殺し合いに春の雨 ◆3LWjgcR03U

夜兎が戦場を行く。

セイバーと流子の戦いの一部始終を見届けた神威は、その足を北へ向けていた。
最初はDIOにもう一度会おうと、潜んでいるというホテルに行こうと考えたが……

(やめた)

DIOは吸血鬼だという。
今は朝だ。
広い宇宙には自分たち夜兎のような日の光を嫌う種族がいるが、吸血鬼はその中でも特に日光を嫌っているはずだ。
おまけにあの学園での戦いで手傷を負っている。

(あっさり片が付いてもつまらないしね)

彼が見せた『認識できない謎の攻撃』も気になるところではあるが。
再会は、ぜひ万全のコンディションが整うのを待ってからにしておきたい。

(さて、じゃああちらへ向かうか)

DIOに関する思考を打ち切った神威は、足を西の方向へ向ける。
ここに連れてこられてから、この北東の島を出ていない。

(それに、繭ちゃんの言ってたことも少々気にかかることだしね)

次なる天地を、まだ見ぬ力を求め、夜兎は行く。












「へえ」

数刻後。
神威の姿は、一時的に禁止エリアとなっている場所――「A-4」の、すれすれの場所にあった。

「修理っていうから、どんなものかと思ってたけど――すごいじゃないか」

言葉とは裏腹の飄々とした口調で、呟く。
禁止エリアの方角を見やると、そこには異様な光景があった。

崩壊した橋。
その断面から、光が洩れ出ている。
そして、断面から橋が徐々に『直っている』。

それはあたかも、橋が壊れる映像を巻き戻しているかのようだった。

(ま、人海戦術で橋を立て直す、なんてことをするとは思ってなかったけどね)

そもそも繭は、自分や神楽を含む、70人を超す人間の誘拐という離れ業をやってのけているのだ。
橋を直す程度は朝飯前、ということだろう。

(それにどうやら、分かっているじゃないか)

ここからほど近い場所で、もう一つ崩壊した施設を見つけた。
それは病院。
殺し合いで傷付いた人間が、真っ先に目指すであろう施設。
破壊された病院を直すことは簡単だっただろう。だが繭は、恐らくあえてそれをしなかった。
何のためか。傷の治療などをさせず、殺し合いをより自分に都合よく進めるためだ。

(少し、興味が湧いたよ。殺す前に、色々と知りたいな)

地面に腰をかけて食事をとりながら、湧き上がってきた主催者――繭への興味もよそに、神威はこの半日足らずの時間を回想しはじめる。

一番に会ったのは、宮内れんげ。
最初に会った時は名前すら知ることはできなかったが、すぐに学園で再会した時には、何らかの治癒能力を身に付けていたようだった。
ポリシーを捨てず、殺しはしなかったことが功を奏したというところだろう。
数時間で成長を遂げるのだから、子供というのはやはり面白いものだ。

次に駅で出くわしたのは、纏流子、そしてベンチで眠り続けていた少女。
纏流子。彼女は強い。だが、その強さは曇っている。
恐らく彼女は、弱者を蹂躙するような、無軌道に力を振るうような、あのような戦いを好まないはずだ。
もう一人の少女は、あの戦いの中でも目を覚まさなかった豪胆さには目を瞠るものがあったが、今ごろはどうしているだろうか。

その次の出来事は、本能字学園での乱戦。
妖刀を持った杏里という少女、勇者の少女、DIO、そして銀時と桂。
そのほかにも流子と戦った皐月というセーラー服の少女や女騎士、巨大な土人形使いの少女、白髪の男、金髪の少女などの姿があった。
それぞれがそれぞれの思惑で戦いを繰り広げたあの時間も、もう数時間前の彼方。
誰とも決着は付けられなかったが、その分再会が楽しみだ。
銀時たちだけでなく、DIOもそうだ。
彼が手痛い敗北を喫したのは、勇者の少女と戦っている最中でも気付いた。
敗北とは惨めなだけではなく、己をより高みに導くこともある。
果たして彼はどんな道に転がっていくのか。

回想は続く。
最後に出会ったのは、セイバーと名乗る剣士。
彼女もまた流子と同じく、強さを持ちながら曇っていた。
彼女が求めるのは、騎士らしく正々堂々とした果し合いだ。
纏流子、セイバー。
強大な力を持ちながら、隠しきれない影を心に落とした二人の少女。
その雲が晴れたとき、どんなことが起こるのだろうか。

(……うん、いい感じだ)

会った人物の顔を改めて頭の中に並べ直しながら、神威は頷いた。
自分に比肩する強さを持ったものも、全く力を持たない者もいる。
だが、どの人物もみな強い個性を持っていた。
遊ぶのはほどほどで切り上げて、さっさと繭を殺しに動こうかとも考えたが。
この島だけでもこれほど面白い人物たちに出会えるのなら、もう少し興味の赴くままに動くのも良いだろう。

(さて、それじゃあ向かう先は、ここかな)

神威の指は地図をなぞる。
その指はやがて、「地下闘技場」の上で止まる。

(いい響きじゃないか)

巨大な学校、吸血鬼の館など、この島に用意された施設はどれも奇怪なものが多い。
が、この地下闘技場はその中でもとりわけ、ある種の匂いを放っている。

地下闘技場。
地下。
アンダーグラウンド。

非合法の匂い。
そして、神威は求めてやまないもの――闘争の匂いだ。





【A-4とB-4の境界付近/一日目・昼】

【神威@銀魂】
[状態]:疲労(小)、胴体にダメージ(小)、高揚感
[服装]:普段通り
[装備]:日傘(弾倉切れ)@銀魂
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(26/30)、青カード(26/30)、電子辞書@現実
    黒カード:必滅の黄薔薇@Fate/Zero、不明支給品0~2枚(初期支給)、不明支給品1枚(回収品)
[思考・行動]
基本方針:殺し合いを楽しむ。
   0:橋の修復が終わり次第、地下闘技場へ向かう。
   1:本物の纏流子と戦いたい。
   2:勇者の子(結城友奈)は面白い。
   3:纏流子が警戒する少女(鬼龍院皐月)とも戦いたい。
   4:DIO、セイバーとも次に出会ったら決着を着けたい。
[備考]
※DIOおよび各スタンド使いに関する最低限の情報を入手しました。
※「DIOとセイバーは日が暮れてからDIOの館で待ち合わせている」ことを知りました。


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114:La vie est drôle(前編) 神威 156:万事を護る者

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最終更新:2016年03月25日 17:31