Ice Ice Vampire ◆45MxoM2216


「ふむ、5分少々……といったところか」

G-6に位置する映画館。
しかしそこはすでに映画館としての機能を失っていた。
カウンターの奥、ストア商品棚の下、コンセッション周り、休憩室、劇場。
そういった人が隠れられそうな所はことごとく破壊され、劇場に至っては壁に大きな穴が空いている。
映画館内に人っ子一人いないことを確認したヴァニラ・アイスは、休憩がてら自らに課せられた制限を確認する際、意識して映画館を破壊しながら制限を確認したのだ。

敬愛し忠誠を誓うDIOに関すること以外には氷のごとし冷静さをもつ彼がなぜそんなことをしたかというと――――


「これで劇場に隠れ続けるような手は使えんな」

彼は映画館に参加者が殺し合いもせずに立て籠もることを警戒したのである。
ホテル程の設備はないとはいえ、映画館というものは存外入り組んだ構造をしている。
さらに劇場の中では多少騒ごうが外に音が漏れることはない。
もし映画館に殺し合いに乗った強者と乗っていない弱者の双方がいても、運が良ければ鉢合わせることなくニアミスすることもあり得る。
3日間という時間制限がある以上、戦いもせずに逃げ回るネズミは害悪でしかない。
直接的な脅威になりうる堅牢な『要塞』にはならなくとも、こういった施設を破壊することは後々必ずプラスに働くと踏んだ彼は、制限の確認と施設の破壊を併行して進めることにしたのだ。

「妙な感覚だな、慣れ親しんだスタンドの使い心地が変わるのは」

そして彼はクリームにかけられた制限を概ね理解した。
5分少々暗黒空間に入り続けていると、何の前振りもなく唐突にクリームが解除される。

強制的に解除されたすぐ後にもう一度スタンドを発現させようとしても、数瞬のインターバルを置かなければ暗黒空間には入れない。
逆に5分少々の時間制限が訪れる前にスタンドを解除すれば普段通りの使い心地というわけだ。
先ほどクリームの優位性にものを言わせたがむしゃらな攻撃で同盟相手を失ったばかりなことだし、インターバルを挟みながら周りを確認しつつスタンドを使うこと自体はやぶさかでもない。
やぶさかでもないが……。



「あのド畜生女がぁあああああああああああああああ!!!!」



近くに転がっていたゴミ箱を蹴り飛ばす。
中のゴミをまき散らしながら壁に激突しこぎみよい音を立てて砕け散るプラスチック製のゴミ箱。
その光景を見てもはらわたが煮えたくるような激情は鎮まらない。
ヴァニラ・アイス本人にとってやぶさかではなかろうと、彼にとって自分のことなど二の次にすぎない。
それより問題なのは――――。


「手をかけたな……!DIO様のスタンドに!DIO様の『世界』に!!」


クリームに制限がかけられている以上、DIO様のスタンドにもくだらん制限がかけられていることは想像に難くない。
その可能性を自らの制限を確認することで改めて認識したヴァニラ・アイスは激怒した。
自分のスタンドに手をかけられるのは構わない。
だが、DIO様のスタンドにコソ泥以下のこすっからい細工を施すなど到底許されることではない。
もし、もしも『世界』にかけたくだらん制限のせいで、自分も知らないその能力を他の参加者が暴くようなことがあれば――――

「ゆ、許さん……!DIO様は全ての頂点に君臨するお方!そのDIO様の能力を知る人間など存在してはならない!」

もちろん、能力を知られただけでDIO様が不覚をとることなど万に一つもあり得ない。
しかし、DIO様の神聖なるスタンドの秘密をゴミカス共が知ってしまうかもしれない……。
それだけでヴァニラ・アイスが激昂するには十分すぎる理由だった。

「どれだけDIO様を馬鹿にすれば気がすむのだ!あのドグサレがぁあああああああ!!!!」

例え劇場の壁が壊れていなくとも外に聞こえるのではないかと思える程の叫び声。
下等生物とDIO様を同等に扱うあの忌々しい地下通路といい、くだらん制限といい、腹立たしいことこの上ない!

「ハァ――――!ハァ――――!」

だが、ヴァニラ・アイスは逆上しても心の奥底の冷静さを見失わなかった。
制限も確認し、最低限の休養も取った以上、これ以上ここに留まる理由はない。
日中は自由に動けないからこそ、その時間を無駄に過ごすようなことは愚策だ。
日が沈むまでにやれることはやっておかなければならない。

さっさと地下通路を通り、展示物を確認しつつホテルへと向かう――――

「それにしても……」

――――前に、ふと劇場のスクリーンに目を向ける。

『21世紀、世界の麻雀競技人口は1億人の大台を突破ーー』

「なぜ麻雀の映画が?」

そこには数時間前にとある少女が訪れた時と同じように、学生服を着た少女たちが卓を囲んでいる姿が映し出されていた。




「なんだこれは?CDディスク……ではないようだが」

映画館とホテルを繋ぐ地下通路。
そこには『第四次聖杯戦争の様子』『ジョースター一行の旅の風景』『本能寺学園の歴史』といった題名の付けられたDVDが等間隔で並べられ、その下にはタッチパネルが設置されていた。
DVDは透明なケースに入れられており、そのケースを同じく透明な箱に入れるという中々に厳重な保管をされている。

1980年代の人物であるヴァニラ・アイスは当然DVDのことなど存在すら知らないし、タッチパネルも馴染みの薄い代物だった。
僅かな間困惑したが、近くに案内板のようなものを見つけたので確認する。

『参加者と関係のある映像をDVDにして集めました。
DVDの下のタッチパネルに腕輪をタッチさせればDVDを持っていくことができます。
ただし、持っていけるDVDは腕輪一つにつき一枚なのでご利用は計画的に』

「ふむ、DVD……それに、タッチパネルというのか」

案内板にはDVDの利用法について懇切丁寧な説明が載っていた。
これだけ丁寧に説明されれば、DVDの存在はおろか電化製品そのものに馴染みのないような人間でも理解できるだろう。

「なるほど、どこぞの馬鹿がテレビを破壊でもしていない限り、どちらから地下通路を通っても映像を見れるようになっているというわけか」

映画館にあった映像を閲覧できる機材は壊していないし、ホテルならばテレビの1つや2つあって当然だ。
このままホテルへ向かっても日が沈むまでには少し間がある。
ホテルに誰もいなかった場合はこのDVDを見て他の参加者の情報を集めるのも面白い。
幸い自分は範馬勇次郎の腕輪も持っていることからDVDを2枚持っていける。

クリームで箱を破壊して無理矢理すべてのDVDを持っていくことも考えたが、すぐにその考えを頭から振り払う。
あの淫売が用意した腕輪を呑み込めない以上、同じくあの雌豚が用意したこの箱にもクリームは通用しないと考えるべきだ。
忌々しいが、現状自分はあのクサレ脳ミソの掌の上にいることは認めざるをえない。

「だが、覚悟しているがいい。
DIO様が優勝なされた暁には、貴様のようなアバズレをあの方は見逃しはしない」

自らの命すら供物として割り切る狂信者。
どのDVDを持っていくか物色しながら、彼は歩き出す。
狂気の忠誠を誓う帝王の元へと少しずつ少しずつ近いづいていることにも気付かずに――――。

【E-6/地下通路/一日目・午後】


【ヴァニラ・アイス@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース】
[状態]:ダメージ(小)
[服装]:普段通り
[装備]:範馬勇次郎の右腕(腕輪付き)、ブローニングM2キャリバー(68/650)@現実
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)
    黒カード:双眼鏡@現実、不明支給品0~1(確認済、武器ではない)、範馬勇次郎の不明支給品0~1枚(確認済)、ブローニングM2キャリバー予備弾倉(650/650)
[思考・行動]
基本方針:DIO様以外の参加者を皆殺しにする
   1:さて、どのDVDを持っていくか。
   2:ホテルへ向かい、DIO様の館にも赴く。
3:日差しを避ける方法も出来れば探りたいが、日中に無理に外は出歩かない。
4:自分の能力を知っている可能性のある者を優先的に排除。
   5:承太郎は見つけ次第排除。
   6:白い服の餓鬼(纏流子)はいずれ必ず殺す
[備考]
※死亡後からの参戦です
※腕輪を暗黒空間に飲み込めないことに気付きました
※スタンドに制限がかけられていることに気付きました
※第一回放送を聞き流しました
 どの程度情報を得れたかは、後続の書き手さんにお任せします
※クリームは5分少々使い続けると強制的に解除されます。
強制的に解除された後、続けて使うには数瞬のインターバルが必要です。

※映画館の内部は破壊されましたが、倒壊などの危険はありません。

【施設情報・地下通路】
『映画館』⇔『ホテル』間には『映像資料集』が展示されています。
参加者と関わりのある映像をDVDにして展示しています。
DVDを持っていくには下のタッチパネルに腕輪をかざす必要がありますが、一度腕輪をかざすと次からはその腕輪は反応しなくなります。
当然他の腕輪を使えばさらにDVDを持っていくことも可能です。
また、かなり丁寧な説明が案内板に書かれているため、機械に疎い人物でもDVDの仕様を理解できると思われます。


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165:地獄が噴き出る時を待つ ヴァニラ・アイス 174:チェンジ・ザ・ワールド