫が、この場に似つかわしくないような、それでいてよく響く音を立てた。
よくよく考えてみれば、第一回放送手前を最後に食事を摂っていない。

連鎖したかのように、千夜の身体も空腹のサインを鳴らす。
彼女に至っては、精々羊羹を口に入れた程度だ。

少女たちは決して食いしん坊なわけではないが、人並みに生き、人並みに食べ、人並みに睡眠を取る。
ならば三大欲求のいずれかでも満たされていなければ、身体が合図を送るのは当然の摂理。
思わず顔を見合わせた二人は、ふふ、と笑ってしまった。

「何か食べなくていいのかい。活力にもなるし、地球のご飯は美味しいんだ。食べなきゃ損だよ」

寝ているんだか起きているんだか、目を閉じたまま神威が問いかける。
しばしの沈黙の後、あまりにも遅すぎる昼食の時間となった。

千夜が取り出したのは、いつか新しく甘兎庵で出すつもりだった一品。
戦場をイメージした、旗の刺さっているジャンボサイズのフルーツ特盛白玉餡蜜。(まさか構想通りのものが出るとは思っていなかったが)
まだ誰にも試食してもらっていない、名前すら決めていないそれを、千夜は初めて食した。

季節のフルーツと特製の蜜、小豆などが絡み合い、口の中で踊りだす。
しかし味の感想としては、少々物足りない……かも知れない。

「凄い量だけど、食べきれるの?」
「分からないわ。お店で出すメニューの試作段階だから……っ!?」

突然、千夜が緑色の眼を真ん丸くした。
どうしたの、と絵里が尋ねるも、何でもないと誤魔化す。

「お店かあ。穂乃果の家も、和菓子屋だったのよね」
「ホノカ……」

声の震えを必死で隠す千夜を他所に、絵里は語り始めた。

「私たち、μ'sっていってね、スクールアイドルをしてるの。あの子が、穂乃果がみんなや私を誘ってくれてね……」

懐かしむような絵里の独白は、初めて耳にする内容。
時々壁にぶち当たりながら、それでも皆で夢を叶えようとする、物語。
どうやって穂乃果と出会い、どんな道のりを歩んで来たのか。
スクールアイドルという言葉自体聞いたことのないものだった上、穂乃果が友達想いのいい人だということも知った。
一度でも穂乃果と会話を成立させた記憶のない千夜にとって、彼女がどんな人間かを理解する、またとない機会だった。


「……って、何で私、こんなこと喋ってるのかしら。ごめんね」
「い、いえ、そんなことは」

ぎこちない相槌をうつ千夜の視線の先は、どこか遠くを眺める絵里の顔ではなかった。
彼女の着ている『制服』と、手に持つ『サンドイッチ』。


同じ制服。
サンドイッチ。
高坂穂乃果。
拳銃。
高町ヴィヴィオ。


あの光景が、トラウマとなって脳裏に蘇った。
自分の運命を大きく変えた、辛く苦い出来事。

“駅に戻って、自分がヴィヴィオにしたことを全部話して、逃げずに生きる”。

続いて思い出すのは、あの宣言。
真相を話すことのないまま、悪戯に時間だけが過ぎた。
覚えている限り当事者は皆死に絶え、ヴィヴィオの友人が誰かも判らない。
ただ、穂乃果の友人が目の前に居る――知ってしまった事実が、千夜の心に重石をかけた。

ヴィヴィオより早くサンドイッチに手を付けていれば、自分が死んでいた。
穂乃果は千夜たちに、確かな殺意を持っていた。
でなければ、誰かに騙されでもしない限り、笑顔で差し入れなんてする筈が無い。


――その笑顔の裏側にあったものは、何なのだろう。


少なくとも、大事な友達が放送で呼ばれて茫然自失とするくらいには、穂乃果は“人間の心”を持っていた。
絵里の評判通りなら、高坂穂乃果は笑顔で人を殺せるような外道ではない。
対する自分は――どうだろう。

思い込みの強い性格を持った少女、宇治松千夜。
幼馴染がちょっと変わった喫茶店でバイトを始めたからといって、ロクに調べもせずいかがわしい店だと騒ぎ立てたことがある。
ジグソーパズルを皆で組み立てる際、敷き紙を忘れていることを言及しなかっただけで、全て自分が悪いとネガティブになりもした。



―――支えを次から次へと喪った今、その性分は、着実に。

何枚かの黒カードを適当に渡した神威を放置して、食事を終えた二人は外に出る。
闘技場に入ってから半日どころか六時間も経っていないのに、やけに地上の空気が懐かしく感じられた。

絵里は親友に呼びかけるため放送局に向かうらしい。
どうしようか少し考えたが、千夜も同行した。
単独行動は危険だし、友人を探したいのは千夜も同意見だ。

島を結ぶ鉄道の高架下を通ったあたりで、何処からか音が響いてくる。
最初は列車の音かと思ったが、常用車の音に近い。
黙って付き添いをするクリスが、前方から何かが来る、とジェスチャー。
二人が目を凝らすと、一台のバイクに影が二つ。あれは――

「希!」

見間違える筈がない。言うが早いか、絵里が駆ける。
停止したV-MAXからもまた、後部に座っていた影が運転手より先に飛び出した。

「絵里ち! 良かったぁ……やっと、やっと会えた……」
「ちょっと、希ったら……もう」

感極まって飛び付く東條希を、苦笑いをしつつ受け止める。
運転手はきょとんとした雰囲気で、クリスは少し嬉しそうな無表情で。
そして千夜はまるで幽霊か何かを見たような顔で、二人の再会を見ていた。


数分後。そこには運転手――セルティに深々と頭を下げる絵里の姿があった。

『会えたんだから、私にお礼なんていいのに』
「でも希、こんな大怪我して……セルティさんが一緒じゃなかったら」
「いいんよ絵里ち。でもほんまおおきに、セルティさん」

「あの……」

肩を指で叩かれた絵里に、千夜は一つの提案を促した。

「さっき、あの人に渡した鞘なら、もしかしたら」

絵里の頭上に、電球が点るビジョンが映った。
“全て遠き理想郷”、瓦礫で痛めた肩をすぐに治すほどの代物だ。
あれを使えば、希の怪我も治るかも知れない。

「セルティさん、絵里ちゃんと一緒に行ってあげてください。バイクなら地下闘技場まですぐですから」
『しかし、それでは君たちが』
「大丈夫」

何かあったら、クリスが教えてくれるから。
小さなウサギは、任せてくれ、とサムズアップのつもりで右手を突き出す。
いまいち事情の飲み込めないセルティだったが、バイクを動かせるのが自分しか居ないということもあり、仕方なく承諾した。

『……分かった。ここから動くなよ』
「希、すぐ戻るから待ってて」

「あ、ウチも」
『流石に三人乗りは無理だ』

希は尚も渋るが、絵里の説得で折れた。
やがてセルティはV-MAXを再び走らせる。

「東條希ちゃん、よね」

バイクの音を背中で聞きながら、千夜は呼びかける。
二人は、高架の柱に身体を預けて腰掛けた。

絵里とセルティは居なくなった。
二人だけの場は用意出来た。
……あまり時間はないだろう。

千夜の頬を、冷や汗が伝う。
これからすることは、傍から見れば理屈の通らない自己満足。

本当にいいのか。
僅かな時間で幾度も繰り返した自問自答を、唾と一緒に飲み込む。
ほんのり小豆の味がした。


「―――――――」




――彼は、今後どうするか決めあぐねていた。
今さら善人ヅラなんて到底不可能だし、だからといって今後も殺す側でいる気は無い。

二つの足音が、此方に向かっている。

「まだ何かあるのかい……おや」

絵里たちだろうと当たりをつけたが、半分ハズレ。
絵里と一緒にいたのは、ヘルメットを被った見知らぬ誰かだった。

絵里が敵討ちのために連れてきた、なんて話だとしたらとんだ茶番だ。
訝しむが、どうやら敵意はないらしい。

『絵里ちゃん、これは……』

セルティは、惨状を初めて目にする。
ここから見えるだけでも三人の死体。どれも酷く血を流していて、眼前の青年の両手には乾いた血がついている。
されど、青年から殺気は微塵も感じられない。
ただ力なく、ひらひらと手を振っていた。

「大丈夫です。あの人は私たちに手を出さないと言いました」
『いや、しかし……これ全部、彼が?』

壁、柱、電球、天井に至るまで、破壊の限りを尽くされた空間。
あの平和島静雄ですらここまで出来るだろうか、と疑ってしまう。
そこに死体が折り重なっているのだから、神威を危険視するのも無理はない。
彼もまた、静雄同様に“見た目だけでいえば好青年”なのだから。


「その子の言う通りさ。俺はもう、空っぽなんだよ」

神威はにっこり笑ってみせたが、いつものようにはいかない。
本当に全て失ってしまったんだな、と改めて実感する。

「何しに来たの?」
「色々あって、その鞘を返して欲しいの」
『私は宇治松千夜に彼女の護衛を頼まれた』

宇治松千夜……ああ、黒髪の子か。
何だか分からないが、確かにアヴァロンはもう用済みだ。
傷は少々残るが、疲労はすっかり取れた。

そうだね、と顎に手を置き、考える。
そして、彼女たちに一つの問いを突きつけた。

「君は俺に、償わせてやるって言ったよね。丁度いいや、俺はどうすればいいと思う?」

突然のクエスチョンに、二人は困惑する。

「どうすれば、って……」
「これを返して欲しいんだろう? だったら交換といこうじゃないか」

図々しいのは百も承知。
けれども、絵里が前に進むためにアヴァロンを欲するように。
神威もまた、前に進むための何かを必要としていた。

『私たちに共に来てくれないか。こちらは脱出の方法を探っている』
「それはお断りだ」

ずい、と前に出たセルティを一蹴する。

『何故だ?』
「その子や千夜ちゃんの恩人を、俺は殺したんだ」

そんな自分と一緒にいて、あまり気分のいいものではないだろう。
だから、セルティの相談には乗ることが出来ない。

『では、これならどうだ。“ゲームに乗っている悪い奴を止めろ”」
「別に構わないけれど……止めるべき悪い奴って、例えば?」

新たな問いに、またしても詰まる。
真っ先にセルティの頭に浮かんだのは、何故かアザゼルだった。
確かに彼は危険だが、ゲームを打開せんとする一応の仲間だ。

「――DIO」

すると、神威の待ち望んだ絵里の声。

「本能字学園に、あなたも居たわよね」

予想外の答えに思わず、わお、と呟きが漏れる。

「そういうことか。髪を下ろしているから気付かなかったよ」

あの時学園で見かけた金髪少女は、絵里だったのか。

自分よりずっと小さな子供の後ろに隠れ、怯えることしか出来なかった。
神威は絵里のことを、そう記憶している。
そんな彼女が自分に平手打ちを浴びせ、食って掛かり、挙句吸血鬼退治を依頼するまでなったか。

つくづく人間という生き物に驚かされつつ、あの男の名前を反芻する。

「よし、引き受けた。彼はいつか倒そうと思っていたからね」
『……何なら手伝うが』

綴られた文字に、やはり彼はNOの返事。

「これは俺個人の問題なんだ。それより君たちも、自分の問題を解決した方が良さそうだ」

どういう意味だ、と打ち込むセルティの後ろで、絵里は何かに袖を引っ張られていた。
振り向くと居ない筈のクリスがそこに居て、早く来て、と慌てている様子。


……手の先にほんの少しだけ付着している、その紅いシミは?


希たちの身に何かあったのだ、と瞬時に悟り、絵里は血相を変えて疾駆する。

「待ちなよ」

続くセルティの前方に向けて跳躍した神威は、持っていたアヴァロンを放り投げる。

「気が早いねえ彼女。まだ受け取ってないのに」
『……すまない』
「何に対しての謝罪なのさ。急ぎなよ、護衛なんだろう? 優しい首無しさん」

見抜かれていたことに若干驚きつつ、彼女は先ほどの問いにもう一つの答えを出した。

『そうだ。縫い目の女……奴もゲームに乗っている。気をつけろ』
「覚えておくよ」

アヴァロンを受け取ったセルティは一礼、闘技場から姿を消す。
後には、答えの欠片を見つけた強者が一人。


DIOの館に残されていた手記によれば、彼は吸血鬼。自分と同じで、日の下を歩けない存在。
ならば昼間は屋内に留まらざるを得ないわけで、必然とその場所は絞られる。
その上、セイバーと館で落ち合う約束までしているそうじゃないか。

阿伏兎あたりが聞いたら鼻で笑われそうな、何より絵里には申し訳ない話だが、DIOに勝てるかどうか分からない。
奇怪な能力を行使する彼に対し、明確な攻略法は見つかっていないのだ。

それでも、夜兎は再び立ち上がる。
残された力の使い道を見つけた彼の表情は、ようやくいつもの笑顔を取り戻して。


【B-3/地下闘技場/一日目・夕方】

【神威@銀魂】
[状態]:全身にダメージ(小)、頭部にダメージ(小)
[服装]:普段通り
[装備]:なし
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(26/30)、青カード(26/30)、電子辞書@現実
    黒カード:必滅の黄薔薇@Fate/Zero、不明支給品0~2枚(初期支給)、不明支給品1枚(回収品)
    黒カード(絵里から渡されたもの)
[思考・行動]
基本方針:俺の名前は――
0:DIO、か。
[備考]
※DIOおよび各スタンド使いに関する最低限の情報を入手しました。
※「DIOとセイバーは日が暮れてからDIOの館で待ち合わせている」ことを知りました。
※参戦時期が高杉と出会った後で、紅桜のことについても聞いています。




地上に出たセルティは、ある異常を理解する。

(……ない!?)

ここまで二人を乗せて来たマシンが消え失せ、タイヤの跡がうっすら。
絵里の姿も見当たらない。導き出される答えは……ただ一つ。




少し、時間を遡る。


「私はね、人を殺したの」
「……っ」

先制パンチをもろに受け、希は返す言葉に困った。
場が場なら思わず噴き出してしまうような、冗談だろうと言いたくなる内容。
しかしここでは、冗談では無くなる要素が十分に存在している。
現に希自身がそうなのだから、何一つ笑えない話だ。

殺した数は一人二人じゃない。
初対面の相手に、千夜は己の罪を告白する。


――親友の生首を持ち歩き、あまつさえ彼女の生を侮辱した青年を殺害した。

ここだけを聞くと、同じ“人殺し”とはいえ、希は千夜にシンパシーを感じ、同情の念すら抱いた。
親友を弄ばれたのは、希も同じ。
今だってキャスターのことを憎んでいる自分が、心のどこかで行き場のない爪を研いでいる。


――恩人が格闘家に殺されそうになり、錯乱してその格闘家に致命傷を与えた。
――怪物に取り憑かれてしまった恩人に、終止符を打った。

その同情は、少しばかりの羨み、或いは妬みを孕む。

恩人。そう呼べるような人が、この島でμ's以外にいただろうか。
無論、言峰やポルナレフに受けた恩、平和島静雄から助言を授かったことを忘れるほど希は阿呆ではない。
けれども、言峰たちは見殺しにした。静雄に関しても……今は当分、会いたくない。

目の前の少女は自分より多くの人を殺しているのに、誰かに守って貰えた。
自分は覚悟を決めて、それでも一人しか殺せず、守ってくれた人にも後ろめたさばかり。
この違いは何だ。
不謹慎だと分かっているが、濁った想いの膨張は止まらない。


「私ね、高坂穂乃果ちゃんと一緒にいたの」

突然、千夜の声色が変わった。
同時に希の中で、幾多の疑問と最悪の可能性が浮上する。

どうしてここで、穂乃果の名前が登場する。
必要以上に鼓動する心臓が、けたたましく警鐘を鳴らす。
まさか。まさか彼女が。

「ここから西にある駅に、みんなで居てね。朝食にしようって穂乃果ちゃんが誘ってくれて……彼女にサンドイッチを貰ったの」
「穂乃果ちゃん、らしいなあ」

隙あらばパンを食べている穂乃果なら、自由な食事、となれば必ずそれを選ぶだろう。
赤カードは全員に配られているのに自分のを皆に分け与える……絵面が容易に想像出来る。
彼女が平常運転だったらしいことに安堵しつつも、相変わらず拍動が五月蝿い。


――少女は、己の“罪”を包み隠さず告白する。


当時、第一回放送を控えたホームには、千夜、穂乃果以外に、ヴィヴィオという少女が居た。
千夜は色々あってサンドイッチに手を付けられず、最初に食べたヴィヴィオが急に血を吐き、苦しみだした。
それに恐怖を感じた千夜は、思わず手元の銃で撃ち殺してしまった――
少女の語った話は、およそまとめればこんなところ。


――同時に、自然と高坂穂乃果の“罪”を明るみに晒した。


酷く目を泳がせる希を他所に、少女は尚も言葉を紡ぐ。

「一歩間違えたら、私が先に死んでいた。けれども、私は穂乃果ちゃんのことを恨んでない」

最早希は、千夜の顔など見ていなかった。

「さっき絵里ちゃんから、穂乃果ちゃんの事について色々聞いた。アイドルをいちから……いいえ、ゼロから作り上げるなんて、凄いことだと思う」

「サンドイッチをくれた時、穂乃果ちゃんは笑顔だった。でも、後でもう一度会った時、彼女は笑っていなかった」

自分が銃を持っていたことが判明したのだから当然なのだが、それだけではない。

「穂乃果ちゃんは何を考えていたんだろうって、ずっと考えてた。だって、笑顔で人を殺すなんて普通は出来ないもの」

ヴィヴィオを撃った時も、龍之介を殺した時も、刃牙も、本部も。
誰を殺した時だって、千夜は笑ってなどいない。
ただ、“望まぬ殺人”に、心を締め付けられるばかりだった。

「私と違って、穂乃果ちゃんは覚悟してたんだと思う。お友達のために、自分が優勝して、例えば――みんなを生き返らせたい、って願ったんじゃないかって」

宇治松千夜はもう、何も願わない。
もしココアたちを生き返して木組みの街に戻っても。
きっと、自分から逃げてしまうだろう。

「笑顔の裏で、何度も葛藤したんだと思う。自分が人殺しになることに、凄く抵抗があったと思う。
でも、そこまでしてみんなを守りたいって意思を持てるなんて、私には真似出来ないわ」

だから、穂乃果を恨む資格など、千夜にはない。


「なあ」

乾いた舌を動かし、希が口を開く。

「絵里ちにはまだ、話してないん?」

「……まだ。まだ、言い出せなくて」

「…………」

希は、これ以上受け答えをしなかった。

代わりに、赤いカードを握り締め、

ポルナレフにしたことと、同じように。


高架の上を、電車が通り、耳障りな音を響かせた。





宇治松千夜の語らいには、一つ根本的な勘違いが存在する。

そもそも高坂穂乃果が“優勝を目指す”という考えに至った経緯には、どこにも『μ's』の文字はない。
ただ、ランサー:ディルムッド・オディナによって植えつけられた偽りの愛情が暴走した結果の産物に過ぎないのだ。

とはいえ千夜は、穂乃果のことを“μ'sのためを思って覚悟を決めた”と評した。
己の身にも降りかかった呪いに関しても、一切言及しなかった。
理由は単純、何も聞かされていないから、に尽きる。

もう一つ、大きな不運があったとするなら――




慣れない、まして免許も持っていないバイクを必死の思いで扱い、

セイクリッド・ハートに導かれるままに戻って来た絢瀬絵里が見たものは


「嘘……でしょ…………?」


腹部を突き刺さった肉用ナイフで紅く染めあげ、血まみれで倒れている宇治松千夜と



左手でベレッタを握り、引き金にその指を掛けている、東條希の姿だった。

「どうして……?」

理解が追いつかない。何故。
何故、こんなことになっている?


「――――」

希は答えない。
しかし絵里には、『来ないで』と言ったように思えた。


半分ほど、千夜へと意識を傾ける。
クリスが心配そうな無表情で、彼女の周りを浮遊している。
出血量は多いが急所は外れており、アヴァロンを使えばまだ間に合う。

……ここに来てようやく、希たちを心配するあまり神威から鞘を受け取りそびれていたことに気付いた。
きっとセルティが持って帰って来る、そう信じ、絵里は成すべきことを果たそうとする。


「どうして、こんなことをするの」

「っ……」

絵里が一歩踏み出せば、希は一歩後退する。
二歩踏み出せば、二歩後退する。
銃口は、千夜に向けられたまま。

「千夜ちゃんは何も悪いことをしてない。なのに、どうして」

「したんよ」

ドス黒い溶岩の中から、冷めた声を絞り出す。

「この子はな、穂乃果ちゃんを――」


……言葉の続きが、どうしても浮かばない。

穂乃果ちゃんを、どうしたというのだ。
穂乃果は千夜を殺そうとした。しかし、千夜は穂乃果を恨みなどせず、むしろ羨んでいるようにすら思えた。
彼女が穂乃果を殺したのだとしたら、あんな回りくどい物言いはしない。
他の三人のように言い切り、謝ってしまえば後は希次第。

理由を必死で探す。
喉元まで出掛かっているのに、それがどうしても見つからない。

千夜を刺し、邪魔なウサギを跳ね除け、絵里たちの方へ向かったそれが帰って来るまでに、拳銃のカードを奪った。
発砲すればそれで終わりなのに、希はそれが出来なかった。
『殺さなきゃ』と『分からない』の狭間で、引き金を引けずに居た。

何か。何かある筈だ。
自分をここまで駆り立ててしまったものが。



「穂乃果がどうしたっていうのよ……。彼女が穂乃果を殺したとでも言うの?」
「違う! 違うんや……。けど」

否定もむなしく、いつの間にか絵里が懐まで入り込む。

「降ろしてよ」

そっと包み込むように、希の左手に両手を添えた。

「セルティさんが戻ってくれば、千夜ちゃんも、希の右手も治る。
今ならきっと許してくれる。私だって許す。そうしたら、ゆっくり話し合おう?
だから……こんなことはやめてよ」

説得を試みる。

「絵里ち」
「どうしたの?」

絵里の背後で、何かを吐く音と、不思議な音が聞こえる。
千夜が吐血し、クリスがセイクリッドディフェンダーを展開させたのだ。
元の主人の二の舞にはしない、と、クリスはこちらを見つめている。
それは、希の視界にはしっかりと映っていた。

「ウチはな、もう、人を殺してるんよ」

今度こそ千夜を仕留めるため、絵里の手を振りほどこうとする。
しかし、明らかに動揺している筈なのに、絵里はその手に力を込めて、離さない。

「μ'sのためや。ウチにとって、μ'sは」
「大切なのは私だって、穂乃果たちだって同じよ!」

ベレッタを手から引き剥がさんと、絵里は力の込め方を変える。
声からも、必死だということが嫌というほどに分かってしまう。
もはや取っ組み合いの態を成しつつ、二人は叫ぶ。

「こんな方法しかなかったの!?」
「あらへんやろ! 死んでもうた人は戻って来ない。何とかするには優勝するしかない思うた。
ウチはμ'sのために、汚れ役を買って出た! だから――」

だから――

ああ、そうだったんや。
やっと、千夜ちゃんに怒った理由が分かった。
認められなかっただけなのか。

みんなには綺麗なままでいて欲しい。
その手を血で染めるのは、ウチだけでいい。

ただ、穂乃果ちゃんが人殺しだと、
ウチ以外のμ'sが人の道を外れているということが、
認められなかったんや。


理由は見つかった。

―――取っ組み合いの末に、偶然。

しかし、

―――絵里の指が引き金にかかり。

それに気付いた時には、

―――多くの命を奪ったベレッタが、再度火を噴く。

あまりにも、

―――銃口は、希に向けられていた。

遅すぎた。




セルティが戻って来たのは、銃声の鳴った直後。

神経をすり減らした顔でアヴァロンを引っ手繰った絵里は、
希と千夜を近くに並べ、二人同時にその長い鞘を押し当てる。




焼けるようにおなかが熱い。
許してもらえなかったのだな、とすぐに悟った。

希たちには悪いことをした、と思っている。
けれども、最後の罪を清算するには、これしかないと思っていた。

掠れた視界に、慌しく動くウサギの姿が見える。
そういえば、あんこの世話はお婆ちゃんがすることになるのだろうか。
今はまだまだ元気だけれど、迷惑をかけるのだな、と申し訳ない気持ちになる。

この身体はもう動きそうにない。やり残したことは沢山ある。
チノにも、リゼにも、どこかで眠る幼馴染にも、……親友の胴体にも、会えていない。
私が死んだら、みんなはどう思うだろうか。
こんな人殺し(わたし)でも、悲しんでくれるだろうか。

返ってきた答えは、聞き覚えのある二人の男の声だった。
それを聞いて、宇治松千夜は満足したかのように。

最後に、誰へ向けてか、何に対してさえ分からない「ごめんね」を残して。





動いて。動いてや、ウチの身体。

まだ死にたくはない。
人殺しなのに、随分と身勝手な願いなのは分かっている。
正しく死ねないのも、分かっている。

でも。
こんな死に方は嫌だ。

動いてくれ。
動いてくれれば、絵里ちの言ってたセルティさんが治してくれる。
絵里ちは人殺しにならないで済む。

汚れ役はウチだけでいい。
絵里ちが人殺しの烙印を押される理由なんてない。

だから、まだ、こんなところで、東條希は。

…………ウチはただ、μ'sのために。



―――緑色の満月と、菫色の三日月。

満月は数多くの人を殺し、それでも真正面から向き合った。
三日月は一人を殺し、逃げ続け、やがて満月を殺した。

周囲に守られ、“人間の心”のままでいようとした満月。
守られず、或いは突っぱね、友人たちが“人間の心”のままであることを願った三日月。


どこまでもサカサマな二つの月は、

片や、満ち足りた顔で。片や、満ち足りぬ顔で。

二度目の夜を待たずして、墜ちた。




【宇治松千夜@ご注文はうさぎですか? 死亡】
【東條希@ラブライブ! 死亡】




結論から言うと、アヴァロンをあてられた時点で、二人共息絶えていた。
宇治松千夜は、腹部に刺さったナイフが原因による失血死。
東條希は、その心臓を銃弾に貫かれていた。

それでもクォーターの少女は、鞘を押し当て、呼びかけていた。

お願いだから目を開けて、と。
もう一度声を聞かせて、と。

傍らでは、デュラハンとウサギが、語る口を持てずに立ち尽くす。



 ♪   ♪



とまらない悲しみ とまらない今は


波のように今を 流して――


   ♪


【C-3/高架下/一日目・夕方】

【絢瀬絵里@ラブライブ!】
[状態]:精神的疲労(極大)、疲労(小)、左肩に鈍痛、髪下し状態、決意
[服装]:音ノ木坂学院の制服
[装備]:無毀なる湖光@Fate/Zero、全て遠き理想郷@Fate/Zero
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(8/10)、青カード(8/10)、最高級うどん玉
    黒カード:エリザベス変身セット@銀魂、タロットカード@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース

[思考・行動]
基本方針:皆で脱出。
0:嘘でしょ……なんで…………?

 [備考]
※参戦時期は2期1話の第二回ラブライブ開催を知る前。
※【キルラキル】【銀魂】【魔法少女リリカルなのはVivid】【のんのんびより】【結城友奈は勇者である】の世界観について知りました
※ジャンヌの知り合いの名前とアザゼルが危険なことを覚えました。
※多元世界についてなんとなくですが、理解しました。
※全て遠き理想郷(アヴァロン)の効果に気付きました。
※左肩の怪我は骨は既に治癒しており、今は若干痛い程度になっています。行動に支障はありません。

【セルティ・ストゥルルソン@デュラララ!!】
[状態]:健康、申し訳ない気持ち
[服装]:普段通り
[装備]:ヘルメット@現地調達
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)
    黒カード:PDA@デュラララ!! 、宮内ひかげの携帯電話@のんのんびより、イングラムM10(32/32)@現実
[思考・行動]
基本方針:殺し合いからの脱出を狙う
0:北の島に向かい、紅林遊月、ルリグおよび役に立ちそうな人・物・情報を探索。蒼井晶の遺体も回収する。
1:アザゼル……どうしたものか。
2:静雄との合流。
3:縫い目(針目縫)はいずれどうにかする。
4:旦那、か……まあそうだよな……。
5:ラヴァレイに若干の不安。
6:静雄、一体何をやっているんだ……?
7:これは……。
[備考]
※制限により、スーツの耐久力が微量ではありますが低下しています。
 少なくとも、弾丸程度では大きなダメージにはなりません。
※小湊るう子と繭について、アザゼルの仮説を聞きました。
※三好夏凜、アインハルト・ストラトスと情報交換しました。
※チャットの新たな書き込み(発言者:D)にはまだ気付いていません。


[全体備考]
※絵里たちの近くに、V‐MAX@Fate/Zeroが放置されています。
※絵里たちの近くに、セイクリッド・ハート@魔法少女リリカルなのはVividがカードから出た状態でいます。
※銀時、本部、ファバロの残った支給品は、千夜と絵里、神威にそれぞれ分配されています。誰にどのカードが渡っているかは次以降の書き手に任せます。


時系列順で読む


投下順で読む


169:もしもからきっと 東條希 GAME OVER
166:飼い犬に手を噛まれる セルティ・ストゥルルソン 180:LONELIEST BABY
170:憧憬ライアニズム Tonitrus 絢瀬絵里 180:LONELIEST BABY
170:憧憬ライアニズム Tonitrus 宇治松千夜 GAME OVER
170:憧憬ライアニズム Tonitrus 神威 183:追う兎

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最終更新:2016年09月18日 19:23