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スコープ越しの怪物 ◆gsq46R5/OE


 動乱の気配漂うG-5エリアにて、ふたりの女が事を起こすための準備を始めていた。

 東郷美森。
 浦添伊緒奈。
 いずれも理由は異なれど、殺し合いに乗り、既に他人を殺めている。
 紆余曲折の末あって同盟関係を締結した彼女達ではあったが、その内側に互いを思いやる気持ちなど欠片も存在しない。
 現に伊緒奈の方は東郷を陥れる悪意の種子を電子の海へと投じており、東郷も意図的に伊緒奈へとある真実を隠している。
 まさしく女の謀略と呼ぶに相応しい心理戦が、こうしている今も水面下で繰り広げられているのだ。
 判断を少しでも誤れば、即座に破滅への片道切符を掴まされかねない。

 双方、そういう危険さを孕んだ女だった。
 危うさの性質こそ違えど、余人が関わり合いになっていい人間では決してないと言えよう。

「成程ね。便利な力じゃない、これ」

 勇者への変身を完了した伊緒奈が、スコープを覗いてほくそ笑む。
 東郷美森のスマートフォンを介して変身出来る勇者は、複数の銃を自在に扱いこなす狙撃手だ。
 当然その中には射程に優れる狙撃銃も含まれており、伊緒奈は悪意に富んだ彼女らしく、これに目をつけた。
 彼女達は殺し合いの場で馬鹿正直に真っ向勝負などを持ちかけるような、おめでたい脳味噌の持ち主ではない。
 遠距離から一方的に対象を沈黙させられるならそれに越したことはないのだから、それを戦法の主軸にすべきと考える。

 実際に、東郷はその有用性を自分の目で確認済だ。
 相手が狙いやすい空に居たというのもあるが、ほんの僅かな労力で、ごく短時間に二人もの命を奪うことが出来た。
 おまけに自分が下手人だと足がつく可能性も、ほぼ零に等しい。
 人類の敵たるバーテックスと戦うために得た力を、守るべき人間を殺めるために使うというのは皮肉なものだったが。

 市街地襲撃に辺り、先んじてはこの場所で一旦『待つ』。
 視認できた標的を狙撃によって殺害し、一段落次第更に進軍する。
 伊緒奈の提案を断る理由は、東郷にはなかった。
 彼女としても、力を試してみたい思いがあるのだろう。そう思えたからだ。
 当たりが来なければその内移動を再開するだろうし、首尾よく仕留められたならそれに越したことはないのだから。

「獲物が通りかかるまで待つつもりですか?」
「察しがいいわね」
「私があなたならそう考えると思っただけです」

 交わす言葉は淡白だ。
 思いやりのない、真実利害の一致だけで成り立つ関係。
 それが東郷と伊緒奈の間柄を語る全てだった。
 もし仮に、片割れが目の前で苦悶をあげていたとしても、残された側は絶対に悲しみなど覚えはすまい。
 伊緒奈ならば、無念のままに散りゆく存在を見、悪意に口元を歪め。
 東郷ならば、残された時間の中でどれだけ利用し尽くせるかを考える。
 そこに人としての情などは存在しない。
 そんなものは、明日を争う殺し合いの中では心の贅肉以上の役割を持たない。

「狙うならば頭を。当たりさえすれば致命傷に出来るだけの威力はあると自負していますが、正確にお願いしますね」
「言われるまでもないわ。……ふふ、あなたはそうやって誰かを殺したのね」
「…………」

 いちいち鬱陶しい女だ。
 東郷は舌打ちの一つもしたい気分になった。
 勇者を名乗りながらその手を血に染めた自分に言えたことではないかもしれないが、浦添伊緒奈という女は屑だと思う。
 自分の中にある二年の記憶の中に、特筆して性格の腐敗した人間がいないからというのもあるかもしれない。
 だがそれを差し引いても、浦添伊緒奈は異常な女だった。
 屑というよりも、異常。
 そう形容するのが最も正しい。

 ――悪意。

 伊緒奈の言動の節々には、全てそれが付き纏っている。
 口の端々に滲む嗜虐的な皮肉にも、殺しの算段を立てている時にも、一瞬として絶えずに。
 ファーストコンタクトは最悪だったが、もし殺し合いに乗っていない状態で彼女に遭遇したらと考えると背筋が寒くなる。
 きっと騙されていただろう。
 この女が本気で誰かを誑かしに掛かれば、たやすく人は陥落するに違いない。
 これだけ短い間、その本性に触れただけでもそれが確信できる程なのだから。

(どうしたものかしらね)

 とはいえ、スケープゴートとして有用なのは確かだ。
 これでもう少し従順で、知能が足りなければ文句はないのだが、そこまでは流石に求め過ぎだろう。
 東郷はスコープ越しに状況観察を続ける伊緒奈を横目に思案を巡らせていた。
 しかし、その時間は長くは続かない。

「――来たわ」

 伊緒奈が口元を邪悪に歪め、そう言った。
 何が来たのかなど説明するまでもない。
 殺し合いの参加者。
 優勝の座へ辿り着くために、排除するべき存在だ。

「髪の短い男。身体は……相当鍛えているようだけど」

 伊緒奈の値踏みするような口調には、小動物をいたぶる子供のような残酷さがあった。
 早くも殺し殺されの世界に適合しつつある東郷だったが、彼女の心境はこれっぽっちも理解できない。
 あくまで東郷にとって殺人とは禁忌だ。
 心を殺して行うものでこそあれ、喜悦の表情を浮かべて取り掛かるものではない。
 同じ殺人者でも、これほどの違いがある。
 或いはそれこそが、彼女達が決して相容れない最大の理由だったのか。
 それは定かではないが、今この瞬間、ひとりの人間の命運が潰えようとしているのは確かであった。

「さようなら」

 伊緒奈は引き金を引いた。
 だが、その直前に彼女が浮かべた表情を東郷は見逃さなかった。
 驚愕。
 信じられない、とばかりの表情を浮かべ、慌てて引き金を引いたように見えた。

「どうしました? 敵は――」
「……外したわ。とりあえず此処から離れるわよ」
「……追撃で仕留められる可能性は?」
「そこまでは分からないけど」

 伊緒奈は東郷の車椅子へ手を掛け、逃げるべく車輪を押した。
 本来は市街地に向かう手筈だったが、少なくとも今最大限に優先すべきは、スコープ越しに見た存在からの逃亡だ。
 浦添伊緒奈は鬼畜であるが、馬鹿ではない。
 勇者の力を得たのは確かに大きい。
 しかし、それを十全な形で使いこなせるかと問われれば否だ。
 ましてや強者との接近戦ともなると、圧倒的に不利はこちらの側になる。
 だから撤退こそが最も正しい。それに――

「あの目は、間違いなくまともな相手の目じゃなかった」

 伊緒奈が銃弾を放つ直前。
 ――スコープの向こうの対象と、目が合った。

 視認できる距離では到底ないにも関わらず、その存在はこちらの視線を感知した様子で。
 優れた戦士は他人の殺気を感知できると語れば漫画の世界だが、あれはそうとしか思えない動きだった。
 放った弾丸は、首をぐおんと横に倒すことで回避された。
 伊緒奈に僅かな動揺があったのは否めないが、それでも首尾よくヘッドショットと洒落込めたかは怪しい。

 最後にスコープから見えたのは、銃弾の飛来した方角を目掛けて駆け始める標的の姿。
 このままじっとしていれば、まず間違いなく奴はこちらへ来るだろう。
 それだけは避けねばならない。
 いずれ殺すとしても、少なくとももう少しはこの力を慣らしておく必要がある。

 悪意の化身すらも戦慄させる、明日のなき怪物が――着実に彼女達のもとへと迫っていた。


【G-5/一日目・午前】
【東郷美森@結城友奈は勇者である】
[状態]:健康、両脚と記憶の一部と左耳が『散華』、満開ゲージ:4
[服装]:讃州中学の制服
[装備]:車椅子@結城友奈は勇者である、弓矢(現地調達)
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(9/10)、青カード(9/10)
[思考・行動]
基本方針:殺し合いに勝ち残り、神樹を滅ぼし勇者部の皆を解放する
     0:逃走に徹する。
     1:南東の市街地に行って、参加者を「確実に」殺していく。
     2:友奈ちゃんたちのことは……考えない。
     3:浦添伊緒奈を利用する。
     4:ただし、彼女を『切る』際のことも考えておかねばならない。
[備考]
※参戦時期は10話時点です


【浦添伊緒奈(ウリス)@selector infected WIXOSS】  
[状態]:全身にダメージ(軽度)、軽度の動揺、変身中
[服装]:いつもの黒スーツ
[装備]:ナイフ(現地調達)
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(9/10)、青カード(9/10)      
     黒カード:うさぎになったバリスタ@ご注文はうさぎですか?
     ボールペン@selector infected WIXOSS
     レーザーポインター@現実
     東郷美森のスマートフォン@結城友奈は勇者である
[思考・行動]
基本方針:参加者たちの心を壊して勝ち残る。
     0:今は逃げる
     1:東郷美森を利用する。
     2:使える手札を集める。様子を見て壊す。
     3:"負の感情”を持った者は優先的に壊す。
     4:使えないと判断した手札は殺すのも止む無し。    
     5:蒼井晶たちがどうなろうと知ったことではない。
     6:出来れば力を使いこなせるようにしておきたい。
     7:それまでは出来る限り、弱者相手の戦闘か狙撃による殺害を心がける
[備考]
※東郷美森が犬吠埼樹を殺したという嘘をチャットに流しました。
※変身した際はルリグの姿になります。その際、東郷のスマホに依存してカラーリングが青みがかっています。
※ジャック・ハンマーの姿を視認しました。


 ●  ◯


  研ぎ澄まされた神経が、遠方の殺気を感じ取った。
  視線を向けた方向に人影は視認できなかったが、代わりに飛んできたものがある。
  銃弾だ。如何に超強化されたジャックの肉体といえども、あれで頭を撃たれれば致命は免れまい。
  だが、予め来ると分かっていれば避けることは然程難しいことではない。
  歪んだ覚悟のもと、新たなるステージへと上がった『怪物』ジャック・ハンマーには、それが出来る。

  首を倒し、弾丸を避けた。
  弾が命中したアスファルトが罅割れた辺りから察するに、普通の銃と同じ威力と見誤ってはならないようだ。
  追撃はなかったが、しかし、ジャック・ハンマーが殺気の主を追うのは自然なことだった。
  今の彼は追跡者である。
  範馬勇次郎という父を予期せぬ形で喪った息子は、修羅の領域に全身を浸からせている。
  それ以上にファイターである彼に喧嘩を売った時点で、彼がそれへの対処を後回しにするのはあり得ぬことだった。

  速度にも自信はある。
  矛盾した鍛錬のもとに成り立った肉体に、不可能はない。
  ジャック・ハンマーは駆ける。
  自分を高みへ導く参加者を殺し、その力を奪い取るために猛獣となる。
  悪意ともまた別な感情で駆動するスコープ越しの怪物が、猟犬が如くふたりの殺人者を追い立てる――


【G-6/線路周辺/一日目・午前】
【ジャック・ハンマー@グラップラー刃牙】
[状態]:頭部にダメージ(小)、腹八分目、服が濡れている
[服装]:ラフ
[装備]:喧嘩部特化型二つ星極制服
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(9/10)、青カード(9/10)
     黒カード:刻印虫@Fate/Zeroが入った瓶(残4匹)
[思考・行動]
基本方針:優勝し、勇次郎を蘇生させて闘う。
   0:狙撃の主(伊緒奈、東郷)の殺害
   1:人が集まりそうな施設に出向き、出会った人間を殺害し、カードを奪う。
   2:機会があれば平和島 静雄とも再戦したい
[備考]
※参戦時期は北極熊を倒して最大トーナメントに向かった直後。
※喧嘩部特化型二つ星極制服は制限により燃費が悪化しています。
 戦闘になった場合補給無しだと数分が限度だと思われます。


時系列順で読む


投下順で読む


101:この花弁は悪意 東郷美森 132:One after another endlessly
101:この花弁は悪意 浦添伊緒奈 132:One after another endlessly
116:Mission: Impossible ジャック・ハンマー 132:One after another endlessly