交わらなかった線 ◆WqZH3L6gH6


 掬いあげた土塊が宮永咲の遺体の上に被せられる。
 青のカードから出したペットボトルの水で汚れた両手を洗浄する。
 そして中肉中背の童顔の少女 小湊るう子は両手を合わせ咲の冥福を祈った。
 遺体に土を被せ、両手を合わせるだけの簡単な弔い。
 心の片隅には近くにいるかも知れない殺人者からさっさと逃げるべきだという危機感はあったが
 それでも命の恩人である咲の弔いだけはやっておきたかった欲求が勝った。
 いま彼女の横には黒い乗り物が止まっている。所持した黒のカードから出した支給品であった。
 埋葬中に危険人物が来なかった1つの幸運にるう子は安堵する。
 埋葬を最後まで済ませることができたのだから。これからはこういう事さえ行う余裕はないかも知れない。
 それだけにその数分の余裕は心にしみた。
 亡き咲に対し感謝の意を伝えようとした瞬間、、風が吹いたような音をるう子聴いた。
 るう子は口をつぐみ、感覚を研ぎ澄ませ、不吉さのようなものを感じ取ると乗り物に手を触れる――。

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 俊敏で規則正しい動きで、金髪の白いライダースーツの女は神社へ足を運んだ。
 そして時折思い出すように定期的に右手で手刀を作り横にあるいは縦に振る。
 その動きは人に当たれば相応のダメージを与えると思える迫力があった。

――……うん確認

 彼女の表情は変わらず、代わりに眼差しは機嫌よく輝いた。左手にはカードの束が握られている
 カードの束を手にする前と後とではキレが……格段にとまでは言わないが、良くはなっていた。
 あの小人が言った通りである。劇的な上昇とまでは言えないがほぼノーリスクでこの変化は大きい。
 移動速度も上昇しているような気さえする。支給品に武器はなかったが超常の力を持つアイテムを入手できたことに
 女――通称ヴァローナは静かに感激していた。

 彼女の目的は参加者と接触し、敵意がなければ情報収集と支給品確認。
 もし開示を拒み、それでいて有用な支給品を持っていれば強奪する腹積もりだった。
 敵意があれば、素手で太刀打ちできそうなら戦闘する事もやぶさかではない。
 その過程で相手が死んでしまっても強ければ構わない。

 そう彼女はどちらかと言えばゲームに乗り気だった。
 ヴァローナは殺人快楽者ではない。
 人を倒すことも殺すことも好きではなく、脆くないと認識出来るだけの強者を探し、打ち倒すのが彼女の最大の欲望であった。
 彼女は確認したいだけだ、自らも含め人間は脆いのかどうかを。
 そうし続けることで渇きとも言える心地悪い違和感が和らぐような気がするから。
 その欲求ゆえに、そして父親がギャングである出自ゆえに彼女は幼い頃から殺し屋紛いの仕事に携わって来た彼女に、
 今参加させられているゲームに対する強い忌避感など抱くはずはなかった。
 仕事の関係上敵対した静雄達との戦いの最中に攫われ、非戦闘員としか思えない子供を含めた殺人ゲームの強要をする繭に怒りはある。
 弱者をなぶったり、壊したりするのはどうしても気が進まないから。
 だが驚嘆すら覚える超常を見せつけた繭に対し、歯向かう気までは今のヴァローナにはない。


「っ!?」


 微かだが、エンジン音らしきものが聞こえ、何かが押しつぶされるような音も聞こえた。
 ヴァローナは足を早めた。

 森を抜け、彼女は神社の前に立った。
 そこにはタイヤ跡や不自然な土の盛り上がりがあった。参加者の姿はない。
 タイヤ跡をたどり、先の森の荒れた茂みの方へ入ったが、参加者の姿は見当たらなかった。
 確認できたタイヤ跡からバイクで立ち去ったと推測、追跡した所で追いつけそうにない。
 彼女は神社前に戻り思わず嘆息する。
 真っ暗闇に覆われた山の中、またもや彼女の手刀が空を切った。



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――ほんとは会って話をした方が良かったかも知れない。でも……


 やけに低いエンジン音と微妙にサイズの合わないヘルメット。
 それらに少々困惑しつつもるう子はスクーターを走らせる。
 ぶっつけ本番だったが事前に説明書を読んだこともあり、るう子は支給品のスクーターを扱えつつあった。
 咲の死を前にしてもるう子の志は揺るがない。むしろよりやる気を出たといえる。
 セレクターバトルを主にした数々の修羅場を乗り越え、ここに置いては宮永咲の決死の奮闘を心に刻んだるう子はこれで挫けるはずがなかった。
 さっきは車椅子の少女がやったような不意打ちを警戒しあえて接触は避けたが、ずっとそうしている訳にもいかない。
 以前の自分ならできそうにない選択だけど、こちらから他参加者を発見し接触を試みてみよう。
 そう気持ちを引き締めた。

――さっきの人とは会う勇気はなかったけど……

 舗装された道路を頼りに目的地へと向かう。
 舞台の南東の市街地へ。
 殺し合いを阻止する手立てを探るために。


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 盛り上がった土の下にはヴァローナより数歳年下と思わしき少女の遺体があった。
 状態からして直後ではないと推測できる。傷からして下手人は銃を持っている。
 血痕を辿り、不意を打って銃器を強奪できればと彼女は考えた。


「……その、あの人をそのままにしておくんですか?」


 手にしたカードから少女の静かなる問いがかけられた、
 カードには緑の長髪を極端に逆立たせた細身の少女の姿があった。
 名は緑子。生きたカードルリグの1人でヴァローナの支給品の1つ。
 ヴァローナの身体能力を若干ながら上昇させているのは緑子の力アーツの『奇々怪々』の力ゆえ。
 本来はルリグの力の大半はウィクロスというカードゲームの中でのみ発現されるもの。
 だがこのゲームに置いてはある意味創造主である繭の力もあり、事情が多少違っているようだった。

 ヴァローナは遺体を見つめつつ呟く。

「……土を被せる?」
「……」

 少々怯えのような色をにじませつつ緑子は頷いた。

「……肯定します」

 ヴァローナは静かに返答するや、手早く遺体に土を被せた。
 緑子からはまだヴァローナにとって必要最低限の事しか聞いていない。
 いくら力に憧れがあるといっても、そう容易に超常を受け入れられるほどヴァローナは柔軟ではない。
 特別打算的ではないし、ドライでもないが、機嫌を損ね非協力的になっても困ると直感し受け入れる。
 別に死者に対して悪感情や他者に押し付ける程の無価値さもない。さりたて抵抗はなかった。まだ余裕はあるし。
 殺害したターゲットにそういうことをしたことはなかったなと思いつつ、ヴァローナは次のプランを練った。



【E-3/道路/一日目 深夜】
 【小湊るう子@selector infected WIXOSS】
 [状態]:健康、スクーター運転中
 [服装]:中学校の制服、チタン鉱製の腹巻
 [装備]:黒のヘルメット着用
 [道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(9/10)
     黒カード:黒のスクーター@現実、チタン鉱製の腹巻@キルラキル        
          不明支給品0~1枚、宮永咲の不明支給品0~2枚 (すべて確認済)
     宮永咲の魂カード

 [思考・行動]
基本方針: 誰かを犠牲にして願いを叶えたくない。繭の思惑が知りたい。
   1: 最低限の警戒を忘れず、南東の市街地へと向かい協力者を探す。
   2: 浦添伊緒奈(ウリス?)、紅林遊月(花代さん?)、晶さんのことが気になる
   3: 魂のカードを見つけたら回収する。出来れば解放もしたい。
 [備考]
※参戦時期は二期の8話から10話にかけての間です


【F-3/神社前/一日目 深夜】
 【ヴァローナ@デュラララ!!】
 [状態]:健康、『アーツ 奇々怪々』により若干だが身体能力上昇中
 [服装]:白のライダースーツ
 [装備]:手に緑子のカードデッキ
 [道具]:腕輪と白カード、赤カード(9/10)、青カード(9/10)
     黒カード:グリーンワナ(緑子のカードデッキ)@selector infected WIXOSS
黒カード:不明支給品0~2枚(武器と判断できるものはない)
 [思考・行動]
基本方針: 武器を集めた後、強者と戦いながら生き残りを目指す。優勝とかは深く考えない。
   1: 緑子から情報を収集した後、武器になりそうなものを探す。
   2: 強そうな参加者がいれば戦って倒したい。特に静雄や黒ヘルメット(セルティ)。
   3: 弱者はなるべく手を掛けたくない。
 [備考]
※参戦時期はデュラララ!!×2 承 12話で静雄をナイフで刺す直前です。

  • 支給品説明

【黒のスクーター】
小湊るう子に支給。
ヘルメット付きで、照明とエンジン音に多少の改造が施されている原付きバイクの一種。
トゥデイっぽい。照明はかなり細かい調整が効き、エンジン音も無音に近いくらい静か。
若干ステルス使用。最高速度は時速60キロまで。説明書付き。ガソリンはほぼ満タン。


【グリーンワナ(緑子のカードデッキ)@selector infected WIXOSS】
ヴァローナに支給。
植村一衣(ロワ未参戦)のルリグ 緑子が収納されたカードゲーム『ウィクロス』のカードデッキ。
外見は逆立った緑の髪の毛をした露出度の高いボーイッシュな衣装と雰囲気のした少女。物静かな性格。
少年口調で一人称は僕。使用可能なアーツについて説明は受けているが、ロワの説明はどれだけされているかは不明。
本来ならカードゲーム内のみで使用できるアーツ『奇々怪々』が使用可能。
他の能力が使えるかは不明。

※アーツ『奇々怪々』について
本来ならカードゲーム内においてシグ二(将棋で言う王将以外の駒のようなもの)を一体強化(+5000)するのみだが。
当ロワにおいては黒カードから出してカードデッキを手に所持した場合にのみ、身体能力を若干上昇させる効果がある。
デッキを落としたり、カードを損傷させてしまうと効果は失われる。
元はコスト無しに使用できるアーツだけにエナコスト(魔力消費)はないが、もし別のアーツを使ってエナコストを消費した場合、
消費した分すべてが回復するまで奇々怪々は使用できない。
エナコストの回復は通常1コストにつき1時間。何らかの要因でエナコストが補充されればその限りではない。


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001:その嶺上(リンシャン)は満開 小湊るう子 053:ハジケなくちゃやり切れない
ヴァローナ 056:Strange Fake