攘夷、北へ ◆Oe2sr89X.U




 桂小太郎とコロナ・ティミルの両名は、ショッピングモールから北上することになった。


 彼がトイレから戻ってきてすぐ、コロナは出発しようと進言したのだが、桂は否と首を振ったのだ。
 心なしかスッキリ、キリッとした表情の彼を見て、一瞬「もしや」とも思ったが――考えないことにした。うん、特に妙な匂いもしないし大丈夫だろう。きっと。
 それはさておき。

 「このような状況で、行き当たりばったりに進むのは賛成出来ない。ほら見ろこの『DIOの館』とかいう施設を。どう見ても危ない人の家だろうこれ。迷い込んだ日には命がいくつあっても足りん」
 「そ、そうでしょうか……でも、確かに考えなしに歩き回るのでは危険かもしれませんね」
 「うむ。そこで俺は、此処に向かうのを提案したい」

 ぴっ。
 桂が指差したのは、地図上に表示されている"ゲームセンター"の文字だ。
 此処から南下していき、海を渡って別な島へ辿り着く必要があるが、会場全体で見ればそう遠いわけでもない。
 しかし、その近くには彼の知り合いが経営しているという"万事屋銀ちゃん"の表記もある。どうせ近場なら、先にそちらへ赴いてみてもいい気がしたが――何故ゲームセンターなのだろう?

 「えと、桂さん? どうしてゲームセンターなのか、理由を聞いてもいいですか?」
 「どうしてもなにもあるまい。そこにゲームセンターがあるならば、赴くのが真のゲーマーというものだろう」

 自信満々にして答える桂。
 黙っていれば端正な顔立ちをしていることもあり、そこには謎の迫力がある。
 コロナも半ば押し切られるような形で頷いてしまいそうになるが――いやいやいや。

 「いやいや、ゲームやってる場合じゃないですよね!? 革命の話はどこに行っちゃったんですか?!」
 「ああ。確かにこの島は今、現在進行形で戦場と化しつつある」
 「…………」
 「だからこそだ! 今こそ俺とコロナ殿が共に"機動戦士ガン○○ 戦場の絆"を――あ、待て待て。ストライクアーツを構えるのはやめるんだ。分かった分かった、おまえの意見を聞こう」

 いつの間にかグルグル眼鏡とポスターの刺さったリュックを背負っていた彼だが、コロナがそっと拳を構え始めたのを見て速やかにそれらを何処かに消し去ってしまった。
 一体何処へ消し去ったのかといえば、それを説明することは誰にもできないだろう。
 ただ一言、かぶき町の関係者にはよくあることと言う他ない。
 それ以上深く考えることは無意味であり、時間の無駄である。
 コロナは早くも、この桂小太郎という人物との賢い付き合い方を感覚で学びつつあった。

 「こほん。ゲームセンターはまず論外として、この"万事屋銀ちゃん"はどうでしょう?」
 「万事屋か」
 「桂さんの知り合いの方が経営しているんですよね? でしたら、此処に集まってくるかもしれませんよ」

 ふむ。
 桂は数秒考えるような素振りを見せた後、やがてゆっくりと首を横に振った。

 「いや、奴らは後回しだ」
 「え、でも……」
 「確かにコロナ殿の言う通り、奴らは万事屋へと集まってくるだろう。それは間違いないと俺も思う。だが、俺は奴らとの合流を急くつもりはない。むしろ、本当の終局であってもいいとすら思っている」

 桂は何も、薄情な男という訳ではない。
 むしろその真逆だ。
 彼は"万事屋銀ちゃん"の面々や真選組の鬼の力量を誰よりも正しく理解し、信用しているからこそ、彼らとは敢えてばらけることを選んだのである。
 わざわざ改まって顔を突き合わせずとも、奴らが殺し合いを挫く目的で動くことなど分かっている。
 そして彼らには、それを可能とするだけの実力が備わっているのだ。
 ならば自分までもがそこへ加わる必要はないと、彼は判断した。

 ――桂小太郎(おれ)は桂小太郎(おれ)に出来ることをする。だから今は敢えて、再会の道を遠ざける。


 「そこでだ。此処などどうだろうか」
 「……本能字、学園?」
 「学園というからには、それなりの大きさがある建物なのだろう。であれば自然と集まる参加者も多いはずだ。それに、名前のインパクトもある。一文字変えれば本能寺だぞ本能寺。俺ならば、仮に地図の端であろうと此処を目指すな」

 桂の基準で考えることが正しいかどうかはさておいて、前半の理由には確かに頷けるものがあった。
 更にその近くには病院もある。
 医療用品の確保が、こと流血沙汰には事欠かないだろうこのデスゲームにおいて一際重要なことなのは間違いない。
 コロナは地図と睨めっこし、内容を読み進めていって……ふと。
 此処からは離れた場所ではあるものの、ある施設を発見した。

 「放送局……」
 「ふむ」
 「あの、本能字学園、病院と見て回ったら此処を目指すというのはどうでしょうか。そこから放送をかければ、きっとたくさんの参加者の皆さんに届かせることが出来ると思うんです」
 「放送、か――成る程な。悪くない方法だが……」

 腕組みをし、桂は考える。
 確かにコロナの言う通り、放送設備を使えば対主催の参加者を集めることは容易だろう。
 だがしかし、その方法には一つ大きな問題がある。

 「誘き寄せられる参加者が、必ずしも善玉とは限らない……それが問題だな」

 首尾よく殺し合いに否定的な参加者たちが集まってくれれば万々歳だ。
 が殺し合いに乗った参加者や、獅子身中の虫となる姑息な者が声に乗じて集まって来ないという保証はどこにもない。
 桂としては特に後者が最悪だった。集団に紛れ、信用しきった所を一網打尽とされてはたまったものではないが、かと言って常に警戒心を露にしていては団結するものも出来なくなってしまう。

 「あう……そうですね。少し考えなしでした。ごめんなさい……」
 「いや。確かに問題は色々とあるが、目的地として目指してみる価値がない訳では決してないと俺は思うぞ。なに、道中も長いのだ。そこで名案が閃けばそれで良し、閃かずともまた仕方なし。行くだけ行ってみようではないか」

 どの道、追々また新たな目的地を探さねばならなかったのだ。
 仮に問題だらけの案だとしても、未来の仕事を少し先回りして終えてしまったと考えればいい。
 少なくとも、いつまでもこのショッピングモールでぐだぐだとしているよりかは何倍もマシな筈。

 「――ああ、それとだ。これを渡しておく。私の支給品にあったものだ」

 言って桂がコロナへと手渡したのは、黒い無骨な機械だった。
 サイズは然程大きくなく、見かけによらず意外と軽くて持ちやすい。

 「所謂無線機、トランシーバーというやつだ。今後、もし分断されるような時があればこれを使い連絡を取り合おう」
 「はいっ、分かりました」
 「良い返事だ。……ところでコロナ殿、使い方は分かるのか?」
 「説明書がないとはっきりはしませんけど……こういう機械なら多分、触ってみれば大体で分かると思いますよ?」
 「ふむ、現代っ子というわけか。まったく恐ろしい時代になったものよ。いいですかコロナ、お母さんスマホなんて許しませんからね!」

 お母さんのような裏声を出しながらガミガミと捲し立てる桂。
 最初は困惑していたコロナも今では彼のノリに適応できるようになってきた。
 このボケにボケで返せるようになれば、立派な"彼ら"の仲間入りなのだが。
 賑やかなやり取りを交わしつつ、時に真面目になりながら、お尋ね者と小さな戦士は北上していく。

 目指すは本能字学園。攘夷の風は今、つむじ風となって吹き始めた。


【D-6/ショッピングモール周辺/一日目 黎明】

【桂小太郎@銀魂】
[状態]:健康
[服装]:いつも通りの袴姿
[装備]:晴嵐@魔法少女リリカルなのはVivid
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)
    黒カード:トランシーバー(A)@現実、不明支給品0~1枚
[思考・行動]
基本方針:繭を倒し、殺し合いを終結させる
   1:本能寺学園へ向かう
   2:コロナと行動。まずは彼女の友人を探す
   3:神威、並びに殺し合いに乗った参加者へはその都度適切な対処をしていく


【コロナ・ティミル@魔法少女リリカルなのはVivid】
[状態]:健康
[服装]:制服
[装備]:ブランゼル@魔法少女リリカルなのはVivid
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)
     黒カード:トランシーバー(B)@現実
[思考・行動]
基本方針:殺し合いを終わらせたい。
   1:桂さんと行動。ヴィヴィオたちを探す
[備考]
※参戦時期は少なくともアインハルト戦終了以後です。


支給品説明
【トランシーバー@現実】
桂小太郎に支給。
通信が可能な一対の無線機。
二つで一つとして支給されているため、当ロワでは区別のためにトランシーバー(A)、トランシーバー(B)のように表記を分けることとする。


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005:視えないモノ信じてゆく 桂小太郎 051:本能字の変(1) バクチ・ダンサー
005:視えないモノ信じてゆく コロナ・ティミル 051:本能字の変(1) バクチ・ダンサー