ひと目で、尋常でないツッコミだと見抜いたよ ◆DGGi/wycYo
窓に映る月と星々。だが、それに対して感傷に浸る余裕は全くなかった。
とんでもないことに巻き込まれてしまった。
最初に土方十四郎が抱いた感情は至極まっとうなものである。
目が覚めたら知らない場所。突然言い渡された「殺し合い」。
気がついたらここはやけに馬鹿でかい建物の中の一室。
部屋を出ると、『音ノ木坂学院文化祭のお知らせ』とか様々な掲示物が壁沿いに貼られている。学院、ということは学び舎なのだろう。
今自分が置かれている現状が悪い夢だ、という考えはとうに捨てた。
右手首に巻かれている腕輪が、夢ではないという現実を嫌と言うほど見せ付けてくる。
自分は真選組、いわば警察だ。
参加者を殺して生き残るだなんてふざけた話、飲み込むつもりはない。
無論防衛となれば殺すのも已む無しと考えている。
だが、アーミラとかいうのが殺され、カードに吸い込まれた――あれを見る限り、この空間では常識は通用しないと考えていい。
幾ら何度も修羅場を掻い潜ってきた土方といえど、ここまで酷いものはなかったと溜息をつく。
ざっと名簿を確認する限り、坂田銀時をはじめとした知り合いが何人かいる。
と、同時に。
「あいつもか・・・・・・」
少なくとも十四郎にとって一番の頭痛の種は、神威の存在。
彼は自分の知る限りでは一番の危険人物。
好戦的な彼は、ひとたびスイッチが入れば周りの者を次々殺してゆくだろう。
ここが殺し合いの場だというのなら尚更だ。
とにかくこういう時に必要なのは仲間だ。
神威のような者もこの殺し合いに参加しているということは、もしかしたら他にも異様な強さを持った者が参加していてもおかしくはない。
だが、グループを組めば話は変わる。
いつも吸っている煙草が見当たらないことに不満を覚えつつ、とりあえず道具を確かめる。確か黒い「ランダムカード」に入ってる筈・・・・・・。
「何だこれは・・・・・・」
――出てきたのは、どうみても何の変哲もない、着物を着た人形だった。
カードを腕輪から抜くと、人形が消えると同時に名前が浮かび上がってきた。
こまぐるみ(お正月バージョン)・・・・・・。
「何でこんなものあるんだオイ! どう考えても殺し合いと全く関係ないぞ!?
何か仕込んでる様子も全くないし、完全にハズレ引いちまったじゃねーか!」
カードを思わず地面に叩き付ける。これはあまりにも幸先が悪い。
「しかもお正月バージョンって何!? もう年あけてからだいぶ経ってるし!?
全くめでたくねーよこんなもの!」
ニコチン切れもあって八つ当たりが激しくなっているが、だからといって現状が解決するわけでもない。
一応カードは拾っておき、次のカードを確認する。
残りが武器でなかったらどうしようか。
武器を持った参加者と合流出来るという保障はどこにもない。最悪ただの足手まといになる可能性も否めない。
可能なら扱い慣れている刀剣類であって欲しいと2枚目を出したのと、廊下の方から「あら?」と声を掛けられたのはほぼ同時だった。
「てめーは・・・・・・?」
十四郎が振り向くと、先ほどまで居た教室とは別の教室から1人の少女が出てきた。
黒髪で、白い花の髪飾りをしている。
身長は低く、知り合いの中だと志村新八あたりと同年代だろうか。
「最初に聞く。てめーは殺し合いに乗っているか否か」
返答次第では即座に武器を取り出すつもりで尋ねる。
「大丈夫よ。そんなことよりあなたは? 私は宇治松千夜」
「土方十四郎・・・・・・」
互いに軽く自己紹介を済ませ、しばらく顔を見合わせて様子を伺う。
数十秒の沈黙が過ぎ、千夜が口を開いた。
「・・・・・・あなたはどうするの?」
「こんなふざけた遊戯をとっとと終わらせる。
誰かに攻撃されれば反撃はするが、こっちから殺して回る気は今んとこねーよ」
「そう、それなら良かったわ。あなた、面白そうな人だし」
「なんだと小娘が!」
ふふ、と微笑む千夜を生意気な野郎だと思いつつも、ひとまず安心出来る人間と出会えたのは幸いとしておこう。
そこで彼女に話を持ちかけた。
「てめー、俺と一緒に来る気、あるか?」
え? と返す千夜に、こう続ける。
「一応元居た場所じゃあ俺は警察やってたんでね・・・・・・
お嬢さんの護衛くらいなら、引き受けてやるよ。
それに、仲間ってのは多い方がいいもんだ」
「あら嬉しい。私も会いたい人がいるし・・・・・・。
それじゃお願いしますね~、ドシロートさん」
「十四郎だ馬鹿! せめて土方と呼べ! 一発ぶん殴ってやろうか・・・・・・」
痛いのは嫌よ~ とにこやかに返す千夜。
ともかく、まずはいざと言う時に素早く動けるようにこの建物を出よう。
屋上があるのならそこでもいいのだが、今はまだのんびりしていられない。
支給品の確認は、その後でもいいだろう。
✻ ✻ ✻
宇治松千夜のゲーム開始地点は、土方のスタート地点から2つ隣の教室。
制服を着ていたことから、授業中に寝てしまってそのままこんな夜中になったのかと錯覚した。
だが通っている高校とは明らかに違う風景が、そうではないと教えてくれた。
手元にあった黒いカードの中身を取り出してみると、出てきたのは拳銃。
カードには「ベレッタ92及び予備弾倉」と浮かび上がる。
・・・・・・千夜の顔はこれを見るなり青ざめ、即座にカードの中にしまった。
友人である天々座理世のコレクションのモデルガンの1つだと決め付け、あくまでこれが本物の銃であることを認めなかった。
認めてしまえば、この殺し合いが夢やタチの悪いドッキリではないという、『現実』であるということを許してしまうから。
名簿には、千夜以外にも保登心愛たち4人の知り合いが載っている。
どんなに頑張っても、5人のうち4人は確実に死ぬ。
そんなことを、認めたくはなかった。
ふと、廊下の方から聞こえてきた誰かがツッコミを入れる声。
彼女は普段から色んな形でボケては誰かにツッコミを入れてもらい、それを日常風景の1つとしている。
廊下に出て出会った土方十四郎のツッコミはかなり鋭く、割とすんなり打ち解けることも出来た。
名簿にあった見知った名前、友人の持ち物、そしてツッコミを入れてくれる人。
これらの要因が、彼女に現実逃避への一歩を踏み出させてしまったのである。
これは何かの間違いだ、朝にもなれば元の生活に戻れる、と。
宇治松千夜は、殺し合いという現実を直視していない。
それがどんな運命を招くかなど、微塵にも考えようとはしなかった。
【A-2/音ノ木坂学院/深夜】
【土方十四郎@銀魂】
[状態]:健康、煙草がないことに若干の苛立ち
[服装]:真選組の制服
[装備]:なし
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)
黒カード:こまぐるみ(お正月ver)@のんのんびより
黒カード:不明支給品1~2枚
[思考・行動]
基本方針: ゲームからの脱出
1: 千夜の護衛をしつつ、更に仲間を集める
2: 神威には警戒
【宇治松千夜@ご注文はうさぎですか?】
[状態]:健康、現実逃避
[服装]:高校の制服
[装備]:なし
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)
黒カード:ベレッタ92及び予備弾倉@現実
黒カード:不明支給品0~2枚
[思考・行動]
基本方針: 土方と共に行動、心愛たちに会いたい
1: 十四郎さんって面白い人ね~♪
2: これは夢か何かの間違いだ
[備考]:ベレッタを天々座理世のコレクションのモデルガンだと思い込んでいます。
支給品説明
【こまぐるみ(お正月バージョン)@のんのんびより】
参加者の1人である一条蛍が、越谷小鞠を模して作った人形・・・・・・のお正月バージョン。
【ベレッタ92及び予備弾倉@現実】
世界中の警察や軍隊で幅広く使われている拳銃。支給された予備弾倉は3つ。
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最終更新:2015年11月08日 12:22