その覚醒は重畳 ◆45MxoM2216

「ぐ…うう…ゲホッ、ゲホッ」
アザゼルの手刀により気絶させられ、あまつさえ空中から放り投げられた浦添伊緒奈ことウリスは口の中になんとも言えない不快感を感じ、柔らかい土の上でなんとか目を覚ます
反射的に咳き込むと、偶然彼女の口の中に入ってしまっていた土が吐き出された

(最悪だわ…)
お世辞にも寝覚めが良いとは言えず、全身がズキズキと痛む伊緒奈は、思わず歯噛みする…
まだ口の中に若干土が残っており、ジャリッとした嫌な感触のせいで彼女の機嫌はさらに悪くなる

――余談だが、人が気絶するほど強く首に手刀を打つと、頸動脈が圧迫され血流障害を起こしたり、延髄が刺激されて脳震盪を起こしたりと、下手をすれば空から放り投げられる以上に死の危険があるのだが、幸い彼女にそれらの症状は見られないようだ――

(一体…何が…)
彼女が戸惑うのも無理はないだろう
伊緒奈にしてみれば、上空の敵に銃口を向けて今にも引き金を引こうとした瞬間、その敵にいつの間にか背後に回り込まれ、何がなんだか分からないうちに気絶させられたのである

全身が痛むが、特に首の痛みが凄まじいことから、おそらく首を殴られたのだろうか
とりあえず伊緒奈は地面に手をついて起き上がろうと…

(ん?地面?)
そこまで考えて彼女は気付く
そう、先ほどまで歩いていた地面と今自分が横たわっている地面が、明らかに違うのだ

(おかしい…さっきまで私は市街地にいたはず…)
市街地のアスファルトを踏みしめていたのに、柔らかい土の上で横たわっているなど…
あまつさえその土が口の中に入っていたなど…
――最も、彼女が落ちたのがアスファルトの上だった場合、確実に彼女は死んでいたのだが――

(ち…あの翼の男…)
しかも、先ほどまで所持していたサブマシンガンがなくなっている
あの男に奪われたのは明らかだった

どうやらあの男は武器を奪った後、自分をここに移してから去ったようであると彼女はあたりを付けた

(だけど何故、サブマシンガンだけ奪って私を殺さなかった?)
せっかく手に入れた強力な武器…アドバンテージを奪われて腸わたが煮えくりかえりそうになるが、なんとか抑えて思考を続ける伊緒奈

そう、無力化させた相手を殺さない…ウィクロスで例えるなら、相手のライフクロスを全てクラッシュし、いつでも相手のルリグに止めのアタックができるにも関わらず、アタックをしないという愚行だ
意味のない行為の上、そんなことをしてはクラッシュによってエナゾーンに送られたライフクロスを元手に、次のターンに手痛い反撃を受ける可能性がある

これが人殺しを厭うような人間にやられるならまだ分かるが、あの男はどう考えもそのようには見えなかった

(殺す価値もないと舐められた? でも仮にそうだとすると他の支給品…まぁ本やペンはともかく、水や食糧を奪わない理由にはならない
そもそもなぜわざわざ気絶させた相手をこんな所に運んだの?
気まぐれ…というのもありえないこともないけど、それはいくらなんでもお気楽が過ぎる…
他に理由として考えられるのは…)
と、彼女の思考が堂々巡りになりかけた瞬間、伊緒奈はそれよりも重要なことがあったことを思い出した

(そうだ、現在地…それに定時放送!)
どうやら覚醒したばかりで頭のキレがいつもより鈍っていたらしい
本来真っ先に確認すべき現在地と時間を後回しにして、あの翼の男について延々と考えてしまっていた

――あるいは、彼女自身が考えている以上にアザゼルへの怒りが強かったのだろうか――

慌てて白いカードで時間を確認すると、現在の時刻は5:57…放送の三分前だ
どうやら、気を失っていた時間は思っていたよりも短いようだ
偶然口の中に土が入ったというのはなんとも不快な話だが、そのおかげで早くに目が覚めたらしい

同じく白いカードで確認したところ、現在地はG-4
先ほどの市街地――G-6から、さほど離れていない森林地帯だ
近くには城のような建物がある
(放送が終わったら、あそこでしばらく休むのもいいかもしれないわね…)
少なくともこんな所よりは居心地よく休めるだろう…
さらに城ともなれば、何か武器になるような物が置いてあるかもしれない

(あの男のもう一つの支給品は、とんだ外れだったし…)
彼女の脳裏に浮かぶのは、もはや顔も朧げなサングラスの男から奪ったもう一つの支給品ーーレーザーポインターだ
何の因果か、またもや文房具である
一応、目に当てれば牽制にはなるかもしれないが、殺傷力は皆無だ

どうやら自分はまだ運に見放されていないらしいと感じた伊緒奈は、青いカードから取り出した水で手早く口を洗ってから、放送に備えた

彼女は身体的に傷つけられたものの、内心に潜む"心”を壊す欲求を失ってはいない
敗北の屈辱は確かにあるが、彼女にとってはそういった屈辱を受けた者が他にいないかどうかの方が重要なのだ
もしそんな者がいたら、あの蒼井晶のように依存させたり、敵への憎悪といった"負の感情”を燃やさせるのも面白い

そんなぐちゃぐちゃでドロドロになる"心”を想像しながら、浦添伊緒奈ことウリスは妖しく微笑した…

【G-4/アナティ城周辺/1日目・早朝】
【浦添伊緒奈(ウリス)@selector infected WIXOSS】
 [状態]:全身にダメージ(大)
 [服装]:いつもの黒スーツ 土が付着
 [装備]:なし
 [道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(9/10)
     黒カード:うさぎになったバリスタ@ご注文はうさぎですか?
          ボールペン@selector infected WIXOSS
      レーザーポインター@現実
 [思考・行動]
基本方針: 参加者たちの心を壊して勝ち残る。
   0: 放送を聞く
   1: アナティ城に入り休息 あわよくば武器も手に入れたい
   2:使える手札を集める。様子を見て壊す。
   3:"負の感情”を持った者は優先的に壊す
   4: 使えないと判断した手札は殺すのも止む無し。
   5:蒼井晶たちがどうなろうと知ったことではない。

 [備考]
※参戦時期は二期の10話で再び夢限少女になる直前です。
※アナティ城内部の構造については後続の書き手さんにお任せします

支給品説明
【レーザーポインター@現実】
赤い光が出てくる、一般的なレーザーポインター
超時間連続して使用すると熱に耐えきれず故障するが、基本的には電池切れの心配はない


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060:墜落する悪 浦添伊緒奈 101:この花弁は悪意