こんなに■■なことは、内緒なの ◆DGGi/wycYo

男に対し、悪寒を感じたのは事実だ。
考え過ぎ。そう一蹴した筈であった。
……そうであって、欲しかった。

 ✻ ✻ ✻

休憩を終えて、駅へ向かう道中のことだった。
龍之介と心愛、そしてリタは、互いに持っている情報を交換していた。
分かったのは、全員揃って他に出会った人物はいないということだけ。

龍之介はその本性については当然触れなかったし、リタもあまりペラペラと語る口ではない。
この場の主導権を握っていたのは、能天気でお喋りな心愛も同然であった。

「…………結局、見つからなかった最後のピースはティッピーのすぐ近くにあったんだよね~。あの時はビックリしたよ」

彼女の口からは住んでいる街、知り合った人々、起こった出来事などなど……。
次から次へと言葉がマシンガンのように撃ち出され、2人は時々相槌を打つことくらいしか出来ない。
リタは興味無さそうに、それでも一応の情報源として聞いておく。
どちらかと言うと彼女が気になったのはそちらではなく、龍之介の態度だ。

龍之介は、熱心に心愛の話を聞いていた。
相槌を打っているだけではあるが、その顔は妙に活き活きしている。
まるで彼女の言う友人たちにも興味がある、といった顔。
何故だ? 何故赤の他人である筈の龍之介が、そこまで。

「…………それでね、私の制服が見当たらなかったから何かあったのかなーってなっちゃったんだけど、マヤちゃんとメグちゃんが遊びに来ててね~」
「お喋りはいいけれどあなたたち、自衛の手段くらいあるんでしょうね」

リタは口を挟んだ。
龍之介に一抹の不安を感じたのは事実だし、心愛の長話にうんざりしたというのもある。
どちらの意味合いが強いかは……考えなかった。

2人は顔を見合わせる。
言われてみれば、碌に支給品を確認していない。精々狸が一匹出てきた程度だ。
それも今は「モフりたいけど歩く時はさっきみたいにコケちゃうし」とカードにしまっている以上、龍之介と違って心愛は丸腰。

「でも私、これしかないよ?」

心愛が取り出したのは、ライターと携帯ラジオ。

「火なんてヘタに使うと危ないし、ラジオはここじゃ……」
『此度の放映をご覧頂けた幸運なる皆様。私、キャスターのサーヴァント、ジル・ド・レェと申します』

ノイズ混じりに、突然ラジオが音を発した。
誰もが動揺する中、1人だけ違った反応を見せた人物がいた。

「あれ、旦那?」
「え?」

龍之介は、旦那=キャスター=ジル・ド・レェということを知らなかった。
キャスター自身が彼に『青髭』と名乗った程度で、その上互いに聖杯戦争に一切興味を示さなかったからだ。

『皆様、各々方の知己朋友の消息を――』

突然プツンと声が途絶え、ラジオはうんともすんとも言わなくなってしまう。

「あれ、壊れちゃった?」
「ちょっと見せて心愛ちゃん。……あー、これ手回しで充電するタイプだ。全く回してないから充電切れたんだよ」

ラジオの側面に付いていたハンドルをしばらく回す。
ある程度充電を終えた頃には、既にキャスターの放送は聞こえなくなっていた。

「終わっちゃったね。何を言ってたんだろ」
「んー……まあいいんじゃない? とりあえず駅までもうすぐだし、早いとこ行っちゃおうか」

そうだねーと返し、2人はその場を後にする。
後ろではやや彼らから少し距離を取りつつ、リタが龍之介を睨み無言で付いて来ていた。

 ✻ ✻ ✻

「どうするの、これ」

駅に着いた一行は、無防備にもベンチで寝ている少女の処遇に困っていた。
死んでいるようではなさそうだが、青いカードも赤いカードも持っていない。
おまけに、靴下が左右で違うという少し変わった風貌。

誰かに襲われ意識を失った後カードを奪われ、犯人は電車で逃走。
駅周辺に見える戦闘の痕跡から、そう考えるのが自然なのだろうが……。
何分この少女、なかなか目覚める気配がないのだ。
無闇に起こすのも悪いと考え、そっとしておくことにする。

「それで、2人はこれからラビットハウスとやらに向かうのよね」
「そうだよ。んじゃ俺ちょいとトイレ行って来るから、電車来たら待ってて」
「……」

ホームを去る龍之介を尻目に、リタは考える。
果たして彼は安全と判断しても良い人間なのか。
先程の出来事から、そうではないとはっきり理解出来た。
彼はキャスター……『ジル・ド・レェ』のことを確かにこう言った。

“旦那”と。

これだけで、危険だと決め付けても何ら問題はないだろう。
200年も生きている(?)と、流石に名前くらいは聞いたことがある。
リタは“ジル・ド・レェ”に関して、悪趣味な魔術を使うことが出来る、程度には把握している。
そのジル・ド・レェと龍之介が、知り合いの関係にある。
これだけでも十分厄介なのに。

「ねえ……心愛って言ったかしら」
「何? リタちゃん」
「あの男、『作品を作って、旦那に見せたい』……そう言ったのよね」
「うん。龍之介さんの旦那って人、呼ばれてたんだね~。作品を見せたいって願ってたみたいだし」

更に厄介なのがそれだ。
彼の支給品までは把握していないが、彼が刃物の類を現地調達していることはリタも知っている。
見る限り木や石を切るといったものではなく、肉を切るのに適している刃渡り。
心愛によると『怪我をした時のため』と言っていたらしいが、どうも信用ならない。
怪我をした、だけなら包帯や薬品などで事足りるではないのだろうか。
一体、何を切るために?

「(こんなこと、想像したくはないんだけどね……)」

彼の言う“作品”の“題材”。
それはもしかしなくても、我々参加者なのではなかろうか。
それも、かなり悪趣味なやり方で。

心愛は底なしの能天気、悪く言えば単純な馬鹿。
ベンチでくたばっているとおぼしき少女に至ってはまだ名前すら聞いていない。
雨生龍之介という男の魔の手から逃れる為には、私がどうにかしなければいけないらしい。

カイザルたちとも合流したいのに、すぐ傍にとんでもない脅威がいる。
今後のことを思うと、思わず頭を抱えたくなるのであった。

 ✻ ✻ ✻

3人から一度離れた龍之介は、改めてそのカードを見る。
他のカードは現状使えないものばかりだったが、そのカード――ブレスレットだけは、非常に価値が高かった。

そのブレスレットは、かつて龍之介がキャスターからプレゼントとして受け取った代物。
これを使って次々と冬木市の子供たちを誘拐、“パーティ”を執り行おうとした。
結局邪魔が入って破壊されてしまったのだが、どういう因果かそれが再び龍之介の手中にある。

カードに書かれた説明を見る限り、当時のそれより大幅に制限は掛けられている。

①:使用者より年齢が下の者にしか通用しない。
②:並行して催眠を掛けられるのは2人まで(ただし使用者より強い魔力で防御される)。
③:対象を夢遊病患者のようにするだけで、意のままに操れるわけではない。
④:洗脳の効果は一度につき2時間程度。
⑤:魔力の消費は少し大きめ。
⑥:ブレスレットが破壊されるとその時点で洗脳効果は切れる。

乱用されないために主催者の設けたパワーバランスなのだろうが、それらの制限があってなお、龍之介にとっては魅力的だった。

心愛、リタ、そしてホームで出会った名も知らない不思議な少女。
彼女たちを連れてラビットハウスへ向かい、“お茶会”を開こう。
やがて心愛の友人なども、その“お茶会”のメンバーに加えよう。
無論作品の延命など課題は幾つも残っているが、その時になってから考えればいい。

キャスターを召喚するまでにも40余名もの人間を殺害して来たが、どれを取っても計画性皆無。
それでも卓越した証拠隠滅、操作撹乱の技術を用いることで、今まで警察の捜査線上に上がったことは一度も無かった。
雨生龍之介とは、そういう男なのだ。

若干気掛かりなのは、携帯ラジオの放送を聞いてからのリタの態度。
何だか自分のことを疑っている、そんな視線だった。
旦那がジル・ド・レェと名乗り、それに対し反応を示したことが原因だろう。
まあでも、いずれそんなことを気にしなくてもいいような状態にすればいいだけだ。
そう結論付け、あくまで一般人の顔を装った殺人鬼はホームへと舞い戻る。

時計を見る限り、もうすぐ定時放送とやらの時間だ。
4人で軽い朝食にするのもいいかも知れない。
もっとも、4人目がいつ起きるかなど分かったものではないが。


【C-6/駅/早朝】
【雨生龍之介@Fate/Zero】
 [状態]:健康、少年のようなワクワク
 [服装]:普段着
 [装備]:手術用のメスやハサミ(現地調達)
 [道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)
     黒カード:不明支給品0~1枚(本人確認済)、ブレスレット@Fate/Zero、医療用具(現地調達)
[思考・行動]
基本方針: 心愛と一緒にラビットハウスを目指して心愛の友達を探す。
   1: 旦那ともいずれ合流し、作品を見てもらいたい。
   2: リタに激しい興味。彼女もいずれ作品とする。
   3: 心愛、心愛の友人、少女(蒔菜)で作品を作り、“お茶会”を開く。
   4: 作品を延命させる方法を探す。
 [備考]
  ※キャスターが龍之介の知る青髭ということに気付きました。
  ※心愛の友人に関する情報を得ました。


【保登心愛@ご注文はうさぎですか?】
 [状態]:足に擦り傷(処置済、軽度)
 [服装]:ラビットハウスの制服
 [装備]:なし
 [道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)
     黒カード:具@のんのんびより、ライター@現実、携帯ラジオ@現実
 [思考・行動]
基本方針:龍之介たちと一緒にラビットハウスを目指して友達を探す。
   1:怖いけどお姉ちゃんとして頑張る。
   2:リタちゃんは不思議ちゃんなんだね~。
   3:この子(蒔菜)何があったんだろ?


【リタ@神撃のバハムートGENESIS】
 [状態]:健康
 [装備]:アスティオン@魔法少女リリカルなのはvivid
 [道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)
    黒カード:不明支給品0~2枚(本人確認済)
 [思考・行動]
基本方針:カイザルとファバロの保護。もしカイザル達がカードに閉じ込められたなら、『どんな手段を使おうとも』カードから解放する
   0:とりあえずはラビットハウスへの道のりに同行しつつ、人探しを並行させる
   1:カイザル達の捜索。優先順位はカイザル>ファバロ
   2:繭という少女の持つ力について調べる。本当に願いは叶うのか、カードにされた人間は解放できるのかを把握したい
   3:アザゼルは警戒。ラヴァレイも油断ならない。
   4:龍之介を警戒。心愛たちを彼から逃がしたい。
 [備考]
 ※参戦時期は10話でアナティ城を脱出した後。
 ※心愛の友人に関する情報を得ました。


【入巣蒔菜@グリザイアの果実】
[状態]:健康 睡眠中
[服装]:制服
[装備]:ヤブイヌのポーチ@グリザイアの果実
[道具]:腕輪と白カード。
[思考・行動]
基本方針:帰る。
0:……zzz
[備考]
※参戦時期はアニメ終了後。
※ルールを聞いたのは白のカードの説明までです。ですが、それもうろ覚えです。
※赤、青、黒、のカードは流子に渡りました。
※名簿は見ていません。

【支給品説明】

【ライター@現実】
保登心愛に支給。一般的なジッポライター。

【携帯ラジオ@現実】
保登心愛に支給。充電は手回し式で、回しておかないと割とすぐに電池が切れる。
放送を受信する以外の用途は今のところ不明。

【ブレスレット@Fate/Zero】
雨生龍之介に支給。
アニメ1期10話で出てきたもので、龍之介はこれを使って子供を何人も洗脳、誘拐した。
洗脳を受けた対象はぼーっとした状態になり、その間の記憶は一切残らない。
また、洗脳されていても対象が使用者に声を掛けられれば付いて行く。

このロワでは以下の制限が掛けられている。
①:使用者より年齢が下の者にしか通用しない。
②:並行して催眠を掛けられるのは2人まで(ただし使用者より強い魔力で防御される)。
③:対象を夢遊病患者のようにするだけで、意のままに操れるわけではない。
④:洗脳の効果は一度につき2時間程度。
⑤:魔力の消費は少し大きめ。
⑥:ブレスレットが破壊されるとその時点で効果は切れる。


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043:薄氷の殺人 雨生龍之介 103:狂気の行方
043:薄氷の殺人 保登心愛 103:狂気の行方
043:薄氷の殺人 リタ 103:狂気の行方
042:神威純潔(かむいじゅんけつ) 入巣蒔菜 103:狂気の行方