夜と朝の間に ◆WqZH3L6gH6

 ある殺し合いの舞台においてE-4と区別される領域。
 そこの丁字路の中央に浮世離れした派手な少女――針目縫が立っていた。
 大げさなほどの身振りで左右の先、逃げたガンマンと首なしを探る針目。
 はたから見れば、可愛らしい少女が途方にくれてるだけのように見える。
 だが少女の本質は残忍さを色濃く持つ化け物。
 道路だけでなく、空や森の向こうまで索敵の範囲は及んでいる。
 よくよく見ればその動きは人らしさどころか、生物らしさもどこか欠如しているようでちぐはぐに見える者もいただろう。
 数分経ち、針目は「飽きた」と呟きながら、丁の字に背を向けたを返した。

「あーあ、退屈」

 不満を口にしながらもにこやかな笑顔のまま歩む針目。
 だが、ホル・ホースに一矢報いられた苛立ちや、殺し合いの主催による身体の不調による苛立ちは失せていない。
 針目が追跡を中断したのは、計画性のある行動を取るために過ぎないのだから。

 先程、戦いの舞台だった旭川分校は通り過ぎた。
 索敵は怠っていない、標的が確認されない限りはもう興味が無い場所。
 針目は歩きながら腕輪を操作し地図を確認する。


「ふむふむ」


 針目が注目したランドマークは3つ。北西、北東、南東に位置する駅。
 当初は60を超える数の参加者を楽しみながら蹂躙し、メインディッシュであるあの2人――
 纏流子と鬼龍院皐月とのやり取りを最後の楽しみとして取っておこうと漠然と考えていたが、
 自身の身体を主催の女の子に手を加えられ、弱体化させられたならそれだけではいけない。
 針目は一瞬腕輪を煩わしく睨み、すぐいつもの笑顔に切り替えると東の森へ入り、徐々にスピードを上げる。
 僅かな葉擦れの音を立てながら、上がり坂を、荒れ地を物ともせず針目は向かう。向かう。

「あ」

 山を駆け、森を突っ切ろうとした最中、彼女は右目で発見する。山小屋を。
 立ち止まること無く、躊躇なく軽やかなステップを踏みながら山小屋の前に立ちドアノブを握る。
 鍵は開いており程なくして彼女は小屋の中に入った。
 休息を取る為ではなく、自身の身体を確認する為に。

□ ■ □ ■ □ ■

 あれから30分以上経った。
 虚空から生じたが如く何本もの赤い糸は、針目の身体に吸い込まれるように消える。

「……」

 再生能力や身体能力のみならず、変身能力にも制限が掛けられている。
 姿を変える速度は変わらないものの、変身中は身体能力が明らかに低下していた。
 その事実を認識した針目は笑顔のまましばらく無言だった。内にあるのは変わらぬ苛立ちと困惑。
 床にはよく調べないと解らないくらいごくごく微量の血痕が蒔き散らされていた。
 針目はさっきまで自らの肉体の頭部と両腕以外の部位を現在の再生能力が及ぶ範囲で調べ上げていた。

「ボクのこの不調は腕輪か、または別のカラクリが原因ってヤツなのかなあ?」

 メス代わりに使用していた片太刀バサミの柄を握りながら、音もなく床に何度も刃を突き刺す。
 体内に毒など生命繊維の活動を低下させるようなものは確認できなかった。
 血液を調べてもナノマシンの類のものさえ見つけられなかった。
 窓の外を見る。夜闇は晴れつつある。

「……」

 見かけに寄らない罵詈雑言が、形にできないほどの怒りが、悪意が針目の心の中に渦巻いた。


「……でも、ボクは思い通りにならないもんね」


 だが持ち前の自尊心をもって冷静さを取り戻すや、再度赤い無数の糸を現出させ自身の身体を覆い始める。
 ゲームに乗り、他の参加者を蹂躙しつくしたいが、その欲求は多少抑える事に決めた。
 一刻も早く制限を解き、自由を取り戻すために。それには他参加者を最大限利用するのが近道だと針目は判断する。
 赤い糸は針目の身体全体を隠し、姿を体積をも小さく変化させた。

「名前は……偽名使うまでもないか」

 赤い糸が消えると、そこに現れたのは針目縫とは似つかない年下の少女。
 飾り気のない短髪に左目を隠すよう前髪以外は一時間以上前に殺害した少女に似た姿だった。
 犬吠埼樹に似た姿。
 元の姿は目立つ上に鬼龍院皐月を始めとした本能字学園の関係者に警戒されてしまっている。
 こちらの悪評も本能字学園の関係者ににばらまかれている可能性が高い。
 だからこそ他の参加者にあまり警戒を持たれないよう化けたのだ。


「もっと、いいモデルがいるといいんだけどなあ……」

 と、ハサミはカードに戻し足でドアを開けて、のびをしながら針目は開始前の会場の様子を思い出す。
 特に目立ったアフロ髪の青年や知己と思わしきピンク髪の少女を見る限り、参加者は知り合い同士でここに招かれた可能性が高い。
 腕輪の解析解除を実現するには協力者に等しい利用価値のある駒が必要。
 だからモデルに決めた参加者を動きがとれないようにした上で隔離し、その身柄をいただく。
 モデルの信用を持って駒を増やし、最終的には腕輪の解除をさせる。それが目的。
 殺しさえしなければ定時放送でばれることはないだろう。人質として利用もできる。
 針目は感覚を鋭敏にさせながら、更なる速度で山を駆けた。目的地は南東にある駅。
 外にせよ屋内にせよ、そこで待ちぶせ参加者と接触し、選別する。
 腕輪解析、貴重な情報源となりうる有能な駒。能力のないクズでも人望がある変身の1パターンとなりうる駒。
 そしてどちらでもない戦いになりさえしないモブに等しいゴミや、先ほどの首なしや皐月のようなナマイキにも強い猿。

「……いけない、いけない、忘れちゃ」

 針目は思わずここに連れて来られる前のスタンスに戻りつつあったのを自覚し、おどけるように舌を出した。
 唯一の心の拠り所である鬼龍院羅暁に言い訳するかのように。 山を抜けた。
 上を見るとすっかり夜が明けている。森を抜けた。前方に線路が見える。
 他の参加者の姿はと辺りを見回そうとした直後

「ちぇっ、間に合わなかったかぁ」

 放送が始まり針目縫はため息を付きながら足を止めた。





【G-6/駅付近/一日目・早朝】

【針目縫@キルラキル】
[状態]:疲労(小)、犬吠埼樹にそっくりな女の子に変身中、繭への苛立ち
[服装]:普段通り
[装備]:片太刀バサミ@キルラキル
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)、黒カード:なし
[思考・行動]
基本方針:神羅纐纈を完成させるため、元の世界へ何としても帰還する。その過程(戦闘、殺人など)を楽しむ。
0:駅へと向かい周囲か屋内で他の参加者と接触する。どうするかは参加者とその時の気分次第。
1:腕輪を外して、制限を解きたい。その為に利用できる参加者を探す。
2:身柄を利用できる参加者を確保して、変身対象として利用したい。
3:何勝手な真似してくれてるのかなあ、あの女の子(繭)。
4:流子ちゃんのことは残念だけど、神羅纐纈を完成させられるのはボクだけだもん。仕方ないよね♪
[備考]
※流子が純潔を着用してから、腕を切り落とされるまでの間からの参戦です。
※流子は鮮血ではなく純潔を着用していると思っています。
※再生能力に制限が加えられています。
 傷の治りが全体的に遅くなっており、また、即死するような攻撃を加えられた場合は治癒が追いつかずに死亡します。
※変身能力の使用中は身体能力が低下します。度合いは後の書き手さんにお任せします。
※分身能力の制限がどうかは、後の書き手さんへお任せします。
※犬吠埼樹そっくりな女の子に変身しています。違いは髪型と服装くらいです。
※胸の銃創は治りました。


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065:闇を欺いて 刹那をかわして 針目縫 094:女はそれを我慢できない