心の痛みを判らない人 ◆45MxoM2216

ようやく運が向いてきた、とホル・ホースは思う。
自分の周りにはあの恐ろしく強い悪魔を含み、四人もの手練れがいる。

それだけではない。

あの繭という女と深い繋がりがあるらしいタマヨリヒメとかいうカード。
まさしく切り札と言えるそれを持っている悪魔は、味方として自分の前にいる。

そしてその悪魔とタマヨリヒメが探しているという小湊るう子。
先ほど遭遇した2人の少女たち――三好夏凜とアインハルト・ストラトスは、つい先刻まで小湊るう子と同行していたらしい。

戦力面は言わずもがな、バトルロワイヤル打破へ向けての考察も自分たちほど進んでいる参加者はいないだろう。

まぁ先ほどちょっとした衝突があったが、あれであの少女たちの溜飲も下がったはずだ。
つまり、何が言いたいのかと言うと――


「なるほど、つまり知己の相手を誰一人亡くさなかったその桐間紗路という小娘に嫉妬して殴りかかり、小湊共々逃げられた……ということか」

(せっかく運が向いてきたんだから、これ以上いらん騒動を起こすようなことを言うんじゃねェ~ッ!)
心の中で叫ぶホル・ホース。
もちろん声には出さない。

一悶着あった後、改めて情報交換を行っていたのだが……
どうやら悪魔には人間の心の機微だのなんだのは分からないらしい。

首無しの化け物ことセルティもなんだかあわあわしているように見える。(顔色は分からないので確かではないが)
慌てて手元の機械をいじっているようだが、セルティが文字を入力するよりも少女が口を開く方が早かった。

「ちょっとアンタ、そういう言い方って――」
『外道め~』

(また赤いほうの小娘かよ~ッ!
さっきと全く同じ展開じゃねぇか!
なんかちょっとスタンドに似てる変なのもいやがるし……さっき言ってた『精霊』とやらか?)
予想通りのデジャブな展開に思わず頭を抱えたくなるホル・ホース。
しかし、救いの手は意外なところから現れた!

「いいんです夏凜さん、本当のことですから……」
また熱くなりそうな夏凜をアインハルトが複雑な心情を滲ませながらも止めたのである。

悪く言われている張本人のアインハルトが止めていること。
言い方は悪いが、アザゼルの言っていること自体は間違ってはいないこと。
また戦うようなことになれば、満開でもしない限りおそらくは今度こそ殺されること。
この3点により、夏凜は渋々ながらも引き下がる。

(ふー、ヒヤヒヤさせやがるぜ……)
それを見てホッと息を付くホル・ホース。
ふと横を見ると、セルティも安堵したように胸をなで下ろしていた。
何かと気苦労の多い二人である。

(思えば、セルティの旦那と二人だけだった頃が一番気楽だったかもしれねぇな……)
話の通じない化け物だと思って攻撃したり、縫い目のような真の怪物と遭遇したりしたが、今のような気苦労はなかった。
過ぎ去った過去ほど美しく感じるのである。

余談だがホル・ホースとセルティは、情報交換が済んだ今も縫い目こと針目縫に殺された少女が夏凜の仲間だとは気付かない。
せめて犬吠埼樹が花弁を舞わせながら勇者へと変身する姿だけでも目撃できていたら、2人の類似点に気付けたかもしれない。
しかし彼らにしたら犬吠埼樹は、発見した時には既に壁に磔にされていて、その直後に首を切り落とされたというごく短い接触しかしなかった少女である。
これで気付けという方が無茶な話だ。

彼らが樹の容姿を夏凜に話して聞かせていれば夏凜の方から気付いただろうが、殺された少女の容姿まで詳しく伝えるほどの情報交換はしていない。

アザゼルが尊大な口調かつ自分主体で情報交換を進めているため、アザゼルとホル・ホース達が出会うまでの話がやや少なくなっているのも遠因だろう。

縫い目という怪物の存在。
そして範馬刃牙という戦闘狂じみたマッチョな青年がいることは話したが、刃牙から聞いた人間を掛けた眼鏡の男……もとい、眼鏡を掛けた人間の男と学生服の女の子については全く話していない。
まぁ眼鏡と学生服なんてありふれ過ぎているため、話したところで何にもならなかっただろうが。




「まぁいい、それで小湊はどちらに向かったのか見当はつくのか?」
夏凜が引き下がったのを見て、アザゼルが情報交換を進める。
彼としては、先ほどの言葉も大分気を使った方である。
以前の彼ならば高笑いとともにアインハルトの過失を厭味ったらしく責めていただろう。
パズズ辺りが見たら驚くこと間違いなしだ。

「2人と別れる前は、私たちはF3にいました。
禁止エリアになる前にそこから離れようと北に向かったのは見えたんですが……」
そこまで言って、アインハルトの歯切れが悪くなる。
その後の2人の動向を知らないからだ。

ちなみに、F3はホル・ホースとセルティもアザゼルと遭遇する前にいた場所だ。
どうやら少女4人とはニアミスしたらしい。

「ちょっと待って、チャットに新しい発言があるわ。
……!これは―――」
「夏凜さん?どうしたんですか?」
スマートフォンの場面を凝視する夏凜。
一体どうしたというのか?

「え、ええ!どうやら2人はラビットハウスに向かってるみたいね。
『義輝と覇王へ。フルール・ド・ラパンとタマはティッピーの小屋へ』
分かる人にしか分からない、ちょっとした暗号ね」

つまりこういうことだ。
るう子とシャロは近いうちに禁止エリアになるF3を北に向けて離脱した。
その後、逸れてしまったアインハルトと夏凜を探し回るよりもシャロの知り合いがいる可能性の高いラビットハウスへ向かったということだ。

「悪魔の旦那、これで放送局へ行く理由はなくなりやしたね」
(ふぅ~、これでトップレベルに危険な場所に行かなくてすんだぜ)
ホル・ホースとしては当然トップレベルに危険な放送局へなど行きたくない。
探し人は未だ見つからないが、この状況では戦闘を覚悟して放送局へ進むよりも行き先がはっきりしている探し人を探す方が賢明なはずだ。

「ふむ、そうとも限らんぞ」
「そうだよな、そうとも限らない…………………………───は?」
呆気に取られるホル・ホース。
なんかまたデジャブを感じる。

(そういやぁ、放送局へ向かうと聞かされた時もこんな感じだったっけか……)

「確かに小湊は放送局へは向かわんだろうが、放送局ならばこちらから呼びかけられるだろう?」

「ひょっとしてるう子のノートパソコンをあてにしてる?だったら止めといた方が良いわよ」
「バッテリーが切れてましたからね……」
アザゼルの言葉に少女2人は反論する。
そもそも、ノートパソコンのバッテリーを充電するために放送局か研究所へ向かおうとしていたのだ。
そのことは先ほどの情報交換で話したというのに、この悪魔は人の話を聞いていなかったのだろうか。

「誰が小湊に呼びかけるといった?」

『「「「え?」」」』
思わず4人の声(1人はPDAで会話しているので実際には3人だが)が重なる。
さっきまで小湊るう子を探す話をしていたではないか?
ならば放送で呼びかける相手というのは、小湊るう子以外にいないのではないか?

『どういうことだ?』
セルティがPDAで問いかける。
その問いはセルティだけでなく、4人の共通の疑問だ。

「ふん、簡単なことだ……」
大仰な仕草でもったい付けるアザゼル。

いいから早く教えてくれ、という文体を打ち込もうとした時―――


「紅林遊月、蒼井晶、浦添伊緒奈。
そいつらも次善の策として手中に収めておきたい」

悪魔の唇が、開いた。



「ちょっと待って、遊月って子はともかく蒼井晶と浦添伊緒奈は――」
「るう子さんの話では、危険な人たちみたいでしたね……」

蒼井晶は時期によって行動理念が微妙に違うが、一貫してるう子の敵であったらしい。
しかもセレクターバトルに負けたら、ナイフで実力行使に訴えるほどの悪い意味での行動力がある。

浦添伊緒奈は元々は危うい雰囲気を持つ謎の少女だったそうだが、今は味方でタマに代わるパートナーらしい。
タマと同じく、繭の始まりを知る人物でもあるそうだ。

しかし、時期によっては彼女の肉体にルリグであるウリスが乗り移っている可能性もある。
ウリスは蒼井晶を篭絡し、るう子を打倒しようとしていたらしい。
何を企んでいるのかまでは分からないが、危険人物であることに間違いはない。

「そいつらも小湊程ではないにしろ……いや、浦添に至ってはどちらの場合でも小湊と同程度の実力があるのだろう?
呼びかけておいて損はあるまい」

そう、アザゼルは小湊るう子一人に執着するのではなく、他のセレクターも捜索することにしたのだ。
先ほどまでるう子に拘っていた彼がそのような考えに至ったのには理由がある。
それは―――

(曲がりなりにもこの俺に勝利した小娘2人……
そんな小娘と同等の力を持つ者までもこの殺し合いでは塵に等しく死んでいる。
あまり好ましい事態ではないが、既に小湊が野垂れ死んでいる可能性も考えた方がいいな)

年端もいかない少女からの敗北。
それは彼に慎重な思考をさせるのには充分すぎる衝撃であった。
彼は慎重に、最悪のケース―――既に小湊るう子が死んでいる可能性をも考慮する。

つい先ほどまで一緒にいた?
離れた一瞬で死なないと何故言い切れる。

チャットに連絡があった?
その後に死んでいないと何故言い切れる。

(そも、セレクターというのは身体的には非常に脆い―――
流石に全滅はしていないと思うが、あと何人残っているか怪しいものだ)

そして彼はこう考えた―――「質より量」であると。
それは、命を物としか考えていない故の、まさに悪魔的発想。
彼には人の心の痛みなど判らないのだ。
だから小湊るう子を、いざとなれば紅林遊月で、蒼井晶で、浦添伊緒奈で代用できる物としか考えられない。

ちなみにアザゼルは、先ほど空から放り投げた女がその浦添伊緒奈――ウリスだとは気付かない。
伝聞で伝える容姿というのは分かりやすい特徴でもない限り思いのほか伝わりにくいものだ。
しかも、アザゼルに説明したアインハルトと夏凜も浦添伊緒奈に直接会ったことはなく、るう子から話を聞いただけである。

そして浦添伊緒奈には、又聞きでも伝わるような――例えばとある槍使いのような黒子や、生命戦維の化け物のような目立つ服装などの特徴はなかった。
モデルをしているだけあって容姿端麗ではあるが、幸か不幸かこの場に集められた女性は何故かほぼ全員が美女か美少女だ。
目印にはならない。

「で、でもよぉ悪魔の旦那、そんな連中が大人しく俺たちの言うことを聞くとは思えませんぜ」
次善の策。
一番よりNo.2を信条とするホル・ホースにとってはそそる響きだが、危険地帯に行きたくない彼としてはそれをなんとか破棄させようとする。

「ふん、いくら札遊びが得意だろうと、所詮戦う力など持たない小娘にすぎん。
従わせる方法などいくらでもある。
―――また煩いのが騒ぐ前に言っておくが、手荒な手段に限らずともいくらでも……だ」

「ぐ……」
今まさに文句を言おうとしていた夏凜だが、先手を取られてしまいぐうの音も出ない。

「御し易さで言えば紅林、実力で言えば浦添、蒼井は最後の手段だな」

「じゃあ、るう子さんと紗路さんは探さないんですか?」
ポーカーフェイスの中に不服を隠しながらも、アインハルトが尋ねる。
彼女はいきなり紗路を殴りつけたことに負い目を感じている。
あるいは夏凜以上に彼女らと合流し、謝りたがっているのだから当然の反応だ。

「いや、そうは言っていない。次善の策と言っただろう。
行く先が分かっているのだから、追わない理由はあるまい」

『ということは……二手に別れるということか?』
話の流れからアザゼルの言いたいことを察したセルティが問いかける。

「正解だデュラハン。
とはいえ、二手に別れるというよりは元に戻ると言った方が正しいな」

「てぇことは旦那、嬢ちゃんたちにその小湊るう子と桐間紗路ってのを探させて、俺たちはこのまま放送局へ行くってことですかい?」

「元々そのつもりだったんだ、何も問題はあるまい?」

「いや、その通りだけどよ~
戦力分散して各個撃破……なんてやられたら洒落にならねぇじゃないですかい」

「なに心配するな。
三好に俺のタブレットPCのアドレスを教えておく。
正午を越えたらメール機能が使えるようになるのだろう?
有事の際にはそれで連絡を―――」

「ね、ねぇちょっと!」
「夏凜さん?」
急に叫ぶ夏凜に、周りが訝しげな目線を向ける。
これまでも夏凜が話の腰を折ることはあったが、そういう時は大抵アザゼルが過激なことを言った時だ。
だが今のアザゼルの発言に問題はなかったはずだ。
一体どうしたというのか?


「えーと、私も放送局に向かってもいいかしら?」
その手には、スマートフォンが握られていた。

「ほう、俺たち3人では不安だと?」
「そ、そういうわけじゃないわよ!
性格はともかく、アンタの強さはよく分かってるわ。
そういうのじゃなくて、ええと……」
チラチラとスマートフォンに目を向ける夏凜。
彼女らしくもない歯切れの悪さだが、その原因はスマートフォンにあると目を付けた。

「ほう、確か結城友奈というのは貴様の仲間だったな?」
「ちょっと、いつの間に!?」

夏凜の後ろにいつの間にか回り込んでいたアザゼルが、彼女の手元のスマートフォンを覗き込む。
慌ててスマートフォンを隠す夏凜。
先ほど暗号を発見しただけにしては不可解な反応を見せていたが、そういうことかと得心するアザゼル。

(ひょっとして……『アレ』も見られた!?)
アレとはもちろん、東郷が樹を殺したという内容のチャットである。
夏凜の背中に冷や汗が流れるが、アザゼルは特に追及しなかった。

(ひょっとして、私に気を使った……?まさかね、偶々見えなかっただけよね)

そう、彼女のスマートフォンの場面はチャットが開かれていた。

『私、結城友奈は放送局に向かっています!』
「Y」という発言者によって書かれたその文面に、夏凜は気を取られていたのである。

『おい、女の子の携帯を覗くのは人として感心しないぞ』
デリカシーの欠片もないアザゼルの行動を責めるセルティ。
彼女は曰く化け物と呼ばれるような存在だが、下手をすればこの場で最も良識のある存在かもしれない。

「悪魔だからな」
しかし、アザゼルは悪ぶれもせずに飄々と返す。
彼は曰く化け物と呼ばれるような存在かつ、下手をしなくてもこの場で最も良識のない存在だろう。

「結城友奈さんって、確か夏凜さんの」
「ええ、仲間よ―――今となっては、たった一人のね」
「夏凜さん……」
犬吠埼樹が散り、犬吠埼風と東郷美森が殺し合いに乗った以上、結城友奈は三好夏凜にとって最後の希望である。
そんな友奈が放送局へ向かっているというのだ。
夏凜が放送局へ行きたがるのも当然のことだ。

『待ってくれ、それは本当にその結城友奈という子からのメッセージなのか?』
しかし、普段から好んで甘楽という噂好きの女の子が主催するチャットルームでチャットを楽しんでいるセルティは、ネット上のなりすまし行為や自演といった事柄の可能性を示唆する。
その甘楽という女の子の正体は折原臨也で、曰くネカマというやつなのだが……
彼女はまだ、そのことに気づいていない。

「文体は友奈らしいし……イニシャルも合ってるけど、絶対とは言えないわね」
「何か、夏凜さんたちにしか分からないような質問をしてみるのはどうでしょう?」
「私たちにしか分からないような質問……」

三好夏凜は思い出す。
全部が楽しかったあの頃を。
もう2度と戻らない、失われた日々を。

―――完璧に調整された完成型勇者、それが私!―――
初めて会った時は、恥ずかしげもなくそんなことを言っていた。
なのに……

―――ようこそ、勇者部へ!―――
―――達観してますね―――
―――夏凜さん、死神のカード―――
―――学校にいる限りは上級生の言葉を聞くものよ―――
なのにそんな私に、皆はとても優しくしてくれた。
あ、でも樹、勝手に占って不吉なレッテル張ったのは許さないから。

―――ハッピーバースデイ、夏凜ちゃん!―――
入部届けの生年月日欄を見て、サプライズで誕生会をやってくれた。
初めてのことで、どう反応すればいいのか分からなかったけど……嬉しかった。


「……よし!決めた!」
彼女はチャットに文面を打ち込む。


『友奈?友奈なの?私よ、にぼっしーよ』


にぼっしーというゆるキャラみたいなあだ名は、犬吠埼風が考えたあだ名だ。
これが通じたら、「Y」は友奈という事になる。
勇者部でイニシャルがYの人間は、友奈しかいないからだ。
ちなみに発言者は「K」となっている。
下の名前が反映されているらしい。


「それで、結局どうするんだ嬢ちゃん?
そんなにすぐ返事が来るモンでもないんだろ?」
夏凜がスマートフォンを仕舞ったのを見て、ホル・ホースが問いかける。

「私は……」
夏凜は未だ迷っている。
先ほどは勢いで放送局へ行きたいと口走ってしまったが、それは自身の我儘ではないか?
そもそも、まだ「Y」が友奈だと決まったわけではないのだ。
今は仲間に会うよりも、るう子とシャロを探す方が先なのではないか?
思考の迷路に迷いかけたその時―――

「夏凜さん、行って下さい」
ある一人の少女が、その背を押した。

「アインハルト?」

「るう子さんとシャロさんは、私が見つけ出します
だから、夏凜さんは……夏凜さんは、友奈さんのところに行ってあげて下さい」

「アインハルト……」

「お、それならお嬢ちゃんたちの捜索は俺に任せな!アインハルトの嬢ちゃんを一人にするわけにもいかないだろ?これでも人探しは得意だぜ~!」
(嘘だけどな!これで放送局に行かなくてすむぜ~!
首無しやら悪魔やらと離れるのはちと痛いが、あんな危険地帯に行くよりはマシってやつだ!
それにアインハルトの嬢ちゃんも結構やるみたいだからな!)

「ホルホースさん……」
(なんかやけに嬉しそうね)

『夏凜ちゃん、私のバイクの後ろに乗って。
ちょっと暴れ馬だから、しっかり掴まってね』

「セルティさん……」

「ふん、いいだろう。
ならば俺と三好、そしてセルティで放送局に向かい、セレクター達に繭打倒を呼びかける。
ホル・ホース、俺のタブレットPCを渡しておこう。
小湊を見つけたら、正午を過ぎたら使えるというメールで連絡を寄こせ。
正午前に見つけたら、最悪チャットでも構わん。」

「了解だ、悪魔の旦那。
じゃあアインハルトの嬢ちゃん、早速ラビットハウスとやらに行ってみっか。」

「はい、分かりました。
夏凜さん、また4人揃って会いましょう」

「ええ、るう子とシャロを頼むわよ」

こうして、ガンマンと覇王流継承者は捜索へと出発した。
あとには悪魔と勇者とデュラハン。
古今東西、どんなファンタジー小説でもそうそう見ないであろうパーティーが残ったのだが―――

「アザゼル……その、あ、ありがとう……」
先ほど真剣勝負をした仲ではあるが、思いのほか自分の我儘に柔軟に対応してくれたアザゼルに、夏凜は感謝していた。
先ほどの衝突により、夏凜は自分の中で踏ん切りがついたのだ。
元々、アザゼルを味方として認めるために挑んだ決闘なのだから、これ以上衝突する必要もない。
相変わらず性格の悪い悪魔だが、不思議と上手くやっていける気がするのだ。

「ふん、ホル・ホースよりもお前の方が戦力になると思っただけだ。
タブレットPCを奴に預けたのも、俺は機械に詳しくないからにすぎん。
それよりもさっさと行くぞ、時間を使いすぎた」

『よろしくね、夏凜ちゃん。
さぁ、私の後ろに座って』

「ええ、分かったわ」
(友奈……待ってて!)

夏凜はバイクに乗り、セルティがエンジンを噴かす。
それを見てアザゼルも翼を広げるのだが、彼は心中であることを考えていた。

(東郷美森……犬吠埼樹……どちらも三好の知己の相手だったな)
彼は夏凜のスマートフォンを覗き込んだ時、「Y」の発言だけでなく、「M」の発言もしっかりと見ていた。

『東郷美森は犬吠埼樹を殺害した』

その文面を見た時、アザゼルはそのことについて夏凜に問い詰めようとしたが、止めた。
それは何故か?夏凜に気を使ったのだろうか?
否、アザゼルは確かに敗北を通して成長し、多少は気を使うことも覚えた。
だが、十代の女子中学生の心の機微にまで気を使うほどではない。
多少言葉の言い回しが柔らかくなっただけである。

ではなぜ、夏凜に問い詰めなかったのか?
それは―――

(結城とやらと合流した時に最悪のタイミングで問い質せば、面白いことになりそうだ)
自分たちの仲間が殺し合いに乗り、他の仲間を殺したという可能性。

結城友奈がチャットでの不確定な情報しか持ち合わせていないのか、はたまた事実を知っているのかは不明だが、三好夏凜は東郷美森と犬吠埼風が殺し合いに乗っているのは紛れもない事実である事を知っている。
話題が話題だ、おそらく2人の小娘は互いに最大限気を使いながらその事を確かめようとするだろう。
そこであえて空気を読まずに発言し、小娘共の気遣いを無碍にする。

結城友奈が事実を知っていればただ空気を悪くするだけだろうが、もしもチャットでの妄言としか受け止めていなかった場合は、面白いことになる。

今となってはたった一人の仲間。
夏凜がそこまで言う少女の前で、電子の海の中の妄言などではなく、事実として知己の相手が潰し合っていたという可能性を暴露する。
その時、あの小娘は一体どんな顔をするのだろうか―――

悪魔は嗤う。
密かに、顔を歪めて嗤う。
彼には、人の心の痛みなど分からないのだから。
密かな愉しみを胸に、悪魔は低空で飛び続けた。



【F-2/一日目 昼】

【アザゼル@神撃のバハムート GENESIS】
[状態]:ダメージ(中)、疲労(小)、脇腹にダメージ(中)
[服装]:包帯ぐるぐる巻
[装備]:ホワイトホープ(タマのカードデッキ)@selector infected WIXOSS、市販のカードデッキ@selector infected WIXOSS
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)
    黒カード:不明支給品0~1枚(確認済)、片太刀バサミ@キルラキル、イングラムM10(32/32)@現実、ヘルゲイザー@魔法少女リリカルなのはVivid
[思考・行動]
基本方針:繭及びその背後にいるかもしれない者たちに借りを返す
0:放送局へ行き、セレクター達に繭打倒を呼びかける。
1:小湊に関しては、あの2人(ホル・ホース、アインハルト)に任せれば問題なかろう
2:借りを返すための準備をする。手段は選ばない
3:ファバロ、カイザル、リタと今すぐ事を構える気はない。
4:繭らへ借りを返すために、邪魔となる殺し合いに乗った参加者を殺す。
5:繭の脅威を認識。
6:先の死体(新八、にこ)どもが撃ち落とされた可能性を考慮するならば、あまり上空への飛行は控えるべきか。
7:『東郷美森は犬吠埼樹を殺害した』……面白いことになりそうだ。
8:デュラハン(セルティ)への興味。
[備考]
※10話終了後。そのため、制限されているかは不明だが、元からの怪我や魔力の消費で現状本来よりは弱っている。
※繭の裏にベルゼビュート@神撃のバハムート GENESISがいると睨んでいますが、そうでない可能性も視野に入れました。
※繭とセレクターについて、タマから話を聞きました。
 何処まで聞いたかは後の話に準拠しますが、少なくとも夢限少女の真実については知っています。
※繭を倒す上で、ウィクロスによるバトルが重要なのではないか、との仮説を立てました。
※東郷美森が犬吠埼樹を殺したという情報(大嘘)を知りました。
※三好夏凜、アインハルト・ストラトスと情報交換しました。

【三好夏凜@結城友奈は勇者である】
[状態]:疲労(大)、顔にダメージ(中)、左顔面が腫れている、胴体にダメージ(小)、満開ゲージ:最大
[服装]:普段通り
[装備]:にぼし(ひと袋)、夏凜のスマートフォン@結城友奈は勇者である
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(9/10)、青カード(9/10)
     黒カード:なし
[思考・行動]
基本方針:繭を倒して、元の世界に帰る。
   0:放送局に向かい、セレクター達に繭打倒を呼びかける。
   1:「Y」……友奈なの?
   2: アザゼルには勝った。るう子に乱暴はさせない。
   3:東郷、風を止める。
   4:機会があればパニッシャーをどれだけ扱えるかテストしたい。
[備考]
※参戦時期は9話終了時からです。
※夢限少女になれる条件を満たしたセレクターには、何らかの適性があるのではないかとの考えてを強めています。
※夏凛の勇者スマホは他の勇者スマホとの通信機能が全て使えなくなっています。
 ただし他の電話やパソコンなどの通信機器に関しては制限されていません。
※東郷美森が犬吠埼樹を殺したという情報(大嘘)を知りました。
※小湊るう子と繭について、アザゼルの仮説を聞きました。
※セルティ・ストゥルルソン、ホル・ホース、アザゼルと情報交換しました。

【セルティ・ストゥルルソン@デュラララ!!】
[状態]:疲労(小)
[服装]:普段通り
[装備]:VMAX@Fate/Zero ヘルメット@現地調達
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)、
    黒カード:PDA@デュラララ!! 、宮内ひかげの携帯電話@のんのんびより

[思考・行動]
基本方針:殺し合いからの脱出を狙う
0:放送局に向かい、セレクター達に繭打倒を呼びかける。
1:アザゼル、夏凜と行動する。
2:知り合いとの合流。臨也には一応注意しておく。
3:縫い目(針目縫)はいずれどうにかする
4:旦那、か……まあそうだよな……。
[備考]
※制限により、スーツの耐久力が微量ではありますが低下しています。
 少なくとも、弾丸程度では大きなダメージにはなりません。
※小湊るう子と繭について、アザゼルの仮説を聞きました。
※三好夏凜、アインハルト・ストラトスと情報交換しました。


【アインハルト・ストラトス@魔法少女リリカルなのはVivid】
[状態]:魔力消費(小)、歯が折れてぼろぼろ、鼻骨折 (処置済み)
[服装]:制服
[装備]:なし
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(20/20)、青カード(20/20)
    黒カード:0~3枚(自分に支給されたカードは、アスティオンではない)
    高速移動できる支給品(詳細不明)
[思考・行動]
基本方針:殺し合いを止める。
   0:ホル・ホースと共にラビットハウスへ向かう
   1:紗路たちと合流し、謝る。
   2:私が、するべきこと――わかりました。
   3:コロナを探し出す。
   4:余裕があれば池田華菜のカードを回収したい。
[備考]
※参戦時期はアニメ終了後からです。
※小湊るう子と繭について、アザゼルの仮説を聞きました。
※セルティ・ストゥルルソン、ホル・ホース、アザゼルと情報交換しました。

【ホル・ホース@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース】
[状態]:健康、冷や汗
[服装]:普段通り
[装備]:デリンジャー(1/2)@現実
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10) 黒カード:不明支給品0~2 タブレットPC@現実
[思考・行動]
基本方針:生存優先。女は殺さない……つもり。
1:ひとまずはアインハルトと行動する。
2:ジョースター一行やDIOには絶対に会いたくない。出来れば会う前に野垂れ死んでいてほしい。
3:刃牙を相棒の候補として引き入れたい……が、無理はしない。
4:アインハルトと夏凜にちょっぴりの『敬意』。
[備考]
※参戦時期は少なくともDIOの暗殺に失敗した以降です
※犬吠崎樹の首は山の斜面にある民家の庭に埋められました。
※小湊るう子と繭について、アザゼルの仮説を聞きました。
※三好夏凜、アインハルト・ストラトスと情報交換しました。


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123:Spread your wings(前編) アザゼル 151:■■■■ your enemies
123:Spread your wings(前編) 三好夏凜 151:■■■■ your enemies
123:Spread your wings(前編) セルティ・ストゥルルソン 151:■■■■ your enemies
123:Spread your wings(前編) アインハルト・ストラトス 159:Vivid Survivors(前編) 引き合うように重なる拳
123:Spread your wings(前編) ホル・ホース 159:Vivid Survivors(前編) 引き合うように重なる拳