Strange Fake ◆zUZG30lVjY

午前四時。最初の放送まで残すところ二時間。
生き残り達がいよいよ神経を尖らせるであろう時間帯。
様々な偶然が重なり合った結果、生き残りの殆は島の西部から離れ、中央から東部にかけて散らばっている。
無論、それにも例外はある。
E-1エリア東端、放送局。深夜以来、電灯一つ点いていなかったその施設の一角に、今は煌々と明かりが灯っていた。
建造目的上、放送局には番組収録のために用いられるスタジオが幾つか設けられている。
その一つ――恐らくはニュース番組のセットが残されたままのスタジオが、複数の照明によって眩く照らされていた。

「此度の放映をご覧頂けた幸運なる皆様。私、キャスターのサーヴァント、ジル・ド・レェと申します」

長身を豪奢な長衣で包んだ魔術師が丁寧に一礼する。
近代的なニューススタジオにはまるで似つかわしくない装いだが、当の本人は何一つ気にかけている様子がない。

「皆様、各々方の知己朋友の消息を案じ気が気でないことでしょう。
 一体どこにいるのか、今も健在なのか、確かめたくて仕方がないことでしょう」

キャスターは身振りを交え、演説でもするかのように語り続ける。
誰一人それを見ることなく終わるかもしれないというのに。

「ささやかながら、私がお手伝いを致しましょう」


  □  □  □


時は遡り、黎明。
ヴァローナはE-3の路端で自らに与えられた装備を再度検めていた。
黒のカードに収められていたものは、カードデッキの他には水晶球が一つとカードキーが一枚。
カードキーの方は詳細不明。どこで使うものなのかも記されていない。
効果欄にも『詳細は第二回放送後に表示されます』とだけ記されている。

「(今は無用の長物。けれど無価値ではない)」

わざわざこんな仕掛けを施しているということは、カードキーを使用した先の『何か』には、それ相応の価値があると考えるべきだ。
強力な装備の隠し場所か、圧倒的優位を得られる設備か、あるいは何らかの特典を得られる権利か。
無論、期待させるだけ期待させておいて落胆させるトラップの可能性もある。
しかしそれを考慮した上でも価値あるアイテムだと言えるだろう。

『もうひとつの支給品、ただのインテリアじゃなかったみたいだね』
「流石に想定外です」

ヴァローナは水晶球を覗き込んだ。
緑子がインテリアと称したのは言い得て妙で、見た目は占い師の小道具と大差ないように思える。
普通なら向こう側が透けて見えるだけのはずだが、この水晶はそうではなかった。
解説に記されていたとおりに念じることで、望んだ場所の風景が水晶球の中に浮かび上がるのだ。
どのような仕組みなのかは分からないが凄まじい機能である。
戦いの場において相手を一方的に捕捉することの有利さは周知の事実。
積極的に攻勢に出る場合でも、遭遇戦を避け体力を温存したい場合でも役に立つことは間違いない。

だが、何度か試しに使ってみるうちに、いくつかの欠陥らしきものも分かってきた。
第一に、有効距離がさほど広くない。エリア1つ分の面積は期待していたが、どうもそれより狭い領域しかカバーできないようだ。
第二に、望みどおりの位置を表示するのがなかなか難しい。こればかりは慣れの問題かもしれないが。
第三に、すべすべとした球状であるため持ち運びにくく、移動しながら使うのが至難の業。
結論を言うと、有用ではあるものの万能には程遠く、頼り過ぎるわけにはいかない代物だということだ。

習熟訓練を兼ねて、ヴァローナは東西にまっすぐ伸びる道路に沿って遠見を続けてみることにした。
ここから東、水晶球が映し出せる距離ギリギリの風景――

「…………」

――人影。
E-2エリアの方からこちらへ向かってくる何者かの姿が見える。
奇妙な風体の男……まるでファンタジー小説から抜け出してきた悪の魔法使いのようだ。
異形の怪物じみたローブにすっぽりと身を包み、両腕と顔は幽鬼の如き青白さ。
今にも眼窩からこぼれ落ちそうな眼球は明らかに焦点が定まっていない。

――アレは本当に人間なのか?

最初に抱いた正直な感想がそれだった。
喩えるなら二足歩行を習得したカエルかイモリ。
もしくは生まれる場所を間違えた深海魚か何かとしか思えなかった。
仮に、ヴァローナに空想怪奇小説を嗜む趣味があったなら、男の容貌を一言で言い表す適切な語を知っていただろう。
書に曰く――インスマス面、と。

『なんというか、その、すごい特徴的?』

緑子の言葉を選びに選んだ表現への返事を考えていると、水晶球の向こうで異変が起こった。
男が不意に立ち止まったかと思うと、何もないはずの虚空を見上げ"こちらに向かって"微笑んだのだ。

「……っ!」

ヴァローナはすぐさま水晶球を黒のカードに戻し、デッキを片手に握って身構えた。
迂闊だった。一方的に相手を観察できるものだとばかり思い込んで、あちらからも認識される可能性を失念していた。
最初からそういう仕組みの道具だったのか、それともあの男が特別なのかは分からないし、今はどうでもいい。
きっとあの男はこちらへやって来ることだろう。
原因を探るよりも、まずは未確認の脅威に対処する方が先決だ。

「……」
『……』

不気味なほどの静けさが耳を打つ。

「…………」
『…………』

気を張り詰めさせたまま、数分が経過した。
こちらへ駆けつけて来ているならとうに到着しているはずの頃合いだ。

「………………」
『………………もしかして、帰っちゃった?』

緑子が不安そうに呟いた矢先、夜闇を割って異形のシルエットが姿を現した。
その姿を見てヴァローナは合点がいった。この男、悠長に"歩いて"来ていたのだ。
水晶球越しでも長身だと感じていたが、肉眼でみると妙な威圧感すら感じてしまう。
背丈は目算で190cm半ばから後半。巨漢だと思えないのは、やつれているように見える顔立ちのせいか。
枯れ果て、腐りかけた巨木が分厚いローブを羽織って歩き回っているかのような印象を受ける。
樹木の"うろ"のような眼窩に嵌まった眼球が、ぎょろりとヴァローナを捉える。

「来るか」

ヴァローナが一か八かの先制攻撃に思い至った瞬間、飛び出したままの男の眼球が瞼に覆われた。
笑ったのだ。まばたきをするカメレオンのように。

「こんばんは、お嬢さん方」

男の第一声は、予想外にも柔らかな声色の挨拶だった。
それでもヴァローナは一切警戒を緩めない。

「(……緑子に気付いている)」

やはりこの男は特別な何かを持っている。
水晶球越しにこちらを見たのは奴自身の能力によるもののようだ。
男はヴァローナの警戒心を意に介さず、社交界で挨拶を交わすかのような態度で言葉を続ける。

「何者ですか」
「これは失礼。私、ジル・ド・レェと申します。名簿には仮の名である"キャスター"と記されているかと」
「ジル・ド・レェ……それも偽名であると推察可能です。正式な個人名を開示しないのであれば、敵対者と判断します」
「偽名……はて」

ジル・ド・レェ男爵。世界史においてあまりにも有名な男の名。
そんな名を名乗られてすんなりと本名だと信じられるほど、ヴァローナは素直ではなかった。
名簿に『ジャンヌ・ダルク』の名があることも彼女の認識を後押しした。

"この男と自称ジャンヌ・ダルクは互いに関連性のある偽名を名乗っているのではないか"

十五世紀の人間が目の前にいると考えるよりもずっと、そちらの方が現実味がある。
そもそも、ヴァローナの頭の中には前者の考えは最初から存在していない。
運の悪いことに、ヴァローナはこれまで自分以外の参加者と遭遇していなかった。
緑子のような非現実的存在は認知していても、時代区分としてはどちらも"現代"の存在。
"過去"からの来訪者など妄想に浮かぶ余地すらない。

「困りましたね……ふむ、それでしたら、ジル・ド・モンモランシ=ラヴァルと名乗りましょう」

馬鹿正直に名前を言い直したのを見て、ヴァローナはひとまず臨戦態勢を解いた。
こちらの条件を飲む用意があり、長身ではあるものの強いようには思えないとくれば、これ以上臨戦態勢を続ける意味はなかった。
とはいえ、ヴァローナは男の名乗りを信じたわけではない。むしろ下手な嘘を重ねたことに呆れ返ってすらいた。
何故なら、ジル・ド・モンモランシ=ラヴァルとは他でもないジル・ド・レェ男爵の本名であるからだ。
レェ――Raisとは彼の領地の名。ジル・ド・レェとは『Rais領のジル』を意味する。
つまり、目の前の男がジル・ド・レェ男爵を自称していることには何の変わりもなかったのだ。
ヴァローナは男の名前と素性についてこれ以上問うのを止めることにした。パラノイアの妄想を否定しても面倒なだけだ。

「……キャスター。非攻撃的態度での接近の理由を問います。要求は"水晶"ですか」
「これはこれは。聡明なお嬢さんだ」

簡単な推理である。
敵とも味方とも中立とも分からない相手に監視されていると気付きながら、キャスターは焦ることなくのんびりとやってきた。
敵対の意志があろうとなかろうと会いに行くことに変わりはない――
即ち、キャスターにとってこちらのスタンスはどうでもいい事柄に過ぎないということ。
ここから考えられるパターンは「スタンスに関係なく殺すつもり」か「スタンスとは無関係な交渉を持ち込むつもり」のどちらかだ。

隙だらけの姿を晒し続けている点から前者の可能性は低い。
となると、可能性が高いのは後者。交渉のためにやってきたというパターン。

では、キャスターがこちらに持ち掛けてくるであろう交渉とは何か。
キャスターに漏れていたヴァローナの情報は、何らかの手段で遠くのキャスターを観察していたというただ一点のみ。
そしてあっという間に観察を看破したことから、キャスターがこの観察手段に対する事前知識を持っていたことが伺える。
以上を踏まえて考えれば、キャスターは遠隔監視装置が使用されていることに気付き、その持ち主のところへ交渉にやってきただけなのだろう。
交渉の対象は改めて考えるまでもない。

「私は"捜し物"と"尋ね人"を求めて島を彷徨っております。遠見の水晶が得られれば何よりの助けとなるでしょう」
『ど、どうする?』
「交渉材料次第では考慮。無償譲渡を望むなら遠慮を」
「もちろん存じておりますとも。これは如何でしょう。貴女が必要としているものだと思いますが……?」

キャスターが懐から機械的な短い棒を取り出す。
次の瞬間、その棒から眩い光が伸びて刃のような形を取った。

『うわっ!?』

キャスターはゆったりとした動きで手近な木に近付くと、光の剣を軽く振った。
まるで鉈を振って枝を落とすような気軽さで、まぎれもない成木の幹が両断される。
スローモーションのように倒れていく木に背を向けて、キャスターは光の刃を消した。

「如何です? 良い武器でしょう」
「……私がそれを必要としていると推測した根拠は?」
「武器があるのなら、私が現れた時に構えているのでは?」

ヴァローナはしばし思案した。
確かに武器は欲しい。優先順位は索敵専用アイテムよりも上だ。
けれど、本当に一対一の物々交換で終わるのだろうか。
いくら人と物を探すことが目的とはいえ、キャスターにとっても武器は重要なはず。
一方、水晶球は便利なように思えて不便な点も多い代物だ。
水晶球による遠見を知っているのなら、その欠陥も重々承知しているに決まっている。
それらをこちらに有利な条件で交換したことを"貸し"としてくる可能性はないか。
ヴァローナが迷っていることに気付いたのか、キャスターはすっと指を一本上げながら口を開いた。

「実はもうひとつ、貴女に頼みたいことがあるのです」
「……言って」
「もしかしたら、貴女にも大いに利益があるお話かもしれませんが……」


  □  □  □


ヴァローナとキャスターの邂逅から、時間は更に遡る。

希とジャックが飛行宝具で飛び去った後、地上に残されたキャスターは南下を続け、E-1エリアの放送局を訪れていた。
サーヴァントは現代に関するある程度の知識を与えられた上で現界する。
当然ながら"放送"という概念や"放送局"という施設の役割も把握している。
放送局に足を踏み入れたのも偶然ではなく、その知識を元に『ある計略』を思いついたからだ。
キャスターは精神が錯乱し他者との意思疎通に支障を来しているが、バーサーカーのように知性まで手放しているわけではない。
官憲の目を欺いて子供達を拉致する手腕といい、セイバーを城からおびき出した策略といい、正気だった頃の頭脳の名残りはそこかしこに表れている。
意思疎通という点においても、怯える子供を心から安堵させられる――絶望の落差を強めるためだが――くらいには、本性を偽ることも可能だ。

「ふむ……ふむ……」

長身を屈め、殺し合いの参加者向けに用意されていた資料をめくる。
資料に書かれていることが本当なら、ここの放送設備を使えば島内全域に映像や音声を送ることができる。
主催者の意図は明快だ。これを使って人を集め、殺し合いを加速させろというのだろう。
放送先は各施設や市街地に設置されたテレビ受信機と一部の支給品に限定されるが、その効力は決して小さくあるまい。

「やはり、共犯者は必要ですか」

キャスターは現時点でこの設備を利用することは不可能と結論を下した。
サーヴァントに与えられた知識は万能ではない。
いくらマニュアルが用意されているとはいえ、複数の放送機器を操って全域放送を実行できる保証がないことは、錯乱した頭でも簡単に理解できた。
故に、共犯者が必要だ。機械の取り扱いに慣れた現代人の共犯者が。
龍之介と合流できればそれに越したことはないが、主催者の残したマニュアル通りに機械を動かせる知性があるなら誰でもいい。

「急がなければなりませんね。せっかくの仕込みが台無しになってしまう前に」


  □  □  □


――そして、現在。



「此度の放映をご覧頂けた幸運なる皆様。私、キャスターのサーヴァント、ジル・ド・レェと申します」

「皆様、各々方の知己朋友の消息を案じ気が気でないことでしょう。
 一体どこにいるのか、今も健在なのか、確かめたくて仕方がないことでしょう」

「ささやかながら、私がお手伝いを致しましょう」



ヴァローナが操作するテレビカメラを前に、キャスターは大仰な身振りで語り続ける。
ここで録画された映像は、ヴァローナの手で速やかに全域放送される手筈になっている。
編集設備も用意されていたが、この映像はどうしても第一回の放送の前に流さなければならなかったので、時間短縮のために無加工での放映と相成った。

「さぁみんな、入っておいで」

キャスターはみなし児をあやす聖職者のような声色で、セットの袖に待機していた"少女達"を招き、予め用意しておいた椅子に座らせた。
顔全体を布で包み隠した、本能字学園の制服を着た小柄な少女――満艦飾マコ。
過剰なまでに豊満な胸元に布を巻いた、巫女服姿の少女――神代小蒔。
首周りを布できつく固定した、音ノ木坂学院の制服を纏う――南ことり。
絶命して間もない彼女達は、ゾンビでありながら破損箇所を隠せば生者と誤認しかねない程度の美観を保っていた。
無論、死体であると理解していれば死体以外の何物にも見えない。
しかしセット脇から自ら歩いてきたシーンを見せられたなら、リビングデッドの実在を知る者以外は簡単に騙されることだろう。
そしてひとたび信じてしまえば、第三者から「あれは動く死体だ」と教えられたところで、生存を信じる心が決して受け入れはしないはずだ。

「不肖ジル・ド・レェ、僭越ながらこの可憐な少女達を保護させて頂いております。
 ご友人の方々は是非とも放送局までお越し下さい。彼女達もきっと喜ぶことでしょう」


  □  □  □


『あの子たち、大丈夫かな』
「分からない」

録画した映像の放映を済ませ、ヴァローナは一旦放送局を後にした。
放送機器のタイマー機能を設定してあるので、主催者による一回目の放送が始まるまでに、同じ映像が自動的に数回放映されるはずだ。
この映像を見た者の何割かは取る物も取り敢えず放送局へ駆けつけることだろう。
ヴァローナの狙いはその参加者だ。
無関係の第三者を装って接近するも良し、脅して武器を奪うも良し、強者を探して刃を交えるも良し。
実のところ、キャスターの提案を承諾するに至った理由の大部分がこれだった。
キャスターは放送局に人を集めて"捜し物"と"尋ね人"が現れることを期待し。
ヴァローナはそれに便乗して武器の確保と強者との戦いを実現する。
利害一致という言葉がこれほど似合う状況はそう多くはない。

『あんな酷い怪我……ちゃんと手当しないと大変だよね』
「…………」

緑子の心配そうな声が、撮影中の"少女達"の様子を思い出させる。
キャスターとヴァローナの関係は同盟ですらない一時的協力に過ぎない。
なので、少女達に一体何があったのか、そもそも彼女達は何者なのかという事情にも踏み込まなかった。
その判断が正しかったのか疑問に思わない、と言えば嘘になる。
重傷を負った少女が、呻き声一つ漏らすことなく、死人のような足取りで歩いているのを目の当たりにしたのだ。
疑問であれ哀れみであれ、何も感情を動かされない者がいるなら、それはもはや人間とは言いがたい。

「……ジル・ド・レェ」

今更ながら、その露骨過ぎる偽名が気にかかる。
ジル・ド・レェは少年への残虐極まりない行為で悪名を残した。
よもや、あの少女達の傷はキャスター自身が――

「…………」

ヴァローナは頭に浮かんだ考えを振り払うように軽く首を振った。
仮にそうだったとして、今更どうなるというのだ。
そもそも、キャスターの目的は"捜し物"と"尋ね人"を見つけ出すこと。
目的達成の過程において、少女達を痛めつける意味などない。
本当に彼が少女達を傷つけたのだとしたら、それは純然たる趣味嗜好に他ならないと言わざるをえない。
――それではまるで、本物のジル・ド・レェ伯ではないか――


  □  □  □


キャスターことジル・ド・レェに対するヴァローナの推察は、二つの大きな誤りを含んでいた。
確かにキャスターは捜し物こと宝具『螺湮城教本(プレラーティーズ・スペルブック)』と、尋ね人ことジャンヌ・ダルク――と彼が信ずるセイバーを求めている。
だが、それが『目的』ではなく『手段』に過ぎないことに、ヴァローナは遂に気付くことができなかった。
どれほど豊富な知識を湛えていようと、汚染された精神と意思疎通を果たすことなど到底不可能だったのだ。
キャスターの真の『目的』はただ一つ。
この地に招き寄せられる前も、それ以降も変わりなく。

「ああ、ジャンヌよ。貴女に捧ぐ涜神の舞台が整いました!」

ヴァローナの去った放送局の一室で、キャスターは狂ったように宣誓した。
彼を囲むのは五体のゾンビ。三体の少女に加え、墓場で選別した体格の良いゾンビが二体。
最大五体という縛りの中で最大の"絶望(せいか)"を得られるよう考えられた組み合わせだ。

「これより繰り広げられる絶望を! 哀れなる者達を救えぬ神の無力を! 神を恨み憎む嘆きの音色を! どうかご笑覧あれ!」

狂乱するキャスターの手の内で遠見の水晶球が怪しい光を帯びる。
その透明な立体スクリーンは、ヴァローナが用いたときよりも遥かに広く繊細な風景を映し出していた。
ヴァローナの推察のもう一つの誤り。それはキャスターが扱う遠見の水晶球の効力を過小評価したこと。
例えば、銃を支給された者がいるとしよう。
銃そのものの性能は誰が使っても変わらないが、素人が扱えば命中率は激減し、武器としての性能を発揮できない。
逆に玄人が扱えば、素人とは比べ物にならないほどに、銃の性能を引き出すことができるだろう。
遠見の水晶球でも同じ現象が起きていた。
魔術を知らず、扱う術も身につけていないヴァローナが使った場合と、曲がりなりにも魔術師(キャスター)であるジル・ド・レェが使った場合。
後者が前者よりも強力に性能を引き出せるのは当然の理だ。

「さぁジャンヌ! 今こそ知らしめて差し上げよう! 哀れなる子羊達の祈りも! 嘆きも! 決して神には届き得ぬことを!」

真の意味での恐怖とは、静的な状態ではなく変化の動態――希望が絶望へと切り替わる、その瞬間のことを言う。
かつてキャスターが龍之介に語った言葉だ。此度の仕込みもまた然り。
今、キャスターは島全域に「三人の生存」という希望をばら撒いた。
その希望が絶望へと切り替わる仕掛けは、キャスターが介入するまでもなく既に済んでいる。
朝を迎える前に辿り着いてゾンビと化した少女と対面するか。朝の放送を迎えて少女の死を知るか。
生きていたという希望が虚構であったと知る絶望。
明確な所在地を知りながら間に合わなかったと思い込む絶望。
その瑞々しい味を湛えたまま贄にできればどれほど良いことか。

聖なる怪物――その"顎門(あぎと)"ゆっくりと開いていく。哀れな贄を喰らうがために。



【E-1/放送局近辺/一日目 早朝】
 【ヴァローナ@デュラララ!!】
 [状態]:健康、『アーツ 奇々怪々』により若干だが身体能力上昇中
 [服装]:白のライダースーツ
 [装備]:ビームサーベル@銀魂、手に緑子のカードデッキ
 [道具]:腕輪と白カード、赤カード(9/10)、青カード(9/10)
     黒カード:グリーンワナ(緑子のカードデッキ)@selector infected WIXOSS、カードキー(詳細不明)
 [思考・行動]
基本方針: 武器を集めた後、強者と戦いながら生き残りを目指す。優勝とかは深く考えない。
   1: 放送局の周辺で他の参加者を待ち受ける。
   2: 強そうな参加者がいれば戦って倒したい。特に静雄や黒ヘルメット(セルティ)。
   3: 弱者はなるべく手を掛けたくない。
 [備考]
※参戦時期はデュラララ!!×2 承 12話で静雄をナイフで刺す直前です。



【E-1/放送局/一日目 早朝】
【キャスター@Fate/Zero】
[状態]:健康、魔力300%チャージ
[装備]:リタの魔導書@神撃のバハムート GENESIS、神代小蒔、南ことり、満艦飾マコのゾンビ
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)
     黒カード:生命繊維の糸束@キルラキル、遠見の水晶球@Fate/Zero
[思考・行動]
基本方針:ジャンヌ・ダルクと再会する。
1:放送局で宝具を持つ参加者とジャンヌを待ち受ける
2:名簿にはセイバー以外にもジャンヌの名がある……?
[備考]
※参戦時期はアインツベルン城でセイバー、ランサーと戦った後。
※ジャック・ハンマーをバーサーカーかあるいは他のサーヴァントかと疑っています。
※神代小蒔、南ことり、満艦飾マコの遺体をゾンビ化しました。



【遠見の水晶球@Fate/Zero】
ヴァローナに支給。
千里眼の機能を持つ(もしくは千里眼の魔術の媒体?)水晶球。水晶に遠くの映像が映る。
劇中ではキャスター所有のものとアイリスフィール(未参戦)所有のものが存在する。
アイリスフィールはこれを用いて2.5km以上先の光景を観測していた。
支給品としては、最大でエリア1つ分の範囲から任意のポイントの風景を観測可能。
(同じエリア内という意味ではなく、使用者を中心としてその程度の広さが効果範囲)
使用者が不慣れな場合は精度が落ちたりコントロールが上手くいかなかったりする。


【カードキー(詳細不明)】
ヴァローナに支給。
黒のカードの効果欄には『詳細は第二回放送後に表示されます』とだけ記されている。



【テレビ放送について】
放送局から送信された映像は各施設や市街地に設置されたテレビ受信機に映される。
また、携帯テレビやそれに類する支給品が存在する場合、それらも対象となる。
キャスターの映像は、午前四時から六時にかけて(=早朝の時間区分の間)定期的に繰り返し放送される予定。
各キャラクターが映像を見たか、たまたまテレビの近くにおらず見過ごしたかの判断は以降の書き手に一任。


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048:交わらなかった線 ヴァローナ 061:領主さまが見てる(?)
041:LOVELESS WORLD キャスター 110:前哨戦