第一回放送 -この声は冒涜- ◆DGGi/wycYo

白い部屋。

無機質なその部屋は、沢山の窓に囲まれている。
開いているそれらの窓は、殺し合いの全てを映し出す。

「ふふ」

少女は笑う。
ゲーム開始から6時間。最初の放送が始まる。


 ✻  ✻  ✻


『――おはよう。午前6時、定時放送の時間よ』

このゲームの生存者全てに等しく与えられる声が、会場全体に響き渡る。
その声は、生者全ての腕輪からも発せられていた。

『ここまでにあなたたちは誰と出会った?
誰を殺した? 誰と闘った?
今はただ、私の声に耳を傾けなさい

まずは、大事な話をしましょう。
腕輪で確認出来るルールに明記したけれど、あの場所で説明していないことがあったわ。
そう、禁止エリアについてよ』

数秒時間を置き、少女は続ける。

『本当はルールを見るべきなんだけど、今回は特別に教えてあげる。
当然、殺し合えば人数は減っていく。すると当然、他の参加者との遭遇率も下がるわ。
それじゃあつまらないから、禁止エリア――エリアを封鎖しちゃうの。
今から3時間後、午前9時になってもそのエリアに居たら、もれなく魂をカードに閉じ込めるわ。そこで何をしていたとしても、問答無用。


【C-4】
【D-7】
【F-3】


これらの3箇所のエリアが、9時になったら入れなくなるの。
でも、鉄道に乗っている間は特別に入れるようにしてあるわ。
今そこに居る人たちは、死にたくないなら出発準備を始めた方がいいかも知れないわね。

それから、これも大事なお話。A-4……北部に設けた橋が壊されちゃったの。
だからここも9時から一時的に禁止エリアにするわ。
次の放送までには直して入れるようにしておくから、それまでの辛抱。

さあ、次はお待ちかね、ここまでに命を落とした方々の発表といきましょう。
一度しか言わないから、よく聞くことね。


【宮永咲】
【神代小蒔】
【範馬勇次郎】
【池田華菜】
【土方十四郎】
【長谷川泰三】
【犬吠埼樹】
【越谷小鞠】
【間桐雁夜】
【園原杏里】
【ジャンヌ・ダルク】
【高町ヴィヴィオ】
【矢澤にこ】
【志村新八】
【ヴァローナ】


まだいるわ。魂がカードに閉じ込められていないけど、死んだとはっきり分かる子もいる。
私はここからゲームの全てを見ているの。
誰かが魂を食らうだなんて不思議な行動をとっているところも、丸見えよ。


【満艦飾マコ】
【南ことり】


さあこれで全員、残りは53人。マスターカードで名簿をご覧なさい。
脱落した人の横に、赤いバツ印が付いているはずよ。
あなたの大切なお友達が死んでしまったのなら、その子のために頑張りなさい』

クスリ、薄ら笑うような声がする。

『ここまでで17人、素晴らしいペースよ。余程叶えたい願いがあるのね。
でも、無理をして自分が死んでしまったらそこまでよ。それだけは承知しておきなさい。
それじゃあ、これで放送を終了するわ。次は正午、また私の声が聞けるといいわね』

ノイズ混じりの笑い声が途絶え、やがて静かになる。
まだ、呪われたこのゲームは始まったばかり。


 ✻  ✻  ✻


ため息を吐き、繭は用意しておいた椅子へと腰掛ける。
窓の向こうからは、参加者たちの様々な表情が窺い知れた。
驚きを隠せない者、涙を流す者、淡々と今後の方針を決めようとする者――。

今のところ、殺し合いは順調に進行している。

徒党を組んでゲームの破壊、脱出を目論む者もいるが、あの腕輪がある以上島から出られないのは明白。
もし仮に腕輪を破壊出来たとしても――既に対策は練ってある。

この窓から全てを見ている。
ああは言ったが、魂が吸い込まれなかった2人のことは“そいつ”が教えてくれなければ気づけなかった。
繭にとっては想定外だった橋の破壊も、“そいつ”の用意した提案によって無事解決した。
円滑に進められないゲームなど面白くない、それには同意する。
ただ一つ、問題を挙げるとするなら。

「(なんで……?)」

タマが支給品として紛れ込んでいることだ。
元々、ルリグをアイテム用に調整して支給しようだなんて言い出したのも“そいつ”の提案だ。
繭もそれに賛成こそしたが、タマを支給品にした記憶はない。

ちら、と“そいつ”の方を見る。
命の恩人ではある。この島だって、“そいつ”が用意してくれた舞台だ。
繭に逆らえないようにお膳立てしてくれているのだって。

ルール制定等も含め、“そいつ”がこのゲームの進行に大いに役立っているのは事実である。
だが、少しばかり疑った方がいいのかも知れない。

白い部屋に2人の声は聞こえない。聞こえてくる音は、窓の向こうからばかり。
“そいつ”は何も言わず、ただ……貼り付けたように笑った表情をしていた。


※A-4が橋修理のために一時的に禁止エリアに指定されました。
次の放送までには入れるようになります。
※禁止エリアに指定されている場所も鉄道に乗っている場合はその限りではありません。


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000:royaled 147:第二回放送 -カプリスの繭-