溢れ出る瑕穢 ◆DGGi/wycYo



駅のベンチに、2つの影が腰掛けている。
繭の声を聞き届けた男は、もう一人の男に問うた。

「――17人、か。さてこれをどう見る、モトベ殿」

煽るつもりはなく、本心からの問いだ。

彼にとっても、気になる名前は1人だけ読み上げられている。
オルレアン騎士団隊長、ジャンヌ=ダルク。
正体を偽っている彼だが、表向き“騎士団副隊長であるラヴァレイ”としては少々思うところがあった。

「―――」

道着の男は、言葉に詰まっていた。

読み上げられた、2つの名前。
高町ヴィヴィオ。彼が近くに居ながら守ることの出来なかった少女。
範馬勇次郎。名前も実態も聞いていないが、その名が呼ばれた時の反応から知己か何かだろうと判断した。或いは、それ以上の関係か。

こうして現実を突き付けられているのだ、無理もない。
何も言うまいと思っていたが、男はすっと立ち上がる。

「おや、もう出発か」
「――ああ」

悟ったような、そして覚悟をしている目をしていた。

「そうか……。だが、何があるか分からんぞ? 
キャスターといったか、奴は女子3人を人質に取っているといっても同然だ。
いや、先の放送のことを考えてみろ。もしかしたら奴が『魂を食らった』なんて真似をした奴かも知れない」

「だが、俺は」
「それでもモトベ殿は、行くのだろう? 君の言う、“守護るため”、とやらに」

念を押すように、語気を強めて問う。

「ああ。俺がキャスターを倒し、他の参加者を守護る」

そうか、と心の中で呟く。
やはり彼は道化として生きるべき存在。
こんなところで立ち止まっているわけにはいかないということか。

「……アキラ君たちについては心配するな、いずれここに戻ってくるだろう」
「すまねぇ、ラヴァレイさん」

世話になった。一言残し、守護神はホームから離れてゆく。
自身が悪魔の掌の上で踊らされていることなど、毛程も気付いてはいないようだ。

【B-2/駅付近/朝】
【本部以蔵@グラップラー刃牙】
[状態]:それでも確固たる自信、猛省
[服装]:胴着
[装備]:黒カード:王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)@Fate/Zero
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)
    黒カード:こまぐるみ(お正月ver)@のんのんびより、麻雀牌セット@咲Saki 全国編
         不明支給品1枚(ラヴァレイから受け取ったもの)
[思考・行動]
基本方針:全ての参加者を守護(まも)る
1:――それでも、俺が守護らねばならぬ。
2:南下してキャスターを討伐する
3:騎士王及び殺戮者達の魔手から参加者を守護(まも)る
4:騎士王、キャスターを警戒
[備考]
※参戦時期は最大トーナメント終了後
※本部がラヴァレイから受け取った支給品の詳細は、後の話に準拠します。



彼の姿が見えなくなるまで見送り――悪魔も進軍を開始する。

「さて」

いきなり走り出した高坂穂乃果がどうなったかは知らないが、少なくとも蒼井晶たちは此処へ戻ってくるだろう。
まだまだ利用価値はあるし、連中の『末路』を見届ける権利が自分にはある。

彼は、あえてそれをしなかった。
それ以上に、興味を引かれるものがあるからだ。


 ✻  ✻  ✻


悪魔が再び舞い戻ってきたのは、地下闘技場。
といっても別に格闘技を始めるわけでもないし、そもそも相手が居ない。

それは、捻挫をした晶のために役に立ちそうな物を探していた際に偶然見つけた扉だった。
周りと比べ不自然な雰囲気を放つその扉は、先刻訪れた時には閉まっていた。

前面にはただ、『第1回放送後に開きます』と書かれている。
ドアノブに手を掛けると、その言葉に嘘偽りはないですよ~と証明するかのようにガチャリと開いてくれた。

重厚な扉を押し開けて眼前に飛び込んできたのは、東と南、2方向へ延びる地下の通り道だった。

「地下通路、か」

入ってすぐ傍に置かれた地図とパンフレットを確認する。
東に行けばホテル、南に行けば放送局――本部以蔵が向かった場所ではないか。
これは、と流石のラヴァレイも目を見張る。

先回りとまでは行かないだろうが、ここから南下すれば彼の末路が見れるかも知れない。
或いは――惨劇の場が出来上がっているだろうか。
こうなると答えが出るのにそう時間は掛からない。
南下する方針で行くことにしよう。



――ここからホテルに向かう通路には、『ジョースター家の系譜』が展示されている。
では、放送局までの道に展示されているものは、何か。

それは、窓だった。
一つや二つではない、数十にも及ぶ窓が、ずらりと通路の壁に等間隔で設置されているのである。
大半は閉まっており、びくともしない。
だが、彼は見た。

歩き始めて少し経った頃。

「これは……」

開いていた、3番目の窓。
それが映し出していたものは、地中の景色などではない。


――“不浄”。
――“末路”。
――“現実”。


どういったタイトルを付けるのが適切だろうか。




『死因:圧殺』




映る影は、何も語ることはない。いや、それが叶うことはない。




『越谷小鞠』




――ただの物言わぬ死体には。


巨大な物体に頭部を潰された死体が横たわっている光景を見て、普通の人間ならば嘔吐していただろう。
だが悪魔は、冷静に案内板を読み返す。

案内には、こう書かれている。
『死の瞬間を捉えた道』と。


『参加者が死んだ瞬間をちょうどいい角度から撮影しました。名前と死因も一緒に確認出来ます。
※放送の度に更新されます
※付近の第三者は映りません』


更に歩くと、先刻カイザルたちの手によって安置された筈の、高町ヴィヴィオの死体を見ることが出来た。
口元を押さえてホームに倒れているその姿は、紛れも無く移動させる前のものだ。

流石のラヴァレイも、悪趣味という感想を抱くほか無かった。
こんなものを設置したことではなく、“人間がこれをやった”ということに対してである。
白い部屋で鍵の娘を殺したバハムートの件といい、どうにも繭一人にこういったことが出来るとは思えないのだ。

「協力者の余興、か……」

そう結論付けるを得ないだろう。
このまま進めば、ジャンヌの死に様も見ることが出来るだろう。
放送局へ向かうついでに確認しようとして――しかしその足を止めた。

地下通路という空間は少々狭い。その上、防音設備も碌に整っていない。
大きな音を出せば、かなりの距離があっても辛うじて耳に届くことがあるだろう。

僅かに聞こえて来たのは、明らかに誰かが暴れているような音だった。
この地下を訪れた時には気にも留めなかったが、意識すると気のせいではないと判る。
場所は……ラヴァレイが向かわなかった、ホテルへ向かうルートからだ。

理由として考えられるのは、一個人の暴走か、或いは戦闘が起こっているか。
どちらにしても、このまま放っておくとこちらに向かって来る可能性は無いとは言い切れない。
背後からグサリ、なんて展開は真っ平御免だ。

進路を変更しながら、彼は考える。
どんな理由にせよ、話の通じる相手が居るとは考えにくい。
“処理”をしている間にヘタをすれば放送局での事は済んでいるかも知れない。
だが……その時はまた、然るべき対処を取ればいいだけのことだ。


【B-3/地下通路/朝】
【ラヴァレイ@神撃のバハムートGENESIS】
[状態]:健康
[服装]:普段通り
[装備]:軍刀@現実
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)
    黒カード:猫車
[思考・行動]
基本方針:世界の滅ぶ瞬間を望む
0:音の正体を探ったのち、放送局へ向かう
1:本部の末路を見届ける
2:蒼井晶の『折れる』音を聞きたい。
3:カイザルは当分利用。だが執着はない。
4:本性は極力隠しつつ立ち回るが、殺すべき対象には適切に対処する
[備考]
※参戦時期は11話よりも前です。
※蒼井晶が何かを強く望んでいることを見抜いています。
※繭に協力者が居るのではと考えました。


【施設情報・地下通路】
『地下闘技場』⇔『放送局』間には、『死の瞬間を捉えた道』が展示されています。
参加者が死んだ瞬間を映した窓が70あり、付近の第三者は映りません。
また、窓の真横には死人の名前と死因が書かれています(凶器は書かれていません)。
窓は名簿と対応しており、放送局側から名簿順になっています。
現在は第1回放送分の死者に対応した窓のみが開いています。

※満艦飾マコ、南ことりに対応した窓が開いているか、他に展示があるかは後続の書き手さんにお任せします。


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088:DREAM SOLISTER 本部以蔵 115:高坂穂乃果の罪と罰
088:DREAM SOLISTER ラヴァレイ 128:悪魔と吸血鬼! 恐るべき変身!