それでも『世界』は止まらない ◆eNKD8JkIOw


波紋。
吸血鬼
柱の男。
スタンド使い。
ジョナサン・ジョースター。
ジョセフ・ジョースター。
そして、空条承太郎。


「全く、こうして俯瞰的に見せられても忌々しき血族よ」


彼らは時に写真の中で、絵画の中で、映像で、活字で、音声で。

青春を過ごし、仲間と出会い、別れ、吸血鬼と対峙し、柱の男に立ち向かい、スタンド使いを薙ぎ倒しながら。


『奇妙な冒険』を繰り広げていた。


タイトルは『ジョースターの系譜』
細く、長く連なることで、なんとか地下通路の体裁を取り繕っているようなジョースター展示会。
彼らの活躍を華々しく喧伝しながら、その空間は博物館、美術館、ミュージアムのような様相で、DIOの目の前に広がっている。
ここは、ホテルの地下通路のその先。
『ホテル』と『地下闘技場』を繋ぐ『地下道』の始点、もしくは終点としてこの舞台に用意された、いわゆる『目的地にたどり着くまでの暇つぶし』として用意されたものだった。

DIOは万が一、この通路を使うような事態――例えば、どこぞの阿呆がホテルを倒壊させた場合の逃走経路として。
また、万が一、ま・ん・が・い・ち、このDIOがホテル内で集団相手に後れを取り(1対1でこのDIOが負けるはずがない!)この地下通路まで撤退、そのままそいつらと戦らねばならぬ時に備えて。
ある程度、ホテル地下のその先を見ておく必要があると考えた。
意気揚々と戦略的撤退をかました果ての出口が、遮蔽物など一切ないお日様サンサン大平原だった、などという事態になってしまえば目も当てられぬ。
また、もしも地下で戦うことになった際に、そこがどのような構造になっているのか知っている者と知らぬ者では、どちらが有利かなどはモンキーでも分かる理屈。
どうせこのまま地上のホテルに戻っても、結局は寝るだけなのだ。ならば、少しでも時間は有効に活用せねばならぬ。

そう考え歩いた先にあったのは、ご丁寧にも地下通路の入り口に用意された『地下道』の地図、そしていくつかの特殊ルールが書かれたパンフレットだった。
それによると、この通路は会場内の四つの島を結ぶためのもの。
『ホテル』⇔『地下闘技場』⇔『放送局』⇔『映画館』⇔『ホテル』といった感じで、少し歪んだ四角形で結ばれた地下の道だということだった。
例えば、ホテルから直通で行けるのは、ホテルから見て西にある『地下闘技場』と、南にある『映画館』
ホテルから見て南西にある『放送局』に向かうためには、そのどちらかを通らねばならない。そんな地下道だ。


そして、この地下を進むにあたって、いくつか知っておかねばならぬ特殊ルールが存在する。


まず一つは、この通路は駅を結ぶ線路と同じように、禁止エリアの影響を受けぬということ。

考えてみれば当然だ。道が一方向しかない以上、禁止エリアで道のどこかが塞がれてしまえば、そのルートはもう利用できなくなってしまう。
となると、先ほど行った考察と同様に、この道を繋ぐ四つの施設、『ホテル』『地下闘技場』『放送局』『映画館』も、禁止エリアには選ばれないと見ていい。
そう考えれば、ますますこのホテルは日中出歩けないDIOにとっての『安全地帯』として最適だといえよう。


「真下に展示されていたのがあのジョースターどもを賛美するものだということを除けば、だがな」


二つ目は、この地下通路を使用できるのは、一度この『地下通路』を出入りするにつき、最高6時間までということ。

滞在時間が6時間を超えれば、その者は強制的に地上に、自分がいた場所の真上にワープさせられる。
また、この『制限時間』を回復させるためには、地上に一時間は滞在しなければならない。
これはどういうことかというと、つまり地下で誰にも見つからないように「穴熊を決め込む」ことは許されないということだ。
DIOのようにホテルを隅々まで探索するならばともかく、普通の参加者はよほど頭が回らない限りは、もしくはよほど運が良くなければ、この『地下通路』の存在には気付くまい。
ならば、特殊ルールで最大滞在時間を決めない限り、禁止エリアの影響も受けぬ地下にずっと居座り残り人数が減るまで力を温存する、という発想に至る参加者も現れかねない。
この特殊ルールはそういった戦略を縛るためのもの、ということだ。


「……ほう、芸が細かいではないか」


ではその『残り六時間』はどう計ればいいのかというと、答えはDIOの腕についていた。
正確には腕に着いた腕輪。そこに嵌まった白のマスターカードに、いつのまにか『残り時間』が表記されていたのだ。
恐らく、地上に出るとこの、今はDIOの腕で『残り5時間45分までに地上へ出てください』となっている表記が『次に地下へ潜ることが出来るのは1時間後です』というものへと変わるのだろう。
1時間経たぬうちに地下に戻ろうとするとどうなるのかは分からないが、主催の定めたルールをわざわざ破ってまで確かめようとは思わない。


そして三つ目、これはルールというよりも案内だが。
この地下通路には、様々なものが『展示』されているということ。
例えば、このDIOに楯突くジョースターどもの軌跡のように。
道を進めば、違った『何か』が展示されているに違いない。


『海の中を通るB4エリアには、海の中に100年間沈んでいた、そして今はB4の海中に沈めてある【DIOの棺桶】を鑑賞できる小窓をご用意いたしました!
制限時間を超え地上ならぬ海中に出てしまわぬようくれぐれもご注意いただきながら、ごゆるりとご鑑賞ください!』


そんなナメたことを抜かす看板(人の寝室を見世物にするとは良い度胸だ)を粉砕しつつ、先に進む。
ジョナサンを苛め抜いた子供時代を、そんなこともあったなと大人の余裕で振り返りながら。
自分の知らぬ時代にて「柱の男」なるものたち(このDIOを差し置いて究極生物とは笑止千万)と戦い抜いた、若かりし頃のジョセフを馬鹿にしながら。
にっくき空条承太郎御一行様が、DIOの差し向けた刺客たち(使えんやつら)を必死こいて追い払っている様を見て、舌打ちしながら。


DIOは、辿り着いた。




辿り着いて、しまった。





『てめーの敗因は…たったひとつだぜ』




一度、それとなくスルーしてしまいかけ。




『たったひとつの、単純(シンプル)な答えだ』




二度見する。




『てめーは俺を』





目を擦る。





『怒らせた』





念のため、三度見する。




そうして。




『「ば…ばかなッ!……こ…このDIOが…………」』





知るはずのなかった未来を。
知るべきではなかった真実を、知ってしまう。





『「このDIOがァァァァァァ~~~~~~~~~~~~~ッ」』








「空条承太郎にッ、敗れただとぉ~~~~~~~~~~ッ!?」


思わず、キメたポーズを取る承太郎が映し出された画面を叩き割った。
もはや何も移さなくなった液晶を、それでも吸血鬼の膂力で、力の限り殴り続ける。
そうすることで、今見た『あり得ない光景』を、空条承太郎に全身を砕かれる己の姿を、なかったことにするかのように。
この帝王DIOともあろうものが、認められない現実から、逃避するかのように。


「はぁッ、はぁッ、はぁッ……」


汗がタラーッと流れ落ちる。懐に忍ばせておいたハンカチーフで拭い取る余裕など、なかった。
力加減を間違えたのか、腕からは血が流れている。吸血鬼たるDIOにとっては、この程度は大したダメージにはならないが。
それでも、この傷は今のDIOの内心を表しているかのように、じんじんと芯に疼く痛みを脳に放った。


「……ふん、大方、この忌々しい空間を準備したジョースターどものファンの仕業。下らぬ三文創作よ」


本当にそうか?

DIO自身さえもこうして見せられねば忘却の彼方にあった、ジョナサンを苦しめるために殺した犬――ダニーを模造した彫刻。
あの石仮面を作ったという『柱の男』たちの特徴を非常に事細かに記していた、分厚いレポート。
このDIOを追跡した承太郎たちの移動経路を示した世界地図の一部。
どの地点でどのスタンド使いと誰が戦ったのかさえも分かりやすく説明した、ガイドブック。
どこを見渡しても、DIOよりも、下手をすればジョースター本人たちよりも、彼らのことを理解しているような展示物が並んでいる空間で。
嘘や酔狂とも思えぬ、本物(マジ)の気配が濃厚に漂う世界で。


あれだけが、あの映像だけが。
真っ赤な嘘だと、作りものだと。
本当に言い切れるのか?



それに、空条承太郎相手に醜態を晒していたあの男を一目見て。


「これは自分だ」と、己自身の『魂』が理解してはいなかったか?


『残り5時間30分です』

「少し黙ってろ!」


30分ごとに注意を喚起する仕組みなのか。
馬鹿正直に残り時間を告げるカードさえも、今は憎々しい。
苛立ち交じりに、腕輪を壁に叩きつける。
罅割れた煉瓦の真横には、光り輝く笑顔を見せるジョナサンとエリザの肖像画があった。
誰がしかに囲まれながら、結婚衣装を身に着けつつ『このDIOを振った』女に寄り添われている、かつてのライバル。
もはや、無様に死ぬ未来が確定しているお前のことなど、歯牙にも欠けていないと言われているような気がした。

「クソがッ!」

腕を振るい、絵を叩き割る。地面に落ちた残骸を、足で何度も何度も、地団駄を踏むように次々と踏み抜いていく。
ジョナサンの身体で、ジョナサンの『幸せ』を粉々にしていく。
それでも、全く気分は落ち着かない。むしろ、虚しいことをしている気分にさえもさせられる。
気に喰わない。気に喰わない気に喰わない気に喰わない!


このDIOが、この帝王であるDIOが!

これほどの屈辱を受けるなど!そんなことが許されてなるものか!


『残り5時間29分』


それでも世界は、そんなDIOの気持ちなど全く気にせず、動き続ける。
人間を辞め、肉体的成長も、精神的成長も止まった彼を置きざりにしていく。
今先ほど目にしてしまった『真実』を受け入れ、乗り越えなければ、DIOが『その先の世界』へ行くことなど。
空条承太郎に打ち勝つ『未来』へいくことなど、決してない。



【B-7/ホテル 地下通路/一日目 朝】

【DIO@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース】
[状態]:精神的疲労、右腕と胴体にダメージ、全身にダメージ(小)
[服装]:なし
[装備]:サバイバルナイフ@Fate/Zero、拡声器@現実
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(9/10)
[思考・行動]
基本方針:主催者を殺す。そのために手っ取り早く他参加者を始末する。
0:このDIOが……空条承太郎に負けただと……。
1:夕刻までホテルで体を休める。その後、DIOの館でセイバーと合流。
2:ヴァニラ・アイス、ホル・ホースと連絡を取りたい。
3:銀髪の侍(銀時)、長髪の侍(桂)、格闘家の娘(コロナ)、三つ編みの男(神威)は絶対に殺す。優先順位は銀時=コロナ=桂>神威。
4:切嗣、ランサー、キャスターを警戒。
5:言峰綺礼への興味。
6:承太郎を殺して血を吸いたい。
[備考]
※参戦時期は、少なくとも花京院の肉の芽が取り除かれた後のようです。
※時止めはいつもより疲労が増加しています。一呼吸だけではなく、数呼吸間隔を開けなければ時止め出来ません。
※車の運転を覚えました。
※時間停止中に肉の芽は使えません。無理に使おうとすれば時間停止が解けます。
※セイバーとの同盟は生存者が残り十名を切るまで続けるつもりです。


【施設情報・地下通路】
『ホテル』⇔『地下闘技場』⇔『放送局』⇔『映画館』⇔『ホテル』を繋ぐ地下通路です。
地下通路に限れば禁止エリアの影響は受けません。四つの施設が本当に禁止エリアに選ばれないかは不明。
最大滞在時間は6時間。一度地上に出ると、もう一度地下に潜るためには1時間の経過が必要です。
通路内には『ジョースターの軌跡』のようなコーナーがいくつか設けられています。何がどれだけ展示されているのかは他の書き手さんにお任せします。


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092:Underworld DIO 128:悪魔と吸血鬼! 恐るべき変身!