1名無しさん@ピンキーsage2007/07/03(火) 02:18:55 ID:GUtYRKNa
ここは人間の住む世界とはちょっと違う、ケモノ達の住む世界です。
周りを見渡せば、そこらじゅうに猫耳・犬耳・etc。
一方人間はというと、時々人間界から迷い込んで(落ちて)来る程度で数も少なく、
希少価値も高い事から、貴族の召使いとして重宝がられる事が多かったり少なかったりします。

けど、微妙にヒエラルキーの下の方にいるヒトの中にも、例えば猫耳のお姫様に拾われて
『元の世界に帰る方法は知らないにゃ。知っていても絶対帰さないにゃあ……』
なんて言われて押し倒され、エロエロどろどろ、けっこうラブラブ、
時折ハートフルな毎日を過ごすことを強要される者もいるわけで……。

このスレッドは、こんな感じのヒト召使いと、こんな感じのケモノ耳のご主人様との、
あんな毎日やそんな毎日を描いたオリジナルSSを投下するスレです。


このスレッドを御覧のヒト召使い予備軍の皆様、このスレッドはこちらの世界との境界が、
薄くなっている場所に立てられていますので、閲覧の際には充分ご注意ください。
もしかしたら、ご主人様達の明日の御相手は、あなたかもしれませんよ?

それではまず>>2-5を見てください。
2名無しさん@ピンキーsage2007/07/03(火) 02:20:18 ID:GUtYRKNa
【前スレ】
猫耳少女と召使いの物語12
 ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1172055074/l50

【過去スレ】
猫耳少女と召使いの物語 (03/02/21 〜 03/12/25)
 ttp://www2.bbspink.com/eroparo/kako/1045/10458/1045800367.html
猫耳少女と召使いの物語2 (03/12/17 〜 04/08/14)
 ttp://idol.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1071622872/
猫耳少女と召使いの物語3 (04/08/16 〜 05/03/07)
 ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1092588111/
猫耳少女と召使いの物語4 (05/02/21 〜 05/05/14)
 ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1108911697/
猫耳少女と召使いの物語5 (05/04/13 〜 05/08/05)
 ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1113392192/
猫耳少女と召使いの物語6 (05/07/07 〜 06/02/04)
 ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1120675128/
猫耳少女と召使いの物語7 (06/01/06 〜 06/06/27)
 ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1136475086/
猫耳少女と召使いの物語8 (06/05/17 〜 06/09/17)
 ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1147852863/
猫耳少女と召使いの物語9 (06/09/17 〜 06/10/25)
 ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1158458196/
猫耳少女と召使いの物語10 (06/10/25 〜 06/12/23)
 ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1161785657/
猫耳少女と召使いの物語11 (06/12/21 〜 07/02/27)
 ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1166687647/
3名無しさん@ピンキーsage2007/07/03(火) 02:23:37 ID:GUtYRKNa
【SS保管庫・避難所】
エロパロ板SS保管庫 (当スレSSは『オリジナル・シチュエーションの部屋その3』に)
 ttp://sslibrary.gozaru.jp/
猫耳少女と召使いの物語エロパロ保管庫@WIKI
ttp://www28.atwiki.jp/schwarze-katze/
猫耳少女と召使いの物語 避難所その2 (JbbsLivedoor エロパロ板SS投下専用掲示板 内)
 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/2051/1166859477/l100

【関連サイト】
猫耳少女と召使いの物語 まとめwiki (各作の人物紹介・世界観設定その他)
 ttp://nekopri.s12.dxbeat.com/
猫耳少女と召使いの物語 半公式ファンサイト (世界観まとめサイト)
 ttp://www.geocities.co.jp/Milano-Killer/9811/world.html
4名無しさん@ピンキーsage2007/07/03(火) 02:29:15 ID:GUtYRKNa
作品一覧については常に変わるものなれば
「猫耳少女と召使いの物語エロパロ保管庫@WIKI」にあるものを
参考にされたし。

これにてテンプレートの終わりと致す。
5名無しさん@ピンキーsage2007/07/03(火) 08:57:38 ID:a0DfTkne
>>1
6名無しさん@ピンキーsage2007/07/03(火) 12:39:12 ID:wis3F+a9
>>1
乙でござる。
7名無しさん@ピンキーsage2007/07/03(火) 17:53:57 ID:6L04S/Qr
>>7が支払ったのは>>1乙であった。
8名無しさん@ピンキーsage2007/07/03(火) 23:19:22 ID:FbIRpiQ9
>>1乙華麗
9名無しさん@ピンキーsage2007/07/05(木) 02:58:42 ID:yzKuqEP/
>>1

今更MONOGURUIの中に某カードゲーム漫画のパロが入ってんのに気付いた。

ずっと副主任のターン…

……主任の罠(トラップ)カード発動 『減給』

{このカードは決闘(デュエル)中に相手のバトルフェイズが終了し、
かつ相手プレーヤーが犯罪行為を行なった際に発動する永続罠(トラップ)カードであり、
効果や期間の範囲は犯罪行為の度合いに比例する。
このカードの効果は無効出来ない}


……保守ついでに垂れ流した
きっと後悔するが反省はしない
10名無しさん@ピンキーsage2007/07/05(木) 23:50:06 ID:ZK4LvPJ8
猫耳スレで鳴らした俺達語り部隊は、他スレにマルチコピペしたのがばれたが、本スレと避難所地下に潜伏中。 
しかし、脱出と見せかけてスレ潜伏だけでくすぶっているような俺達じゃあない。 
串さえ通ればネタ次第でなんでもやってのける命知らず、不可能を可能にし自分に不都合なレスを長文でかく乱する、俺達、語り野郎ファビョン! 

俺は、リーダーカモシカ。通称カモシカ担当。 
こちむいスレの後継者(ryで、長文自己語りの名人だ。どんな奴でも煙に巻ける。 
俺のような天然でなければ百戦錬磨のつわものどものリーダーは務まらん。 

俺は虹衣。通称虹衣の人。 
自慢はtxtうpが出来る事、このテクで住人はみんなイチコロさ。 
ハッタリかまして、長文からジ○ンプの宣伝まで、何でもやってみせるZEY。 

私は、ピューマ絵チャット参加者、通称謎の人(ry。 
絵チャット潜入工作員。 詳細は避難所ログを見てやってくれ。 
内部暴露と匿名説教は、自分は傍観者的立場とスレの腐敗を暴く側からの意見で、
理屈こねるのはお手のもの! 
なーに、絶対バレやしないさ。 

よおお待ちどう。俺様こそMONOGURUI。通称MONOGURUI。 
長文投下は天下一品!空気嫁?ROMってろ?だから何。しらねーよ! 

カヨマック。通称ピューマ担当。 
ブログと絵チャットの天才だ。ブログ晒す奴でもブン殴ってみせらぁ。 
でも打たれることだけはかんべんな。打たれたらすぐ閉鎖するぜい! 

俺達は、腐スレとヲチスレにあえて挑戦する、頼りになる神出鬼没の、語り野郎 ファビョン! 

語って欲しい時は、いつでもどこでも言ってくれ! 

おい、誰か一人泣きながら飛行機追ってきてるぞ?
ああ、蛇足。あぷろだできない蛇足の人か。最近存在忘れてたぜ!
11名無しさん@ピンキーsage2007/07/06(金) 02:30:53 ID:+P1qyJ7T
即死回避で>>1
12名無しさん@ピンキーsage2007/07/06(金) 18:53:54 ID:3PQaH7VV
>>1
お美事!お美事でございまする!



前髪もあどけない 避難所の新スレ
猫耳少女と召使いの物語 避難所その3である

http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/2051/1183628177/l50
13名無しさん@ピンキーsage2007/07/07(土) 07:06:30 ID:2Enn57IS
>>1
前スレの流れで思ったが、美男美女よりどりみどりのスレなのに嫁取り婿取りが起きないのは、怖いご主人さまや召使君が目を光らせているからなんだな(違
14名無しさん@ピンキーsage2007/07/08(日) 20:07:56 ID:M8HnEC9m
いぇすぱあああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
15名無しさん@ピンキーsage2007/07/08(日) 20:14:32 ID:EDsK+Vf7
さて、GJと書こうと思ったら容量オーバーしてた件について。

しかしこのお子様かぽ、ほんとにもう(;´Д`)ハァハァ
16名無しさん@ピンキーsage2007/07/08(日) 20:46:00 ID:peNhiBYH
イ、イェスパーッ!?
彼は欲求不満なのかッ!!
そして、不覚にも、勃起した
17名無しさん@ピンキーsage2007/07/08(日) 21:12:16 ID:T4drMpMf
否、屹立せざるをえないだろう。
埋め乙にてございまする……!
18名無しさん@ピンキーsage2007/07/08(日) 22:33:33 ID:VleQQl56
彼の

気持ちは

わかる
19名無しさん@ピンキーsage2007/07/09(月) 13:27:57 ID:vG2yaU1w
ききき奇襲キタアアアアアアア(゚∀゚)アアアアアアア!!

先輩のイジメ、アイフル、ひととく、蘇王維再び、やはりどこかズレてる主任。全てに笑ったwww



あと、後半は早速使わせていただきました。

ティルくんはやっぱ俺の嫁てラーメンが飛んdうわなにをすあちちくぁwせdrftgyふじこlp;@:「」
20名無しさん@ピンキーsage2007/07/12(木) 09:19:14 ID:SUkBf18M
何となく保守
21名無しさん@ピンキーsage2007/07/13(金) 01:17:47 ID:gqeGKP3m
そういや、いろんなご主人様でたけど分類とかできるのかな?
22名無しさん@ピンキーsage2007/07/13(金) 02:05:43 ID:j8ctcQ7L
性的嗜好で分類? 意外と難しいな……。
23名無しさん@ピンキーsage2007/07/13(金) 06:59:23 ID:RNBosfRB
性別ならなんとか
24名無しさん@ピンキーsage2007/07/13(金) 07:37:41 ID:vDVJ6GrD
押し倒し側、押し倒され側、どっちもおk……とか。
25名無しさん@ピンキーsage2007/07/13(金) 21:53:59 ID:S9wq6Ben
後から書く場合は既存のご主人様との差異を出そうとするからなあ。

・アブノーマル派/ノーマル派
・S/M(受け/攻め)
・活発/内気
・生活能力有/無
・戦闘能力有/無
・おっぱい/ひんぬー(男性の場合はだんでー/しょた)
・ツン/デレ

あたりで複合的に判断するしかないかな。
26名無しさん@ピンキーsage2007/07/13(金) 22:31:11 ID:S9wq6Ben
……と、書いてから気付いた。


生 活 能 力 の あ る ご 主 人 様 っ て い た っ け ?


27名無しさん@ピンキーsage2007/07/13(金) 22:37:55 ID:vDVJ6GrD
だが王族や貴族や科学者に自生能力を求めるほうが酷だという声も
28名無しさん@ピンキーsage2007/07/13(金) 23:03:07 ID:RNBosfRB
>>26
マダム・ファルム
29名無しさん@ピンキーsage2007/07/14(土) 01:23:54 ID:svP6eX19
>>26
貴様、シュナたんを思い出せないとは。ママ・キヤに代わっておしおきよ☆


王族の血を引くサラブレッドにして、家事、お料理も完璧。
献身的な性格で物腰は柔らかく、容姿は端麗、魔法も使える上に保母さんという仕事をしている完璧な俺の嫁……ゲフンゲフン。ご主人様じゃないか。
30名無しさん@ピンキーsage2007/07/14(土) 20:47:32 ID:oDseqe1L
>>29
キンサンティンスーユからも書き込みできたんですね、フユキさん。
31名無しさん@ピンキーsage2007/07/14(土) 20:50:58 ID:y5cKktqe
そりゃあ、ここは陸の孤島と言われるル・ガルの駐屯所からさえ書き込みできるスレだぞw
32名無しさん@ピンキーsage2007/07/14(土) 21:03:48 ID:jUCtumrf
ジャンル分けねぇ・・・・
マナ様・クリフ先生・ジーきゅん辺りは間違いなく同じグループに入ると思うが
33名無しさん@ピンキーsage2007/07/14(土) 21:39:42 ID:y5cKktqe
>>32
ちょっとまて、それはどんなグループでまとめたんだ。
34名無しさん@ピンキーsage2007/07/14(土) 21:45:48 ID:ckybMz8r
家事×
35名無しさん@ピンキーsage2007/07/14(土) 22:08:25 ID:HqXRgWtW
しかし、あんまり完全無欠にダメな子はいないな
36名無しさん@ピンキーsage2007/07/14(土) 23:09:49 ID:DRIb9gHP
>>35
それはむしろ「完全欠」
37名無しさん@ピンキーsage2007/07/15(日) 13:06:15 ID:Q6BR232+
wyxe

ttp://rainbow2.sakuratan.com/img/rainbow2nd22780.jpg

オオカミのご主人様と赤頭巾の従者ですか?
38名無しさん@ピンキーsage2007/07/15(日) 22:01:25 ID:Zoxnvtq3
ダメだ……! 狼と赤ずきんなんて言われてもガロンとバレッタの関係しか思い浮かばん!
39名無しさん@ピンキーsage2007/07/16(月) 10:19:41 ID:mvny7dc/
あのゲームのおかげで赤頭巾にトラウマが
40名無しさん@ピンキーsage2007/07/16(月) 20:49:10 ID:p1iIHX2S
完全欠だったら魅力が皆無ってことになるからなぁ。

赤頭巾か。むしろ赤頭巾が狼さんを押し倒すシチュとか……いや、なんでもない
41名無しさん@ピンキーsage2007/07/17(火) 09:08:21 ID:MTn60JKZ
赤頭巾ちゃんが森のおばあさんのところに行く途中で狼さんにそそのかされて寄り道して遊びました。
その間に狼さんは森のおばあさんと入れ替わってしまったのです。
そこに何も知らずにやってきた赤頭巾ちゃん。
あわれ赤頭巾ちゃんは狼さんに食べられてしまったのです。もちろん性的な意味で。
ことが終わった後に狩人さんが来て狼さんにとどめをさしていきました。もちろん社会的な意味で。

童話とか昔話って基本的に自業自得な話多いよな。
42名無しさん@ピンキーsage2007/07/17(火) 13:22:45 ID:adxFMV78
どこかのスレで似たような話みたな
元ネタ童話だしありふれてるか
43名無しさん@ピンキーsage2007/07/17(火) 22:58:57 ID:jvpCbVM3
しかし、このスレは赤頭巾と狼さんが仲良くなる話が多いなw
44名無しさん@ピンキーsage2007/07/17(火) 23:44:41 ID:1zSuOjmo
世界観の設定上は多くの赤頭巾が食われているハズなんだけどな。
45名無しさん@ピンキーsage2007/07/18(水) 00:51:06 ID:wWCOj35s
兎の国なら。

赤頭巾ちゃんが森のおばあさんのところに行く途中で狼さんにそそのかされて寄り道して遊びました。もちろん性的な意味で。
その間に狼さんは森のおばあさんと入れ替わってしまったのです。 もちろん性的な役を入れ替えて。
そこに何も知らずにやってきた赤頭巾ちゃん。
あわれ赤頭巾ちゃんは狼さんに食べられてしまったのです。もちろん性的な意味で。
ことが終わった後に狩人さんが来て狼さんにとどめをさしていきました。もちろん性的な意味で。
46名無しさん@ピンキーsage2007/07/18(水) 01:06:07 ID:gWiuprY1
>>45
赤頭巾は出発させてもらえない気がする
47名無しさん@ピンキーsage2007/07/18(水) 17:32:09 ID:Kx7vYvts
>>45
赤頭巾ちゃんが森のおばあさんの所に行く途中で狼さんと寄り道して遊びました。性的な意味で。
そしておばあさんの家でおばあさんも交えて遊びました。性的な意味で。
第1R終了後にやってきた狩人さんも加わりました。性的な意味で。

ぐらいじゃまいか。
48名無しさん@ピンキーsage2007/07/18(水) 17:54:53 ID:27dg7npO
最凶赤ずきんのせいでオオカミが赤ずきんにレイプされるのが
真っ先に浮かんでしまう

いっそ元演劇部の「あたし」脚本監督主演で劇中劇とかそう
いうのもいいかもしれない
49名無しさん@ピンキーsage2007/07/18(水) 22:48:32 ID:KNa3AtaY
こちむい学園の学園祭か?
50名無しさん@ピンキーsage2007/07/19(木) 00:03:18 ID:X35/5fcf
「ちょっと、ぞーきん! あんたガタイが良くって喋らなきゃ悪人面なんだからオオカミ役ね!」
「えー……でもオレ、校庭の清掃が」
「と、とりあえず練習は本番でのリアリティを出すために実際にあたしと……」
「え!? 脱ぐなって、頭巾じゃなくって下を!! ここは放課後の体育館のステージの上で」
「|_ゝ`)」
「サイアアアアアアス!!! お前は関係ないから覗くなあああああ」
「学園のイヌ 必 死 だ な w」

「うん、たまには漫才も良いものだね……アシナ、紅茶」
《畏まりました》
《盗撮魔法だなんて教頭もえげつねえな》

こうですか? わかりません><
51名無しさん@ピンキーsage2007/07/19(木) 19:41:47 ID:HnkdVB8o
続きが激しく気になるッ
とゆうか、体育館二人きりプレイッ
52名無しさん@ピンキーsage2007/07/19(木) 20:03:27 ID:jL4KvL7b
オオカミが赤ずきんレイプしなきゃいけないけどジークは乱暴
あまり好まないので乗り気じゃないし演技が棒。
そんな彼に「本物のレイプを教えてくれるわこのバカ犬がー!!」
と激怒しながら迫真の演技を実演して指導する「あたし」

とそれを見たどこぞの召し使い
「大変です!!用務員さんが女生徒にレイプされそうになってます!!」
53名無しさん@ピンキーsage2007/07/19(木) 23:26:03 ID:X35/5fcf
……学園物だと、虹絹は風紀委員あたりか?
少々素行が悪くてもまとめる実力優先でフローラ校長が勅命した生徒とかw
アズキが書記かなんかで振り回されているのだろうか。

とりあえず風紀乱れまくりなジーきゅん&あたしにカナが白い竹刀持って突っ込んできそうですね。
54夢日記の人sage2007/07/20(金) 00:08:49 ID:nNY9rXxJ
きりの良いところまでと思っていたら随分遅くなりました。
犬国奇憚夢日記の第7話です。
http://0cgi.net/rent_h/bbs/sr3_bbss/sr3_bbss/31nachtum/37_1.txt

ネタ的にはちょっとじゃなくて、かなり重い話しを含んでいますので、
その辺を含みおき、お読みいただきたく願います。
55夢日記の人sage2007/07/20(金) 00:10:29 ID:nNY9rXxJ
追記
可能な限り誤字脱字が無い様に注意を払いましたが、
尚おかしい部分がありましたら御指摘いただけるとありがたく思います。
また、後日若干の修正があるかもしれません。
56名無しさん@ピンキーsage2007/07/20(金) 20:48:28 ID:dgw2Szt2
>>54
ずーっと待ってました。
重い話なんですけど、こういうの読むと自分自身のなかでこちむい世界へのイマジネーションがむくむくと膨れてきて、
なんかすぐにでもキーボードの前に向かう意欲がわいてくるような話です。
いやもう、全角でGJです。
57名無しさん@ピンキーsage2007/07/20(金) 23:10:35 ID:GXPTosiV
>>52
ふだんは尻に敷かれていてもエロい局面ではいきなり攻守逆転するのが
あのカップルのミリキじゃないのかい。
58夢日記の人sage2007/07/20(金) 23:21:30 ID:nNY9rXxJ
昨夜に引き続き、第8話です。
同じく、じっくり校正したつもりですが、抜け落ちや誤字脱字がありましたら御指摘下さいませ。
今宵の分はそれほどエロ分が無いと思います・・・・
59夢日記の人sage2007/07/20(金) 23:22:09 ID:nNY9rXxJ
大事なものを忘れました。
http://0cgi.net/rent_h/bbs/sr3_bbss/sr3_bbss/31nachtum/38_1.txt
恥の上塗りですね・・・・
60名無しさん@ピンキーsage2007/07/20(金) 23:59:38 ID:EmMhUf3F
>>54
自分はこういうの好きだし、
オオカミの氏族の描写とか狂犬病とかカナの辿った過去とか、
他の話にはないすごいリアリティがあっていいと思ったんだけど……

ウツスギテ('A`ii)セッカクエロイノニ チンポタタナイ
61名無しさん@ピンキー2007/07/21(土) 01:44:22 ID:PkY3G3CK
保守
62名無しさん@ピンキーsage2007/07/21(土) 04:49:46 ID:jtm8f4fR
>>54,59 まずは超超GJ!
今までここに投下されてきた作品はライトノベルのような風体がほとんどでしたが、
氏の作品はそれとは一線を画した正当派の小説を読んでるイメージを自分は感じました。

ヒトの世界によりもたらされたものが及ぼす悪影響、貴族と従者の関係、語られる事のなかったオオカミの集落、
疫病による大量の命の死、密かに研がれたヒトの牙、古の覇王と魔導士……

自分の主観ですが、なんか歴史モノの小説読んでる心地。読んでて時間を忘れられるくらい楽しいです。
それと霊薬と腕輪のこの先の使われ方が気になる所。

…マサミは一体、その生涯において何度死にそうになったり殺されそうになったりしたんだろうか。
そして次にはマサミの勇姿が拝めるのだろうか。wktkで全裸待機してます。



ところで、この争いすら起こす霊薬。某大魔法使い様はフツーに持ってたよな。
んでそのお味はこの世のモノでは無いほど苦いらしいじゃあないですか。
……飲むことになるであろう人が心配ですw
63名無しさん@ピンキーsage2007/07/21(土) 17:13:41 ID:utolUlci
夢日記キター!(AA略
ぶっちゃけ、氏の文章が上手いとは思わない。
でも、不思議とグイグイ引き込まれる文章だよな。
同じSS書きとして凄く参考になります。
で、次辺りはマサミの漢っぷりにむせかえるわけですね!
64名無しさん@ピンキーsage2007/07/21(土) 18:15:13 ID:jFHOT2/C
それがつまりは「上手い文章」というものなんだと思う。
65名無しさん@ピンキーsage2007/07/21(土) 20:19:07 ID:XICzSehB
>>63
いや、普通に上手い文章だと思うよ
ただ最早エロパロを超えて完全に歴史小説とか経済小説の域だと思う
おかげでGJなんだけど感想に困る
ワロスとか萌えたとか勃起したとかの一言で済むような話でないもんで
66名無しさん@ピンキーsage2007/07/21(土) 20:30:51 ID:6AqIGFdr
他の作品を格下とみなしてまで
誉めるのはいかがなものかと

正直やる気なくすぜ?
67名無しさん@ピンキーsage2007/07/21(土) 21:17:43 ID:+J861gqj
>>66
まあ、半分は同意。
でも実は夢日記に関しては、読後に、すげえ、でも俺もいつかこの人とタメ張れるSSを書いてやるって気持ちを引きずり出される。
そういう職人さんってこのスレに数人いるけど。

格下なら格下で上等、こっちもいつまでも格下でいてたまるかっていう、そんなやる気を出してくれる作品。
68名無しさん@ピンキーsage2007/07/21(土) 23:59:59 ID:jtm8f4fR
誰も格下だの格上だのとは言ってないぞ。
ギャグ中心、萌え中心、エロエロ中心、文化や社会問題中心、冒険活劇中心、なんてことのない日常を中心にした作品……etc
ジャンルは無数にあれど、それぞれがそれぞれにしか出せない持ち味があるんだ。
それを自分の主観のみで格の上下を決めるなんて、これほど勿体ないことはないと思うぞ。
もっと広い目線で見てほしい。


あと話変わるけど、作者諸兄にはもっと自信を持って欲しいんだ。
読み手としては、皆様の面白い想像をもっと読みたい。そして自分もその作品を読んで色々と想像したい。
もっと笑ったり、もっと感動したり、もっと泣いたり、もっと萌えたり、もっとオカズにしたい。そう願ってやみませんぞ。
せっかくの想像を、無駄にしないでくだされ。
69名無しさん@ピンキーsage2007/07/22(日) 00:43:28 ID:xU+iJC69
>>68
>誰も格下だの格上だのとは言ってないぞ。
君は自分の書いていることに無自覚過ぎる。

>>62のこの一文、
>今までここに投下されてきた作品はライトノベルのような風体がほとんどでしたが、
>氏の作品はそれとは一線を画した正当派の小説を読んでるイメージを自分は感じました。
「一線を画した正統派の小説」などと言うからには、他は「正統派でない」と言ってるようなものだ。
流石にそう言われて気分の良い人など少なかろう。


君は、もうすこし慎重に書き込みをすることが皆のためでもあり、
自身のためでもあると思われる。
70名無しさん@ピンキーsage2007/07/22(日) 00:57:51 ID:3TWxV3YL
まあ、なんだ。ライトノベルってのが、「軽い小説」って意味だからな。
出版業界でも軽いのってのはバカにしているようなニュアンスだから好ましくないと言われるそうだし。
ラノベと正統派と比べちゃったら、そりゃ『軽くないほうが各上』だわな。

そもそもラノベって定義自体があやふやと言えばそれまでだが。
定義だけで言えばジュヴナイルが多いな、このスレは。
71名無しさん@ピンキーsage2007/07/22(日) 08:03:28 ID:q/pekJ/t
つうか、上手いだの下手だので揉める前に、こちむい世界の陰の側にもディテールを付けてる点で論じるべきかと思うが。
オオカミと言う種族が初めて立体的に出てきたとか、某ガンマン漫画の影響かと思っていた街の遠大な目標とか。
要するに、あの街が将来はヒトの国を目指すわけですよね?、だから近隣に恩を売りまくっているんですよね?
将来につながる沢山の種を仕込んでいる老人の深謀遠慮と、それに気付かせそして協力者に仕立てあげるべく教育するとか。
なんかいくらでも深読み出来る辺りが凄いです。
話の流れ的に何処まで続いてるかだいたい検討はつきますが、でも話の展開は想像つきません。
そんな訳で、続き希望します。
72名無しさん@ピンキーsage2007/07/22(日) 10:42:41 ID:/P1vtP6L
前の書き込みをフォローしたり
さりげなく話題を変えるのって、難しいよね。
73名無しさん@ピンキーsage2007/07/22(日) 11:08:51 ID:NU9dbkop
俺には論じるなんて大層なことは出来ないけど。

カナやルカパヤンの老人のエピソードを読んでると、マサミの時代と言うのは、「岩と森の国物語」よりもかなり前、フロミアフェスタが始まる前の時期になるのかなとか思った。
だとしたら、もしかしたら「フロミアでヒトの世界の祭りを再現させる」なんてことを最初に思いついてプロデュースしたのは実はマサミかもしれないとか思ったり。
あるいは、リュナ卿はルカパヤンでヒトの歴史や考え方を知ったんじゃないかとか。
作品間の横軸がすこしづついろんなSSとリンクしていきそうな感じがした。。。
74名無しさん@ピンキーsage2007/07/23(月) 02:42:15 ID:FdGak+Cq
ただ、そういう全世界的な話の広がりを持ち出すと、
人が虐げられているっていう世界観の根幹部分にも影響が出てくるような気が。
75名無しさん@ピンキーsage2007/07/23(月) 20:06:52 ID:NHK087FH
全世界的に見たら、やっぱりヒトの立場はよわよわなんだろうけど、
その中でたまたま、例外的な価値観の持ち主がルカパヤンみたいな街の近くにいたとすれば、
やっぱり何らかの因果関係はあっても不思議はないかなとか思ったり。
てゆーか、せっかく同じ世界を舞台にしてるなら、世界観に横のつながりがあったほうが面白い気ガス。
76名無しさん@ピンキーsage2007/07/23(月) 20:29:36 ID:L7N5lBJn
無粋かつ難しいと知りつつも、
スパロボみたいにクロスオーバーしまくりの作品を読んでみたい気もするなぁ。
77名無しさん@ピンキーsage2007/07/24(火) 19:54:07 ID:BjBwCYCA
スパロボといえばあのシステムというのが頭にあるせいで
援護攻撃で二人が一人を攻撃するとか
覚醒で二回攻撃できるとか
すべて性的な意味に見えてきたがどうすればいいんだ
78名無しさん@ピンキーsage2007/07/24(火) 20:40:09 ID:l5yQq4t8
六身合体すればいんじゃね?
79名無しさん@ピンキーsage2007/07/25(水) 10:27:28 ID:Adt7IV1a
そのときイデは発動した
80名無しさん@ピンキーsage2007/07/25(水) 12:13:14 ID:xNke6cPQ
tp://homepage3.nifty.com/mana/ideon.html

「この論によればイデとは『対立を超えた時に力を発生させる場』と言えるニャ」
「はあ」
「というわけで、種族も世界も男女も超えた神魂合体でイデの発動レッツゴー!」
「やああんっ!?」
81名無しさん@ピンキーsage2007/07/25(水) 17:28:13 ID:29KX7ZtD
ゲッターの合体は3P
82名無しさん@ピンキーsage2007/07/25(水) 18:37:43 ID:FPukquhr
いついかなる場合も定期発狂は欠かさないこのスレのみんなが大好きです
83名無しさん@ピンキーsage2007/07/26(木) 16:42:04 ID:YQOzPAlW
従来からあった合体形式、四つん這い、横向きに寝る、上からかぶさるに加えてまだ見ぬ第四の形が。
新たな力、枕を腰の下に装着したとき、奇跡は起きる!
84なんか思いついたsage2007/07/26(木) 17:37:33 ID:YQOzPAlW
 モモさんは語る
「私も最初は知らなかったんです。
 仰向けに寝るとしっぽが痛くなっちゃいますし、座ってだと奥までこないし、立ちながらだと男の人の体力がすぐに無くなっちゃうんですよ。
 ブリッジみたいな格好でやった事もあるんですけど、私、力が無いから足がぷるぷる震えてきちゃってそれどころじゃなくなってしまって。
 だから仰向けに寝てするなんて考えられないことだったんですよ。
(中略)
 聞いた話に腰の下に枕をしいてするっていうのがあって、早速やってみたんです。
 そしたらもう、すごくて。
 相手の背中に手を回せるから安心するし、顔が近づけられるからキスも愛の囁きも思いのまま。
 なにより普段やってない格好だからすごく興奮しました。
 欠点はなぜか上にずり上がってしまうのでうまく枕をおかないと尻尾が痛くなっちゃうことでしょうか。
 今はもうずっとこれでやってます」
(月刊「青い月の見る夢」八号より抜粋)
85名無しさん@ピンキーsage2007/07/26(木) 21:19:15 ID:Y1WqaQJI
ウサギか?ウサギだよな?
青い月だなんて、そもそもエロ過ぎる!
86名無しさん@ピンキーsage2007/07/27(金) 11:15:39 ID:IOTPeyQ0
後の大ヒット商品「腰枕」である。
87名無しさん@ピンキーsage2007/07/28(土) 15:37:56 ID:XhbUROv6
最近、スレ住人の発狂間隔が短くなりつつないか?
88名無しさん@ピンキーsage2007/07/28(土) 16:40:42 ID:YsxtTc5Z
最後は間隔がゼロになって次元のハザマから総人類こちむいワールドに落ちるんだろ。
89名無しさん@ピンキーsage2007/07/28(土) 23:58:26 ID:TPw10XOO
……なんとなく期待しちゃう
90名無しさん@そうだ選挙に行こうsage2007/07/29(日) 14:20:37 ID:NJujG9Yl
いや、このスレの存在を知っている俺たちが
こちむいの世界の人達にきっと色んな所に連行されるんだ・・・

あれ?誰かがうちのドア叩いてるわ。見てくる
91名無しさん@ピンキーsage2007/07/29(日) 22:46:48 ID:zBDdBKTR
>>90



つまり、「あたし」は元スレ住人。

まてこら女子高生。
92名無しさん@ピンキーsage2007/07/29(日) 23:44:12 ID:dls4ZCI50
「あたし」はケモ耳ショタ派
93名無しさん@ピンキーsage2007/07/30(月) 11:47:10 ID:KPYfJFpk
避難所まで発狂してしまった、夏の日
94イノシシの国sage2007/07/30(月) 23:22:03 ID:y63p6n0J


「それは摘むな」
 バジの制止に、なせはしゃがんだまま振り返った。
 山道を抜けて野の道へ。そしてまた山道へ。
 徒歩での旅を繰り返し、二人は移動を重ねてきた。
 傷を治す膏薬が残りわずかになってきて、薬草を噛んで代用してやった事が始まりだった。
 バジにとって生きる術のひとつだった事に、なせは大いに興味を示した。
 一人分の食料が乏しくなって来た頃合いで、軽い気持ちで食用の野草などを教えてやると、程なく粥に具が入るようになった。
 今日もまた、何気なく、なせは道端の野草に手を伸ばしていた。
「ここは、山だ。山の菜は山の氣が凝っている。イノシシならともかく、ヒトのおまえが食べていいものか、判断がつかぬ」
 ちょうど坂を上っていく林の中。ゆるやかな勾配は一見すると山なのか坂なのか区別しにくい。
 なせは手を引っ込めて、不安げな表情で彼を見上げる。
「毒、とも言い難いのだが……」
 バジは言い淀んだ。
 山菜はイノシシ達の間では食用であると同時に、薬草として重宝される。だが、他の種族に供する時は気を使う。
 イノシシ達には何の害もない。
 隠れ里や堀町の浮民にとって、時折体に合わない事がある。
 そして、この国に近寄らない、近寄る事さえ出来ない者達にとっては、死に至る毒である。
 落ちてきたヒトにとって、どう何が作用するかはわからない。
「……非常に苦くてな、口が曲がる」
 長い事かかって言葉を選んだバジに、なせはくすっと笑んで、立ち上がった。
「ぬしさまがそうおっしゃるなら」
 衣のホコリをはたいて、また歩き出す。
 その澄んだ横顔に目を向けて、バジは横を歩きながら無意識に首をかしげた。
「ぬしさま、見て? あの花のなんときれいなこと」
 道沿いの花を愛でるなせは、バジの縞合羽を愛用し、その下には破れを繕った元の着物を着て、バジの笠を被っていた。
 剥き出しの足は微かに跡が残るものの、あまり目立たなくなっている。とはいっても変わらず手足に擦り傷を作るのは毎日の事である。
 鞠山衆から手に入れた小袖には袖を通そうとはしない。
 あの日の事は、お互いあれから一度も口にせず、バジは微かに負い目を感じていた。
 飢えぬ程度に飯を食わせて、歩いて、寝やすそうな場所で野宿して、たまに道沿いのお堂で寝る。それを幾度繰り返したか。元々さほど距離の進まない旅路であったが、軟膏が尽きるだけの日は過ぎている。
 バジは、あれから進路をひとつに定めていた。
 そこについたら、すべてを投げ降ろせる。荷も、ヒトも、情も。
 バジの眼が細められる。ずっと抑えてきた『冬』への渇望。研ぎ澄まされる五感。
 近頃はなせに付き合って食事をするのさえおっくうだった。
 なせは、何も知らない。
 バジは彼方の空に目をやった。
95イノシシの国sage2007/07/30(月) 23:22:44 ID:y63p6n0J
『この地はなんと素朴な事か』
 他国の行商人はいう。
 イノシシの国には、何もない。
 大陸に名の知られた都も、名所も、特産物もない。
 あるのは無数の小さな山と、その間に広がる野と川、小さな里と、小さな堀町。
 ただそれだけである。
 野は里や堀町の点在する場所で、里の周りは多くは田畑となって、街道と獣道で縦横に結ばれている。
 街道とて道幅は狭く、舗装されているわけでもないから、悪路が続く。大方は橋も架かっていない。
 イノシシの国で変わったところと言えば、山にヌシがいるところだ。彼らは畏敬の対象であり、どんな衆も捧げ物をかかさない。バジも山を抜ける時は祠に挨拶をかかさない。
『この地はなんと安穏な事か』
 いずこより落ち延びた浮民はいう。
 イノシシ達は基本的に他国に興味がない。あまり遠出もしないので、滅多に他国でイノシシ達を見かけることもない。また、他国との距離がありすぎて、国交もない。唯一国境を面していると言えるほど里が近いのは、狐の国だけだ。
 男達は群れず、統率する王もなければ、内乱もない。そもそも立てる旗印などありもしない。まとまらないので、他国に攻め入ることもない。
 『白膚』の住む堀町は深い堀に囲まれていて、拡張する事は許されていない。だから仕事は細分化し、その日暮らしでも食べていけるような仕組みになっている。
 他に、散在するイノシシの職人達を束ねる元締めがおり、堀町で流通を請け負う。
 イノシシの男達は普段、勝手気ままに、ある者は職人として、ある者は、また違う仕事をして、堀町からも里からも離れて暮らしている。
 里はイノシシの女系が住む普通の里と、隠棲する浮民の隠れ里がある。どちらも警戒心が強く、閉鎖的ではある。
 しかし、普通の里は『冬』になれば里の移動も可能だし、イノシシの国に元から暮らす女なら、イノシシでも『白膚』でも『赤膚』でも『黒膚』でも平等に受け入れられる。
 隠れ里もそれなりの人数が集まって移住してくれば、山の自然を必要以上に侵さぬ事で居住が黙認される。
 豊かな野山と、きっぱりと男女で分かれた生活、足りるを知る暮らし。それがイノシシの国の日常であり、掟である。

 だが。
96イノシシの国sage2007/07/30(月) 23:23:21 ID:y63p6n0J

 同時にこうも言われる。

『化生さえいなくなればもっと発展するものを』
 山へ行って行方知れずになった者の遺言である。
『魔剣が使い物にならなくなるとは、いや聞きしに勝れど、恐ろしい』
 武器の行商人が去り際に言い残した言葉である。
『こんな穢れた地になど足をつける気にもならぬ』
 狐の巫女が国境で言い捨てた言葉である。

 イノシシの国には、何もない。
 魔力、魔法、魔術、魔洸。
 イノシシの民はそれを知らない。イノシシの民はそれを感じない。イノシシの民はそれを使えない。だから、存在さえ作り話だと思っている者も多い。
 だが、他国から来た者は違う。それが存在しないからこそ、浮民は流れ、術者は遠ざけ、商人は嘆き、ある品はがらくたと化す。
 ヌシ達の伝承によればすべては散じ、地に還る。
 生じた力は形となる前に霧散し、放たれた力はかき消え、イノシシの国を漂う凝りモノとなる。
 凝りモノは山に集う。山はすべてを吸収し、野を無害な土地とする。山に育つ草花は、凝りモノを滋養として育つ。化生も山に生まれ、山に死ぬ。
 ヌシ達はその環の中に組み込まれ、山と共にある。
 ヌシ達こそがこの国の支えであり、この国をなす根幹である。
 『冬』は、そのヌシ達がイノシシにさだめた掟であった。
97イノシシの国sage2007/07/30(月) 23:23:50 ID:y63p6n0J

 下り坂を行き、水たまりをよけながら、枯れ草原の中の獣道に入り込む。
 ゆるく曲がっている細道は、周囲の枯れ草の高さと相まって迷路と化している。
「あまり離れるなよ」
 そう声をかける。
 ヒトはその気になれば結構歩けるものだな、と草の陰に隠れたなせの後ろ姿を見ながらバジは感心していた。
 その辺、気もそぞろなイノシシとは違う。
「ばーじーさーまっ」
 草むらの陰からぴょこんとなせが顔を出す。
 悠然と歩くバジの表情がまったく変わらないのを見て、へそを曲げる。
 一体幾つなのか、と思わぬでもない。
 そもそも背丈が違うのだ。草原とほぼ同じ背丈のなせはうまく隠れたつもりだが、バジにとっては草は胸の辺りまでしかない。そのおかげで、辺りはよく見渡せた。
「ん」
 なせの向こう、枯れ草原の中ほどにへしゃげた窪みがある。その近くに木肌のこすれた跡を見つけて、バジは目を細めた。
 あれはおそらく……。
 鼻歌をうたう、なせを見る。
 他に人気もない。臭いもしない。
「なせ」
「は、はい、ぬしさま」
 バジだ、と訂正しようとして、幾度も元に戻った事を思い出し、バジは言葉を続けた。
「小用だ。ここで待っていろ」
「はい。人が来そうだったら草むらに隠れればいいのですね?」
「うむ」
 周囲を嗅ぐ。地面すれすれからも、特に臭いはしない。
 バジは安心してなせを置き去りにし、枯れ草原の奥に分け入っていった。
98イノシシの国sage2007/07/30(月) 23:24:43 ID:y63p6n0J

 イノシシ族は案外清潔好きである。
 堀町では蒸し風呂、里では水風呂、だが何といっても、旅の愉しみといえば、泥浴びに限る。
 草原は背後で途切れていた。
 草のない、泥地。
 木の枝に荷物と帯、着物をひっかけ、身震いする。
 着物の下に隠れていた、背中のたてがみが窮屈そうに寝ているのを起こす。
 下帯に目をやって、一瞬迷う。
 しかし、程なく下帯は木の枝にぶらさがっていた。
 まずは背中から。
 泥を丹念にこすりつける。
 そのうち矢も盾もたまらなくなって、ごろごろと転がり出した。
 窪んだ泥地は、先程通り過ぎた水たまりの比ではない。大きさも程よく、バジの巨体が転げ回るだけの余裕があった。
 思う存分堪能すると、木の根に腰かけ、しばらく待つ。
 しばし愉悦にひたってから、なせを待たせている事を思い出す。
 泥もすっかり乾いていた。
 木で体を擦り、泥を落としつつ、樹脂で毛並みを磨く。爽やかな木の香りが漂う。
 ついでに牙も研いでおこうかと、目を細めた瞬間。
 物音に気づいた。
「ばじさま?」
 時遅し。
 振り返ったバジの前に、目を丸くしているなせがいた。
99イノシシの国sage2007/07/30(月) 23:25:12 ID:y63p6n0J
 不覚。
 バジの心境を表すなら、それしかない。
 なせの視線は、木の枝や、バジの剛毛に覆われた裸の胸、背中、そして下半身などを彷徨って。
「あ」
 と、かなり遅く、両手で目を覆った。
 生憎泥場から出て、木に体を擦りつけていた身。隠すものは何もない。一物は剛毛の中に埋もれているとは言え、さすがに前から見られたら隠れるものも隠れない。
 指のすき間からこちらを見ているなせに、バジは仏頂面で立ち上がった。
 隠すから恥ずかしいのだ。
「……もう少し待っていろ。待たせたかわりに今度はおまえが入れる水浴び場を……」
 バジは、興味津々で泥に足を突っ込んでいるなせの姿を見た。
 縞合羽を脱いで笠とともに草原に置き、着物の裾は帯に折り込み、太股の半ばまで露出している。袖もまくり上げ、試してみる気満々である。
「なせ?」
「肌に良いのでありましょう?」
「いや、俺の抜け毛がだな」
 人の話など聞いていない。
 日焼けしていない太股や二の腕が眩しい。
 ではなくて。
「なせ、やめぬか。俺の毛並みの虫でもついたら困る」
「ばじさまのお側にいて、体がかゆうなった事はありませぬ」
 なせはそう言い切り、楽しげに腕や頬に泥を塗ってみている。
「乾かしてからとれば良いのでしょうか?」
「だから……」
 バジは嘆息した。
 ああ、泥を顔にまで塗りたくり始めた。
 ヒトの好奇心とは恐ろしいものだ、とバジは思う。危険なものに足を踏み出さないように、気をつけなければ。山のヌシの怒りをふとした弾みに買うとも限らない。
「乾かしたらすぐに泥をとるのだぞ」
 バジはあきらめて、木の枝から下帯を取ろうとした。
 ……届かない。
 いや、正確には、そこまで体を伸ばすと下腹が隠しようがない。
 なせに背を向ければいいのだ。目を離してもタカが知れている。と己に言い聞かせるのだが、うまくいかない。
 さっきから気になって仕方がない。
 そして、違う方向にも気になって仕方ない。
 『冬』は間近である。
 『冬』ともなれば、イノシシの男は発情した女を求めて、飲まず食わずで彷徨うのが常である。
 イノシシの女は限られた僅かな日数しか発情しない。
 発情の匂いは、すべてのイノシシの男を狂わせるほど強力である。
 『白膚』の女はそういった制限がないから、いつでも抱ける。だが、イノシシの女の振りまく匂いには敵わない。
 が、しかし。
 なせから時折、何故かその発情の匂いに似た芳香を感じる事があるのだ。
 その匂いに反応していきり立つ一物に、旅の間バジは理性を働かせるのに一苦労していた。
 そして、今も。
 胸元から、首筋から、匂い立つ、恍惚の香り。
 ただの汗だと思っても。
 バジは段々前かがみになるのを押さえようがなかった。
100イノシシの国sage2007/07/30(月) 23:27:04 ID:y63p6n0J
 なせはどうみても、子供の大きさだ。
 小さく、細く、頼りなげな肢体。足にも腕にも贅肉がなく、すらりとしている。
 歩いてきたせいか、太股は意外と肉がついていたが、着物の下の体も、たいした事はない、はずだ。
 バジは横目でなせをちらちらと見ながら、一人自問した。
 子供に欲情するとは、イノシシの恥。
「ぬしさま?」
 なせが枯れ草で手をこすって乾いた泥を落とし、こちらを見る。
「なんでもない」
 バジはその前に背を向けていた。
 ……隠しきれぬ昂ぶりに、あれこれと違う事を考える。
 食料の分配に思いをはせれば、先程かがんで野草に手を伸ばしていたなせを思い出す。
 他の男と遭遇する事を考えれば、なせともし他の男が出会ったらどういう反応を示すのかが気になってしまう。
「ぬしさま」
 なせの声が間近でした。
 背中にすぐ、なせの気配。
 とっさに、枝から着物をつかみ、ばっと背中へと羽織る。
「きゃう」
 小さな声がして、その後にべちゃ、という音がした。
 あえて振り返らず、平常心を取り戻すために深呼吸をして、意識を切り替える。
 下帯も身に付けてから、ようやくおもむろに振り返った。
 なせが泥場に尻餅をついて、こちらを不満げに見上げていた。
「……んもぅ」
 口をとがらせるなせをあえて無視して、股引を履き、支度を整える。
「不用意に近づくからだ。……行くぞ」
「いずこへ?」
 バジは、己のひづめの跡に寄り添うような、なせの小さな足跡を見ていった。
「無論、水場だ」
101イノシシの国sage2007/07/30(月) 23:27:41 ID:y63p6n0J
 なせの尻の泥も乾く頃、二人は水場へとたどり着いた。
 崖下の小さな泉は、滝とも呼べぬ、細い湧水の流れの下にあった。
 あたりは薮に囲まれ、見通しも悪い。
「ここならいいだろう」
 バジは泉に背を向け、近くの岩にどっかと腰を下ろした。
 肩に引っかけた荷をほどきはじめる。
「……あの、着替えはどうすれば?」
「その辺の岩にでもひっかければいいだろう。おまえと違って覗きはせぬから安心しろ」
「まあ、ぬしさまったら」
 なせの鈴を転がしたような笑い声が、頭上から降ってきた。耳元に一瞬息が吹きかけられる。
 バジは己を抑えた。なせの気配が去るまで、顔を上げなかった。
 足音が駆けていく。
 草の擦れ合う音と、衣擦れの音。
 深く息を吐くと、バジは腰帯に提げた煙草入れから煙管を取り出し、火をつけ、一服した。
 小さな水音が耳に入る。
 煙の輪が空に昇っていく。
 バジは大きく息を吐くと、1回分が終わった煙管を眺めた。
 なせが立てているであろう水音は、まだ背後から響いてくる。
 バジは、煙管をしまい、ついでにちらりと泉を盗み見た。
 苔むした深緑の泉に浮かび上がる、白い裸身。
 濡れた黒髪が張り付いた白い背中。
 水の中に消える、小さな尻。
 目に焼き付いたそれを振り払うように、荷から豆本を取り出す。
 絵と文が同じ頁に書かれた、堀町で流行の艶本の類いである。豆本版は過去の人気作を集めており、持ち運びに優れ、イノシシの男のあいだでひそかな人気を得ていた。
 200年程前から人気のある楽憂亭円斎の作で、かつて一世を風靡した『白鞠月恋獄』というものだ。
 『白膚』の妓女白絹と、北方より流れ着いた異人との悲恋である。
 始めは白い鞠にしか見えない異人が、白絹との七夜にわたる睦みあいで徐々にやせ細っていき、最後には白兎の姿に変わる様と、北方仕込みの見慣れぬ体位、白絹の媚態が売りの艶本であった。
 バジは、ぼんやりと頁をめくる。
 いつもなら、楽しめるはずの物語が、扇情的な絵図が、まったく頭に入ってこない。
「ばじさま」
 はねる水音とともに、ふいになせの声がかかって、バジはびくりとした。
 小さな尻の割れ目が、ちょうど脳裏に浮かんでいた。
「なんだ」
 いつにも増して、低音のぶっきらぼうな声を返す。
「赤い小袖をくださいまし。今着ていたのは洗ってしまいました」
「うむ」
 豆本をしまい、荷から赤い小袖を取り出す。
「ほれ」
 バジは立ち上がって、小袖を投げようとして、手を止めた。
 濡れた髪のなせは、雑巾絞りにした着物を草の上に広げようとしたところだった。
 胸の膨らみは、ちょうど頂点で水の中に消えている。
 澄んだ泉は木陰とは言え、にじむ裸身がくっきりと、輪郭をあらわにしていた。
「……少しは隠さぬか」
 バジは苦言を呈す。
「はい?」
 なせが小首をかしげた。
「だから」
 なせがすうっと、鼻元まで水に潜った。
 岸辺に白い腕が伸び、しっかと捕らえる。
「足がところどころ着きませぬ故」
 水辺から身を乗り出した黒髪の向こうに浮き上がった背中と、尻、そして足が見える。
 バジは、内から沸き上がる衝動をこらえ切れずに、小袖をなせの頭へと投げた。
「あっ」
 なせが手を伸ばして受け止め、小袖が濡れるのを防ぐ。
 バジは、それを見ずに怒り肩で立ち去っていき、木陰へと消えた。
102イノシシの国sage2007/07/30(月) 23:28:40 ID:y63p6n0J
 旅路は、また、始まる。
 小袖の裾をからげ、バジの匂いのしみ込んだ縞合羽と笠を深く被らせ、なせの手を連れて、バジは荒々しく歩いていた。
 引きずるような勢いで歩くバジに、なせが小走りでついていく。
 だが、元々足の長さはほぼ同じ二人。すぐに歩みの歩幅は同じになった。
 バジは苛立っていた。
 子のくせに『白膚』の妓女のような、赤い着物が汚れを落とした白い肌に映えるのは何故だ。
 小さな体のくせに、妙に女のような色気を纏わせるのは何故だ。
 なせは、うつむいて手を引かれていた。
 バジは不機嫌を隠さずに、なせを見やり、それから、前方から漂ってくる匂いに、なせの手を離し、普通に歩くよう言った。
 なせがはっと緊張する。
 程なく、荷車の音が響いてきた。
 奇妙な網笠をすっぽり被った男が、荷車と共に近づいてくる。
 なせは、縮こまるようにバジの後に隠れた。
「よう」
 男が手を上げ、こちらに挨拶してきた。
「蜂飼衆か。南へ行くのか」
「おうよ、もう北の方は霜が降りてきてな。冬も近い」
 男は大げさに震えてみせる。
「その後ろのガキはどうした」
「ああ、途中で拾ってな。仕方ないから故郷へ遠回りするところさ」
「たしかにガキ連れじゃあ、女にもてねえな。難儀なこって」
「まったくだ」
 編笠の中から、鼻先を突き出して、男は臭いを嗅いだ。
 バジの着物の裾をつかむ、なせの握りこぶしに力が入ったのがわかった。
「……しかし、そのガキ、随分変わった匂いがするな。イノシシじゃねえのかい?」
 蜂飼衆の男が、バジの後ろを突き出た鼻で指し示す。
「多分ネズミの子だろう。俺には関係ないがな」
 バジは安心させるように、笠を被ったなせの頭をぽんぽんと撫でた。
「そうか。ではな」
 蜂飼衆は怪しむ様子もなく、荷車を引かせた甲殻の獣を促して、また歩き始めた。
 この国では見知らぬ他種族も珍しくない。ましてや、バジの匂いがたっぷり染み込んだ縞合羽と笠の匂いが、男の鼻を鈍らせた。
「よい『冬』を」
 バジは見送る。
 荷車が見えなくなるまで、なせの体はこわばっていた。
「……今のは?」
 細い声で尋ねる。
「養蜂を商いとする連中だ。花の蜜を集めて国中をまわる」
 蜂蜜を見ると、ふるさとで一口だけ飲んだ、蜂蜜酒が思い出される。
「さあ、行くぞ」
 バジが歩き出すと、なせはこくりと頷いてついてきた。
 これから先は、秋も深まる、紅葉の地であった。


 イノシシ編 参(了)
103イノシシの国sage2007/07/30(月) 23:46:38 ID:y63p6n0J
作中、野郎の入浴シーンという御見苦しい点がございますので、
気になる方は名前欄のイノシシの国をNGワードにしてスルーして下さい。


それでは、また次回、ヒト編で。
104名無しさん@ピンキーsage2007/07/31(火) 01:34:01 ID:4ktLSLYF
待ってました!!!
しっとりした文体がたまらなく好み。ヒト編も楽しみにしてます。
105名無しさん@ピンキーsage2007/07/31(火) 07:13:18 ID:tpYf4JE/
なせはかーいーなー
106名無しさん@ピンキーsage2007/07/31(火) 14:48:10 ID:J/VQ72Ph
なせ、かわいいよ、なせ
蜂蜜キャンデーかなんかを
道々落としといて、こっそりかどわかしたい(w

そして何気に『白鞠月恋獄』を読んでみたい漏れ
107名無しさん@ピンキーsage2007/07/31(火) 15:49:19 ID:6avs++zl
なせはいい娘だな。
泥浴びしてる隙にこっそりさらいたいくらいにいい娘だ(←ぉぃ)
108名無しさん@ピンキーsage2007/07/31(火) 20:01:07 ID:8cncTzKH
なんという泥レス…
なせは明らかに一人時代を先取りしてしまった
バジは間違いなくうらやましい奴
109名無しさん@ピンキーsage2007/07/31(火) 21:12:57 ID:RgE6O5I5
色っぽい幼女って、現代の男にとってのデストラップだよな。
110名無しさん@ピンキーsage2007/07/31(火) 23:41:40 ID:QgZkxKqK
うん

バジに萌えちゃったよ…orz
111名無しさん@ピンキーsage2007/08/01(水) 11:25:35 ID:bsJ1yrY/
>>108ここにも泥レスと考えている人がいたかw

なせたん小動物みたいでカワイイよ

GJ!!次のヒト編も待つ!
112名無しさん@ピンキーsage2007/08/02(木) 08:44:46 ID:Ki62DRvf
抑えた中にかくしきれないエロスの気配を感じました
このじらし上手め…!
バジと一緒にこっちまでモヤモヤムラムラ。
次回が待ちどおしい。
113蛇担当sage2007/08/03(金) 21:47:30 ID:IdDcbuuY
スレの流れが落ち着いたようなので酒の勢いに任せて超私信。

第九話脱稿しました。
んでも、ネタバレ成分が多いので、この時点では落としません。
年末あたりに向けて完成させる第十話と同時に投下します。
んでも、転勤して忙しいので執筆ペースが落ちるかも、かも。
でもまあ一人暮らしになり、時間が取りやすくなった面もあるのでトントンかな、とも。
一人きりっていいですよね。方言丸出し問題なし。そうだべそうずらでっしゃろばってん気にしない〜♪(歳ばれるネタ)
今現在ちみちみ書いてます。……第十話目はエロシーン三回かよ。プロット見直してかなり絶望。
ま、まあ、なんとかなるさ!ご期待下さい!
114名無しさん@ピンキーsage2007/08/03(金) 22:37:21 ID:slt9U3ry
プロットかぁ……第一話書いてた頃に思い描いてた構想は一体どこに飛んでいったんだろうなぁ……(遠い目)
115名無しさん@ピンキーsage2007/08/03(金) 22:49:08 ID:IdDcbuuY
アイディア電波になって誰かの脳内に届いたんじゃないかな
116名無しさん@ピンキーsage2007/08/04(土) 00:33:57 ID:P9jhBrKi
初期の構想を見直すといかに自分が痛いのかを感じたりする。
117名無しさん@ピンキーsage2007/08/04(土) 00:59:39 ID:h3MYjop0
推敲しようとして自分のss見直したら
あまりのイタさにお蔵入りというのは
よくある話らしいね
118名無しさん@ピンキーsage2007/08/04(土) 01:48:17 ID:mIB5AHln
それを すてるなんて とんでもない!





棄てるくらいならtxtでうp
119名無しさん@ピンキーsage2007/08/04(土) 08:29:43 ID:aMo5lV1d
>113
おつかれさまです!
しかし年末までギリギリ歯噛みしながら待たねばならないのか……うう
つらい
120名無しさん@ピンキーsage2007/08/04(土) 08:35:21 ID:9oAc/F3q
見直して悶えてお蔵入りと
見直さず出して悶えるのと

泣きたくなるのはどっちだろうなあ
121名無しさん@ピンキーsage2007/08/04(土) 08:47:43 ID:uFZRyAIX
>>120
 舌じゃなくて、絶対『下』

 上はまだ昇華させて新しいSSへと繋がっていく可能性があるが
 下の場合は、何かの拍子に間違えて思い出しただけで、発作的に攣りたくなる
122名無しさん@ピンキーsage2007/08/04(土) 16:37:53 ID:/zh7Dilp
風呂敷広げすぎて悶々とするってのも加えたい今日この頃……
べっ!別に!このスレの話じゃないんだからね!
123名無しさん@ピンキーsage2007/08/04(土) 18:17:20 ID:b6I/GLQx
風呂敷か……
確かにご主人さまの入浴を覗いてるのがバレて尻に敷かれるなんてのもいいものだが、
こちむい世界じゃ人は性奴隷デフォ、裸の付き合い当たり前だから、わざわざ覗く必然性を作るほうが大変なんだよな…(そっちの風呂敷じゃねえ
124名無しさん@ピンキーsage2007/08/04(土) 18:20:22 ID:DTc/HuKw
外はざあざあ雨が降っている、こういう日は家でごろごろするしかやる事がない。
というわけで僕はベッドでタオルかぶり膝に御主人様を乗せてべったりまったりしているのだ。
「御主人様、僕の胸板固くないですか」
胸に顔をすりすりと擦りつけている御主人様に聞く。
「いいのです、あなたの匂いはいい匂いですし。それに私の匂いも擦りつけているのですよ。」
そういえば猫にはそんな習性があったなぁと思い出す。どうせならもっとくっついてやろうと
ちょっと御主人様のお尻と腰を掴んで、少し浮かせてからこちらに寄せるようにきつく抱きしめた。
「ん、にゃぁん」
御主人様から甘い声が漏れる、結合している部分が浅く上下に動いたからだろう。その証拠に
動いた時にきゅきゅっと僕の物をしっかりと締め付けてくる。
「御主人様はこの体勢好きですよね」
体格は僕の方が大きい、対面座位でもすっぽりと両腕に入るくらいだ。
「だって、この方が落ち着きます。」
時折御主人様はもぞもぞと腰を動かす、こうしてゆっくりとねちっこくするのがこの方は好きなのだ。
僕もこういった雨の日は御主人様とべったりしている時間が多いのでゆっくりとしていた方がいい。
たまに耐え切れなくなってそのまま中に出してしまう時があるけど、それはそれでいい。
現に既に2回放っている、動けば動く分中から僕の精子は溢れてくるけどかまいやしなかった。
「うふふふ、精子さんも出口がないから、ゆっくり私の卵子さんを探せますね」
「ヒトとの間に子どもは作れないんじゃなかったんでしたっけ?」
「ゆっくり時間をかければわからないじゃないですか?」
ふふふと微笑む御主人様がキスをせがんできたのでそれに答えてあげる。ひとしきり味わって口を
離した。
「あなたとの赤ちゃん欲しいなぁ」
僕が御主人様の頭を抱きしめて猫耳と一緒に頭を撫でてあげると目を細めて「ふにゃあ」と鳴いた。
雨はしばらくやみそうにはなかった。
125名無しさん@ピンキーsage2007/08/04(土) 18:23:05 ID:DTc/HuKw
前々から書きたかったのが時間が出来たので書いてみた。
続き物ではないのでこれで終わるけど、どうかな?
あと、雨の日にねっとりえちぃはけっこーいいと思うんだよ。
126名無しさん@ピンキーsage2007/08/04(土) 19:16:38 ID:uFZRyAIX
>>125
 GJ!!!
 だけど、これで終了なのは、かなり寂しいっす
 んで

 ちょっと肌寒く感じる雨の夜
 屋根に当たる結構強い雨音を聞きながら
 自分の体を貪る様に求めてくる愛しい人って
 確かにテラモエス

 っーか、壊れるくらいメチャクチャにシて!って思う
 
127名無しさん@ピンキーsage2007/08/05(日) 09:04:15 ID:3k8cbnng
GJ!!ラブいですな。
128名無しさん@ピンキーsage2007/08/05(日) 09:58:38 ID:0k7LP/Kt
むしろ風呂椅子の代わりに敷かれるとなると考えちゃった俺はヤプーの見すぎ
129名無しさん@ピンキーsage2007/08/05(日) 22:29:38 ID:0iEK2YuR
http://arakawa.tn.st/uploaders/kinbaku/src/kin0726.jpg
130名無しさん@ピンキーsage2007/08/05(日) 23:57:45 ID:0k7LP/Kt
>>129
スレ違い、ただのヒトのヒト奴隷注意
131名無しさん@ピンキーsage2007/08/06(月) 10:17:18 ID:MwRP5SR4
うん。ある意味、こちむい世界のもう一つの真実。
ロリペドなご主人様に拾われた♀のヒトが成長したら……
132名無しさん@ピンキーsage2007/08/06(月) 13:33:52 ID:MBhB4r8O
「捨てる」「殺す」よりは「転売」が多いだろうな。高い買い物なんだし。
まあそんな道楽も少しはいるだろうが・・・
133名無しさん@ピンキーsage2007/08/06(月) 15:05:15 ID:ppE6O2ov
そんな、興味を失ったおもちゃを格安で買い集めて、そしてヒトを使った女郎宿を経営するネコ・・・・
ほのぼのとした幸せな召使だけが真実じゃないよな、絶対。
だって、好景気のときに札束を燃やして明かりの代わりにするのが金持ちと言う生き物だ。
民衆の前でヒトの女を・・・・解体ショーに使って、
「まぁ、他にもいますからね。飽きてきてたし」とか言い出しそう。
134名無しさん@ピンキーsage2007/08/06(月) 16:10:21 ID:9U6FK9js
>>131
♂のヒトを購入して、子供作らせると思うにょ
135名無しさん@ピンキーsage2007/08/06(月) 16:23:40 ID:VotZ3s2f
実際に愛犬家の集まりでも、気の合った飼い主同士で飼い犬を交配させるなんて
ことがあるんだし、そういった感じで子供作らせたりするかもね。
136名無しさん@ピンキーsage2007/08/06(月) 18:11:23 ID:MBhB4r8O
こっちの人-獣寿命比率も、こちむいの寿命比率もそんなカンジだし、次世代に前世代を失う心の穴を埋めさせるって交配あるんだろうな。
交配もピンキリで結婚式から種付師の監視下までありそう。
137名無しさん@ピンキーsage2007/08/06(月) 21:29:52 ID:dP/cVFZC
心の穴≒下の穴とか思った俺だめぽ
138名無しさん@ピンキーsage2007/08/06(月) 22:32:22 ID:dP/cVFZC
しかし、思えば不思議と一つの作品でヒトの男女が出会っている作品って少ないんだよな。
139名無しさん@ピンキーsage2007/08/06(月) 23:52:09 ID:jzq1p0xm
わざわざ文章化する必要性がないだけじゃないか?
だって幸せな立場のヒトには主が恋b(ry
140名無しさん@ピンキーsage2007/08/07(火) 00:16:30 ID:+oFLe2mK
>>137
あながち間違っていない件orz

>>138
プロット済
141名無しさん@ピンキーsage2007/08/07(火) 01:38:54 ID:i8J/LeAx
>>138今までの作品のほとんどがヒトを恋愛対象として見てるからヒト同士が出会う事はライバルを増やすことになるんじゃないかなとかなんとか。


一応、設定上はヒトってのはそんなにホイホイいるものじゃないわけだしな。
142名無しさん@ピンキーsage2007/08/07(火) 03:38:06 ID:JxKdn6AX
ヒト男女+ご主人さまの三角関係もいいものだと思うんだ。
143名無しさん@ピンキーsage2007/08/07(火) 07:09:16 ID:xD1SPPdN
>>142

> ヒト男女+ご主人さまの三角関係もいいものだと思うんだ。

獅子国やん
144名無しさん@ピンキーsage2007/08/07(火) 20:06:03 ID:Hd9HCbqu
お前ら全員萌え殺してやる……
145名無しさん@ピンキーsage2007/08/07(火) 20:22:46 ID:YYqw1LSe
>>144
まんじゅう怖い
146名無しさん@ピンキーsage2007/08/07(火) 22:18:32 ID:FBFXZPIo
>>144
お茶も怖い
147名無しさん@ピンキーsage2007/08/07(火) 23:28:08 ID:yUxojxeJ
萌え死ぬって、腹上死みたいなもんなんかな
148名無しさん@ピンキーsage2007/08/08(水) 00:12:57 ID:23/Yyfn1
>>143
ファリィ×キョータくんはともかく、
ミコトちゃん×キョータくんはちょっと弱いかなぁなんて思ったりする俺参上
最終的にはキョータくんはミコトちゃんとくっつくっぽい雰囲気だけどどうなることやら
149名無しさん@ピンキーsage2007/08/08(水) 07:14:12 ID:gDb6QxBv
ミコトといえば、やっぱり調教済みの中古メスヒトだと、どっか壊されてあんな感じの無感情っ娘になってる事が多いんだろうか。
150名無しさん@ピンキーsage2007/08/08(水) 07:55:55 ID:vTLfV9Zs
逆にニンフォマニアになるのも有りがちではあるが。
エロ漫画的に。
151名無しさん@ピンキーsage2007/08/08(水) 08:24:40 ID:szrK/bGc
>>148
1行目をフェイレン×キョータくん
と読み違えてリアル吹いた ゴメン
152名無しさん@ピンキーsage2007/08/08(水) 10:00:55 ID:wgbd/mAU
ぬふうっ!
153名無しさん@ピンキーsage2007/08/08(水) 10:53:19 ID:23/Yyfn1
>>151
世界観的に言えばそんなに変じゃない組み合わせではある気がするけどなw
フェイレンさんにそっちの趣味が無いってだけで

ってかミコトちゃんキョータくんに取られてフェイレンさん一人ぼっちか
154名無しさん@ピンキーsage2007/08/08(水) 11:27:36 ID:ZmRasmV8
じゃあフェイレンさんは俺の嫁。

筋肉オヤジケモ(*´д`*)ハァハァ
155名無しさん@ピンキーsage2007/08/08(水) 12:02:23 ID:gDb6QxBv
>>154
フェイレンさんの脳内イメージがどうしても筋肉オヤジになるのは俺だけじゃなかったかw
勝手なイメージなんだけど、ライオンってマダラなら若獅子もイメージできるけど、獅子獣人(♂)はどうしても筋骨隆々の豪快系オヤジキャラのイメージになってしまうw
156名無しさん@ピンキーsage2007/08/08(水) 12:35:07 ID:IeCb87/Q
じゃあキョータくんとミコちゃんの立場が逆転していた可能性も
有り得るわけだなあ。よかったなあ、キョータくんバック無事で。
157名無しさん@ピンキーsage2007/08/08(水) 13:05:50 ID:23/Yyfn1
つまりミコトちゃんの心の傷を癒すファリィとの百合プレイと言う事か
いや、それならサーシャさんも含めて3(ピー)と、そういうことかっ!
158名無しさん@ピンキーsage2007/08/08(水) 14:33:18 ID:fN+m4zsn
フェイレンさんは豪快オヤジと言うより、最近流行のチョイ悪オヤジをイメージしてた。ww
159名無しさん@ピンキーsage2007/08/08(水) 20:32:49 ID:OeH314zh
どっちにしてもオヤジ系かw
160名無しさん@ピンキーsage2007/08/08(水) 22:32:56 ID:ZmRasmV8
フェイレンさんの下着は褌以外は認めんからな!
161名無しさん@ピンキーsage2007/08/08(水) 22:40:53 ID:gDb6QxBv
ま、中華だしなw
フェイレンさんとバジの旦那は褌っぽい。
確かジーきゅんはトランクス派だった気が。
ラウさんとかオオカミはそもそも下着つけてない気がするw


…って、そこまで書いて思ったが、俺やっぱ筋肉けも好きだわw
162名無しさん@ピンキーsage2007/08/08(水) 23:43:56 ID:fznhirWB
リン先生もふんどしでお願いします
163[短編]探偵にゃんこーの厄日@2007/08/09(木) 11:43:01 ID:wR0YFeAi

今日は厄日だ
深く溜息を付きながら、家への道を歩く、具合が悪いことに、天気まで一転しての大雨、傘を持っていない
為、濡れるしかない。
雨宿りしたい所だが、深夜の為、書店も開いておらず、時間を潰す事もできない、体力の無いマダラじゃあるまいし
夏場の雨如きで体調を崩す事も無いだろうが、それでも体毛が肌に纏わり付く感触は、不愉快だった。

本当なら今頃は、依頼料ももらって、酒場にでも転がり込んでいた筈なのだが、あの貴婦人の錯乱した様子では暫く
収入は無いだろう、否、それどころか、ヒト奴隷の死の責任まで追及されかねない。
只でさえ、未だにあの奴隷の惨殺死体が瞼の裏にこびりついて、酒を使ってでも流さなくては、夢見まで悪くなる
に決まっていると言うのに、まったく持って泣きっ面に蜂、弱り目に祟り目とはこの事だ。

遠くから雷鳴が聞こえる、本格的に天気の具合も悪くなってきたらしい、少し、急いだ方が良いかもしれない
雨は気分だけの問題だが、雷はさすがに命に関わる。

そう思い、駆け出した矢先、俺の目の前に天を裂く様な音と共に、光の柱が降り立った。
闇に順応していた目を焼く閃光にふぎゃあという、知人が聞いていれば思わず噴出すような悲鳴を上げる
痛い、目が痛い、糞っ!なんだこれは!ヒト奴隷の呪いか何かか?、俺は恨まれる筋合いねえぞ!

暫く蹲っていると、鼓膜も痺れから復活してきたのか、再び雨音だけが響き始めた
音だけを頼りによろよろと歩き始める、確かここら辺にバックを落とした筈なのだが・・・・
そして、妙に柔らかく、弾力のあるものに手を触れ、予期せぬ感触に思わずうめき声を上げる
なんだこれは、まさか落雷の被害者でも出たのか?、糞、また夢見が悪くなる事確定じゃねえか

しかし、ゆっくりと回復してゆく視覚が捕らえた現実は、そんな予測のさらに斜め上を行っていた
164[短編]探偵にゃんこーの厄日A2007/08/09(木) 11:45:06 ID:wR0YFeAi

ヒトが落ちてくる、と慣用句としてはよく使う、だが実際の所は必ずしも天から降ってくる訳ではないらしい
川から流れてきたり、何の前触れも無く突然箱の中に現れたり・・・・、たとえばいままさしく目の前にあわられた
男だか女だかわからんヒトの様に、雷と共に落ちてきたり。

えーっと、つまり、なんの前触れも複線も無く目の前にヒトが振ってキヤガリマシタヨ、と。

明らかにこの世界のデザインではない服を身に着けた(かがくごうせいせんい、だったかなんだったか)
その明らかにがきくせぇヒトは、丸まったまま今は雨に打たれている。

ここで成金野郎や乞食だったら、「うっひょー!、大金ゲットゥ!ひゃふーぃ!」とか大喜びするんだろーが
今日の俺はこの上なくナイーブでっつーか陰鬱だ、その上こんな面倒ごとに関わろうという気にはなれない。

朝になれば、きっと誰かが気が付くだろう。


三度目の落雷、目を瞑った表紙に、脳裏に映像が浮かぶ
四肢を外され、骨盤が砕け、腹を割かれて中に精液を貯められた、まだ雄にも成り切っていないヒト奴隷
泣き叫ぶ猫の貴婦人。
ほんの数分目を離しただけだった、ヒト特有の強い好奇心がそもそもの原因だ、そして二つ目の原因は糞ったれた変態サディストに
目を付けれれたということだった。

俺達に比べて恐ろしいほどに、残酷なまでに貧弱なヒトという種族。

・・・・・・・・糞、なんだお前は、汚れきった野良猫じゃねえのか?、どこのヒーロー気取りだよ
軍で散々な目に逢って、二度と正義漢ぶったりしねえって、思ったんじゃなかったのか。



そのヒトが目がさめて最初に言った一言は、「この変態!獣!しかも両方かよこの化け物!」だった。
で、今はなぜか俺自身の借家から追い出されてまた雨に打たれている


・・・・・・・心底、正直、ほっとけばよかった。

いやね、殴って黙らせる事も出来たんですけどね、屈強な狼の肋骨でもたたき折れる俺が、ヒト(その上メス)に暴力を振るうわけには
いかないでしょう、常識的に考えて。

いやまあ、服を脱がした俺にも責任はありますが、あくまでそのままじゃ病気になるかもしれないという親切心からでしてね?
下心とかなかったんですよ?ちゃんと拭いたし。まあ、メスだと予測していなかった俺にも多大に問題点があるわけですが

そうだよ、最初に触れたのは胸だったんですよ、見た目小さいくせに以外と柔らかいのな、いやまあ、それはどうでもいいとして

はやく家の鍵をあけてくれないかなー、鍵中に置いちまったんだよなー、・・・・・叩き割るにしてもここ俺の家だから
俺が修理代払う羽目になるし・・・・・

あ、空が青くなってきた・・・・・・本当に今日は厄日だ。
1651632007/08/09(木) 11:46:43 ID:wR0YFeAi
電波を受信してそのまま書いた、エロシーンを忘れて、今では反省している
166名無しさん@ピンキーsage2007/08/09(木) 12:04:54 ID:NbQbR3V3
YOU!そのままちょっとずつ書いちゃいなYO!
167名無しさん@ピンキーsage2007/08/09(木) 12:11:48 ID:wR0YFeAi
sageを忘れに今気がつく、ごめんなさいorz
168名無しさん@ピンキーsage2007/08/09(木) 17:35:11 ID:HCx8ShEp
猫探偵とヨーコちゃんの続きかと思ったら別件?
いずれにしてもwktk
169名無しさん@ピンキーsage2007/08/09(木) 19:19:52 ID:kg6CX18Z
続きを座して待つ。
170名無しさん@ピンキーsage2007/08/09(木) 21:02:52 ID:Zg04IizO
>>163
君がっうpするまでっwktkするのをっやめないっ!
171名無しさん@ピンキーsage2007/08/09(木) 21:36:32 ID:lVJ6lwE1
>161
バジの旦那の褌は褌でも、越中褌だよ。
これだけは譲れないね。
172名無しさん@ピンキーsage2007/08/09(木) 22:53:54 ID:NbQbR3V3
いやいやここは黒猫褌を(ry
173名無しさん@ピンキーsage2007/08/10(金) 00:16:22 ID:zLY2Q1In
>171
バジの旦那with越中褌で、なんか知らんが田亀源五郎先生思い出した。
174名無しさん@ピンキーsage2007/08/10(金) 17:25:55 ID:+H1UiD/V
>>173
何のことかと思って調べてみたらなんとも強烈な精神的ブラクラをありがとう orz オエッ
やっぱホモとか無理だと再認識したよ……
175名無しさん@ピンキーsage2007/08/10(金) 19:47:06 ID:cCPxxv3A
>>174
まあ「通好み」ってのは「流行らない」ってことだからな。
176名無しさん@ピンキーsage2007/08/10(金) 19:49:00 ID:EA9YRVxm
>>174
好奇心の持ちすぎは命を縮めるぞ
177名無しさん@ピンキーsage2007/08/10(金) 21:18:47 ID:2siadoPc
大多数の人間が嫌がるか興味を示さない需要をして、ニッチスペースと言うわけで……
178名無しさん@ピンキーsage2007/08/11(土) 02:02:15 ID:u/6gJ+Jt
外国にゃ「好奇心が猫を殺した」なんていう言葉があってだな
179名無しさん@ピンキーsage2007/08/11(土) 20:51:21 ID:DKwX0CwE
好奇心は猫を殺すじゃないのか、ギャング版なのか
180名無しさん@ピンキーsage2007/08/11(土) 20:55:28 ID:7SvOfoJV
つまり好奇心でアブノーマルプレイをけしかけてみたら召使い君の逆襲を受けて性的な意味で殺されちゃった猫のご主人様ですね
181名無しさん@ピンキーsage2007/08/11(土) 21:08:17 ID:e44Fak/F
猫に限ってそれは無いと思うんだ……
182名無しさん@ピンキーsage2007/08/11(土) 21:50:03 ID:xD4ohkNi
うさぎは?
ねぇ!うさぎは??
うさぎの立場はどうなんだ!!
183名無しさん@ピンキーsage2007/08/11(土) 21:53:29 ID:2WHZ0stt
性の方面にかかわることにおいてあまり厨性能すぎるウサギは
もはや語るのもあほらしいような気がしないでもない。
184名無しさん@ピンキーsage2007/08/11(土) 23:10:39 ID:02XpA5Zh
ジークにおはぎ
内駄犬外ティンダロス
185名無しさん@ピンキーsage2007/08/11(土) 23:47:51 ID:DhAi9mGt
だが性的な意味での厨性能は実生活においてはあまり意味がないからなあw
186名無しさん@ピンキーsage2007/08/12(日) 00:42:55 ID:XHjCzlRb
だがしかし、彼等の生活は性生活であって(ry
187名無しさん@ピンキーsage2007/08/12(日) 08:54:55 ID:ObSM/7mz
性生活というよりラヴ生活
188名無しさん@ピンキーsage2007/08/12(日) 10:12:57 ID:FRaTQ2vI
愛のある性活
189名無しさん@ピンキーsage2007/08/12(日) 10:53:29 ID:6HyZBQuv
ウサギの国の外で暮らすウサギとかはどうしてるんだろうな、性欲
やっぱり夜になるとムラムラしたりするんだろうか、狭いところに入りたくなる
とか
190名無しさん@ピンキーsage2007/08/12(日) 11:26:43 ID:XGLqkcJs
>>189
ザラキエル博士みたいなのがあちこちにいるんじゃないかな。
で、不運にも犬の国やカモシカの国に入ったら、国民の性的被害量に応じてジーきゅんやステイプルトンに闇で始末されてるんだろう。
物理的な意味で。
191名無しさん@ピンキーsage2007/08/12(日) 14:09:51 ID:nuRSs234
性的性能が高いだけならともかく、さりげなく危険レベル高めな
「誰も哀しまず、傷つかず、不幸にならず、犠牲にならず、諍わなくて済むなら何やってもいいじゃない」思想を
ウサギ当人がどこまで抑揚できるかに掛かってるな

まあ多分ザラキエル博士見たく倫理感がぶっ飛んでそうなのはともかく
普通のウサギなら他国だとおとなしく普通に生活してるんじゃないかな。
ウサギの国ほど他の国は各種衛星対策が万全なわけじゃないし。
192名無しさん@ピンキーsage2007/08/12(日) 19:10:48 ID:f7A6SCiA
そも「アトシャーマから出て暮らすウサギ」が圧倒的に貴重な上に、
外に出ることになった事情も人それぞれだから、
外での典型的なウサギのライフスタイルなんて無いんじゃないかなあ。

でもたぶん寂しいと死んじゃうので誰かしかの相方はいそうな気もする。
193名無しさん@ピンキーsage2007/08/13(月) 02:11:52 ID:tEgGNSct
シュバルツカッツェ城下街にて


暑苦しい夏の夜。
静まり返った町並みの一角で、二つの人影が石畳の上で揺らいでいた。
「旦那さま、やめましょうよう、こんなとこでっ・・・」
「・・・あのね、全然、説得力、ないんですよ。そーんなこと・・・言っても」

一つの声は、ヒトのもの。
未成熟な少女の、怯えるような震える囁き。
もうひとつの声は、兎。
ぎこちなく敬語を綴る甲高い少年の声が、無遠慮に夜の街に響く。

「だっ、誰か来たらどうするんですか・・・っ!」
「誰か来たら、何か問題あるんですか?」
兎は手に持った札をふるふると揺らす。
「来ても、どうせ何も見えやしない、ですよ」
「だからって・・・!」
少女は大きな瞳を温い涙で潤ませながら、主人を問い詰める。
「だからって、なんですか?」
兎も負けじと大きな目を見開いて、少女の顔を見上げる。
そして、その体をそっと抱き寄せた。
「知ってるでしょう、君は」
首筋にそっと頬を寄せ、ふわりと擦る。
「ボクはね、君がして欲しくないことは、何もしないんですよ」
少女を抱く兎の手に、力が篭もる。
「君が本当はどうして欲しいか、ボクは知ってるんですよ」

「・・・旦那様、私は・・・」
言葉に詰まりながら主人を見下ろす少女。
「私は・・・そんないやらしいこと、考えてないです・・・」
言いながら彼女は俯いて、
「・・・ごめんなさい、うそです」
兎を抱きしめ返すのだった。
194名無しさん@ピンキーsage2007/08/13(月) 02:12:56 ID:tEgGNSct
よその国に出てきた兎ってこんな感じ?
相手の隠れた性癖を読み取ってどんどん自分の好みに寄せちゃうとか そんなイメージ。
195名無しさん@ピンキーsage2007/08/13(月) 02:22:10 ID:ap1gUP8K
>>194
wktkwktk
196厄日の人sage2007/08/13(月) 10:00:30 ID:M5DaH75M
案外好評だったから、短編として保管庫に入る前にシリーズ化して
「えっへー短編じゃなくなりましたー、とかで済まそうと思ったら
既に短編で登録されていた件について。

仕事早っ!GJだけどもう二話目メモ帳で書いちゃったんだぜ


この場合このスレ的にどうするのが正解?
教えてエロい人
197名無しさん@ピンキーsage2007/08/13(月) 11:18:17 ID:nATB6sUf
>>196
まずは投下するのが正解。
数話たまったら誰かが保管庫の長編に移します。
198探偵にゃんこーの厄日 二話目 @sage2007/08/13(月) 12:08:18 ID:M5DaH75M
私の名前は晃子(あきこ)、少しだけ文学オタクな普通の女子だ
・・・・まあ、友人にはよく
「アキコってほんと変わってるよねー、あれ、天然系?」だの
「もう少し見た目に気を使いなよ、それじゃ干物女になっちゃうぞ」
だの言われてるあたり、ひょっとしなくても普通の女の子の定義からは
大きく外れてるのかもしれない。
だがそんなことはどうでも良い、私は女という生き物でも、
じょしこーせーと言う生き物でも無く
私という一つのぱーそなりちーをもった人間なのである。
などといまいち意味のわからない単語を使ってみたりするが、
まあ、たぶんそんなに使い方は間違ってないはず?

 まあ、飾らずに言うと
「皆と同じような顔するのめんどくせ、だる」
というのが本音、一応、料理掃除洗濯は同年代の子よりずっと
出来るので、女性としては終わってない、と思いたい、うん、心の底から。
 ま、クラスに一人くらいはいる、苛められっ子と紙一重のハブられっ子というか、
休み時間にダルそうに教室の端っこで本を読んでるようなタイプ
だと思って頂ければたぶん当たりだろうわかっちゃいるけどやめられない、
いわいる喪女一直線のだめだめタイプ。

 マンションの一室、愛しの我が家に帰る、
そう狭くない部屋に一人、というのはなかなか寂寥感がただようなあ
などと思う改めて思ったりしながら、
とりあえずいつの間にかベランダに居座っている野良猫のぷーにゃんに餌をやって、
ぐにぐに撫で回したりしてみる
にゃんこは食べて糞して寝るだけだから楽でちゅねー、
とか言ってみるが、よく見ると真新しい傷が出来ていたり、
戦闘の後が生々しいことに気が付いて、
猫も大変なんだなあなどと考えを改めた、

ごめんよぷーにゃん(♂)、お前を誤解していたよ。

 自分で作った晩御飯を食べながら、学校での話題に取り残されないように
糞つまらない糞テレビの糞エンターティメントをダラダラと見る、
いや、正直言いすぎた、すまない、だけど興味ないとそんなもんなんだ、
本音、ほら、内輪の話とかされてもファンでない限り分からないし。
 はたから見れば何を一人で突っ込んでるんだという思考の流れだが、
基本的に何か考えていないと孤独死しそうな環境下なものだから
そこらへんは多めに見てくれると有難い、
仕送りで生活費だけは義理親負担(正確には実親の遺産の一部)
だから、特にお金に困っては居ない辺りが実に性質が悪い、
・・・・いやほら、関係なくてもアルバイトとかはした方が良い、
というのは頭では分かっているのだが、目的が無い上、コミュニケーションが
苦手だから、どうも気乗りがしないのである。
199探偵にゃんこーの厄日 二話目 Asage2007/08/13(月) 12:12:47 ID:M5DaH75M
 食器洗いを終えて、ホワイトボードを見る、今日で切れた常備菜や、
牛乳、朝ご飯のパン等の書き込みがある、如何せん、忘れっぽい為、こうやってこまめに
ホワイトボードを活用することにしているのだ、
とりあえず、近所のスーパーに買出しに行ってこよう、特に常備菜は無いと困る。

 雨の日の散歩は嫌いではない、確かに太陽が出ている時のような明るい気分には慣れないが、
音に包まれながらの散歩は寂しくないから良い、雨音の中にわりと頻繁に雷が混じりだした辺り、
そろそろヤバイかも知れないが、かといって早く移動できる交通手段を持っているわけでなし
バスを使うほどの距離でもないので、自分に落ちないように願いながら歩くだけだ、まあ、幸い、
16年も生きてきたが、雨の日に感電死した事は無いしそこまで運が悪い方でも無いとおもう、
たとえ玉突き事故で家族を三人無くしてたりしても、さすがにそこまでは酷くないはず

 しばらく歩いていると、雨音以外の音程の高い音が聞こえ始めた、猫の鳴き声だ、
周りを見回すと、小さい子猫が、民家の塀の上でみーみー鳴いて
居る事に気が付いた、降りれよ、雨宿りせーよ、と思うが、
視界が当てにならず、髭などは濡れそぼってレーダーとしての役目を果たさない状態な為
やっぱり普段と違うと不安なのだろう、飛び降りる勇気が出ないようだ。経験も少ないし、しょうがないか。
でもそのままじゃ風邪引くぞ。

 首筋を摘んでそこらへんの屋根下に強制連行すると、
そのまま、その家の床下に入っていった、どうやら、普段は其処で雨宿りをしていたらしい
危ないぞー、今度から注意しろよー、
高い所に水分が多いものがあると、そこに目掛けて雷というのは振ってくるものだとテレビでやっt。




 パーンという何かが炸裂するような音が体の内側から響き、それと同時に全身がショックで引きつる感覚
・・・・・なにが起こったのか分からないまま私の意識は何の脈絡も無く切れて飛んだ。


 


・・・・・で、今に至る、と

 自分で言うのもなんだが、まったく思考がまとまって居ないなあ、回想からして頭が悪そうである、
まあ、実際悪いんだろうけど・・・・
それでまあ、気が付いたら素っ裸で、
しかもなんか猫のような人間のような良く分からない生き物が目の前に居たのだ
え?何を言ってるかわからない?、大丈夫、私にも何が起こったのかまったく理解できない、
瞬間移動なんてちゃちなもんじゃないもっと恐ろしい以下略とか、
そういうAAを貼り付けたいぽるぽるな気分である。
200探偵にゃんこーの厄日 二話目 Bsage2007/08/13(月) 12:33:39 ID:M5DaH75M
「で、勢いとかその他諸々で、俺を閉め出して現在に至る、と」

若干やぶにらみっぽい目でこっちを見るのが、その猫だか人間だがよく分からない生物
自称してるから多分猫、どうやら雑種のようで、灰色のあんまり綺麗じゃない色をしたにゃんこである。

「うん」
「悪びれないなあ、お前常識無いでしょ」
「よく言われる」
「恥じろよ」

あー、と頭を抱えるにゃんこ、苦労性っぽいなあ、猫なんだからもっと
のんびりしなきゃだめっすよお、などと頭を抱えさせた原因が思ってみる
あ、ちゃんと家の中で話してますよ?、ドア越しとかそんな正に外道な事はしてません

服は彼のものを借りました。
ズボンが大きくて穿けなかったのは予想外、ワイシャツだけだからおなかが冷えます

「・・・・とりあえず、こっちの世界ではお前さんは奴隷、だという事は理解できたよな?」

この会話シーンの前に長ったらしいこの世界の説明があったのだ、
正直専門用語とか多すぎて理解できなかったので省略するが、とりあえず、私に人権はないらしい
売ったり買われたり、お金ももらえず労働させられたり、その上夜には性的な道具として使われて
しまうらしい。

「うん」
「・・・・いや、もっとショック受けろよ、人として」
「そうだね、よく言われる」

家族が死んだときとか、特によく言われた

 でも変わらない事に対して、じたばたしても何も変わらないんだし
もともと人の力なんて大したものじゃないのだ、受け入れるしかない。
 
 どの世界だって、基本的に理不尽に出来ているんだと言う事を、私は知っている。

まあ、あれもこれも全部夢だとうれしいなーとも思うが、そうなら本当は病院で
チューブだらけとか、そういう真実にぶち当たる可能性がある。
 どっちがマシかと聞かれてもちょっと答えられない、どっち道ろくでもないなら
どっちでもいいかなーと思ったりする、痛かったり怖かったりするのも嫌だけどさ。
絶望はもっと嫌いである。

「で、私は何をすればいいのかな?、ご主人様、とりあえず家事全般はできるけどにゃ」

 なんか沈黙が続くので、空気を換えるために明るいノリで聞いてみた、いやほら、
仕事が無いとかそういう退屈なのも、一つの恐怖である、働かざるもの食うべからずだし。

「・・・面倒は無いが面妖だな、お前は、にゃーとか言うな、せめてヒトらしくしてくれ」

気味が悪いものを見る目で見られてしまった。
どうやらこちらにも「ヒトはこんな感じの反応をするのが普通」みたいな定規は
存在してるらしい、うーん、生まれてこの方その手の定規からははみ出しっぱなし
なので、きっとそのご期待には答えられませんよ?

私みたいな可愛くも何とも無い人間を拾っちゃうなんて、なんて運の悪いご主人さまだろう
・・・・・まあ、悪いネコではないようなので、それなりに長く付き合いたいなあとか
思うわけですが、主に保身的な意味で
201198sage2007/08/13(月) 12:40:32 ID:M5DaH75M
今回は召使いの目線から。
続編のはずなのに、あんまり時間系列が進んでいないのはご愛嬌
こんな感じで馴れ初めなわけですよ。

うっかり頭の中がカオスなおにゃのこを拾ってしまったご主人様は
一体どうするのでしょうか、

@転売

A調教

Bいろいろ諦めて日常生活

Cそんな面倒なことはいい!レイプするんだ!

202名無しさん@ピンキーsage2007/08/13(月) 13:01:35 ID:ap1gUP8K
*・゚゚・*:.。..。.:*・゚(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゚゚・*!!!!!続編wktk

3→4 ……かなw?
203名無しさん@ピンキーsage2007/08/13(月) 13:49:35 ID:HIldAPAT
『トラブル is マイビジネス』とは言え
金の元にならない日常茶飯事的トラブル多発は
普通ゴメンこうむりたいと思われるので、まずは『2』なんじゃまいか

で、ゆくゆくはねっちりずっぽりと、『4』w
204名無しさん@ピンキーsage2007/08/13(月) 15:06:35 ID:LQUb/qZ9
続ききてたーーーーー
C→Aでおながいします
205名無しさん@ピンキーsage2007/08/13(月) 21:10:41 ID:imK+8vZr
きたあああああああああああああ
3→4かな
206名無しさん@ピンキーsage2007/08/13(月) 21:18:12 ID:eXiPUC28
3しつつ4→2で、とか欲張りな事を言ってみるテスト
207名無しさん@ピンキーsage2007/08/13(月) 21:23:41 ID:GbuHHsTJ
5 人生の厳しさを説きつつ、我が身を振り替えって激しく凹む。
208名無しさん@ピンキーsage2007/08/14(火) 00:11:22 ID:xWUhaE12
3年ぶりぐらいにふと思い出して検索してみたらまだあったー!
ここのスレタイを見た瞬間凄く懐かしくなりました、未だマナ姫の作者さんは連載中だったりしますか?
何はともあれ、これからまたお邪魔させていただきますヽ(´ー`)ノ
209名無しさん@ピンキーsage2007/08/14(火) 10:31:17 ID:i/6IduZs
>>208
三年前……つーと、その頃の書き手の人って……蛇担当さんぐらい?
こちむい氏はすこし前になぜこちを投下してからまた最近音沙汰がないです。

210名無しさん@ピンキーsage2007/08/14(火) 11:42:42 ID:N+CX3Kqu
あとはカモシカさんとピューマさんとカサゴさんかなあ。
211名無しさん@ピンキーsage2007/08/14(火) 20:04:43 ID:i710Ef8B
今調べたら、3年前だと丁度3スレ目に入った頃だね。
あしたらがまだ前半で、兎の人さんやへたれ猫さんが連載中。
蛇担当さんもカモシカさんもピューマさんもカサゴさんもまだいない時代。
この頃の古参書き手さんたちはまだいるんだろうか?
続きを今でも待ってる俺ガイル。
212名無しさん@ピンキーsage2007/08/14(火) 20:49:56 ID:xKpsHuD0
そう考えたら、三年って長いな。
213名無しさん@ピンキーsage2007/08/14(火) 21:07:56 ID:N+CX3Kqu
3年が長いって言うより、このスレが早いって気もする。
まあ>>208さんにはこの幸運なスレの今を楽しんで欲しい限り。
214名無しさん@ピンキーsage2007/08/14(火) 22:21:27 ID:VZyhkpAK
この3年でこのスレのふいんき(なぜry)も随分変わったな。
初期の頃のほのぼのエロと理不尽エロから見ればこちむい世界は随分広がった気がする。
ダークサイドの領域が深くなったからこそ、シュナたんとフユキの夫婦が幸せであって欲しいと思うし、
キオとパシャのその後が凄く気になる。あと、サトルとサーラ姫の冒険活劇がより一層面白くなった。

単なる腐ネタで終らせないようにスレの流れを強引に変えてしまう力量の作者さんが揃ってるってのは、
現状エロパロ板の中でも稀有なスレだと思うね。
215名無しさん@ピンキーsage2007/08/15(水) 01:23:15 ID:tbfDEEQZ
今見返せば、1スレ目の>>1は何処からか受信したような毒電波をそのまま垂れ流しているような無茶振りっぷりだよな……

なんつーか、まず何よりも最初の作品を書いて土台を築き上げたこちむい氏と、最初の方でこのスレを見捨てずに保守してくれた名もなき人々、
毒電波というネ申の啓示を受信した1スレ目>>1、数々の名作を生み出してくれた作者諸兄姉に改めて感謝したい気分。


そしてこのスレに居着いてから約1年くらい経過するのに、未だ話を書き出せない俺マジ凡才
216名無しさん@ピンキーsage2007/08/15(水) 02:33:39 ID:HZv0kPqz
>>215
大丈夫

夏に宣言してすっかり放棄してる俺ガイル
何より問題なのが生まれてこの方エロどころか
SSさえ書いたことないってのがな

文学系やらファンタジーやら問わず
読んだ数ならいくらでも誇れる
217名無しさん@ピンキーsage2007/08/15(水) 18:43:47 ID:vGUq8A8e
まあSSが不得手でも愛と熱意の表し方はいろいろあるわけで
絵を描くなりイメージソング作るなりドット打つなり
ネタ雑談で盛り上げるなり用語集充実に協力するなり
218名無しさん@ピンキーsage2007/08/15(水) 19:33:55 ID:H96xMjeN
愛の示し方かー…

…誰かこちむい絵板作らない?
そしたら俺頑張って描くよ
219名無しさん@ピンキーsage2007/08/15(水) 19:44:16 ID:HZv0kPqz
多分ここから描かれない書き手カワイソスな流れ
220名無しさん@ピンキーsage2007/08/15(水) 19:55:34 ID:vp0JQ9SE
>>218
ふたばの過疎スレ借りればいんじゃね?
221名無しさん@ピンキーsage2007/08/15(水) 21:14:22 ID:tbfDEEQZ
つか絵師が何人いるかもよく分からない品
222名無しさん@ピンキーsage2007/08/15(水) 21:59:51 ID:lGEU1pJl
せっかくのお盆休みというのに遊びふけってたら一行も進まなかったぜw
絵か……まあ、俺には最初から無縁な話だな。
223名無しさん@ピンキーsage2007/08/16(木) 09:19:37 ID:kJCj2ily
冗談でやってみたら激しく吹いたwww
ttp://maker.usoko.net/nounai/?a=Maker&oo=%A5%AF%A5%EA%A5%D5%A1%A6%A5%F4%A5%A1%A5%EC%A5%F3%A5%BF%A5%A4%A5%F3
224名無しさん@ピンキーsage2007/08/16(木) 13:55:40 ID:JKKOZTSu
>221
通算3人のはず。全員まだこのスレ見てるかはわからないが。
意外少ないような、しかしこんなもんかな?
225名無しさん@ピンキーsage2007/08/16(木) 20:43:14 ID:b7cA/P1G
>>223
食事中にわらかすな リアル吹いたwww

便乗(相性)
ttp://maker.usoko.jp/nounai_ai/r/%A5%AF%A5%EA%A5%D5/%A5%DF%A5%C4%A5%AD
226名無しさん@ピンキーsage2007/08/16(木) 20:54:52 ID:dmEf0oDd
先生まんま過ぎて吹いたw
227名無しさん@ピンキーsage2007/08/16(木) 21:13:43 ID:N6TwOyUI
先生自重しろwwwww
228名無しさん@ピンキーsage2007/08/16(木) 21:28:01 ID:kzcSO+To
さらに便乗
ぼくらのジーきゅんが!!!
http://maker.usoko.jp/nounai_ai/?a=Maker&oo=%A5%BA%A5%A3%A1%BC%A5%AF%A5%D0%A5%EB&oo2=%A4%A2%A4%BF%A4%B7
229名無しさん@ピンキーsage2007/08/16(木) 21:32:25 ID:N6TwOyUI
>>228
あたし自重しろwww

あとそろそろ避難所でやってくれ。
230探偵にゃんこーの厄日 3話 @sage2007/08/16(木) 21:55:16 ID:xSDegx2/
あの変な人間を拾って今日で4日目になる、あれから何の依頼も無く
、新規の依頼者も来ないままである。
 まあ、そもそも探偵の仕事なんて不定期な物だと相場が決まっては居るが、
それでも、あまり歓迎できない休暇だ、何しろ金だ、金が無い。
 金が無ければ憂さ晴らしも出来ないし、酒も飲めなきゃ女も抱けない、
家に帰ればあの、何を考えてるか分からない女が居るし。
あいつを拾ってきてから何もかもがろくでもない、やったら綺麗に
掃除された部屋も、見やすく整理された資料も、
何もかもが気に食わない、さらには花なんて飾ってやがる、
下町の薄汚れた探偵なんだぞ、俺は
 
 いや、仕事場を片付けてくれるのは良い事なのだ、
依頼人に不愉快な思いをさせないほうが
後々有利なのは事実なのだ、だが生活空間まできっちり整備するのは落ち着かない、
まるで自分の部屋ではないようで、気に食わない
生活空間と接客の部屋との違いすら理解出来てないんじゃないか、あの女。
 
 いや?あの女の私室は、未だに何一つ私物の無い
恐ろしく味気の無いものだし、ひょっとして
奴にとって私室はそういうものなのかもしれない、
娯楽も何も必要としない生き物なんて
面白みも無ければ可愛げもない、やっぱり拾うんじゃなかった。

 そんなことを思いながら、繁華街を練り歩く

・・・・・中途半端な飲み方をしたせいで、
むしろ余計侘しくなりながら、自宅に帰る。

 仕事机―整理された其れをどう散らかしてやろうか考えていると
、そこに見慣れない封筒が置かれて居ることに気がついた。
「灰猫さまへ」と宛先には書かれており、封筒の裏には、
優美な書体で「メアリー・アルバルナ」と書かれてある、
封筒の紙質からして上等な物、そこまで考えた所で
アルコールで染まった脳みそが、記憶を引っ張り出した、
あの哀れなヒト奴隷の主人、前回の依頼の依頼主の名前だ。

 中には前回の依頼の報酬と、次の依頼の前払い分
―虐待死させた犯人を突き止めてほしい、という追加依頼の料金が入っている。
 探偵にそんなことを頼むな、と言いたい所だが、この街の警官の腐れ具合を考え見ると
ほぼ確実に、犯人側に賄賂掴まされてお仕舞い、というのが見えている。
 それよりは、名前の売れている探偵に任せたほうが、まだ確実性があると踏んだのだろう
・・それとも、あの貴婦人、犯人達を私刑にするつもりなのかもしれないな 

 そもそもヒトに人権などないから、壊したとしても
多少の賠償金で済む、しかし、あの愛着の入れ様じゃ
それでは納得すまい、犬なら我慢するだろうが、彼女は猫なのだ。
 そして彼女は、この国において万能なる力、財力という物を
有り余るほど保有している。

 たかだかヒト一匹の為に嬲り殺しにされる猫、
と考えると非常に理不尽な気もするが、自業自得なので
同情する気にはなれないな。

さて、此方も返事を出さないと行けない訳だが、
此処で大きな問題が発生する、この報酬に関係した事柄だ
つまり、ぶっちゃけ手紙を届けるより、本格的に酒を飲みに行きたいわけだが・・・
231探偵にゃんこーの厄日 3話 A アキコ視点sage2007/08/16(木) 21:59:56 ID:xSDegx2/
 結局、私がお使いに行くことに成ったのだった、
ポケットにはご主人の書いた地図、右太ももには
護身用のリボルバーという、いでだちだ。
 ちなみにリボルバーは、私達の世界の拳銃ではなく、
魔法銃とかいうものである、火薬の代わりに火炎魔法の札が
ぐるぐる巻きにして入れられており、
これをコックで叩く事で発砲することが出来る。
 やたら高価な銃の代わりに、安価で作りやすい魔法銃は、
カモシカの国に大量に輸出され、外貨獲得に一役
買っているんだとか。
 難点は、雨の中では札がだめになって使えなくなることと(火縄銃かよ)
、如何せん威力が実弾と比べて大きく下回る事らしい
その代わり反動が少なく、女子供はおろかヒトでも扱える。
 しかし、街中を拳銃を持って徘徊するというのは、
ファンタジー世界か、アメリカでもない限りありえない
シュチュエィションだよなあ、などと思ったが、
よく考えたらここはファンタジー世界でした。

 地図の場所にたどりついて唖然とした、
でかい、でかいですよこの家、家というか屋敷、屋敷というか
ちょっとした城、富豪とは聞いていたが、之ほどまでとは。

 警備員のヒトに事情を説明する、私としては此処で手紙を渡して
さようならしたかったのだが(大きい家は、実家を思い出してすこぶる不愉快)、
彼らの主まあ、つまるところ依頼人は私に遭いたくて仕方がないらしく、
是非お呼びして是非お呼びして、と四回程言われたそうだった、
わがままである、実に我がままである、警備員のわんこのうんざりした顔が印象的だった。
 お互い強く生きましょう、うちのご主人は今頃酒盛りしてます

豪華なシャンデリアがつるされたホールから、赤い絨毯が敷かれた廊下を通って
一室にたどり着く。

 通された部屋には、数人の少年が裸でぐったりしているんですが。
 あきらかにそっち用の道具が並べ立ててあるわけですが、コケシトカ
 なんだろうこの生臭いにおいとか考えたくもねー!たくもねー!
 

 こんなところに招待って何する気ですカー
えっと、帰っていいかな?、いや、帰る、帰る!カエシテー、むしろ助けてー。
 
232探偵にゃんこーの厄日 3話 B アキコ視点sage2007/08/16(木) 22:06:22 ID:xSDegx2/
「すみません、客間は隣でした」

 かちんかちんに硬直した私の目の前で、何事も無かったかのように扉は閉められました、
看守の犬の言葉のどこかしらしれっとした響きが大変気にかかります、むしろ警告か?、
今から会う人はそういう猫ですよっていう意味の・・・
あるいは、いっぺん見せてからつれて来いと命令されたとか、後者だと、ヤバス。

 通された客間は、先ほどの部屋とはまったく異なり、
非常に清潔感のある部屋で、上等な椅子が並んでいて
一番豪華な椅子には一人の女性が座っていました、
外見年齢は私より少し上のおねえさんといった感じ、髪の毛は
軽くウェーブを書いて、腰辺りまで伸びていて、
ブロンドの髪の上に白い耳が違和感なく乗っかってる感じです

「はじめまして、私はこの館の主の、メアリー・アルバルナといいます」

「私はヒト召使の晃子といいます、よろしくお願いします」
「ご主人様は、この度の依頼を受けると言っておりました、
正式な書類は、此方の封筒の中に入っているのでご確認ください」

「ああ、之はご丁寧に、ですが、私があなたをお招きしたのは、
あなたのお話を聞きたかったからなのですよ」

そう言って、口を押さえて上品にくすくすと笑う、
メアリー夫人、うー、美人さんなんだけど、さっきの光景が
脳裏に浮かんでは消えしてる訳で、落ち着かない

「私の話ですか?」
「グレイさんがヒト召使を持っているという話は始めて聞きました、
買えるとも思えませんから、落ちたてなのでしょう?
それなら、是非むこうの話を聞いてみたいな、と思ったのです、
私の持っているヒトは、いずれも子供のころから此方の世界に居る子達
ばかりですから」
「ああ、それで」

 よかった、あなたを食べたい(性的な意味で)とかお近づきになりたいわあ(はあと)
とか言われたらどうしようかと思った、幸いそっちの趣味は無いらしい。
っていうか、ご主人様グレイって名前なんだ、すっげえ安直だなあ、
シロクロブチとなんら変わらないじゃないですか。

いろいろ世間話をしていると、時計が五時を回る、
そろそろ帰らないと、暗くなってから帰るのは危なそうだし。

「帰りは送らせますよ、危ないですから」
「あ、いいえ、おかまいなく」

種族とか関係なく人に迷惑をかけるのは嫌いである、
それに正直それほど長居したくもないのです
第一印象が第一印象なので。

233探偵にゃんこーの厄日 3話 B アキコ視点sage2007/08/16(木) 22:10:39 ID:xSDegx2/
「せっかく、暗くなってからでも、ゆっくり楽しもうと思いましたのに」
ごくごく普通な調子で、さらっと言ってみせやがりました
なにをですか?と聞きたい所だが実践で教えてくれそうなのでやめておこう
・・・私を少年と勘違いしてるとか?
ほら、性別を見た目で判断できないという、
素敵なコメントをご主人からいただいてるからなあ。

「わたしは女ですよ?」
「いっこうに構いませんが」

はいアウトー!
はいはいアウトー!

「晩御飯作らないといけないので、もうしわけありません」

作らなかったとしても正直百合は簡便というか、私まだ処女ですので、初体験女性とか嫌杉
しかしなんでこんなにオープンなんだこの人。

「これをグレイさんに渡してください、夜用といえば
分かってくださるでしょうし」
別れ際に紙袋をいただきました、中身はきっと考えないほうが良いんだろうなあ
ヒトであれば男でも女でも見境なしですか。
なるほど、「ヒト狂い」と聞いてはいたが、此処までとは、
本当に恐ろしいお人やでこの猫

///////  
くすくすと

くすくすと

たまらなさげにメアリーは笑う
無表情さとか
ちょっと性的なニュアンスを加えただけで面白いくらい反応する初心さとか
綺麗なアーモンド形の目とか
少女と女性の中間のような、未完成な体つきとか

かわいいなあ、わりと本気でほしいな、と思っている自分に気が付いた。

とりあえず、明日、内の子の中で最年長の子と、あの子を引き合わせてみよう
あの子も最近人間の子が気になって仕方が無いみたいだし、うまく行くかもしれない。
彼女には自信があった
異性を落とすための技は仕込んだし、あの子たちの親だって
そうやって子供を生んだり生ませたりしているのだから
今回だけ、うまくいかないなんて事は無いだろうと。
 もっとも、堅物そうだから時間はかかるかもね
それはそれで楽しみの時間が長くなって、嬉しいことだった。


しかしこの貴婦人、子供ゲットする気まんまんである
234230sage2007/08/16(木) 22:14:02 ID:xSDegx2/
エロくない日常編
しかし魔手は迫りつつある訳でした
そのうち逃げ場所がなくなりそうですね、エロい意味で
で、三人目の重要キャラ、ヒト狂いのメアリーたん登場
猫に対してはわりと残忍で、ヒトに対してはお前ウサギやろ
という、若干濃いキャラとなっております

235名無しさん@ピンキーsage2007/08/17(金) 02:15:52 ID:Fnwo5C3I
>>230
GJ!!
続きを全裸正座して待ってます。
236名無しさん@ピンキーsage2007/08/17(金) 05:16:33 ID:N1hdtncM
極端さがネコらしいとは言える。w
237名無しさん@ピンキーsage2007/08/17(金) 21:28:59 ID:rbhqijlM
>>230
メアリーさん怖いよメアリーさん
電動コケシを握り締めたまま全裸で続きを待つ。
238名無しさん@ピンキーsage2007/08/17(金) 21:39:20 ID:HRxKcgLo
……てか、本当にヒトをペット以外の何者でない扱いをするご主人初めて見たかも
でも、これが普通なんだよね……
239名無しさん@ピンキーsage2007/08/17(金) 23:53:34 ID:6f41nZj0
話しの中にヒトの少年少女位しか出てこないって事は……つまり……
ぐったりしてる少年達も飽きたり歳を取ったりしたら捨てられるか、
さもなくば売りに出されるか……するわけですね。

子犬や子猫が可愛いからと飼ってきて、3年経ったら捨てに行く人間も居る訳ですし、
まったくもって怖いと言うか、嫌な世界かも。

所で、ネコの国の貧困層ってのは初めて登場かな?
240名無しさん@ピンキーsage2007/08/18(土) 13:23:25 ID:LBL0WClm
>>239
マナ様も貧困層といえば言えるがw
241名無しさん@ピンキーsage2007/08/18(土) 14:14:18 ID:ebMRwZG0
貧困のレベルが違うよーなw
って言うか、こちむい世界で生まれた第2世代のヒトの場合、飽きられちゃった少年少女とか
中年に突入した位のおじさんおばさんってどうするんだろうね?
ご主人様の命令で種付け/孕ませを繰り返すブリーダーに飼育されたペット状態だったら嫌だな。

年子5人とか6人とかやって50歳を迎えることなく早死にするヒトの女性とか、
EDで使い物にならなくなって荷役する竜のエサにされちゃう男とか居るんだろうなぁ。
考えただけでなんか寒気がする……
242名無しさん@ピンキーsage2007/08/18(土) 14:54:29 ID:XQLofWvA
コッチの世界のサラブレットでさえも
駄目になったら殆どは桜肉かソーセージ
卵を産まなくなったメンドリは、動物園のライオンの餌
合鴨農法も、田んぼでのお勤めが終了したカモは鍋用

あっちの人間は↑より、高価で入手困難な珍獣かもしれんけど
ソレにしか脳の無い役立たずを何時までも甘やかして寿命が尽きるまで
大切に庇護して最後を看取るご主人様が少ないからこそ、この物語が成り立つのでは?
243名無しさん@ピンキーsage2007/08/18(土) 17:57:39 ID:lYTsu5Rc
>>241
フロミアの養殖ヒトの場合は相応の教育を施されてから売られてるから、容色が衰えてからも普通の召使として使い道はあるはず。
けどそれ以外の、奴隷商人あたりが生ませた二世世代はかなり不幸な人生かもしれないけど。
244名無しさん@ピンキーsage2007/08/18(土) 18:04:03 ID:dNnoKeul
つうか、最後まで明確に面倒見たケースが明示されたの夢日記だけだよね。
マナ様とかをはじめとするネコ族なんか、なまじ寿命が長いせいで、
『ぼく』に飽きたら彼を本気で鍋で煮て食べかねないよな。貧乏だし。
あたしとジークだって何時までも国境の派出所か?って気がするしね。
物語の断面では、エロ幸せかもしれないけと、最終的には酷い世界だな…と。
245名無しさん@ピンキーsage2007/08/18(土) 18:15:33 ID:cD+iktaK
つミノタウロスの皿
246名無しさん@ピンキーsage2007/08/18(土) 18:48:57 ID:lYTsu5Rc
>>244
いや、そう言われてもまだ最終回まで話が進んでないから明示のしようがないんです(´・ω・`)

でも、もし何でしたら次の投下分で「幸せな老後を送るヒト召使と老主人」が登場するシーンを付け加えてもいいです。
こちむい界をあまり残酷で殺伐なだけの世界にはしたくないですし。
247名無しさん@ピンキーsage2007/08/18(土) 19:08:46 ID:ebMRwZG0
>>244
酷い世界ってこの世界・現実世界もいっしょじゃね?

精神の成長はある程度肉体の成長に影響を受けるだろうから、ヒトの老後の面倒まで見切れるご主人様は貴重だろ。
イヌやネコの数倍の速度で老いて行くヒト。それこそ寝たきり老人とかになったら……。
まぁ、そうなったらなったで、マナ姫あたりが若返りの秘薬の実験台にして失敗し消滅とか、そんな笑えない自体もありえる。
実際、性的遊び道具以上の扱いをされてるかどうか微妙な存在の「自称幸せな奴隷君」ばかりな気もするしwww

>>246
幸せな老後のヒト奴隷、ぜひ見てみたいです。
でも、残酷で殺伐とした世界だから小さな幸せが輝くんじゃないかとおもうんですよね。個人的に。
248名無しさん@ピンキーsage2007/08/18(土) 20:01:10 ID:LBL0WClm
>>247
残酷描写はアフタヌーンのEDENぐらいが適当なんじゃないかと思うのですよ。
249名無しさん@ピンキーsage2007/08/18(土) 23:34:17 ID:bkh09NvF
なんか、ここの小説って二つの意味で18禁だな

だが、それがいい
250名無しさん@ピンキーsage2007/08/19(日) 08:22:06 ID:Q9Bn5mlV
殺伐としてる面はあってしかるべきだけど、それだけにはならないように
したいよねえ、つまらなくなるし、やっぱり持ち上げて叩き落とす・・・もとい
叩き落とした後上空にぶん投げてこそ、良いハッピーエンド物だしね
251名無しさん@ピンキーsage2007/08/19(日) 10:19:10 ID:DxdQnfLF
徹底的に救いの無い話とか書きたくなるときあるんだよね、衝動的にさ。
252名無しさん@ピンキーsage2007/08/19(日) 10:32:03 ID:e2Q/FPdW
基本ハッピーエンドが好きだが、救いの無い話も好きなんだぜ。
徹底的にドロドロしてた―ごめん題名が出てこないんだが呪いをかけられた彼の話とか
253名無しさん@ピンキーsage2007/08/19(日) 10:40:28 ID:WfhxFx98
>>252
 『桃源郷』へようこそ

某・犬国では、奴隷どころか国民であるはずの
孤児や街娼ですら、使い捨ての部品以下ですよ
もっとも、見かけた瞬間全力で殺される運命にある
×30匹な黒い弾丸よりは、マシな扱いをされているんでしょうが
254名無しさん@ピンキーsage2007/08/19(日) 20:34:14 ID:1XIVm3gz
>>248
EDENか…… 久しぶりに本棚から出して読み返したけど、言われてみると確かに残酷な現実だね。
綺麗なものばかりじゃなくて、絶望的な現実とか忍び寄る崩壊とか、それもこれもひっくるめて『世界』ってのが良い。
肉便器にされても幸せな奴隷君とご主人様の、しっぽり濡れ場から壁一枚隔てた向こう側には情け容赦ない現実。

あぁ、それが良い。
255名無しさん@ピンキーsage2007/08/19(日) 21:03:59 ID:9SmDhKjL
……ふむぅ、読み手の人からはそういうのが求められてるのか……
256名無しさん@ピンキーsage2007/08/19(日) 21:53:35 ID:W0jyRaAN
いやー流石に鬱話一色でスレが埋め尽くされたらそれはそれでちょっとなぁ
257名無しさん@ピンキーsage2007/08/19(日) 22:04:03 ID:oHtyMN9b
MONOGURUIも楽しめるのがこのスレの良いところ。
258名無しさん@ピンキーsage2007/08/19(日) 22:48:52 ID:hO3yfQey
まぁ、だからこのスレは敷居が高いとか言われているんだよね…
だが、それがいい

要は基本ラブラブだけどそこに越えられない壁(リアル)が存在して、その壁を主人公が見てどう反応するかがミソなんだと語ってみる
259名無しさん@ピンキーsage2007/08/20(月) 00:23:00 ID:yWkufkIk
色々あってそれでいい、書き手の愛をかたるぇい! でいいんじゃまいか、究極的に
260名無しさん@ピンキーsage2007/08/20(月) 16:38:58 ID:PpqG8ACR
苦痛なだけの欝話はいらないけど、なんか悲恋物とか悲劇系とか、そう言う泣かせる系の欝話は大好き……
……あぁそうさ!わかってるさ!どうせ俺の精神はもう病んでるよ!ウワァァァァァン!(AA略
261名無しさん@ピンキーsage2007/08/20(月) 20:36:23 ID:Ak+8wkFY
ここで流れに反してキャッキャウフフなラブラブエロコメ希望
暗い話が明るい話より高尚という変なイメージがつくと困る
262名無しさん@ピンキーsage2007/08/20(月) 21:28:34 ID:gVHMZ4C8
だが、断わる。
263名無しさん@ピンキーsage2007/08/20(月) 21:51:17 ID:HOIP3hE7
>>261
自分で書いちゃえば良いんぢゃね?
誰よりもまず、自分が読みたい話を書く。
それで良いと思うよ。
264名無しさん@ピンキーsage2007/08/21(火) 02:48:01 ID:mpCZ1N9F
言うは易し、行うは難し という言葉がありまする。

自分の願望も誰かが作品として形にするコトが無ければ、所詮は絵に描いた餅、受信した毒電波の垂れ流し……



俺涙目w
265名無しさん@ピンキーsage2007/08/21(火) 10:06:24 ID:ZQlljtU2
書く側の本音としては、要するにラブラブでエロエロでニヤニヤする系みたいな話しって、
1話完結で終わらせたいんです。だって、書いてて詰まらないから。

まったく別のところで読んだ話しだけど、一枚のエロ画像があったとする。
おかずにする方が望むのは物凄くエロくてそそられるマ○コの拡大画像なんだけど、
エロ画像作る側はマ○コなど部品の一つでしかなくて、どっちかと言うと色っぽいうなじとか、
細くて綺麗な足首だったりとか、そう言う部分を大事にしてるって奴なんだろうと思う。

だから、話し全体としては鬱傾向が強くて、その中に悲しいエロ話を詰め込むのが好きって作家さんが多いんだろうね。
自分も書いていてそうなんだけど、単に盛った♂と♀のエロエロ話なんて書き始めた最初の頃の3つか4っつめで飽きましたし・・・・w
266名無しさん@ピンキーsage2007/08/21(火) 10:27:30 ID:/IGnLRdp
>>265
ごめん、俺も書き手だけどエロ話書いてて詰まらないと思ったことはまだないな。
推測だけど、たぶん書くのがつまらなくなるのは最初のキャラ造形でコケたんじゃないかな。
267名無しさん@ピンキーsage2007/08/21(火) 11:50:30 ID:p4GrcI0U
 いきなりエロ行って魅力的になるキャラと、前段階があってしっくり
来るキャラとが居ると思うんだ、(見聞録の『わたし』とか)だから必ずしも
直エロだとつまらない=キャラ造詣失敗とは限らないんじゃないかな。
 ちなみにうちのキャラで直エロをしようとしたら、リアルレイプになって
書くのが辛くなったので、ある程度交流してからということになりました。
 落ちて直ぐスタートだと、比較的そうなりやすいんじゃないかな?、あと
エロの場合、片方がマグロキャラだとつまらなくなり易いよね、経験的に、両方
意欲的だとまた違ってくるんじゃないかな。  
 やっぱりエロは「両方が相手に気持ちよくなってほしい」いう感情が分かる様な
書き方の方がいろいろ盛り上がると、個人的には思うー。
 個人的にあんまり、どっちが良いとか、どっちが悪いとか分けたくないなあ
やっぱり、いろんな種類があったほうが新鮮だし、新しい萌えの発見の場に
なるかもしれないし。
268名無しさん@ピンキーsage2007/08/21(火) 12:01:57 ID:rX/ZgXAK
まぁ要するになんだ。
AVにだってストーリーがあるんだけど、でも見るほうは挿入シーンを頭だしして見てオカズにするだけで、
ここの職人さん達は単なるエロ話じゃなくて物語を書きたい人が揃ってると。
出会い頭の衝突事故みたいな
『落ちて出会ってその場でラブラブで、でベットシーン』
なんて、有り得ないし書く方は苦痛なだけでしょ。
きちんと前振りして、警戒から許容に変わって、でストックホルム症候群になる過程が書いてて面白いんじゃないかな。
自分はこのスレは読み専だけど、2次ばかり書いてる書き手の戯言言わして貰うと、このスレは職人のレベルがかなり高いよ。
269名無しさん@ピンキーsage2007/08/21(火) 12:07:45 ID:ZQlljtU2
なんか、話題が変な方向にドリフトしてるなw

>>266
エロ話がつまらないんじゃなくて、そこに至る過程とかを疎かにすると苦痛ってだけです。
だって、まったく違う世界に落ちたら、現実世界の人間なら誰だって面食らって、それで全部を拒絶するでしょ?
でも、それでも。その世界でしか生きられないとなったら、どうにかして自分有利にもって行きたいって思うじゃないですか。
その過程を書いて、その上でまったくもって受け入れられない獣そのものの男なり女なりとシッポリモードに入るのが楽しい訳で。
心理描写みたいな部分を書く上では、より一層リアルに見える作り話を考える部分が楽しいんです。
だから、こちむい世界がご都合主義の固まりみたいな『夢と理想のすばらしい社会』だなんて物になると反吐が出るくらい詰まらない訳で。
270名無しさん@ピンキーsage2007/08/21(火) 12:10:07 ID:ZQlljtU2
って言うか、投稿前にリロしろよ>俺

>>268さんが言われるのに同感です、はいw
271名無しさん@ピンキーsage2007/08/21(火) 18:04:04 ID:6tJwk7Js
どうも自縄自縛というか頭が固い人がいるようだが
異世界に落ちて間がないうちに(連載初回等)ベッドシーン、
でも面白いし味もある、なんてのはたくさんあったよ。
過程をじっくり描き込んでからのベッドシーンが好きなら
それは好きなようにやればいいけど、それは単なる好みの問題。
浅い深いとは別次元なんでないの。

あまりとげとげしくぶたれると、沈欝でエロまで時間がかかる話の作者が
保身のためにムキになってるみたいに見えちゃうよ。
272名無しさん@ピンキーsage2007/08/21(火) 19:13:00 ID:KooW7TTc
浅いとか深いとかってなに?
話が見えない
273名無しさん@ピンキーsage2007/08/21(火) 19:34:01 ID:TAltet94
カモシカとか犬探偵みたく落ちてきてから時間が経った状態で物語が始まるのも、違和感を無くす方法かな
274名無しさん@ピンキーsage2007/08/21(火) 20:18:58 ID:1K8+X6f9
>>273
古くはこちむいがその形式だったかな。
スレのいつごろから出会い篇を冒頭に入れるようになったんだろう。

放浪女王とか獅子国とか夢日記みたいに、エロのあとの回想シーンで不幸な過去を描くという形で鬱場面を入れるパターンもあるけど、
読み手の側からしたら回想と言う形で不幸な現実を描くよりも、リアルタイムで不幸な目にあった方がいいのかな。
275名無しさん@ピンキーsage2007/08/21(火) 20:42:10 ID:KooW7TTc
リアルタイムで(性的に)不幸な目にあうなら大歓迎だがwww
276名無しさん@ピンキーsage2007/08/21(火) 20:43:01 ID:1K8+X6f9
>>275
EDとか?
277名無しさん@ピンキーsage2007/08/21(火) 21:36:04 ID:1opNNJD1
>>274
不幸なシーンは回想シーンにするってのは、書く度胸がないってのと、
「自分が読んでて不快なモノは、他人が読んでも不快だろう」ってのがあるんじゃないかなー、と俺推測。
いや、正直アフリカの少女兵士の境遇を懇切丁寧にエロく描写しろとか
日本の児童虐待の様子を萌えるように描写しろとか言われたら泣いて謝りますわ、自分。

>>275
「ああっ、だめですーっ!お尻の穴なんてフケツですーっ!!」まで読んだ。
278名無しさん@ピンキーsage2007/08/21(火) 22:10:58 ID:liOmAfmh
>「ああっ、だめですーっ!お尻の穴なんてフケツですーっ!!」まで読んだ。
蛇短編吹いたw
279探偵ニャンコーの厄日 第四話sage2007/08/21(火) 22:24:51 ID:p4GrcI0U
自分の机で、糞安い酒をちびりちびり飲みながら
俺は今回の事件を説明することにした。
安っぽいテーブルの向こうには、今回の仕事に協力したい
という、金持ちのボンボンが居る。
 コイツの名前はジョン・ボナルタ、どうやらヒト狂いメアリーの
婚約者らしい、まあアレだ、所謂政略結婚という奴だ
一応ボナルタ家は名家と行っても良いが、すっかり日が翳って久しい
貧乏貴族だ、一代で財を成したメアリーに取り入りたいという
のは、まあ、分からないでもない。
 本来ならこんなボンボン、足手まとい、下手したらどっかの
ヒト召使よりも無能かもしれない阿呆なんぞに手伝わせるのは
死んでも御免なのだが、札束をセットでくれたので、妥協することにした
いやはや、金の魔力とはすさまじいものである。
メアリー家のヒト召使、アンヘルの殺害事件は、
スラム街の一角、雑種区といわれる場所に位置する
 しかし、この時点で先ず不可解な点が出来る
雑種区の糞狗共の中には変態なんぞ、枚挙に暇が無いほど居るし
俺自身、奴らの犯行だとばっかり思っていたが
奴らが、身代金も要求せずに、ヒトを殺すなんて事は
先ず有り得ないのだ、なぜならあの雑種共にとって
金はまさしく天の助けであり、何者にも換え難い
高貴なものなのだ、人間的な徳を捨て去ったとはいえ
まさか金に対する忠誠まで捨て去るとは思えないというのが
本音だ。
 そのため、地道に足で稼ぐしかないわけだが、
それにもまた問題が生じる、雑種区は
極めて封鎖的で、猫が立ち入れば、嫌でもトラブル
の元になってしまうのだ。
雑種区、それは、犬国の底辺である雑種達が
一角千金を夢見て、自由の国、猫の国に
来たのは良いものの、学もなし、技術もなし、
あるのは丈夫な体だけ、なんて脳みそが蟻んこにすら
匹敵しそうなどうしようもない役立たずがマトモな
仕事に就けるわけも無く、犬国で与えられる仕事よりも
さらに過酷な肉体労働にかかることになり、
ドロップアウトして、犯罪者に転身した野良犬どものたまり場である。
 自分達がどうしようもないのは金が無いせいだと考えている彼らは、
小銭のために猫殺しだろうがなんだろうが引き受ける、その上お互いの
ネットワークが強いせいで、部外者の存在を察知しやすく、実に質が悪い。
 其のせいで、今では警察でも踏み入る事が困難な無法地帯と化している。
 死体を見つけ、回収する程度なら何とかなったが、本格的に調べると成ると、
俺でも無事で済む保障がまったく無い。
 ゆえに、今現在、向こうで活動しているギャングの一つの頭と交渉して
場所を空けてもらえるように頼んでいるところだ。
「そんなまどろっこしい事をしないでも、君は元特殊部隊なんだろ?、力づくで
トラブルなんて蹴散らしちゃえば良いじゃないか」
俺が懇切丁寧に説明してやっているというのに、この盆暗まったく理解していない
狗が集団組んでるんだぞ?狗が、単体でごり押しするにゃいくらなんでも装備がたらねえよ
「それはかいかぶりって奴さ、ほら、猫国には戦闘慣れの軍隊なんざいねえし」
半分事実、適当に集団魔術を相手の首都圏へぶっ飛ばせばたいていの揉め事はカタが付くしな
「もちろん、手前がが金で誰かを雇ってくれるなら、ごり押しでも出来るけどな」
コイツが勝手に消耗する分には俺は一向に構わんのだ。
「・・・・あー、ごほん、まあ、此方でも調べておくから、何か分かったら教えてくれ」
ぼんくらは目をそらしながらそうのたまった
明らかに手柄だけ掻っ攫う気だ、こいつ。
280探偵ニャンコーの厄日 第四話Asage2007/08/21(火) 22:40:58 ID:p4GrcI0U
//////////////////////
 晩御飯の買い物を済ませ、商店街を見て回る、
如何せん金が足りないため、あまり
高額の品は購入することが出来ないが、
見て回るだけでも、まあそれなりに胸が弾む
私も、女の子なのだ、こういうアクセサリとか
を見ると其れだけで時間がつぶせる
 服は趣味に合う物が少ないため、あまり見るものは無いが
(如何せん、人間用はひらひらしすぎな上
猫用の御尻に穴の開いたズボンは基本的に履けない、パンツ見える)
アクセサリーは結構良いのが多いのだ・・・・・まあそれでも、
金属類が多すぎて、今一つなのだが。
 それ以前にお金が無くて買えない、お金持ちの召使はこういう所に
お金を使ってもらえそうで、そこだけは少しうらやましいかも知れない。
 そんなこんなでだらだらしていると、通りの向こうから怒鳴り声が聞こえる
そして、懐一杯に果物を抱きしめた、小さい獣頭の怪生物・・・・もとい、この世界の
少年、おそらく犬なのだろう、この国に居る犬は大きく二つに分けられる、
一つは、ちゃんとした教育を受けさまざまな技能を持って、
猫の国の企業に就職している血統ある犬、そして、教育を受けていない雑種野良犬
まあ、万引きなんてするのは、後者と見て間違え無いだろう。
 この国でも、雑種に人権は無い、最悪、人間よりも下に見
られてる感すらある、もちろん、しっかりとした所で仕事をしているなら話は別なのだろうが。
基本的に犬がそこらへんでのたれ死んで居ても誰も気に留めない、事実、
先日私は、道の端に倒れている犬の子供に、カラスがたかって居る所を目撃している
あの時は特に意識していなかったが、アレは多分、死体だったのだろう。
 また悪い虫が疼きだした、コイツはいつもなんの得にもならない、
ろくでもない事を私にさせようとするのだ、そして大抵私は抵抗できない
困ったものだ。
 私の横を少年が通り過ぎた後、私はわざとふらり、
とその背中を隠すように移動した。
 がつん、というやたら鈍い音が聞こえた、まあ、
ヒトと猫が衝突すれば、自動車とまではいかないでも
自転車に轢かれる程度の衝撃は来る、したたかに背中
を打った所為で声が出ない。
 まあ、そういう計算で移動したのだから文句は無いのだ
仰向けのまま後ろを見ると、犬の少年が驚いたように立ち止まっている、
目で「さっさと行け」と訴えると、得心が行ったのか、そのまま
走り去って行った。
 私にぶつかった果物屋の亭主は、私がヒトだという事に
気が付いたのだろう、心配そうに此方を見ている
其のころには漸く口が聞けるようになったので。
 「すみません!、気分が悪くなってしまって」
と、小心者の少女の振りをして謝った。
 店主は暫く憤懣やるかたないと言った様子で、足を踏み鳴らしてから、脱力し
「まあ、いいよ、君には悪いことをしたね、ご主人によろしくと伝えておいてくれ」
そういうと、一礼して帰って行った。
・・・・・?、なんか反応が可笑しかったな、
ご主人によろしくって、私の主人を知ってないと
出てこない台詞だよなあ、家のご主人が商店街でも有名人、 とは思えないし。
 で、私が逢ったほかの猫というと、メアリーさんくらいしか居ないわけで、ひょっとしなくても
そちらがご主人と誤解されてる?、なんでだろう

暫く考えていると、心当たりに気が付いた。
 今付けてるブローチ、メアリーさんから貰ったものだった、先日貰った紙袋の中に
バイブと、人間用媚薬と一緒に入っていたのだ、セットになっているものはともかく、ブローチは
デザインも良いからつけてきたんだ。
 ひょっとしなくてもこれが原因なんだろうか?、まあ、其のうち聞いて見れば良いか。
 恐ろしい事にすでに一通郵便ポストに、入っているのだ、招待状。
281探偵ニャンコーの厄日 第四話Asage2007/08/21(火) 22:41:41 ID:p4GrcI0U
//////////////////////
 晩御飯の買い物を済ませ、商店街を見て回る、
如何せん金が足りないため、あまり
高額の品は購入することが出来ないが、
見て回るだけでも、まあそれなりに胸が弾む
私も、女の子なのだ、こういうアクセサリとか
を見ると其れだけで時間がつぶせる
 服は趣味に合う物が少ないため、あまり見るものは無いが
(如何せん、人間用はひらひらしすぎな上
猫用の御尻に穴の開いたズボンは基本的に履けない、パンツ見える)
アクセサリーは結構良いのが多いのだ・・・・・まあそれでも、
金属類が多すぎて、今一つなのだが。
 それ以前にお金が無くて買えない、お金持ちの召使はこういう所に
お金を使ってもらえそうで、そこだけは少しうらやましいかも知れない。
 そんなこんなでだらだらしていると、通りの向こうから怒鳴り声が聞こえる
そして、懐一杯に果物を抱きしめた、小さい獣頭の怪生物・・・・もとい、この世界の
少年、おそらく犬なのだろう、この国に居る犬は大きく二つに分けられる、
一つは、ちゃんとした教育を受けさまざまな技能を持って、
猫の国の企業に就職している血統ある犬、そして、教育を受けていない雑種野良犬
まあ、万引きなんてするのは、後者と見て間違え無いだろう。
 この国でも、雑種に人権は無い、最悪、人間よりも下に見
られてる感すらある、もちろん、しっかりとした所で仕事をしているなら話は別なのだろうが。
基本的に犬がそこらへんでのたれ死んで居ても誰も気に留めない、事実、
先日私は、道の端に倒れている犬の子供に、カラスがたかって居る所を目撃している
あの時は特に意識していなかったが、アレは多分、死体だったのだろう。
 また悪い虫が疼きだした、コイツはいつもなんの得にもならない、
ろくでもない事を私にさせようとするのだ、そして大抵私は抵抗できない
困ったものだ。
 私の横を少年が通り過ぎた後、私はわざとふらり、
とその背中を隠すように移動した。
 がつん、というやたら鈍い音が聞こえた、まあ、
ヒトと猫が衝突すれば、自動車とまではいかないでも
自転車に轢かれる程度の衝撃は来る、したたかに背中
を打った所為で声が出ない。
 まあ、そういう計算で移動したのだから文句は無いのだ
仰向けのまま後ろを見ると、犬の少年が驚いたように立ち止まっている、
目で「さっさと行け」と訴えると、得心が行ったのか、そのまま
走り去って行った。
 私にぶつかった果物屋の亭主は、私がヒトだという事に
気が付いたのだろう、心配そうに此方を見ている
其のころには漸く口が聞けるようになったので。
 「すみません!、気分が悪くなってしまって」
と、小心者の少女の振りをして謝った。
 店主は暫く憤懣やるかたないと言った様子で、足を踏み鳴らしてから、脱力し
「まあ、いいよ、君には悪いことをしたね、ご主人によろしくと伝えておいてくれ」
そういうと、一礼して帰って行った。
・・・・・?、なんか反応が可笑しかったな、
ご主人によろしくって、私の主人を知ってないと
出てこない台詞だよなあ、家のご主人が商店街でも有名人、 とは思えないし。
 で、私が逢ったほかの猫というと、メアリーさんくらいしか居ないわけで、ひょっとしなくても
そちらがご主人と誤解されてる?、なんでだろう

暫く考えていると、心当たりに気が付いた。
 今付けてるブローチ、メアリーさんから貰ったものだった、先日貰った紙袋の中に
バイブと、人間用媚薬と一緒に入っていたのだ、セットになっているものはともかく、ブローチは
デザインも良いからつけてきたんだ。
 ひょっとしなくてもこれが原因なんだろうか?、まあ、其のうち聞いて見れば良いか。
 恐ろしい事にすでに一通郵便ポストに、入っているのだ、招待状。
282厄日の人sage2007/08/21(火) 23:00:47 ID:p4GrcI0U
・・・・初の二段投稿キタコレ!
あっれ?普通に一回しか投稿ボタン押してないのに
何ゆえ?
 えーっとまあ、そんなこんなで日常編と書いて
複線張り編です、当方残念ながら直でエロで面白い話って
思いつかないんですよね、腕足らずで申し訳ありません。
 こんなSSを書いてますが(以外思いつかないとも言う)
読むのは理不尽なエロとか、ラブラブエロの方が好きだったりするんで。
 気にせずにばんばん能天気にエロって下さると、一読者
としてとても嬉しいです。
283名無しさん@ピンキーsage2007/08/22(水) 16:26:39 ID:v957r8Rw
>>282
うむ、GJ!です。
でも、改行位置を有る程度統一してくれると,もっと読みやすいかなぁ〜とか思ったりw
能天気なベタエロもシリアスな鬱エロも、どっちも良いです!
バンバン貼っておくんなさいまし>職人さまがた
284名無しさん@ピンキーsage2007/08/22(水) 22:08:27 ID:yTxt2+YI
続きに期待
超期待
285名無しさん@ピンキーsage2007/08/24(金) 22:25:54 ID:30ULqUUD
さて、止まったな
286名無しさん@ピンキーsage2007/08/24(金) 23:25:22 ID:Jcs4v8N9
俺が時を止めた。22日午後10時25分54秒の時点でな
287名無しさん@ピンキーsage2007/08/25(土) 17:31:30 ID:fiiJ4cWR
そういえば絵板の話はどうなったんだっけ?
288名無しさん@ピンキーsage2007/08/25(土) 18:38:14 ID:NhyI9dfq
なんか途中でどっかいった。
289名無しさん@ピンキーsage2007/08/25(土) 21:08:07 ID:VKvE1n8X
もっとアプロダを活用すれば良いだけのような気もする<絵板
290名無しさん@ピンキーsage2007/08/25(土) 21:58:58 ID:NhyI9dfq
>>289
直接Wikiに貼ってもよかった気がするな。
291名無しさん@ピンキーsage2007/08/26(日) 12:30:31 ID:npFowpFI
過去あまり記憶に無い停滞の仕方だな。
夏休み明け待ちの職人様方が多いんだろうか?
全裸正座で待ってるんですが……
292名無しさん@ピンキーsage2007/08/26(日) 13:22:09 ID:67oAolSQ
>>291
いや、純粋に仕事の都合で時間が取れないorz
貴重な日曜日は体力回復で半日潰してしまうから、書く時間がほとんど取れないし。
293名無しさん@ピンキーsage2007/08/26(日) 14:01:58 ID:2sw5kHOl
>>291
夏休み明け待ちと言うよりスレの空気が変わるの待ってると言うほうが近いかも
このタイミングでアップすると、なんか大変な事になりそうな気がするものですから・・・・
294名無しさん@ピンキーsage2007/08/26(日) 14:19:38 ID:muAsXE4K
     ドキドキ
    ∧,,∧γ⌒'ヽ
    ( ´・ωi ミ(二i
    /  っ、,,_| |ノ
     ( ̄__)_) r-.! !-、
          `'----'

     キョロキョロ
    ∧,,≡γ⌒'ヽ
   .ミ(・ω≡i ミ(二i
    /  っ、,,_| |ノ
     ( ̄__)_) r-.! !-、
          `'----'

      ヂャーバン゙づぐる゙よ゙〜
    ∧,,∧γ⌒'ヽ
    ( ´・ωi ミ(二i
    /  っ、,,_| |ノ
     ( ̄__)_) r-.! !-、
          `'----'

    ∧,,∧γ⌒'ヽ
    (*´・ωi ミ(二i
    /  っ、,,_| |ノ
     ( ̄__)_) r-.! !-、
          `'----'
295名無しさん@ピンキーsage2007/08/26(日) 14:44:25 ID:fltYW+cR
金華豚ハムチャーハン、キボンヌ
296名無しさん@ピンキーsage2007/08/26(日) 15:02:57 ID:fjo8sKSS
お砂糖いれてね。

甘いのっておいしいよね
297名無しさん@ピンキーsage2007/08/26(日) 18:39:23 ID:67oAolSQ
山猫亭の主人が腕によりをかけて作ったチャーハンは最高。
獅子国ウーアンの露店街で食べ歩く本場のチャーハンも悪くない。
夜の砂漠で冷えた体を温める、ラーメン屋台のチャーハンなんてのも時にはいいものだ。
アトシャーマのホテルで食べる、味の精密機械のごとき計算されつくしたチャーハンも素晴らしい。



でも本当は、わがままなご主人様がふとした気まぐれで作った、お世辞にも上手とはいえない焦げたチャーハンが一番好きだったりする。
298名無しさん@ピンキーsage2007/08/26(日) 20:38:39 ID:npFowpFI
諸君、私はチャ……なんでもない……
299名無しさん@ピンキーsage2007/08/26(日) 20:51:12 ID:j0m+kTtU
長「あー、コックくん。ちょっと残り給え」
コ「何ですか店長。早く帰らないとかみさんうるさいんですよ」
長「うむ、実はな。>>297の様な意見を聞き、『我がル・ガルには誇れるチャーハンがない!!』と気付いたのだよ」
コ「……コメの北限を余裕でぶっちぎってるソティスにチャーハンが無くても当然でしょう」
長「諦めてはならん。それは敗北主義だ。そこで私が考えたのが>>296の意見を取り入れたこれだ」
コ「何ですか、この固まり」
長「うむ、ただ砂糖を入れると溶けて粘つくのでな。いっそ炊いたコメに砂糖と牛乳とジャムを加えて冷やし固めてみた」
コ「店長……それ、ライスプディング」
長「な、何ィ!?では、これはどうかね。ピラフにホワイトソースと粉チーズをかけオーブンで焼き上げた……」
コ「それドリア」
長「な、なんだってー!?」
コ(大丈夫かな、この店……)
300名無しさん@ピンキーsage2007/08/26(日) 21:22:04 ID:xYfiq9Kb
コックと言えばカエデ君のその後が気になる今日この頃
301名無しさん@ピンキーsage2007/08/26(日) 22:07:29 ID:QDNyEs8m
  ∧,,,∧
 (´・ω・`)
 / つとl´  じゃあ本格的に・・・
 しー-J








鍋から作るよ!

       ,:'⌒ヽ
         |___| |
  ∧,,∧ 、i!|_|i!,.゙
 (;`・ω・)i!|_|i!,. ガンッ ガンッ ガンッ ガンッ
 /   つ,:'"⌒ ヽ
 しー-J ‘丁~~丁’
       ̄ ̄ ̄
302名無しさん@ピンキー2007/08/26(日) 22:08:36 ID:QDNyEs8m
  ∧,,∧
 (;`・ω・)  。・゚・⌒) チャーハン作るよ!!
 /   o━ヽニニフ))
 しー-J



  ∧,,∧  豚肉も入れるよ!
 (;`・ω・)             ヘ⌒ヽフ⌒γ
 /   o━ヽニニフ       (・ω・ )  )
 しー-J              しー し─J



  ∧,,∧  ・・・
 ( ´・ω・)             ヘ⌒ヽフ⌒γ
 /   o━ヽニニフ       (・ω・ )  )
 しー-J              しー し─J


    lヽ,,lヽ
. フ⌒(    )
 ) と、  ゙i    ちょっと、こっちへ・・・
し─J し--u'



   オトナシクシロー
    − 自 主 規 制 中 −
              ブヒーーーー

  ∧,,∧
 (;`・ω・)  。・゚・⌒)  もうちょっとでできるから待ってね!!
 /   o━ヽニニフ))
 しー-J
303名無しさん@ピンキーsage2007/08/26(日) 22:09:09 ID:QDNyEs8m
                           ∬  。・。・;゚。゚;゚∴・。∬ ∫
                        ∫∫ 。・;゚・;;:。゚;゚・。゚;゚∴:;。
                       ∫ 。・;゚゚・;;。゚;゚・;;:。゚;゚・。゚;゚∴:;。    ∫
                     。・;゚・;。゚;゚∴:。゚・;;。;。゚;゚・。゚;゚∴:;;。゚;゚・:。
チャーハンできたよ!      。・;゚・;。゚;゚∴:。゚・;;。゚;゚・;;:。゚;゚・。゚;゚∴:;;。゚;゚・:。゚・
                 。・。・;゚・;;。゚;゚∴;;。゚;゚∴:;;。゚;゚・:。゚;゚∴;;。゚;゚∴:;;。゚;゚・。;。
            。・。・;゚・;;。゚;゚∴;;。゚;゚・。゚;゚∴:;;。゚;゚・:。゚;゚∴;;。゚;゚∴:;;。゚;゚・゚;゚∴;・。。∫
  ∧,,∧   ∬。・;゚・;。゚;゚∴:。゚・;;。゚;゚・;;。゚;゚∴;;。゚;゚・。゚;゚∴:;;。゚;゚・:。゚・;゚・;;。゚;゚∴゚;゚∴:;;゚・;。
 (;`・ω・) 。・;゚・;。゚;゚∴:。゚・;;。゚;゚・;;。゚;゚∴;;。゚;゚・。゚;゚∴:;;。゚;゚・:。゚・;;。゚;。゚;゚・;゚・;;。゚;゚∴゚;゚∴:;;゚・;。
 /   o━⊂ニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニ⊃
 しー-J

 職人さんたち、お腹一杯食べて頑張ってね。
304名無しさん@ピンキーsage2007/08/26(日) 22:11:02 ID:QDNyEs8m
 ∧,,∧
 (;`・ω・)  。・゜・⌒) ついでにオムライスもつくってみるよ!  
 /   o━ヽニニフ))  
 しー-J

|  |
|  |∧_,,∧
|_|´・ω・`) そ〜っ できたよー!
|弧|  _,..,_   チャーハン苦手な人はこちらもドゾー
|  | ( ::::; )
| ̄|―u'
""""""""""""""""""""""
305名無しさん@ピンキーsage2007/08/26(日) 22:15:58 ID:OtwQU+Yg
>ID:QDNyEs8m
AAウザい
306名無しさん@ピンキーsage2007/08/26(日) 22:27:02 ID:67oAolSQ
推奨NGワード:ウザ
307名無しさん@ピンキーsage2007/08/26(日) 22:30:21 ID:fjo8sKSS
砂糖が入っていないじゃないか!!
308名無しさん@ピンキーsage2007/08/26(日) 22:59:51 ID:4zTbQmQb
つ【べすぺたんの蜜】
309名無しさん@ピンキーsage2007/08/26(日) 23:03:18 ID:npFowpFI
>>305
代わりになんか一発芸をよろしく!
ひさしぶりにチャーハンAAのコンボをみたなww
310名無しさん@ピンキーsage2007/08/26(日) 23:03:46 ID:QDNyEs8m
>>305
スマソ
311名無しさん@ピンキーsage2007/08/26(日) 23:13:07 ID:OtwQU+Yg
>310
いや、俺も言葉が悪かった。すまん。
ただ、無駄にスレを消費するAAは避けた方が良いと思ふ。

ところでスレの皆は、マーシャルアーツを極めた特殊部隊の隊員でも
向こうに落ちれば一般ピーポーの娘っ子にも劣ると思ってる?
312名無しさん@ピンキーsage2007/08/26(日) 23:33:48 ID:4zTbQmQb
>>311
種族によるな。
たとえばティルたん(イヌ)と屈強なヒト♂を一つの部屋に閉じ込めたら、一時間後にはティルたんの方が押し倒されて剥かれてると思うけど、
これがファリィたん(ライオン)と屈強なヒト♂だったら確実に逆になるだろうしw
筋肉ってトレーニングしないと普通に落ちるし、たとえ獣人でも真面目に鍛えてない人なら筋力はヒト並か、場合によってはヒト以下なんじゃないかと。
313名無しさん@ピンキーsage2007/08/26(日) 23:51:44 ID:1LqERQAn
腕相撲でヒトに負けるヘビの書士もいるからな。
314名無しさん@ピンキーsage2007/08/27(月) 02:26:22 ID:xf/UT77I
やり方、鍛え方次第で獣人とやりあってるヒトもいるし
マーシャルアーツを極めてるとかそこまで行けば、ある程度までならなんとかなるんじゃなかろうか。
315名無しさん@ピンキーsage2007/08/27(月) 02:58:57 ID:Fy8prnaC
初めて投下させていただきます。
エロ未到達。
マダラトラとメスヒト


 足元が抜けるような錯覚を覚えた。
 暑い夏の日、山を流れる川で服を着たまま水浴びをして遊んでいた。
 女ばかり余人集まって誰に気兼ねする事も無く、周りには友人の笑い声。
 ひたすら暑くて、水は冷たくて、馬鹿みたいに笑っていた休日の午後の事だった。
 唐突に足場が消失し――千宏は落下した。
 急激に遠のいていく友人の笑い声。冷たい川の水が一層冷たくなっていくような錯覚を覚えた。

 あぁ、死ぬんだ。

 深く――深く沈んでいきながらそう思った。

 深く――?

 おかしいじゃないか。
 だってここは川の下流で。水深なんて深くても胸の上程度。
 なのにどうして――どうしてこんなにも深く沈んでいるのか――。

 必死にもがいて、すがる物を探して手を伸ばした。指先が水面を付きぬけ、空気に触れる。
 ほら、ほら――そんなに深くなんか無い。
 必死にもがいて水面から顔を出し――瞬間、土踏まずにごつごつした岩の感触を意識した。
 立てる――!

「溺れたちくしょう! 誰か助けろよなマジで友達がいない奴らだなぁも――!」
 立てた――そして、立ち上がってしまうと水深は膝下程度。
 とても頭までもぐれるような深さは無い。
「う……」
 見上げた先に広がる緑。
 テントも無い。
 友人の姿も無い。
 それどころか人の気配も――ない。
 流された――と咄嗟に思い、千宏は上流睨もうとして愕然とした。
 ようやく聴覚が戻ってきた。あぁ――先ほどからうるさいほどに自己主張してるではないか。
「滝……」
 それも、大量の水を遥か上空から水面に叩きつけるような化物級の滝である。
 昔修学旅行で行った、異世界じみた森の奥で見た世界遺産を思い出す。
「落ち……てたら、死んでるよ。あれは死ぬ。死ぬ死ぬ。でも、でも水って下流から上流には
流れないよね……。待てよ、まてまて。ほらあれだ。地下水脈を流れてこんな所に出てきまし
たとか――人って地下水脈流れられるの?」
 訳がわからない。
 どうしたらいいのか分からない。
 どうしよう――遭難した。
 とにかく慌てて川から上がり、千宏はきょろきょろと忙しなく周囲を見回した。
 川沿いを――上流に向かえばいいんだろうか。
 そうだ、遭難した時、山は上に向かって上らなければならないんだ。それなら、川を上流に
向かって遡ればいいはずだ。
 
316名無しさん@ピンキーsage2007/08/27(月) 03:00:00 ID:Fy8prnaC
 大丈夫。ちゃんと皆の所に帰れる。
「大丈夫……大丈夫。えぇと、滝……迂回すれば登れるのかな」
 上流に上るには、まずこの滝を攻略しなければならない。
 千宏はゴクリと息を呑み、先程よりも激しく照りつける太陽を厭うように森の中へと駆け込
んだ。

 見た事の無い植物ばかりだった。
 滝を形成している断崖絶壁にへばりつくようにして歩き、もう随分と時間が経つ。
 どれだけ歩いたか分からなかった。日差しにやられて喉が渇く。
 引き返して川辺にいれば、少なくとも水はあるし、ひょっとしたら魚も取れるかもしれない。
千宏は川を離れた事を後悔した。――しかし、今更来た道を引き返すのはあまりにも馬鹿馬鹿
しい。
 水をすって重くなったスニーカーが、歩くたびにぐちゃぐちゃと音を鳴らして不愉快だった。

 歩きとどおしで――夜が来た。
 もう、川のせせらぎは随分前に聞こえなくなった。
 上流に行くつもりが、こんなにも川から離れてしまって一体どうしようと言うのだ。
「う……うぅ……ふ」
 溜まらず喉の奥から嗚咽かこぼれ、千宏はその場にずるずると座り込んだ。
 このまま死んでしまうのだろうか。
 まだほんの十八歳なのに。
 彼氏も出来た事が無いというのに。
「うわあぁん! やだ! 死にたくない、死にたくない! 誰か助けて――助けて!」
 助けてよぉ――と頭を抱え、丸まるようにうずくまる。
 疲れてるんだ。だから、こんな下らない、弱気な事ばかり考える。
 まだほんの一日遭難しただけじゃないか。世の中には、一ヶ月も遭難して生き残った人だっ
ているのだ。
 友達も探してくれてるだろうし、捜索隊も出てるかもしれない。
 明日には、きっと見つけ出してもらえる。
 ずるずると鼻水をすすり、千宏はのろのろと立ち上がった。
 眠ろう――どこか、寝床になりそうな場所を探して眠るんだ。

 ガサリ――草を踏む音がした。

 ぎくりとして立ち止まる。
 そっと耳をそばだてて、千宏は思わず音に向かって駆け出した。
「おぉーい! ここだよぉ!」
 助けが来た――そう思った。
 足音が驚いたように立ち止まり、駆け足でこちら向かってくる。
 え――? と思った。
 二足歩行じゃない――もっと犬のような――。
 千宏はぞっとして立ち止まり、そしてすぐさま引き返した。
 夜の森には獣が出る――クマなんかに襲われたら、武器も無い千宏にはひとたまりも無い。
 大声なんか出すんじゃなかった――誰か、誰か――!

「いやぁあぁあ!」
 飛び出してきた黒い巨大な影に、千宏は悲鳴を上げて思い切り転倒した。
 そ側頭部を、鋭い何かが掠めて拘束で飛んでいく。
 うつ伏せに倒れこみ、千宏は愕然とその姿を凝視した。
 牙を向いた――これは――これはなんと言う生物だろう。
 犬にしてはあまりにも大きすぎ、熊にしてはスマートすぎる。
 むき出しのキバは黄色く濁ってギラギラと輝き、爪は今にも飛び掛らんばかりにがっちりと
地面を捉えていた。
 つ――と生暖かい物が流れてくるのを意識した。
 血だ――。

 
317名無しさん@ピンキーsage2007/08/27(月) 03:00:34 ID:Fy8prnaC
 あぁ――結局――。

 死ぬのだったらきっと、獣に食われるよりも溺死の方が楽だった。
 泣き笑いのような表情が浮かんだ。
 怖いのに笑うと言うのも妙な物である。
 ぐ――と獣が姿勢を低く構えた。

 ザ――ザザ。
 背後で草を踏む音がする。
 もう一匹来るのか。あぁ――どうせ死ぬのだから、一匹に食われようが二匹に食われようが
どうでもいい。
 せめて一息で死ねる事を祈って目を閉じる。
 咆哮が聞こえた――背後から。
 風が舞い上がる。
 思わず見開いた視界一杯に、目を見張る銀が広がった。

 ぼぎゃ――と、骨の砕ける音が聞こえた。
 鮮血が飛び散る。
 巨大な獣が遥か彼方まで吹き飛ばされ、大木の幹に激突してずるずると落下した。

「ぁ――あ、ぅあ……」
「よー。危なかったなぁ、お前。ご主人様とはぐれたのか?」
 美しい褐色の肌に――輝くような銀髪。金色の輝く瞳。
 冗談のつもりだろうか――豊かな銀髪から、銀色と黒の縞模様も愛らしい、獣じみた丸耳が
覗いている。
 にぃ、と安心させるように笑った口には、頑丈そうな牙がぎらぎらと光っていた。
 男が背負う絶壁のその上に――信じられないほど大きく見える二つの月。
 夢だ――夢を見ているんだ。
 あはは、と千宏は笑った。
 ようやく気がついた。そうだ、川で溺れて、自分は気を失ったに違いない。
 そしてこれは夢なのだ。

 そうして――千宏は気を失った。


 ***

 鳥のさえずりが聞こえていた。
 川のせせらぎが妙に近い。
 まったくひどい夢を見た。あぁ――なんだか体中が痛い。
「気がついたか」
 パチン、と撒きの弾ける音がして――それと同時に千宏も弾かれたように飛び起きた。
 テントも無い。耳障りな笑い声もない。
 そして当然、目の前にいるのは見慣れた女友達ではあり得なかった。
 褐色の肌に――腰まであるのでは無いかと思われる硬そうな銀色の髪。
 金色の虹彩に、猫のような瞳孔。そして、夢を食い物にするネズミの国でよく見かける、可
愛らしい丸い耳。
「ひ――ぎ……ぎ、ぎゃぁああぁあぁ!」
「うおぁぁ!」
 こちらが叫ぶと同時に向こうもぎょっとして悲鳴を上げ、大げさにのけぞった。
 細長い尻尾が逆立って、毛並みがぶわっとなっている。よく出来た付け尻尾である。
「あんた誰? 誰! 誰!?」
「お、落ち着けよ! なぁ、落ち着けって!」
「来ないで来ないで来ないでよぉ! あんたなんなの? いい大人がデカい図体してその耳! 
尻尾! 頭に何か湧いてない!? その髪どんな脱色したらそんな色に染まるわけ!」
 信じられ無いというように、動物に仮装した大男が焚き火の前で絶句した。
318名無しさん@ピンキーsage2007/08/27(月) 03:01:08 ID:Fy8prnaC
 瞳孔が丸く見開かれ、まるで本物の猫の目のようである。
 ふらふらと揺れる尻尾が無条件に愛らしい。
「……おまえ、まさか、まだ誰にも拾われてないのか?」
「拾うってなに? まともな人にだったら拾ってもらってとっとと皆の所に返して欲しいよ! もう! 野犬から助けてくれたのはありがとうだけど、その異常なみてくれなんとかならないわけ?」
 男があんぐりと口を開けた。
 え、それじゃあ、だとか。
 え、俺――が所有者? だとか、不穏かつ怪しげな発言を繰り返している。
 誰が誰の所有者だ。拾うかと拾わないとか、道端の捨て猫じゃないんだぞ。
 そんな思いを込めて睨みつけるも、まるで気付いていないような様子である。
 あまつさえ、ヒトって何食うんだっけ。普通のもの食うんだっけ、だとか、これってオス? 
それともメス? だとか一人で腕を組んで悩み始めた。
 人間様に向かってオスだとかメスだとか言う奴にろくな奴はいない。
「おまえ、名前は?」
「聞いてどうするの? つーか、あんたなんなの? 地元の人? 何人? 妙に日本語上手い
けど……」
「あー……マダラだからわかんねーかぁ。俺はトラで、名前はバラム。白黒だしなぁ、ちとわ
かりずらいよなぁ」
 お前のその説明がまず分かりにくい。
 第一何だその名前。何人だ。何処の国の出身だ。トラってなんだ。
「で、おまえは?」
 尻尾が期待するように丸耳がピクリと動く――白黒とは、これの色の事だろうか。
 それにしてもよく出来てる――触ってみたい。
「千宏……」
「チヒロ? へー。やっぱヒトの名前って珍しい響きなんだなぁ」
 俺実はヒトって始めて見たんだよ、と嬉しそうに尻尾を揺らす。
「あのさ……」
「うん?」
「その耳……と、尻尾。どういう仕掛けて動いてるの?」
 くるりと男――バラムと言ったか――が首をかしげる。
 そして直後に、あぁ、と両手を打ち鳴らした。
「そうか、落ちてきたばっかりなんだよな。そうか、そうだよなぁ、ヒトは尻尾ないんだもん
なぁ」
「あるわけないじゃん。なに言ってんの……? 新発売の玩具かなにか?」
「何がだ?」
「耳と尻尾」
「いくらマダラでもこれは自前だ」
 ほんのすこしだけ、バラムがむっとしたような表情を見せた――だけのつもりなのだろうが、
この表情が相当怖い。
 思わずぎくりとして距離を取ると、バラムは慌てたように表情を軟化させた。
「怯えるなよチヒロ――そうだな、道すがら、落ち物の事とか、トラの事とか、色々と説明し
てやる。その前にほら、腹減ってるだろ? 魚焦げるぞ」
 まるで動物を餌付けするような口調で腹が立ったが、千弘は空腹に打ち勝つ事が出来なかった。
 差し出された魚を手を伸ばして恐る恐る受け取り、再びぱっと距離を取る。
319名無しさん@ピンキーsage2007/08/27(月) 03:01:46 ID:Fy8prnaC
 味には一切の期待を持たずにかじりつき、しかし千弘は塩味が付いている事に驚いた。
 よくよくみれば、しっかりと鱗も処理してあって塩焼きになっている。
 おいしい。
もぐもぐと魚を食べる千弘の姿を幸せそうに眺めながら、長い尻尾をくるりと巻いて膝に乗
せ、バラムはごつごつとした岩場の上に胡坐をかいた。

 ***

 足をくじいている――と言う事実に気付いたのは、食事を終えて一心地つき、バラムに出発
を促されてからである。
 人里に行くと言うから素直についていく事にしたのだが、歩くごとに足が痛んで段々と悪化
して行くようだった。
 しかしバラムは歩調を緩めず、ごつごつとした足場を物ともせずに川を下流へ下流へと降り
て行く。
 絶望的な距離が開いてからようやくこちらの遅れに気付いたようにかけ戻ってきて、痛みで
脂汗をびっしょりとかいている千弘の異変にあからさまに狼狽した。
「足……捻ったみたい。ごめん。少し休ませて」
 なんだ、捻挫か、とバラムがほっと胸を撫で下ろす。
 じゃあ、ほら、と言って目の前でしゃがみ込み、バラムはおぶされと千弘を促した。
「……どうした? 村はもうすぐだ」
「じゃ……じゃあ、お言葉に、甘えて……」
 バラムは体も大きいし、力も強そうだからきっとそれ程迷惑にはならないだろう。
 恐る恐るその背中に負ぶさると、バラムはまるで重さを感じていないような軽快さで立ち上
がり、再びもくもくと歩き出した。
「……耳、はえてる……」
「当たり前だろ。耳なんだから」
 当たり前なわけがないんだが、どうにも話がかみ合わない事は分かっているので反論はしない。
 ふさふさとした毛皮が気持ち良さそうで、千弘は思わずその耳に手を伸ばして指先でつまむ
ようにさわってみた。
「うわッ――!」
 一瞬の浮遊感。
 げ――落ちる。
 思った瞬間、バラムがぐっと腰を落として持ちこたえた。
 ギリギリと歯軋りをする音が聞こえる。
「み、耳は触るな……」
「……ごめん」
 呻くような声色で半ば命令に近い口調で言われ、千弘はつい気持ち良さそうで――と謝罪した。
「ねぇ、道すがら話すとか言ってたけど、落ちモノだとかトラだとかって、何なの?」
「あー……俺もまぁ、詳しくはしらねぇんだけど、時々お前みたいにな、ヒトって言う生物が、
こことは違うどこかから落っこちてくるんだよ。それが落ちモノ」
「神隠しみたいなもん?」
「神隠し?」
 それは知らねぇけど、似てるならそうなんじゃねぇか、とバラムが適当な事を言う。
「で、ヒトは珍しいもんだから、高級奴隷として売り買いされるんだ。オスの少年なら、二十
万セパタとかで取引されるらしい」
 ヒトと言う生物だとか、高級奴隷だとか、セパタだとか、全く持って理解不能である。
 この男、ひょっとして精神を病んでいるんだろうか。素直についてくるのは間違いだっただ
ろうか。
 千弘は急に不安を覚えた。
320名無しさん@ピンキーsage2007/08/27(月) 03:03:19 ID:Fy8prnaC
「で、トラって言うのは、まぁ種族だよな。ネコとか、ネズミとか、そんなのと同じ。まぁ、
俺はマダラだから分かりにくいだろうが、後で弟に会わせててやるよ」
「マダラって?」
「俺みたいな、オスなのにヒトっぽいやつの事」
「ヒトっぽいって何? どう言う事?」
「本当になんもわかんねーんだなぁ。まぁ、弟に会えば分かるだろ」
 バラムの少し呆れたような笑い方にむっとして、ぐいぐいと耳を引っ張ってやる。
 やめてくれぇ、と叫んで尻尾がばたばたと暴れるのが面白く、千弘は川で落ちてから初めて
――楽しくて笑った。


 *****

 設定とか読み漁ったつもりですが、なにかあり得ないトンでもミスとかしでかしてたら、
申し訳ないですがご指摘お願いします。
321名無しさん@ピンキーsage2007/08/27(月) 04:44:31 ID:Fy8prnaC
名前の漢字が絶望的に間違っていた……!
千弘→千宏でお願いしますorz
322名無しさん@ピンキーsage2007/08/27(月) 04:51:31 ID:UBdFOw6j
>>320
ひとまずGJ!
千と千尋ww

見た感じ特に問題は無いと思う
323名無しさん@ピンキーsage2007/08/27(月) 05:37:42 ID:m8ObLVMY
GJ!
バラムかーいーよ
かーいーよバラム
324名無しさん@ピンキーsage2007/08/27(月) 08:51:43 ID:l9fcviZs
>>315
 >>女ばかり余人 →四人?

>>316
 >>溜まらず喉の奥から嗚咽か →堪らず(我慢できない場合はこの漢字)〜嗚咽が
 >>そ側頭部を、鋭い何かが掠めて拘束で →側頭部を〜高速で

>>317
 >>パチン、と撒きの →薪の

 話の作り方もキャラの性格設定も結構良い感じなので
 じっくり読み込もうとすると、変換ミスの所でちと引っかかる。

 続きを超楽しみに待っています。
 
325名無しさん@ピンキーsage2007/08/27(月) 17:35:00 ID:9MS4HO6x
うおーGJGJ、なんという王道直球ど真ん中!!
バラムもチヒロもすごいツボだ、続き超楽しみにしてます
326名無しさん@ピンキーsage2007/08/27(月) 22:50:13 ID:wQtYX0gq
GJ!!
設定の方は全然問題ないと思う
変換ミスは……まぁ丁寧に見直すぐらいしか対処法がないことだし
327名無しさん@ピンキーsage2007/08/27(月) 23:11:02 ID:Q1X+0DQu
期待の新人さんですな
続きwktkして待ってますよー
328とらひとsage2007/08/28(火) 02:14:37 ID:6Hewtbq1
>>320続き
ほぼエロ無し陵辱気味。
やや欝展開。


 川沿いを延々歩いて森を抜けると、そこは一面、見渡す限りの草原だった。
 その草原を突っ切るように舗装された道があり、そのすぐわきにレンガ造りの建造物がある。
 家――と断言できないのは、その建物があまりにも大きく、まるで海外にある田舎の学校の
ような印象を覚えたからだ。
「あれが俺んち――弟が一人と、従姉妹が一人一緒に住んでる。あと、住み込みの下働きが何
人か。両親は死んだ」
 森で取れる鉱石や薬草を売ったり、動物を育てたりして生活してるんだ――というバラムの
言葉を、しかし千宏は聞いていなかった。
 バラムに背負われながら振り向けば、そこは圧迫感を覚える程の広大な森が広がっている。
 あり得ない。
だって――だってここは東京で――多摩川が――。
「チヒロ? どうした?」
「……どこ、ここ……ねぇ、まって……川井のキャンプ場は……」
「ここはトラの国の外れだ。あの川を上流に遡って滝を越え、さらに断崖絶壁を延々岩登りす
ると国境がある。カワイ――って地名はきかねぇが、キャンプ場は大分遠い」
「意味が――わかんないよ! なんだよトラって! 国境!? 馬鹿じゃないの! 日本は島
国なのに国境なんてあるわけないじゃない!」
「だからおまえは落ちモノで――」
「知らないよそんなの! もういいよ! 降ろして、一人で帰る! 帰るってば!」
 バラムの背中に爪を立て、さんざ暴れて半ば落ちるようにして字面に降りる。
 森に向かって走り出そうとし、千宏は足を突き抜けた激痛に悲鳴を上げてうずくまった。
「もぉ……なんだよ……なんなんだよ! もういいよこんな夢……明日だって授業あるのに! 
単位落としたらどうするんだよ! 必修なのに!」
「チヒ――」
「来ないで! もう、一人にしてよ! わけわかんない事ばっかり言って!」
 こんなに広大な草原があるはずない。
 こんなに広大な森があるはずない。
 視線を上げればそびえ立つ岩山。
 わけの分からないことばかりを言う男。
「もう……変になる……頭おかしくなっちゃうよ……!」
「……森は昼間でも獣が出る。それに、もし密猟者に見つかったらきっと奴隷商に売り払われ
るし、他の街に行くには、徒歩じゃさすがに遠すぎる」
 分かってる――あぁ、分かってる。
 この男の庇護を受けるしかない。自分一人の力では帰れない事くらい分かっている。
 ここがどこかも分からない。誰と連絡を取る事も叶わない。

「ごめん……なんか、取り乱しちゃって……」
「いいんだ。じゃあ、ほら」
 バラムが笑ってしゃがみ込む。
 その背中に取りついて首にしっかりと腕を回し、千宏はふと、先程自分が付けた引っかき傷
を見止めて眉根を寄せた。
「ごめん……痛い?」
「うん?」
「引っかいた所、傷になってる」
「あぁ……気にすんな。さすがにヒトに引っかかれたくらいじゃ痛くもねぇ」
 一時間もすりゃ治るよ、とバラムが笑う。
 ふと、バラムが腕を大きく振っておおいと叫んだ。
「弟だ。こっちに気付いた」
「ほんとだ。手ぇ振ってる」
 バラムの肩越しにひょいと覗き込み、米粒ほどに小さいその人影を凝視する。
329とらひとsage2007/08/28(火) 02:15:37 ID:6Hewtbq1
「走るぞ」
「ぇあ――わ、う、うわぁああぁ!」
 ぐん、と全身が背後に引っ張られるような感覚に慌ててバラムの首にしがみ付き、千宏はそ
の、人間ではあり得ない速度の疾走に絶叫した。
 自転車で急な坂道を駆け下りた時よりなお早い。
 思わず両目をかたく瞑ってバラムの背に顔をうずめると、ほんの数秒でバラムが走る速度を
緩めた。
 ばてた――?
 恐る恐る目を開ける。
 それと同時にバラムも止まり、瞼を開くなり千宏は呆然となった。
「あそこからここまで十秒もかかるのか? さすが、マダラは走り方もお上品でいらっしゃる」
「馬鹿。背中の荷物が見えねぇのか?」
「あぁ、それな。なに持って来たんだ? 獣でも仕留め――」
 虎だ――しかも、白黒の。現実逃避のように、あぁ、ベンガル系だな――と思った。バラム
より更に頭三つ分は背が高い。
「ぁ……あ……あぁ……」
 喉が引きつるばかりで、ろくに声も出てこなかった。
 その代わり、
「うわぁあぁあ!」
 虎の方が絶叫して飛びのいた。
 全身の毛を逆立て、まるで威嚇するように千宏を凝視する。
「何考えてんだてめぇ! どっから盗って来た!」
「落ちてたんだ。カッシルに食われそうになってたのを助けた」
「落ちモノがそうほいほい落ちててたまるかよ! 近くに主がいたんじゃねぇのか?」
「だったら本人に聞きゃいいだろ! なぁチヒロ――チヒロ?」
 バラムの声が遠くに聞こえる。
 虎が――二足歩行で、喋って――。
「――気絶してるぞ」
 虎の呆れたようなその言葉を聞いたのを最後に、千宏は再び気を失った。

 ***

 扇の大陸――と、彼らはこの世界を呼ぶ事があるらしい。
 落ちモノとはつまり、この世界ではない別の世界から、何らかのきっかけで落っこちて来て
しまった生物の事だという。
 彼らはこれをヒトと呼び、先程バラムが言ったとおり、高級奴隷として売り買いする。
 この世界では、バラムのようなヒトに近い造形の男性の事をマダラと呼び、これはとても稀
少なのだと言う。
 つまりこの世界の男の大半は、獣とヒトが混じったような容姿をしているから、一般的なの
はこいつなんだとバラムは虎を指差した。
 名をアカブと言うらしい。
「それにしても、まさか落ちモノを拾っちまうとはなぁ! どうするんだ? 売るのか?」
「いくらヒトでもメスじゃたいした値は付かないんじゃない? 折角拾ったんだから家に置い
とこうよ、自慢になるし」
 黒と白の丸耳をぴくりと動かし、興味津々にこちらを覗き込む銀髪の少女は、バラムの従姉
妹で、パルマと言う。
 この世界の女性はヒトの姿に獣の耳や尻尾が付いているのが一般的で、女性がアカブのよう
な獣の姿をしていると、それはケダマと言ってマダラよりも希少らしい。
 そんな事を次々と説明してくる三人の人外を前に、千宏はもはや口をきく気力も残ってはい
なかった。
 異世界召喚――異世界召喚?
 やめてくれ。どこの漫画の話だ。異世界なんて存在するわけがないではないか。
330とらひとsage2007/08/28(火) 02:16:24 ID:6Hewtbq1
 しかし、確かに今、目の前にそれはある。
「あの……あたし、帰りたいんだけど……」
「それは無理だよ。落ちモノはもとの世界に帰れないって、何かの本に書いてあったもの」
「でも……だ、だけど、お父さんとお母さんが心配するし……」
「ねぇ、この子私の部屋で寝かせていい? 明日服とかアクセサリーとか買いに行こうよ。こ
の子可愛い方だよ。着飾ったら絶対みんなに自慢できるって!」
 パルマがまるで話を聞かず、ぱたぱたと尻尾で床を叩く。
 動物の生態学――猫の場合。これはこれから何をしようかをわくわくしながら考えていると
いった所か――。

「自慢つったっておまえ、まさか宴席に顔でも出すつもりか? やめとけやめとけ。偏狭の国
境監視役の領主なんざ歓迎されねぇよ。第一、おまえにダンスが踊れるわけがねぇ」
 アカブがゲラゲラと笑いながらパルマをからかう。
 なんですってぇ、と尻尾を立てるパルマを無視して身を乗り出し、今度はアカブが千宏の顔
を覗き込んだ。
 その、剛毛に覆われた指からはえた鋭い爪が、髪をそっとかき上げて額の横辺りを見る。
「まぁ、それはともかくとして服はいるな。パルマ、傷の手当をしてやれ。いやその前に風呂
だな。バラム、部屋は与えるのか?」
「当たり前だろ。ヒトだぞヒト」
「えー! 私の部屋で寝かせようよぉ!」
 尻尾を逆立てて憤慨するパルマを無視し、バラムとアカブが立ち上がる。
 ちぇ、と唇を尖らせて、パルマもぱっと立ち上がった。
「これからよろしくね、チヒロ!」
 満面の笑みを残して去っていく。
 瞬間、千宏はずっと胸の辺りに引っかかっていた違和感のような物に気がついた。
 あぁ――そうか――。
「あたし、ペットなんだ……」

 ***

 風呂に入れられ、パルマの物だと言う取り合えずの着替えを与えられ、捻挫と額の傷の手当
てを受けて広すぎる部屋を与えられた。
 きちんと片付いた部屋の真ん中にあるベッドはふかふかで、自分の家の小さなベッドの三倍
はあろうかと言う程である。
 机も椅子もがっちりとした木製で、床に敷かれたカーペットは何の毛皮か判別不能だが、裸
足の足裏に心地よい。
 さすがに冷房は無いようなので昼間は暑さを感じたが、だんだんと日が暮れてくると風が出
てきて少し寒いほどだった。
 パルマは余程千宏を気に入ったのか、出会ってから夜になるまで十回は部屋に来て、果物を
置いて行ったり話を聞き違ったりと落ち着かないことこの上なかったが、パルマの純粋な好意
は気分の悪い物ではなかった。
 例えそれが珍しいペットに対する好奇心と保護欲的な物であったとしても、それは拒絶すべ
き物ではない。
 一度だけアカブが様子を見に来た時に、あいつには女兄弟がいないから、おまえを妹みたい
に思ってるんだと教えてくれた。
 廊下ですれ違う下働きの虎男達はみんな黒と黄色の縞模様だったので、他の者とアカブを見
分ける事が出来ない――という弊害が発生しない事にほっとした。
 虎を何頭も並べられて見分けろと言われても、動物園の飼育員でも動物学者でもない千宏に
は不可能である。
331とらひとsage2007/08/28(火) 02:16:59 ID:6Hewtbq1
 バラムはあれで忙しい男だからあまり顔を見せられないだろうが、見かけたら声をかけてや
ると喜ぶだろうと言い残し、アカブは部屋を出て行った。
 恐ろしい外見に似合わず、たぶん、優しい男なのだろう。

 ――それは無理だよ。落ちモノはもとの世界に帰れないって、何かの本に書いてあったもの。

 ふと、パルマの言葉が頭を過ぎり、千宏はぶんぶんと頭を振ってそのままベッドに倒れこんだ。
「帰れる……帰れるよ」
 眠ってしまおう。
 目が覚めたらひょっとしたら、病院のベッドの上かもしれない。
 そんな事は絶対に無い――もう二度と帰れないのだという確信は、もう随分と前から意識の
ずっと奥の方で千宏を苛め続けていた。
 ただ、希望がなければ絶望で押しつぶされてしまう。
 お父さん、お母さん。沢山の友達、好きだった人。
「あたし、あっちでは死んだ事になるのかなぁ……」
 両親は泣くだろうか。
 友達は責任を感じるだろうか。
 ひどく苦しかった。帰りたい――帰りたい。
 その時、部屋にノックが響いた。滲んできた涙を慌てて拭い、ベッドから身を起こす。
 どうぞ――と言う間もなくドアがあき、風呂上りと思しきバラムがひょいと顔を覗かせた。
「悪い。寝てたか」
「ううん……横に、なってただけ……」
 そうか、と嬉しそうに笑う。
「果実酒持ってきたんだ。飲むだろ?」
「お酒? あー、でも、あたし未成年だから……」
「未成年?」
 なんだそりゃ、とバラムが首をかしげる。
 あぁ、そうか――この世界にはそんな法律などないのだ。
「なんでもない。飲む」
 木のゴブレットに並々と透き通った酒を注ぎ、バラムが千宏に差し出した。
 自分はその隣に腰掛け、瓶に口をつけて直接煽る。
 うわぁ――と思った。虎だから酒好きなんて、そんな安易でいいのだろうか。
 しかしまぁ、ゴブレットから立ち上る甘ったるい果物の香りはたまらなく魅力的だ。胸いっ
ぱいに香りを吸い込んでから一気にあおり、瞬間、千宏は思い切りむせ返った。
「なん――だこりゃぁ! きつッ! 辛ッ! アルコール度数何パーセント!?」
 胸が熱い。
 気管が狭まって息苦しい。
 慌ててバラムが背中をさすり、それに甘えてひとしきり咳き込むと、唐突にバラムが吹き出した。
 笑い事ではない。死ぬかと思った。
「おまえ、こいつぁほとんど子供向けの寝酒だぞ? ヒトってのは酒の一つものめねぇのか」
「子供にこんなもの飲ますな馬鹿!」
 ぜぇぜぇと息を乱しながら、唇にこぼれた酒をごしごしと拭う。

 ごとん、とバラムが酒瓶を床に置いた――と言うよりも転がした。
 まさか飲みきったのか。一瓶全部。信じられない酒豪である。
「あー……パルマに借りた服汚しちゃった。染みになるかな」
 酒で服の襟元が濡れてしまった。
 ゆったりとした白いワンピースで、袖なしのブイネックと呼べない事も無い。背中は大きく
開いていて紐で結い上げてあり、袖や襟に刺繍で飾りが施してある。一応一般的な寝巻きなの
だと言う。
「舐めてやる」
332とらひとsage2007/08/28(火) 02:17:35 ID:6Hewtbq1
 ――え?
 一瞬、言葉の意味が分からなかった。
 その一瞬の隙を見逃さず、バラムが懐に潜り込んでくる。
 たっぷりと唾液を含んだ舌が、服越しに押し当てられる感触に、千宏は心底からぞっとした。
「やめ――!」
 反射的に押しのけようとした腕を、あっけなく捕まれる。
 じゅるる、と音を立てて唾液をすすり上げ、ざらざらした舌が鎖骨から首筋にかけてをねっ
とりと舐め上げられて、千宏は必死に逃れようと身を捩った。
 どうして――どうして。
「やめて……やめてバラム! 嫌だ、なんで――!」
「大丈夫だ、落ち着け。抱くだけだ」
 抱く――だけ?
 ぐいと体を持ち上げられ、広いベッドに仰向けに倒される。
「安心しろ。乱暴にはしねぇよ。ヒトのメスは弱いらしいからな」
 に、と安心させるようにバラムが笑う。
 尻尾が期待するようにふらふらと揺れていた。こんな状況でも、その様は無条件に可愛らしい。
 背中に回された指先が、背中を編み上げる紐を解くのを意識した。
 するすると抜き去られ、上半身が外気に晒される。
 心臓が早鐘のようだった。
 喉が引きつってろくに悲鳴も出てこない。
「ひッ……」
 べろり、とざらついた舌で無遠慮に乳首を舐め回され、千宏は歯を食いしばった。
 嫌だ――嫌だ――。
「いやだ……」
 ちゅう、と音を立てて、立ち上がりはじめた乳首を吸う。
 甘い声がこぼれる事はなかった――怖い。ただ、怖い。
「いてぇか?」
 嬌声を上げない千宏を訝るように、バラムが不意に顔を上げた。
 風呂上りで湿った銀色の髪。薄暗い部屋のため、丸く瞳孔の開いた金色の瞳。

「嫌だぁあぁあ!」
 ようやく、まともに声が出た。
 その絶叫に驚いたように、バラムがばっと千宏から距離を取る。
「お、おい、どうした。どこか痛くしたか? 見せてみ――」
「来ないで、来ないで――こないで!」
 叫んで、千宏はベッドから転がるように飛び降りた。
「チヒロ!」
 服の前を押さえてドアに飛びつき、取っ手を握る。
 呆然として取り残されていたバラムが、ようやく声を上げて立ち上がった。
 ほんの一瞬で間合いを詰められ、千宏はドアから引き剥がされて悲鳴を上げた。
「やだぁ! はなせ、はなせよ馬鹿! もうやだ、やだ、帰りたい! こんな所もう嫌だ!」
「落ち着けチヒロ! どうしたんだよ、なんで泣く! くそ、わけがわからねぇ!」
「どうした!」
 ばん、と荒々しくドアが開かれ、アカブとパルマが部屋に飛び込んできた。
 泣いている千宏とそれを拘束しているバラムを見比べ、責めるようにバラムを睨む。
「おまえ、何したんだ一体……」
「ひっどーい! か弱いヒトを虐待するなんて神経疑う。一体何させようとしたわけ?」
「俺だって分からねぇよ! ただ抱こうとしただけだ!」
「ヒトのメスはヒトのオスよりずっと弱いのよ。トラの私たちが乱暴にしたらすぐ壊れちゃう
んだから!」
 パルマが人差し指を突き立てて、偉そうに説教する。
333とらひとsage2007/08/28(火) 02:19:49 ID:6Hewtbq1
「チヒロ。どこか怪我したか? 骨とか折られてないよな?」
 アカブがその巨体からは信じられないほど優しげな声を出して千宏の体を気遣った。
 猫なで声――という言葉が頭に浮かんだ。
 自分もたしか、猫の尻尾を踏んだ直後に、こんな声を出した記憶がある。
 涙が溢れて止まらなかった。
 あぁ――なんだ、そういう事か。
「出て行く……もうやだ。出てく……!」

 自分は愛眼物なのだ――と改めて理解した。
 犬が芸を仕込まれるような物だ。
 この世界でのヒトとは、きっとそういう物なのだろう。
 飼われるならば、性欲処理の道具として働くのが当然の義務なのだ。
「バラム! おまえ本当に何しやがった!」
「チヒロ、ねぇ機嫌直して? バラムにはちゃんとキツく言っておくから!」
「本当に何もしてねぇって! なぁチヒロ、なんで怒ったんだよ? 言ってくれなきゃわかん
ねぇだろ?」
 長い尻尾がふらふらと振れ、丸い耳がぺたりと頭に伏せていた。
 パルマも同じように耳を伏せ、おろおろと千宏の様子を伺っている。
 アカブが溜息と共に面倒くさそうにがりがりと耳の後ろをかいた。
「あぁもう! 考えたってわかんねぇよ。ほっとけほっとけ」
「ひどーい! アカブったら冷たい!」
「うるせぇなあ。こちとら晩酌邪魔されてんだ。落ちてきたばっかで疲れてるんだろ、休ませ
てやりゃあ機嫌もなおるさ」
 アカブの言葉にバラムがようやく手を放し、千宏はその場に崩れ落ちて泣き出した。
 心配そうに千宏の背を優しく撫でるパルマを置いて、バラムとアカブが部屋を出る。
「ねぇ、泣かないでチヒロ。なにか欲しいものある? 果物持ってきてあげようか」
「パルマ! 早く出てこねぇと鍵、かけちまうぞ」
 愕然として、千宏は声の主を凝視した。
 アカブが、鍵の束を持って立っている。
「閉じ込めるの……?」
「そうじゃない! ただ、ヒトって凄く弱いし、高価だからよく悪い奴に狙われたりするの。
だから、勝手に出歩くと危ないでしょ?」
「やだ、やだよ……やだ、やだ!」
 アカブの冷たい金色の瞳が千宏を捕らえ、そしてゆっくりと閉ざされた。
 パルマが駆け足で部屋を出て行く。
「鍵は俺が管理するから、連れ出す時は俺に声掛けろな」
 ぱたん、と静かにドアが閉まり、鍵をかける音が部屋に響いた。
 パルマの笑い声がする。
「明日はね、町に行って首輪買うんだ。人用の首環って凄く可愛いんだよ、知ってた?」
「興味ない」
「私、チヒロが来てくれて凄く嬉しい。バラムに感謝しなくっちゃ」


切らせていただきます。

>>324
すまん……誤字ばっかりで本当にすまん……
334324sage2007/08/28(火) 06:52:48 ID:mhKwCwUI
>>333
 >>自分は愛眼物 →愛玩物

 話は凄く面白いし
 非常に丁寧に書かれているので
 とてもとても大好きだ

 だから、頑張れ、超頑張れ
335名無しさん@ピンキーsage2007/08/28(火) 17:58:14 ID:k80sIsGB
誤字誤用の指摘は保管庫の伝言板でやった方が
みんなが幸せになれるかも 
336名無しさん@ピンキーsage2007/08/28(火) 18:53:58 ID:03vTCRLf
でも、話が良いだけに気になるんだよね。
もうちょっと高みを目指して頑張って欲しいな……とか思う。
がんがれ、超がんがれ。そして、読み返す努力を。
337名無しさん@ピンキーsage2007/08/28(火) 19:29:04 ID:aT4YEusq
GJ
普通の反応だなーうんうん
そして飼い主ペット両者の会話のかみ合ってなさぶりがすばらしい
338名無しさん@ピンキーsage2007/08/28(火) 20:57:26 ID:2Ln4UDIW
投下しようと思ったら、とらひと氏のキャラと被っている(褐色の肌、銀髪)のに気が付いた。
褐色スキーとして褐色娘を捨てることは出来ない……けど、他人の作品と被るのはなぁ。
339名無しさん@ピンキーsage2007/08/28(火) 21:17:12 ID:2lf68O64
>>ひとらと
なんつーか、こう。「この世界の標準的な」ヒトと人間の出会いを見たのは新鮮な気がする。

>>338
問題ない問題ない。褐色娘なんぞ砂漠に行けばいくらでもいる。

不思議なことに髪が生えてないんだが。
340名無しさん@ピンキーsage2007/08/28(火) 22:30:51 ID:2lf68O64
ところでそろそろWiki(世界の方)更新しないとやばいんじゃなかったっけ?
341名無しさん@ピンキーsage2007/08/29(水) 07:09:34 ID:9dDmBJDS
>>339
『ひとらと』じゃなくて『とらひと』じゃまいか?w
342名無しさん@ピンキーsage2007/08/29(水) 12:18:16 ID:DJ4y8Kg6
>>341

>>339
> 『ひとらと』じゃなくて『とらひと』じゃまいか?w

本当だ

お酒ってこわいね!
343名無しさん@ピンキーsage2007/08/29(水) 20:20:20 ID:nYN3tF5g
おお、なんかよさげな新作が来てる
これは続きが楽しみ
344名無しさん@ピンキーsage2007/08/30(木) 23:25:36 ID:nbuSXqXv
ごめん。
「ひとひら」に見えた。
345名無しさん@ピンキーsage2007/08/31(金) 16:57:45 ID:61AiVQNb
>>338の投下を待ってる
346名無しさん@ピンキーsage2007/08/31(金) 23:02:11 ID:AFV46U1U
なんかこういうのを見ると
「味いちもんめ」でカメレオン連れまわして
いい気になっていたペットマニアの若造を
藤村の常連の一人が叱るのに言った「珍禽奇獣国に養わず」
という言葉の意味をしみじみとかみ締めざるを得ないな・・・
347名無しさん@ピンキーsage2007/09/01(土) 09:23:29 ID:nzk+P5Cx
確かに馬鹿なペットマニアって奴の痛さがよく分かる。
中世フランスの絵でも植物や動物を擬人化して描く事で
自称「動物好き」とか「花を愛する」人間を非難してるのがあるし
348とらひとsage2007/09/01(土) 22:47:46 ID:6qIoXHgu
百合展開
苦手な方はスルーお願いします

 わかりやすいヒト講座――メス編。
 ヒトのメスは非常に弱く、また、ひどく怖がりである事が知られている。
 警戒心が強く、一度怖がらせてしまうとその関係を修復するのは非常に困難である。
 また、ヒトのメスには処女膜と呼ばれる物があり、初めての性交時に激痛を訴える事が確認
されている。そのため無理に行為に及ぶとやはり怯えられる可能性があるため、性行為の経験
が無いヒトと性向に及ぶ場合は注意が必要である。
 小さめのバイブやローターなどでまず様子を見るのがよい。
 しかし一度快楽を教え込んでしまえば非常に従順で、調教によっては夜の生活の幅は飛躍的
にアップするため、根気よく開発していくのが一番の近道である。
 媚薬などを積極的に使い、行為への恐怖心を取り除いてやるとよい。
 逆に、わざと恐怖心を与えて服従させる方法もあるが、加減を誤ると肉体的にではなく精神
的に崩壊してしまう可能性があるためお勧めはしない。
 着飾って歌や踊りを教え込むことをステータスとする貴族も多い。
 
                   *

「あちゃーって感じ。バラム絶望的」
「怒った原因は分かったが……フォローのしようがねぇなこりゃ」
 パルマが大量に買い込んだ服やら首輪やらアクセサリーの真ん中にどっかりとあぐらをかき、
アカブはパルマが読み上げたヒト奴隷との生活教本の内容に頭を抱えた。
 バラムは今日も森に行っていて家にはいない。
 しかし遅かれ早かれ、いつしかこの絶望的な状況を知る事になるだろう。この本の内容を信
じるならば、バラムには千宏を恐怖で服従させる他道がない。
「素人にお勧めの簡単調教セットとか売ってるよ?」
「ただの淫乱に調教するのか? 趣味じゃねぇなぁ」
「そうだよね。特にメスヒトの価値って、外見にそれ程価値がないから頭の良さや特殊な技術
で決まるんだ。それを変な薬で壊しちゃうなんて絶対反対!」
 しかしなぁ、とアカブは唸る。
 これではあまりにバラムの立場が無い。
「まぁ、難しい事はアカブに任せるよ。私チヒロと遊んでくる。面白いよねぇ、ヒト用の付け
耳とか付け尻尾とか売ってるの。防犯用って書いてあったけど、それにしては種類ありすぎて
びっくりしちゃった」
 そんな事を言いながら、パルマはそこいらじゅうに散らかしたヒト用品をかき集めて箱につ
め、ひょいと抱えて立ち上がった。
 銀色のくせっけをなびかせて、尻尾をピンと立てて走り出す。
「任せるって……おいおい」
 その後ろ姿をぽつねんと見送り、アカブは溜息と共にヒゲと尻尾をへたらせた。

                 *

 こちらの気も知らないで、パルマは今日も天真爛漫に千宏の部屋を訪れて、色とりどりの衣
装やアクセサリーを広げて着て見せろとせっついた。
 初めは無視してずっと布団を被っていたのだが、ちらと様子を伺うと今にも泣きそうだった
ので、千宏は慌ててベッドから這い出した。
 どうして自分がパルマのお遊びに付き合わなければならないのかとも思ったが、今はパルマ
の押し付けがましい愛情がなければきっと壊れてしまうだろうとも思う。
 なにより、パルマの好意を突っぱねて絶望に浸る事は簡単だが、それが自分の立場を悪くす
る行為に他ならない事を千宏はよくわかっていた。
 パルマは髪飾りを弄びながら、千宏は髪が短いからリボンが飾れないと文句を言ったり、で
も髪が短いからイヤリングがよく似合うと喜んだりとまるで落ち着きがなく、千宏は昔遊んだ
着せ替え人形はこんな気持ちだったのかも知れないとくだらない事を考えながらその時間を過
ごしていた。
349とらひとsage2007/09/01(土) 22:48:24 ID:6qIoXHgu
 そして、夜が来た。
 夕食を終え、パルマと一緒に風呂に入り、新しく与えられた寝巻きを着てベッドにもぐる。
 ありがたい事に、元の世界で着ていたような、オーソドックスなパジャマである。
 ベッドの中で昨晩の恐怖に震えながら目を閉じると、がちゃり、と鍵のあく音がして、千宏
は思わず悲鳴を上げそうになった。
 頭まですっぽりと毛布をかぶって膝を抱き、来ないで、来ないで、と必死に祈る。
「そんなに怯えるなよ。何もしねぇ」
 アカブの声だった。
 バラムでは無い事にほっとして、しかし布団からは顔を出さずにそっと耳をそばだてる。
 ぱたん、とドアの閉まる音がした。しかし足音は聞こえない。
「昨晩――その、悪かった。言い訳になるかもしれねぇが、俺たちはヒトについてよく知らな
くてな――実際ヒトを見るのも初めてで、どう扱ったらいいのかわからねぇんだ。バラムも悪
気があったわけじゃねぇ」
 がりがりと、乱暴に耳の後ろをかく姿が目に浮かんでくるようだった。
 あぁ、ちくしょう、と溜息を吐き、どっかとその場に座り込む。
「なんつったらいいかわかんねぇけどよ、許してやってくれねぇか。あいつは俺よりは頭もい
いし、女の扱い方も知ってる。ただあいつはマダラだからよ、女に嫌がられた事ねぇんだよ。
だから……」
「怒ってるんじゃない」
 許すとか、許さないとか。
 悪気があるとか、無いとか。
 そんな事は問題では無いのだ。
 ただ、ただどうしようもなく――。
「嫌なんだよ……ただ、嫌なんだ。だって……だって昨日まで大学生で、友達だっていて、夢
だってあったのに……!」
 バラムに悪気が無かった事は、あの時の様子で分かる。だがだからこそ嫌なのだ。そう扱わ
れる事が当たり前である事が嫌なのだ。
 そう扱われるのが当然なこの世界が嫌なのだ。
「わかってるよ! あたしは君達のペットで、奴隷で、所有物なんだって事くらいわかってる
よ! そうしないと生きていけないのもわかってるよ! だけど嫌なんだよ! 帰りたい! 
お父さんとお母さんに会いたいし、友達と遊びたい!」
「チヒロ――」
「だって、想像してみてよ……! 理不尽じゃないか! だって、友達と遊んでたら川で溺れ
て、気が付いたら異世界で、よくわかんない犬のお化けに襲われて、尻尾の生えた男の人に助
けられて、それで元の世界には帰れないとか! 高級奴隷なんだとか! 恋人だって出来た事
無いのに、当たり前みたいに“抱くだけ”だって――!」
 そして、それを受け入れないともう、生きてもいけないなんて――。

 うわぁあ、と子供のような声を上げ、千宏は毛布に包まったまま泣きじゃくった。
 アカブが立ち上がる気配がし、そして、ベッドに歩み寄るのを意識した。
 そっと腰掛けたアカブの体重で、ベッドが大きく沈み込む。
「そうか……おまえにも生活があったんだよな」
 ぽんぽんと、毛布越しに背中を叩かれて、千宏はたまらずアカブの胸にしがみ付いて泣き出した。
 うぉ、とアカブが驚いたような声を上げ、しばし躊躇した挙句に縋り付いて泣く千宏の背を
撫でる。
 そうだよ、生活があったんだよ、あるんだよ、と八つ当たりのように怒鳴りながら、千宏は
ぐずぐずと鼻をすすって帰りたいと繰り返した。
 奴隷なんて嫌だ、ペットなんて嫌だ、一生懸命勉強して、資格だって取ったのに――。
350とらひとsage2007/09/01(土) 22:49:03 ID:6qIoXHgu
「明日――他の奴らも一緒に今後の事について考えよう」
 ようやく涙も収まりかけ、感情が落ち着き始めると、出し抜けにアカブが言った。
「もう俺達の勝手にしたりしねぇよ。お前が好きなようにさせてやる」
 驚愕して体をはなし、どういう事かと金色の瞳を凝視する。
 その、虎そのものでしかない顔からは表情を読み取る事は難しかったが、千宏はなんとなく、
アカブが自分を対等に見てくれている気がしてまた泣きたくなった。
 だがそんな事に何の意味も無い事を、千宏はよく分かっていた。
 好きなようにするもなにも、自分には何一つ出来ないのだ。
 恐らく、この世界に“落ちてきた”者たちが奴隷やペットに甘んじているのは、それが理由
なのだろう。甘んじているのではなく、そうして生きるしか道が無いのだ。
 解放されても、自由を与えられても、この世界でヒトはあまりにも無知で無力だ。
 保護してくれる団体も、教育を与えてくれる機関も無い。
「チヒロ? おい、どうしたよ。俺何か悪い事言ったかよ」
 千宏はその夜一晩中泣き続け、アカブはその千宏に一晩中付き合っていてくれた。
 人とかけ離れた姿をしているから、それが逆に警戒心を緩めたのかもしれない。
 千宏はアカブのちくちくとする毛皮に顔をうずめ、気が付くとそのまま眠っていた。

                   *

 千宏に仕事を与え、奴隷ではなく家族として扱おう――というアカブの言葉に、パルマは唖
然として目を見開き、ピクピクと耳を動かした。
 バラムも食事の手を止めて、正気を疑うような目でアカブを見る。
 そんななんとも言えない沈黙に晒されながら、千宏は彼らと同じテーブルにつき、ひどく肩
身の狭い思いをしながらとろりとしたシチューを一口食べた。
「仕事って……そ、そりゃあ、ヒトは頭がいいって言うし、よくわかんない発明したりするの
もいるって聞くけど……」
 仕事って言ったって――とパルマが千宏を見る。
「千宏はまだ落ちてきたばかりでこの世界の事知らないんだし、家事全般は下働きがいるし、
放牧は体力がいるし、森は危険が一杯だし……」
「何が出来るかはまだわからん。だが、見ての通り千宏はまだ若い。チャンスはいくらでもあ
るはずだ。パルマ。売買交渉に千宏を連れて行ってみろ。ヒトを連れてるってだけで相手の態
度も変わるだろうし、千宏も少しはこっちの事が覚えられるだろう」
「市場につれてくだと? 馬鹿言うんじゃねぇよ! ちょっと目ぇ離した隙にさらわれるに決
まってんだろ!」
「だったらてめぇが連れて歩いて守ってやりゃいいだろうがよ。女相手の交渉はてめぇの仕事
なんだ。市に行く機会もあんだろう」
 いきり立って立ち上がったバラムを見据え、アカブが言う。
 バラムは不満そうに尻尾を揺らし、しかし何も言わずに押し黙った。
 どさり、と乱暴に腰を降ろす。

「し、仕事なんかしなくてもさ、千宏は私達の家族だよ。ね? それでいいじゃん。無理に働
かなくたって、ちゃんと私たちが養ってあげるよ」
「それじゃだめなんだ……だめなんだよ!」
 パルマのなだめるようなその言葉に、千宏は半ば懇願するような声を出した。
「何も出来ないのは嫌なんだ。なんもわかんないのは嫌なんだよ! 怖くて、不安で、何がな
んだか分からなくって、でもどうにもならないからこの世界の人のペットになって……そんな
のは嫌なんだ! 自分の意思で行きたい場所に行きたいし、いたい所にいたい。一人で生きて
いこうって思ってるわけじゃない。でも、一人で生きられるようになりたいんだ……!」
 ヒトを人として扱って欲しい。
 ペットだとか、奴隷だとか――飾り立てて安全な場所にしまいこんで大事大事にされる存在
なんて真っ平だ。
351とらひとsage2007/09/01(土) 22:49:40 ID:6qIoXHgu
 そしてそういった存在は、常に飽きられて捨てられる事に怯えていかなければならない。
 若いうちは性奴隷で、人形気分で飾って遊んで、見せびらかして自慢できるからいいだろう。
 だが年老いた無能なヒト奴隷を――果たして最後まで面倒を見る者がこの世界にいるのだろうか。
 見た目だってこの世界の女性とほとんど変わらないのだ。年老いて使い道が無くなった奴隷
など、姥捨て山よろしくポイされるに違いない。
「チヒロ……」
 パルマが悲しそうに耳を伏せる。
 そして沈黙が訪れた。
「私、チヒロがおばあちゃんになっても捨てたりしないよ? 本当だよ?」
「それでも……あたしは生きる力が欲しい」
 パルマは困り果てたように尻尾をたらし、ちらちらとバラムの様子を伺った。
「チヒロがそう言うなら……私は反対しない、けど……」

 トラは多数決をしない――とアカブは言った。
 意見が分かれた時点で袂を分かち、無理に多数意見に少数意見を引きずりこんだりしないの
だと言う。
 ただ賛成した者だけが集まって実行し、そして賛成しなかった者は傍観――もしくは妨害す
る。そういうものなのだと言う。
 ひとつ問題があるとすれば、それは千宏の所有者がバラムだということだった。
「……パルマ。食ったら地図と適当に雑誌もってこい。アカブ。市に持ってく商品と帳簿をチ
ヒロに見せてやれ」
 ぱぁ、とパルマが表情を輝かせた。
 よく意味が分からないが、アカブがほっとした表情を浮かべていると言う事は、つまり許可
が出たのだろう。
 表情――?
 あぁ、よく見れば虎顔の表情も読み取れないこともない。
「そうだよね。ヒトは頭がいいんだし、ちゃんと教えれば交渉くらいすぐ覚えられるよね」
 そう考えると、チヒロと一緒にお仕事するのもなんだか凄く楽しそう――と、パルマはがつ
がつとシチューをかきこんで一目散にどこかに走っていった。
 アカブも静かに立ち上がり、じゃあ帳簿と商品とってくらぁ、とのしのしと部屋を去る。
 アカブについて行きたかったが、千宏は我慢してその場に留まり、冷めかけたシチューの野
菜をのろのろと口に運んだ。

「あいつが気に入ったか?」
 静かな問いに、千宏はぎくりと肩を竦めて恐る恐るバラムを見た。
 表情は何気ないもので、しかし千宏と同様に緊張しているのがわかる。
「……うん。いい人だと思うよ……」
 そうか、とバラムが頷く。
 そしてひどく言いにくそうに、
「俺……は、嫌い……か?」
 と訊く。
 数秒の沈黙を挟み、千宏は正直に、
「少し怖い」
 と答えた。
 そうか、とバラムが尻尾と耳を脱力させ、肩を落として寂しそうに空になった皿を睨む。
「でも……感謝してるよ」
 あの時、バラムに森で拾ってもらわなければ死んでいたのだ。
 あの晩だって、バラムの優しさが無ければあのまま陵辱されていた。
 そして今、バラムは千宏に一人で生きる力を与える事に同意してくれたのだ。
「ありがとう」
352とらひとsage2007/09/01(土) 22:50:23 ID:6qIoXHgu
 ぴん、とバラムが耳を立て、嬉しそうにくるりと尻尾の先を丸める。
「お、おう……気にすんな」
 照れ笑いのような表情を浮かべて立ち上がり、バラムはそそくさと部屋を後にした。

                  *

 この世界には、バラム達のような虎だけでなく、猫やら狐やら犬やらと、多種多様な種族が
存在しているらしい。
 そして種族によって生活様式や習性、得手不得手に顕著な違いがあり、みなそれぞれにあっ
た産業を持っているのだと言う。
 トラは豊かな国土に恵まれているため農業が盛んで、バラム達は森で取れた鉱石や薬草や、
家畜などを売っているらしかった。
 大体は国内にある市場で行商だが、注文を受けてそれを納品する事もある。定期的に納品し
ている物も無いではないが、季節によって森で取れる物が異なるため、コンスタントに同一の
物を納品し続ける事はまず不可能なのだと言う。
「本当は、ネコの国との国境にある大きな市場に行きたいんだけど、キツネの国を通らなきゃ
いけないじゃない? 私達、キツネとあんまり相性がよくないんだよね」
 大きく広げられた地図を指差して、パルマがひょいと肩を竦める。
 虎の威を借る狐――という言葉があるくらいだ。きっとこの世界でもキツネは頭が良くて、
トラは騙されてばかりなのだろう。
「ネズミの国から抜けられるんじゃない? この山を越えるとイヌの国境って事は、ここって
この山岳沿いでしょ? 最短なんじゃないの?」
「試した事はねぇが、試す気もねぇなぁ」
 そう、バラムが難しげな表情で顎を撫でた。
「ネズミは体が小さくて魔法もそんなになんだけど、その分物凄く警戒心が強いの。なかなか
入国させてもらえないし、入国したはいいけどどこの宿屋も泊めてくれなくて、ずっと野宿し
たって商人もいたらしいから、たぶんトラは相当信用薄いんだと思う」
「前に酒飲んで暴れた馬鹿がいたからなぁ」
 アカブがしみじみと言う。
「誰か死んだんだっけか」
「よりによってトラとの国境国で、ネズミがな」
 アカブの問いかけにバラムが答え、その場の雰囲気が絶望的に重くなる。
 ぶんぶんとパルマが首を振り、わざと明るい声で説明を続けた。

「それでね、仕方ないから国内の市場で行商するんだけど、そこにいるネコやキツネの商人が
もうひどいの! 私達の事馬鹿だと思ってやたらと吹っかけてきたり、足元みてきたり、どう
しようもないガラクタをさも素晴らしい物みたいに言って売りつけてきたり」
 悪徳商人――猫に小判?
 頭の中をぐるぐると単語が巡る。
「そんなふうにして買い叩かれた物が、結局は国境市で高値で売られてくんだよね」
「国境市?」
「ネコの国は各国の国境の交点に大規模な市場を設けてるんだ。それが国境市」
 バラムがそう説明しながら、ネコとキツネとイヌとネズミの国を隔てる国境線の交点を指差
し、とんとんと叩いた。
「ここには四つの国の商人が集中するから、特に大規模な市場になるんだ。一応ネコの国の領
地になるが、中立地帯として開放されてるからここに入るのに許可は要らない。反対にあるカ
モシカとヘビとネコの国境線の交点にも市場があるが、こっちはちと血生臭せぇな。武器や爆
薬、毒薬なんかの取引が主で、死の商場って別名があるくらいだ」
「死の商場?」
「ヘビとカモシカの国は内戦やら内乱が耐えないからな」
 それをネコが食い物にしてるのさ、とバラムが忌々しげに吐き捨てる。
「ネコの商人が武器や弾薬の原料を持ち込んで、それをヘビやカモシカが買うだろ? で、ヘ
ビとカモシカがお互いの国が開発した武器を売り買いするんだ」
 アカブはそう補足すると、特にカモシカの国は武器開発が盛んなんだと締めくくった。
353とらひとsage2007/09/01(土) 22:51:04 ID:6qIoXHgu
「私達は死の商場に用は無いから、絶対に行く事はないんだけどね。この雑誌見て。セパタと
センタってあるのが分かる? これが通貨で、1セパタは1000センタ。ネコはこの通貨じゃ
ないと取引しないから気をつけて。他の商人は物々交換に応じる事もあるけど、価値が見極め
られないうちはやめた方が無難だと思う」
「似たような服なのに全然値段が違うんだけど……」
「それは材質を見ればいいんだ。横に書いてあるでしょ? 貴重な材質で作った服は高いし、
服に使ってある装飾品によっても変わってくる」
 なるほど、合成繊維と天然素材のような物か。
 あとは、ガラスのイルミネーションか本物のダイヤかの違い――それ程“あちら”の人間社
会と考え方の違いは無いのかもしれない。
「まずチヒロは、どんな物がどんな値段で売り買いされるか覚えないとね。明日はバラムが市
場に行く日だから、観光気分で連れてってもらうといいよ」
 それまでに、商品の値段と名前と特徴を覚えようね、とパルマが笑う。
 案外――大学の勉強かもハードかもしれない。
 千宏はそんな事を思い、それでもパルマの言葉に力強く頷いた。

                     *

 獣臭い――と思った千宏を、果たして責められるものがいるだろうか。
 バラムに連れられて訪れた市場には、見渡す限りの虎、虎、虎である。
 しかも全ての虎が見上げるほどに大きいので、千宏は市場に到着した途端思わず奇妙な雄叫
びを上げそうになった。
 実際、うぉ、位の声は出したかもしれない。
 決してきゃぁ、では無かったのは確かである。
「絶対に手、離すなよ」
 差し出された手を逆らわずに掴み、巨大な布袋を担いで歩くバラムの後を必死になってつい
ていく。
 明らかに――明らかに注目を浴びていた。
 マダラがヒトを連れて歩いているのだから注目を浴びない方がおかしい――という理屈はわ
かるが、ここまで露骨に注目されるとさすがにすくんだ。
 そんな中を胸を張って堂々と歩くのだから、バラムは相当肝が据わっている。
 バラムは服やらアクセサリーやら香水やらでごった返す一画にやってくるとようやっと立ち
止まり、地面に真っ赤な布を広げてその上に商品を並べだした。
 これは少し意外だったのだが、干し肉や薬草、骨や牙などを販売するのはパルマの役目で、
香水や果実、鳥の羽や宝石の原石などを売るのを担当するのはバラムだった。
 中には羽や木の実をアクセサリーに加工してある物もあり、見るからに乙女心をくすぐる
品々である。
 そして今回の千宏の仕事は、それらのアクセサリーを一式身に付けてバラムの隣に座ってい
る事だった。
 これはパルマの提案だが、いわゆる生きたマネキンである。

「凄い人……っていうかトラ……」
「国境市の半分もいねぇよ」
「バラムは呼び込みとかしないの?」
「座ってるだけで寄ってくる」
 しれっと答えるバラムの言葉を肯定するように、一目散にこちらにかけてくる影があった。
 見事な金髪のトラ女で、どうもバラムと面識があるらしい。
354とらひとsage2007/09/01(土) 22:51:48 ID:6qIoXHgu
「バーラム! どうしたのよヒトなんて連れてきて! まさか買ったの?」
「拾った」
 信じられない、と悲鳴を上げる。
 そしてまじまじと千宏を見つめ、ふぅん、へぇ、としきりに感心しているようだった。
 ――パルマと似たような反応である。
「この子も売り物?」
「馬鹿言うな! 売り物はこいつの衣装だ」
「ふうん。ヒトが身につけてるってだけで、なんだか高級品に見えてくるわね」
 そういうものなのだろうか。
 普通、奴隷が身につけている物なんか汚らわしくて着られない――という結論に至るのでは
ないのだろうか。
 それとも、吉原の花魁が着ている着物は憧れの対象――というような事と同じなのだろうか。
 しゃがみ込み、長い尻尾をゆらゆらと揺らしながら並べられた商品と千宏を見比べて、女は
長く鋭い爪で鳥の羽で作ったピアスを指差した。
「これ、頂くわ。それと……ねぇ、今夜はその子も一緒にサービスしてくれるの?」
 ピアスの代金を支払いながら、女がちらちらと千宏を見る。
「私、バラムがその子犯してるとこ、見たいなぁ」
 ――なに?
 大きく目を見開いて、千宏は言葉を失ってバラムを見た。
「やめろイシュ。チヒロが怖がってる」
「あら、さてはまだご主人様にしか見られたことないのね? 初心でかわいいじゃない。ねぇ、
この子ってどのくらいの大きさまで銜え込めるの? 私、人用の玩具用意するわよ」
「イシュ!」
 ぬ、と千宏に伸ばされた手を、怒ったようにバラムが掴んだ。
 ビクリと、イシュと呼ばれた女が尻尾を縮こまらせる。
「なぁによ。いいじゃないちょっとくらい。ねー?」
 イシュがねこなで声を出す。
「じゃあせめてナデナデさせて? いいでしょ? ちょっとだけ。触るだけ」
 だってヒト奴隷なんて珍しいんだもぉん、とイシュが甘えた声を出す。
「チヒロがいいって言ったらな」
「もちろんいいわよね? そうだ、マタタビキャンディー舐める? ヒトってマタタビ平気な
んだっけ?」
 言いながら、全く動けずにいる千宏の頬にイシュが触れる。
「おー。柔らかい柔らかい。プニプニしてる。きもちいー!」
「や、やだ……!」
 嫌がって顔を背けると、面白がってイシュが笑う。
 その手がするりと服の中に滑りこんできて、千宏は愕然とイシュを見た。
「ふふ、小っちゃい胸。やっわらかーい」
「おい、イシュ。いい加減に――」
「乳首見っけ。えい」
 ひゃん、と甘ったるい声が出て、千宏は愕然として口を押さえた。
 聞いたバラム? 可愛い声ね、とイシュが笑う。
「や、やだ! やめ、ぁ……んん……」
「ほら、喜んでる。ほらほら、おねーさんの指でいっちゃいなさい」
 ぐう、とバラムが言葉を詰めた。

 喜んでる――ように見えると言うのか。
 鋭い爪の先端で、イシュがくすぐるように立ち上がった乳首をつつく。
 嫌がって逃れようとしてもどうしても逃げられず、千宏はいつの間にかイシュにしがみ付い
て必死に声を殺すだけになっていた。
 イシュは怖くない――だからこそ、快楽が浮き彫りになってしまう。
「だぁ……め、ぇあ……ゃ、やぁ……そ、ひぁ……」
 耳元でくちゅくちゅと音がする。
355とらひとsage2007/09/01(土) 22:53:32 ID:6qIoXHgu
 イシュの舌だ。香水だろうか、ひどく甘い香りがする。
「おねーさんにどうして欲しい? ん? 下の方も触って欲しい? 欲しいわよねぇ」
「やぁ……おねが、や……!」
 くすくすと笑いながら、イシュが千宏の下半身に指を滑りこませる。
 くち、と粘っこい音を響かせて、イシュが指の腹でそこをなぞった。
「ほうら、もうぐっちゃぐちゃ。ね、ちゅーしていい?」
「いやだ――!」
 渾身の力を込めて突き飛ばそうとした腕は、しかしどう足掻いても動かなかった。
 ほっそりとした、しかし豊満なイシュの体がピクリとも動かない。
「ちぇ、さすがにそれはだめか」
 爪切ってくればよかった、と零しながら、イシュが指の動きを早めた。
 ぞくぞくと腰から震えが走る。
「やだ、やだ、やだ、やだぁ……! や、ぁ……やぁあぁ――!」

 びくん、と大きく体が跳ね、千宏はイシュの首にすがりついた。
 下半身の奥の方がきゅうきゅうと蠢き、ふるふると指先が震える。そして溶け出すように体
から力が抜けていき、千宏はぐったりとしてへたりこんだ。
「ふふふ。指だけでいっちゃうなんて、かーわいい。どう? 気持ちよかった?」
 よしよしと、イシュが千宏の髪を撫でる。
 そしてポケットに手を突っ込むと、チヒロの手の平に一枚の紙幣をつかませて立ち上がった。
「バラム。今夜はもういいわ。なんだか凄く満足しちゃった。それ、お駄賃ね」
 ひらひらと手を振りながら、イシュが尻尾を揺らして去っていく。
 呆然とその後姿を見送って、千宏は突然沸きあがってきた羞恥心に真っ赤になって唇を噛み
締めた。
 自分は――今、何をされた?
 こんな市場の真ん中で――どうして抵抗の一つも出来なかったのだ!
「今の……なに?」
「イシュだ。あいつは商人じゃなくってただの客だが――」
「どうして止めてくれなかったの……?」
「――止めて欲しかったのか?」
 驚いたような表情でバラムが聞き返す。
「気持ち良さそうだったから、止めない方がいいかと――」
 ぱん、と乾いた音が市場の雑踏に飲み込まれた。
 バラムがぎょっとして千宏を見つめ、困惑したように気まぐれな瞳孔を大きく開く。
 ぼろぼろと涙がこぼれてきて、千宏はごしごしとそれをぬぐって立ち上がり、雑踏に紛れる
ように一目散に駆け出した。
 数秒遅れて、バラムが千宏の名を叫ぶ。
 しかし千宏は振り返らず、市場の雑踏の中を闇雲に、ひたすらに走り続けた。


切らせていただきます

がんばって読み返しましたが、誤字脱字ありましたら申し訳ありません。
>>338の投下を切実に待ってる
356名無しさん@ピンキーsage2007/09/01(土) 23:29:32 ID:sMkMcqWV
チヒロがだんだん可愛くなってる。
でも、チヒロもいいけどトラの国のふつーの市場の様子とかの描写がもっと好き。
異世界ファンタジーの一般情景の描写とか読むの好きなもので。
GJです。














……さて、そろそろこっちも書き始めないとな……orz
357名無しさん@ピンキーsage2007/09/02(日) 11:22:36 ID:DNErbJl0
うん、うまい! 世界がうまい!
うまく言えないけどすごい上手だ、文字通り引き込まれた。
あとエロい。チヒロ躊躇ってたわりにはいきなりすごいシチュw

GJ!!
358名無しさん@ピンキーsage2007/09/02(日) 11:45:42 ID:fPCJqtb+
弟さんとのフラグもktkr
口で嫌がってる割には流されやすい上にあっちの才能もバリバリなようだし
どうなってしまうのか
どうなってしまうのか
359名無しさん@ピンキーsage2007/09/02(日) 14:10:27 ID:2X5oa+XK
GJ!ぃエロイね〜。
360名無しさん@ピンキーsage2007/09/02(日) 15:47:32 ID:dq33XxEi
GJ!
なんだか表向き和解(?)したように見えても
持つ者と持たざる者の齟齬や意識というのは
越えるのは困難なんだろうな。
小林よしのりも「人間なんて人一人救えりゃ良い方で
大概は自分を救うので精一杯なんだ」とおっしゃってるが
この真理はこちむい世界の獣人も逃げられないんだな
361名無しさん@ピンキーsage2007/09/02(日) 19:24:01 ID:ELFvq8rP
コヴァは個人的にちょっと受け付けないんで置いとくとしても、作品内に何らかのテーマを盛り込む書き手さんが増えてきたな。
書き手側としてはハードルがぐんぐん上がって大変かもしれないけど、読み手としてはなんかすごくいい感じになってきてる気がする。
362名無しさん@ピンキーsage2007/09/02(日) 21:11:30 ID:2X5oa+XK
逆にテーマがあったほうが書きやすい。ってか色を出しやすいんだろう。
363名無しさん@ピンキーsage2007/09/02(日) 22:19:34 ID:6sFBU/af
ちょいとここの住民に質問
エロ小説に泣ける展開ってどのくらい需要ある?
それとも、一貫してエロエロエロ(ryの方がいい?

ここはシリアスな小説が載るから住民の趣向がよー分からん
364名無しさん@ピンキーsage2007/09/02(日) 22:25:17 ID:PnvrBWRp
>363
作者によって獣人ワールドの捉え方とか違うだろうし、
それぞれが解釈した世界観に基づく物語とか読みたい。

極論すると面白ければエロくなくてもいいや
365名無しさん@ピンキーsage2007/09/02(日) 23:03:20 ID:t+pgireF
面白くてエロなら言うことはない。けど、
できたら物語として成立しててくれると個人的には嬉しい。

書きたいのが「エロだけ」なのか「物語」なのか考えてから書くほうが、
どっちを書くとしても身になると思う。
366名無しさん@ピンキーsage2007/09/03(月) 00:12:48 ID:9/S+t5Lv
突き抜けてエロければそれはそれで潔くて良いけど、中途半端はダメだろうね。
同じ理由でシリアスで泣ける系の話は某作家さんが強烈だけど、二番煎じは美味しくないから、
本気で泣ける話を作らないと中途半端でやっぱりダメだと思う。
要するに、テーマとか目標とか、その作品中で作者が何をやりたいのかが見えない話は結局評価が低いんだと思う。
エロならエロで徹頭徹尾エロにして短編とか掌編にしてあげると、おそらく多くの住民が萌え死ねるw
367名無しさん@ピンキーsage2007/09/03(月) 01:34:32 ID:GgcyMQoL
>>363
こちむい世界の世界観にのっとっているならエロもシリアスもどんと来い
ってのが基本スタンスだと思っていいと思うよ

だから泣ける展開だってどんと来い
正直見ててここの住人の嗜好って多岐に渡ってるみたいだし
ノーマル、アブノーマルも話自体が妙なものでない限り大丈夫かと
ただアブノーマル、特に同性愛や猟奇、グロ、鬱辺りは
投下時に注意を促したほうが荒れなくて済むかな
以上一住人の個人的見解でした
368師走2007/09/03(月) 01:39:38 ID:1bhP+f/u

 初めて投下します、師走と申します。ヒトと羊のカップリングです。
 よろしくお願いします。


泣かないで、泣かないで、笑って!


 夜も更け、深夜に近い時間帯を一人の若い男が歩いていた。
 10代後半であろう赤いタンクトップとジーンズをはいた男は、アコースティックギターケースを肩に掛け、バイトによって痛んだ体を癒すかように背筋を大きく伸ばす。
「ふぃー、今日も良く働いたぜぇ」
 ずれ落ちかけたギターケースを背負い直しながら、男は呟く。
 暗い夜道だが、人通りもなく男が急に声を出した事に驚く者もいない。
「最近は壊れたギター修理する所為で金に余裕無くて、バイトばっかだったからなぁ。やっとこれも戻ってきたし、明日はのんびり河原で練習すっか」
 名案とばかりに、男は口元に小さく笑みを浮かべる。
 一日のバイトが終わり、浮かれているのか家に帰る足取りも軽い。
 iPodのイヤホンを耳に装着し、再生ボタンを押す。
 軽やかなメロディが流れ出す。
「First kissから始まる、二人の恋のHistory〜」
 女性ヴォーカルの歌だが、男は特に気にせずに歌う。どうせ誰も聞いてはいない。
「この運命に魔法かけた、君が突然―」
 狭い道路を、ライトを付けた軽トラックが走ってくる。
 男は気付かない。

 小さな道路の交差点、ここが男の分岐点となった。

 飛び出してくる軽トラック。
「現れた!」
 軽トラックの光が男を飲み込み、刹那初めて男は意識した。
 そして、ぼんやり思う。
(そりゃ、ないだろよ)
 


 軽トラックを運転していた太った男は後悔した。はやく家に帰ろうと、普段人気の少ない道を法定速度をかなりオーバーして運転して、結果、人を一人轢いてしまった。 しかし後悔はもう遅い。
 とっさ、ブレーキを掛けたがあの距離ではまず、間に合わないだろう。
「轢いちまった…」
 呆然としながら軽トラックを降りる。
 目を見開いて立ち尽くす男の顔。完全に目に焼きついた。
 はねられてミンチになった男を想像しながら、男は一瞬逃げ出そうかと考える。
 轢いたところを見た人間はいない筈だ。
 迷いながら男は、怖いもの見たさで車の前で死んでいるであろう男の顔を確認しようとする。
(死んでいたら逃げよう、しかし生きていたら…)
 太った男は恐怖と後悔でくしゃくしゃになった顔で思い切って車の前に飛び出す。
「……あれ?」
 そこには何も無かった。血痕も臓物も、人間も。
 そう言えば、人に車をぶつけたときの衝撃も音も何も感じてはいない。
「ははっ、助かった……」
 男は全身の力が抜けたかの様にその場でへたり込んだ。

 後日、男はテレビを見て知る事となる。あの日、軽トラックで轢いたと思った幻覚の男が、テレビで捜索願いが出されていることを。



 その日、一人の男が地球上から完全に姿を消した。




369名無しさん@ピンキーsage2007/09/03(月) 08:15:01 ID:9MyJ7wMn
乙〜

独り言の多い男だねぇ
370名無しさん@ピンキーsage2007/09/03(月) 15:14:40 ID:t8m9Dw73
そういやあっちの世界への落ち方って何かルールあったっけ?

向こう側から見るとほとんどは
前触れ無く空から落ちてきたり現れるみたいだけど

こちら側からは同じく突然に
もしくは大きな事故などで行ってしまう
ってのが多いな
371名無しさん@ピンキーsage2007/09/03(月) 20:15:27 ID:UKxk9fhN
>368
これで一旦区切るの? もうちょっと書き溜めてから投下した方が良いと思う。
372名無しさん@ピンキーsage2007/09/03(月) 22:59:40 ID:26A/lL++
>>368
今後の展開に期待

>>370
今のところ、特に法則はないみたいだね
割と日常の中から突然「落ちる」ことも多いような気がする

敢えて言うなら、チキュウのニホンから「落ちる」ものが多いようだ
373名無しさん@ピンキーsage2007/09/03(月) 23:04:08 ID:UKxk9fhN
大多数が日本人、たまに外国人とかだね。
日本人のヒトでさえ希少種なのに、そこへ金髪碧眼の外人が落ちたら価値はどうなるのやら。
というか外人が主人公の話なんてあったっけ?
374名無しさん@ピンキーsage2007/09/04(火) 02:02:26 ID:KRvRSbNS
幾つか在ったけどどれも長続きしてないっぽい
375独逸sage2007/09/04(火) 03:05:17 ID:RegiyfkU
どうもお久しぶりです。
何時ぞやの独逸人のオッサンが主人公の話を投下した120改め独逸です。
取り敢えずオッサンの方ではなく、別の独逸人のニイチャンが主人公の話を投下します。

ttp://0cgi.net/rent_h/bbs/sr3_bbss/sr3_bbss/31nachtum/55_1.txt

戦争、兵器、ちょっとばかりのグロが苦手な人は注意してください。エロ薄めです。
あと74kbもあるので長いです。それでは、失礼しました……
376名無しさん@ピンキーsage2007/09/04(火) 12:15:33 ID:sZ/AsYlz
ぅゎ、ヴォーンっょぃ。狙撃かこいいね。
377名無しさん@ピンキーsage2007/09/04(火) 12:16:50 ID:sZ/AsYlz
ごめん、なんか思ってることそのまま言ったらふざけてるみたいになった。
このお話のラストの狙撃が一番かっこよかったー。
エロ薄いのが残念かな、やっぱw
378名無しさん@ピンキーsage2007/09/04(火) 21:33:11 ID:PwScU8ki
なんという、マニアック……!!
武器が一つも知らない
作者は間違い無く戦争ヲ(ry
やっぱり冒頭だからエロ成分が微量だな
次はエロと、続きも正当派な文に期待
379名無しさん@ピンキーsage2007/09/05(水) 21:10:52 ID:54r2jSJx
なんというスターリングラード。
このお話の仇役もきっと狙撃兵。
380名無しさん@ピンキーsage2007/09/05(水) 23:21:54 ID:XZdysqtZ
ライフルがKar98「k」じゃなくて「b」なのにこだわりを感じるw
あれは「k」よりも銃身が長いから狙撃向きだろうね。
なんとなくだけど、この二人がセクロスするのはまだ先っぽいな。
続編に期待。あと>368の続きも期待。
381名無しさん@ピンキーsage2007/09/06(木) 19:10:07 ID:a4OsD9jQ
>>380
>なんとなくだけど、この二人がセクロスするのはまだ先っぽいな。

しばらくはtoLAVEるな展開でもいいのでは。
382名無しさん@ピンキーsage2007/09/06(木) 23:16:24 ID:CX/MvJoZ
>>375
やっと読破

>アンタって馬鹿ぁ?

アスカを思い出したのは俺だけじゃないはずだ!ww
で、次の落伍者はアレですか?
ノルトランド師団とかからですか?
383保管庫のwikiの中の人sage2007/09/07(金) 19:46:15 ID:DVLclcvz
投下が小康状態のようなので、少し場を借りて

>とらひと氏
リンク貼る上での仮タイトルがバラムとチヒロ(仮題)になってますけど
何か良いタイトルの希望とかありますか? なければ(仮題)を外そうと思ってます

>独逸氏
執筆状況に関する話を聞く限り、
先だってのFeldwebelも含めてSSは独逸兵シリーズで一つのコーナーにまとめるべきでしょうか、
それともそれぞれ別個独立した連載として扱っておいた方がいいでしょうか
384名無しさん@ピンキーsage2007/09/07(金) 20:54:12 ID:F1lOOlkq
うほっ、中の人
いつも更新ご苦労様です
385名無しさん@ピンキーsage2007/09/07(金) 21:01:56 ID:tpTVjE53
>>383
ご苦労様です。
こういうマメな人がいると本当に助かる。
386独逸sage2007/09/07(金) 22:18:02 ID:+GbOlbmT
>383
ご苦労様です。
自分の作品に関してですが、一纏めにして下さって結構です。
387とらひとsage2007/09/08(土) 22:06:27 ID:aBO9RMGh
>>383
ご苦労様です。
返信が遅れてしまいましたが、『虎の威』でおねがいします。
388名無しさん@ピンキーsage2007/09/08(土) 22:22:37 ID:Y3jNpGx4
>>383
いつもご苦労様です、おかげさまで作品の閲覧がとても快適です。
389保管庫のwikiの中の人sage2007/09/08(土) 23:40:18 ID:zd5ykOVB
快適に利用してもらえてこちらも嬉しい限りです。ありがとうございます

>>386
>>387
反映しました。
連載ページの紹介文やあらすじ文などは自分が勝手に書いてるものなので
まずい表現や誤った表現があった時はどうぞ修正しちゃってください
管理人権限での編集ロックが掛かってるのはトップとメニューの2ページだけなので
390名無しさん@ピンキーsage kotimui2007/09/09(日) 16:34:03 ID:MoEMcO+h
http://toku.xdisc.net/up/download/1189323163.zip
391名無しさん@ピンキーsage2007/09/09(日) 16:45:12 ID:u7QmozkQ
なんだろう、これ。>>390
パスとおんないし……。
392名無しさん@ピンキーsage2007/09/09(日) 16:47:16 ID:odTXjLKx
>390
DLパス間違ってない?
っつか中身何?
393名無しさん@ピンキーsage kotimui2007/09/09(日) 17:08:58 ID:MoEMcO+h
http://toku.xdisc.net/up/download/1189325242.zip
こっちだった(恥
394名無しさん@ピンキーsage2007/09/09(日) 17:55:08 ID:t66hUKnz
>>393
猫耳少女ならぬ青年であったか
うむ、dでした
395名無しさん@ピンキーsage2007/09/09(日) 18:02:55 ID:Ludv2Z7r
>>393
ごちそうさま
ええ話や
でも、こちむいの猫じゃ構わず中で大爆発w
396名無しさん@ピンキーsage2007/09/09(日) 18:45:20 ID:u7QmozkQ
>>393
ごっちゃんでした。
397とらひとsage2007/09/11(火) 04:18:12 ID:+0FDxzET
有象無象による陵辱
本番無し

 人混みを駆けて、駆けて、駆け抜けて人気の無い一角にたどり着く。
 市場を抜ければそこは極普通の住宅街で、テレビで見たヨーロッパ辺りの市場の町並みに似
ているような気がしないでもない。
 淡いクリーム色の、ごつごつとした石造りの建造物。
 煉瓦か何かで舗装された道。
 路地を一本抜けた向こうにはまだ市場の雑踏が見えていて、千宏は乱れた呼吸を整えながら
ごしごしと涙を拭い、雑踏から隠れるように壁に背を預けて座り込んだ。 
 逃げてきてしまった。
 逃げたからと言って状況が好転するわけでもないのに、感情に任せて逃げ出してしまった。
 一人で帰れるわけでもないのに。
 行く場所があるわけでも無いのに。

 気持ち良さそうだったから、止めない方がいいかと――。

「くそ……くそっ!」
 膝を丸めて頭をうずめ、誰に言うでもなく悪態をつく。
 惨めさがこみ上げて、じりじりと千宏の心臓に爪を立てる様だった。
 ひどく胸が苦しくて、苦しさが溢れるようにまたぼろぼろと涙が落ちる。
「なんなんだよ……もう! なんなんだよ! 平気なのかよ! あれが普通なのかよ!」
 可愛い猫ちゃんね。触らせて?
 お腹撫でてあげると喜ぶの?
 うわぁ、かわいい。ごろごろ言ってる。猫ちゃん猫ちゃん、きもちいい?
 無邪気な子供の笑い声が今にも聞こえてくるようだった。
 自分の立場を再認識する。
「もうやだぁ……」
 それでも、縋らなければ生きていけないのだ。
 一人で行き抜ける力をつけると――そう心に決めたのだ。それまでは我慢して、この立場を
受け入れなければならないのだ。
 ご主人様に媚びて、懐いて、自分の居心地が良くなるように。ご主人様に愛されて、自分の
思い通りになるように。
 お客様を噛む犬は駄犬だ。
 お客様を引っかく猫は狭い籠に閉じ込められる。
 ましてや、ろくに芸も出来ないくせにご主人様に逆らうなんて――。
 千宏は自分の手首に噛み付いて、叫びださないように必死に耐えた。
 自分は珍獣だ――珍獣だ。珍獣なんだ。
 ありがたい事じゃないか。それだけで人は――人間は価値があると認めてくれる。存在それ
自体が価値なのだ。
 代わりはいくらでもいるわけじゃない。大丈夫。まだ間に合う。
 戻って謝れば許してもらえる。寂しかったの、怖かったのと甘えて見せればそれでいい。
 尊厳なんて考えるな。そんな物は存在しない。
 尊厳を得るために耐えなければならないのだ。
 戻ろう――。
 そう、千宏が顔を上げたその時だった。
 腕を捕まれ、ふわりと体が宙に浮く。
「おおい! 捕まえたぞ!」
 もさもさとした毛皮の感触。さかさまの世界。
 肩に担がれている――と理解するのに数秒かかった。
 虎だ。黄色と黒の、オーソドックスな虎模様。
「やっぱりか! こっちに走って来たと思ったんだ! おおい、見つけたとよ!」
 ぎょっとして、虎の頭越しに振り返った前方に、同様に黄色と黒の虎男。
 千宏を担いでいる虎を合わせれば三人か――。
398とらひとsage2007/09/11(火) 04:18:48 ID:+0FDxzET
「何――なに、なに? やだ、やめてよ! 降ろして! 降ろしてよ!」
「よーしよし。暴れるなよお嬢ちゃん。一人で怖かったな。もう大丈夫だ」
 なにがどう大丈夫だと言うのだろう。
 この状況で――一体何が。
「本当にヒトだぜ」
「信じられん。なんだってこんな所に――」
「降ろせって言ってんだろ馬鹿! 降ろせ! 降ろせ馬鹿!」
「分かった分かった。大丈夫だから暴れるな。な? 怖くない怖くない」
「誰かの飼いヒトか?」
「かもしれねぇが。“落とした”んだろ。で、今俺達が拾ったと」
 ぞくり――と背筋が凍りついた。
 そうか、そういう、扱いか――。
「お使いを頼まれたんだよ! ご主人様は近くにいるんだ! だからお願い降ろして! 降ろ
し――!」
 咄嗟にそう叫んだ途端、ぷつん、と首のあたりで何かが切れた。
 これだけは絶対に着けていないと危ないんだと、パルマに与えられた首輪である。
 ぽとりと地面に落ちたその青い皮製の首輪を見つめ、千宏は呆然と言葉を失った。
「ヒト奴隷にこんな所を一人で出歩かせたら、こうなる事くらい分かってただろうに」
「捨てたようなもんだよ。構いやしねぇ」
「俺達のねぐらに案内しような、お嬢ちゃん」
 そんな――。
 喉が引きつって言葉が出てこなかった。
 あぁ、くそ、まただ。
 自分はどうしていつも、声を上げなければならない時にこうやって竦んでしまうのか――。
「なぁ、その前によ、ちょっとだけ味見してみねぇか?」
 その上――。
「おいおい……まだ昼間だぞ!」
「お前ほんと分かってねぇなぁ。ヒトのメスは繊細なんだ。ちゃんと媚薬やってからじゃなきゃ
怖がるわ痛がるわ……」
「だからよ、痛がらせなきゃいいんだろ? ちょっと指入れてみるだけならよ、な?」
 嫌だ――と叫べば、ひょっとしたらやめてくれるのだろうか。
 だが、どうしても声が出てこない。
「っつーかここ、市場じゃねぇかよ。アフアの実くらい売ってるんじゃねえの?」
「おまえ頭いいな!」
「つまり味見ついでにここで媚薬使えば、ねぐらにつく頃にはすっかり出来上がってるってわけだ」
「じゃあ俺ちょっと買ってくるわ。そこの路地にいてくれ。先に始めててかまわねぇから」
 虎男の一人が嬉々として雑踏へと駆けていく。
 そして、千宏を担いでいる男が動いた――薄暗い路地裏に向かって。
 何をされるのか想像が付かないほど馬鹿では無い。
 暴れようとした四肢が動かなかった。舌先さえ動かない。
 路地裏に積み上げられた木箱の一つに腰を下ろし、虎男は千宏を後ろから抱きかかえるよう
にして膝の上に座らせた。
「おい、この子泣いてるぜ?」
 正面に立つ虎男が、ひょいと千宏の顔を覗いて言う。
「お前のツラがこええからだよ。よしよし。お兄さんが守ってやるからな」
「悪かったな悪人面で!」
 千宏からしてみれば、虎など全員悪人面なのだけど――。
「へーぇ。結構かわいいもんだな。なんつーかこー……ネズミっぽい?」
「おまえ、小せぇ女はみんなそう見えるんじゃねぇのか?」
399とらひとsage2007/09/11(火) 04:19:25 ID:+0FDxzET
 千宏を抱えた虎男がゲラゲラ笑う。
「ぁ……あ……」
 ようやくこぼれた吐息のようなその声に、二人はぴたりと喋るのをやめた。
「たす……助け……おねが……」
 驚いたように目を見開き、虎がお互いに顔を見合わせる。
「すっかり怯えちまってるぞ。可哀想に」
「大丈夫大丈夫。優しくしてやるからな」
 ぎゅう、と千宏を背後から抱きすくめ、子供にそうするように緩やかに体をゆする。
 すると正面の虎男が腰を屈め、千宏のズボンに手をかけた。
「ぃ、い――ッ!」
 ウェストで縛ってあった紐を解かれ、するりとあっけなく脱がされる。
 必死に閉じようとする両足をまるで抵抗を感じていないように両肩に抱え上げ、虎男はおお、
と声を上げた。
「まだ何もしてねぇのに濡れてるぞ」
「なぁんだ、調教済みなんじゃねぇか。こりゃあいい」
 違う――それは、それはさっきイシュが――。
「よーしよし。前のご主人様よりずっと気持ちよくしてやるからな」
 言って、下着の上からべろりと舌を這わされた。
 ひ、と恐怖と嫌悪に声が漏れ、ガチガチと歯が鳴った。その間に、千宏を抱きかかえた男が
ぐいと上着をたくし上げる。
 慄然として、完全に色を失った自分の体を凝視する。
 全身に鳥肌が立っていた。その、お世辞にも大きいとは言えないふくらみを、ふさふさと毛
が生えた両手がふにふにと揉みしだく。
「うわ、やわらけぇ」
 誰か――。
「おお。溢れて来たぞ。たまんねぇな」
 誰か、助けて――と、心の中で悲鳴を上げる。
 ずるりと下着を剥ぎ取られ、直接舌があてがわれた。
 ざらりとした感触。
「ひゃあんっ!」
 思わず漏れたその声に、千宏自身が驚いた。
 そんな――違う。違う。
「気持ちいいだろ? な? 怖くないって言っただろ?」
 ざらり、ざらりと、猫のような――。
「あ、あぁ……や、や、や……」
 ぬめぬめと、長く分厚い舌が押し入ってくる感触に、千宏は喉を反らせて悲鳴を上げた。
 ざらざらとした舌が、柔らかな肉壁を擦り上げて刺激する。
 指で――指で慰めた事は何度もある。小さなローターで一人遊びに興じた事だってある。
 だが、先程イシュにいかされた時だってこんな風には感じなかった。
 ふにふにと乳房を揉んでいた男の指が、爪の先でくりくりと乳首を転がした。
 体が言う事を聞かない。ガクガクと体が震え、いつの間にかだらしなく喘ぎ声を零していた
口から、つ、と細く唾液が垂れる。
 ぐいと喉を反らされて、震える唇にべろりと舌が這わされた。
 無遠慮に口の中に入り込み、だらだらと唾液を流し込まれる。
 むっとする獣の臭い――それとも、これが男の臭いなのか。飲み下したくなくて必死に喉を
絞めて抵抗し、そのせいで息が苦しかった。
「んん! ん、んぅー! ふぅん……ん、んぅ……ッ!」
 ぼろぼろと涙を流しながら、千宏は上下の口を舌に犯されて目のくらむような絶頂に全身引
きつらせ、それでも立て続けに与えられる快楽から逃れようと必死になって身を捩った。
 唇が解放され、しかし出てくるのは制止の言葉ではなく喘ぎ声ばかりで――。
「あぁ! あ、ひぅ……だぇ、や……やぁ、あ、あぁ――!」
400とらひとsage2007/09/11(火) 04:20:00 ID:+0FDxzET
「こりゃあ、媚薬なんざいらなかったかもなぁ」
「いや、でも穴は相当狭いぞ。調教済みかもしれねぇが、まだ使ってねぇんじゃねぇかな」
「調教済みでもいてぇのかな」
「さぁ……詳しいのはあいつだしなあ」
 ぐちゅり、と音を立てて、きっちりと爪のしまわれた指が這わされる。
 やめて、と言う間もなくそれは千宏の中に入り込み、ぐちぐちと音を立ててかき回した。
「――試してみるか」
 指が引き抜かれる。
 呼吸を止め、千宏は表情を作る事も忘れて眼前の虎を凝視した。
 ふるふると、ただ力なく首を振る。
「いやだ……」
 今回は声が出た。
 そうだ。嫌だ。嫌だ。
「大丈夫だって。痛かったらすぐやめるから。おい、ちょっと足持っててくれよ」
 ぐいと大きく足を開かされ、千宏は再び喉が引きつるのを意識した。
 嫌だ。いやだ――。
「いやだ……いやだ、いやだ! いやだ! いやだぁあ!」
 ズボンを下ろし、平気で子供の腕ほどはありそうな怒張を引きずり出す。
 涙で歪む視界で恐怖に竦みながらそれを凝視し、千宏は眩暈と吐き気を覚えてそれが自身に
あてがわれる様子から目をそらした。
 ぬちゃり、と音を立て、熱の塊が押し当てられる。
「たすけて……たすけて……たすけ……」
 ず、ずず、と、男が腰を押し進める。
 無理だ――痛い。痛い。痛い。
「痛い! 痛い、痛い! やだぁ! やだぁあぁあ!」
「チヒロ!」
 ぎょっとしたように、二人の虎男が動きを止めて声の方を凝視した。
 褐色の肌に、銀色の髪。
「バ――」
「うわ、マダラかよ」
「あーびびった。なんだ? チヒロって」
 ずるりと、まだ先端もろくに埋まっていなかった凶器が引き抜かれる。
 ずぐずぐとその箇所が痛んだ。その痛みを必死に軽減しようとするように、分泌液だけがと
ろとろと滴っている。
「そいつに何してる……」
「ああ。拾ったんだ。いいだろ」
「ヒト奴隷だぜ? なんならおまえも味見――」
「俺の女に何してる――!」
 うぉ、と小さく唸って、二人は顔を見合わせた。
 あちゃあ、とでも言うように、がりがりと耳の後ろをかく。
「おまえの――って言われてもなぁ。証拠はあるのかよ。見ての通りこいつは首輪もしてない
し、今は俺達のもんなんだ」
「拾った奴の物――ってのは、常識だろ? 落としたほうが悪いん――」
「泣いて嫌がってんのがわからねぇのか馬鹿野郎! 返せよ。チヒロをそんなふうに扱う奴に、
はいそうですかって渡せねえ」
 面倒くさそうに、虎男が萎えた陰茎をズボンに納めてバラムを見る。
 ゴキゴキと首の骨を鳴らし、先程までとは明らかに違う、凶暴な目でバラムを見た。
「おい、マダラのお坊っちゃんよ。口の利き方ってもんをしらねぇな。あ? なんならケツに
突っ込んでよがらせてやろうか? ヒトのお嬢ちゃんと一緒に媚薬たっぷり使ってよ」
 憤怒に燃えた表情で、バラムがじっと虎男を睨み据えた。
 無理だ――と思った。敵うわけがない。
401とらひとsage2007/09/11(火) 04:20:35 ID:+0FDxzET
 だってバラムは人間みたいで――この虎は、虎なのだ。
 爪の鋭さも、牙の鋭さも、体の大きさも、きっと力だってぜんぜん違う。
 その時、おおい、と明るい声がした。
「買ってきたぜ薬――って。うわ。何やってんだよおまえら」
 先程、市場に消えた虎男である。
 そして、
「――何があった」
 と急に真剣な声を出した。
「どうもこうもねぇよ。こいつがいちゃもんつけてきて――」
「チヒロを返せ」
 これだよ、と肩を竦める。
「――おまえら、こいつに何かしたか?」
「今から一発ぶん殴ってやる所よ。そのあとケツに突っ込んでや――」
「馬鹿野郎死にてぇのか! こいつはバラムだぞ!」
 ぎょっとして、バラムと対峙した虎男が目を見開く。
「バラム――って、まさか、アカブの兄貴か!」
 ざ、と、今にも飛び掛らんばかりだった虎男が飛びのいた。
 そして、千宏とバラムを交互に眺め、忌々しげに舌打ちする。
「クソッ! あぁ、畜生!」
 放してやれ、と声が上がり、ひどく未練がましい動作で千宏は解放された。
 バラムは屈強な虎男達を睨みつけたまま動かない。
「悪かった。野良だと思ったんだよ。だからアカブには黙っといてくれよな。な!」
 この場を終決させた虎男が、へらへらと笑いながらバラムに懇願する。
 そして名残惜しそうに千宏を見つめ、他の二人を引き連れてそそくさと去っていった。
 意味が――全く意味が分からない。
 助かった、という事だけは分かった。
 また、バラムに助けられたのだ。
「チヒロ……平気か? どこか怪我、してねぇよな」
「……うん」
 そうか、と、ほっとしてバラムが笑う。
 そして脱ぎ捨てられた下着とズボンの拾い上げ、砂を払って無言で千宏に差し出した。
 あの三人は――あの三人の虎男達には、欠片の悪意も感じられなかった。
 きっと、いい人達なのだろう。動物も好きなのかもしれない。
 そして――それでも、当然のように千宏を犯そうとしたのだ。猫を見つけたら撫でようとす
るような、そんな決まりごとじみた雰囲気さえ漂わせて――。
 バラムは、嫌だと言ったらやめてくれた。
 やめてくれたのだ。言葉を聞いてくれたのだ。
 この世界で、それがどれだけ優しい事か千宏は知りもしなかった。
 それなのにいきなり全てを求め、食い違う価値観に激昂した自分は馬鹿だ。
 住んでいた世界が違うのだ。
 それでもバラムは、この世界の基準から考えれば逸脱して優しいのに――。
「ごめん……ごめん、バラム……ごめ……ありが……」
「あぁ、いや、俺こそ……あの、なんだ。イシュ、止められなくてごめんな。嫌だったんだよ
な。そうだよな、俺だってあんな市場の真ん中でいかされたら屈辱だもんな」
 俺、馬鹿だよなぁ、と、バラムがうな垂れる。
「もっと早く見つけてやれなくてごめんな……俺、普通より耳悪いし、嗅覚だって並以下だか
らよ……」
 丸めた服を渡されて、ごしごしと涙を拭われる、
 促されて大人しく――下着はもう使い物にならなかったので捨てたが――服を着て、千宏は
バラムに手を引かれて再び市場へと戻って来た。
 途中、落ちていたはずの首輪を探したが見当たらず、首輪がない、とバラムに言ったらもう
拾ってあると言う。
402とらひとsage2007/09/11(火) 04:23:03 ID:+0FDxzET
 店に戻ると、イシュとは別の女性が店番をしており、謝礼にとキスをねだって上機嫌に帰っ
ていった。
 疲れただろうから、今日はもう帰ろうとバラムが言い、千宏はありがたくその言葉に甘える
事にした。
 全身、あの虎男達の臭いが染み付いている気がして気分が悪い。
 早く体を洗いたかった。
 バラムに手を引かれ、見た事のない生物が引く馬車のような箱に乗る。
 落ち着くから――と言ってバラムが買い与えてくれた果物ジュースがおいしくて、千宏はそ
れを飲みながらまたボロボロと泣いていた。
「……俺さ。マダラだから、喧嘩に勝ったことねぇんだ」
 不意にバラムが切り出した言葉に、千宏は泣くのをやめてバラムを見た。
「で、俺が泣いて帰るとよ、アカブの奴がすげぇ怒って、俺の喧嘩相手ぶちのめしちまうんだ。
まるで兄弟逆でよ。今も昔と同じで、俺が喧嘩して殴られたりすると、アカブの奴が仕返しに
行くんだ――いらねぇって言うのによ」
 俺がマダラだからなんだろうけどな、と、バラムが小さく苦笑する。
「俺は弱いマダラだから――守ってやらねぇと、って、思ってるんだろうな。アカブはでかい
し、力も普通より強いから、俺とは逆に喧嘩に負けた事ねぇんだ」
 だから、あの虎男達は逃げたのか。
 アカブの報復が恐ろしくて――。
「あいつがいなきゃ、俺、おまえの事守れなかったんだよなぁ……」
 がたん、と馬車が大きく揺れた。
「格好悪いよな、俺……」
 マダラは綺麗。でも弱い。
 きっとそれは、千宏がヒトである事と同じくらいどうしようも無い事で、それでもバラムは、
屈強な虎男達の前で臆さずに、千宏を助けに入ってくれたのだ。
「そんなことない」
 格好いいと思った。
 森で獣から救ってもらった時も、さっき、怒りに燃える瞳で屈強な虎男達を睨み据えたその姿も。
「弱いのは仕方ないじゃん……でも、それで、弱いからって格好悪いって事になるんじゃ、あ
たしなんてゴミみたいじゃん……!」
「チヒロはいいんだ。女だし、それにヒトだから……」
「バラムだってマダラじゃんかよ! マダラは弱いんでしょ? 弱いもんなんでしょ! だっ
たら弱いの普通じゃん! 仕方ないじゃん! 弱いのにあんなふうに出来るのは格好いいんだ
よ! 心が強いってことなんだ!」
「チヒ――」
「格好いいんだよ!」
 千宏の激昂が理解できずに、バラムが瞳孔を丸く開いて沈黙する。
「あたしは弱くて……痛いの、が、怖くて……悲鳴上げたいのに、怖くて声も出なくて、悪態
の一つもついてやりたいのに出来なくて! すごく惨めで、格好悪くて、自尊心ボロボロなの
に! どうしてそんなに格好いいのに分からないんだよ! 馬鹿じゃないの! 気付けよ! 
アカブがあんたを守るのだって、あんたがいい兄貴だからでしょ! 力が無くて弱い分、他の
所でアカブを助けてたんじゃないのかよ!」
 ぐしゃりと、手の中にあった紙コップが潰れてジュースの残りが少しだけこぼれた。
 それをじっと睨んでいると、また涙で視界がぼやけてくる。
 泣いてばかりだ。
 泣くことしか出来ない――泣く事でしか抵抗を示せない。まるで赤ん坊じゃないか。
 格好悪い――凄く、凄く格好悪い。
 おろおろと、バラムがどうしていいか分からないという様子で千宏を見た。
 尻尾の挙動が明らかに不審である。
 悩んで、悩んで、悩みぬいた挙句、バラムは恐る恐る――本当に恐る恐る千宏の体を抱き寄せた。
 そんな様子が妙におかしくて、尻尾や耳は相変わらず可愛くて――。
 たまらず、千宏は小さく吹き出した。

         切らせていただきます。
403名無しさん@ピンキーsage2007/09/11(火) 12:29:16 ID:lStdYtst
助けが入るの、ひととおり輪姦されちゃってからでもよかったな…
と思った俺鬼畜
404名無しさん@ピンキーsage2007/09/11(火) 13:25:52 ID:BTP/h2jO
でも、それじゃ千尋が完全に壊れちゃうかもね
物語的には壊れると後がつらいかも
それよか、実は強いんじゃなくて弱いご主人さまって珍しいかも
文字通り虎の威を借るだよ
続きに期待します>とらひとの人さん
405名無しさん@ピンキーsage2007/09/11(火) 13:37:06 ID:1E2OUiqb
GJ!!!

守るモノが出来たヒトは
可愛そうになるくらい、強く
同時に、恐ろしく弱くなる

頑張れ、バラム&チヒロ
406名無しさん@ピンキーsage2007/09/11(火) 21:26:34 ID:Fuq1a4Yk
やり取りや心情がリアルだなぁ…

GJでした
407名無しさん@ピンキーsage2007/09/11(火) 22:12:20 ID:0NIRjvQI
やっぱり虎三人衆の行為って
あっちの世界から行くと凄く優しい部類にはいるのか・・・
改めてヒトにとって厳しい世界なんだなぁ
と再確認させられました
408名無しさん@ピンキーsage2007/09/11(火) 22:35:59 ID:dD+aME81
とらひとさん乙です〜。

そして、Wiki人物関係更新した方もお疲れ様です。
409とらひとsage2007/09/13(木) 21:18:57 ID:r0Js4KZw
エロ無し注意

 予定よりもずっと早くに帰ってきたバラムと千宏に、アカブはぎょっとして窓から身を
乗り出し、そして嗅ぎなれぬ――否、嫌な意味で嗅ぎなれた不快な臭いに思い切り顔を顰めた。
 バラム抱きかかえられたまま、疲れたようにぐったりと目を閉じる千宏の――その顔。
 仕事を放り出して外に飛び出し、アカブは二人に駆け寄るなり、
「何があった」
 と唸った。
 千宏が怯えたような表情を浮かべ、困り果てたようにバラムを見る。
 バラムは明らかに気落ちした――どこか傷ついたような表情で千宏を降ろし、
「後で話す――チヒロを風呂に入れてやってくれ」
 とだけ伝えてその場を離れようとした。
 この、嗅ぎなれた――だが嗅ぎなれぬ男の臭いと、その言葉。
 何が起こったか察するには十分だった。
「どいつにやられた」
「よせ。アカブ。チヒロが怯える」
「どこのどいつだ!」
 激昂してバラムの襟首を引っつかみ、アカブは牙をむき出して怒鳴りつけた。
 だらりと力なく尻尾をたらし、バラムがすい、と視線を反らす。
「バラム! 聞け。チヒロは家族だって言っただろう。その家族を傷つけた野郎を野放し
にはできねぇ。これは侮辱だ。チヒロだけじゃねぇ。俺達一族に対する侮辱だ! 俺は俺
を侮辱した奴を許さねぇ――どこのどいつがやったんだ!」
 小さく、バラムの唇が動いた。
 だがアカブにはそれだけで十分過だった。
 極小さな囁きの中に覚えのある名前を聞き拾い、アカブはすぐさま駆け出した。
 千宏を泣かせた男達を、バラムを傷つけた男達を、平然とのさばらせておく事などとて
も耐えられる事ではない。
 家族を傷つけた存在を、アカブは決して許さなかった。

「ねぇ、アカブ、何するつもりなの……?」
 報復なのだろう――とは思う。だが、果たして報復に何をするつもりなのか――。
 取り残されたように立ち尽くし、馬車から解放した生物に跨って走り去ったアカブの見
えない後姿を見つめるバラムの横顔に、千宏は恐る恐る質問を投げた。
 ちらと千宏に視線をやり、気にするなとでも言うように首を振る。
「風呂、入ってこいよ。その……気持ち悪いだろ?」
「うん……」
「果物搾っておいてやる。パルマに着替え用意させるから、そのまま行って来い。もう場
所は分かるよな」
 くしゃくしゃと頭を撫でられ、見上げた先には人を安心させようとするような笑顔。
 そしてふと思い出したように、
「……あのな」
 と言いにくそうに視線を反らした。
「アカブ――が、夜には帰ってくると思うんだがな……」
「うん」
「怒鳴られたりするかもしれねぇけど、怯えないでやってくれな。あいつ、誰か殴った日
は一日中不機嫌だから……」
 ――許してやってくれねぇか。
 ふと、アカブが申し訳無さそうに零したその言葉を思い出し、千宏は間の抜けた顔でバ
ラムの顔を見つめ返した。
 似てるんだな――と思った。
 出会ってからほんの数日で、異世界の人間である千宏がそう思ってしまう程に、バラム
とアカブはそっくりだった。
410とらひとsage2007/09/13(木) 21:19:54 ID:r0Js4KZw
「チヒロ?」
「ん……分かった」
 そうか、と、ほっとしたようにバラムが笑う。
 それじゃあ行って来い、と送り出されて、千宏は一人で風呂場に向かった。
 結局迷った挙句にどうにか風呂場にたどり着き、服を脱ぎ捨てて熱い湯船に浸かる。
 ほんの五分ほど肩まで浸かり、ようやく気持ちに余裕が出てきた瞬間――。
 堪えきれず、千宏は排水溝にうずくまって嘔吐した。

               ***

 バラムに絞ってもらったジュースを飲み、パルマのアクセサリー作りを手伝い、字を教
えてもらいながら帳簿を睨んでいるうちに夜が来た。
 パルマは市場の印象や出来事を聞きたがったが、バラムが一言それを制すと、ぶうぶう
と不満を洩らしながらもそれ以上聞こうとはしなかった。
 たぶん、この家の家長はバラムなのだろう。
 両親は死んだと出会った時に話してくれたし、アカブとパルマ以外は下働きだ。
 屈強な虎男がコック帽をかぶって食事の用意をしている姿を見た時はさすがに驚いたが、
元の世界でもコックは大柄だったり筋肉質だったりする事が多かった気がしないでもない。
 ただ、料理をしているのがいかんせん虎なので、肉料理が出てくると何の肉だろうと非
常に気になる事もある。
 なにせイメージが猛獣なので、人間――この世界で言うところのヒト――の肉が平然と
出てきたりするのでは無いだろうかと思わずにはいられないのだ。
 ふと気になったが、やはり牛のような獣人――と呼ぶのは失礼らしい――もいるのだろうか。
 その場合、男はミノタウロスで女は巨乳だったりするのだろうか。
 そして、そのウシ達は牛肉を食べたりするのだろうか。
 どうしても我慢しきれずパルマに聞くと、千宏が今食べているのはシュバインの肉で、
ウシという種族も存在すると教えてくれた。
 ちなみに、このシュバインの肉と言う奴は味も見た目もほぼ牛肉である。
 ウシって、あたし達の世界だと食用なんだよね、と千宏が呟くと、パルマはさっと顔色
を青くして、食欲が無くなったじゃない――文句を言いつつ、それでも残さず料理を平らげた。
「あの……ちなみに、トラって……チヒロの世界だと……どうなの?」
「いや、普通に猛獣だよ。人気者だし」
「食べたりしない?」
「する人もいるかもしれないけど……普通は食べないかな……あたしも食べた事ないし」
 あぁよかった、とパルマがほっと胸を撫で下ろす。
 イノシシの肉は食べた事があるのだが、この調子だとイノシシという種族もいそうなの
でやめておいた。
 この世界で千宏の世界での食生活――特に肉料理の話をするのは危険である。

 食事を終え、せっせと読み書きの勉強をしていると、動物の蹄が街道の石畳を叩く音が
かすかに耳に届き、千宏は窓から身を乗り出して暗闇を睨んだ。
 バラムは日が落ちる頃に森に用があると言って出かけてしまい、下働きの虎達は仕事を
終えて自室で酒を酌み交わしている。
 更にパルマは今風呂に入っているため、アカブを出迎える者はたぶん、今誰もいない。
 きょろきょろと周囲を見回し。
 おろおろと窓を覗き込み。
 そして、奇妙な義務感にかられて千宏は一人玄関へと向かった。
 玄関――と言っても、そこはやはり学校じみた建造物だ。
 極普通の玄関な訳ではなく、観音開きの巨大な木製の扉である。
 千宏の力で開け閉めするには相当に重いのだが、元が軽い木材なのか構造上の問題なの
か、それでも動かないほどではない。
411とらひとsage2007/09/13(木) 21:20:31 ID:r0Js4KZw
 気合を入れて取っ手を引くとひどく緩やかなペースで扉が開き、瞬間、千宏の眼前に鋭
い爪の巨大な手が乱暴にねじ込まれた。
「うわっ」
 思わず零して飛びずさり、乱暴に押し開かれた扉の向こうに立つ巨大な影を見る。
「……うわ」
 その姿を凝視して、千宏は思わずそう零した。
 なんと言おうか。
 こう言ってしまうとなんなのだが――。
「き……ったねー……」
「おいこら。出会い頭にそりゃねぇだろう」
 全く持ってその通りである。
 不機嫌そうに唸り声を上げるアカブに繕い笑いで謝って、千宏は少し離れた位置から薄
汚れたその毛皮をまじまじと観察した。
 白い毛皮が所々赤黒く変色し、毛が束になって固まっているように見える。
 ふと嫌な予感がした。
 あれはひょっとしたら、もしかして――。
「それ、血?」
「そうだ」
「け、怪我したの?」
「少しな」
 平然と言い放ち、立ち去ろうとするアカブにあんぐりと口を開き、千宏は慌ててその後
を追いかけた。
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってよ! 怪我、手当てしないと! ええと、そうだ、まず傷
口綺麗にして――」
「いらねぇ。ほっときゃ治る」
「膿んだりしたらどうすんだよ!」
「どうもしねぇ」
「そんな投げやりな!」
「うるせぇな! 今気が立ってんだ後にしろ!」
 振り返りざまに怒鳴られて、千宏は文字通り悲鳴を飲み込んだ。
 怖い――バラムの不機嫌顔の比では無い。
 数秒の睨み合い――と言うよりも、千宏が一方的に睨まれていただけだが――を忌々し
げな舌打ちで終らせて、アカブは再び千宏に背を向けた。
「怒鳴られたくなかったら、寄ってくんな。風呂入ってくる」
「――今、パルマが入ってる」
 あの女――と、苛立たしげに吐き捨てる。
 くそ、寝ちまうか、と本当に不機嫌そうに言う姿は腹を減らした猛獣を見ているような
もので、声をかけたらすぐにでもくいつかれそうな印象さえあるのだが――。
 怯えないでやってくれな、と、バラムは言った。
 それはつまり、信じてやってくれと言う事だと思う。
 それにアカブはあの夜に、一晩中泣き止まなかった千宏に付き合ってくれたではないか。
「傷、拭いてあげるよ。あたしならお風呂場からお湯持ってこられるし……」
 家族だ――と、アカブは言ってくれたのだ。
 確かに、今のアカブは怖い。だが、だからと言って殴られたりはしない――と、思う。
そう思いたい。
「いい」
「でも……」
「しつけぇな! おまえにゃ関係ねぇだろうが!」
 なんで――そうやって怒鳴るんだよ!
 そう怒鳴り返したいのに、体がすくんでどうしても反応が遅れてしまう。
 千宏はまた喉が引きつりそうになるのを必死に堪え、ぐっと唇を噛み締めた。
「あぁ……ったく! 怖いんだろうが。無理して気にしてるふりなんざしなくていい」
「無理なんか……してない」
「声が震えてるぞ」
 責めるような、からかうような、侮るようなその口調に、千宏は頭に血が上るのを意識した。
412とらひとsage2007/09/13(木) 21:21:59 ID:r0Js4KZw
「だってあんた不機嫌じゃんか! 怒鳴って追い返そうとするじゃんか! そんな凶悪な
顔で不機嫌だったら、怒鳴ったら……あたしがヒトじゃなくってもびびるだろ普通!」
 面食らったようにアカブが体ごと振り返り、ヒゲをひくつかせて千宏を見た。
「なんだよ……だって、家族って、言ってくれたじゃないか……! じゃあ、家族なら、
怪我して帰ってきたら心配するの当たり前だろ! いいじゃんか手当てくらい! 手伝わ
せろよ! やらせろよ! 気が立ってるとか知らないよそんなこと!」
「お、おい……待てよ、ちょ! な、なにも泣く事ねぇだろ! 泣くな、泣くなって!」
「か、関係ない、なら……なんで、今日、あんなに怒ったんだよ! それとも、なに? 怪
我してる奴は心配しちゃいけないって決まりでもこの世界にはあるわけ? 誰かに怪我の
手当てしてもらっちゃいけないって決まりでもあんのかよ!」
「いや、ねぇけど……」
「だったらそこに大人しく座ってろ! お湯とタオル持ってくるから! あとその汚れた
服も脱げ!」
「わかった! 言うとおりにする! だから泣くな。頼むから」
 もはやアカブの方が泣きそうだった。
 どうしたらいいか困り果て、おろおろと尻尾が揺れている。
 こんなところも、この兄弟はそっくりだ。
 絶対にここを動くなよ、と釘を刺し、今日迷子になったおかげですっかり道を覚えた風
呂場への道のりを走り出す。
 風呂場に飛び込むとパルマが驚いて悲鳴を上げたが、アカブが怪我をして帰ってきたか
ら傷を洗うんだと言うと、放って置いても治るのに――と目を瞬いた。
 そして、それでも手当てするんだと声を荒げると、慌てたように風呂から上がり、湯を
張った木の桶と手ぬぐいを渡してくれた。
 お湯が満たされて重たい桶をよたよたと危なげに運んで戻り、居心地悪そうに座り込ん
でいるアカブの隣に静かに置く。
 手ぬぐいを湯にひたして血で汚れた白い毛皮を拭うと、アカブが正に獣のような呻き声
を上げて痛がった。
「……爪あとみたい」
「爪あとだ」
 三倍にしてやり返したがな、と憮然としつつも自慢する。
 じくじくと血が滲む腕の傷を押さえるようにして拭い、顔を汚す血液を拭う。
 そうしているうちに気付いたが、実際アカブの傷など二、三箇所に過ぎず、それよりは
返り血の方多いような状態だった。
 喧嘩相手の安否が気遣われる量の返り血である。
「薬とか、包帯は?」
「うちにゃそんな物ねぇよ」
「何でないんだよ!」
「必要ねぇからだよ!」
「怒鳴んないでよぉ……」
「おまえが先に怒鳴ったんじゃねぇか!」
「あんたが怒鳴ると怖いけどあたしが怒鳴っても怖かないだろ!」
 いやまぁ、そりゃそうなんだが、とアカブがあっけなく言い負ける。
「だからよ、あのな、本当にほっといても治っちまうんだよ。いてぇのは我慢すりゃいい
だけだし、我慢できねえ程いてぇ傷はどうせ薬なんざ塗ってもいてぇだろ?」
「痛いの我慢しなきゃいいじゃん。なんで痛いのがいいんだよ。マゾなんじゃないの」
「そりゃあ……ほら、なんだ。考え方の違いって奴なんじゃねぇか?」
「バラムやパルマも、怪我してもほったらかしなの?」
「まぁ、大概そうだなぁ……」
 第一、あいつらは俺みてぇな喧嘩はやらねぇから――と考えるように天井を仰ぐ。
 その、首の辺りの白いほわほわした毛に血がこびりついているのを見つけ、ぬらした手
ぬぐいで丁寧に拭い取る。
「さっきお風呂って言ったけど……その腕、普通にお湯につけたりするの?」
「ああ。普通につけるな」
「痛いじゃん!」
「慣れりゃどうってこたねぇ」
 さすがに呆れた。
413とらひとsage2007/09/13(木) 21:22:59 ID:r0Js4KZw
 そうか、強い――とはつまり、こういう事か。
 強いからこんなにも、自分自身に無頓着でいられるのだ。千宏から見れば目を背けたく
なるような大きな傷でも、アカブにとっては命に別状のない、取るに足らない傷なのだ。
 道で転んで擦り傷を負った程度なら、千宏だって湯船に浸かる。
 すりむいた所に湯が染みてひりひりと痛むが、まぁ耐えられない事は無い。
 だが――だがそれにしても、肉が見えるほど深く抉られているのだ。
「これ、どれくらいで治るの?」
「明日の昼ごろにゃ薄皮張ってんじゃねぇかな」
 爪に引っかかった肉塊と思しき赤黒い塊を掃除しながら、平然とアカブが言う。
 とても信じられなかった。
「あたしだったら死んでるのに……」
「いくら弱いっつっても、ちと大げさじゃねぇか?」
 ははは、とアカブが笑う。
「死ぬよ。普通に死ぬ」
 傷を見ながら、極真剣にそう答えると、アカブが笑うのをやめて真剣な表情で千宏を見た。
「血が止まらなくて失血死だったり、傷口から病気に感染して死んだり、放置しておくと
傷が腐って腕を切断しなきゃならなくなったり」
「……そりゃ……難儀だなぁ……」
 口元を押さえて、それ以外に言葉が見つからないと言うように呟く。
「アカブがちょっと、ほんとに軽く殴るだけで、たぶん死ぬよ」
 絶対的な弱者。
 取り扱い注意。
 割れ物注意。
 天地無用。
 真剣で重苦しい沈黙の中、不意に思いついたようにアカブが千宏の手首を掴んだ。
 何、とアカブを見返すと、観察するような目にぶつかり首をかしげる。
「ちょっと力入れるぞ」
「――は?」
 ぐ、とアカブの手に力がこもった。
 掴まれている、から握られているへ。握られているから、締め付けられるへ。
 少し痛い。痛い。かなり痛い。折れる。砕ける。絶対砕ける。
「ちょ! 折れる! まじ痛い砕け痛いいたいいたたたた!」
 ぱっと千宏の腕をつかむ手が離れ、アカブが信じがたい物を見るような目で千宏を見た。
「――本気か?」
「すんげぇ赤くなってるじゃんか! なんて事すんだよ!」
 激昂して怒鳴るなり、今度は両手首を捕らえられる。
 振りほどこうとするも、当然のごとく全く動かない。本当に、微塵たりとも動かない。
「……どうした? 振りほどいてみろ」
「してるんだよ! 動かそうとしてるの! これで全力なの!」
 冗談だろ、と言うようにアカブが笑う。
「笑うな! こっちはマジなんだから!」
「……これで全力なのか?」
「そうだよ! おもっくそ力入れてるよ!」
 ごくり、とアカブが息をのんだ。
 一方的に押し付けられた重苦しい沈黙に、千宏が疑問たっぷりの表情でアカブを睨む。
「……無理だろ」
 そう、唐突にこぼれたアカブの言葉に、
「何がだよ!」
 と、噛み付くように聞き返す。
 いいかげんに放せよもう、と声を荒げると、アカブははっと目を見開き、慌てたように
千宏から手を放した。
「弱いん……だな」
 本当にしみじみと、改めて実感したように、若干の恐怖さえ伺える声色でアカブが小さ
く呟いた。
 そりゃ、虎の化物に比べりゃ弱いだろう、と千宏から見れば思いたくもなるのだが、千
宏から見た化物がこの世界の通常なのだからどうしようもない。
 その時、ばたん、と乱暴に廊下へと続くドアが開いた。
 バスタオル一枚きりの、ほかほかと湯気を纏ったパルマである。
414とらひとsage2007/09/13(木) 21:24:07 ID:r0Js4KZw
「お帰りアカブ。怪我したんだって?」
「かすり傷だ」
「お風呂空いたよ。入ってくれば?」
 ちらと、アカブがこちらを見たのに気が付いて、千宏は問いかけるように首をかしげた。
 それからがりがりと首の後ろあたりをかき、いや、そうだな、と低く唸る。
「今日はやめとく。血はあらかた落ちたみてぇだしな」
「でも血生臭いよ」
 すんすんと鼻を慣らし、パルマが嫌そうに顔を顰める。
「明日でいい。疲れた」
「ははぁ……なるほど。そう言う事か」
 にんまりとパルマが笑い、意味深な目でアカブを見る。
「何が言いてぇ」
「べぇっつに。じゃー私もう寝るね。明日は市場にいく日だから早めに寝るんだ」
 ひらひらと手を振って、ぱたぱたと走り去っていく。
 その後姿を忌々しげに睨みつけ、アカブはのっそりと立ち上がった。
「何あれ。どういう意味?」
「さあな。あいつの考える事はよくわかんねぇ。おまえも明日は、パルマについて市場だ
ろう。早めに寝とけ」
 こいつは俺が片付けてとく、と、既にぬるま湯と化した赤い液体の満たされた桶を軽々
と持ち上げる。
「――それとな」
「うん?」
「パルマが防犯用の着け耳と尻尾、買ってあるはずだ。明日からはそれつけて市に出ろ。
まだ面も知れ渡っちゃいねぇだろ」
「え、でも……ヒト奴隷を連れてる方が商談が有利に働く方が多いだろうって……」
「いや、いい。今までだって困っちゃいなかったんだ。それより、今日みたいなこたぁも
うごめんだろう」
 言われて、千宏は再び軽い吐き気に襲われて唇を引き結んだ。
 あの、舌の感触。甘やかすような優しい声。
「一応、俺の方でも手は打っといたが、念のためだ――いいな」
「うん……」
 アカブの毛皮が白でよかったと思う。
 アカブの毛皮が彼らと同様に黄色と白の虎模様だったら、顔を合わせた途端に昼間の出
来事を思い出し、体が竦んで吐き気を催したに違いない。
 下働きの虎男とすれ違うだけで、全身が緊張するのがわかるのだ。
「アカブ」
「なんだ」
「ありがとう」
 呆気にとられたような金色の瞳が、丸く瞳孔を開いて千宏を凝視する。
「何が――」
「じゃ! おやすみ!」
 一方的に会話を打ち切って踵を返し、自室に向かって走り出す。
 あの傷は――例え本人の基準からすればかすり傷だろうと――千宏のために受けた傷だ。
 千宏が傷つけられた事に、目に見える外傷があったわけでもないのに家族が侮辱された
と激昂し、家を飛び出していった結果受けた傷だ。
 口だけではなく、行動で示してくれた家族としての行動が、純粋に嬉しかった。
 現状を受け入れられたわけでは無いけれど、元の世界には帰りたいけれど、獣人がこの
世界の標準的な男性だと言われても恐怖と違和感しか湧いてはこないけれど――。
 ペットではなく、奴隷ではなく、対等ではないにしても家族として見てくれる人がいる。
 アカブをまだ、人間と認められない部分も自分の中に確かに存在するけれど――。
 アカブの言葉は、行動は、千宏にとって救いで――暖かくて大きな希望だった。


                ***


 ヒトは弱い――ヒトのメスは特に弱い。
 ずっと耳にしてきた言葉だ。そんなに言うのならば、きっと相当に弱いのだろうと思っ
てきた。ヒトの弱さを知っているつもりだった。
415とらひとsage2007/09/13(木) 21:24:47 ID:r0Js4KZw
 アカブは自室のベッドの上でずっと自身の手を見つめ、重苦しい溜息を吐いた。
 弱いなんてものではない――あまりにも脆い。本当に、比喩表現ではなく赤子の手を捻
るよりも簡単に壊れてしまう。
 あの弱い生物を――あんなに脆い生物を、当然のように性奴隷として使うのか。
 自分好みに調教し、あの小さな体を身勝手に犯すのか。
 信じられなかった。触れるだけで壊れてしまいそうなあの体を、欲望に任せて貫くなど、
想像しただけで恐怖に身が竦む。
 家族として扱おう、と、自分は確かにそう言った。
 だが、そんな事が出来るのだろうか。
 例えば何かで苛立って、本当に軽く振り払っただけで壊れてしまう弱いヒトを。
 わずかに力加減を間違えるだけで傷ついてしまう弱いヒトを。
 自由に出歩く事を許容できるのだろうか。
 一人で出歩く事を許容できるのだろうか。
 弱いからと、ヒトだからと、結局なんの自由も与える事などできず、籠の中で飼い殺し
にしてしまうのが関の山ではないのだろうか。
 ずっと側で守ってやる事などできはしない。
 かといって、千宏が自分で自分の身を守れるはずが無い事は、今日、身をもって実感した。
 ――ありがとう。
 そう言って、少し笑ったように思う。
 遠慮したような、怯えたような、そんな笑顔しか見た事が無かったから、真摯な――し
かし照れたようなその笑顔にはっとした。
 千宏は、例えどんなに危険だとしてもそれを求めているのだ。
 与えると約束し、そして与えてしまったその立場を、今更奪う事などできはしない。
 だが、このままではいつか、確実に、決定的で絶望的な事件が起きる。
 そしてその事件は、正に今日、起きてしまったかもしれないのだ。
「あぁ、畜生! どうすっかなったく!」
 どさり、とベッドに倒れこむ。
 弱いならば弱いなりに、もっと臆病に振舞えばもう少し安全だろうに、どうしてあのヒ
トはあんなにも理不尽に、怯えて震えながら自己主張をせずにいられないのだろう。
 真剣にアカブの傷を心配し、怯えながら泣きながら、それでも声を荒げて手当てをさせ
ろと怒鳴る姿が滑稽で――。
 まるで、幼い頃のバラムやパルマの様だった。
 弱いくせに無鉄砲で、強い相手に喧嘩を挑んで惨敗し、帰ってくるなり悔しくて泣き出
すような。
 後先考えずに飛び掛り、全て手遅れになってから震えだし、しかし今更後にも引けずに
必死になって強がるような。
 ――とりあえず、市場で問題が起こることはもう無いだろう。
 解決策が見つかるまでは、自分が守ってやればいい。
416とらひとsage2007/09/13(木) 21:25:23 ID:r0Js4KZw
 我ながら少し楽観的過ぎるかと自重を含んだ笑いを零し、アカブは傷を負った腕をかば
うようにして眠りについた。


             ***


 夜が明けて朝になり、今日はチヒロと市場に行くんだとうきうきとしていたパルマは、
いつまで経っても起きてこない千宏を起こしに行って泣き声に近い悲鳴を上げた。
 何事かと駆けつけたバラムとアカブにおろおろと訳の分からぬ事を捲くし立て、チヒロ
が死んじゃうと泣き崩れる始末である。
 ただ事ではないと察した二人が直接千宏の様子を伺うと、千宏は暖かな朝の日差しの中
で、極寒の冬に凍えるようにがたがたと震えながら大量の汗をかいていた。
 ただの風邪――で済ませられるような様子ではなく、しかし対処の方法も分からない。
 アカブの一喝でパルマが医者を呼ぶために部屋を飛び出し、バラムは薬草を取ってくる
と残して同じく部屋を飛び出していった。
 残ったアカブは寒い、寒いと繰り返す千宏に布団をかけたり、季節はずれの暖房を入れ
たりもしたが千宏の寒さは収まらず、結局気を失うように眠りに付くまで震えが収まる事
はなかった。
 先日パルマが買ってきたヒトとの生活教本に、病名と症状および対処法が大まかに記載
されていたが、実際は出来る事などさしてなく、薬を与えなければ数日で死亡する場合も
少なくないという記述に青ざめる事になっただけだった。
 昨晩、弱いと実感したばかりだった。
 だが、それは物理的な弱さを実感しただけであって、力ではどうにもならない、生物的
な弱さにまでは頭が回っていなかった。
 多少の体調不良など、食って寝れば治ると言うのが多くのトラの考え方である。
 食べる事も出来ないほどの衰弱など、それはもう本当に瀕死であり、そして千宏は、ま
さにそのまま死に掛けているようだった。
 何も出来ないまま昼になり、駆けつけた医者は当然のごとくヒトの治療にあたった事な
どあるわけもなく、効くかどうかは分からないがと聞きかじった知識を元に薬を処方して
行った。
 医者の処方した薬が効いたか、バラムが採ってきた薬草のおかげかは分からないが、そ
の日の深夜には高熱も大分落ち着き、しかし幻覚でも見ているのか、代わりにうわごとを
呟くようになっていた。
 うっすらと瞼を開き、お母さん、お母さんと呼びかける。
 掴む物を求めるようにさまよう手が痛々しくてそっと握ってやると、千宏はぼろぼろと
泣きながら怖い夢を見たんだと呟いて眠りに落ちた。
「――アカブ」
 きぃ、と軋んだ音を立ててドアが開き、バラムが部屋に入ってくる。
 顔だけをそちらに向けて眠ったようだと伝えると、バラムはほっとしたような表情を浮
かべ、アカブの隣に椅子を引きずってきて腰を下ろした。
「……怖い夢を見たってよ」
417とらひとsage2007/09/13(木) 21:25:59 ID:r0Js4KZw
「意識が戻ったのか?」
「いや――うわ言で母親にそう言ってた」
 その意味を察したように、バラムが苦しげに眉を寄せる。
「そうか……そりゃ、そうだよな」
 千宏にとってこの世界は悪夢なのだと――そう、解釈せざるを得ない言葉だった。
 しかし、誰がそれを責められるだろう。
 たった一人でこの世界に落ちてきて、家族もなく、友人もなく、奴隷と呼ばれ、しかし
それに抗う力もなく――。
「俺、なんか泣きたくなってきた」
「やめろよ。それこそ悪夢だ」
 手の平で顔を覆ったアカブに対し、からかうように、しかし力なくバラムが言う。
「なんとかしてやりてぇよ……幸せにしてやりてぇ」
 そうだな、とバラムも静かに同意する。
「守ってやりてぇ」
 そう、噛み締めるように呟いて、バラムは汗と涙で頬に張り付いた千宏の髪を、指先で
そっと払って繰り返した。
「守ってやりてぇよ……」

切らせていただきます
418名無しさん@ピンキーsage2007/09/14(金) 01:31:23 ID:RbY8EGCb
投下間隔ちと短くはないだろうか
これだけ筆が早いなら、纏まったところまで書いてアプロダの方がよくね?
419名無しさん@ピンキーsage2007/09/14(金) 05:36:16 ID:Tf5yke/7
とらひと氏、矢継ぎ早の投下GJ!!

…なんつーか、バラムやアカブ達と同じ気持ちになって泣けてくる。
このスレの物語の主人公で、ここまで希望の光を見いだせなくて
精神的にも肉体的にも絶望的に打ちのめされる主人公ってのは初めてなんじゃ
ないだろうか。

>この世界で千宏の世界での食生活――特に肉料理の話をするのは危険である。
この辺のカルチャーギャップにワラタ
ヒトが虎の姿を持つ者に対して心に抱く"根源的な恐怖"の存在なんて理解し得ない
だろうなぁ、この世界の"人間"に対して捕食者足り得る生物なんていないだろうし。
420名無しさん@ピンキーsage2007/09/14(金) 10:43:23 ID:wEqjVGgO
>>418
個人のスタイルだし、いんじゃね?

>>419
ドラゴンとかいたよーな>捕食者
421名無しさん@ピンキーsage2007/09/14(金) 11:14:09 ID:uQ2Vos+x
>>419
それでも、保護される前のミコトちゃんに比べれば「まだマシ」なんだよな、チヒロは……
422名無しさん@ピンキーsage2007/09/14(金) 13:00:05 ID:SwtfAjFa
>>421
でもそれがこちむい世界の一般的なメスヒトの扱われ方なんだよな…。
あたしだって簡単に壊されかけたし、カナさんだってあんな目に逢ったし。

ジーきゅんやフェイレンさんやマサミみたいに、危害を加える相手を強さをボコり倒せる強さを持たないのに、
愛情だけは負けてないってご主人さまにとっては、ほんとつらい現実なんだろうな。
423名無しさん@ピンキーsage2007/09/14(金) 14:36:23 ID:1GS7eiFO
ミコトとかカナとか、本当に酷い扱いをされた事のある女性キャラって、
なんか無性に愛しい存在に思えてならない。
だから、ある意味寸止めで事なきを得たチヒロの根源的恐怖に書き足される様な
絶望的脆弱感って辛いよなぁ。
424名無しさん@ピンキーsage2007/09/14(金) 19:01:41 ID:XM+Kj4gF
帰って来たアカブにキレる千宏のシーンで涙が出た。
血のつながってない家族とかに弱いんだよなあ
続き楽しみにしてます。
425名無しさん@ピンキーsage2007/09/15(土) 00:05:38 ID:AWEGSJH5
なんか切ないなぁ とらひと氏 GJ!
>>418 うーむ いろいろあるけれど直接投下はスレの華だと思う…
426名無しさん@ピンキーsage2007/09/15(土) 16:23:48 ID:Eq/B5Mno
アダルトOKなレンタルサバって、絵版設置不可なところばかりなんだが・・・
他のスレの絵版状況もよくわからん。
絵版欲しいよ……orz
427名無しさん@ピンキーsage2007/09/15(土) 19:34:52 ID:INmYFdHE
>>426
Wikiに貼ればいいジャン。
428名無しさん@ピンキーsage2007/09/16(日) 00:56:00 ID:2kDBqxYn
>>426
使うなら設置するよ。借りてる鯖の容量あまってるし。
429師走2007/09/16(日) 16:46:36 ID:SKMJWEJG
続きです。非エロ

 泣かないで、泣かないで、笑って!   2


 照りつける暖かい日差しと、それに反したひんやりとした冷たい風。
 夏季に入り、連日猛暑が続いているのだが妙に涼しい。 時折吹き抜ける風が周囲の気温を下げているのか、あるいは丘の下に広がる透き通った湖が熱を気化しているのか、おそらくはその両方であろう。
 小高い丘には草原とゴツゴツした岩と所々に生えた針葉木しかない。
 そんな自然の芸術で形成された風景に、につかわしくない人物が紛れ込んでいた。

「ふぐぅ…」
 男が仰向けに倒れている。
 赤いタンクトップに黒いジーンズ、黒く長い髪は適当にはねており、前髪だけ癖になっているのか目元で分かれている。 筋肉質では無いが、身体は引き締まっていて、顔立ちは悪くは無いが、特別良いと言えるほどでもなくこれといった特徴が無いのが特徴であった。
 男の周囲には投げ出されたままの状態のギターケースが転がっている。
 いつからそこにいたのか、男自身にもわからない。  
 男は太陽の眩しさから目をそらすように体を横に転がした。 
「……」
 冷えた風が吹き抜ける。 
無意識に身体を丸め、男は体温を保持しようとする。
 しかし二度三度と襲い来る寒波に、男は耐え切れず、薄く目を開いた。

 最初に男の目に入ったのは一面の若草の緑。 続いて、ヒノキだかスギだかよくわからないところどころに生えた針葉樹とこぶし大から男の背丈ほどもある岩。 
 立ち上がってみると、高台になっていたらしくそれほど離れていないところに針葉樹の森と、反対側の丘下に大きな湖があった。
「……ふぁ」
 未だに寝ぼけているのか、男は現実感の無い風景をあっさりとうけとめた。
 そよそよと頬を撫でてくる風が気持ちいい。
 男のまどろんだ脳が冴え始めてくる。
 それと同時に生じてくる違和感。
 なぜここにいるのか、と男の頭に浮かび、家に帰った事も覚えてない、と男は考え、むしろ帰ってたっけ、と男に疑問が生じ、これは夢だなと男は結論付けた。
430師走2007/09/16(日) 16:48:57 ID:SKMJWEJG
 思考は一瞬。
 そして男は両足を投げ出して地面にへたりこんだ。
「……んなわけねーじゃん」
 太陽は変わらず眩しかった。
 どーしよっかなーっとふざけた様に呟き、およそ真剣に見えない顔で白痴の様に呆けていた男は、ふと気づく。 
「っ、携帯!」
 男は慌ててジーンズのポケットに手を突っ込んだ。 心情では相当焦っていたのかその行動は素早い。
 労せず触れる硬質の感触。
 ジーンズから携帯電話を引っこ抜き、液晶画面を確認する。
 暫く携帯を凝視していた男は視線を外し、仰向けになり空を見上げた。
「……お約束だよな」
 携帯の電波は圏外を示していた。
 携帯を仕舞い、男はふて腐れた。
「どこなんだろ、ここ……」
寝そべりながら呟く。 頬に触れる若草がこそばゆかった。
 
 どれ程の時間が経ったのかわからない。
 男は体を起こした。
 景色は相変わらず森と山と湖。
 携帯電話の画面で時間を確認すると、先ほど確認した時間から二時間ほど経過していた。
 こんな見ず知らずの安全っと決まったわけでもない場所で無駄に時間を使ってしまった自分の神経の図太さに、男は頭を抱えた。
 ひとしきり己の馬鹿さ加減についての後悔を終えた男は、投げ出されていたギターケースを手に取る。 おもむろにケースを開き、アコースティックギターを取り出す。
「げっ……弦が切れてやがる」
 五弦目の弦が千切れ飛んでおり、羊司は相棒の無残な様子に軽く凹んだ。
 ギターケースにしまっていた替えの弦やピン抜き、ニッパーなどを取り出し弦交換に移る。
 何度も弦を交換してきたのか、その手順は鮮やかである。
 程なくしてギターが元通りになる。
「調律は、と……」
 何度か弦を弾き、音がずれていないか確かめる。 チューナーが無いのが痛いが、高校時代から愛用していた楽器だ。 完璧とは言えなくてもある程度はわかる。 


431師走2007/09/16(日) 16:50:01 ID:SKMJWEJG
調整は終わり、何度となく練習した得意のフレーズを引いてみる。
 慣らしていないので少し五弦が強いが、仕方が無い。
 次第に気分が高揚し、抑え目に弾いていたギターを鳴らす音量も大きくなっていく。
明るい曲、悲しい曲、楽しい曲、寂しい曲。
手馴れた様子でギターを操り次々と曲を変え、男は気付かないうちに声を出し、歌いだした。

歌うことが好きだった男は高校一年の時からプロのミュージシャンを目指している。 親には大学に進学して就職しろと反対され、友人には無謀だやめておけと止められた。 
周囲の人間の態度に嫌気が指した男は、卒業して家を飛び出した。 幸い高校時代に無駄遣いせずに貯めた貯金で安いアパートを借りることができ、男はバイトとギターの練習で日々をめまぐるしく過ごしている。
 日々研磨し努力した賜物か、男の声は周囲によく響いた。
 
 そして、その歌声に惹かれるものが一人。
 灰色の外套姿で、フードを目深に被っている為、男か女か区別がつかない。
 周囲の木と岩影に隠れながら少しずつ近づいてくるが、あまりにも隠れ方がお粗末過ぎる。 とはいえ、見ているとなかなか面白いので男は気づかない振りをしながらギターを弾いた。
 男はそろそろいいかなと思い、楽器を鳴らす手を止める。
 木陰から飛び出そうとしていた矢先、音楽を止められ、間抜けな姿で静止する。
その距離およそ10メートル。 外套を着た者と男の視線が重なる。
「あ、あぁ……」
 少女特有の高い声。 男の心の中で前面の外套の中は年若い女の子と結論を下した。
「あの……」
 黙っていても仕方ないと思い、声をかけようと一歩踏み出す。
その瞬間少女は脱兎のごとく逃げ出した。
「わっ、待ってくれ!」
 ギターを置き、起伏にとんだ丘に足を取られながら、男は慌てて追いかける。
「っ! 来ないでっ!」
 少女は振り返り、男が追いかけてくるのを見て涙声で叫んだ。
「来ないでっ、追いかけて来ないでっ!!」
「頼む、何もしないから逃げないでくれ!」
 静止する声を無視し、少女は逃げる。
「なあっ、ここは何処なんだ!?日本だろ!?」
「違いますっ、来ないでっ!!」
432師走2007/09/16(日) 16:51:46 ID:SKMJWEJG
 少女の答えに納得できず、男はさらに声を荒げた。
「そんな訳ないだろっ! あれかっ!? 北朝鮮か!? 拉致かっ!?」
「知らない、知らないっ!」
 必死で男も追いかけるが、一向に距離は縮まらない。
 凹凸の激しい丘を、少女は全く速度を落とさずに駆け下りる。
 自分より華奢で小柄な少女を、声を上げ追いかける自分の姿はどう見ても変質者だと思い、男は泣きたくなった。
 少女はマントを大きくはためかせ、もう二度と振り返らずに走っていった。


「待ってくれよ……頼むから」
 丘を抜け、鬱蒼と茂った森の中で、男は息も絶え絶えに呟いた。
 既に、全力疾走ではない。 落ちていた長い木の枝を杖代わりに歩いていた。
 気温は低めだが、先ほどの鬼ごっこのせいでかなりの汗を掻いている。 べたついたシャツを鬱陶しく感じながら、時折つま先で土を削る。 道しるべ、のつもりだ。
「なんで……歌聴くときは寄ってくんのに……話し掛けたときは、逃げんだよ……」
 苦しげに男は言う。
 それにしても、と男は思う。 全力で走っている自分は、別段運動部に所属していたわけでも、特別に体力に自信があるというわけでもない。 学生時代と違い、確かに運動不足はいなめない。軽い筋トレぐらいはしているが、それも軟弱に見せない為の見せ筋を維持する為だ。
 しかし、いくらなんでも15、6の少女に、足の速さで負けるほど身体も鈍っちゃいないだろう。
 しかし、追いつけなかった。 少女の姿はとうに見失った。
 別段勝利に固執する性格でもないが、やはり年下の少女に走り負けると言うのは悔しく感じる。
 それでも少女の姿を追い求めるのは、流石に少女も追いつけなかったとはいえ自分と同じ様に体力も落ちて歩いているだろうから、もしかしたら追いつけるかも、と考えたから。
また、走っていった方向に少女はいなくとも、街か何かがあったら誰か住んでいるだろう、とも思ったからだ
「待ってくれてもいいだろうよ、あそこまで怖がられたら流石に俺も傷ついたぞ…」
 沸々と理不尽に逃げた少女に対する怒りが募ってくる。
「逃げるぐらいなら近づくなっての。 声かけただけじゃんよ」
 男も自分の言葉が理不尽と言う事はわかっている。 しかし言わずにはいられない。
「自分だって変な外套を着て、おかしいだろ……それな――」
 突然男は愚痴を止め、身体を木に隠し息を潜める。

433師走2007/09/16(日) 16:53:43 ID:SKMJWEJG
 慎重に首だけを伸ばし、目標を確認する。
 そして心の中で歓声をあげた。
 見つけた、さっきの少女だ。

 少女はブナの様な木の傍で、両足の膝を地面につけ何かを熱心に覗き込んでいる。
 左手には外套に半分隠れているが、円形のザルの様な物を持っている。
 男は声を殺して、回り込みながら静かに少女に忍び寄る。 少女は気付いていないのか、暫く木の根元を観察していると、思い出したかのように右手で土を掻き分け始める。 
 興味をそそられたのか、男が身体を横にそらし少女の手元を見ると、毒々しいイボ付きの赤いきのこがそびえ立つ様に生えていた。 少女はそれを嬉しそうに籠に入れる。
 男の顔が引きつる。 少なくとも、こんな毒々しいきのこは自分なら絶対に食べない。 頭が錯乱するか、腹筋がねじれるほど笑い転げるか、下手をすれば死んでしまう。
 声をかけるか、否か。
 声をかけなかった場合、殺人補助になるのだろうかと男は悩む。
 流石に人道的に問題があるだろうと思い、男は少女の肩に手を伸ばす。
 声をかけて、逃げられるのはもうこりごりだった。
 しかし、肩に触れる前に少女の顔を見て、息を呑んだ。

 男が驚くほど少女の顔は整っていた。
 ふっくらとした唇、現役のアイドルも羨む様なすっと長い鼻立ち、見るもの全てを慈しむ様な穏和そうな目。折れてしまいそうな細い指を一生懸命動かし、土を掻き、キノコを引き抜く姿は、非常に微笑ましい。
 ボロボロの外套に隠れてはいるが、時折除く髪は白髪と呼ぶにはおこがましいほどに美しく、ふわふわと波打っている。
「うわっ……超かわいい」
 先ほどの少女に対しての批難する様な愚痴や危なそうなきのこの存在すら忘れ、男は知らず呟いていた。
「!?」
 その瞬間、少女が小さな肩を竦ませ、男の方を向いた。その顔には明らかに恐怖の色に染まっている。
 少女の震える指から籠が滑り落ちる。
 底の浅い円状の籠から、男が見た事もない野草やまだら模様のきのこが零れ落ちた。
「あ、あぁ……」

 迂闊だったとしか言いようが無い。
 テントの方へ真っ直ぐ逃げてしまった。
男から完全に逃げ切ったと思い込んだ。
貴重な食料に気を取られ、男の接近を許してしまった。
少女は膝を地面につけた状態で外套を握り、身震いしながら自身の行動を悔やんだ。
 


434師走2007/09/16(日) 16:55:14 ID:SKMJWEJG
 少女が肩を震わせ、大きな目に涙を溢れさせる姿に、男は酷く動揺した。
「な、泣かないで! ちょっと道を知りたいだけなんだ! 教えてくれたらすぐに消えるからさ! 大声出して追いかけてごめん! 黙ってこっそり後ろから近づいてごめん! 謝るから泣かないで! あと、そのきのこは食べない方がいいと思うよ、うん!」 
 男は自分でも何を言ってるのかよくわからないが、ひたすら謝ってみる。
 少女は何も答えない。 
「本当にごめん! 怖いならもう少し離れるからさ、せめて逃げないで」
 そう言って男は伸ばしたままになっていた腕を引っ込め、前を向きながら器用に後ずさった。
 宥めて卑屈になって。 男はなぜこんなに必死になっているんだろうと思う。 ただ言えるのは、罪も無い女の子を泣かせるのはどうしてもごめんだった。

「本当に……何もしませんか?」
 男の願いが通じたのか少女が顔をあげ、初めて自ら声を出した。
「しないしない、絶対に危害を加えないってば」
 少女は男に対する警戒心が抜けていないのか、未だに顔を伏せている。
 初めて会話への糸口が見つかった男は、必死で自身の無害さをアピールする。「ええと……さ、変な事を聞くようだけど、ここって日本だよね?」
 男が少女の顔色を窺いながら、尋ねる。 脅かさないように、泣かせないように。
 少女は幾分か迷いながら、答えた。
「……いえ、ここはフィルノーヴ。 ニホン、という国ではありません」
「いや、でも俺さっきまで日本に……っつーか東京にいたんだけど」
「はぁ……」
 少女はよく意味を理解しきれていないのか、首を傾げ曖昧に相槌を打つ。
「こっちに来て目を覚まして、日付見ても一日やそこらしか経ってないから……あれ? 日本からブラジルまで24時間で行けたっけ?」
「よく、わかりません……あなたが何を言ってるのか……」
「まあ、どうみてもブラジルじゃなさそうだし、どうでもいいんだけど。 あー、つまり……ここってどこかな?」
「で、ですからフィルノーヴです」
「そんな国聞いたこと! ……いや、大声出してごめん。 泣き顔で怯えないで……」
「グスッ……本当です。 この土地はネーモアと自然に囲まれた大きな国です。 本当に……知らないんですか?」
 男は頬を頭を掻きながら少女の言った単語を思い出そうとする。
 フィルノーヴ、ネーモア、全く思い出せない単語に男は恥ずかしそうに質問した。
「あの……無知でごめん。 フィルノーヴ、とかネーモアってさ、本当に、何、かな?」
 その言葉に今度は逆に少女が驚いた。 大きな目を見開いて、男の顔や服装、一挙一足を観察する。
 少女の慌てた様子に、男は少女に呆れられていると勘違いし、自身の常識の無さを恥じた。
「えっ……まさか」
「ごめん、今度からちゃんと現代社会についても勉強するから……」
 少女が被りを振る。 そして初めて申し訳なさそうに言った。
「あ、いえ……すみません。 ヒト……だったんですね」

435師走2007/09/16(日) 16:57:00 ID:SKMJWEJG

 少女の言葉に男は呆然とする。
 そして次第に怒りも沸いてくる。
 人だったのか、だと? どこからどう見たら人間ではないと思えるのだ。 人が下手に出ていればいい気になりやがって。 どうしてここまでコケにされないといけないのか。 馬鹿にするのもたいがいにしろ! 
 そろそろ少しぐらい叱るべきなのかもしれない。 男は激憤に駆られた表情を隠そうともせずに少女を睨んだ。
 男の憤怒の表情に気付いた少女は、恐怖の満ちた顔を涙で濡らした。 両手で胸元の外套を握り締め、まるで親に叱られる子供のようにきつく涙で溢れた目を閉じ、震えながら頭を垂れる。
 その姿を見ると、男も怒る気力を無くしてしまう。
「はぁ……俺が悪かったから、そんなに怯えないでくれ。 あと、俺を人間扱いしてくれると嬉しい」
 少女は上目づかいに男の表情を確認すると、首を小さく振った。 縦に、そして横に。
「……それで、フィル……なんたらとネルモアって?」
 男にもう反論する気は無かった。 早く話しを済ませてしまおうとばかりに質問する。
「……フィルノーブは北寄りのオオカミやクマ、他にも多数の部族が多く住む土地で、森と山に囲まれた国です。
 独自の集落の多いこの国は、その土地特有の果実や珍しいイキモノが数多く生息しています。 ネーモアはこの土地一番の大きな湖で毎年この時期になると珍しい赤い顔の白い鳥が群れを成して集まり、数多くの見物客で賑わ――」
「それで、この辺りで一番近い街は何処だ?」
 少女の説明を遮り、男は最も知りたい事を確認する。
「なんでこんな国に居るのか、理由は後で考える。 とりあえず電話さえあったら日本の実家に連絡できるから」

436師走2007/09/16(日) 16:58:10 ID:SKMJWEJG
「デンワって何ですか?」
「電話は電話だ。 んで、銀行に振り込んでもらって下ろして、飛行機で日本に帰る。ビサなら使えるだろ」
「ギンコウ? ヒコーキ? ビサ?」
 少女は本気でわからないのか、首をかしげている。
 男は次第に苛つき始めるが、表情を押し殺しながら尋ねる。
「すまん、遊んでいる暇は無いんだ。 とりあえず街はどこだ?」
「はぁ……ここから700ケート程南に行ったところにオオカミの集落がありますからそこに」
「舐めてる?」
「いえ、そう言われましても」
 少女は困ったように頬を人差し指で掻きながら答える。 不機嫌そうな男に言うべきか言わぬべきか迷っていた。
 意を決し、少女は口を開いた。 男の目から若干視線を逸らせながら。
「ええと、怒らないでくださいね。 あなたは帰ることが出来ないと思います」
「何だって?」
「ここは、いえ、この世界には貴方の言うニホンという国は何処にもありません」
 森に静寂が宿る。
 男は怒鳴り散らしたくなるのを堪え、少女に尋ねる。
「……冗談にしては面白くないぞ」
「本当です。私自身、始めて外界から来たヒトを目にしたのですから」 
「よくわからない。 君は人間だろ?」
 男は当然の疑問を口にする。
「ええ、私はニンゲンです」
 ただしと口にし、少女は被っていた外套のフードに手をかける。
 そして、フードを脱ぎ、隠れていた後ろ髪に手を入れ、サッと後ろに流す。
 男は白というより銀に近いウエーブの髪をなびかせる少女に目を奪われた。 否、正確には少女の顔の横についているものに目を奪われた。
 それは横に長く伸びた大きな耳。
「私はコリン・ルーメリー・ユイーフア。 普通の、ヒツジの女の子です」

 男は声を失った。 頭が理解に追いつかない。
 この世界に日本が無くて、そして自分はヒツジの女の子?
 頭を掻きながら男は考える。 少女、コリン・ルーメリー・ユイーフアは佇みながら男の反応を待っている。

437師走2007/09/16(日) 16:59:14 ID:SKMJWEJG
「ええっと……その耳、よく聞こえそうだね?」
 結局、男には無難な話題を出すしかなかった。
「え、はい。 ヒツジですから」
「そっか。 羊か」
「はい、ヒツジです」
 あははーっと声を上げ、お互い笑いあう。 そして男が笑顔でコリンに問う。
「ところでさぁ、どこからどこまでが本当?」
「全部ですよ」
 コリンの答えに男はブチギレた。

「あーっ、マジですまんかった。 むしゃくしゃしてやった。 今は反省している」
 男が髪を掻きながら、あまり反省してそうに見えない顔で謝る。
 ビクビク怯えながらコリンは両手で頭を抱えてしゃがみこんで、本当ですかぁと涙声で言う。
 その姿に怒鳴ってしまって悪いことをしたと思いつつも、心の片隅でもっと苛めてみたいと不謹慎にも思ってしまう。
「えーとだな。 とりあえず俺自身、正直半信半疑で君から聞いたことを纏める。 ここは狼の集落の近くで、羊が人で、この世界には日本は無いとかそんな風に聞こえたんだが、もう一度聞くぞ。 本当か?」
「は、はい。 正確に言えばウサギとオオカミの、若干オオカミの国側の大陸です。 ニホンという国は……ごめんなさい、本当に無いんです。」
 男の嘘は許さんといった威圧する目にコリンは怯えながらも何とか言葉を紡ぐ。
 腕を組む男の沈黙を続けろと受け取ったコリンは話を続ける。
「私はヒツジですが、この世界には様々な種族がいます。 先ほどから何度か言いましたオオカミやウサギ、クマなど多数の種族がいますがみんな人間です」
「ちょっ、ちょっと待ってくれ」
 話を遮り、男は慌てた様子でコリンに問う。
「どうみても君、えーっと……コリンさんは人間だろ? 変わった耳飾りみたいな物をつけているだけだろう? 日本語を話しているし、その姿はどうみても人にしか見えない」
「いいえ、私はヒツジです。 この耳は飾りではないですし、私以外にもそれぞれの種族の特徴を持つ人間はいます。 それと私たちが話している言葉はこの世界の共通語で昔から使ってきました。 むしろ、なぜ貴方の言葉が私に通じるのか、それが全然わからないんです」
「……人って人間って事だろ?」
「うまく説明できませんが、ヒトは貴方です。 そして、人間は私たちなんです。」
 
438師走2007/09/16(日) 17:00:17 ID:SKMJWEJG
男は自分の額を手で覆う。 理解しかけているが、理解できない。 そんな態度が現れている。
「今から貴方にとって非常に心苦しいことを言います。 その、怒らないでくださいね?」
 コリンが言いづらそうに男に確認を取る。 慌てて男が顔を引き締める。
「落ちる、この世界に強制的にやってくる、という意味なんですが、この世界に貴方は落ちてきました。
 外界から落ちてきた人間を私たちはヒトと言います。 ヒトがこの世界にやって来ることは稀で、落ちてきたヒトには一切の人権はありません。 つまり……ヒトと言うのは奴隷や家畜の別称なんです」
「はぁっ!?」
 素っ頓狂な声を出し、男は少女を間の抜けた顔で見た。
「ヒトは奴隷という所有物ですから、傷つけ、苦しめ、壊しても罪には問われることはありません。 それと、私自身ヒトを見るのは初めてなのですが、ヒト奴隷はとても高価なものだと聞いた事があります。 人里に入れば確実に、貴方は捕まり売られるでしょう」
 男の中で何かが崩れていく音が聞こえた。
 何処にも行く当ては無い。 頼れる縁者もいない。 街を歩くことも出来ない。 住む当ても無い。 食べる事すらままならないだろう。
 たった一人でこの世界をどう生きていけばいいのか。
「嘘だろ? なぁ……これって嘘だよな?」
男がコリンに詰め寄る。 コリンの両肩が強く揺さぶられる。
「いいえ……すみませんが……」
「帰る方法は……」
「聞いたことが……ありません」
 コリンは首を横に振り、男の望みを絶つ。
 男はこの世界に絶望し、いたずらな神を呪う。
 悲観にくれる男の涙が少女の外套を濡らした。

439師走2007/09/16(日) 17:01:15 ID:SKMJWEJG
「私と、一緒に来ますか?」
 彼女は言った。
 男は涙でくしゃくしゃになった顔を隠そうともせず、少女の顔を窺った。
「私は、一つの町へ定住することはせず、リャマのクトと一緒にいろんな国を旅して回っています。 いろんな国を調べたら、もしかしたら元の世界へ帰る手がかりが見つかるかもしれません。 もし宜しければ、一緒に、行きませんか?」
 少女は震える身体を優しさで押し殺し、笑みを浮かべ男に言った。

 不安なのだろうと男は思った。
 この少女は怖がりだ。 おどおど辺りを窺って、何かに怯えて生きている。
 この少女は泣き虫だ。 今日、初めて会ったのに何度泣かせたかわからない。
そしてこの少女は―――とても優しい。
 少女の性格からして、ヒト、しかも男と話をするのは怖いだろう。
 安全面からも、非力で高価なヒトと旅をするなんて危険極まりないだろう。
 金銭面、生活面でも迷惑をかけるだろう。
 少女の事を思うなら、一緒に行かないほうが良いに決まっている。
 しかし、
しかし、それでも――

「浅草羊司です。 よろしく、お願いします。 コリン様」
「こちらこそよろしく、おねがいします――ヨウジさん」

 一人は、嫌だ。

440師走2007/09/16(日) 17:02:50 ID:SKMJWEJG
 私の住処へ案内します、とコリンは言った。 落ちた籠に山菜を詰めなおした後、落とさない様にしっかりと両手で持ち、フードを被り直した後、先導する様に歩き出した。 そして少女の数歩後を羊司がついていく。
 辺りはかなり日が落ちており、夕焼けが世界を柔らかく包む。
「えーっと……コリン様」
 足早に歩くコリンに羊司は、先ほどから懸念していたことを伝えようと声をかける。
「あのっ、ヨウジさん、私に敬語なんて使わなくても……」
 表情は伺えないが、声質は困ったという感じが滲み出ている。 
「あ、いや。 そう言わないとまずいと思うし」
「一応は主人ですけど、強制はしませんから……ただ、人前で気をつけてくだされば」

 コリンが言うには基本的に自分、浅草羊司はコリン・ルーメリー・ユイーフアの所有物になるそうだ。
 本人は酷い扱いをしない、敬語は使わなくていいと言っているが、人前だとどうしても建て前というものがあるので、その時だけ、奴隷としての行動を取ってほしいと言う事らしい。
 どうも俺は過剰に意識していたらしい。

「あー、わかった。 人前では敬語で様付け。
 でも今は敬語も様もいらないんだな?」「はい。 私は普通の、ヒツジですから」
 なぜか普通を強調するコリン。
「よく意味がわからんが、わかった。 改めてよろしく。コリン」
「はい。 ヨウジさん」
 微かに笑みを浮かべるコリンの姿に、羊司の頬がわずか朱に染まる。


441師走2007/09/16(日) 17:03:30 ID:SKMJWEJG
「そ、そうだ、コリン。 ギターを丘に忘れたんだ。 取りにいかないとまずい」
 表情の色を悟られたくない羊司は、慌てた様子でコリンに言う。
「ギターって、あのヨウジさんが弾いていた綺麗な音色の楽器ですか?」
「そう、それ。 雨なんて降ったらお釈迦だし、朝露にでも濡れただけでも相当やばいんだ」
 頭を少し下げ、考え込むコリン。 しかしすぐに顔を上げ、わかりましたと了承し、先程の道に踵を返す。 

「おおっと、その必要はないぜ」

「え!?」
「!?」
突如、羊司でもコリンでもない野太い声が周囲に響き渡り、一本の木の陰から二歩足で立つ、全身毛むくじゃらの狼が姿を見せた。 狼は上半身を黒い鎧を着て、麻の様な素材で出来たズボンに一振りの長い剣を刺している。
「ちょーっとばかし席を外している間におもしれぇ事になってやがるな」
「誰だ、あんた?」
 羊司が身構え、警戒心を顕にする。
 コリンは極度の人見知りと恐怖で震え、せっかく拾いなおした山菜の籠を取り落としている。
「んー、んー、んーー? 口の利き方がなってないガキだな。 せっかくお前の楽器を拾ってやったのによお?」
よく見ると羊司のギターケースが、巨漢の狼男の肩にかかっている。
羊司は驚き、礼を言おうと一歩前に出る。
「あ、すみませ――」
「まあ、俺が拾った落ち物だから俺のもんだがよぉ。 あと、目的ついでに目の前の落ち物も拾っておくか」
 目の前の狼男が何を言っているのか羊司には理解できなかった。 目を瞬かせ、伸ばしかけた腕を止める。
「理解できねぇか? つまり、お前の物は俺の物。 さらに言うならお前は俺の物だって事だ」
 羊司の背筋が凍る。

442師走2007/09/16(日) 17:04:49 ID:SKMJWEJG
 女に告白された事すらないのに、毛むくじゃらの身長がゆうに2メートルを超す狼男に告白されるとは。 どうすれば相手が傷つかず、なおかつ穏便に断れるか、羊司は必死で頭を巡らせる。
 羊司の後ろではコリンが頬を染め、はっと何かに気付き、必死で頭を振っている。
「怖いか? 心配すんな、大人しくしていれば危害はくわえねぇ」
 獰猛そうな顔に笑みを浮かべ、狼男は羊司に向かってにじり寄る。
「ええと、貴方の気持ちは大変嬉しく思いますが、俺は男でありヘテロなので、貴方の気持ちに応えられないというか近寄んなガチホモがとか思っちゃったりなんかして――」
「はぁ? 何をわけのわからん事を……」
 脂汗を流す羊司にコリンはタンクトップを少し摘み、数度引っ張る。
「ヨウジさん、想像してる事はなんとなく理解していますが、多分羊司さんの考えている事とあの人の言っている事は違いますよ」
 狼男に聞こえない様にコリンは言った。
「いや、でもさ……お前は俺の物ってどう考えても」
「ヨウジさん、貴方は物です。 つまりあの人は、貴方を手に入れて奴隷商人にでも売るつもりなんですよ。 あとギターも返す気も全然無いです」
 羊司にもようやく合点がいった。 そしてゆっくり近づいてくる狼男を睨みつける。
「お前、俺を売り飛ばす気だったのか」
 吼えるように羊司が狼男に言う。 狼男はニヤニヤと笑う。
「悪く思うなよ。 最近懐が寂しいもんでね。 あと、さっきも言ったように、おまえはついでだ。」
「ふざけんな! 誰がお前なんかに……」
 言い切る前に狼男の膝が、羊司の腹にめり込む。
「ぐ、あ……ぅ……」
「少し黙ってな。 ボウズ」
 5メートルの距離から一瞬で距離を詰められ、ろくに受身すら取れず膝をいれられる羊司。膝をつき激しく咳き込む羊司を無視し、狼男はコリンに近づく。
「い、いや……」
コリンは足がすくみ、悲鳴を上げることすら出来ない。
狼男がコリンににじり寄っている姿を羊司は苦悶に満ちた顔で睨む。
背中から突き刺さる弱々しい視線を軽く流し、狼男はコリンの前に立ちはだかる。
「さて、こいつはまあ思わぬ副産物だとして、本題はあんただ」
 ヒターケースを放り出し、巨体の狼男の視線が鋭くなる。
「んな外套と人目につかねぇ道通るだけで誤魔化せると思ったか? オオカミの鼻舐めてんじゃねぇぞコラ」
 狼男はコリンのフードを掴み、力任せに下ろした。
 抵抗する暇もなく、少女の端正な涙に濡れた顔が顕わになる。


443師走2007/09/16(日) 17:06:00 ID:SKMJWEJG
「ひっ……」
「自己紹介が遅れたな。 俺はゴズマ・ガンクォ。 誇り高きオオカミの国の戦士だ……とはいえ、城に仕えても乱暴すぎるって理由でたった二月で解雇されたがな」
 オオカミの国の人間は基本的に粗暴だとコリンは聞いている。 しかし二月で城勤めを止めさせられるなど、いったいどれ程の事をしたのだろうか。
 ブルブルと震えきつく目を閉じるコリンを笑いながら眺め、狼男、ゴズマ・ガンクォは話を続ける。
「傭兵になった俺はある日、妙な手配書を見た。 内容は、前年滅んだ自然公国ルブレーの美姫、コリン・ルーメリー・ユイーフアの身柄についての件だ」
 そう言って、ゴズマは腰につけた小型の鞄から、巻物状に曲げられた紙を取り出した。
「ルブレーは滅び、王と后、その娘と息子の殆どが殺された。 だが、臣下に命がけで助けられ、崩壊する城から逃げおおせた姫もいた……わかるよなぁ?」
 コリンの顔は既に蒼白になっている。
「コリン・ルーメリー・ユイーフア、生死を問わずワーグイシュー国、大臣、ハンムギーの下へ連れてきた場合……」
 スルスルと紙を開く。
「40万セパタだってよぉ!」
 そこにはコリンの顔が映っていた。

「全く俺はついてるぜぇ。 たまたま、その手配書を見た日に王女様の姿を見かけて、自分から人気の無い森に入ってくれて、さあ殺ろうと思った矢先、落ち物が現れた。 これも俺の日頃の行いの賜物だな」
 下品に笑い声を上げるが、目は笑っていない。
「あ、あぁ……」
「どうした? 姫さん。 さっきからまともに喋ってねぇじゃねぇか」
 ゴズマはコリンの肩に手をおき、顔を覗き込む。
「わ、わ、私は……」
「私は? 続きはどうした? 早く言えよ」
「私は……私自身、姫かどうか、覚えていない……」
「はぁ!?」
 コリンの言葉にゴズマは素っ頓狂な声を出す。

444師走2007/09/16(日) 17:08:28 ID:SKMJWEJG
 これはコリンの苦し紛れの嘘だった。
 人違いだったらもしかしたら見逃してもらえるかもしれない。
 あまり要領が良いとは言えない頭でその場で考えた出まかせ。
 しかしあまりにも稚拙な出まかせ。

「お姫さまじゃねぇのか?」
 ゴズマはコリンの首袖を掴んで、詰め寄る。 コリンより圧倒的に背の高いゴズマが、少女の身体を軽々と掴み上げる。
「うぐっ……わからないんです……記憶が、無いから」
「何時からだ!!」
「は、半年前……」
「なんで手配書の人相書きと似てやがる!?」
「知ら、ない……」
「っちぃ!」
 周囲の木に背中から叩きつけられ、コリンは苦しそうに言った。
 喉を鳴らし、威嚇するゴズマの様子に、コリンの瞳から大粒の涙が流れる。
 その涙を見て、ゴズマは動きを止める。 そして何を思ったか、しばらくの間涙を流すコリンを眺めていた。
「……はぁ、わかったよ」
 急にゴズマが、疲れたようにコリンの首元から手を離す。
 ズルズルと木に背中を擦りながら、コリンの身体が大地に触れる。
「けほっけほっ……えっ、あ……?」
 突然離された手に、コリンは騙せたのかと思った。
「いや、本物か偽物かどうでもいい事を思い出しただけだ」
ゴズマの言葉にコリンの血の気が引く。
「死体に口無しってな。 姫さんじゃなかっても、そんだけ似てたらばれやしねぇだろ」
「そんな……」
「運が悪かったな、知らねぇ誰かさん……さあ、おしゃべりは終わりだ。 苦しまず殺してやる」
 ゴズマは腰の飾り気の無い長剣を抜き、上段に構える。
「た、助け……」
「残念ながらそれは無理だな。 逃げられても困る……諦めて死ね」
 コリンは涙を流し命乞いするが、無常にもゴズマの長剣が振り下ろされる。
 コリンは死を覚悟して目を閉じた。

 森に鈍い音が響き渡る。



445師走2007/09/16(日) 17:09:34 ID:SKMJWEJG
「う……ぐ……」
 コリンは迫り来る死の顎がなかなか訪れず、おそるおそる目を開く。
「この……ガキィ!」
「コリンに……手を出すな!」
 コリンの瞳に羊司が荒い息を吐きながら、太い木の枝を持ってゴズマを睨みつける姿が見えた。
 横合いから頭を強烈に殴られ、頭を抑えているゴズマの長剣は、コリンのすぐ隣を通り過ぎ大地に刺さっていた。
「奴隷の分際で舐めた真似しやがって……」
「うるせぇっ!」
 羊司はもう一撃入れようと木の枝を振るう。
「舐めんな糞ガキ!」
 ゴズマは利き手ではない方の腕で木の枝を防ぎ、長剣を離して空いた手で羊司を殴りつける。
「うがっ!」
 ゴズマに派手に吹き飛ばされ、羊司は何度も地面を転がる。 転がるたびに地面に血の跡が残った。
 樹木に背中から激突し、羊司は一瞬息が出来なかった。
「ヨウジさんっ!?」
 コリンが巨体のゴズマの脇を掻い潜り、羊司の元へと走る。
「ゴホッ、痛ぅ……」
「大丈夫ですか、ヨウジさん!」
 仰向けに倒れる羊司。
 何とか起き上がろうとする羊司を気遣い、悲鳴に似た声を上げるコリン。
 羊司はふらつく足で立ち上がりゴズマを睨み、殴られても放さなかった木の枝を構え直す。
「手癖の悪ぃ奴隷には、躾が必要だな」
 痛みの残る首を何度か回し、ゴズマは地面に刺さった長剣を引き抜き、真っ直ぐと羊司とコリンの方へ歩いてくる。
 逃げ出したい気持ちを抑え、羊司はコリンを庇うように立つ。
 コリンは顔を上げ目を開き、驚いた表情で羊司の顔を見ようとするが、背中からでは羊司の顔を窺う事は出来ない。
「コリン……今から俺の言うことをちゃんと聞いてくれ……」
 羊司はゴズマから視線を外さず、背中越しに小さな声で言った。


446師走2007/09/16(日) 17:10:24 ID:SKMJWEJG
「考えてみれば意外だな。 なんでお前がそこの姫さんを庇う必要があるんだ? 奴隷になる事には変わりないし、もしかしてヒトごときが惚れたか?」
 コリンを庇う羊司に興味が惹かれたのか、ゴズマはからかいを交え羊司に尋ねる。
 羊司は枝を強く握り、言った。
「お前に言う、必要はねぇよ……」
「まぁ、それもそうだな。 大方姫さんに優しい優しい言葉を掛けられたってとこか」
 羊司は黙ってゴズマの言葉を聞いていた。
「しかし、お前も運が悪ぃな。 あの姫さんに出会っちまったせいでお前も俺に見つかっちまった。 全部あの姫さんのせいだぜ?」
「コリンは悪くない」
 羊司が声を押し殺して言う。
「他の誰よりもコリンに会えて良かったと思ってる。俺はコリンのことが――」
 途端、コリンは一目散に森の中を走り出した。 羊司をその場に置きざりにして。
 その後姿を見て、立ち尽くす羊司。
「はっはっは。 そうか、お姫さんは悪くないか。 お前のお姫さん、奴隷を放っぽって逃げちまったぞぉ?」
 足音が遠ざかるが、ゴズマには自慢の鼻がある。 追うのは容易い。
「コ、コリン……」
「哀れだなぁ、おい。 信じた瞬間に裏切られてやがる」
「コリンは裏切ったりしない!」

「俺は間違いなくこうなると思ってたがね」
 ゴズマはコリンの行動を半ば予想していたのか、笑いながら長剣を構える。
「さて、いい加減暗くなってきたな。 闇市が始まる頃だ。 お前を売った金で酒も飲みたいし、姫さんを追わんといけねぇから、さっさと終わらせるぜ」
 羊司は距離を取りながら身構える。
「抵抗するだけ無駄だと思うがなぁ」
 その距離15メートル弱。 先程羊司が不意打ちを食らったときよりも10メートル程長く離れているがゴズマなら一瞬で詰められるだろう。
「うっせぇ、駄犬!」
「あん?」
 実力に完全に差が開いている今、抵抗しないことが羊司にとって最も良い選択肢であろうが、羊司は声を張り上げゴズマを挑発する。
「さっきから、マジでやかましいぞ、駄犬……首輪つけられて頭撫でられたく、なかったら、かかってこいよ!」
 その言葉にゴズマの顔が引き攣る。
「俺はな、誇り高きオオカミの戦士だと言ったぜ……もう一遍言ってみろ糞ガキ!!」
 羊司はしゃがみこみ、左手で足元の腐敗土を握り立ち上がる。
「狂犬病か……末期だな、頭どころか耳までおかしくなってやがる……」
 オオカミである自分より力も体も圧倒的に劣っているヒトに馬鹿にされ、ゴズマは激怒した。
「……売っ払うのは止めだ、ぶっ殺す……死んで詫びろガキィィ!!!」 

447師走2007/09/16(日) 17:11:22 ID:SKMJWEJG
 ゴズマは怒りの咆哮をあげ、羊司を袈裟懸けにしようと長剣を構え走り出した。
 木の枝をゴズマに投げつけ、羊死は背中を向け逃げ出す。
「おおおぉぉぉ!!」
 顔を目掛け飛んできた枝を難なく叩き落とす。
 そして返す刃で羊司を切り上げようとする。
 即座に左手の土をゴズマにぶつける。
「ぶっ、糞がっ! 目潰しか!!」
 まともに顔面から湿った土を受け、普段感じることの無い目の痛みにゴズマの動きが鈍る。 
 殺してやる、とゴズマが叫びながら目を擦っている間に、羊司は全力で森の奥へと逃げる。
「ちぃっ、この。 待ちやがれ!」
 ゴズマも追いかけるが、思うように視覚が安定しない。 また、羊司はあえて狭い道を通り、巨躯のゴズマは樹木に道を遮られ、思うように走る事が出来ない。 自慢の鼻も立ち聳える樹木には無力の様だった。
 ゴズマは目に入った砂を取ることに専念し、立ち止まった。
 足音が遠くなる。
 土を涙で洗い流し、何とか視力は戻った。
「うおおおおおぉぉぉぉぉぉん!!!」
 咆哮を上げゴズマは二匹の逃げまわる獲物に死を知らしめる
 追う。 強靭で俊敏な脚力を持つゴズマは、瞬く間に羊司との距離を詰めていく。

「っつ、マジで速いぞ、あいつ!」
 羊司は背中から感じたことの無い恐怖を受け、冷や汗を掻く。
 日本では日常でほとんど馴染みの無い殺人を、この世界の住人は当たり前のように行う。 付き纏う死の影に脅え、羊司の目から涙が溢れる。
「しっ、死にたくねぇ!」
 涙で視界が滲み、慌てて腕で拭う。 
「痛っ」
 擦り傷だらけになった腕が涙で染みる。
 なぜこんな事になってしまったのだろう。 羊司は戻れるなら昨日に戻りたいと思った。
「うおおおおおぉぉぉぉぉぉん!!!」
 それ程離れていない場所でゴズマの叫喚が震える体を貫く。
「畜生っ、生きてやる! 絶対に!」
 羊司は疲労でふらつく足に力をこめた。

448師走2007/09/16(日) 17:12:14 ID:SKMJWEJG
 ゴズマが羊司の姿を視覚に捕らえる。
「追いかけっこは終わりだぜ、糞ガキ!」
 ゴズマの速度が上がる。 森を踏み荒らす音が聞こえ羊司が振り向くと、すぐ傍にゴズマの姿が見えた。
「やばい!」
 速度を上げようとするが羊司の身体が悲鳴を上げるだけで、うまく走ることができない。
 羊司の体はとっくに限界を超えていた。 意識は急げ、逃げろと伝えるが、身体が全く追いついてこない。
 羊司は先程と同じ様に牽制に砂を浴びせようとするが、ゴズマは両腕で顔を守り、大して効果を得られない。
「ヨウジさん、こっちです!」

 万事休すかと思ったその時、コリンの声が聞こえた。
「コリン!」
「そこにいたか、小娘!」
 コリンは樹陰から顔を出し、羊司に手を振った。
 羊司は頷き、コリンに向かって気力を振り絞り駆ける。
「おおおおぉおおぉぉぉ!」
「ガキイイイィイィィィ!」
 ゴズマの姿が羊司の背後に迫る。
「コリンッ!」
「ヨウジさんっ!」
 羊司は体勢を低くし、コリンの元へ飛び込む様に駆け込んだ。
 身体を屈め、動かないでいるコリンの手を取る。
 引っ張られるコリンだが、速度の乗っていないそれは致命的な失敗だった。
 コリンのもつれた足がバランスを崩す。 姿勢が崩れ、コリンと羊司は前にうつ伏せに倒れこんだ。
 その逸機を見逃すゴズマではない。
 二人は振り返り、もうゴズマから逃げ切れないことを悟った。
「終わりだ、糞ガキ!」
 ゴズマは速度を落とさず抜剣し、羊司を刺し殺そうと腰だめに構えた。
 
 羊司は考えた。
 力では歯が立たない。 逃げ切れるとは思わない。 奴隷になれば生き残れるが、コリンの命は奪われてしまう。 なら二人一緒に生き残るにはどうすれば良いか?
 必死で知恵を振り絞る。 19年の人生の中で、最も頭をめぐらせた。

449師走2007/09/16(日) 17:12:50 ID:SKMJWEJG
 そして思いついた決死の策。 一人が罠をはり、もう一人が囮になる無謀な策とは言えない様な愚策。
 出会ったのが数時間前で、まともに話を出来たのがたった一時間前だ。
 信頼関係と言えるものも碌にできておらず、片方が裏切れば簡単に瓦解する策だ。
 しかし、羊司は信じた。

「げこぉっ!?」

 それしか方法は無いからと言う理由からではなく、怖がりで泣き虫な少女だが自分を救ってくれた優しさを信じた。

「げぇーーっ、ご、ごふっ、げぇーっ、げほっげほっげほっ……」
 突然ゴズマの身体が上半身だけ急停止し、下半身を前方に放り出した。 剣を取り落とし仰向けになって必死で首を抑えもがく。
「ざまあみろ……駄犬」
 羊司とコリンはゴズマの苦悶の表情を見ながら、ゆっくりと痛みと疲労と恐怖に震える身体を起こした。
450師走2007/09/16(日) 17:14:00 ID:SKMJWEJG
 話は少し遡る。
「コリン……今から俺の言うことをちゃんと聞いてくれ……」
 コリンを庇い背中に隠した時、羊司は小さく呟いた。
「は、はい……」
「俺の後ろのズボンのポケットの中に、さっき切れた弦と予備の弦が入ってる。 それを取ってくれ」
 コリンは羊司のズボンから、丸めて収められていた弦を取り出す。
「ありました」
「それを持ってこの森を真っ直ぐ走れ」
「えっ?」
 羊司の言葉に戸惑う。 このヒトを置いて自分だけ逃げてよいのかと思う。
しかし、
「できません……」
 結局、ゴズマの足の速さに逃げ切れるはずと諦念し、また羊司を置き去りにするという良心の呵責に耐え切れず、コリンは俯いてしまった。
 ゴズマが何か言っているようだが、コリンの耳には届かない。
「コリン、君のする事は逃げる事じゃない」
 コリンの心情を察し、羊司は優しく言い聞かせる。
「君は走って、この弦で森に罠を張るんだ。 出来るだけ狭い樹木に精一杯足を伸ばして弦を結ぶんだ。 俺が、怒り狂っているあいつをおびき寄せる。 出来るな?」
 コリンは羊司の意図をよく理解した。
「でも……絶対無理です」
 それでもコリンは頭を左右に振り、否定する。 ゴズマのあの足の速さにヒトである羊司が逃げ切れるわけが無い。
「コリン、一度でいいから俺を信じて欲しい」
 その言葉にコリンは顔を上げる。
 表情は窺えないが真剣な表情をしているのはわかった。
「頼む。 絶対に君のところまで、どんな手を使ってでも逃げ切って見せるから」
 その力強い言葉に、コリンは決意した。
「わかりました……信じます」
 コリンは一分一秒でも早く罠を仕掛けることで羊司を信じる証とする。
 羊司の信頼に報いるためにも。
「しかし、お前も運が悪ぃな。 あの姫さんに出会っちまったせいでお前も俺に見つかっちまった。 全部あの姫さんのせいだぜ?」
「コリンは悪くない」
 行けっ、と羊司は呟いた。
 コリンは頷き、恐れを勇気でねじ伏せ走る。
「他の誰よりもコリンに会えて良かったと思ってる。俺は――」
 全部聞けないのが少し残念だった。
451師走2007/09/16(日) 17:14:54 ID:SKMJWEJG
「どうだ、ヘヴィゲージの弦の味は?」
「ぎ、ざま……」
 苦しみ悶えているゴズマに羊司は嘲りを含め言い放つ。
「お前は激昂しやすい性格だったからな。 簡単に挑発にのってくれた」
「何、を、しやがっ、た……」
「ギターの弦をお前の身長に合わせて張っただけだ。 こんな森の中じゃ視界も悪いし、早々ばれない。
 しかも樹木と樹木の間が狭いし、枝があるから首を突き出す格好になる突きしかできねぇだろ。 この辺りはコリンが機転を利かせてくれたおかげだな。 あとはお前が勝手に幹に張った弦に全力で突っ込んで自滅したんだ」
「舐めた、真似……じやがって……」
 ゴズマは血走った目で羊司を見、這いながら落ちた剣に手を伸ばす。
 しかし、その手が長剣に届くことは無かった。
「俺が引導を下してやる」
 長剣を拾い、羊司はゴズマに死刑宣告をする。
 後ろでコリンが息を呑む。 手を伸ばし羊司の服を指ではさみ、これから行われるであろう人殺しを止めようとする。
「ぎざま……」
「俺はコリンの為、そして自分の為にお前を殺す。 これから何度も誰かに襲われるだろうけど、その度にそいつらを殺す」
「一生、やってな……」
 大きく咳き込み、ゴズマは血を吐いた。 呼吸器系の損傷が相当酷いようだ。
「ヨウジさん……」
「コリン、手を離してくれ」
 止められないとわかったのだろう。
 コリンは伸ばした手を離した。 そして俯き、ゴズマから顔を背ける。
「コリン、しっかり覚えておいてくれ。 俺はこれからも人を殺すって事を」
 それだけ言うと、羊司は重い長剣を振り上げ、ゴズマの首を目掛け振り下ろした。


452師走2007/09/16(日) 17:15:40 ID:SKMJWEJG
「……行こう、コリン」
「……はい」
 ゴズマの遺体をその場に放置し、二人は歩き出した。
 コリンはすぐに立ち止まり振り返ってゴズマを見る。 悲しそうな表情で死んだゴズマを眺め、何かを振り切るように目を背け、先を行く羊司を追いかける。 そして二度と振り返らなかった。


 置き去りにしたギターや籠を取り、薄暗い森を二人は歩く。
 先ほど初めて人殺しをしたのが心に重くのしかかっているのか、二人に会話は無い。
 普段あまり饒舌ではないコリンも、何かを言わなければならないと口を開こうとするが、なぜか言葉が出てこない。
 コリンが沈黙を気まずく思いながら羊司の背中を眺めていると、突然羊司がコリンの法を向き、口を開いた。
「コリン」
「は、はい。 なんでしょうか!」
 羊司の真剣な表情に、コリンは気押されたかのように身を硬くする。 
「コリン、その……さっきも言ったかと思うんだけど」
 さっき? さっきとは何の事だろう、と思い始めたところで、心当たりがあったのかコリンの頬が赤く染まる。
453師走2007/09/16(日) 17:16:25 ID:SKMJWEJG

「しかし、お前も運が悪ぃな。 あの姫さんに出会っちまったせいでお前も俺に見つかっちまった。 全部あの姫さんのせいだぜ?」
「コリンは悪くない」
「他の誰よりもコリンに会えて良かったと思ってる。俺はコリンのことが――」

コリンは耳まで顔を赤くしながら、羊司の言葉を待つ。
「ええとだな、その、きのこは捨てた方がいいと思うんだ」
「はい?」
 コリンは耳を疑った。
「いやさ、なんか見るからに怪しさ全開のきのこ取ってただろ? あれって幾らなんでも食べると身体に悪そうって言うか……」
 羊司は如何にも言いにくそうに話し、コリンの籠に手を伸ばす。
 突然伸ばされた手にコリンは身をすくめる。
 そんなコリンを早く俺に慣れて欲しいと思いながら羊司は、さきほどコリンが拾った赤いいぼ付ききのこを手に取る。
 コリンは恐る恐る目を開き、羊司の手を見た。
「えーと、ヨウジさん」
「他の食材ならまあ何とか料理できなくも無いけど、これはちと無理――」
「食べませんよ。 これは」

 羊司はぴたりと静止する。
「これは食用じゃなくて薬用です。 疲労回復や滋養強壮など様々な効用がある北のこの地方にしか生えない珍しいきのこなんです」
「あ、そうなの……」
 それを聞いて羊司は胸をなでおろす。
「心配、して下さったんですね。 ありがとうございます、ヨウジさん」
 コリンは微笑み、頭を下げる。
 一瞬期待してしまった事とは違うが、羊司は自分を気遣ってくれたことに素直に感謝を述べる。
「ああ、いや、そんな、頭下げないでくれ。 なんだか照れる」
 羊司も先程のコリンと同じように顔を耳まで染め上げる。
 顔を上げたコリンの顔を直視できずに必死で手を振り、別の話題を探す。
「あ、なんか変な動物がいるぞ! 見てみろって、コリン」
 焦る羊司の指差した方角にコリンが目を向けると、全身が薄い茶色に覆われ顔面だけ白い動物がいた。

454師走2007/09/16(日) 17:17:39 ID:SKMJWEJG
「あ、クト」
 羊司が何かを言う前に、コリンはクトと呼ばれたラクダの様な動物に駆け寄る。
 クトは嬉しそうに首をコリンに擦り付け親愛の情を示す。
「くすぐったいよ、クト」
「随分馴れているんだな」
 危険はないと判断したのか羊司はクトに近づく。 コリンは微笑みながら頷く。
「ずっと一緒に旅してたの。 クトはリャマっていう動物の種類で、荷物の運搬とか随分お世話になってるんです」
 コリンはクトの頭を撫でながら答える。
「へぇ、これからよろしくな。クト」
羊司が頭を撫でようとすると、その手から逃げる様にすぃっと顔をそらした。
「あ、こら」
「ふふっ、嫌われちゃいましたね」
 人好きな性格だからすぐ仲良くなれますよとコリンは笑いながら、クトの首にかかった手綱をとる。 歩き出したコリンに逆らわずクトは歩き出した。
「こっちです。 羊司さん」
「あぁ、わかった」
 一人じゃなかったんだなと考えながら羊司は、コリンとクトの良好な関係に笑みを浮かべた。
「ここです。 羊司さん」
 案内されたテントは思っていたよりも大きかった。 モンゴルのゲルを一回り小さくした円形状のテントは、骨盤がしっかりしているのか、ちょっとやそっとでは倒れる心配は無さそうだ。 周囲には炊き出しに使った鍋や、簡単な岩を並べたコンロがあった。
「初めてヒトを入れるんですけど、ドキドキしますね」
 コリンが照れくさそうに言った。 羊司は異性の部屋に入った事が数回あったが、それほど興奮したりはしなかった。 しかし今は心臓の音がコリンに伝わるのではないかと思うほど緊張していた。
コリンは蚊帳を開き先に入り、羊司を中へと促す。
「汚いところですけど、笑わないで下さいね?」
「あはは……」
 羊司が苦笑しながらテントに足を踏み入れようとし、ふとその場で動きを止める。
 首をかしげコリンは羊司の動きを観察する




455師走2007/09/16(日) 17:18:45 ID:SKMJWEJG
「ヨウジさん?」
「あ、えーと……これから俺が何時までかかるかわからないけど、元の世界に帰るまでお世話になるだろ? その度にお客さんとして扱われるのはどうかなーと思うわけなんだ。 あー、だから、つまり……その――」
 コリンの目を見れないのか、しきりに目を泳がせる。
「ええとだな……これからよろしく、ただいま……かな?」
「はい……私こそ、よろしくお願いします。 お帰りなさい、ヨウジさん」
 コリンと羊司はお互い微笑みあう。


 暗く寒い森の中の小さなテント、異世界から迷い込んだヒトの男は孤独で泣き虫なヒツジの少女と共に暮らし始めた。
 男は自分の世界に帰るために、少女は未だ自分が何をすればいいのかわからず旅を続ける。
 これは歴史に刻まれるヒトと人間の寄り添いあった生涯を描いた物語である。


「コリン、ギター弾いてやろっか?」
「わぁ、聞きたいです。 ヨウジさん」
「よし、じゃあ外にでよう」
「はいっ!」

 二人の未来に幸多からん事を。






 *****
 お久しぶりです、師走です。
一応2はこれで終わりです、当初よりかなりの時間がかかってしまいました。
SS書くの難しい……続きはもう少し待ってください。
 ありがとうございました。

456名無しさん@ピンキーsage2007/09/16(日) 17:21:07 ID:rfRJovKM
リアルタイム、GJ

でも、メール欄にsage入れて下さい
お願いします
457名無しさん@ピンキーsage2007/09/16(日) 17:34:58 ID:qJFc25S2
乙カレー

>>456も言っていますが、2chではメール欄にsageと入れて書き込みすると
スレッドが一覧の上まで上がりません
普段からも常時ageで書き込む人はほとんどいないのですが
とりわけ小説の投下のように長時間連続して書き込みをするような場合は
荒らしに目をつけられての妨害や割り込み事故を避ける上で
sage書き込みがマナーになっています
458名無しさん@ピンキーsage2007/09/17(月) 00:31:39 ID:wybANbP8
GJです。

コリンタンが可愛すぎ
459名無しさん@ピンキーsage2007/09/17(月) 15:50:03 ID:7UepoV9U
乙〜。

そーかそーか、滋養強壮か。
460名無しさん@ピンキーsage2007/09/17(月) 22:06:16 ID:VmmcRXIJ
おとなしい羊っ娘キタコレ
続きをワクテカ
461名無しさん@ピンキーsage2007/09/17(月) 23:39:17 ID:no0Fx7gh
文章はまだ拙い部分があるけど、世界観や風景描写は実に期待できる。
これでエロスがあれば、欲を言えばコリンタンが乱れに乱れてくれればもう文句はない。
462とらひとsage2007/09/18(火) 20:23:15 ID:zGD64jcP
エロ無し注意

 長い、長い夢を見ていた。
 それは小さい頃の夢だったような、つい最近の夢だったような、体験した事もない出来事の
夢だったような気がするけれど、恐らくそれら全ての夢を見たのだろう。
 睡眠と覚醒を繰り返し、夢の現の間をうろつきまわり、熱に浮かされ、寒さに震え、渇きに
喘いで得た水分を嘔吐して、起き上がれぬまま三日が過ぎた。
 実際は千宏に日付の感覚は無かったのだが、常識的な高熱レベルまで熱が引き、ぼんやりと
した意識の中で誰かと交わした会話の中で、三日も寝込んでいたんだぞ、と聞かされた。
 もう大丈夫だ、と言って頭を撫でてくれた大きな手は、たぶんアカブのものだっただろうと思う。
 何か食べられるか、欲しい物は無いかと聞かれ、千宏は困らせるだけだと分かっていながら
熱のせいにしてプリンが食べたいと答えた。
 数時間後、当たり前のように手作りプリンが出てきた時には驚愕したが、ありがたく頂いた
ところ、母の手作りプリンよりもはるかに濃厚で美味である事に二重に驚愕した。
 四日目には立ち上がらなければ普通にしていられるようになり、五日目には室内を歩きまわ
れるまでに回復した。
 ベッドから出ているとアカブが怒るのでやはり大半はベッドの中だったが、暇を見てはアカ
ブやパルマが部屋に来てくれたので、寂しさや退屈に押しつぶされると言う病人特有の症状に
悩まされる事は無かった。
 二週間に及ぶ闘病生活の中で分かった事が二つある。
 一つは、この世界にも元の世界と同じような食べ物が多くある事。
 もう一つは、この世界の人間用の薬はどれも千宏には強すぎて、用量を間違うと逆に毒にな
るという事である。
 そろそろ完治するかに思われた七日目の夜、頭痛がひどくてパルマに頭痛薬をねだった時、
パルマはカプセルに入った薬を二錠千宏に差し出した。
 アカブがくれる薬はいつも水に溶かしてあったので不自然さは感じたが、元の世界でも馴染
みのあるカプセル薬に警戒心は覚えなかった。
 与えられるままに呑み、そして十分後に猛烈な眠気に襲われて意識を失った。
 後で聞いた話によると、一瞬心停止まで行きかけたらしい。
 パルマは泣き腫らした顔でごめんなさいを連発し、よほど走り回ったのだろう、アカブとバ
ラムは疲労困憊とばかりにぐったりとへたり込んでいた。
 しかしその強力なショック療法のおかげかそれ以後の体調はすこぶるよく、二週間めを迎え
た朝、千宏は誰かが食事を運んで来る前にベッドを降り、着替えを済ませて部屋を出た。

 千宏の部屋は二階にある。
 数多くある客間の一つをあてがわれているらしく、廊下には千宏の部屋と同じような扉がい
くつも並んでおり、それらは全て空き部屋のようだった。
 そう言えば、興味を持ったはいいが結局聞いていない事がいくつかある。
 例えば、たった三人と数人の下働きしかいないのに、何故ゆうに数百人は収容できそうな要
塞染みた建物に住んでいるのか――とか、何故従姉妹のパルマがこの家に住んでいるのか――
とか、そういった類の事である。
 一応、王から土地を与えられた領主なのだと言っていたが、それにしては領民もいないし、
第一領主が森に入って資材を集め、それを市場で売って生活しているなんて聞いた事が無い。
 それとも、この世界ではそれが普通なのだろうか。
 字が読めないので書物を漁って調べる事も出来ないため、それを確かめる術はやはり本人達
に訊くしかない。
 だが、内容が内容だけに、それがこの世界では地雷的質問である可能性もおおいに考えられ
るため、千宏はやはりもうしばらく、そのことについては触れずにいようと考えていた。

「おはよう」
 挨拶と共に食堂へのドアを開けると、揃っていた三人が一斉に振り向いた。
「チヒロ!」
 叫んだのはパルマである。
 今正にかぶりつこうとしていた骨付き肉を放り出し、ぴん、と尻尾を立てて駆け寄ってくる。
「おま……! この馬鹿!」
「なに勝手に起きてんだ!」
 罵ったのはアカブで、怒鳴ったのはバラムである。
463とらひとsage2007/09/18(火) 20:23:49 ID:zGD64jcP
 パルマが心配そうに額や首筋にぺたぺたと手を当てて熱を計り、どこか痛い所は無いかとう
るうると瞳を潤ませた。
「大丈夫。たぶん、完治した」
「ほんと? ほんとにほんと?」
「うん。一昨日辺りから普通に元気なんだ。そろそろ部屋に閉じ込もってる方が辛いよ」
 パルマ達の心配そうな視線がくすぐったく、居心地が悪くて苦笑いを浮かべてみせる。
「お腹すいちゃった。あたしの分もある?」
 心配をかけた分努めて明るい声を出し、千宏は率先して食卓に腰を下ろした。
 千宏用に用意しておいたと思われる、食べやすいように細かく切った肉料理や、適度に冷ま
したスープが千宏の前に並べられる。
 本当に空腹だったのでありがたく食事に取り掛かると、その様子にほっとしたように三人も
食事を再開した。
 パルマが嬉しそうに尻尾を揺らしながら、いっそ清々しささえ覚える豪快さで次々と料理を
片付けて行く。
「よく食べるね……」
 と思わず零した千宏の言葉に、パルマはだってさぁ、と唇を尖らせた。
「もうすぐ発情期だよ。ちゃんと体力つけとかないと、とてもじゃないけどもたないよ」
「はつ――」
 がちゃん、とフォークを皿の上に落下させ、千宏は目を見開いた。
 パルマが音に驚いて尻尾を逆立て、どうしたの? 具合でも悪くなった? と心配そうに身
を乗り出す。
「は……発情……期?」
「あ、わかんないか。えっとね、種族によるんだけど、定期的に発情期って言うのが来てね、
その期間は――」
「いい! いやいい! 分かる! 知ってるからいい!」
 慌ててパルマの言葉を制し、青ざめてバラムとアカブに視線を移す。
 虎の発情についてはよく知らないが、猫のメスが定期的に発情するのは知っている。
 オスは発情するのだったか――いや、犬と同じで、メスの発情に合わせて“その気”になっ
たように思う。
 だとすると、パルマが発情するとこの二人も――なんと表現しようか、“もよおす”のだろう
か。その場合、パルマ一人でこの二人の相手をするのだろうか。いやまさか。まさかそんな事
はないだろう。
「へぇ――チヒロの世界にもあったんだ。発情期。じゃあチヒロも――」
「人間は発情しないから! いや、この世界ではヒトか! ヒトは発情しない生き物だから!」
「いや、常に発情してるんだろ」
 がりがりと骨をかじりながら、アカブが当たり前の事のようにそう言った。
 愕然と振り返り、何を言い出すのかとあんぐりと口を開く。
「いや、自分の意思で発情できるんだろ?」
 スープをすすりながらバラムが言う。
 そうだったっけか、と骨をかじりながら立ち上がり、アカブは一冊の本を開いてぱらぱらと
ページを捲った。
「交配教本じゃねぇからさすがにそこまでは乗ってねぇな。あー……そう言えばよ。ヒトって
やらなくても排卵するんだろ? チヒロ。おまえ月経っていつくるん――!」
「馬鹿ぁあぁ!」
 たまらず赤面して手元のナイフを振りかぶり、思い切りアカブに投げつける。
 咄嗟に身を引いたアカブの頬すれすれをナイフが飛んで行き、そして完全な沈黙が訪れた。
464とらひとsage2007/09/18(火) 20:24:30 ID:zGD64jcP
「な……なんで怒ってんだ?」
 スープの器を手に持ったまま、バラムが恐る恐る口を開く。
 あぁ、そうか――と、千宏はがっくりと肩を落として手の平で顔を覆った。
「ごめん……なんでもない。ちょっとあっちの世界の常識にしがみ付いてた」
「ル・ガル製の生理用品買ってきてあるよ。お店で売ってた」
 それはなんとも、切実にありがたい話である。
「あの……ヒトは、まぁ、常に発情って言うよりは、自分の意思で……っていう方が正しいと
思うよ。うん。たぶん……」
「へー。本当は私達ももう、わりと自分の意思でその気になれるから、別に発情期とかいらな
いんだけどね」
「発情期のおかげで夫婦仲上手くいってる奴らもいるんだ。一概にいらねぇとも言えねぇだろ」
 アカブの言葉に、それもそうだね、とパルマがうなづく。
 なんとも常識からかけ離れた会話過ぎて、逆に頭が冷めてきた。
 昔、飼っていた猫の発情について調べた事がある。
 発情期とはすなわち繁殖期であり、猫はその期間以外に子供は作らない。単独行動をしてい
る猫たちは、種の保存のために発情期が必要なのだと書いてあったが、しかしこの世界の虎人
間達は明らかに群れているし、先程のアカブの言葉から察するに結婚して夫婦になったりもす
るのだろう。
 名残り――という事だろうか。この世界にもきっと進化はあったのだろう。
 大昔には結婚なんて制度もなく、個人が単体で狩をして過ごし、そして発情期に出会い、子
供を作り、育て、そしてまた一人に戻る――そんな、正に千宏の世界にいる野性の虎のような
生活をしていたのかもしれない。
 いやしかし――だが、それにしたって――。
「でも、あの、パルマって……いまいくつなの? 十代? 二十代?」
 少し、若すぎるのではなかろうか。
 確かに千宏のいた世界でも、十八やそこらで子供を産んでいる少女はいたけれど――。
「歳? 今年で百十二歳だよ」
 ひゃ――。
「ひゃ――?」
「ちなみにバラムは百七十で、アカブが百六十八」
 気が――遠くなってきた。
 意識を失う前兆ではない。そうか、これが、思考が停止すると言う事か。
「チヒロ? どうしたのチヒロ。チヒロ?」
「まぁ――ヒトの寿命は長くて百年短くて五十年らしいからな。そりゃ、知らなきゃびびるだ
ろうなぁ」
 食事を終えたバラムがテーブルの真ん中に置いてあった酒瓶の栓を開け、まるで水のように
喉の奥に流し込む。
 落ち着け、落ち着け、考えろ。
 頭の中でそんな言葉を繰り返し、千宏は緩やかに復活しつつある思考回路を最大限に働かせ
て極単純な計算式を導き出した。
 寿命の比率換算式である。
 パルマの外見は明らかに、千宏と同い年あるいはそれより二つか三つ上程度である。
 背も千宏より高いし乳房や尻の発達も明らかにパルマが上だが、あどけない顔立ちとその言
動や行動から、まだ少女という印象が強い。
 そしてバラムの容姿だが、どんなに上に見ても三十か二十九か、そのあたりだ。普通に見れ
ば二十代半ばだろう。アカブの肉体年齢を予想する事は千宏にはまだ不可能である。
 そのパルマが百十二歳。そしてバラムが百七十歳。
 パルマの年齢と千宏の年齢の比率を算出すると、その差およそ六倍。
 それから導きだされる結果はつまり――。
「な……何百年生きるの……君達」
 ヒトの平均寿命を八十として考えると、単純計算でその六倍の寿命を持つと推測される。
 少なくとも四百八十年は生きてもおかしくない。
 だがそれはそれ、世の中計算式だけでは成立しないのが常である。なによりここは異世界だ。
あるいは二百歳くらいまで生きると、どこかの漫画の戦闘種族よろしく急激に老けて老人にな
るのかもしれない。
465とらひとsage2007/09/18(火) 20:25:05 ID:zGD64jcP
 人間、自身の限界の倍程度の範囲なら、割とすんなりと許容できる物である。
 ヒトの寿命が百年ならば、トラの寿命が二百年でも別段驚く事は無い。
「普通は四百年くらいかなぁ……長くて五百」
 そうか、最低でも四倍か。
 なんとなく投げやりなような、捨て鉢な気分になるのを止められない。
 百歳を超えていると言うのなら、発情しようと子供を産もうと倫理的にどうという事は無い
だろう。
 いや、むしろ千宏の世界の倫理をこちらに当てはめて考えようとするから衝撃を受けるのだ。
 共通点を見出そうとすると相違点の大きさに目が眩むだけである。
「この世界の人――って言っちゃいけないのか。なんだ。えーと。人間? って、みんなそん
なに長生きなの?」
「ううん。トラは特別長い方。ネズミなんかは百年で死んじゃうし、イヌも二百年くらい」
 よかった――何がよかったのかよく分からないが、とにかく純粋にそう思った。
「体の大きさに比例するの?」
「そうでもないんじゃないかな。ネコは六百年とか生きるし」
 もう、四百年も六百年も大して変わらないような気がしてきた。相当に重症である。
 種族によってそんなにも年齢や成長速度が違うのならば、重要なのは実際の年齢ではなく、
結局そこにある個人の外見や性格、知識や教養なのだろう。
 歳をとっているから偉い――という年功序列の概念は、きっと異種族間では成立しないに違
いない。
 年齢にこだわるのはやめにしよう、と千宏は思考を切り替えた。
 元々は何の話をしていたのだったか――。
「しかし発情期か――そろそろ薬の調合に入った方がいいかもしれねぇなあ」
「今日辺りからそれ系の薬草の採集を始めよう。パルマ。帰りに市場で小瓶大量に買って来い」
 アカブの呟きに同意して、バラムがパルマに指示を出す。
 そうだった――発情期の話をしていたんだった。
 また熱を出して寝込みそうである。
 聞かなくても想像はつくが、一応後学のために聞いておこう。
「それ系の薬草とか薬って……なに?」
「媚薬」
「避妊薬」
「精力増強剤」
 三人が一つずつ、見事なテンポで実にわかりやすい商品のラインナップを教えてくれる。
 千宏が頭を抱えると、三人は不思議そうに顔を見合わせた。


             ***


 まだ寝ていた方がいい。
 人混みは体に触るから――という三人の反対を押し切って、千宏はパルマについて市場に行
くと言い張った。
 パルマは純粋に千宏の体調を案じていただけだが、バラムとアカブは先日の事件内容を知っ
ているため、別の意味でも引き止めていたのだと思う。
 だが、だからと言ってずっと家に引きこもり、役立たずの無駄飯食いの奴隷にさえなれてい
ないペットに甘んじているは耐えられなかった。
 二週間も床に臥せって迷惑をかけ、心配をかけ、それでも迷惑がる様子もなく必死に看病を
してくれた三人に、出会った当初より遥かに信頼が生まれていたのも理由の一つだ。
466とらひとsage2007/09/18(火) 20:26:00 ID:zGD64jcP
 誰かがずっと手を握っていてくれた。
 寝ずにタオルを代えてくれた。
 死なないで、死なないで、と泣きながら付き添ってくれたパルマの声も覚えている。
 それにこの、性に関してあけっぴろげで、発情期まであるという人々の中で、自分一人で元
の世界の常識にしがみ付き、犯される事に怯えるのも馬鹿馬鹿しく思えてきた。
 愛する人にのみ操を立てる貞節な処女なんて、この世界では望まれない。望まれないという
事は、そうあるべきだと必死になり、それを奪われる事に怯える必要がなくなったと言う事だ。
 確かに痛いのは嫌だ。
 乱暴に扱われたら壊れてしまう――と言うのも、想像するだけで恐怖に竦む。
 だが、痛みが伴うのは強姦に限った事ではないわけで――。
「なんか、二週間も生死の境さまよったら吹っ切れちゃった。何もしなくたって病気や事故で
死ぬかも知れないんだしさ」
「いや、確かにそうだがよ……」
「あ、でも包丁借りてっていい?」
「包丁?」
 何に使うんだ? ときょとんとするアカブに対し、千宏は意識して無邪気に微笑んだ。
「今度襲われそうになったら刺してやるの」
 だってトラはその程度じゃ死なないんでしょ、と言うと、アカブはさっと表情を硬くして絶句した。
「あと、辛い香辛料ないかな。唐辛子っぽいのがあるといいんだけど……」
 今度はもう、何に使うのかは聞かれなかった。
 包丁の刃に唐辛子をぬっておけば、さすがにトラといえど激痛に悶絶するに違いない。
「あ、もちろん率先して刺したりはしないよ? 自衛手段ってやつ。催涙スプレーと同じ」
「い、いや、しかしなチヒロ。さすがにヒトがトラに怪我をさせるのは、社会的に問題が……」
 アカブがいい難そうに言葉を濁す。
 その言葉と態度に、千宏はすぐに察しがついた。
「そっか……飼い主が罪に問われるんだ」
「チヒロ!」
 あえて使った飼い主という言葉に、アカブが鋭く声を荒げた。
「いいよアカブ。だって、社会でのあたしの立場が奴隷ってのは事実なんだから、受け入れな
きゃ。あたしの世界でも、ペットが人様に噛み付いたら飼い主の責任だし――」
「人間に危害を加えたヒトは研究所に収容される決まりになってる」
 飼い主の責任だし――ペットは保健所で殺処分にされる。
 そう、続けようとした千宏の言葉をこの世界の言葉に置き換えて、バラムが悲痛さと真剣さ
に彩られた表情で静かに言った。
「あぁ……」
 千宏はかりかりと頬をかき、
「そう」
 と、ひどく間の抜けた声を出す。
 自分で言おうとした言葉を他人に言われただけなのに、その言葉が妙に重たくて――。
「そっか……だよね。あー、そりゃそうだわ。うん。ごめん変な事言って」
 犬が家の軒先に縛られていて、学校帰りの子供が嫌がる犬を無視してべたべたと撫で回して
いるのを見た事がある。
 迷惑そうにしながらばしばしと尻尾をふって、しかし堪えていた犬の尻尾を、一人の子供が
面白半分に乱暴に引っ張った。
 ぎゃん、と叫んだ犬が怒って、子供の腕に噛み付いて――そして、それ以来その家の軒先に、
犬の姿はなくなった。
「チヒロ、ねぇ、そんなに心配しないで? ちゃんと私が守ってあげるし、登録してしっかり
首輪つけてれば、さらわれたって見つかる事もあるし――」
「大概、すでに壊された状態で見つかるがな」
 その、バラムの静かな言葉に怖気が走った。
 ぐ、と吐き気がこみ上げてくる。
「――アカブ。チヒロの首輪をはずしてやれ」
 ぎょっとしたように目を見開き、アカブがバラムを凝視した。
 どうして、とパルマも声を上げる。
467とらひとsage2007/09/18(火) 20:26:34 ID:zGD64jcP
「おまえ――そりゃ、野良ですって言ってるようなもんだろうが! 本気でさらわれるぞ!」
「首輪なんざしててもさらうやつはさらうだろうが。登録してた所で“戻ってくる可能性”が
上がるだけで、襲われたりさらわれたりするのを防止できるわけじゃねぇ」
「そりゃそうだが――!」
「だったら、俺はチヒロの所有権を捨てる。野良のヒトはこの世界の事を何も知らない。何も
知らないから、何をしても許される。何より、登録をしてないヒトは初めから存在していない
のと同じだ。それなら例え人間に危害を加えても、逃げきれさえすりゃどうにでもなる」
 何者に保護されず、限りなく無知。
 それ故に抵抗が許される絶対的な弱者。
「俺のナイフをやろう。ちと大振りだが、包丁よりは扱いやすい」
「お、おいバラム――!」
「ただし、いいかチヒロ。誰にも所有されないって事は、必ず誰かがおまえを所有しようとす
る。抵抗する権利が与えられる代わりに、狙われる確立は確実に上がる。だからヒトだってば
れねぇようにしろ。仮にばれて、それで襲われそうになったとしても、このナイフは最終的な
自衛手段だ。使わない事が大前提の最後の牙だ」
 ちょっと――ちょっと待ってくれと言いたかった。
 どうしてそんな大げさな話になる。
 ただ、ただ自分は――。
「殺されそうになった時だけ、ナイフを抜け。犯されても耐えろ。出来るなら無力を装って、
媚びてでも自分を守れ」
「バラム! てめぇ自分が何言ってるかわかってんのか!」
「家族として扱うなら、チヒロは自由であるべきだ。だが自由にすれば必ず危険に晒される。
もちろん守れる範囲では守る。だがその範囲外では自分で自分の身を守るしかねぇだろう」
 無力な鳥がサバンナで、開いた鳥かごの扉の前に止まっているような錯覚を覚えた。
 自由が欲しいのだったら、安全なかごから出なければならない。
 だが、かごを出て飛び立てばそこは猛獣の巣窟で――。
 腰に下げていたナイフをベルトシースごと腰からはずし、バラムは無言で千宏に差し出した。
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってよ! 別に、私が一緒に行くんだからさ、そんな、大げさにし
なくたっていいじゃない! ナイフなんか持たなくても、出かけるときは誰かが一緒に――」
「これは誇りの問題だ。抵抗する権利を得るか、得ないか。首輪をするか、しないか。俺達の
行動は変わらない。守れる範囲でチヒロを守る」
 一人で生きる力が欲しいと――千宏は確かにそう言った。
 それは、誰かの保護が無くても生きられる力だ。生活力の話だけではない。この世界では、
一人で生きるためには、命を守る必要があるのだ。
「俺は、おまえがずっとこの家から出ないで、安全に生きていく事を望んでる。たまに俺や、
アカブやパルマが連れ出しても、決して側を離れなければおまえは絶対に安全だ」
 だが、と短く言葉をつなぎ、バラムはすぅ、と瞳孔を細めて金色の虹彩を輝かせた。
「首輪をつけて、飼いヒトとして登録すれば、おまえは一切の抵抗の権利を奪われる。もし仮
に、まかり間違っておまえが俺達の保護を一瞬でも離れた場合。そして誰かに襲われた場合、
殺されそうになった場合、お前が選択できるのは大人しく殺されるか、相手に危害を加えて逃
げ延びて、結果研究所に送られて実験に使われて一生を送るかだ」
 抵抗する権利。
 そんなこと、考えもしなかった。当然ある物だと思っていた。
 奴隷とは、ペットとは、つまりは抵抗する事を許されない――言語を解する道具なのだ。
 もし、バラムが差し出すナイフを取れば、千宏はその権利を得られる。奴隷ではなく、ペッ
トではなく、だがいつ殺されてもおかしくないヒトという種族として、当然あると思っていた
ものを当然のように取り戻せる。
468とらひとsage2007/09/18(火) 20:27:09 ID:zGD64jcP
 だが、それがどれだけ恐ろしい事か――。
「どうする、チヒロ」
 取るな――と、言っているような口調だった。
 それは、一生守ってやるという宣言に近い、ひどく甘い誘惑のように思われた。
 このナイフを取って、抵抗する権利を得て――それでどうなるというのだ。
 権利を得た所で、抵抗した所で、確実に助かると言うわけでもないのに――。
「誇りなんかあったって、助かる確率が上がるわけじゃない……」
 心持ほっとしたように、バラムが小さく溜息を吐くのが聞こえた。
 そうか、そうだな、と呟いて、すっとナイフが下ろされる。
 そしてそれが完全に降ろされる直前に――千宏はそれをひったくった。
「でも、誇りがなきゃ生きていけない――生きていけないんだ! なんでもいい、一つでいい
から、なにか誇れる物がなきゃ壊れちゃうんだ! そういう生き物なんだ!」
 尊厳が欲しいと思った。
 奴隷なんて嫌だ。ペットなんて嫌だ。
 そう思い続けなければ、とても正気を保っていられない。
「守ってもらわなきゃいけないから、一緒にいるなんて嫌だ。一緒にいたいからいるんだ。そ
うやって思わなきゃ、変になる」
「……そうか」
「大体、ペットとして登録したって、しなくたって、襲われる可能性があるのは同じじゃない
か! それなのに襲われたらもうアウトなんて冗談じゃない! 襲われたって逃げ出すチャン
スくらい欲しいじゃんかよ! たとえ可能性ゼロコンマいくつだってさ!」
「そうだな」
「そうだよ!」
「チヒロ」
 カチン、と首輪の外れる音がした。
 するりとそれが引き抜かれ、涙で張り付いた前髪を、バラムが指先でそっと払う。
「だったら働け、穀潰し」
 に、と意地悪く笑う。
 その言葉に、表情に、千宏はしばし唖然とし――堪えきれずに吹き出した。


                ***


 全体的にゆったりとしたローブのような服の上から、更にだぼっとしたフード付のケープを
かぶると最早首輪の有無どころではなく、千宏の種族は愚か性別さえ分からない有様だった。
 生地が薄手なので暑くて死ぬ――ということは無いが、これが中々に鬱陶しい。
 私が絶対に守ってあげるからね、と意気込むパルマについて二週間ぶりに市場を訪れ、やは
り変わらず獣臭いという印象を受ける。
 しかもパルマが店を開くのは、トラの中でも飛びぬけて大柄と思しき連中の徘徊する一角である。
 バラムとは違い業者から移動式の簡易屋台を借り、パルマはそこに獣の爪やら牙やら鉱石や
らのサンプルを並べ、それらの前に値札を置いて設営を完了した。
 その設営の完了を待ってましたとばかりに、一人の虎が寄ってくる。
 黄色に黒の縞模様。少し、腹部に広がる白い毛の部分が多いだろうか。アカブよりも若い印
象がある。
「ようパルマ! この前頼んでおいた薬草、どうなってる」
「入ってるよ。グラム五十センタ。上限は千グラム」
「五百もらおう――新しい下働きか?」
 その、若い虎男が千宏を見止め、胡散臭そうにヒゲをひくつかせた。
「新しい家族。チヒロって言うの」
「チヒロぉ? なんだ、キツネか?」
「なんで私がキツネなんかと家族にならなきゃいけないんだよ! 親戚だよ親戚」
 だろうな、だと思った、と男が笑う。
469とらひとsage2007/09/18(火) 20:27:43 ID:zGD64jcP
「パルマぁ! カッシルの爪五十本取り置きしといてくれ!」
 雑踏のどこかからそんな声が上がる。
「パルマ! リーンバルの粉末が入ってねぇか!」
 間髪いれずに、別の所から声が上がる。
 ふりふりと尻尾をゆらして在庫を確認しながらそれらの声に返事を返し、パルマは頼まれて
いた薬草とやらを男に渡して代金を受け取り、売り上げ袋に押し込んだ。
「なんつー熱気……いや、殺気」
「この辺りじゃうちの森でしか取れない品もあるからね。割と争奪戦だったりするんだ」
「リーンバル鉱石とか?」
「そうそう。そんなの」
 リーンバル鉱石は非常に硬い鉱石で、硬すぎて物品への加工はまず不可能であると言う。
 だがその堅さゆえに脆く、砕いて砕いて粉末にすると高級研磨剤として役に立つ。
 その粉末でコーティングした物は丈夫で錆びにくく長持ちするらしく、需要に対して常に供
給が足りないらしい。
「で、グラム三百センタもするんだっけ」
「研ぎ師には垂涎物だもん。国境市だと倍以上の値が付くよ」
 それは凄まじい差である。というか凄まじい高級品である。
 雑誌を見た限りでは一セパタで安物の服が一着買えることも少なくないのだから、百グラム
で三十セパタは相当な物だ。
 更にその倍ともなれば――。
「お嬢さん、リーンバル鉱石の粉末を売ってるのかにゃ?」
 不意に、パルマを照らしていた日が翳り、そんな甲高い声が頭上から降ってきた。
 見上げた先には――これは、なんと言う生物だろう。
 猫――いや、毛むくじゃらのトロルだろうか。でっぷりとしていて、もさもさとしていて、
たまらなく可愛らしい。ぬいぐるみ然としている。
「是非売って欲しいにゃぁ。あれは中々手に入らないレア物にゃ」
 にゃ――てなんだ。何故語尾ににゃがつくんだ。わざとか。癖か。それともこのトロル猫も
どきは語尾ににゃをつける習慣があるのか。
 下らない事をぐるぐると考えながら、唖然とする千宏を他所に、パルマはあからさまに不快
そうに巨大なぬいぐるみを睨み上げた。
「お生憎様。私詐欺師に売る商品はもってないの」
「詐欺! 失礼にゃー! 私がいつ詐欺を働いたにゃ!」
「ちょっと、このあたりで有名になってるの知らないの? わけの分からない落ちモノ商品で
ブツブツ交換持ちかけてきたり、物価が変動したとか大嘘付いて半値以下でもってったり!」
「それは物の価値の分からない奴が悪いにゃ。物価が常に変動するのも商人なら知ってるはず
にゃ! だけどリーンバル鉱石は常に高級品にゃ。グラム百センタは出すにゃー」
「信じられない! 国境市でいくらで売られてるか知らないとでも思ってるの? 話にならな
い。商談決裂」
「まま、待つにゃ! 今のは冗談、冗談にゃー。ちょっとお嬢さんを試してみたにゃ。そっち
の言い値をまず言うにゃー」
「グラム八百センタ」
 平然とふっかけたパルマに、千宏はフードの奥でぎょっとした。
「は、八百! 冗談じゃないにゃ! そんなんじゃ足が出るにゃ!」
「だったら買わなければいいじゃない」
「そう言われると弱いにゃー。わかったにゃ! グラム三百は出すにゃ!」
 規定値である。
 しかしパルマはつんとそっぽを向き、一切話を聞こうともしない。
470とらひとsage2007/09/18(火) 20:28:17 ID:zGD64jcP
 ふっかけて規定の値段を払わせようとしているわけではなく、パルマは純粋に取引をするつ
もりが無いのだ。
「常識的に考えるにゃー! 八百なんて値で仕入れたら例え一セパタで売れたって大した儲け
にはならないにゃ! 手間賃を考えたら明らかに損にゃぁ!」
 もふもふと肉と毛の塊が地団駄を踏む。
「だから、だったら買わなければ――」 
「だって、この市場にはもともと他の物を買う予定で来てたんでしょ? 最初からリーンバル
の買い付けに来たわけじゃないんだよね。だったら足なんか出るわけないじゃん。もののつい
でにレア物を買って、もののついでに国境市で売りさばけばいいんでしょ? 棚から牡丹餅。
めっけもんじゃん」
 さっさと追い払おうとするパルマをそっと制し、千宏はずいと巨大なぬいぐるみの化物の前
に歩み出た。
「しし、しかしそんな値段で普段から取引してるのかにゃ? こんなど田舎にそんな値段で大
量に買いつけ出来る客がいるとは思えないにゃー」
「田舎だからこそ、大量に買うんじゃないか! 国境市までわざわざ行くのにどれくらい費用
がかかると思う? その分の費用を購入にまわせるんだから、国境市で買うより大量に購入で
きる。これって当たり前の理論じゃん」
「し、しかしだにゃー。国境市での相場がこの位だから、ここで八百で買うと――」
「別に国境市で売る必要も無いと思うけどね。例えばここで八百で買っておいて、国境市では
売らずに国境からすごーく遠い地域に持っていけば、リーンバルの入手難易度はぐっとあがる
わけじゃない? そこでだったら千五百や、二千くらいでも売れるかもしれない。割高に、ち
ょっとずつ、だけど沢山の人に売るってわけよ」
 立て板に水である。
 トロル猫のぱちぱちとはじき始めた見慣れたそろばんを失敬し、千宏は例えばグラム八百セ
ンタで購入し、二千センタ――つまりは二セパタなのだが――で売りさばいた場合の売上総益
をパチパチと弾いて示して見せた。
 これでも珠算は一級である。
「大量には要らないし、国境市まで行く気力はないけど、もしも持ってきてくれる人がいて、
ちょっとだけ売ってくれるなら喉から手が出るほど欲しいって人は、きっと沢山いると思うよ。
これは旅の商人じゃなきゃ出来ないけどね。おいしい話だと思うけどなぁ」
 む、むむむむ、とぬいぐるみが短い尻尾をぴくぴくと動かす。
「じゃあ分かった! あんたには負けたよ。初回得点で今回に限り七百五十で売ってあげる」
「にゃに! つ、つまり百グラム買った場合五セパタもお得にゃ! 怪しいにゃー。その値引
きには裏があるにゃね!」
「あぁー。ばれたか! 実はあんたが持ってるって言う、怪しげな落ちモノ商品に興味がある
んだ。それ、見せてくれない?」
 にぃいい、とトロル猫が歯をむき出して嬉しげに笑う。
 そうかにゃそうかにゃ、見たいかにゃ、とうきうきと担いでいた袋を下ろし、それを千宏の
前で広げて見せた。
「あたしはちょっと落ちモノ商品には詳しいんだ。マニアってやつでね」
「実は使い方が分からない物も結構あるにゃ。例えばこれ! ドーナツみたいにゃ。使い方は
不明にゃけど、キラキラで綺麗にゃ。沢山つなげてぶら下げると、とってもお洒落にゃー」
 CDである。しかも、恐らくデータ未挿入の、パソコン専門店で売ってるような上書き不可
のカラフルなディスクメディアである。
 なるほど、確かに使い方など皆目検討も付かないだろう。
「そしてこれ! こーやって紐をつけて振り回すと音がなるにゃ。ひょっとしたら楽器なのか
もしれないにゃ」
 ハーモニカである。この世界には無いのかと、少々意外だった。
 しかしそれもそうか、とも思う。この世界の男の容姿があれでは、口に咥えるタイプの楽器
はなかなか普及しないだろう。
「それ、使い方違うよ」
「にゃに!」
471とらひとsage2007/09/18(火) 20:28:55 ID:zGD64jcP
 ぶんぶんとハーモニカを振り回してご機嫌だった猫の顔が、驚愕に彩られた。
「じゃ、じゃじゃぁ、どうやって使うにゃ!」
「教えてあげたら、何か一つただでくれる?」
「それは無いにゃー。それはひどいにゃー」
「じゃあ教えない。その上値引きもしてあげない」
「あんた悪魔にゃ! 商売に魂を売り渡した生粋の商人にゃ! でも嫌いじゃないにゃー」
 悔しげにしながらも、嬉しそうににやにや笑う。
 それじゃあお願いするにゃと差し出されたハーモニカを受け取って、千宏は舌で舐めて唇を
湿らせた。
 蝶々くらいしかふけないが、まぁそれで十分だろう。
 ファミミレララ――が出だしだったように思う。ファの位置は何処だったか――。
 汚れている口部分をローブの袖でごしごし拭い、千宏はかぷりとそれを咥えて音を確かめる
ように端から端へと順に息を吹き込んだ。
 おおおお、と歓声が上がる。
 今気が付いたが、大量の野次馬が出来ている。
 固唾を呑んで見守る群集の中、緊張で心臓が高鳴るのを聞きながら、千宏は一世一代のハー
モニカの演奏会を開始した。
 単調なリズムで数フレーズ。

 ちょうちょ ちょうちょ なのはにとまれ。
 なのはに あいたら さくらにとまれ。
 さくらのはなの はなからはなへ。
 とまれよあそべ あそべよとまれ。

 少し失敗したが、まぁふけた。
 ハーモニカから唇を離して顔を上げる。
 瞬間――地を揺るがすかと思う喝采に飲み込まれ、千宏は思わずフードの上から耳を覆った。
「す――素晴らしい! 素晴らしいにゃ! まさかこんな素晴らしい楽器だったとは思いもし
なかったにゃ!」
「すごーい! チヒロ凄い! 凄い凄い! なあに今の曲? 凄く可愛かった!」
「いいもん聞かせてもらったにゃー! なんでも好きなの持ってくがいいにゃ!」
「は、はぁ……」
 蝶々だぞ。ただの。しかも音を繋げただけの単調な演奏だぞ。
 度を過ぎた賞賛のあらしにやや仰け反りながら、千宏はありがたく袋の中身を物色した。
 それにしても、見事にガラクタばかりである。
「うげ」
 ガラクタに埋もれた奥の更に奥の方に、漫画や映画で見慣れた黒い輝きを発見し、千宏は思
わず手を引いた。
 拳銃である。
「うわ……こんなのも落ちるのかよ」
 誰がどんな状況で落としたのかは知らないが、落としたのが警察官で無い事を祈っておこう。
一応。その警察官の将来のために。
「って。なんだモデルガンか」
 リボルバータイプのモデルガンだ。シリンダーの弾を込める部分に金属でふたがしてあり、
弾を込めても打ち出せないようになっている。
 モデルガンを袋の中に丁寧に戻し、ふと、千宏はかわいらしい布張りの小箱を目に留めた。
 手にとってみると、ずしりと重い。
 ひっくり返してみると、裏にまいてくださいと言わんばかりのネジまきがあるのだが――残
念ながらつまみが折れていてまわせそうに無かった。
 だが、間違いなくオルゴールの小箱である。
472とらひとsage2007/09/18(火) 20:29:33 ID:zGD64jcP
「これでいいや。この箱頂戴」
「にゃ。それの何処に魅力があるにゃ。後学のために知りたいにゃー」
「ただのオルゴールだよ」
「にゃに! だって音なんかならなかったにゃ!」
「ゼンマイが切れてるし、ねじまき折れてるからね。これもらうよ」
「そ、そんにゃ……」
 落ちモノオルゴールなんて絶対高値が付くのにぃ、と猫が泣きそうな声を出す。
 ションボリとしながらも、しかしどこか嬉しそうに弾みながら、猫のぬいぐるみは千グラム
のリーンバル鉱石とハーモニカを手に野次馬をかき分けて去っていった。
 なんだなんだ、もう終わりか、と野次馬達がざわめきだし、わらわらとばらけて行く。
 手に入れたオルゴールをどうやって鳴らそうか考えをめぐらせていると、突然パルマが感極
まって悲鳴を上げた。
「すごい! 本当にすごい! 信じられない! チヒロって商人だったんだ!」
「え? いや……ただの学生だったけど……」
 確かに、受けた大学は国立の経済学部ではあったけど――。
「あの嫌なネコ商人に高値で売りつけてやっちゃった! すごくいいきみ!」
 あぁ、やはりあれは猫なのか。
 猫の獣人はもっとスマートで、もう少しまともにネコっぽいのを想像していたのだが――。
「でも、さっき言った通りにすれば普通にあのネコ儲けると思うよ」
「ええ! そうなの?」
「高級なものを大量に買えないから、ちょっと割高でも少しだけ買うって人は、絶対にどこか
に――しかも結構な人数いるはずだから」
「そっかぁ。そうだよねぇ。チヒロ頭いいねぇ」
 パルマがしきりに感心する。
 これは千宏の頭がいいと言うより、元の世界では商売の常套手段だ。
 この世界ではその手段が未だに普及していないのか、それともトラが商売に疎いだけなのか
千宏には分からなかったが、まぁ恐らくは後者だろう。
「おい」
 興奮冷めやらぬといった様子でうきうきと仕事に励むパルマの横で、細々とした雑用をこな
していると、不意に野太い声が頭上から降ってきた。
 首を反らせて振り仰ぎ、凶悪な虎男と数秒間見詰め合う。
「――なにか?」
 首をかしげると驚いたように目を見開き、虎男は急に不審な挙動を取り出してわたわたと背
後を振り返った。
 ちょっと来いと合図するようにしきりに手を振り、そして二人の虎がかけてくる。
 これでどうだと言わんばかりに、最初の男が千宏を見下ろした。
 全く意味が分からずに再び首をかしげると、そいつは明らかに困惑した様子で背後の二人を
振り返り、ぼそぼそと相談し始めた。
 やっぱり違うんじゃねぇか、だとか。
 だってパルマと一緒にいるぞ、だとか。
 ショックで記憶を失ったんじゃ、だとか。
 聞こえてくる言葉も全く要領を得ない。
「あの――商談だったらあたしじゃなくてパルマに――」
「二週間前――市場の外れで会っただろう……」
 ぞく、と背筋が凍りついた。
 思わず足がじりじりと後退する。
 その様子にようやく確信を得たように、三人は自信を持って頷きあった。
「ちょっとあんたたち! でかい図体三つ並べてか弱い女の子を囲むなんてどういう神経して
るわけ? チヒロ怖かってるじゃない!」
 異変に気付いたパルマが千宏の前に立ちはだかり、威嚇するように低く唸る。
 青い顔で三人を凝視する千宏のその眼前で――唐突に、三人が一斉に膝を折った。
「すまんかった!」
 虚をつかれて面食らい、何事かとパルマと顔を見合わせる。
 真ん中の男――他の二人よりも大柄だろうか――が顔を上げ、悲痛といおうか、今にも首を
くくりそうな表情で千宏を見た。
473とらひとsage2007/09/18(火) 20:30:08 ID:zGD64jcP
 瞳の色が吸い込まれそうなほど、鮮やかに青い。
「あんたにも生活があったんだよな、家族がいたんだよな。俺たちそんなこと考えもしねぇで、
あんたがヒトってだけでよぉ。飼って奴隷にすんのがあたりまえみてぇに思っててよぉ」
 う、うぅ、と涙ぐみ、ついにはおいおいと泣き始める。
 もらい泣きとばかりに背後の二人もぐすぐすと泣き始め、千宏は再び周囲から注目が集まり
はじめるのを意識して狼狽した。
「ちょっと! なんであんた達チヒロがヒトだって――」
「パルマ! しー! しー!」
 頼むから市場の真ん中でヒト、ヒトと連発するのはやめてくれと懇願すると、パルマはいけ
ない、と口元を押さえ、あんたたちのせいだからねと虎男達をげしげしと足蹴にした。
「俺たちぁアカブに殺されかけて目が覚めた! きっかけは確かにあいつの言葉だが、これは
脅されての行動じゃねぇ! 俺達の誇りにかけて、あんたのこの市場での安全は俺たちが保証
する!」
「えぇ! い、いいよ別に。いらないよ! っていうかよるな! 近づくな!」
 立ち上がってずいと距離を詰める男から大慌てで距離を取り、パルマの背後で縮こまる。
 アカブの言っていた“手を打っておいた”とは、つまりこういう事か。
「いいんだ。怯えられてる事は分かってる。許してくれとは言わねぇ。俺たちは取り返しの付
かないことをやっちまったんだ」
 その、妙に聞き分けのいい態度をやめてはくれないだろうか。
 こんなにも潔く謝られ、清々しく自身の非を認められては、許さなければまるで千宏の方が
心の狭い悪者である。
「チヒロ。ねぇ、こいつらに何されたの?」
 こそこそと声を殺して聞いてくるパルマに、
「強姦されかけた」
 と簡潔に答えると、パルマは尻尾を逆立ててきっと目を吊り上げた。
「信じられない! 最低! 最悪! チヒロが二週間も寝込んだの、絶対あんたたちのせいだ
からね! 本当に死んじゃう所だったんだからね!」
「うう、すまねぇ! 本当にすまねぇ!」
 二週間のうちの一週間は、明らかにパルマの頭痛薬が原因なのだが――。
 そろりと、バラムにもらった腰のナイフに手を伸ばす。
 その、千宏の小さな手ではひどく握りにくいグリップをしっかと握り、千宏は意識して呼吸
を整えながら三人の虎男達を見下ろした。
 千宏に虎人間の美醜はよく分からない。
 だが見下ろした三人の虎達は千宏から見ればどう見ても虎で、かわいい猫の巨大版である。
 そんな虎たちが、まるで雨の日に捨てられた仔猫のような目で千宏を見つめ、許しを請う。
 反則では無いか――反則だ。これはずるい。
「――名前は?」
 ぴくん、と、長くて立派な尻尾が嬉しげに跳ね上がる。
「許してくれるのか!」
「別に、もともと怒ってるわけじゃないから……怖いけど」
「ちょっとチヒロ!」
「だって、冷静に考えてみれば申し出はありがたいし、アカブに何か脅されてるんでしょ?」
「そうなんだ。もしも市場でチヒロが誰かに襲われたら、俺達全員の目玉くりぬいて目の前で
食ってやるって――」
「黙ってろカアシュ!」
 後ろで平伏していたやや――本当に極僅かに小柄な虎を、手前の虎が怒鳴りつける。
「さっきも言ったが、この際あの野郎の脅しは関係ねぇ。俺は俺達の誇りにかけて、あんたを
守ると誓うんだ。こいつぁ償いだ!」
 なんとも暑苦しい限りである。
474とらひとsage2007/09/18(火) 20:30:45 ID:zGD64jcP
「守ってくれるって言うなら、素直に好意は受け取るけど……でも条件がある。まだあんた達
見ると体が竦むし、吐き気するから、あたしの半径三メートル以内に近づかないで」
「かまわねぇさ。十分だ! 俺たちゃイヌの軍隊よりも頼りになるぜ!」
「三人纏めてアカブにのされたくせに」
 立ち上がって胸を張った男に対し、パルマが冷たく言い放つ。
 あいつは犬の軍隊よりもつえぇんだよ、とぎゃあぎゃあと怒鳴りあう二人を放置して雑務に
戻った千宏の唇にうっすらと笑みが刻まれていた事は、フードに隠され千宏自身も気付く事は
なかった。


                  ***


 別に区別をつける必要も無いだろうと思ったのだが、名前を聞いてしまった以上はやはり覚
えるのが礼儀だろうという妙に律儀な性格ゆえ、千宏は三人の特徴と名前をメモに取って持ち
歩く事にした。
 カアシュ――と怒鳴られたやや小柄な虎は随分と陽気な性格で、きっちりと三メートルの距
離を保ったままあれこれとヒトの世界の事を聞きたがった。
 リーダー各と思しき大柄な虎はカブラといい、バラムに向かって“ケツに突っ込んでやる”
と言った強者だ。
 最後の一人はブルックと名乗り、肉食獣の化け物の分際でバードウォッチングが趣味だとぬ
かすふざけた男である。
 そう言えば、とふと思い、あれがあたしのファーストキスだったんだよねと呟くと、ブルッ
クは愕然と硬直し、他の二人およびパルマにぎたぎたにされながら「俺は性根の腐っただめな
野郎だ」と繰り返した。
 どうやらヒトにとってファーストキスが重要な意味を持つ事は、全員知っていたらしい。
 日が暮れ始めて店を畳み、馬車まで移動する間まで三人は律儀についてきた。
 守られているというよりも狙われている、監視されているという印象が強いのは、やはりマ
イナス方面の先入観が強いせいだろう。
 バラムと市場に来る時も側にいるのかと問うと、カブラはあたりまえだと頷いた。
 バラムの不機嫌顔が目に浮かぶようである。

 家に帰り着いて荷を降ろし、パルマは早速今日の出来事を洗いざらいすっかりとアカブに向
かって並べ立て、チヒロったら本当に凄いんだからとまるで自分のことのように胸を張った。
 バラムが袋にぎっしりと怪しげな薬草を詰めて帰ってくると同じように事の顛末を話して聞
かせ、しまいにはハーモニカが欲しいとまで言い出した。
 そんなパルマの話にアカブとバラムは微笑ましく耳を傾け、言葉少なに、しかし心から千宏
を労い、よくやったと褒めてくれた。
 それがひどくくすぐったくて、だけど妙に嬉しくもあり、なんとも言えず心地よかった。
 ネコの商人から巻き上げたオルゴールをバラムに見せ、つまみの部分が折れているんだとう
ったえると、バラムは箱を持ったまま一人で倉庫に向かい、数十分もしないうちに戻ってきて
直ったぞとオルゴールを千宏に手渡した。
 裏を見てみると言葉どおり、簡素ではあるがちゃんとネジまきが付いている。
 どうやって直したのかと聞くと、水をかけると金属のように硬くなる粘土があるのだと言う。
建築物の接着剤にも使われる事があるらしく、強度は折り紙つきだとバラムは笑った。
 パルマにせがまれてつまみを回し、蓋を開けた瞬間に流れる安っぽい旋律。
 所々針が折れ、歯抜けになったメロディー。
「なんか楽しい曲だね」
 うきうきと尻尾を揺らしてパルマが言う。
475とらひとsage2007/09/18(火) 20:32:18 ID:zGD64jcP
「なんて曲かわかるか?」
 バラムの問いかけに、千宏は迷うことなく頷いた。
 曲も、曲に付随する物語も大好きなバレエ組曲。
「くるみ割り人形」
 パルマがきょとんと目を見開き、変な名前、と唇を尖らせる。
「音楽で物語が作ってあるんだ。クララって女の子が夜の十二時に小さくなって、悪い奴らが
やって来て、くるみ割り人形が動き出して玩具の兵隊といっしょにそいつらをやっつける。最
後は悪玉のボスとくるみ割り人形の一騎打ち。危なくくるみ割り人形が倒されそうになった所
をクララが助けに入って、悪い奴は倒される」
 オルゴールの旋律にあわせ、くるみ割り人形の物語を語る。
 やってきた悪い奴らはネズミの大群なのだが、この世界的にその表現はまずいだろう。
「そしたらくるみ割り人形は王子様に変身して、クララは一緒にお菓子の国に旅に出るんだ。そこで色んな妖精に会って、歓迎されて――」
 そして、自分の世界に帰るのだ。
 オルゴールの旋律が徐々に緩やかになっていき、針がのろのろと、だらだらとプレートを弾
いて最後に引っかかるようにして止まる。
 こん、とオルゴールを軽く叩くと針にひっかかっていたプレートが弾け、調子の外れた一音
だけを叫んで沈黙した。
「歓迎されて、どうなるの?」
 不思議そうにパルマが聞く。
 静かにオルゴールを胸に抱きこんで、千宏は平然と笑って見せた。
「王子様とお菓子の国で、末永く幸せに暮らしましたとさ」
 さして不思議がる風もなく、ふうん、とパルマがふりふりと尻尾を振る。
「もし私が男だったら、チヒロの王子様になってあげたのにな」
「おまえが男だったら、そもそもこの家にいねぇだろうが」
 呆れたようなアカブの言葉に、ああそっか、とパルマがとぼけた声を出す。
 誰からともなく明日以降の予定の話になり、パルマがお腹がすいたと騒ぎ出し、食事をして、
風呂に入り、千宏はオルゴールと共に自室に戻ってきた。
 かちかちとつまみを回し、ベッドの脇にある小さなサイドテーブルに金属で縁取られた布張
りの箱をちょこんと据え置く。
 蓋を開けて溢れ出したくるみ割り人形の物語に浸りながら、千宏はベッドに身を沈めた。

切らせていただきます。
以上でとりあえず一区切り。

476名無しさん@ピンキーsage2007/09/19(水) 03:54:05 ID:qoTVRM71
>師走氏
大量投下お疲れさまです
>「どうだ、ヘヴィゲージの弦の味は?」
なんというロック魂、そんな羊司にシビれる憧れる!
でも一瞬、仕事人でおなじみの組紐屋のあの人の姿が脳内を過ったのは内緒だ。
ひつじの人が登場するのは2人目ですね、のほほほんとしたり、どっか抜けてて
おちゃめな種族というイメージですが、この苦しい状況下で、どのようにして
コリンが羊司と共に困難を乗り越えて行くか、期待して次回をお待ちいたします。

>とらひと氏
ヒト区切りまでの大量投下、乙です!
よかった、物語的にすごくよかった、自分的にものすごく良かった。
決意のシーン、市場での丁々発止、最後のシーン
話を噛み締めて、余韻に浸れました。

たまたまとは言え、上のお二方の話のキーになったのが音楽と楽器。
バレリアと"むっつり"バダルさんを思い出します。
あの二人も何処かで歌っているでしょうかねぇ。
477名無しさん@ピンキーsage2007/09/19(水) 12:01:45 ID:H+ehlK2r
お見事です! ラストシーンの心情を思うとじんわりと心の汗が……
トラ三人組の荒くれ者っぷりが格好いいやらかわいいやら。いい脇役として活躍してくれそう。
しかしチヒロ、適材適所な落ち方をしてきたんだなぁw
478名無しさん@ピンキーsage2007/09/19(水) 15:06:54 ID:CRZGKdJK
トロル猫
トロルネコ
トルネ……いやなんでもない
479名無しさん@ピンキーsage2007/09/19(水) 15:34:31 ID:FQZPYWWR
襟首掴んで、不思議なダンジョンにラチカンキーン
480名無しさん@ピンキーsage2007/09/19(水) 19:18:34 ID:lpP9KoM0
GJ

踏んだり蹴ったりだったチヒロの活躍するところが見れて本当によかった
そして発情期編のラッキーアクシデントに期待
481名無しさん@ピンキーsage2007/09/20(木) 15:43:26 ID:LWZ9IpEc
GJ!
三人組が来たときはどうなることかと思ったけど、いい話だなあ。
前半の重さを後半のネコとのやりとりで中和していて、読みやすかったです。

「人用の薬=ヒトには超効く」という伏線に>>480と同じくwktk
482名無しさん@ピンキーsage2007/09/20(木) 16:22:20 ID:WmvaQmIF
そういう伏線は気が付いても黙っておいてあげないとw
さらなる展開に期待一杯だな。
483岩と森の国ものがたり・15sage2007/09/22(土) 11:11:22 ID:FsL1F/vO
今のうちに投下。
ttp://0cgi.net/rent_h/bbs/sr3_bbss/sr3_bbss/31nachtum/59_1.txt

注意事項としては
・獣×獣の凌辱有
・ヒト登場場面少な目(主役かぽ未登場)
・設定回のため、盛り上がり等は少ない
……ってところでしょうか。

あと、作品内でフロミアの設定を使用してくれたある職人の方に謝意を込めて、ちょっとしたクロスオーバーをやってみました。
手紙を書いたのが誰かは、ご想像にお任せします。
484名無しさん@ピンキーsage2007/09/22(土) 16:14:26 ID:OdZX4JXQ
話が途中で切れてね?
485名無しさん@ピンキーsage2007/09/23(日) 06:00:30 ID:c34q/ZND
>>484
あ、いえ、今回はここまでで一つの回です。
486名無しさん@ピンキーsage2007/09/23(日) 13:55:23 ID:eieAwn6U
とりあえず敢闘賞でGJ!しておく。

でも、文末は

> 首都ライファスのあちこちで、それぞれの思いが交錯しつつある。

で正しいのかな?
これで文章を〆るなら、文末を

> 首都ライファスのあちこちで、それぞれの思いが交錯しつつあった。

にするべきじゃないかと思うが、どうだろうか。

487名無しさん@ピンキーsage2007/09/23(日) 13:58:19 ID:NBIcs3F+
というか改行して欲しいとオモタ
正気読み辛いッス
488名無しさん@ピンキー2007/09/23(日) 19:01:49 ID:ozekyjMS
最近の読者は遠慮ってもんが無いな
だがそこが良い
偽善は世を腐らす毒だ
はっきり言える読者が揃ってて大変宜しい
489名無しさん@ピンキーsage2007/09/24(月) 11:46:18 ID:vA0JH8/T
>>483
乙〜。
嵐の前の静けさだねい。
490名無しさん@ピンキーsage2007/09/25(火) 12:53:52 ID:4G5zolIG
ところで、獣毛の上からセーター着たら脱ぐときに静電気が物凄いことになりそうだなw
491名無しさん@ピンキーsage2007/09/25(火) 20:29:19 ID:61yuZ7GS
>>490
化学繊維のセーターは、流石にまだ無いだろう。
492名無しさん@ピンキーsage2007/09/25(火) 20:48:53 ID:U0i1TgMk
つ[落ち物のセーター]
493名無しさん@ピンキーsage2007/09/25(火) 21:28:44 ID:h7noOo6p
狐で書きたいって言ってもおkかね?
494名無しさん@ピンキーsage2007/09/25(火) 21:34:04 ID:61yuZ7GS
>>493
止めるやつぁいねえと思うですだよ。
495名無しさん@ピンキーsage2007/09/25(火) 22:51:27 ID:3J1yNsVZ
>490-492

毛糸の原料を提供するために自らの体毛をバリカンで刈って売るヒツジの姿を幻視した
496名無しさん@ピンキーsage2007/09/26(水) 08:04:43 ID:VVlmA/YD
間違ってヒトのメスなんか拾ったばっかりに……
「せっかくぎょうさん伸ばしたわいの毛を切らなあかんのや……」
それでもどこか嬉しそうなそのヒツジは床屋のドアを開けたのだった。
「おう! ご苦労やけど、わしの毛をばっさりやってくれんかのぉ」
「刈れゆうんやったらやらんこともないが、ほんまにええんかのぉ」
「ええちゅうてるやろがい、ばっさりやったらんかい」
「じゃけん、これから冬やきに寒いけん、平気か?」
「……あっ、あいつが暖めてくれるけん……」
「あっついのぉ、しばきあげるけん、さっさと座らんかいボケ!」

こうですか?w
497名無しさん@ピンキーsage2007/09/26(水) 08:45:40 ID:Uhr0sASB
ウホッ、これは男気溢れるイイご主人
末永くお幸せに
498名無しさん@ピンキーsage2007/09/26(水) 17:59:18 ID:sNlc9mSu
そういや方言キャラって新鮮だな。
499名無しさん@ピンキーsage2007/09/26(水) 21:41:16 ID:PuwisJO+
>>498
漢字変換が大変なので、書き手としてはやりたくないんだよね。
500名無しさん@ピンキーsage2007/09/26(水) 23:17:54 ID:cVjH8M93
>496
ヒツジの獣人のオッサンが顔を赤らめて剃毛されるのを幻視した
501名無しさん@ピンキーsage2007/09/27(木) 04:30:17 ID:TOt2/4Ge
エロ
are you の美沙紀 シリアス口調の時がたまらない
オムライスお姉ちゃん なんだかんだ行って最後に甘えさせてくれる母性
SOSの千夏 その気が無い振りして実は誰よりも弟を独り占めしたい
ゲーム
サモ3 アズリア隊長 弟があれじゃなかったらもっと良かった
幻水2 ナナミ 血は繋がっていないがお姉ちゃん風吹かせまくり
WA3 マヤ 横暴、だがそれがいい
502名無しさん@ピンキーsage2007/09/27(木) 04:33:24 ID:TOt2/4Ge
すまん誤爆した。
とりあえず俺が年上攻めX受けショタが目的でこのスレを見ているということはよく分かってくれたと思う。
503名無しさん@ピンキーsage2007/09/27(木) 10:14:08 ID:Tp+hqGll
>>502
その要望に合うのはこちむいだけのような……
504名無しさん@ピンキーsage2007/09/27(木) 12:11:19 ID:qDiVRxlI
>>503
初期の作品には多いぞ
505名無しさん@ピンキーsage2007/09/27(木) 22:06:28 ID:htGeCdJD
初期は腐女子ホイホイだったからなw
最近やっとまともになってきてる気がする
506名無しさん@ピンキーsage2007/09/27(木) 22:44:14 ID:Tp+hqGll
とりあえず>>505>>502に謝るべきだと思う
507名無しさん@ピンキーsage2007/09/27(木) 23:48:02 ID:wq5s6Dj8
バカとキチガイが謝罪を強要しだすと、とたんにスレの雰囲気がグダグダになる気がす…
まぁそれはいいとして、ショタ+ロリ+ペドの3悪ってすでに必要悪になってるな。
508名無しさん@ピンキーsage2007/09/28(金) 00:02:18 ID:KgHfseDh
え、悪だったの?
509名無しさん@ピンキーsage2007/09/28(金) 02:28:56 ID:xEXZrWXD
全部大好物な俺はここにいてはいけないんだな


ちょっと大陸西方の樹海行って来る
510名無しさん@ピンキーsage2007/09/28(金) 02:28:57 ID:tFOma+O/
>>507
近代以降の倫理をふぁんたじぃに持ち込まれても困る。
511名無しさん@ピンキーsage2007/09/28(金) 08:12:45 ID:NgWkszQz
>>509
樹海に着くにはまず砂漠か山岳地の戦場を抜けなきゃならないわけだが…


それはともかく、ショタって何歳までがショタ?
512名無しさん@ピンキーsage2007/09/28(金) 09:44:18 ID:Tk9qNKyR
とある女装少年エロ漫画家によれば、大学生ぐらいも場合によってはショタになるとか。
513名無しさん@ピンキーsage2007/09/28(金) 12:07:37 ID:NgWkszQz
>>512
個人的に、レーマやトールはショタの部類だと思ってたけど、
そうなるとサトルも実はショタに入るのか……
514名無しさん@ピンキーsage2007/09/28(金) 12:35:41 ID:4HERDWJQ
サトルは場合によらない方のケースだろw

ショタといえばピューマの女王様は有名なショタ喰らいらしいが
作品内ではまだリアルに描写される機会がなくて非常に残念だ。
515名無しさん@ピンキーsage2007/09/28(金) 16:13:43 ID:Tk9qNKyR
そういや童貞キャラっていたっけ?
まぁエロパロなんだからそういうキャラが少ないのは道理なんだが。
516名無しさん@ピンキーsage2007/09/28(金) 18:00:21 ID:4tc/fJSz
童貞でも食われますよね、性的な意味で
517名無しさん@ピンキーsage2007/09/28(金) 19:04:33 ID:1iua81AK
>>515
推測だが、ラスキエルト主任。
518名無しさん@ピンキーsage2007/09/28(金) 23:20:59 ID:tqrJ7Qi1
いわゆるショタキャラの筆頭といえばこちむいのぼくとかソラヤが最強だろね。
ショタ喰いだと、厄日にゃんこに出てくるネコの貴婦人(?)が強まってるかもしれん。
童貞と言うと、作品当初のヨシヒトは童貞だった気がするけど、あれは何への伏線なのかが気になる。
519名無しさん@ピンキーsage2007/09/29(土) 00:42:01 ID:7xqgMtSt
>>511お前さんロリって何歳くらいまでがロリかって言われた時のことや、何歳くらいからの少女が好きならロリコンなのかとかいう定義を考えてご覧なさいよ。
これはやっぱ人それぞれなんじゃなかろうか。


ちなみに俺の中では
童顔+幼児体型+色んなトコがツルツル(+女装したら女の子に見える)=ショタかなと。
520名無しさん@ピンキーsage2007/09/29(土) 01:19:37 ID:maEbS3q5
>ロリって何歳くらいまでがロリかって

ロリータコンプレックスという言葉の元になった小説の内容を鑑みれば、12〜18才くらいの女の子がロリってことになると思うが
ショタはまんまロリの性別反転で良いと思う
11才以下の少女(幼女)にハァハァするのはぺドフィリアと呼ぶべきだな
521名無しさん@ピンキーsage2007/09/29(土) 08:53:52 ID:r0lrTF9l
クシャスラたんはロリなのかペドなのか、微妙なところ。
522名無しさん@ピンキーsage2007/09/29(土) 16:32:44 ID:5UlF5nMe
ちょこちょこしたアイディアは浮かびますが、
それを繋げていくとすぐさま駄目になる俺に何かアドバイスをくださいませ。
523名無しさん@ピンキーsage2007/09/29(土) 17:20:06 ID:/qu09mlv
そういうこと聞く場所はここじゃないと思うぜ?
524名無しさん@ピンキーsage2007/09/29(土) 20:28:02 ID:P6D+r42a
ジーきゅんの中身はショタだと思う
525名無しさん@ピンキーsage2007/09/30(日) 10:29:10 ID:31I8uPYr
>>522
繋げようとしないで、一つを膨らませろ。
526名無しさん@ピンキーsage2007/09/30(日) 22:24:12 ID:eaAriNwB
いっそのこと短編にしてしまえ
527名無しさん@ピンキーsage2007/10/01(月) 12:13:47 ID:uf3fnodR
この世界における、自分の考えはすごく甘かったんだなぁとか、
『何にもしなくていいから、ずっとここにいていいよ』という
ご主人様の(ありがたい?)言葉も、別の面から考えたら酷いもの
なんだよなぁとか、いろいろ考えさせられました。

自分が落ちたら、確実に自殺とか考えそうだなぁ。
なんか欝だ…。
528とらひとsage2007/10/01(月) 16:24:13 ID:Q7Rx+5Q8
エロ無し注意


 千宏がフードをかぶって市場に出るようになってから、一ヶ月と半分が過ぎようとしていた。
 文字の習得は遅々として進まなかったが商人としての成長は目覚ましく、ネコやキツネの商
人の相手は千宏にさせた方がいい――という結論に達するまでそれ程時間はかからなかった。
 元々、バラム達はネコやキツネが好きではない。
 好きではない者に相対すれば冷静さを欠くし、何せ相手は最初から騙しにかかってくる。そ
して騙しあいになれば、トラが敗北するのは目に見えているのである。
「ほほーう。クッキーに媚薬を混ぜるとは考えたわね」
 店の正面にしゃがみ込み、おいしそうなクッキーの袋を片手に感心しているのは金髪トラ女
のイシュである。
 常連客だとは聞いていたが、実際にバラムが店を出すとイシュは絶対に姿を見せる。
 なんでも香水の調合を手がけているらしく、バラムに香りの元になる植物の採取を頼む事も
多いらしい。
 当然と言おうか千宏は最初この女が苦手だったのだが、カブラがイシュを“万年発情女”と
罵り、イシュに「どんなに発情しててもあんたとだけはごめんだわ」と返されて落ち込む姿を
繰り返し見ているうちに、いつの間にか普通に話せるようになっていた。
 そんな風にこの世界に馴染むうちに、気付かなくてもいい事にも気付くようになってくる。
 例えば、下働きの虎男たちが、夜な夜な千宏を妄想のおかずにしているだとか。
「ねーぇ? この媚薬ってヒトにも効くの? ちょっと試してみてもいい?」
 例えば、イシュに貞操を狙われているだとか。
「最近バラムが相手してくれないから欲求不満なんだものぉ。知ってるチヒロ? マダラとの
キスってもう本当に蕩けちゃうんだから」
 例えば、バラムは気が遠くなる人数の女と寝ているだとか。
「ねーぇ。いつもの倍出してもいいからさぁ。今夜は付き合ってよ。ね? そこの路地でいい
からさぁ」
 例えば、その対価に金銭を得るほど求められているだとか。
 この世界のマダラとは、つまり女性のような容姿をしている、とび抜けて美しい男性だ。千
宏から見れば筋骨隆々の間違いようもない男でも、中性的という分類になるらしい。
 さすがにバラムほどの体格があれば女性と間違われる事は無いが、ネコの国で大人気だと言
うマダラネコの少年アイドルを雑誌で見せてもらった時には、柄にもなく悲鳴を上げて「超可
愛い」と絶叫してしまった程である。
 その、綺麗な綺麗なマダラと一発やれるならいくらでも金を積む――と言う女性がいても、
なんら不思議は無い。
 しかしどことなく、なんとなく、本当に主観的な価値観で、元の世界の常識に照らし合わせ
て考えると、千宏からすればあまり気分のいい話ではない。
 不潔だ――と思ってしまう。そう思う事がいかに失礼で非常識で馬鹿げているかという事は
理解できても、十八年間培われてきた価値観は一ヶ月そこそこでは変わらないようだった。
 実際、開き直ったつもりでいながらも、千宏は未だに処女である。
 襲われて犯される可能性がある事が分かっている以上、安全な道をとってバラムかアカブに
処女を奪ってもらうのがベストだと頭では理解しているのだが、どうにも踏ん切りがつかない。
 せめて向こうから襲ってくれればいいと思うのだが、バラムははじめての夜に千宏に猛烈に
拒絶された事を気にしているらしく、日が落ちてからは一人で千宏の部屋に現れないし、アカ
ブはなにせあの姿なので、千宏の方がその気にならない。
 虎に欲情できるほどには、まだこの世界に合わせて歪んではいなかった。
「あたしにも発情期ありゃよかったのにな」
 そんな呟きがついつい漏れる事もある。
 どんな間違いが起こっても『発情期だから』で済ませられそうだからだ。
 理性を保ったまま現状に合わせて価値観を、しかも自主的に変えるのは、想像していたより
もはるかに難儀である。
 結局その日もバラムはイシュの相手をせず、しかしイシュに言わせると“蕩けちゃう”よう
なキスを交わして店を畳んだ。
 律儀に三メートルの距離を保って護衛を続けているカブラ達が羨ましげに野次を飛ばしてい
たが、バラムは慣れているとばかりに一切反応を返さなかった。
 代わりに千宏が文句を言うのを止めに入る程である。

「発情期ってさ、どれくらい続くの?」
 帰りの馬車で外の景色を眺めながら、何となくバラムに問う。
 そうだなぁ、とふらふらと尻尾を揺らし、バラムは二週間くらいだなぁ、と呟いた。
529とらひとsage2007/10/01(月) 16:24:48 ID:Q7Rx+5Q8
「二週間……うわぁ」
「発情してる女は市場に立ち入りを禁じられるんだ。なんせ発情してる女が近くにいると男も
仕事にならねぇしな。まぁ、発情を抑制する薬もあるっちゃあるんだが、大概の女は社交場に
行って男を漁る」
「社交場?」
「恋人や夫がいる女ばかりとは限らねぇだろ? そういう場合は、まぁ金を払って男を買うこ
ともあるんだろうが、大概は社交場に集まって好みの男が来るのを待つんだ」
 男ならなんでもいいというわけではないのかと、千宏は妙に納得して頷いた。
 女の側に男の選択権があるのは、千宏の世界の猫達と変わらないらしい。
 ふと、疑問に思う事があった。
 これを聞くのは失礼にあたるだろうか。だが、聞かずにはいられない。
「――発情してれば誰でもいいの?」
「……なに?」
 意外と言おうか、怪訝と言おうか、そんな表情を浮かべてバラムがぴたりと尻尾の動きを止める。
「いや、ほら、男の人はさ、発情してる女の人だったら誰にでも欲情するのかなぁって……」
「否定はしねぇよ。個人で程度に違いはあるがな」
「そ……そうなんだ」
 そうか、するのか。
 それはつまり――。
「誰でもいいんだね……」
 別に、だからどう――という事は無いのだけれど。
 この世界の人間にだって、愛はあるだろうと思う。
 実際、家族愛や博愛ならば十分に見せてもらった。
 だが、男女間の愛の形が、千宏にはまだ理解できていなかった。
「大変だよね。だって、道ですれ違った女の人が発情してたらムラムラ来ちゃうんでしょ? そ
ういう時ってどうするの? 路地に引っ張り込んでやっちゃうとか?」
「そういう奴もいるかもな」
「バラムは違うの?」
「――女に不自由した事はねぇからな」
「あぁ、そう……」
 妙な苛立ちがあった。
 じりじりと悪意がくすぶり、誰かを攻撃したくなる衝動。
「そりゃそうだよね、お美しくも珍しいマダラ様だもんね」
「――おい、なんだその言い方」
「……別に」
 すいとバラムから視線を外し、千宏は見る物もない窓の外をじっと睨んだ。
 バラムも不機嫌そうに口をつぐみ、反対側の窓に肘をついて外を睨む。
 尻尾がぱたぱたと座席を叩く音と、馬車が道を走る音が沈黙を際立たせていた。
 悪い事を言っただろうか。バラムがマダラなのは、決してバラムのせいではない。
 謝るべきだ。謝ろう。
 そんな事を思っているうちに、レンガ造りの家が見えてきた。見えてしまえば到着するのは
あっという間で、到着するなりバラムは無言で馬車を降りていく。
 荷物を降ろして一人でさっさと歩いていくバラムの後を追いかける事が出来なくて、千宏は
数メートル後ろを黙ってついていった。
 いつも、扉を開けて待っていてくれるバラムが、今日はそんな素振りもない。
「なんだよ、あの態度……!」
 そんなに怒ることないじゃないか、と、身勝手な怒りにぶつぶつと文句を言いながら千宏は
重たい扉を苦労して押し開けた。
 やっと人一人通れる隙間を確保して、滑りこむようにして扉をくぐる。
「ああいう怒り方する奴が一番うっとおしいんだよ! 言いたい事があるならはっきり言えよ!」
 最早どこに行ったのかも分からなくなってしまったバラムの背中に、それでも千宏は自分に
言い聞かせるように声を荒げた。
 いつもはすぐに怒鳴るくせに、本気で謝った方がよさそうな場面では無言の圧力をかけて相
手に謝る隙を与えない。
 あんな態度を取られては、プライドの高い意地っ張りはとてもじゃないが謝れない。
「なんだよもう! 百七十にもなってさ! 怒り方が子供っぽいって自覚ないわけ? あーや
だやだ。ちょっと根暗なんじゃないの?」
530とらひとsage2007/10/01(月) 16:25:38 ID:Q7Rx+5Q8
 上辺だけの嫌味を誰に向けるでもなく言い連ねながら、千宏は足音も荒くのしのしと居間へ
と向かった。
 ばん、と荒々しくドアをあけ、ソファにながながと寝そべる白い影を目に留める。
 千宏はますます眉間の皺を深く刻み、しかし息を殺してこっそりとソファに歩み寄った。
 アカブである。
 時折、仕事が一段落つくとアカブは場所を問わずに仮眠を取る。
 夜通し働いているかと思えば日中ずっと寝ている事もあり、時間に縛られないと生活習慣は
猫なのだという好例である。
 積み重ねたクッションに頭を置き、いびきも立てずに眠る姿はどこからどう見ても普通の虎
で、千宏はアカブの寝姿を見ているのが好きだった。
 思わずその毛皮に手を伸ばし、首の辺りのふかふかした毛をもさもさとしたくなる。これは
大きな博打だが、耳をくいくいと引っ張るのもやめられない。ヒゲを引っこ抜きたい衝動を抑
えるのに苦労する。
「にくきう……ふふふ。ぷにぷに。へへへ」
 癒しだ。癒しの一時だ。最初は恐ろしいと思ったが、決してこちらに危害を加えないと分か
っていれば、アカブは癒しに満ちている。
 顎の下あたりをかいてやると眠りながらも気持ち良さそうにするのが可愛くて、ついさっき
まで苛立っていた心がすぐさま穏やかさを取り戻す。
 眠っている時猫は鼻が乾くのだが、どうやら虎もそれは変わらないようだった。
「うわ、すごい抜け毛」
 そういえば、ここに落ちてきた時に比べて大分涼しくなってきた。
 ふと、棚の上にブラシが置いてあるのが目に入り、千宏はよく眠っているアカブを見下ろし
てにやりと口角を持ち上げた。
 猫のブラッシングは快感だ。
 ごっそりと抜け毛を処理した時など、それはもう爽快である。
 千宏はむんずとブラシを掴むと、眠っているアカブの首筋あたりにそっとブラシをかけてみ
て驚いた。
 抜ける――とてつもなく、抜ける。
 所詮は虎か。短毛種の猫の巨大版か。
 ぐうぐうと眠りこけるアカブのシャツをぐいぐいと首辺りまでまくりあげ、千宏は半ば義務
感にかられてその巨大な体にブラシをかけ始めた。
 首まわりのふさふさした毛は何度も何度も念入りに。
 胸部から腹部にかけては、痛くないようにやさしくそっと。
 元の世界で眠っている猫にブラッシングをするように、起こさないように、気持ちいいよう
に、せっせせっせと氷山を崩して行く。
 ブラシを掃除するたびに形成されるもわもわとした抜け毛の塊が床に山積になる頃には、ア
カブの毛並みは見違えるようになっていた。
 問題は、今、見えていない部分である。
 背中――を、ブラッシングしたい。
 あと、頭の後ろもだ。
 だが、アカブの巨体を動かす事は千宏には不可能だ。
 寝返りをうつのを待つべきか。
 否。ソファで寝ている者が寝返りをうつことは、それすなわち落下による覚醒だ。
 どうする――どうする。
「アカブ。アカブ起きて」
 起こせばいい。
 単純な話である。
 ゆさゆさと白い巨体をゆすると、鬱陶しそうに尻尾の先がぱたぱたと揺れる。その様子にた
まらず口元が緩むが、アカブを起こす手は止めない。
「アカブ。アーカーブ!」
 ぐるるる、と低く呻いて、アカブが窮屈そうに寝返りをうつ。
 うてるのか、寝返り。どうやらソファで寝るのは慣れているらしい。なかなかの猛者である。
 しかしこれで背中が見えた。
 ソファの背を見るようにして横になった状態である。
 出来ればうつ伏せになって欲しかったが贅沢も言えないので、チヒロは早速背中にブラシを
かけ始めた。
 取れる、取れる取れる。たまらなく楽しい。無条件に楽しい。
「毛織物とか出来そう」
 まさにそんな勢いである。
531とらひとsage2007/10/01(月) 16:26:20 ID:Q7Rx+5Q8
「ふふふ。気持ちいいか? 可愛いやつめ」
 ついつい、猫に語りかけるような口調になる。
 膝立ちになって身を乗り出し、わき腹をブラシで撫でた瞬間、唐突に――本当に唐突にアカ
ブが飛び起きた。
 思わず叫んで仰け反り、何事かと目を見開く。
「――おまえ……!」
 アカブも心底から驚いたように千宏を凝視し、次いで、床に積み上げられた抜け毛の山を見
つけてがっくりと肩を落とした。
 溜息と共に顔面を多い、あぁ、畜生、と吐き捨てる。
「なんのつもりだ」
「なにって……ブラッシングを……」
 顔を覆った指の隙間から、ちらとアカブがこちらを見る。
「ご、ごめん。痛かった?」
「そういう話をしてるんじゃねぇだろう!」
「えぇ!? だ、だって、抜け毛が凄かったし! 丁度ブラシあったし! き、気持ち良さそ
うにしてたじゃん! 別に寝る邪魔したわけじゃないんだから……!」
 怒鳴られて面食らい、千宏は言い訳じみた弁解を並べておたおたと視線をさまよわせた。
 アカブが金色の瞳を丸くして千宏を見る。
「――それだけか?」
「だ、だから何が……!」
「わからねぇのかよ! おまえな、寝てる男の服はいでブラシかけるなんざ、家族の範疇超え
てんだろうがよ!」
 愕然とした。
 男――。そうか。あぁ、これはまずい。まずい事をした。
 眠っている兄弟のヒゲをそってやるくらい異常だ。
 眠っている姉妹の無駄毛を処理してやるくらい行き過ぎてる。
 衝撃を受けて沈黙した千宏から呆れたように視線を反らし、自覚無しかよ、とアカブはがり
がりと首の後ろをかいた。
「……ごめん」
 謝罪し、しょんぼりとうな垂れる。
 アカブは困り果てたようにちらと千宏を見て、それからようやく、自身の毛並みに気付いて
へぇ、と感心したような声を洩らした。
「……上手いもんだな」
「え?」
「いや、俺ブラシ苦手なんだよ。背中は自分じゃできねぇし、パルマなんかにやらせると無駄
にいてぇし」
「それは……大変だね」
 純粋にそう思った。
 今まで想像もしなかったが、風呂上りの乾燥などどれ程の苦労を強いられるか――。
「あの……お、起きてる時にやるんだったら、別に、怒らない?」
「いや……まぁ、起きてる時なら、別に……」
「じゃ、じゃあさ。あの。わ、わき腹だけやらせて? ね? あとそこだけなんだ」
 本当は足もやりたいのだが、さすがにズボン脱ぐのがまずい事くらいは分かる。
「そりゃぁ……まぁ、助かる……っちゃ、助かるが……」
「ほんと? よかった! じゃあそれ、シャツ邪魔だから脱いじゃって! ね? ね!」
 気圧されたようにおう、と答え、慌ててアカブがシャツを脱ぐ。
 服を着ていないとアカブはますます虎で、見事に発達した筋肉が野生的かつ躍動的で、先程
ブラシをかけた毛並みはつややかで――。
「た、たまらん……」
 思わず、親父臭い声が出る。
「最近市場に出るようになって思ったんだけどさ。アカブってハンサムだよね。いい男だよ」
「な、なんだいきなり!」
 カーペットの上に直接腰を下ろしたアカブの背後に回り、早速わき腹にブラシをかける。
「白い毛並みってさ、元の世界でも人気だったんだ。それにアカブは大きい方だし、顔もね、
なんかこう、他のトラより格好いい気がする」
「おだてたって何もでねぇぞ」
「あたしプリン食べたいな」
532とらひとsage2007/10/01(月) 16:26:58 ID:Q7Rx+5Q8
 へへへ、とわざとらしく歯を見せて笑うと、アカブが忌々しげに悪態をつき、後で作っとい
てやると吐き捨てた。
「ほんとに? うわ、ありがとう!」
「とんでもねぇ商人だな。ったく!」
「それって褒め言葉だよ」
 わき腹にブラシをかけ終え、先程はまくりあげた服が邪魔して出来なかった部分にもブラシ
をかける。
「でもさ。ほんとにかっこいいって思うよ。うん」
「よせよ」
「照れてる?」
「チヒロ!」
「うわ。かーわいい」
 はい、おしまい。とブラシを下ろし、千宏は満足げにさらさらになった毛並みを撫でた。
「……コンディショナー欲しいな」
「なに?」
「ほら、この世界にもあるじゃん? 髪がさらさらになるやつとか。あれ、アカブに使いたい」
 きっともっとふわふわになって、さらさらになって、それはもう眺めるだけでヨダレがとま
らないような愛らしさになるに違いない。
 愛らしい上に格好いい。格好いい上に美しい。
「さすがにブラッシングだけじゃごわごわはどうにもならないからなぁ。今度市場でそれっぽ
いの買ってこようかな。ねぇ、買ってきたらアカブも使うよね?」
「使うか。気色悪い」
「き……きしょ……気色悪いとはなんですか!」
「気色悪ぃだろうがよ! 俺は男だぞ! 王侯貴族じゃあるめぇし!」
「王侯貴族じゃなくたって身だしなみは大事でしょ! 大体あんた領主の弟でしょうが!」
「いやまぁ……そうなんだが……」
 別に城に出向くわけでもねぇし、第一ダンスの一つも知らねぇし、とぶつぶつと文句を言う。
 しかし千宏が決して譲らないと言う意思を持って睨み降ろすと、アカブはぺたりと耳を伏せ
て視線を反らし、不満げに唸り声を上げながら脱ぎ捨てたシャツに袖を通した。
「俺なんか、そんな小奇麗にしてたって意味ねぇよ……」
「なんでよ」
「そりゃあ……あー……分かるだろ?」
 苦虫を噛み潰したような表情で、言いづらそうに舌打ちする。
 全く分からないので表情だけで問い返すと、アカブは諦めたように肩を落とした。
「バラムと比べられたくねぇんだよ……」
 うわぁ――と、声を出さずに済んだ事に、千宏は心底から感謝した。
 聞くのではなかった。聞くべきではなかった。
 バラムはマダラだ。それはバラムの責任ではないにせよ、周囲はバラムの容姿を他の人間と
比べずにはいられないだろう。
 そしてその比較対象の筆頭は、弟であるアカブなのだ。
「くそ……あぁ、みっともねぇ!」
「あたしは、アカブの方が好きだよ」
 なにか、アカブを元気付けられる言葉はないかと探し、探した結果ろくな言葉が見つからず、
無意識に発したのがそれだった。
 ぎょっとしたように目を見開き、ぽかん、とアカブが千宏を見る。
「大体、比べようがないよ。マダラと、マダラじゃない人なんて共通点全然ないじゃん。耳と
尻尾くらいだもん。そんなのと比較してどっちがかっこいいとか、綺麗とか、そんなの海と山
を比べてるようなものだよ。意味がない」
「いや、そりゃあそうかも知れねぇけど……」
「バラムは綺麗だよ。でも、それに対してアカブが引け目感じる必要なんてないじゃんか。比
較するような奴、片っ端ならぶっ飛ばしちゃえばいいんだよ! だってアカブは強いんだも
ん! 綺麗なものを好きな人は多いけどさ、かっこいいのが好きな人だってたくさんいる」
 宝石は、確かに万人に愛されるかもしれない。
 だが、磨かれ、輝く宝石なんかには目もくれず、無骨な岩の断面の模様に美しさを見出す者
だって存在するのだ。
 宝石の美しさを否定するつもりは無い。だが、どちらが好みかと聞かれれば、千宏はアカブ
の力強さや、虎らしい美しさや、猫のような愛らしさの方が好きだった。
「だから、あたしはバラムよりアカブが好きだよ。だから、アカブをもっとかっこよくしたい
し、綺麗にしたいって思う。それだけだよ……」
533とらひとsage2007/10/01(月) 16:27:31 ID:Q7Rx+5Q8
 背を向けた状態のまま半身を捻って千宏を見ていたバラムの首に、腕を回して抱きしめる。
 ごわごわした毛並みはチクチクと刺さって痛かったが、暖かくて、大きくて、千宏はアカブ
を抱きしめる手に力を込めた。


                 ***


 未だに、千宏はバラムに先日の事を謝罪できていなかった。
 ごく普通に会話は交わすがそれもどこかぎこちなく、鈍感そうなパルマが気付いて心配しは
じめる始末である。
 それでも市場に行く日は行動を共にしないわけにはいかず、千宏は市場の帰りの馬車で、そ
れはもう疲れきった表情でぐったりと窓にもたれていた。
「チヒロ」
 向かいに座るバラムに声をかけられ、思わずぎくりと緊張する。
 平静を装って顔を上げ、視界を覆うローブをついと上げる。
「うん?」
 と首を傾げてバラムを見ると、バラムは千宏を見ようともせずじっと窓の外を睨んでいた。
「発情期――な。部屋に鍵掛けて一歩も外でんな」
 数秒の沈黙を挟み、え? と千宏が疑問の声を上げる。
「なんで?」
 と尋ねた千宏の声にも視線を向ける事はなく、バラムは何かに耐えるようにぐっと奥歯を噛
み締めて目を閉じた。
「だって、二週間も続くんでしょ? その間にあたし飢え死にしちゃうよ。お風呂だって入りたいし……」
「襲われたかねぇろう」
 千宏は一瞬呼吸を止め、呆然とバラムを凝視した。
 心拍数が跳ね上がる。
「パルマが発情したら、俺、たぶん我慢できねぇ。あいつまだ若いから、俺の体力についてこ
れねぇんだ。すぐに疲れて寝ちまうから……」
「近くにもう一人女がいたら、そいつも使おうって気になっちゃう?」
 引きつった表情で無理やり軽口を叩く。
 バラムは沈黙する事で肯定を示し、千宏はその沈黙が恐ろしくて必死に話題を探して沈黙を
振り払った。
「そ、その場合さ。アカブはどうなるわけ? あいつもさ、欲情するんでしょ? パルマが側
にいたらさ」
「あいつも下働きと一緒に家を空ける。少し前まで女がいたが、その女が俺に入れあげたせい
で別れちまったんだ」
「お――弟の恋人を取ったの!?」
「俺は何もしてねぇよ。ただ、俺がマダラだから――」
 だから、その気も無いのに愛されて、結果的に弟の恋人を奪うような形になったのか。
 ならば、バラムは悪くない。だが、それ故アカブが可哀想だ。
「……だったら、あたしもアカブについてって、家あける」
「やめろよ。それじゃあいつが気の毒だ」
「部屋の隅で大人しくしてるよ」
「だったら家で大人しくしてりゃいいだろ」
「だってバラムが……!」
「そんなに俺が嫌かよ!」
 鋭く叩きつけられたその言葉に、意識とは関係なく体が竦む。
 輝くような金色の虹彩が、射るように千宏を睨みつけた。
「な……なにそれ。どういう――」
「路地で名前もしらねぇ誰かに強姦されるより俺に抱かれるのが嫌かよ。おまえの事知りもし
ねぇ、おまえを奴隷として扱う、おまえをペットにしようとする奴に犯されるより俺とやるの
が嫌なのかよ」
「ちょ、ちょっと待ってよ……! ちが……なんでそうなるん――」
「そういうことだろうがよ!」
 くそっ、と忌々しげに吐き捨てて、苛々と尻尾を座席に叩きつける。
 反論を許されなかった千宏は呆然とバラムの横顔を凝視し、泣くのを堪えて唇を噛む事しか
出来なかった。
534とらひとsage2007/10/01(月) 16:28:06 ID:Q7Rx+5Q8
 家までの道のりがひどく長い。
 座席を叩いていたバラムの尻尾の動きが次第に緩やかになり、しかし先端だけは未だに苛立
たしげに動いている。
「――怯えるな」
 前髪をぐしゃりと掴み、そっぽを向いたままバラムが呻く。
「何もしねぇよ……悪かった」
「別に、バラムが嫌なわけじゃない」
 一瞬、言葉の意味を理解しようとするような間があった。
 はっとしたように顔を上げ、バラムが千宏を凝視する。
「ただ……なんかさ……まだ、こっちに来て二ヶ月も経ってなくて、まだあっちの世界の常識
とか抜けなくて……抱くとか、抱かれると、そういうのがね、向こうだと凄く特別なんだ……」
「特別?」
「こっちではどうか知らないけどさ……すっげぇ恥ずかしいんだけど……あ、愛、とかね……
そういうのが、ないと……理由が必要なんだ。抱かれるのに理由がないと、どうしても踏ん切
りがつかなくて……」
 求められれば、もう抵抗はしないかもしれない。
 だが自分から誘うには至らない。
 強姦されても耐えられるだろうと思う。
 だが自ら無防備になる勇気はない。
「バラムは……もてるんでしょ? 女には不自由してないっていったし、パルマだっている。
だからね……なんか、嫌なんだよね。馬鹿らしいんだけどさ」
「それは――!」
「だから別に……したいなら、強姦してもいいよ……」
 そうすれば、恐らく道具になりきれる。
 下らない感情を求めたりはしないで、半ば投げやりに快楽に身を投じられる。
「でも、あたしはそんなに根性座ってないから、たぶん強姦されない努力はしちゃうんだ。そ
れは怒らないで欲しい。だって、痛いのは誰だって嫌でしょ? だから、発情期前に、アカブ
について家を出るよ。別に部屋を取ってもらって、ずっとそこに閉じこもってる。宿なら食堂
もあるしさ」
「チヒロ……」
「あとそうだ。あの、ごめんね? この前。バラムがマダラなの、馬鹿にするみたいなこと言
ってさ。あたしなんて、それを上回る希少生物なのに何言ってんだか」
 マダラである事を責めるような事を言った千宏に対し、バラムはヒトであることを揶揄する
事はなかった。
 バラムから見れば千宏はヒトで、珍獣で、たかだか性奴隷に過ぎない劣った存在のはずなのに。
「強姦なんざしねぇよ……そんなのは最低の行為だ。対等じゃない。そんな事、ましてや家族
相手にできっこねぇだろ!」
「バラム……」
「したくねぇけど、出来ちまうんだよ! おまえには爪も牙もない。力だって弱い。襲われた
ら、嫌でも抵抗できねぇから……!」
 千宏の世界の猫の社会では、メスが嫌がればオスは交尾できないのだと言う。
 だから発情期が存在するのだ。そうでなければ、発情期に関係なくオスはメスとの交尾に及
ぶだろう。
 そして千宏はヒトで、爪も牙も力もなく、襲われてもオスを退けられない。
 それは、襲う者の責任ではない。撃退できない弱いヒトが悪いのだ。
 知らず、腰のナイフに手が伸びた。握りにくいグリップをぎゅっと握る。
「――今日ね。アカブがプリン作ってくれる約束なんだ」
 ぱっと、半ば無理やり作った笑顔に、バラムがぎょっとして千宏を見た。
 そして直後に察したように、話題の転換に合わせて笑ってくれる。
「家に帰ったら冷蔵庫に直行決定だよ! あのとろとろで滑らかで濃厚なプリン……もとの世
界じゃそうは味わえない贅沢の一つだね。あれのためならあたし、一つに五百センタは出せるね」
「プリン一つにか……?」
「メスヒトの甘いものに対する欲求をなめちゃいかんよ。本当に目がないんだから!」
「そ、そうか……」
「あとねー。今日男性用のリンス買ったんだ。アカブの毛並みってちょっと痛いじゃん? あ
れね、ふわふわさらさらになったら触り心地抜群だと思うんだよね。アカブはかっこいい方だ
と思うし、毛並みの手入れしたら絶対にもてると思うんだ」
535とらひとsage2007/10/01(月) 16:29:47 ID:Q7Rx+5Q8
 さっと、バラムが表情を強張らせた。
 しかし千宏はそれに気付かず、ぺらぺらと喋り続ける。
「今日無理やりにでもお風呂に入れてね、出てきた所を乾かして、ブラッシングして、それで
ふわふわを堪能するんだ。うわぁ、楽しみ!」
 うきうきと胸の前で両手を組み合わせ、にまにまと口元を緩める。
 千宏は上機嫌で窓の外の景色を眺め、バラムは複雑そうな、どこか苛立ちを帯びた表情で千
宏の横顔を見つめていた。


               ***


 最近パルマが落ち着かない。
 パルマは前から落ち着きが無いが、前にも増してそわそわとしている。時々ぼんやりとして
いる事もある。声をかけても返事がない。
 そんな調子のパルマを見ていると、千宏も漠然と、発情期が近いのだと察する事が出来た。
 下働きの男たちは長期の休暇に備えて忙しそうで、アカブはアカブで忙しそうだ。
 パルマが役にたたない分千宏が働かねばならないため、千宏も暇というわけではない。
 バラムだけが平然と、いつもと変わらぬ生活をおくっていた。

「大変なんだねぇ、発情期って」
 千宏とパルマがそろってぎゃあぎゃあ文句を言うため、最近のアカブの毛並みは見違えるよ
うに美しい物になっていた。
 元の世界のセオリーでは、猫は頻繁に洗ってはいけない生物だったが、この世界のトラ達は
自主的かつ当然のように風呂に入るし、男もシャンプー程度ならするらしい。
 なにより、男性専用のリンスが存在するのだ。使用方法も特に変わった事はなく、連続して
使うと皮膚病を発生するなんて事もないらしい。それならば使わないのはもったいない。
 ふわふわでさらさらで、真っ白な毛並みに走る灰色の縞模様も美しいアカブの体にせっせと
ブラシをかけながら、千宏はしみじみと呟いた。
「そうだな。毎年毎年面倒だ」
 アカブは気持ち良さそうに目を細めながら、ごろごろと喉を鳴らしている。
 ごろごろと喉を鳴らしながらも、木の実をごりごりとすりつぶす手を止めないのはさすがで
ある。起きている時のアカブは働き者だ。
「いつ出発するの?」
「俺か? 明日の夜だな」
「あ――明日ぁ!? なにそれ! 聞いてないよ!」
「はぁ? そりゃ、言ってねぇからな」
「なんで言わないんだよ薄情者! ど、どうしよう。着替えとかまだ全然用意してないよ!」
 ぴん、と驚いたように耳を立て、アカブが作業の手を止めて千宏に振り向いた。
 間抜け面である。
「着替えの用意?」
「うん。だって二週間も服代えないなんて耐えられないでしょ? 日持ちする食べ物も持って
行きたいし。うわ。今夜のうちにお菓子焼いとかなきゃ!」
「待て。どう言う事だ。何の話だ?」
 完全に作業をやめて、バラムが体ごと千宏に振り向く。
 逆にこちらがきょとんとしてしまい、千宏はブラシを手にもったままぱちぱちと目を瞬いた。
「あたしもついてくって……言ってなかったっけ?」
「お――おまえがついてきてどうすんだ! 馬鹿言ってんじゃねぇ!」
「だって家にいるとバラムに犯されるんだもん」
 言葉で思い切り殴られでもしたように、アカブが盛大に仰け反った。
「あ……あいつがそう言ったのか……?」
「二週間ずっと部屋に閉じこもって出てくるなって言うんだ。でもそんなの常識的に考えて無
理じゃん? だったらアカブについてってどっかの宿屋に引きこもってさ、ルームサービスで
生きてた方が安全だと思わない?」
「そ……そりゃあ……まぁ、いや……だけどな……」
「連れてってくれるだけでいいんだ。お願い! 宿屋に連れてって部屋取ってくれたら、後は
帰りに迎えに来てくれればそれでいいから。ね? さすがに一人じゃ不安なんだ」
536とらひとsage2007/10/01(月) 16:30:21 ID:Q7Rx+5Q8
「いや、だ、だけどなチヒロ……」
「アカブが連れてってくれないならカブラに頼む」
 チヒロのこうげき。チヒロはだったらほかのひとにたのむもんをつかった。こうかはてきめんだ!
「俺が連れてこう……」
 あの野郎に任せるくらいなら、任せるくらいなら……とアカブが呪文のように繰り返してい
る。余程信用がないらしい。
「ありがとう! じゃああたし、準備してくるね!」
 ぎゅむ、とアカブの巨体を抱きしめて、もふもふを堪能してから踵をかえす。
 表面上、なにも分かっていない無邪気な少女を装いながら、千宏は心の中で心底からアカブ
に謝罪した。
 女漁りに家族を――しかも女を連れて行けと言っているのだ。キャバクラに妹を連れて入る
ような上品なものではない。
 ソープランドの待合室に妹を待たせているような心境だろう。
 迷惑なのは分かっている。
 ひょっとしたら、とても酷い事をしているのかもしれない。
 それでも、それでも――。

 一人部屋に取り残されたアカブは、落ち着かなそうに首筋を撫で、複雑な表情で目を閉じた。
 千宏は、随分とこの世界に慣れて来た。
 商売はアカブやパルマよりも上手いくらいだし、物覚えも驚くほどに早い。家族として馴染
もうと努力して、そして千宏は確かに家族としてここにいる。
「くそ……あぁ、畜生……!」
 家族として向けられる好意がひどく痛い。
 千宏は無理をしている。
 ほんのふた月だ。こんな短期間で馴染めるはずがないのに、こちらが違和感を覚えないほど
に千宏はこの生活に馴染んでいる。
 パルマと姉妹のように笑い合い、アカブやバラムを平気な顔をして怒鳴りつける。
 無邪気を装って甘いものをねだったり、ソファに寝そべって昼寝をしたり、まるで昔からそ
うだったように振舞うのだ。
 家族として振舞わなければ、家族として接しなければ、なにか恐ろしい事が起こるのではな
いかと怯えるように――。
「アカブ」
 頭を抱えて沈黙していたアカブの背に、低く――どこか沈んだ調子のバラムの声が届いた。
 振り返った先に、拗ねたような美しい顔がある。
「バラム……てめぇ、チヒロに何言いやがった」
「なにも……ただ、事実を言っただけだ。パルマと一緒にしといたら、俺はチヒロだって抱いちまう」
「あぁ……そりゃあ、そうかもしれねぇがよ。不安にさせるような事言う必要ねぇだろ。必死
に家族に馴染もうとしてるのに――」
「仕方ねぇだろう! どんなに頑張ったってチヒロはヒトなんだ! 守るためには閉じ込める
か、遠ざけとくしかねぇだろうがよ!」
 かっとなって怒鳴ったバラムの顔を、アカブはぽかんとして凝視した。
「おい……おまえ、なにイラついてんだよ。どうした? 何かあったのか?」
 普段、バラムはもっと冷静で、どこかのんびりとした印象のある男だ。
 激昂するアカブをなだめ、癇癪を起こすパルマをあやす役回りだ。
 それなのに、今のバラムはひどく苛立っていた。今にも周囲に当り散らしそうな、そんな子
供じみた雰囲気を湛えている。
「――チヒロと、仲いいよな、おまえ」
「チヒロ……? そりゃあ、あんだけ馴染む努力してんだ。こっちとしちゃあ馴染まない方が
おかしいだろう」
「……それだけか?」
「おいバラム。おまえ本当にどうし――」
「あいつは――俺よりおまえの方が好きなんだってな」
537とらひとsage2007/10/01(月) 16:31:03 ID:Q7Rx+5Q8
 呆気にとられている内にバラムはくるりと踵を返し、乱暴にドアを閉めて去っていった。
 再び一人になったアカブは、いよいよ頭を抱える事になる。
 ――アカブの方が好きだよ。
 あの日、あの言葉を――バラムは聞いていたのだろうか。
 あれは嫉妬だ。そして、バラムはその感情を持て余している。扱いあぐねている。
 だが、その嫉妬は間違っている。
 千宏は――アカブを異性として認識していないだけなのだ。
「俺の方が嫉妬してぇよ! 畜生が!」
 苛立たしげに、忌々しげに声を荒げて吐き捨てて、アカブは苦虫を噛み潰したような表情で
木の実をすりつぶす作業に戻った。
 これでもかと言うほど粉々にすり潰された木の実の粉に、アカブの複雑な心境が表れている
事に気付く者はない。


長くなるので切らせていただきます。
538名無しさん@ピンキーsage2007/10/01(月) 17:49:05 ID:FSQqfHmq
あいかわらずGJであります!
この関係がどうやって収束するんだか……;
539名無しさん@ピンキーsage2007/10/01(月) 20:39:17 ID:ZHLEfxcq
うわぁGJ!
本当に先が気になる!次も楽しみです。
540名無しさん@ピンキーsage2007/10/01(月) 21:03:49 ID:yXvGTwoB
なんと真っ直ぐに恋愛モノをついてきましたよ。GJです。
541名無しさん@ピンキーsage2007/10/01(月) 23:38:12 ID:1T+jr2l/
なんっていうか…雰囲気がいいなあ。
チヒロが誰と結ばれるのやら、そもそも結ばれるのか。
気になる!
542夢日記の人sage2007/10/03(水) 22:36:38 ID:OSURVYjY
こんばんわ。犬国奇憚夢日記の第9話を掲載させていただきます。
あれこれ盛り込んでいたら250kb近い大きさになってしまいましたので3分割しました。

一応注意事項として、監禁陵辱傾向とほのぼの系の対比と言う構図になってます。
表現的にキツイ部分もチラホラあるかと思いますのでご注意下さい。

http://0cgi.net/rent_h/bbs/sr3_bbss/sr3_bbss/31nachtum/60_1.txt
http://0cgi.net/rent_h/bbs/sr3_bbss/sr3_bbss/31nachtum/61_1.txt
http://0cgi.net/rent_h/bbs/sr3_bbss/sr3_bbss/31nachtum/62_1.txt

誤字脱字は出来る限り校正推敲作業で訂正したつもりですが、
何度見直しても出る物ですので、そっと指摘していただけるとありがたく存じます。

あと、作品の垣根を越えてクロスオーバーをして頂いた件での答礼を作って見ました。
まぁ、あまり大きくやってしまうのもどうかと思うのでこんな形です。
およそ20KB有りますので20レスとちょっとお付き合い下さい。
よろしくお願いします。
543犬国奇憚夢日記 特別編11sage2007/10/03(水) 22:37:33 ID:OSURVYjY
 カチャ・・・・ キリキリキリ・・・・ カチャリ

 夜も更けて静まり返るロッソムの街。
 赤々と燃える暖炉の火が照らす紅朱館のホール。
 広々とする部屋の片隅に置かれたソファーとテーブル。
 寝静まった館の中で密やかな音を立て、ユウジは一人、銃火器の整備をしていた。

「まだ起きてらしたのですか」

 トントンと音を立て階段を下りてきたマサミの姿にユウジは驚いた。

「あ、起してしまいましたか。すいません」
「いえ、まだ眠っていませんでしたから」
「そうですか」

 再び視線を手元へ戻したユウジはドライバーの柄を持って銃身の基線を整えている。
 その鮮やかで滑らかな手捌きにマサミは見とれていた。

「心配性なもので、どうしても自分で整備しないと気が済まないんですよ」
「いやいや、その気持ちは良く分かります。私もそうですから」

 出来る限り音を立てずにユウジの対面へと腰を下ろしたマサミ。
 ユウジの鼻にはマサミの体から僅かに香水の香りを感じていた。

「・・・・アリス様ですね」
「えぇ。あの一件以来・・・・ どうにもちょっと」
「でしょうね。ヒトでもイヌでも。女性ならば」
「甘えるのが下手なんですよ。やはり、貴族として育てられたのでしょうね」
「人前で弱みを見せないこと・・・・ 辛いですよね」
「えぇ。そして、あの方は領主でもある」

 一通り組み立てたG3を構えバランスを確かめるユウジ。
 傍目に見るマサミですら惚れ惚れする、見事な構え方。
 戦争映画に出てくる決めシーンの俳優のようだ。

「ユウジさん。あの、聞きにくい事ですが」
「落ちる前ですね」
「えぇ」

 帆布で作ったケースに銃をしまいながら、ユウジは一つ溜息をついた。
 テーブルの上に並んでいた道具が片付けられ、広間の中から金属的な音を立てるものが消え去る。

「民間の軍事会社に居ました。警備とかの仕事をしていたんですよ」
「じゃぁ、中東地域の?」
「そうですね。バグダットの西方に展開する会社でした」
「しかしなぜそのような会社に?」
「父母共に日系アメリカ人で、母は二世、父は三世でした、アメリカ国籍だったので志願して兵役に付いたのですけど、従軍中のある日に父母がニューヨークで・・・・」
「9・11」
「えぇ、そうです」
544犬国奇憚夢日記 特別編12sage2007/10/03(水) 22:38:40 ID:OSURVYjY
 首を振りながら深い溜息をひとつついたユウジ。
 その双肩には深い苦悩があったのだろう。

「当時私の家は親族が大喧嘩中でね。それに嫌気がさして私は日本の親類を頼ったのです」
「そうなんですか」
「ところが、日本に行ってみたらまぁ見事にカルチャーショックでしてね」

 クックックと笑いを噛み殺すユウジ。
 釣られるようにマサミも笑みを漏らす。
 しかし、その後にユウジの口から出てきた言葉はマサミの笑みを凍りつかせるものだった。

「人殺しの兵隊さんが親族に居るなんて世間の良い恥さらしだから荷物をまとめて今すぐ出て行け!ってね、
親戚が怒鳴り込んできたんですよ。私は何がなんだか分からなくて、あっけに取られていたんですが・・・・」

 しばしの沈黙がフロアを埋めていく。
 コチコチとなる時計の針音がどれ程の時間を数えたのだろうか。
 痺れを切らしたようにマサミは口を開いた。

「なぜ、怒鳴り込んでこられたのでしょうか」
「さぁ、私にも分かりません。ただ、私の中では、軍隊と言うと国家の便利屋みたいな部分があると思っていたんですよ。
言うなれば汚れ仕事を引き受けるポジションです。国家運営の失敗が引き起こすイザコザの尻拭いとかね。それこそ、消耗品位にしか扱われない軍隊って組織の役割をそう理解してました」
「でしょうね。正論です」
「でも、その人は違ったようです。好き好んで出かけて行って人を殺すのが趣味の人でなし・・・・。 まぁ、否定はしませんが」

 ユウジは再び噛み殺して笑う。
 でも、今度はマサミは笑えなかった。

「平和ボケした日本って国の現状でしょうね」
「それも私は良く分からなかったんですよ。ヘイワボケ。それってなんですか?って聞きましたもの」
「誰かの犠牲とか苦労とかの上に物は成り立ってるはずなのに、その縁の下の人に感謝する事を忘れてるんですね」
「・・・・今のマサミさんの説明でやっと分かりました。その通りです」

 ユウジは鞄の中からコルクで出来た小さな箱を取り出した。
 そっと蓋を開けると、中には琥珀色の液体が入ったビンが一本。
 ラベルにはバラの花が描かれている。

「マサミさん、これ飲めますか?」
「えぇ、もちろん」

 マサミはそっと立ち上がり、キッチンからコップを二つ用意してきた。
 ユウジがその中に少しずつ注ぎ、二人してそっと手を伸ばす。

「マサミさんは向こうの世界でなにを?」
「・・・・コーヒーチェーンの店長でした」
「だからこういう場のマネジメントが出来るんですね」
「いえいえ、とてもじゃありませんが、執事なんて仕事は出来ません。真似事です」
「実は日本に行って覚えたスキルが一つあるんです。謙遜って奴です。マサミさん、あなたがしている仕事は十分立派だ」
「ありがとうございます」
545犬国奇憚夢日記 特別編13sage2007/10/03(水) 22:39:14 ID:OSURVYjY
 カン・・・・・

 そっと乾杯してグッと飲み干す。
 懐かしい香りが喉を駆け抜け、焼けるような刺激が胸を焦がす。

「ウィスキーかぁ・・・・・ 3年ぶりくらいだな」
「この世界ではウィスキーがいまいちなんですよね」
「そうなんですか。これは?」
「落ち物の山の中にFeDexの大きな箱があったんですけど、その中に誰かが誰かに送ったこれがあったんですよ」
「そうなんですか」
「きっと今頃送った人は悔しがってますよ、なんせ21年の上物ですからね」

 飲み干したコップへ再びウィスキーを注ぐユウジ。
 マサミはもっと色々な事を聞きたかったのだが、何となくそれを聞かないほうが良いと思っていた。
 なんで戦闘中だと言うのに冷静なのか。
 なんで人を殺す現場なのに迷わないのか。
 なんで・・・・

「仲間と車列を護衛して空港へ向かう道すがら、過激派の爆弾テロに遭遇しましてね」
「・・・・テロですか」
「すぐ近くで仲間が吹っ飛んで、それで気が付いたらこの世界の西のほうでした」
「お一人で?」
「えぇ、そして、すぐにウサギの輸送キャラバンに拾われまして・・・・」
「・・・・災難ですね」
「えぇ、しばらくは・・・・地獄でしたね」

 コップの中身をグッと飲み干してユウジは目を瞑った。

「今でも時々思い出します。昼夜問わず慰み者にされるヒトの女性の泣き声とか、完全に壊れてしまって笑い続ける人とか」
「ヒトを嬲るんですか?」
「えぇ、彼らにすれば何でもいいんですよ、穴さえあればね。そして、しっかり調教して・・・・ 高く売る。商売の基本ですね」
「・・・・その通りですね」
「しばらくして、私のチンポがね、起たなくなりまして・・・・。そしたら今度はなぶり殺しですよ。死にかける事も何度か有りました」
「でも、今生きてらっしゃる」
「蘇生と回復の魔法効果です。新人の練習材料として実験台にされました。我慢できず僅かのすきに逃げ出したら
今度はネコのヒト商人に拾われましてね。接近戦闘に長けていて、おまけに軍隊経験者で体が筋肉だらけだったものですからね。ネコの商人に酷く気に入られまして・・・・」

 肩をすぼめうんざり笑いをするユウジ。
 その表情からは自嘲めいた蔑みが見える。

「尻の穴を随分開発されましてね、最後はホモ人形で売りに出されて、そして大きな屋敷の主に下男として雇われまして・・・・ と言うより買い取られまして」
「・・・・・・・・商品ですからね」
「その家の主がまた酷い下世話で悪趣味な男でして、その家で夜な夜な乱交パーティーをするんですが・・・・ 全部男なんですよ」
「・・・・それはまた」
「でね、館の入り口で中年のホモ男の相手をさせられましてね。おかげで見事に痔になりましたよ、ハッハッハ」

 ユウジの飲み干したコップへマサミはウィスキーを注いだ。
 笑いながらもどこか悲しそうなユウジの横顔がうっすらと赤くなっていた。
546犬国奇憚夢日記 特別編14sage2007/10/03(水) 22:39:47 ID:OSURVYjY
「あの生活が嫌で嫌で。ある日、もう一度隙を見て逃げ出したんですよ」
「ほぉ・・・・ よくご無事で」
「マサミさん、ドラゴンに会った事は?」
「ドラゴン?竜族ですか?」
「えぇ、あの使役される家畜としての竜族では無くて、高度な知識と魔法を持つ・・・・ファンタジー世界の住人のドラゴンですよ」

 俄かには信じられない事を真顔で言うユウジ。
 その真剣な表情は騙したり担いだりするものにはみえない。

「そんなのが・・・・ この世界には居るんですか」
「えぇ、この世界のどこかに5匹のドラゴンが居ます。不老不死の正真正銘化け物です」

 コップに残っているウィスキーをその中でクルクルと回しながら、ユウジは琥珀の水面を見ていた。

「私を追ってきたネコの主や強力な魔法障壁を使えるネコの軍隊が一瞬で消滅するほどの・・・・高度な竜言語魔法を使う恐ろしい存在でした」

 竜言語魔法・・・・
 それって?と聞きたいマサミだが、ユウジの顔色はそんな事をさせない迫力だった。

「私は聞いたんです。元の世界へ戻る方法を。そしたらその竜は答えました。この世界の5匹の竜が残す竜灰を全部集めて、気まぐれに出現する竜族の神へ祈ってみろ。
聞き届けられれば戻れるだろう。しかし・・・・『その灰はどうやって集めるのですか?』

 ユウジの言葉が終わる前に話を切ったマサミ。
 その声色は真剣だった。

「あの竜族の寿命は1万年だそうです。1万年経つとその体が灰のように崩れ、その中から新しい竜が出てきて、その新しい竜が記憶を受け継ぐのだと言っていました。
そして、それぞれの竜が全部いっぺんに生まれ変わる事は無い・・・・と」

 雲を掴むような話しにガックリとうな垂れるマサミ。
 ユウジは体を半身乗り出して、うな垂れるその肩に手を伸ばす。

「マサミさん、あの街、ルカパヤンにはね、実は3匹分の竜灰があるんですよ」
「ほんとですか?」
「えぇ、そして、いつか全部集めて、そして、自分たちの世界へ帰るように準備しているんです」
「じゃぁいつか」
「えぇ。でも、最近はちょっと目的がずれてましてね」
「・・・・?」
「ヒトの国を作ろうとしています。そのために竜灰を使うのでしょう」
「あの・・・・ 竜灰とは具体的にどのようなものなんでしょうか?」
「簡単に言うと、火山灰みたいな物ですがね。その灰に願いを掛けるとその灰の竜がやってきてその願いをかなえてくれます」
「それは・・・・」
「ですが、願いの大きさに見合うだけの犠牲が・・・・ 対価が要るのです。そして、その対価は往々にしてヒトの・・・・ 命です」

 ある程度は予想していたのだが、それでもはっきり言われると引いてしまう言葉。
 願いをかなえる為にはそれ相応の犠牲が要る。
 ただ単純に願いをかなえてくれるだけの便利な存在ではないと言う事実。
 それはつまり・・・・
547犬国奇憚夢日記 特別編15sage2007/10/03(水) 22:40:23 ID:OSURVYjY
「まるで・・・・ 神、そのものですね」
「えぇ。祈りを捧げ純粋に信じきる者にのみ手を差し伸べる神」
「試練ですね」
「だから、あの街を囲む多くの国や組織や集団が手出しできないのですよ。ヒトは誰かの為に美しい犠牲を捧げられる生き物ですし」

 再び沈黙の時が流れ、マサミはコップのウィスキーを飲み干した。
 ユウジは空いたコップにウィスキーを注いで口を閉める。

「もう少し・・・・具体的に聞いて宜しいでしょうか。嫌な記憶かと思いますが」
「・・・・えぇ、貴方も知っておくべき知識ですよ。あれは・・・・

************************************************************************************************************************
548犬国奇憚夢日記 特別編16sage2007/10/03(水) 22:40:56 ID:OSURVYjY
 胸突き八丁の坂を登り始めて、もうどれ位歩いただろう。
 森林限界をとうに超えたらしく、あたりはガレた岩場になっている。
 殺風景な世界にあって俺の目を和ませてくれるのは、名も知らぬ高山植物たちだ。
 こんな厳しい環境でも懸命に花をつけている。
 俺も・・・・ もう少し、頑張るべきだったんだろうか・・・・

 この不思議な世界へ来て、早くも10年が経とうとしている。
 この世界の一日が、俺の知っている世界と同じであればと言う前提なのだが。
 最初に拾われたウサギの家では、毎日のようにバニーガールみたいな女達の相手をさせられた。
 楽しかったのは最初の1週間だけだ。後は、毎日が苦痛でしかなかった。

 俺の金玉は毎日のようにこき使われた結果、血を噴射する事しか出来なくなった。
 前立腺が異常を来たし排尿困難のまま中毒症状を起こした。
 それでも、あのウサギの女達は俺を絞り続けた。
 絞り続けてとうとう自分の足で立てなくなった日。

 今度は女達が俺の背中に焼印を入れ、爪を剥ぎ、鞭で打ち続けた。
 血塗れになって逃げ出し、雪原の上で遠のく意識の中を拾ってくれたのはネコの商隊だった。
 助かったと思ったのだけど・・・・ そこはより一層地獄だった。

 来る日も来る日も、ネコのヒト商人にケツの穴を掘られ続け、気が付けば俺のケツの穴は開きっぱなしになってしまった。
 垂れ流しになってしまう俺の糞を嫌がったあの変態オヤジは、俺のケツにでっかいプラグを差し込み、鍵を掛けやがった。
 腹が膨れるほど糞がたまり顔色が悪くなると、俺はあの饐えた臭いのするあのネコの商人の汚いチンポをしゃぶらされ、
口の中一杯になるほどの臭い精液を飲み干さないと糞すらさせてもらえなかった。
 それでもあの変態は俺のケツの穴を開発し続け、いつの間にか俺は女のように無様によがる情けない男になっていた。

 ネコの国のヒト市場で売りに出された俺は、女物の服を着させられつつもチンポが丸見えの遊び道具に成り下がっていた。
 あの市場で俺を買っていったネコの豪商が俺に命じたのは、あの豪商の屋敷の入り口で見知らぬ男と穴を掘りあう事だった。
 俺より何年か早く落ちてきたと言う見知らぬ親父は、何人かの獣の女達を主とした後、歳を取って捨てられたと言う。
 野良のヒトになっていた所を拾われてホモ開発されたらしい。
 すっかり禿げ上がった頭をした、俺から見ても負け犬根性が染み付いた薄汚い男だった。

 ある日、おれは僅かな隙を見て裸のまま屋敷を飛び出した。
 手にしていたのは、豪商の家に遊びに来ていたほかのネコどもが俺のケツに突っ込んだ僅かなネコの硬貨だけ。
 それでも、なけなしの金で服を買い、俺はここまで来た。
 この峠を越えれば、ヒトの居住区があると言うカモシカの国らしい。
 正直に言えば、峠を越せず死にたい気分なのだが。

 はるか下の方から俺を呼ぶ声がする。いや、正確には殺してやると言う声だ。
 どうせあの変態ネコの豪商だろう。俺のケツの穴を気に入ったらしい。
 誰が止まる物か! 逃げ切ってやる!と意気込んで斜面を上り続けているのだが、まだ頂へは到達していない。
 もはやあたりには苔や草しかない。冬場ともなれば厚く雪が降り積もるのだろう。
 峰を目指す稜線に立ったとき、そこにわずかな踏み跡があるのを見つけた。

「バカな・・・・」

 その踏み跡に立ち左右を見る。
 右手は雲の中へ続き下へ降っている。左手は霧の中に消え、更に上り続けている。

「こっちだな」
549犬国奇憚夢日記 特別編17sage2007/10/03(水) 22:41:30 ID:OSURVYjY
 俺は迷う事無く左手へと進んだ。
 猛烈に喉が渇き、焼け付くような感触だった。
 雪でもあればそれを舐めるのだが・・・・

おーい そっちへ行くなー!
そっちへ行けば化け物に食い殺される!

 お前のほうが変態で化け物だろうに・・・・
 必死になって小走りに逃げる俺は何かにつまづいて転んだ。
 足元に目をやると、そこには大きな獣の骨があった。

「嘘だろ?」

 見事に噛み砕かれたその骨は牛よりも一回りは大きかった。
 見なかったつもりにして歩き出すのだが、もはや俺の脚は限界だった。
 霧の中に少しずつ光を感じていたのだけど、もう自分の思うようにならない両足がここまでだと俺に告げていた。

 大地へと倒れこむように蹲った俺はそれでも行く先を見つめる。
 あぁ、あと少しで峠なのに・・・・
 薄れて行く意識の中、俺はロスのクラブで踊っていた。
 ブロンドのネーチャンたちとクァーズを飲みながら。

「ここまでか・・・・・」
「・・・・それで良いの?」

 夢と現の溶け合う領域で顔を上げた俺が見た物は、まるでスイスの民族衣装でも着ているかのような少女だ。
 細い手足と長い首、純白の肌にブロンドの髪、そして、青い瞳。

「・・・・君は?」
「私は誰でもない、ただの私。あなたは」
「ヒトの世界から落ちてきた不良品だ」

 そこで俺の意識は途切れた。
 そして、ふと気が付くと、大きな岩の上に寝転がっていて、少女が膝枕をしていた。

「気が付いた?」
「・・・・ありがとう。ここは?」
「ウェヲブリ山の山頂付近。普通のヒトは入って来れない場所よ」
「なぜ?」
「ここはこの地域を統べる龍の聖域だから。稲妻と雷鳴の主、サンダードラゴンのミンタラ」
「ミンタラ?」
「ここはカムイミンタラ。人の立ち入ってはいけない場所」
「じゃぁ、なぜ俺はここへは入れた?」
「あなたは死にかけているから。だからサンダードラゴンは許してくれたのね」

 静かな口調でそっと喋るその少女の声に、俺はいつの間にか体中の力を抜いていた。

「へぇ、こりゃ驚いた。今日はついてるな」

 下卑た声に驚いた俺が飛び起きると、そこにはあのネコの富豪が立っていた。
 そして、金の力で連れてきたのか、猫の魔道部隊が一緒に立っていた。
550犬国奇憚夢日記 特別編18sage2007/10/03(水) 22:42:17 ID:OSURVYjY
「そっちの小娘はうちの娘にくれてやるとするか。おい、お前達、あのでっかいトカゲが来る前に・・・・

 勝ち誇った口調でネコの兵士に指示していた富豪だが、その声を聞いていた兵士は腰を抜かして座り込むと、皆一様に富豪を指差していた。

「おいおい、一体いくら払ったと思ってるんだ、しっかり『だまれ』

 頭の中に直接響いてくる低く威厳のある声。
 俺は何が起きたのかわからずキョロキョロしていたが、あの少女は俺の手を引いて岩の上に座らせるのだった。

「私の主が来ました。お座りなさい」

 言われるがままに座った俺の前、例の富豪がこっちを振り返ると、兵士と同じように腰を抜かして座り込んだ。
 俺は何かを直感して振り返る。するとそこには・・・・・

『そこのネコ。我が庭で何をしている』
「そこのヒトの男を回収に来たのだ、俺の奴隷だ!文句があるか!」

 ネコの富豪ですらも見上げるような巨躯の・・・・ ドラゴン。
 映画に出てくるような西洋式の大きなドラゴンがそこに居た。
 頭頂部には前後10mはあろうかと言うような、巨大な角が2本そびえている。
 その両方の角の間にはアーク放電のスパークが弾けていた。

『今すぐ立ち去れ』
「言われなくともそうする!おい!ユウジ!帰るぞ!」
「ふざけるな!勝手に帰れ!」
「おとなしく帰れば殺しはしない、たっぷり可愛がってやるから喜んでいいぞ」

 ヘラヘラと笑うそのネコが手を伸ばしてユウジの足首を掴みかけたその時だった。

    『 誰 が つ れ て 行 っ て 良 い と 言 っ た の だ ! 』

 頭蓋骨の中に高電圧のスパークが弾けたかと思うほどの衝撃が響き、思わず俺は頭を押さえ込んだ。
 ネコの魔道兵士達も一瞬混乱をきたしたようだが、すぐさま複数の兵士が韻を踏むように詠唱を始める。
 なにか高度で複雑な魔法でも使おうかと言う風なのだが、俺にはそれが理解出来ないでいた。

 ただ、ふと振り返った先、頭骨を後方へ反らしたドラゴンが反動をつけて顎を下へと振り下ろした。
 すると、その2本の巨大な角から夥しい数のスパークが飛び、高度な詠唱を行っていた筈のネコの兵士がまとめて黒焦げになった。
 強力な魔法障壁を持つはずの魔道の鎧を着ていたはずなのだが・・・・

「わわわわ・・・・ わかったわかった!今すぐ帰るから!!」

 後ろを振り返ったネコの富豪は転びながらも走って下界へと降って行く。
 霧の中に見えなくなるまで走っていったのだが、ドラゴンはその場に立ち上がって翼を広げると大きく息を吸い込んだ。
551犬国奇憚夢日記 特別編19sage2007/10/03(水) 22:43:00 ID:OSURVYjY
『シヅ 耳を塞げ』
「はい」

 恐竜の咆哮とでも形容したくなる声でドラゴンは雄叫びを上げた。
 その有り得ないほどの音量に頭の中で何かが砕け散る気がする。
 俺を導いてくれた少女と共に座っていた大岩ですらビリビリと共振する程の声量。
 驚愕と共に見上げた俺の目に飛び込んできたのは、そのドラゴンのブレス・・・・・・

 最初、視界が真っ白に染まり、まるで幾万ものフラッシュが焚かれたかのようだった。
 しかしそれは、そのドラゴンの巨大な角から放たれる数千の稲妻が空へと向かったものだった。
 大気中に放電したもの凄い量の電気が何を引き起こしたのかはわからない。
 しかし、次の瞬間に目撃したのは、霧の彼方にまとめて着雷し、岩ごと解けていく山肌だった。

「電気の溶鉱炉みたいだ」
「あの熱に耐えられる物はこの世界にはありません」

 呆気にとられる俺は呆然と少女を見るのだが、その少女はただ笑っていた。

「君は・・・・」
「私は龍の巫女。カムイミンタラへようこそ。主はあなたを許したようです」
「え?」

 その言葉にビックリした俺は上を見上げる。
 そこには大きな目をしたドラゴンが居た。

『ヒトの男よ。なぜここへきた』
「辛い毎日から逃げ出したくて」
『なぜ戦わぬ』
「敵わぬ相手ですから逃げるが得策です」
『逃げ出しても事態は変わらぬ。お前はどこへ行くのだ』
「ここを降りていくとカモシカの国と聞きました。そこにヒトの街があると」

 やや腰が引け気味だけど、それでもユウジは精一杯胸を張って言い切った。
 ドラゴンはまるで笑っているかのように口を半開きにして見ている。
 長く伸びる下がシュルシュルと伸びてユウジの頬を撫でた。

『嘘を吐いているかどうかは汗の味で分かる』

 何を言われているのか理解できない俺は、ただ見上げるしかなかった。

『この山を下りヒトの街へ行ってもお前の望みは叶わない。東へ下りてゆけ』

 ドラゴンは突然羽を広げると、いずこかへ飛び去ってしまった。
 少女は岩の上に座ったままほほ笑んでいる。

「君はここにいるのかい?」
「えぇ、私は竜灰の守護者ですから」
「竜灰?それはいったい」
「世界の覇者を生む魔法の粉。竜族が死に代わるときにだけ残します」
「・・・・良くわからないな」
「あなたにも一つまみあげます」
552犬国奇憚夢日記 特別編20sage2007/10/03(水) 22:43:41 ID:OSURVYjY
 少女の手の中にはまるで風邪薬のカプセルの様な円筒形のパッケージが一つ。
 俺は訳も分からずそれを受け取ると、掌に乗せシゲシゲと眺めた。

『その中身は我らの身そのものである。そなたの願いし時にそなたの居る場所でそれを開けるがよい。
ただし、願いを叶えるには対価が必要だ。願いの大きさに見合う対価を用意しろ。対価が見合わねば願いは叶わない。
そして、その灰は一度しか使えない。忘れるでないぞ。そなたの進む道に時と光を司る竜の導きがあらん事を』

 どこからとも無くそう語りかけられた俺は驚いてそのカプセルをポケットにしまった。

「ひとつ聞きたい。ヒトの世界に戻る事は出来ないのですか?」

 少女は不思議そうな顔をして俺を見ていたが、やがて目を閉じて空を見上げる。

『そなたのその願いは如何なる対価を持ってしても叶うまい。ただし、我ら5人の竜の灰を揃え竜を束ねる龍神の前に並べ対価を捧げるなら、
或いは叶うやも知れぬ。私はその方法を知らぬが、我らの龍神は知っているかもしれない』
「お役に立てましたかしら?」

 透明感のある声でそう囁いた少女はスッと立ち上がると、まるで羽でも生えているように後方へフッと飛んだ。
 両足でジャンプしただけなのだが、軽く20mは飛んだようにも見える。
 そして、右手を伸ばして行く先を指差すと、そのまま霧の中へ消えていった。

「こっちへ行けと言う事か・・・・・」

 再び歩き出した俺はいつの間にか喉の渇きを忘れていた。
 名も知らぬ高山植物の可憐な花が俺を見送ってくれた。


                             ◇◆◇


「3昼夜歩き通したらヒトの集団と出会ったんですよ、ルカパヤンの落ち物回収チームでした。
僅かなサイズの竜灰を見せたら、いきなりVIP待遇で街へ迎えられましてね。
あとで聞いたら、サンダードラゴンの竜灰はやたら貴重品なんですって」

 静かに笑うユウジの口調はいつものように穏やかになっていた。
 悲惨な過去がヒトを丸くする事もある。
 辛く厳しい現実を乗り越えたからこそ、このヒトは余裕を見せられるのだろう。
 マサミは何となくそんな風に理解していた。
553犬国奇憚夢日記 特別編21sage2007/10/03(水) 22:44:22 ID:OSURVYjY
「辛い過去を思いださせてしまいましたね。申し訳ありません」
「いえいえ、良いんですよ。それより、いつものマサミさんらしくないですね。今日はいつにも無く弱気だ」
「ここしばらく、実はちょっと怖くなっているんです」
「と言うと?」
「私はただのコーヒー屋の店長です。ただのミリタリーオタクだし、それに、トリビアマニアですよ、でも」
「見分不相応な厚遇を受けている・・・・と」
「えぇ」

 ユウジは何を思ったのか右手を上げると、白い手袋を外して素手を見せた。
 人差し指と小指以外の爪が全部根元まで剥がされ、その部分が黒くなってしまっている。
 手の甲には何かの魔法文言が焼印され、どす黒いシミとなって残っていた。

「私の手はこの焼印を打ったウサギの女が満足するまで、嫌でも女の体をいじるようにされてしまいました。
でも、この魔法回路が力を得る事は二度と無い筈です、そのウサギをこの手で殺しましたから」
「ユウジさん・・・・」
「マサミさん、この世界にある物はすべて何かしらの意味を持っています。この世界に有るべき理由があるから生きているはずですよね。
マサミさん、あなたは実に素晴らしい主に出会えた。私とは違うんですよ。あなたの主はあなたを必要としている。
そして、あなたには妻も居るのでしょう? 妻も主もあなたを必要としているのなら、あなたの今している仕事は意味を成しているはずです」

 ユウジは寂しそうに笑いながら空いてるコップにウィスキーを注いだ。
 2つのコップにそれぞれ半分ずつも注げば、そろそろ瓶は空になる。

「ウィスキーが無くなってしまいましたね」
「えぇ、半分あなたに飲まれました。損失補てんして下さい」
「え?」
「冗談ですよ、ハッハッハ」
「・・・・いつかここでウィスキーを作ります。実はここスキャッパーはピートがたっぷりあるんです」
「それは素晴らしい!キルンを作る時は教えてください、手伝いに来ます」
「・・・・昔、北海道の余市と言う場所で」
「ニッカですね」
「えぇ、そうです。余市でウィスキーを仕込んだ事があります」
「従業員ですか?」
「いえ、体験と言う奴ですよ。とても面白かった」
「じゃぁウィスキーは大丈夫ですね」
「いやいや・・・・ あれで作れるようになったら企業は立ち行かないですよ。ここで思い出しながら研究します」
「いつか、スキャッパーの主力商品に育つと良いですね」
「えぇ」

 コップを持ち上げ再びチン!と音を立て乾杯する二人。
 グッと多めに口へ入れて一気に飲み干すと、胸が焼けるようだ。

「実は、カモシカの国から手紙が来たんです」
「ほう・・・・ 奥さんを帰せ・・・・ ですか?」
「いえ、なんか良く分かりませんが・・・・ と言うより私はまだ文章をちゃんと読めないんですよ」
「・・・・意外ですね。拝見できますか?」
「部屋に置いてありますので明日にでも。妻は文章を読める物ですから代わりに読んでもらいました」
「内容はどんなでしたか?」

 マサミは一息ついて椅子に座りなおし、両手を左右に広げ肩を窄めた。
554犬国奇憚夢日記 特別編22sage2007/10/03(水) 22:44:54 ID:OSURVYjY
「おそらく、何かの自然災害に対する対処法を聞いて来ています。たぶん地震でしょう」
「地震ですか」
「えぇ。で、災害にあい、心が折れれば立ち直れない。あれも神の試練です」
「返信は書かれるのですか?」
「・・・・書くべきかどうか、正直悩んでいます」
「でも・・・・」

 そこで言葉を切ったユウジ。マサミとて何を言いたいのかは分かっている。
 貸し借りを作らないようにしておかないと、後でどう転ぶかわからない。

「慎重な対処が必要ですね」
「えぇ、妻を・・・・守りたいですから」
「あなたは本当に古風な人だ。まるで侍のようだ」
「侍だなんて大げさな」
「そんな事は有りませんよ。人前で弱みを見せず、妻にも主にも愚痴をこぼさず・・・・」
「時代遅れですね」

 自嘲するマサミの目をジッとユウジは見てからコップを持ち上げ、乾杯するようにちょっと上へ揺すって飲む。
 マサミも同じようにして口をつけた。

 ユウジは視線を手元に落として、スーッと息を吸い込んだ。
 何が始まるのか?と見ていたマサミ。
 ユウジは静かに歌い始めた。

一日二杯の酒を飲み・・・・
肴は特にこだわらず・・・・

「英五・・・・」

 マサミは目を閉じて呟いた。
 ユウジはそっとほほ笑んで続きを歌う・・・・

マイクが来たなら 微笑んで
おはこを一つ 歌うだけ
妻には涙を見せないで
子供に愚痴をきかせずに
男の嘆きはほろ酔いで
酒場の隅に置いて行く

 静かな口調で歌うユウジの声に、マサミはグッと堪える顔を見せた。
 顎を引き目をきつく閉じ、ひたすらに耐える顔をしたまま、それでも涙が溢れてくる。

目立たぬように
はしゃがぬように
似合わぬことは
無理をせず・・・・・・・・
人の心を
見つめつづける
時代おくれの
男になりたい・・・・

 静かに嗚咽するマサミはコップに残っていたウィスキーで、かみ殺した泣き声をグッ飲み込んだ。
555犬国奇憚夢日記 特別編23sage2007/10/03(水) 22:45:30 ID:OSURVYjY
「マサミさん。時には愚痴を言いましょう。時には弱音を吐きましょう。それが・・・・上手く生きて行く秘訣ですよ、きっとね」
「でも・・・・ 昔、英五の曲を良く聞きましたけど・・・・ 今夜ほど心を打った事は有りませんでした・・・・ 」
「きっとマサミさんが始めてこの曲を歌った人と同じ所に来たと言うことでしょうね」
「あれ・・・・ ユウジさん、英五は知らないんですか?」
「えぇ、同じ会社に居た日本人が良く歌っていたんですよ」
「そうなんですか」

 マサミはふと立ち上がってキッチンへ消えて行った。
 ややあってユウジが目を送った先に、小さな瓶を抱えてくるマサミの姿を見つける。
 その瓶は陶器で出来ていて、木の栓がされていた。

「オオカミの集落で貰ったどぶろくです。飲みますか?」
「美味そうですね!」
「これは効きますよ、小鳩麦で作ったどぶろくです。酒の強いオオカミもイチコロです」
「ほぉ!ウィスキーで鍛えたヒトの肝臓とどっちが強いか勝負ですな」

 ウィスキーの入っていたコップへ並々と白く濁ったどぶろくを注ぎ、二人の男がニヤニヤしながら乾杯する。

「うぉ!これは!」
「すごいでしょ?」
「ヤバイですね、美味い!」
「これを時々チビチビやって、すっかり遠くなってしまった祖国を思い出しています」
「まだ思い出しますか?」
「えぇ、本当は忘れてしまった方が楽なんでしょうけどね」
「さっきの曲を歌っていた同僚が、もう一つ良く歌っていた曲があるんですよ」
「・・・・言わなくても分かりますよ、もう」
「そうですか・・・・」

 マサミはコップを持ち上げ乾杯の仕草をする。
 ユウジも同じように乾杯の仕草をした。
 それぞれのコップに残っていたどぶろくを一気に飲み干した二人。

「まだ飲み潰れてませんが・・・・もう寝たほうが良いですね」
「ですね、明日も大変ですよ、街の再建が」
「明日もよろしくお願いします。本当はこんな事をしに来た筈ではないのでしょうけど」
「いえいえ、それは気にしないで」
「お世話になります」

 マサミは胸に手を当てて頭を下げる。

「その振る舞いは文字通り紳士の執事ですよ。あなたは十分立派な仕事をしている」
「ありがとうございます」

 フッと立ち上がりコップとどぶろくの瓶を片付けるマサミ。
 ユウジは銃火器とウィスキーの瓶をカバンへしまった。

 階段を上がるマサミにユウジが声をかける。
556犬国奇憚夢日記 特別編24sage2007/10/03(水) 22:46:13 ID:OSURVYjY
「例の手紙、返信を書くなら誰かに代書させるべきでしょう」
「・・・・私が書いたわけではない。そういうアリバイですね」
「そうです」

 カナが先に眠っている小さな部屋の戸をそっと開けるマサミ。
 ユウジはマサミの方をポンポンと叩いて通り過ぎ、来客用の部屋へ消えて行った。
 服を脱いでカナの隣へそっと横たわると、カナはフッと目を覚ましマサミの首に手を回した。

「遅かったじゃない」
「ユウジさんと話しこんでいた」
「お酒臭いよ」

 マサミも手を伸ばしてカナの唇を塞ぎに行く。

「ねぇ」
「ん?」

 ちょっと恥しそうな表情でカナがマサミを見ている。

「アリス様に全部出しちゃった?」
「うん、今日も・・・・凄かった」
「そう・・・・ 手を抜いてない?」
「あぁ、勿論」
「じゃぁ、今日はこのまま」

 マサミの厚い胸板に顔を寄せるカナ。
 ヒトの鼻にも分かるほどに香水の香りが残っている。
 それは主たるアリスの匂いだった。
 お気に入りの男にマーキングするように、アリスはわざと匂いを残したんだろうか・・・・
 カナはふとそんな事を思いながら目を閉じる。

「かな」
「・・・・なに」

 カナは顔を上げずに答えた。

「愛してる」

 マサミはギュッとカナを抱きしめる。
 その強い力がカナの胸を押しつぶして息を吐き出させるほどに。

「・・・・・・ありがとう」
「おやすみ」

 もう一度ギュッとカナを抱きしめてマサミも目を閉じた。
 静かに息をするマサミの耳にユウジの歌声が戻ってくる・・・・

妻には涙を見せないで・・・・

「かな、俺を許してくれるか」
「・・・・私はいつもあなたの味方だから、心配しないで」
「あぁ」

 窓の外遠く、教会の鐘が深夜1時を告げていた。
 カーテン越しに見える月の明かりが部屋にこぼれる。
 螺旋を描いてこぼれる蒼い光に、マサミはヒトの世界の月を思い出していた。

いつかあの世界へ・・・・

 了
557夢日記の人sage2007/10/03(水) 22:51:30 ID:OSURVYjY
ちょっと補足。
いわゆるファンタジー世界の定番たる絶対的君臨者としてのドラゴンですが、
書くだけ書いてから、この世界のバランスを崩してしまう可能性に気が付きました。
ですが、まぁ、今更ですけど、会いたいと願って努力したところでおいそれと会えない存在と言う事でご理解いただきたいと存じます。
この世界の外側から見つめるタイムキーパーと対になる存在、この世界の内側で絶対的調停者としての存在とでも言うのでしょうか。
世界の流れに干渉せず、ただ、人の立ち入れぬところで世界を見ている存在です。

そんなイメージですので、その存在を信じない者が鼻で笑って終わりにしても全然OKです。
すいませんが、そんなイメージでよろしくお願いします。
558名無しさん@ピンキーsage2007/10/04(木) 01:02:27 ID:G9B+ClZ2
泣きながら一気に読んだ
ラストの辺り読んだら酒の飲めなくなった身体だけどしみじみと酒が飲みたくなった
559名無しさん@ピンキーsage2007/10/04(木) 07:51:41 ID:Hu9eyBvN
>>542
朝から一気に読み耽りました。
ちょっと色々思うことがありすぎて、感想をうまく言えないので、
そういうのまとめて安易ではありますがGJとだけ書きます。


……しかし、あんなもの持ってはるばる山越えするあたりがもうねw
560名無しさん@ピンキーsage2007/10/04(木) 11:36:31 ID:fOdz5CeJ
夜勤明けで帰ってきたら強烈なのが来てたぜ!ヤハッ!
なんか、北朝鮮の例の他所の家と子供を交換して食べちゃったって話を思い出すな、
もちろんこの場合は性的な意味でだけどww

カナxアーサーとかアリスxタダとか読みてぇ!
スーパーウルトラGJ!ですた。

しかし、婦人拘束具ねぇ……
陰湿だね、ほんとに。www
561名無しさん@ピンキーsage2007/10/04(木) 16:01:44 ID:CEsgq3l3
初めて覗いてみたけどこのスレsugeeeee!
語彙少なくてGJとしか言えないGJGJ!!

まとめ読んでて一睡もしてないせいで
日差しが目に眩しい…
562名無しさん@ピンキーsage2007/10/04(木) 19:28:57 ID:ZHQ+W27Y
イメージしてたカナが少しずつ変わってきた、あと、アリスも。
未成年の子供にあれこれ教えて楽しんでる領主様ステキ!
563名無しさん@ピンキーsage2007/10/04(木) 23:15:35 ID:Hu9eyBvN
>>560
>陰湿だね、ほんとに。
媚薬漬け股縄とか触手生物とか五感剥奪プレイとか、何げに性拷問大国だからな、あの国w
むしろウサギでもないのにあんな拘束具を実用化した愛すべき馬鹿っぷりが男前だわw


……ところで、ユウジのもう一曲はべーやんの「影法師」じゃないかなと思った。
564名無しさん@ピンキーsage2007/10/04(木) 23:44:53 ID:dAR7M2qL
……っていうかさ、チェーホフっすか。

つ[http://www.geocities.jp/napowhis01/waltz.html]

酒と泪と男と女
名曲だね
飲み屋で歌ってると、自分で歌いながら自分で泣けるアホな俺。
ちょっと飲み行って来る。
565名無しさん@ピンキーsage2007/10/05(金) 18:49:36 ID:3611XcH6
>>564
ユウジが歌ってるのは時代遅れじゃなくて?
566名無しさん@ピンキー2007/10/05(金) 18:52:48 ID:MC9Z2wRt
猫ミミは萌えるぜ
567名無しさん@ピンキーsage2007/10/05(金) 19:02:15 ID:0YGuASJi
>>565
「もう一曲」のことを言ってるんじゃないかな。
あと、河島ファンにはべーやん好きも多い気がするけど、影法師はいくらなんでも後ろ向きすぎるか。
568名無しさん@ピンキーsage2007/10/05(金) 21:59:40 ID:zpnlsxEp
>>566
つまり、「酒と泪と男とネコミミ」という曲を書けば売れると言うことか?
569名無しさん@ピンキーsage2007/10/05(金) 22:14:38 ID:uBJ9+7cu
>>568
その発想はなかった
570名無しさん@ピンキーsage2007/10/05(金) 23:18:51 ID:+dHQxb8P
>>560
夢日記の9話をwikiで読み返してやっと分かった。
アーサーはマヤだけじゃなくてカナにも手を出したからポールに勘当されたんだね。
マサミとの約束がある以上は、例えと言えど制裁したわけか。
実にイヌって種族らしいエピソードだ。
571名無しさん@ピンキーsage2007/10/05(金) 23:34:32 ID:+dHQxb8P
つか、連記スマソ
>Fucking mate! That's a load of bollocks!
そう言う品の悪い英語はどうかなぁ〜(笑
572名無しさん@ピンキーsage2007/10/06(土) 08:56:08 ID:zh3GyTce
>特別篇
それにしても、マサミやカナからすると、リュナってのはそれまで出会ったカモシカとは似ても似つかないタイプだし、
手紙見たときは戸惑っただろうなw
573名無しさん@ピンキーsage2007/10/06(土) 09:18:35 ID:WD9Y51JP
つかなんで英語で急に喋り出すのか分からん…
574名無しさん@ピンキーsage2007/10/06(土) 14:57:05 ID:pMlm6/Oq
カッとなって素が出たって感じじゃね?
特別編読んでると普段から無理してるって感じだから、実際あまり品の良い人間じゃないって感じがする。
575とらひとsage2007/10/07(日) 07:31:13 ID:mKS9Rcw1
 皮袋に着替えや食べ物やオルゴールを詰め込んで、つけ耳つけ尻尾の上からしっかりとフー
ドを被り、千宏はどきどきと、そしてわくわくと馬車に乗り込んだ。
 千宏は、この家と市場以外にこの世界を知らない。市場以外の場所を目的地に家を離れるの
は初めてだ。
 そうでなくても、夜に外出するというのはなんとなく特別な感じがして、それだけで妙に興
奮する。
 アカブはなんだかげんなりしているし、バラムは不機嫌そうだし、パルマはそわそわとして
いたが、そんな事も吹き飛ぶくらいに千宏はうきうきとしていた。
「うれしそうだな……」
 共に馬車に乗り込み、呻くように言ったのはアカブである。
 千宏は窓越しにパルマと抱擁を交わし終え、しっかりと座席に座りなおして当然とばかりに頷いた。
「そりゃ嬉しいよ。超絶楽しみ。だって行ったことないところに行くんだよ? あたしがイヌ
なら尻尾も振ろうってもんだよ」
「絶対に宿から出るなよ」
「……でないよ?」
「……出るなよ」
 一瞬の間を見逃さず、釘を刺すようにアカブが言う。
「出ませんよ」
「チヒロ。俺は本気で言ってんだ」
「本気で出ないってば」
「チヒロ!」
「でーまーせーんーよー」
 だったら俺の目を見て話せと怒鳴るアカブを完全に無視し、がたがたと揺れる景色に目を細める。
「外は怖いなぁ、不安だなぁ。襲われたらどうしよう。絶対部屋から出ないもんね」
 にまにまと口元が緩んだ。
 自分の言葉の白々しさに思わず声を上げて笑いそうになる。
 アカブは苦虫を噛み潰したような表情で根気強く説教を続けていたが、それを右から左へ受
け流し、千宏はいつもと違う景色を見せはじめた馬車の窓から感動の声を上げて身を乗り出した。
 いつも通る道を反れ、月明かりを反射してきらきらと光る川からどんどん離れて行く。
「ねぇ、これから行く町ってどんなとこ? なんて町?」
「……エクカフ」
 苦々しい表情はそのままに、アカブが答える。
「星の町って意味だ。夜でもやたらと明るい。むしろ夜の方が明るい」
「おいしい物ある?」
「外に、出るな!」
 思わず聞いた千宏の言葉に、アカブが脅かすように言う。
「だーから。出ないってば」
 硬い事言うなよ、とでも言うような口調で言われた言葉をアカブが信じるはずも無く、結局
エクカフという町についての情報はほとんど得られぬまま馬車は進んだ。進みに進んだ。窓の
外を眺めるのにも飽きてきた。それくらい進んだ。体を伸ばしたくて狭い馬車の中でじたばた
する。アカブは随分前に「寝る」と一言宣言し、本気で眠りこけてしまって未だに起きる気配
もない。
 千宏は座席で器用に横たわる巨体を恨めしげに睨みつけ、靴を脱いだ裸の足で、げしげしと
アカブを蹴った。
 足の裏に当たるもふもふとした毛皮が気持ちいい。
「……あたしも寝る!」
 寝ているアカブに宣言し、千宏は荷物を枕にして座席にごろりと寝転がった。


                ***


 ついたぞ、起きろと揺すられて、千宏は馬車に揺られながらすっかり眠り込んでいた自分に
気がついた。
 起き上がろうとすると体のあちこちに変な癖がついていて、伸ばそうとすると腕が痛い。
 馬車から差し込む光に既に朝だと知らされて、千宏はごしごしと目を擦った。
「一晩中かかったの?」
576とらひとsage2007/10/07(日) 07:31:49 ID:mKS9Rcw1
「一晩かかるもんなんだ」
 答えながら、アカブが先に馬車を降りる。
 続いて馬車を飛び降りてとんとんと腰を叩くと、そこは人でごった返していた。
 市場では獣臭いと思ったが、この町には妙に甘ったるい香りが満ちている。
「うわぁ――凄い」
「つかまってろ。はぐれるなよ」
 初めて市場に行った時にバラムにそうしてもらったように、千宏はアカブに手を引いてもら
って人混みを歩いた。
 人混みを歩きながら、きょろきょろと回りを見る。
 市場なんかとは比べ物にならないほど華やかに着飾った虎女達は誰も彼もが強烈に色っぽく、
すれ違う男達は老いも若いも様々で、皆一様にギラギラとした印象があった。
 これは本当に部屋から出ない方がいいかも知れないと、千宏が思い直すほどである。
「……あれおいしそう」
「なに?」
 聞き返され、屋台に並んでいる甘そうな果物を指差す。
 するとアカブはあからさまに顔を顰めて、やめとけ、と短く吐き捨てた。
「なんで?」
「幻覚作用がある。おまえが食ったら発狂するぞ」
 うえぇ、と情けない声をあげ、千宏はさっと屋台から目を反らした。
 ひょっとすると、このあたりの屋台で売っている食べ物はみんなそういう物なのだろうか。危なくて迂闊に買い食いも出来やしない。
「ルームサービスにも気をつけろよ。このへんの宿のメニューには、大概精力増強なんかを目的
にしてるもんが混じってる。もちろんおまえが食ったらどうなるか保証はできん」
「そんなの見分けらんないよ!」
「俺が見分けといてやる」
 危険だ。この町には危険が満ちている。
 千宏は早くも来たことを後悔しつつあった。だが、後悔しながらもわくわくしているのは否

できない。
 アカブは白い壁の小奇麗な宿屋の扉をくぐり、フロントで行儀よく一礼した虎女に空き部屋を訪ねた。
 予約していたわけでは無いらしい。
 それとも、そもそも予約と言うシステムがないのだろうか。
 よく分からないが、滞りなく隣り合った二部屋確保する事が出来たらしく、千宏はフロント
の訝るような視線に肩を竦めてアカブに渡された鍵を握り締めた。
「……変な目で見られた」
「あたりまえだろ。この町の宿に男が女連れで来て二部屋取ったんだぞ」
 ラブホテルにカップルが現れ、別々に部屋を取るような物だろうか。なるほど怪しい事この上ない。
「こんなに人いるのに、よく部屋空いてたね」
「朝だからな」
「ふん?」
「今日の朝、帰った奴の部屋が空いてる。特にここは高級な方だから、長期に滞在する奴も
すくねぇし人気もねぇ」
「高い方なんだ。やっぱり。他の宿と違うもんねぇ。いつもこんな宿取るの?」
「おまえがいるからに決まってんだろうが!」
 怒鳴られて、さようでございますねと繕い笑いでアカブをなだめる。
 心配してくれているのだ。なるべく安全な場所に置いてくれようとしている。
 後で様子を見に来る、と残して隣の部屋に消えたアカブを見送って、千宏も早速自分の部屋
へと足を踏み入れた。
 想像していたより狭かったが、想像していたより綺麗だ。
「まぁ、ようはコトを致せればいいんだもんね……広さはいらないよね」
 荷物を置いて、やけに広いベッドに腰を下ろす。
 サテンのような、シルクのような肌触りだが、実際に材質が何かは分からない。
 とりあえず決まりごとのようにベッドの上でぼんぼん跳ねて、すぐさま飽きて千宏は部屋の
散策に乗り出した。
 散策――と言っても広くはない部屋である。風呂場を確認すれば終わりである。
 この世界に来て、しみじみと思うことがあった。
 風呂が広いのだ。やたらと広い。ホテルの個室風呂でもゆうに六畳はある。
577とらひとsage2007/10/07(日) 07:32:54 ID:mKS9Rcw1
 男の体格が大きいので当たり前と言えば当たり前なのだが、元の世界で狭い風呂しか経験し
た事のなかった千宏にとっては心底感動する、ありがたい類の事である
 早くも風呂に入ることを楽しみにしながらベッドルームに戻り、千宏は備え付けの小型冷蔵庫
に目を留めた。
 電気で動いているわけではない事は知っている。
 魔素がどうとか言っていたが、千宏には詳しい事は分からなかった。とにかく、魔法的な
概念らしい。
 しゃがみ込んで冷蔵庫を開け、その中身の充実具合に驚いた。
 飲み物らしき液体の詰まった入れ物や、お菓子と思しき袋や箱。おー、とかわー、とか声を
上げて感心していると、急に背後から肩を掴まれて乱暴に冷蔵庫を閉められた。
 ぎょっとして見上げた先に、慌てた様子のアカブの顔。
「い……いつの間に……」
「油断も隙もねぇやつだな。こんなかの物には手ぇつけんな」
「えぇ! 食べちゃだめなものとそうじゃないの選別してよ!」
「おまえが食って命の保証があるものなんざ入ってねぇ!」
 断言されて軽くへこむ。
 ここに宿泊する者達は普通の物は食べないのだろうか。
「つまんないー。つまんないー!」
「だからついて来んなつっただろうが……」
「やっぱり面白い」
「どっちなんだ!」
 素直なアカブの反応に、けらけらと声を上げて千宏が笑う。
 ぶつくさと文句を言いながらルームサービスのメニュー冊子を開き、アカブは商品名を隠す
ようにペタペタと付箋のような物を貼り始めた。
「それが張ってある奴は頼んじゃだめなのね」
「そうだ」
「食べるとどうなるの?」
「命の保証は――」
「わかった。頼まない」
 声を低くして何度目とも知れない脅し文句を吐こうとするアカブを制し、千宏はふらふらと
部屋を歩き回って最終的にベッドに倒れこんだ。
 他にする事がないからである。
 ごそごそと荷物を漁ってオルゴールを引っ張り出し、ゼンマイを回す。
 くるみ割り人形の旋律に浸りながらベッドに仰向けに寝転がり、千宏はごろごろとベッドの
上で転がりまわった。
「そういえばさ」
「なんだ」
「受付のお姉さんは発情してなかったね」
「抑制剤使ってるんだろ」
 そういえば、バラムが発情を抑制する薬があると話してくれた事がある。
 さして興味のある話でもなかったので、疑問が解決しただけで満足する。
 その後もアカブは部屋の中をうろつきまわり、怪しげな色をした入浴剤を回収したり、可愛
らしい小瓶に入った香水を指差して間違っても使うなと釘を刺したりと、抜かりなく保護者と
しての任務を遂行した。
 ありがたい事である。
 ようやく全てを終えた頃にはもうすぐ昼と言う時刻で、千宏はアカブの背中に向かってお腹
が空いたと騒ぎ立てた。
 これにはアカブも特に怒った様子もなく、もうすぐ昼かと同意する。
 ベッドに転がっている千宏を呼び寄せて内線と思しき機械を手に取り、アカブは使い方を
千宏に教えながら通話相手に商品番号を伝えて受話器を置いた。
 形はそのまま電話機である。
 ルームサービスを待つ間も食事を取りながらもアカブは母親のように小言を絶やさなかった
ので、とうとう千宏はおざなりな返事を返すこともやめて完全に無視を決め込んだ。
 外に出るなよ、と釘を刺されれば、うん、これおいしいね、と答えるような具合である。
 ちゃんとじっとしてるから自分の部屋に帰れと言うのに信用ならんと部屋に留まり続け、
アカブは結局日が落ちるまで千宏の部屋を動かなかった。
 話し相手がいるのはありがたい事だったが、これではバラムの言ったとおり、アカブが気の毒だ。
578とらひとsage2007/10/07(日) 07:33:29 ID:mKS9Rcw1
 しかし出て行けと言っても無駄である事は明白だ。ほっといて女を漁りに行ってこいとあけ
すけに言ってみてもいいだろうが、今までの倍の量の小言を半分の時間で聞くことになりそうである。
「ねぇ、あのさ」
「なんだ」
「あたし、お風呂入りたいんだけど……」
 狙い通り、アカブは見事に固まった。
 どれだけ小言のレパートリーがあるのかと興味深くなるような説教をやめにして、疑るよう
な目つきで千宏を見る。
「本当に部屋から出ないって誓うよ。お風呂に入って、字の練習でもしながら時間潰す。もう
夜になるんだよ? お説教聞きすぎて眠いくらいだよ」
「俺だって好きで説教たれてるんじゃねぇよ! おまえの事を心配してだなぁ……!」
「わかってるよ! つれてきてもらっただけでも感謝なんだから、これ以上迷惑かけません。
だから安心して。なにか用があれば、あたしから部屋に行くから。アカブは二週間後にあたし
の部屋のドアをノックしてくれればそれでいいよ」
「いや、そういうわけには……」
「アカブ! あたしお風呂に入りたいの。わかる? 一人にしてって言ってるんだよ! それ
ともあたしのお風呂でも覗きたいわけ?」
 うぐぐ、と、アカブが鋭い牙の隙間から呻き声を洩らす。
 数秒の睨み合いの末に諦めたようにのっそりと立ち上がり、何度も何度も千宏に外に出るな
と釘を刺しながら、アカブはじりじりとドアへと向かった。
 たっぷりと時間をかけてドアにたどり着き、ノブを握ってなお振り返る。
「ぜ……ったいに外に出るなよ! なるべくなら部屋からも出るなよ!」
「わかってるよお母さん! あたしもう子供じゃないの!」
 アカブが間抜け面で目を瞬く。
 千宏が片眉を吊り上げると忌々しげに悪態を付き、アカブは叩きつけるようにドアを閉めて
ようやく部屋を後にした。
 溜息を一つ、千宏はやれやれと天井を仰ぐ。
 窓の外は薄暗く、町には明かりが点り始めていた。
 色とりどりの輝きが建物を飾る――まるでネオンのようだと思った。
 窓からひょいと身を乗り出し、けばけばしく露出度の高い女達の甲高い笑い声に身を竦める。
「……ザイズの比率明らかにおかしいんだけどなぁ」
 男女が連れ立ち、寄り添って歩く姿を見下ろしながら呟いて、千宏はひらりと身を返し、
アカブに宣言したとおり浴室に向かった。


                   ***


 エクカフの夜は明るい。
 けばけばしく、毒々しく、喧しくてごみごみしている。
 女達は着飾って男を誘惑し、男達はもとよりその誘惑に乗るつもりでこの町を訪れる。
 アカブはこの町が嫌いではなかった。色とりどりの明かりを見ているのは好きだし、やや女
性不審気味ではあるが女は嫌いじゃない。
 この町が好きかと聞かれたら二つ返事で頷く事は出来ないが、それでも毎年この町を訪れて
いるのがこの町を嫌っていない何よりの証拠だろう。
 千宏から部屋を追い出され、やる事も無いので仕方なく夜の街に出た。
 仕方なく――もなにもこれが本来の目的なのだから当たり前ではあるのだが、部屋に残して
きた千宏が気になって仕方がない。
 町にいくつもある社交場の前に立ち、アカブは顔を顰めて中に入るのをためらっていた。
 社交場――と言っても、上の階に部屋を用意していたり、訪れる者全員の目的が一つである
ことを除けば単なるけばけばしい酒場である。
 白い毛並みは珍しく、バラムと比べさえしなければアカブの容姿はいい方だ。
 一度店に入ればそれこそ引く手あまたで、その気になれば一日に何人もの女をはべらせる
ことだって可能だろう。
 だが、落ち着かない。気が散って仕方がない。
 まるで、一人で歩けない赤ん坊を部屋に残して、生まれたばかりの小動物を放置して夜遊び
に出たような――そんな後ろめたい気分が付きまとって離れない。
 店に入って、女を抱いて、一晩明けて宿に戻り、部屋に千宏がいなかったらどうすればいい。
 何処を捜せばいい。どう捜せばいい。
579とらひとsage2007/10/07(日) 07:34:03 ID:mKS9Rcw1
 発情期の女のにおいがアカブの情欲をくすぐる。ほぼ全ての店から溢れ出す甘ったるい香り
が本能に揺さぶりをかける。
「……無理だ」
 忌々しげに吐き捨てて、アカブは駆け出した。宿に向かって。一目散に。
 他の町に行こう。千宏を連れてもう少し足を伸ばし、二週間という長い休暇でもっとこの
世界を見せてやればいい。
 どうしてもっと早く気付かなかったのだろう。
 千宏がいるのだ。無理にさして好きでもない町に来て、義務のように女を抱く必要は何処にも
ない。旅の連れがいるのだ。もっと他に楽しみ方がある。
 ふと、立ち並ぶ屋台の前でアカブは足を止めた。
 もしまかり間違って千宏が一人で部屋を出たりしていなければ、千宏は今頃、早くも退屈に
喘ぎながら手作りの焼き菓子をかじっているに違いない。
 おいしい物ある? と千宏は聞いた。あるとも、と答えてやらなかったのは、千宏が一人で
行動したがるのを最小限に抑えたかったからである。
 自分が付いているのなら、この危険な町だって隅々まで案内できる。
 アカブは土産を買っていってやろうといくつもの屋台に立ち寄り、一日中小言を聞かされて
へばっているだろう千宏の驚愕を思って一人口角を持ち上げた。


                ***


 想定外の事が起こった。
 予想外だった。考えもしなかった。
 まさか――まさかアカブ以外がこの部屋のドアを叩くなど、千宏には全く想像し得ない
驚天動地の大事件だった。
 実際には、宿の関係者である可能性までは考えた。
 だからこそ千宏はつけ耳とつけ尻尾を装着し、すっぽりとローブを被って応じたのである。
 窓の外からの視線を気にして、風呂上りにもつけ耳は外さなかったが、ローブはさすがに
脱いでいたのだ。
 その状態で、窓から外の様子を眺めていたのが原因だろう。
 今、ドアの前に立っている野性味溢れる虎男を前に、千宏は呆然と立ち尽くしていた。
「窓からおまえが見えたんだ――連れはいないんだろ? 俺を試してみねぇか」
「……私、発情期じゃないんです」
 妙に堅苦しい言葉を吐いてドアを閉めようとしたあたり、千宏は自分で自分を心の底で
徹底的に褒め殺した。
 そして、ドアを閉めようとした千宏の努力を無視して力づくでドアをこじ開けた虎男を、
心の底で徹底的に罵った。
「つれねぇな。安心しろよ。少し遅れてるからってどうってことねぇ。薬でどうにでもなる」
「あの、旅の途中でこの町に立ち寄っただけで、私は別にそういった事が目的では……」
 ずいと足を踏み出した男の勢いに思わず後ずさってしまい、千宏は内心舌打ちした。
 男が部屋に入ってくる。慌てて押し戻そうとした腕を捕まれて抱き寄せられ、千宏は這い上がって
来る不快感に戦慄した。
「や……やめてください! 人を呼びますよ! やめてよ馬鹿! やめろつってんだろ!」
「そう言いながら全然抵抗しねぇじゃねぇか。フード脱げよ。黒髪なんて珍しいじゃねぇか。
もっと見せびらかせって」
 これでも抵抗しているのだと怒鳴ろうとした矢先、ついとフードを跳ね上げられる。
 出来のいい付け耳がばれる事はなかったが、本来の耳の存在に気づかれたら厄介だ。ヒト
だとバレたら、それこそそのまま拉致されるに違いない。
 じたばたと身を捩っていると男が拘束を緩めてくれたため、千宏は慌ててフードを被って
部屋の隅にうずくまり、徹底的な拒絶を示して男を睨んだ。
「出てって」
「そうつんけんするなよ。ムードなんかにこだわるタイプか? なんなら一曲歌ってやろうか」
「出てけって言ってんだよ! 自惚れんな醜男! あたしには連れがいるんだ! 今はいない
けど、そのうち帰ってくる!」
「そうだな。他の女と何発かやってからな。だからその間俺たちも楽しもうぜ? な?」
 千宏の罵声など全く意に介さず、男が更に足を進める。
 時間はたっぷりあるのだとでも言いたげである――実際、それはもうたっぷりと時間はある
のだが――。
580とらひとsage2007/10/07(日) 07:34:37 ID:mKS9Rcw1
「あたしの連れ、嫉妬深いんだ」
「本気か? そんな男やめちまえよ」
「あたしに触ったら殺されるよ。本気で。絶対」
「返り討ちにしてやるさ」
「アカブって言うんだ。白い毛並みで、凄く綺麗で、大きくて、強いんだぞ!」
 強がって怒鳴ってはみたが、男は平然としていた。
 眼前に立ち塞がる男との距離は、もう手を伸ばせば届いてしまうほどである。
 しゃがみこんだ視界は低く、千宏には男の足しか見えない。
 その足の向こうに見えるドアを真っ直ぐに睨み、千宏は腰のナイフを握ろうとして、風呂場
に置いてきてしまったことに気がついた。
 急に心細くなる。
 見上げた先にあるのは、面白がるような余裕を含んだ笑顔。
「出ってよ……」
「どうして」
「嫌だからに決まってんだよ! 願い下げなんだよ! 出てけ! 出ていけ!」
 ふわりと、体が宙に浮いた。
 うわ、と零す間もなくふかふかのベッドに転がされ、圧し掛かられる。
「嫌なら抵抗すりゃいいだろ。ん? 抵抗しねぇってことは、嫌じゃねぇんだろ?」
 だから、これでも全身全霊を込めて抵抗しているのだ。
 瞳一杯に涙を溜めて男を睨み、千宏はまたこのパターンなのかと泣きたくなった。
 しかも今回は、合意の上とみなされているのでなお性質が悪い――ような気がする。
「嫌だ」
 アカブと生活を共にしたおかげで、虎男に対する恐怖心は大分薄れていた。
 喉が引きつって声が出ないと言う事もない。
「本当に、嫌なの。抵抗しなくてもわかるでしょ? 本気で嫌なの。嫌なんだよ!」
「まぁ待てよ。今薬やるからさ」
「いらないよ薬なんか! いらない! いらない!」
 男が取り出した小瓶を瞠目し、千宏は男に圧し掛かられた時より遥かに身の危険を感じて声を荒げた。
「こいつは効くぜぇ? 泣くほどよがらせてやるよ。ほら、口開けろ」
 死ぬ。これを飲んだら間違いなく死ぬ。死ななくても発狂する。
 瓶のふたを開け、口元に寄せられるのを嫌がって、千宏は思い切り顔を逸らして悲鳴を上げた。
「それ、アレルギー!」
「――あん?」
 男が反応したのを好機と見て、千宏は一気に捲くし立てた。
「その薬アレルギーなの。飲むと全身に蕁麻疹がでてやるどころの騒ぎじゃなくなるから! 
はやくそれ引っ込めて! 鳥肌立ってきた!」
 実際、千宏の全身は余す所なく鳥肌状態である。
 そうか、だめかとあっけなく薬を引っ込めてくれた男に心から感謝して、千宏は再び自身の
機転に涙ながらに称賛を送った。
「し、死ぬかと思った……」
 思うに、この世界の人間にはいい人が多い。と言うより、トラは全体的にいい人な気がする。
 ずりずりと男の下から這い出してベッドの上に正座をし、千宏はしっかりとフードを被り
なおしてひたと正面に男を見据えた。
 男もそれに釣られたように、千宏の正面に胡坐をかく。
「あのね、あたし、実は奴隷なんだ」
「ど……奴隷?」
「そう。奴隷。ご主人様は今、町で女漁りしてるけど、帰ってきてあたしが誰かと寝たって
知ったら絶対にあたしの事酷く殴る。殺されるかもしれない。だから、抑制剤で発情を抑制し
てるし、他の男とも寝られない」
 すらすらと出てきたデタラメな作り話に、千宏自身が驚いた。
 人間、切羽詰るとどんな途方もない嘘でも真面目な顔で語れるものである。
 果たして、この世界に同族を奴隷にする制度があるかどうかは知らないが、不謹慎ながら
今回ばかりはそれがある事を願わずにはいられない。
「あの、だから今日の所はお引取り願ってですね……君は他の、もっと美人な人をひっかける
といいよ。さっきは醜男とか言ったけど、ほんとはいい男だし……たぶん」
「逃げよう!」
 がしっと肩を掴まれ、力強い声に愕然とする。
「――へ?」
581とらひとsage2007/10/07(日) 07:35:16 ID:mKS9Rcw1
 思わず零した千宏の声を耳に入らない様子で、男は千宏の腕をつかむとひょいとその体を
抱え上げた。
「そんな野郎の奴隷なんざやってることねぇ。安心しろ。俺が逃がしてやる」
 まずい――ことに、なった。これはまずい。善意の果てに誘拐される。
「い……いや、あの、ご、ご好意はありがたいけど! それ程酷い扱いも受けてないから……」
「殴られて殺されるんだろ!」
「あー、いや……まぁ……でもそれはあたしが不貞を働いた場合で……」
 いい人だ。善人だ。善意に燃える正義の塊だ。
 千宏は内心頭を抱えて悶絶した。なんとかこの状況を打開しなければならない。悪のご主人
様が帰って来て、この正義感を殴り倒してくれないだろうかと都合のいいことを考えずには
いられない。
 そして、男が千宏を抱えて勢いよくドアを開けた瞬間、都合のいい考えは実現した。
 ぎょっとして目を見開いた、間抜け面のアカブである。
 実にタイミングよく現われてくれる兄弟だ。おかげでいつも命拾いをしている。
 いかんせん、土産らしき物を抱えたアカブの姿が、奴隷を殴る極悪なご主人様とはかけ離れ
てはいるが――。
「ご――ご主人様!」
 それでも、言わずにはいられなかった。
 はっとした男が千宏を降ろして背後に隠し、状況が理解できていないアカブと対峙する。
 ご主人様発言に面食らっているのは明らかだ。
「てめぇか。この女の持ち主は」
 その敵意むき出しの発言に、さっとアカブが表情を引き締める。そうしていると中々に悪役
面である。千宏は生まれて初めて、悪役の勝利を本気で祈った。
「――どういうことだ、チヒロ」
「は! あ、あのですね……ま、窓から外を見ていたわたくしめを気に入ってくださったらしく、
この方が部屋にいらっしゃいまして……」
「嫉妬深いご主人様で、他の男と寝たら殺されるって怯えてたんだ。人間を奴隷扱いするなん
ざ――ましてやこんな小さくて細っこい女を殴るなんざ最低のくず野郎だ!」
 愕然とアカブが目を剥き、どう言う事だと千宏を睨む。
 男の背後でへこへこと頭を下げ、千宏は本当に申し訳ないが話しを合わせてくれないかと
身振り手振りで訴えた。
「おい坊主……」
 面倒くさそうな溜息を一つ吐き、アカブがとん、と男の肩を叩く。
 瞬間――。
「出直せ」
 破顔一生、千宏には目視できない速度でアカブの拳が男の横っ面を殴りつけ、千宏を庇う
ようにして立ち塞がっていた男は白目を剥いて昏倒した。
 あんぐりと口を開けて男を見下ろし、ついで痛そうに腕を振りながら突っ立っているアカブを見る。
 その片腕には土産の袋を抱えたままで、千宏は唇を引きつらせて乾いた笑いを零した。
 今さらながら、カブラ達に同情する。
「おら、とっとと部屋に入れ。ご主人様のお帰りだぞ」
「は……お、お帰りなさいませ。お帰りを心待ちにしておりました。本気で。死ぬほど」
 半ば呆れ気味に指示されて部屋に入り、千宏は気を失っている男にもう一度だけ一瞥をくれ
てから、
小声でごめんね、と謝ってしっかりとドアを閉め、鍵を下ろした。

 あの状況に至ってしまった顛末をやや誇張を交えて伝えると、アカブは納得してくれたのか
千宏を激しく叱り付けはしなかった。
 それどころか、おまえを一人にした俺が悪いとまで言い出す始末である。
 そのアカブの言葉により一層申し訳なさが引き立って、千宏はアカブが買ってきてくれたお
土産をありがたく頂きながら何度も何度も謝った。
「と、ところでさ……」
 なんだ、とアカブが顔を上げる。
 聞いていいものか悩むような質問だったが、しかし千宏は思い切って切り出した。
「随分帰ってくるの早かったけど……その、わ、忘れ物かなにか?」
 まさか、女に相手にされなかったのかなどと聞く訳にはいかず、いわんやアカブって
はやいの? などと聞く事は許されない。
582とらひとsage2007/10/07(日) 07:36:12 ID:mKS9Rcw1
 幾重にもオブラートに包んだ千宏の質問の真意を理解したのかどうかは知らないが、アカブ
はこんがりと焼けた鶏肉にかぶりつきながら千宏を見た。
「おまえが心配だから帰ってきた」
「……へ?」
「気が散って女どころじゃねぇよ。実際、帰ってきて正解だったわけだしな」
 それはまぁ、確かに帰ってきてくれて助かったのは事実だが――。
「あの、じゃ、じゃあ……その、し、してないの?」
 下世話な質問である。
 アカブはあからさまに嫌そうな顔をして、それがどうしたと吐き捨てた。
「だ、だってさ! あの、この町って発情期の女の人が沢山いるんだよね。ってことはさ、あ、
アカブだって、その人達の近くにいたら欲情するんでしょ? 我慢してるの?」
「んんなこと聞いてどうする」
「だって! が、我慢は良くないよ! あたしはもう大丈夫だからさ、も、もう一回出かけて
きなよ。ね? 夜はまだ始まったばっかりだよ!」
「大丈夫ねぇ……」
 呆れ混じりにアカブがドアの外に視線を投げる。
 うぐ、と言葉を詰めた千宏を一瞥し、アカブは再び鶏肉にかぶりついた。
 この話題はお仕舞いだという合図である。
「……あの」
「今度はなんだ」
「じゃあ、その……な、な……な……」
「な?」
「な……なめてあげようか……?」
 今にも消え入りそうな声で、と言うよりほとんど消えているような声量での千宏の提案に、
アカブは手にしていた肉の塊を骨ごと握力で粉砕した。
 気まずい沈黙が流れる。
 アカブは身じろぎ一つしない。
「だ、だってさ! あ、あたしが無理やり付いてきたせいで……その、折角の発情期を、無駄
にすることになりつつあるわけで……そ、それじゃあ申し訳が立たないでしょ?」
 だから、だからと繰り返し、固まってしまっているアカブを見る。
「だ、だからですね……せ、せめて、その、ご、ご奉仕をだね……」
「な……何を舐めるって?」
 無理やりとぼけて見せたアカブの言葉に、千宏は耳まで真っ赤に染めて俯いた。
 馬鹿なことを言った。馬鹿なことを言った。馬鹿なことを馬鹿なことを馬鹿なことを――!
「だから! アカブの、その、下半身のイチモツをだね……! あたしの舌でもってご奉仕を
して慰めてだね……!」
「よせ! それ以上言うな! 言うんじゃねぇ!」
 羞恥のあまり安っぽい官能小説のような表現を使って説明を計った千宏に対し、アカブは
おお慌てで制止をかけた。
 恐らくはアカブも真っ赤になっているのだろうが、生憎と毛皮のせいでわからない。
 凄まじい緊張感が二人の間に走っていた。
 とてもじゃないがお互いに目を合わせられない。
「お……女に恥をかかせるもんじゃ、ないらしいよ……」
「こ、これを断ってもおまえの恥にゃならねぇだろう……」
「な、舐めてほしくないの……?」
「いや、そういう聞き方はずりぃだろ……」
 ごくりと、お互いの喉が鳴る。
「おまえ……俺の事、男として見てねぇんじゃ、なかったのかよ……」
「み……見てたらこんな事言ってないよ……」
「見てねぇ奴にそんな事が言えんのか……」
「言えてるんだから、言えるんじゃないかな……」
 アカブがソファに腰を下ろしたまま、爪でこつこつとテーブルを叩いた。
 苛立たしげに視線をあちらこちらへさまよわせ、重々しく目を閉じてはまた開く。
「……家族だ」
「でも、バラムはパルマと……その、するじゃんか」
「パルマは元々そのために来たんだ!」
「それでもするじゃないか! アカブはあたしに舐めて欲しくないわけ? それとも舐めて
欲しいわけ? はっきりしろよ男らしくないな!」
「そりゃあ……! おまえ……そりゃ……」
 息苦しいほどに心臓が脈打ち、千宏はぐっと胸の辺りを押さえこんだ。
583とらひとsage2007/10/07(日) 07:36:46 ID:mKS9Rcw1
「……じゃあ、頼む」
 そう、アカブが呟いた瞬間、心臓が明らかに大きく脈打った。
 うわぁ、うわぁ――と心の中で繰り返す。
 頼まれてしまった。頼まれてしまったからには、もう引き返せない。引き返せないのだ。
「じゃあ、あの……お風呂、入ってきてください」
「あ、お、おう……」
 ぎこちなく、よそよそしく言葉を交わす。
 ぎくしゃくと浴室に消えたアカブの後ろ姿を見送って、千宏はベッドにダイブしてもんどりうった。
「うわぁああぁ! あぁああぁ! ばかばかばかばか! あたしの馬鹿! ドアホ! 単細胞
生物以下の思考力しか持ち合わせてない脳みそセリー女!」
 毛布に包まり、枕に深く顔をうずめ、もごもごとそんな事を絶叫する。
 舐めると言う事はつまりフェラだ。フェラチオだ。和風に言えば尺八である。
 そんな事やった事もないのに、舐めてやろうかなどとよくぞ言えたものだ。気持ちよくして
あげられなかったら恥さらしもいい所だ。
 始めたはいいけれど、「やっぱ気持ちよくないからやめよう」なんて流れになったら恐らく
一生立ち直れない。
「どうやるんだっけー、どうやるんだっけぇぇ……!」
 裏スジを舐めるだとか、睾丸も揉むだとか、亀頭あたりを念入りにだとか、耳年間な部類の
千宏は知識だけは豊富である。
 ベッドに腰掛けたアカブのモノを舐めしゃぶっている自分の姿を想像してしまい、千宏は再
び奇声を上げて悶絶した。
 絶叫マシンの列に並んだら最前列に当たってしまい、しり込みしているような様子である。
 今更やめられない。引くに引けない。やるしかないのだ。自分がやると言ってしまったのだ。
 相手はアカブだ。アカブだから大丈夫だ。意味のわからない理論を頭の中で繰り返し、必死
に自分に言い聞かせる。

 毛布に包まり、頭を抱え、とうとう口に出して大丈夫大丈夫と呪文のように繰り返している
うちに浴室で動きがあった。
 来る。出て来る。出て来てしまう。
 瞬間、すっと頭が冷えて行くのを感じ、千宏は毛布を跳ね除けベッドサイドに腰掛けてアカブを待った。
 ドアが開き、律儀に服を着込んでアカブが出てくる。
 まぁ、舐めるだけならば脱衣の必要は無いのだろう――少しだけほっとした。
 ごく最近知った事なのだが、昔から伝わる魔法というものがあるらしく、風呂上りに毛を拭
くのが大変で困る――という事は、少なくともアカブに限っては無いらしい。
 確かに、誰も彼もが毛むくじゃらのこの世界ならば、風呂上りに毛を乾かす魔法があっても
おかしくはないだろう。
 今も風呂上りにも関わらず、アカブの毛並みはふかふかである。
「じゃあ……ここに」
 気まずいので視線を合わせず、ぽんぽんとベッドサイドを叩く。
 素直に従ったアカブの重みでベッドが沈み、千宏は大きく息を吸い込んだ。
「さ、先に言っとくけど、上手ではないからね」
「あ、あぁ。わかってる」
「そ、そう……ならいいんだ」
 ぺたりと、カーペットの敷き詰められた床に膝を付く。
「あ、あのなチヒロ」
「なに?」
「別に……い、嫌ならやめてもいいんだぞ」
 まるで悪事を働こうとする友人をたしなめるようなその口調に、千宏はむっとしてアカブを
睨み上げた。
「嫌じゃない」
「そ、そうか?」
「嫌じゃないよ!」
「わ、わかったわかった! 悪かった!」
 半ば自分に向けて怒鳴ったようなものだったが、アカブは慌てたように謝罪を述べて再び
気まずそうに沈黙した。
 そうだ。そうとも。嫌じゃない。
 千宏は失礼しますよ、などと仕事的な言葉を吐いてアカブのズボンの前を開け、恐る恐る
その中のものを引っ張り出した。
584とらひとsage2007/10/07(日) 07:37:22 ID:mKS9Rcw1
 人間のものを見た事がないので比較する事は出来ないが、印象の中のカブラよりは小さいよ
うに思う――と思ったが、まだ完全に勃起しているわけではないのだから当然か、とも思う。
 全て体毛に包まれているのかと思っていたがそういうわけでは無いらしく、全体的にほわほ
わとした繊毛は生えていたが想像してたよりもずっと生々しい。
 舐めるのか。これを。舐めるのだ。これを。
「……まだなんもしてないのに、なんか硬いね……」
「この状況でたたねぇ男がいたらお目にかかりてぇよ……!」
 恥ずかしそうにアカブが吐き捨てる。
 そういうものなのかと納得する事にして、千宏はしっかりとフードを目元まで引き下ろした。
 舐めている顔は傍から見ると間抜けらしいと知っていたので、見せたくないのだ。
「あの、どこが気持ちいいとか、言ってくれていいからね。言うとおりにするから」
「あ、あぁ……」
「じゃあ……はじめます」
 なんとなく正座で一礼したくなる気分である。
 ごくりと唾液を飲み込んで、千宏はぺろりと舌を出し、様子を見るようにちろちろと竿のあ
たりをくすぐった。
 特に妙な味はしない。少し大胆に舐めてみる。
 たっぷりと唾液を乗せ、舌全体を使ってねっとりと――。

 ヒトの体温は、トラのそれより少し低い。
 少しひやりとする感触に戸惑ったが、おずおずと這わされる舌は滑らかで、どこかもどかしい
快感にぞくぞくする。
 イヌの女の舌はたまらない――とどこかで聞いた事があるが、そのイヌでさえヒトの口はた
まらないと評するのだから、相当なものなのだろう。
 ぺちゃぺちゃと音を立てて舐める千宏の頭をローブ越しにそっと撫でると、千宏はビクリと
肩を震わせて一瞬舌の動きを止めた。
「ど、どうかした?」
「チヒロ、しゃぶってくれ」
「しゃぶッ……! あ、あぁ、うん。わ、わかった……」
 必死に嫌がるまいとするその態度に、よしよしと千宏の頭を撫でる。
 躊躇するような間を開けて、千宏がぱくりと先端を銜え込んだ。
 ふにふにと柔らかな唇がカリのあたりを包み込み、舌が怯えるように、探るように亀頭を撫でる。
 苦しそうに大きく上下する肩が妙に扇情的で、慣れて来たのかちゅぱちゅぱと音を立てて
控えめに吸い上げられる感覚にアカブはうっとりと目を閉じた。
 千宏としてはそんなつもりは無いのだろうが、まるで焦らされているような錯覚を覚える。
 そのもどかしさが心地よくて、乱暴に喉の奥まで突き入れたくなる衝動を押さえ込む。
 初めてにしては上手い方だと思った。思い出したように空いた手で咥えきれない部分を
しごいたり、やわやわと睾丸を揉んだりしている。
 歯を立てる事もないし、あらぬ力で握りつぶされる心配もなさそうだ。
 顔が見たいと思った。フード越しに撫でていた手に力を込めて、皮でも剥くようにずるりと
フードを脱がす。
 慌てて取り返そうとした千宏を制して続きを促すと、千宏は恨みがましそうにしばし動きを
止めただけで、大人しく指示に従った。
 興奮しているのか、ただ息が苦しいだけなのか、千宏は顔を真っ赤にして呼吸を乱していた。
 時折口を離して呼吸を整え、舐め上げ、くすぐり、くわえ込む。
 唾液が絡み、舌が、指が、唇が、じわりじわりとアカブを追い詰める。
 自然と呼吸が乱れた。それに気付いたのか、調子付いたように千宏が動きを速める。
 這い上がってくる欲求を抑えて、抑えて、抑え込んで――。
「出すぞ――ッ!」
 短く吼えるように宣言し、意味が理解できなかった様子の千宏の口の中に思い切りぶちまけた。
 驚いたように息を詰め、千宏が身を引こうとするのを許さずに全て口の中に注ぎ込む。
 半ば恍惚として全て出し切りようやく解放してやると、千宏は苦しそうにぼろぼろと涙を流
してむせ返った。
 ぽたぽたとカーペットに白濁とした液体がこぼれる。
「な……なんで口の中に出すんだよ! 馬鹿! さいっあくだよもう! にが! まっず! 
うっわまっず! なにこれ!」
 耐えられないと言うように、千宏が立ち上がってばたばたと洗面所へと走って行く。
585とらひとsage2007/10/07(日) 07:38:02 ID:mKS9Rcw1
 盛大にうがいする音を聞きながら苦笑いを浮かべ、アカブはものを納めて立ち上がった。
 余韻もへったくれもない。
「悪い。平気か?」
 洗面所を覗き込むと、ぐちゅぐちゅと口をすすぎながら千宏が恨みがましそうな目でアカブ
を睨んだ。
 水を吐き出して口を拭い、平気、とだけ言い捨ててアカブの横をすり抜ける。
 部屋に戻るなり千宏はテーブルに並んでいる土産の中からクッキーを選びだし、口いっぱい
に頬張ってろくに味わいもせずに飲み下した。
「あんなの平気で飲める人ってどうかしてる」
「味わった事はねぇが……俺もそう思う」
 口直しとでも言うように次から次へとクッキーを口の中に放り込みながら、千宏は恥ずかしいのか、
怒ったようにアカブから視線を反らした。
「き……気持ちよかった……?」
「よくなかったら口の中に出したりしねぇよ」
「そ、そっか……ならまぁ……うん、よかった……」
 照れたのか、少し嬉しそうな表情で、千宏がもごもごと呟く。
 事実、本当に気持ちよかった。
 さすがにプロ並みとは言えないし、慣れている女に比べたら遥かに稚拙だったが、柔らかく
ぷにぷにとしていて滑らかな舌の感触はトラの女には真似できない。
 思い出すと、出したばかりだと言うのにまた勃ってしまいそうな気配を察し、アカブは慌てて
記憶を振り払った。
「ありがとうな」
 ソファに腰を下ろしている千宏の隣に座り、ぽんぽんと頭を撫でる。
「……うん」
 照れくさそうに頷く横顔は可愛らしいが、恋仲のような甘い雰囲気は何処にもない。
 行為の最中にさえ、どこか事務的で作業めいた感覚があったのだ。それを行為の後に求めるのは
土台無理な話である。
「……あのさ」
「ん?」
「二週間……毎日、しないと、意味ないんだよね……これ」
「ああ、そりゃ――」
 明日にでもこの町を出るから、という言葉は、喉から出ずに途中で止まった。
 気付いてはいけない事に気付いてしまった。
 千宏は今、この状況から逃げられない。ここで一言、ああ、そうだなと肯定すれば、千宏は
毎日――望んでかどうかは別として、進んでアカブに奉仕をしてくれるだろう。
「顎が筋肉痛になりそう……っていうかさ、く、口に出すのはもうやめてよね。ほんっと凄い
味なんだから。あと臭い。人間が口にしていいもんじゃないよあれ」
「あ、あぁ……そうだな」
「あの、よくわかんないんだけどさ……その、い、一日一回で、た、足りないんだったら……
それも言ってくれていいからね? 一応、全部あたしのせいなんだし……」
 それ以上誘惑しないでくれ、と思った。
 千宏が恥ずかしそうに顔を伏せる。
「――チヒロ」
「うん?」
「明日の朝、町を出るぞ」
 え、と千宏が目を見開いた。
 でも、だってと目を瞬く。
「他の町に行こう。二週間ありゃあ海にだって余裕で行ける。今までは目的がねぇからここに
来てたんだ。おまえがいるなら、なにもこんな所でぐだぐだしてる必要はねぇ」
「――海? 海があるの?」
 きらきらと、千宏が目を輝かせて驚いた。
「うわぁ! み、見たい! 見てみたい! 連れてってくれるの?」
「あぁ、連れてってやる」
 その答えに感極まって歓声を上げ、千宏はアカブの首に突進するように抱きついた。
「ありがとう! アカブ大好き!」
 ぎゅうぎゅうと締め付けられ、アカブは半ば気が抜けたようになってその背中をぽんぽんと叩いた。
586とらひとsage2007/10/07(日) 07:40:28 ID:mKS9Rcw1
 馬鹿げている。
 千宏は家族だ。
 それを、こんな町に繋ぎとめて――それこそ、本当に性奴隷のように扱おうなどと――。
「でもいいの? 旅費だってかかるだろうし……」
「問題ねぇよ」
「海って事はさ、船もあるんだよね?」
「あぁ、あるな。入り江の対岸を結んで船が出てる――乗りてぇか」
「の、乗れるの?」
「そりゃ船だからな」
 当たり前だろう、とアカブが笑う。
 千宏は感動で顔を真っ赤に染めて、湧き上がる衝動を抑えきれないとでも言うようにばしばしと
アカブの肩を叩いた。
「ついてきてよかった。ほんとにうれしい。死ぬかもしれない。なんかアカブに一生しがみ
付いてたい気分」
 言うなり、再びアカブの首にしがみ付く。
「よし、なんか色々腹を括った! 吹っ切れた!」
「あん?」
「あたしの体、好きに使っていいよ」
 満面の笑みで言われたその言葉に、アカブは表情を失った。
 無邪気ゆえに、なぜかその言葉がひどく重く感じられる。
「それくらいしか出来ないから、なんでもして。何でも言って。なんでもするし、なんでもしていい」
「チヒロ……」
「ほんとだよ? 舞い上がって適当な事言ってるんじゃないよ。本気だから! 安心して何で
も言って! それくらい感謝してる!」
「チヒロ、よせ。そんな事言うんじゃねぇ」
「でも――」
「いいんだ。見返りなんぞ求めて言ってるんじゃねぇ。おまえはもう十分仕事してるじゃねぇか。
これ以上何もさせやしねぇよ」
「だけど……」
 不安そうなその体を、たまらずぎゅうと抱きしめる。
 先程自分が考えた事を見透かされたような気分だった。
 いや、きっと見透かされていたのだ。ずっと千宏は、だから必死に家族であろうと努力していたのだ。
 そう思うとひどく悲しかった。
 千宏がそう思わざるを得ない状況を作り出していたのは、他ならぬ自分の下心だ。
 ヒトである千宏に対し、一度も情欲の目を向けた事が無かったのかと自問すれば、答えは否である。
「家族じゃねぇか。そうだろ?」
「あ、アカブ……ちょ、く、苦しい! 半端じゃなく腕! 力入ってる! くるし――ってか
いだだだだ!」
「家族が! 一緒に! 旅行をするのに! なんでおまえが礼なんざする必要があるんだ! 
そんなのおかしいだろ? おかしいよなぁ!」
「わかった! おかしい! わかったから!」
「いいやおまえはわかってねぇ! 一晩かけてまずおまえが何をわかってねぇかたっぷりと
教えてやる!」
 千宏を解放してそう怒鳴ると、千宏は泣きそうな顔をして、
「えぇ! またお説教!?」
 と悲鳴を上げた。
 それでもどこか楽しそうで、嫌そうにしながらでも嬉しそうで――。
「……アカブ」
「なんだ」
「ありがとね」
 ちゅ、と、千宏の唇がアカブの頬に押し付けられる。
 瞬間、本当に一晩中かけてするつもりだった説教の言葉が雲散霧消してしまい、アカブはに
まにまと笑う千宏に形ばかりの悪態をつき、乞われるままに同じベッドで眠りに付いた。

                             切らせてきた抱きます。
                             ここまでで一区切り。
587名無しさん@ピンキーsage2007/10/07(日) 08:42:23 ID:8+mp7ThW
朝からなんつーもんを投下してくれたんや……!
アカブとチヒロのやり取りにニヤニヤがとまらんw
超GJ!!
588名無しさん@ピンキーsage2007/10/07(日) 10:04:33 ID:/jysB7pD
虎男さんちょっとかわいそうだw

うゎー二人ともなんかかわいいよかわいいよ
ニヤケ系だね、これは
何回も読み返したよGJ
589名無しさん@ピンキーsage2007/10/07(日) 10:49:55 ID:xodGUQ/M
今回も素晴らしかったです!
週に一度の楽しみになってるよ!GJ!
590名無しさん@ピンキーsage2007/10/07(日) 12:46:37 ID:+UEW/A6O
わーなんだろうこの雰囲気…!
恋愛じゃないのになんかたまらん!
ちょっと1話から読み返してくる!
591名無しさん@ピンキーsage2007/10/07(日) 20:05:02 ID:mNe0BhD9
読みながらこっちが恥ずかしくなるのはチヒロが若々しくて素人だからですか、そうですか
いやいや、いいなぁ、こういうの
592名無しさん@ピンキーsage2007/10/07(日) 21:15:25 ID:w9glZCTN
愛があって、恋じゃなくて、好意がある。そんな感じがする。GJ。
593名無しさん@ピンキーsage2007/10/08(月) 02:58:08 ID:+hKTG8BX
何か読んでて色々と明言するのがはばかられる場所が明言しがたい状況にっw
こういう直球よりもやや変化球的なエロスには弱いっす
展開や最初の宣言からしてメインはアカブよりバラムの方かなと思うと
ちょっとアカブがカワイソスにならなくもないですがこの後の展開に超期待!GJでした!
594名無しさん@ピンキーsage2007/10/08(月) 05:45:15 ID:oNpJQZKm
ああもうアカブはいい奴だなぁ! チヒロもいい子だよなぁ!!
この、GJだよこんちくしょう!!
595名無しさん@ピンキーsage2007/10/08(月) 10:01:59 ID:v2APdipd
もう、なんていうかアカブは良い人だなぁ
まぁその前の虎男さんも良い人だったけどw
あのまま続きをしないアカブにGJ
596名無しさん@ピンキーsage2007/10/08(月) 10:49:05 ID:3wVRKubO
話は凄く面白いと思うし、先も気になるし、自分も毎回楽しみだが
誤字が少し気になるので、もう少し推敲してほしい。
せっかく素晴らしい話なので勿体ないよ。
597名無しさん@ピンキーsage2007/10/08(月) 17:49:21 ID:XYxKFetN
自分で書いた文章の推敲を完璧にすることは不可能だというし、
気が付いたら保管庫の伝言版とかで指摘してあげるのが
読者としてできる協力だと思う。
598名無しさん@ピンキーsage2007/10/08(月) 18:24:53 ID:8LaKO/U2
誤字脱字は投下後に本人が一番悔やむ部分の一つだし、他人に指摘されると結構モチベーション下がると思うんだ。
599名無しさん@ピンキーsage2007/10/08(月) 19:19:45 ID:sFrLo98f
>>598
内容叩かれてるわけじゃないから、俺だったらモチベーション下がるほど気にしないなあ。
600名無しさん@ピンキーsage2007/10/08(月) 19:38:55 ID:3wVRKubO
空気悪くしてごめん。書き手の事情を考えてなかった。
伝言板の存在も知らなくて申し訳ない。
内容は本当に好きなので、次も投下待ってる。頑張って下さい。
601名無しさん@ピンキーsage2007/10/08(月) 21:04:18 ID:ER/hovuE
モチベーションか……どうやって上げたらいいんだろうな。
投下→丸一日スレストがデフォになってくると、そこからはもう途中で放り出したくなる自分との勝負になってくるんだよなあ。
602名無しさん@ピンキーsage2007/10/08(月) 22:15:35 ID:3qhIgq36
他の作家さんが自分の設定の一部を使ってもらえるとモチベがあがる……かも
603名無しさん@ピンキーsage2007/10/09(火) 00:08:57 ID:atCFwijq
スレ違いの話題になってしまうかもしれんが、
ゲボク1号と首輪姫、まさかアニメで頑張ってるとは思いもしなぎゅ
(首輪の締まる音)
604名無しさん@ピンキーsage2007/10/09(火) 00:33:53 ID:zO8E5KIb
ヒトの中でハードな人生送っているのって誰だろ?
いや勿論性的な意味で一番ハードなのはこちむいのボクなんだろうけどw
605名無しさん@ピンキーsage2007/10/09(火) 03:02:12 ID:ZafKVAp1
>>604
それはカナさん、ユウジ、ミコトで確定じゃないか?
606scorpionfishsage2007/10/09(火) 03:56:43 ID:udBJG4BJ
御無沙汰しておりました。
今回は前回の続きではなく、外伝です。
ヒトがまったく出てこなかったのでTXT投下としております。
種族としては、トリとサカナ。
時間軸としては、外伝『紅珊瑚の魔女』と同時期です。

注意事項
性転換・アナル・若干NTR風味

scorpionfish外伝『黒真珠の枷』

http://0cgi.net/rent_h/bbs/sr3_bbss/sr3_bbss/31nachtum/63_1.txt

追伸
白猫男装シロ絵とクロダイ姉妹絵、ありがとうございました。
励みとさせていただきます。

では、次回こそ7話の続きを。
607名無しさん@ピンキーsage2007/10/09(火) 19:01:10 ID:lPlLAoEc
久しぶりに見たなあ
7話も楽しみにしてますよー
608名無しさん@ピンキーsage2007/10/09(火) 19:15:25 ID:DN0MyEE8
刻男にテラ萌えた!
そして僕っ娘!
たまらんかったよGJ!
609名無しさん@ピンキーsage2007/10/09(火) 22:31:56 ID:+wGs2UAb
にわとり相変わらずだなぁwwwww
今回の堕ちモノの話が今後に絡んできそうな予感

それにしてもなんかサカナって種族エロくね?ウサギばりに
610名無しさん@ピンキーsage2007/10/10(水) 00:17:33 ID:qYcyj3B6
刻男さんが拾われた経緯が気になってたので、今回の話で納得がいきました。
出会った頃からアホ可愛い人だったんだなー。
猫耳スレ男獣人の中ではマスコットキャラ的愛されようなのもうなづけるというもの。
7羽もとい7話もワクテカで待ってます。

それにしてもサカナテラエロス アナルパール標準って!
611名無しさん@ピンキーsage2007/10/11(木) 00:08:53 ID:f4IXlhRJ
亀レスだけど

誰もFSSにつっこまないのな
612名無しさん@ピンキーsage2007/10/11(木) 09:33:11 ID:GTUFJvW5
あれ?wiki消えてる?
613名無しさん@ピンキー2007/10/11(木) 10:19:17 ID:wlZG6Gp7
>>611
突っ込むのは好きだけど、元ネタがわからないから。
なんとも突っ込むみようがないわけで。
614名無しさん@ピンキーsage2007/10/11(木) 12:29:01 ID:bjxtIk5s
>>611
竜灰じゃなくてドラゴンドロップだったらすぐに気づいたのにorz
615名無しさん@ピンキーsage2007/10/11(木) 23:16:38 ID:4HdlVlr6
夢日記の場合は細かいネタの宝庫だから、いちいち反応してるとキリが無いのでスルーけんていだったww
FSSもそうだけど、灰のネタはハリーポッターのフェニックスと同じだし、願いの代償はホリックでしょ。
ついでに言うと、まぁ、あまり言うとアレなんで、あとは作者様の新作で色々と語って欲しかったりwww
616虎の子sage2007/10/13(土) 01:40:40 ID:z/ECMjHQ
序章、一応書ききりました。
遅くとも来週中には推敲を完了して投稿する予定です。
それでちょっと前に出たようですが、推敲に関して皆さんはどう思いますか?
書き上がった直後は、作者的にはその原稿が完璧な物と感じますが、投稿してからしばらく立つと、何を書いてるんだ自分!?
そんな感じになる事が多々あります。
私は原稿が書き上がった後、一日ぐらい放置してテンションを下げてから見直して、その後修正し、また二、三日放置して見直します。
それでも誤字やら変な表現や文章がたくさん出てくるんですよね。
推敲を上手にするため、皆さんはどんな風にしたら良いと思いますか?
作者に限らず、読者の人達も何か意見やアイディアがあったら教えてください。
617名無しさん@ピンキーsage2007/10/13(土) 06:19:42 ID:HfEjSF+k
>>616
おいらは、放置→手直しの繰り返しだねー。
618名無しさん@ピンキーsage2007/10/13(土) 09:21:47 ID:tF8TdYgF
やはし一番いいのは投下前に誰かに読んでもらうことかと。
リアル友人とか。
619名無しさん@ピンキーsage2007/10/13(土) 11:26:06 ID:8cwenaF2
リアル友人に読まれるのはつらいな……w
推敲に関しては、>>616のやり方である程度問題ないかなとは思いますよ。

こっちも、もうそろそろ投下できそうではあるんだけど、投下のタイミングを迷ってる状態。
さすがに俺の五倍〜十倍のGJレスついてる人と同時期に投下して、露骨に人気の差を見せ付けられるのはキツイし、かといって土日以外は投下できる暇ないし。
連載破棄するのは楽なんだけど、何人かは読んで゙くれてる人もいるかと思うとそういうのもどうかと思うし。
620名無しさん@ピンキーsage2007/10/13(土) 19:29:04 ID:KwgvjKcN
>>616
推敲とか校正って集中力と根気ですからね。
とりあえず書き手スレにでも行ってみると良いかと思います。

>>619
勢いで投下。それしかない。GJ!の数が少ないのを悩んでたら書き手は務まらないです。
一握りの読んでくれる人の為に投下する。あとは個人の思い込みと道楽だと割り切る。
それしかないと思いますよ。
だって、実際私が書いてるのだって本当に読んでもらってるんだろうか?
たんに社交辞令GJ!じゃないかって怖くなるときありますから。
621名無しさん@ピンキーsage2007/10/13(土) 19:31:32 ID:UaGXG8O6
>>619
つ【酒の勢い】
622名無しさん@ピンキーsage2007/10/14(日) 00:02:51 ID:xTzmTISI
饅頭の詩氏元気かな。
二ヶ月のスパンだったから心配だ。
623名無しさん@ピンキーsage2007/10/14(日) 00:17:48 ID:RfQq00mJ
私は「無垢と未熟と計画と?」の続きが気になってます。

続きでないのかなあ……。クリフ先生もいいとこで切れてるし……。
624名無しさん@ピンキーsage2007/10/14(日) 01:11:53 ID:Z7CyIjLd
落ちるヒトの殆どは現代日本人なもんだからヒト=弱いと思っている獣人を
軽々とぶっ倒す爽快な物語はないかな?
特殊能力とかそういうのはなしで、普通に鍛えられた技を駆使して。
625名無しさん@ピンキーsage2007/10/14(日) 02:03:14 ID:lM51LtXS
腕力だけが取り柄のチンピラ獣人に
柔道有段者な落ちもののヒトが一本背負いかますとか?
626名無しさん@ピンキーsage2007/10/14(日) 03:32:52 ID:e01n0BKn
犬国見聞録ってあれでもう終わりなのかな
最後すごい楽しみなんだが
627名無しさん@ピンキーsage2007/10/14(日) 03:47:24 ID:5H0zru8L
つ 『夜明け』
つ 『桃源郷』
つ 『こちむい』


『桃源郷』の名無しさんとソラヤくんはガチ。
キオは確かに魔法も使えるが、基本はこちら側にいた時のボクシングで戦ってるわけだし。


あとは………どうなんだろ。どこまでが許容範囲なんだかワカンネ。
628名無しさん@ピンキーsage2007/10/14(日) 03:57:11 ID:5H0zru8L
安価抜けてた
>>627>>624
629名無しさん@ピンキーsage2007/10/14(日) 04:01:42 ID:ELgbk2ir
>>ヒト=弱いと思っている獣人を
>>軽々とぶっ倒す爽快な物語はないかな?
>>特殊能力とかそういうのはなしで、普通に鍛えられた技を駆使して。

性的な意味だったら一杯居るね
630名無しさん@ピンキーsage2007/10/14(日) 09:17:46 ID:MQwHPYdj
人間をやめちゃった人(?)が、軽々どころかボロ雑巾でも引き裂くように獣人を殺しまくる話しを書いて、
そんで、なんか気になってお蔵入りにしてたけどw

そもそも筋力や敏捷性に劣るヒトが知恵で勝つから面白いんじゃないかと思う。
多少の現代兵器を使うのと、あとは戦術と戦略。
力勝負で戦ってきた獣人の戦争に勝負のアヤってもんを教えてやろうじゃないか・・・・ってね。
631名無しさん@ピンキーsage2007/10/14(日) 11:36:46 ID:yTb3zAg6
>>630
いっそ将棋で戦う展開を。
632名無しさん@ピンキーsage2007/10/14(日) 12:21:37 ID:Z7CyIjLd
身体がでかくて力が強い素人が訓練された人間に負けることってのは多いと思うんだけどな…
633名無しさん@ピンキーsage2007/10/14(日) 12:33:20 ID:PJV12DSf
強さのレベルが……
平気でブロック塀ぶっ壊す怪力で爪と牙まである獣人が、
しかもそれなりの知恵を持って襲ってくる事を考えるととてもとても……

しかし合気道の達人とかだったらなんとかなる気がしないでもない。
でも軽々とぶっ飛ばすのは厳しいんじゃないかなぁ。
場合によっちゃ魔法も使ってくるわけだし。
634名無しさん@ピンキーsage2007/10/14(日) 12:50:19 ID:+kUKaRGO
むしろ魔法は全く対抗手段がないからなぁ。
人だけが体制を持つ魔法、とかでもない限り。


※スレの残りが40KBを切ったみたいなので、投下する人はお気をつけて。
635名無しさん@ピンキーsage2007/10/14(日) 14:15:18 ID:AO3LgIht
しかも、獣人でもれっきとした剣術とか格闘術を会得している連中は少なくないあたりがもうね。
リナ様とかサーラ様とかフェイレンさんとかどうやればヒトの手に負えるんだよって感じで。
636名無しさん@ピンキーsage2007/10/14(日) 16:01:00 ID:MQwHPYdj
獣人とはいえ、それなり以上の技術と社会的インフラが整った世界ですからね。
奴隷のヒトが主と課を手に掛けたら警察力を持つ獣人がやってきてぶっ殺されますよ。

訓練されたヒトが獣人に勝つのは、ある意味で簡単でしょうけど、でもそれはスポーツとかの次元ですよね。
命のやり取りが絡むような戦闘の話はまた別の次元の問題だと思うわけです。
それに、どれ程のエキスパートでも相手を殺しに来ている獣人の場合は、太刀打ち出来ないと思うんですよ。
ヒトの視力の限界を超える速度で打ち込まれた剣先を交わすことなど不可能ですしね。

ある程度の距離から精密で威力のある銃撃戦闘でしか、ヒトは獣人の軍隊なり警察力には太刀打ちできないと思います。
637名無しさん@ピンキーsage2007/10/14(日) 16:45:17 ID:T+ZDJuG/
勝ち負けと生き死には違うからなぁ
638名無しさん@ピンキーsage2007/10/14(日) 19:52:16 ID:lQDAifVh
ちょっと質問。
ラミアの男性版、上半身男性で下半身蛇 というキャラは既出でしょうか?
639名無しさん@ピンキーsage2007/10/14(日) 21:12:52 ID:AO3LgIht
単発作品で出てた様な気が
640名無しさん@ピンキーsage2007/10/14(日) 22:21:53 ID:RfQq00mJ
>>633
でも植芝盛平翁は日露戦争で銃弾かわした人だよ。
641名無しさん@ピンキーsage2007/10/15(月) 03:26:30 ID:jhxOHRI9
>>630
>人間をやめちゃった人(?)
それはトライガンに出てきたGUN-HO-GUNsみたいな、人と呼べる範疇を超える力を手に入れた人レベルなのか
それともジョジョのDIO様の様な「俺は人間を辞めるぞ(ry」レベルなのか

>そもそも筋力や敏捷性に劣るヒトが知恵で勝つから面白いんじゃないかと思う。
至弱をもって至強を討つってのは戦争モノの王道にして特に燃える展開のひとつだよね

>>635-636
三国志の呂布や新撰組の沖田総司みたいな規格外っつーか埒外なひとが時たま実際にいるからなー
まあ、いままでの話に出てきたヒトはほとんど規格どうりの現代日本人だし、こんなこと書いても無意味なのは判ってんだけどさ

>ある程度の距離から精密で威力のある銃撃戦闘でしか、ヒトは獣人の軍隊なり警察力には太刀打ちできないと思います。
火攻め、水攻め、兵糧攻め、トラップ
真っ向勝負に拘らなければ、打てる手は色々あると思うよ
「俺たちゃケンカ弱いからよ おっかねえから正々堂々とケンカなんかしねえぜ 獣人さんたちよう!!」
642名無しさん@ピンキーsage2007/10/15(月) 03:45:28 ID:eiLjd32S
真っ向勝負に拘らない戦法をとっているのは今のところユウジとヴォーンぐらいか?
まだ第一話しか投下されていないから今後の展開がどうなるかは分からないけど、
獣人にとっては銃声が後から聞こえてくるような距離からの精確な狙撃ってのは未知の経験だろうな。
あの世界の技術レベルじゃ、技術大国ドイツの銃火器には遠く及ばない滑腔銃しか作れないから
銃での長距離狙撃なんてのは魔法でも付与しない限り無理な離れ業なんだし。
というか姿の見えない相手から一方的に殺されるのはもはや魔法同然だろうね。
狙撃という行為ならばヒト=狩る側、ケモノ=狩られる側という対立構図を維持できるのかも。
643名無しさん@ピンキーsage2007/10/15(月) 04:29:22 ID:U1fVc4wV
相手を腹上死させるとか
644名無しさん@ピンキーsage2007/10/15(月) 07:03:48 ID:/aKEviid
>相手を腹上死させるとか
それは責め殺すのか、それとも刺されつつ刺すのか
645名無しさん@ピンキーsage2007/10/15(月) 08:13:22 ID:Bt7PPUR9
それでも範馬勇次郎なら……
646名無しさん@ピンキーsage2007/10/15(月) 09:17:22 ID:pvru4+By
亀2を認めてしまう奴に何が(ry
647名無しさん@ピンキーsage2007/10/15(月) 13:41:14 ID:yeePbwFJ
>>641
聖釘で人間やめちゃった神父様の例もあるしw
648名無しさん@ピンキーsage2007/10/16(火) 19:16:06 ID:z98XKj0l
……ご主人様と結ばれる為に、ネコ(でもなんでもいいが)になろうとするヒトの物語ってのもありか。

「俺は人間を止めるぞーっ!!」
「そのネコミミネコ尻尾でか?」
649名無しさん@ピンキーsage2007/10/16(火) 19:28:21 ID:ddYXsjto
>>648
それなんてシゲル?
650名無しさん@ピンキーsage2007/10/16(火) 22:17:00 ID:PMnSseii
コスプレじゃねーかwww
651名無しさん@ピンキーsage2007/10/17(水) 00:49:35 ID:6T1UtB1I
女装させられて肛門開発されたユウジってこんな感じ?
ttp://telesis.hp.infoseek.co.jp/salvage/04/45.gif(女装注意)
652名無しさん@ピンキーsage2007/10/17(水) 01:33:28 ID:GZhdErdc
>>647
アンデルセン神父…(´;ω;`)
ウォルターも人間辞めちゃったしなあ

>>648
そのネコ尻尾はもちろんアヌスに挿し込むタイプですよね?
653名無しさん@ピンキーsage2007/10/17(水) 20:49:14 ID:jAo0Lioa
>>652
むろん、魔洸チャージで振動します。
654虎の子sage2007/10/18(木) 00:15:29 ID:aE87/qsr
『歪みし忠節 序章後編』です

陵辱風味な感じなので苦手な方はお気を付けください。

ttp://0cgi.net/rent_h/bbs/sr3_bbss/sr3_bbss/31nachtum/64_1.txt
655名無しさん@ピンキーsage2007/10/18(木) 02:27:53 ID:vrUeX5Nu
いきなりエロいぞwwwwGJ!
656名無しさん@ピンキーsage2007/10/18(木) 20:07:24 ID:N4a1EKwp
こってりエローイ!!まったりとねちっこくエローイ!!GJ!
657名無しさん@ピンキーsage2007/10/18(木) 23:23:49 ID:clUamwta
うむ、GJ!じゃ
魔王と呼ばれた者にも弱い部分ってあるんだねぇ
658名無しさん@ピンキーsage2007/10/19(金) 20:37:17 ID:dqRM4Nke
>>654
乙です。
でも、台詞の前後に一行ずつ開けてくれるともっと読みやすいかも。
小さなモニターで読んでるんで、ちょっと読みにくかったり。
659名無しさん@ピンキーsage2007/10/19(金) 23:05:14 ID:nZhpF/qK
>>658
わりとその辺は個人事情が絡むからねえ……。みんなの要望に応えるのは難しかったり。
660名無しさん@ピンキーsage2007/10/20(土) 11:39:13 ID:tBXhjOif
心情的には>>658に同意。
ノートのちっこい上に無駄に高精細で目がチカチカするモニターを使う身としては、
台詞の行上下を一行ずつ開けてくれるととても読みやすいうえに、目が疲れない。

でも、読む環境は人それぞれだからね。
重々承知してるつもりなんだけど、夢日記氏とかのだと空けてあって読みやすいんだよ。
職人の皆様方、どうかその辺を少しだけご検討していただきたく存じます、はい。
661名無しさん@ピンキーsage2007/10/20(土) 12:07:49 ID:4ImxbQbT
ブラウザの設定変えればいいだけじゃん
662名無しさん@ピンキーsage2007/10/20(土) 12:55:16 ID:pbYAPhLz
>>660
しかし、例えば獅子国みたいに会話シーンが全体の半分越えるSSでそれやったら、逆に激しく冗長になる気がするわけで……
663名無しさん@ピンキーsage2007/10/20(土) 20:10:26 ID:uPIp3GqT
夢日記も冗長と言えば冗長なんだよなぁ。
上手くまとめれば半分以下で同じ内容を表現出来ると思う。
664名無しさん@ピンキーsage2007/10/20(土) 22:16:56 ID:Fs7qvyHG
だがそれをやると無味乾燥になる罠。
個人的には、書き手の個性ってのを重視したい。
夢日記は今のままで十分読んでて面白いし。
665名無しさん@ピンキーsage2007/10/20(土) 22:49:34 ID:o7hkI9zF
全員が同じ文体だとオリジナリティがなくなってつまらんしなwww
みんな違ってみんないい
666名無しさん@ピンキーsage2007/10/20(土) 23:56:18 ID:tuYtkC/u
なにげに性的拷問大国なカモシカの国で使うと良いかも知れない。
ttp://blog79.fc2.com/p/poponkichi/file/169.jpg

使用状態は
ttp://blog79.fc2.com/p/poponkichi/file/170.jpg

髪の毛じゃなくて角とか耳とかをロックされるとかなり辛いと思う。
667名無しさん@ピンキーsage2007/10/21(日) 00:23:24 ID:H7qAzmiZ
>>666
なにその鬼畜な拘束機
思わず吹いた
668名無しさん@ピンキーsage2007/10/21(日) 16:59:20 ID:XikGxYXK
>>666
なんという拘束具www
妙にレトロくさいギミックがwktkを誘うw
669名無しさん@ピンキーsage2007/10/21(日) 18:16:30 ID:RucrK5s2
>>666
び、描写めんどくさそうだなw
670名無しさん@ピンキーsage2007/10/22(月) 18:59:34 ID:n10kZFlj
ウサギは数の力で押し倒す
ネコは魔法で操る
カモシカはギミックを利用する
イヌはやりたくなる雰囲気を作り出す
ヘビはまず相手に襲わせてから十倍返し

……そんなイメージがあるw
671獅子国外伝sage2007/10/22(月) 21:35:39 ID:bKKZpDAk
自分の文体でセリフの前後行を開けるのと開けないのとどっちが読みやすいかわからないんで、とりあえず両方試してみました。
第八話前編と中編のあいだの幕間劇みたいな話です。中編はもう少し後になるかも。

セリフ前後行間なし
ttp://0cgi.net/rent_h/bbs/sr3_bbss/sr3_bbss/31nachtum/65_1.txt
セリフ前後行間あり
ttp://0cgi.net/rent_h/bbs/sr3_bbss/sr3_bbss/31nachtum/66_1.txt


注意事項
ちょっと百合だったり欝だったりするかもしれないです。
672名無しさん@ピンキー2007/10/23(火) 10:59:31 ID:qqKzObZy
携帯で読むおいらの場合は行間が空いてる方が読み易いっす。
ただ、なんか途中で読み込みが止まったけど。
ミコト、良くなると良いね。
673名無しさん@ピンキーsage2007/10/23(火) 12:02:13 ID:ogImiXky
>>666
じゃあ、コイツなんかは、うさぎの国用か(w
ドリームラブチェアー
ttp://www.e-nls.com/pict1-2571-2411
674名無しさん@ピンキーsage2007/10/23(火) 13:34:31 ID:9AoTuZJQ
>>671
携帯読みだが、詰めたほうが読みやすいかな。



ミコトから襲えば解決すると理解した。
675名無しさん@ピンキー2007/10/23(火) 16:37:36 ID:xEshSVat
>>673
きっと高級車くらいのヤツだからモニターか高所得しか買えないんだろうな。
性的な意味で健康大国アトマーシャらから、地味にマッサージ機能とか温熱機能とか付加してそう。
使用者はいろんな意味でトロトロになるわけだ。
676名無しさん@ピンキーsage2007/10/24(水) 09:22:49 ID:fUr8ugDe
しかし、このスレで投下後二日たってもGJどころか乙さえつかないSSも珍しいなw
677名無しさん@ピンキーsage2007/10/24(水) 10:31:46 ID:aCM5NwhP
寸止めだからじゃないかと予測。

あ、おいらは行間なしのほうがいいです。
678名無しさん@ピンキーsage2007/10/24(水) 12:05:50 ID:nALvjCmg
「乙」「GJ」 がないだけで、感想レスはちゃんとついてるように見えるのは
俺の見間違いかな?
679名無しさん@ピンキーsage2007/10/24(水) 16:08:48 ID:Y81Oub/I
乙とかGJとかは社交辞令みたいな部分もあるからな
キチンと感想が付くんだから、それだけでも有難いと思わなきゃ
まったくスルーされたりする事も他所のスレじゃ、よくあることだし
680名無しさん@ピンキーsage2007/10/24(水) 17:59:23 ID:qBb0DFpB
自分は、ここに投下して、少なくとも誰かが読んでくれるというだけで満足。
GJや乙とか応援の言葉があったらもっと嬉しいけど、妄想をぶちまけられる
だけでもありがたい。
681名無しさん@ピンキーsage2007/10/24(水) 19:54:24 ID:qwS6dCzF
避難所も絵板も停滞気味だし、多分アクティブな住人が他に出払ってる次期なんだろう。
682名無しさん@ピンキーsage2007/10/25(木) 03:13:43 ID:iWrVQ470
「※スレの残りが40KBを切ったみたいなので、投下する人はお気をつけて。」
って書いてあるったからなのかと思ってた。
虎の威の続きが気になってしょうがないんだ・・・
683名無しさん@ピンキーsage2007/10/25(木) 17:14:20 ID:PKJmNwiT
次スレたてちまう?
684名無しさん@ピンキーsage2007/10/25(木) 19:06:20 ID:GukTL1Cp
まだ早いだろ。
685名無しさん@ピンキーsage2007/10/25(木) 19:41:44 ID:U5AW9Yw/
>>684
容量、容量。
このスレ的にはあと25kbってかなり微妙なラインだ
686名無しさん@ピンキーsage2007/10/25(木) 20:20:55 ID:hc46wYHm
最近、直接投下が減ってるからなぁ。
前ほど25Kが少なくなくなってる気がする。
687名無しさん@ピンキーsage2007/10/25(木) 20:35:23 ID:hc46wYHm
ああ、それにしても万獣が怖い。
688名無しさん@ピンキーsage2007/10/25(木) 21:34:54 ID:VfkyaGmK
たしかに万獣怖いな。
ほんとコワイ
読んだらきっと怖さのあまり徹夜するくらい怖いな
689名無しさん@ピンキーsage2007/10/25(木) 21:58:34 ID:3WVxXHmL
ああ、俺も怖いぜエネマとか拘束とか同性愛とか
されたくないし見たくもない
これからそんな展開があると思うと面白くても見るのを躊躇しちゃうぜ
690名無しさん@ピンキーsage2007/10/25(木) 22:40:00 ID:qtj813Az
そうだな
激しく悩んだあげく結局右クリックを押してしまうだろう自分も怖い
691名無しさん@ピンキー2007/10/26(金) 20:41:07 ID:NOein6BF
おまいらうまいこと言ったつもりかww
個人的にはティンダロス(ry
692名無しさん@ピンキーsage2007/10/26(金) 21:20:19 ID:PS7LsxTZ
そして書き手はヲチャ(のスルー)が怖い。
693とらひとsage2007/10/26(金) 22:06:18 ID:BwYzHaQa
 海を見た。
 船に乗った。
 砂浜で遊んだ。
 魚を食べた。
 沢山の町を巡り、いくつかの街を巡り、村や集落の小さな宿屋で夜を明かし、時には道端で
野宿した。
 アカブに色んな話を聞いた。
 喧嘩のような雰囲気になったりもした。
 両親や友達が恋しくなった。アカブにしがみ付いてめそめそ泣いた。
 この世界にも音楽がある事を知った。アカブは意外と歌が上手い。
 酒場で踊りを教わった。テーブルの上に躍り上がって、珍妙な楽器に合わせて足を踏み鳴ら
して踊るのだ。発情期なのに発情していない女は貴重なのだと、一晩中踊りに付き合わされて
筋肉痛で次の日は立ち上がれなかった。
 月が二つある夜空が好きになった。獣人の表情が容易に読み取れるようになった。旅が好き
になった。もっと沢山の街を見たいと思った。いろんな国を見たいと思った。
 そして、発情期が終った。
 両手で足りない量の土産と、一日で語りつくせない土産話をぎゅうぎゅうに詰め込んで、思
い出を語り合いながら馬車に揺られて帰路に付く。
 アカブは大丈夫だと言い張ったが、二週間の間にもう一度だけ、アカブのものをしゃぶった。
 気持ち良さそうなアカブを見るのは嫌いでは無いと思う。口の中に出される代わりに思い切
り顔にかけられたが、慌てて綺麗に拭ってくれたアカブを前に笑いを堪える事ができなかった。
 口だけで――というのが少し申し訳ない気がしたが、どうしてもそこから先に踏み出す勇気
は湧かなかった。
「来年の発情期もさ」
 帰りの馬車に揺られながら、ふと千宏がアカブを見る。
「色んなとこに連れてってくれる? 今度はもっとちゃんと準備して、野宿しても体が痛くな
らないようにしてさ」
 そうだなぁ、とアカブが勿体ぶって目を閉じた。
「俺に女が出来なかったらな」
 にやりと笑うアカブにぱちぱちと目を瞬き、千宏はうーんとわざとらしく考え込んだ。
「それまでに適当な相手で処女喪失してアカブの恋人に収まれば解決か」
 びしりとアカブが凍りつく。
 怒涛のように押し寄せてくる小言の嵐を舌を出してやり過ごし、千宏は遠くに見慣れた川を
見つけて窓から身を乗り出した。


                ***


 馬車に山と積まれた通常ならば考えられない量の土産を見て、パルマとバラムは何があったのかと驚愕し、エクカフに行ったんじゃないのかと主にアカブに詰め寄った。
 海に行ったんだ、と短く答え、アカブは飄々とした様子で土産を家に運び込む。
 千宏もそれを手伝って箱を一つ抱えると、バラムにひょいと取り上げられた。
 ここは俺がやるから先に中で休んでいろと促され、千宏はありがたく、パルマをまとわりつかせながら先を歩いているアカブを追いかけた。
 重たい扉を軽々と開き、アカブが千宏を待って立ち止まる。
 その扉の隙間をするりとすり抜けて、千宏は久々の我が家に両手を突き上げてのびのびと背
を反らし、帰ってきたーと半ば叫ぶように声を上げた。
「もう! 二人だけで旅行するなんてひどいよ! ずるい! ねぇ聞いてよアカブ。バラムっ
たらひどいんだから! 折角の発情期だっていうのにさ、ずーっとチヒロの心配してるの! 
そりゃ私だってすごーく心配してたけど、だけどさ、礼儀を欠くと思うのよね」
「そうか?」
「そうだよ!」
「そうかもなぁ」
 明らかに右から左へ受け流しているアカブの様子に、パルマはそれでも構わないのか不平不
満やバラムに対する文句を言い募る。
 土産物を居間に運ぶ間にすっかり文句を言い終えると、今度は箱や袋の中身を漁ってきゃあ
きゃあとはしゃぎながら、土産話を話して聞かせろと落ち着きなくせっついた。
 どっかとソファに腰を下ろしたアカブの横に陣取って、ぱたぱたと尻尾の先を振っている。
 アカブは家族の人気者だ。千宏は密かにお母さんだと思っている。
694とらひとsage2007/10/26(金) 22:07:09 ID:BwYzHaQa
 遅れて現われたバラムがアカブに酒瓶を投げつけて、千宏には甘い果物ジュースをよこして
長旅を労ってくれた。

 今回の発情期で、千宏には一つ趣味が出来た。
 ローブおよびフードつきケープの収集である。
 今までワンセットしか持っていなかったので単なる必需品として見ていたが、旅の最中にそ
の必需品を致命的に汚してしまい、新しい物を買わざるを得なくなったのが始まりだった。
 外出できない千宏の代わりにアカブが買ってきてくれたのは、深まる秋に備えてやや厚手の
生地が使われている黒くて柔らかな一揃いのローブとケープだった。
 ローブの裾とフードの側頭部に白糸で可愛らしい花の刺繍が施してあり、デザインとは無縁
の味気ないローブしか知らなかった千宏は感動して大はしゃぎした。
 そしてアカブにねだって連れて行ってもらった衣料品店で、色や柄だけでなく機能や形も多
種多様にある事を知り、千宏の乙女心に火がついた。
 パルマが千宏のために買ってくるアクセサリーなどよりも、恐らく今後外出時は永遠に着続
けるそれだからこそ、そんなにも興味と愛着をそそられたのだろう。
 顔すら半分隠してしまうような装束に似合うも糞もないだろうが、アカブはそれでもはしゃ
ぐ千宏を笑ったりはしなかった。

 その衣料品店で、ふと目にとまった物がある。
 黒地に白で細やかな刺繍の施してある、繊細な印象を与える細身のリボンだ。
 それを手に取ってみて、千宏はバラムの長い銀髪を思い出した。
 長い髪をいつも鬱陶しそうにしていて、切ればいいのに、と何度も思った。実際に切らない
のかと尋ねた事もある。
 結果は否。切るつもりは皆無らしい。
 鬱陶しくないのか、ポリシーなのかと重ねて聞くと、バラムはいかにも複雑そうな表情を浮
かべ、鬱陶しいが、長い方が色々と都合がいいのだと苦笑いした。
 その曖昧な返答に千宏は首を傾げたが、とにかく切りたいが切ってはいけないという事は理
解できた。それならば――と思うのは、極自然な事だろう。
 縛ればいいのだ。しかし市場で見かけるのは女性向けの可愛らしいヘアゴムや、きらびやか
なスパンコールがキラキラと輝く豪奢で派手なリボンばかりで、男のバラムが身に着けても差
し支えない地味なものを見つける事は出来なかった。
 トラは基本的に派手好きなのだと知ったのは、割と最近になっての事である。
 とにかくこのリボンとの出会いは、アカブの毛並みを整えるのに奮闘した時と同様に、千宏
に義務感めいた情熱を湧きあがらせた。
 即断で二メートル程度購入し、それは今、千宏の手の中にある。
 土産話を肴に三人が酒を酌み交わす中、千宏はちびちびとジュースを舐めながらバラムの長
い銀髪を観察した。
 パルマもそうだが、なかなか手ごわそうなクセ毛である。なにせとにかく長いので、三つ編
み一つ編むのに一時間はかかりそうだ。
 三つ編み――? 一瞬、長い銀髪をきちんと三つ編みにしたバラムを想像してしまい、千宏
は危うく思い切り吹き出しそうになった。
 屈強な大男に三つ編みとは――長髪が似合っている時点で奇跡なのだ。そこに三つ編みを重
ねようなどと、無謀この上ない試みである。
 第一、三つ編みを解いた時にどうなるか――ソバージュヘアのバラムなど悪夢以外の何物でもない。
 あらぬ物を想像して一人ぞくぞくと肩を抱き、千宏は恐るべきイメージを振り払おうとする
ようにぐいぐいと残りのジュースを飲み干した。

 半ば引きずられるようにしてパルマと一緒に風呂に入り、二人きりの空間でパルマが興味を
示したのは、千宏がアカブと“やった”のかどうかだった。
 肩まで湯船につかっていた千宏は危うく溺れそうになる程狼狽えて、やるわけが無いだろう
と言い切った。
「大体そんな、か、家族の間でそんな事はだねぇ……しないでしょ普通。しないよ」
 平静を装ってタオルで汗を拭いながら千宏が答えると、パルマは不満げな声を上げて唇を尖
らせた。
「家族かどうかなんて関係ないよ! 二週間も二人っきりだったのに、世の中発情期だったの
に、アカブってばなーんにもしなかったの?」
「し……しなかったよ」
 実際、何かしたのは千宏の方であるから嘘ではない。
 パルマは納得できないと言うようにしつこく食い下がり、だってだってと繰り返した。
695とらひとsage2007/10/26(金) 22:07:48 ID:BwYzHaQa
「だってチヒロはこんなに可愛いのに! なのになんにもしないなんて絶対おかしい! 男と
して礼儀を欠く行為だよ! 私が男だったら絶対押し倒してるもの!」
 パルマが男でなくて本当に良かったとしみじみ思う。
 しかし千宏はもう、パルマの言葉が理解できる程度にはこの世界に馴染んでいた。
 発情期に二週間も町々を渡り歩いたのだ。フリーで好みの女がいたら、相手が発情していよ
うといなかろうととりあえず声を掛けるのが常識らしいということは知っている。
「チヒロだって、私の事好きでしょ?」
 ふと、不安そうにパルマが聞く。
 なんだか妖しい響きに聞こえるな、と自覚しながら、しかし千宏は頷いた。
「アカブのことも、バラムのことも好きでしょ? 私たちもチヒロが好きだよ。それにチヒロ
はさ、なんて言ってもヒトなんだもん。オキテだとかシキタリだとかハンショクだとか、そう
いう難しい事考えなくていいんだよ? 好きな人と好きなだけ気持ちいいことできるんだよ」
 じりじりとにじり寄り、パルマがぎゅっと千宏の両手を掴む。
 白くて柔らかそうな体に、沢山の赤い痕が散っているのを今更になって気が付いた。
 目のやり場に困って、おろおろと視線を反らす。
「痛いのが怖いならさ、バラムに言ってみなよ! バラムはマダラだから、家族の中でも一番
魔法が得意なんだ。絶対に気持ちよくしてくれるよ。絶対!」
「あ、いや、でも……だ、だ、だけど……」
「今夜部屋で待ってて! 私がバラムに言っておいてあげる! だってね? いつかはきっと、
チヒロだって女の子だから、誰かとする事になるでしょ? でも、ヒトは初めてする時痛いん
だよね? いざ好きな人と! って時に気持ちよくなれないなんて、興ざめじゃない。だから
さ、ね? いい考えだよね」
 いい考え――いい考えだ。千宏だってずっと考えていた事である。
 どこか路地裏で、見知らぬ男に強姦されるよりも――とバラムは言った。
 それを思えば、バラムかアカブに――パルマの言う事が本当なら、破瓜の痛みを伴わないよ
うバラムに処女を奪ってもらうのが一番だ。
 だけど――でも――だけど――。
「今日は……つ、疲れてるから……」
 あ、そうか、とパルマがぴくん、と尻尾を震わせる。
「私ったら興奮しちゃった。そうだよね。今日帰ってきたばっかだもんね」
 じゃあ、一週間後くらいが妥当かなぁ、とパルマが思考を巡らせるのを眺めながら、千宏は
ぼんやりとアカブのことを考えていた。
 しゃぶったものの大きさは、とても自分の体に収まるとは思えない。
 初めての相手――という概念が、あまり存在しないトラ達である。処女を愛する誰かに捧げ
たいだとか、そんな考えも随分前に無くなった。
「……慣れないとなぁ」
 ぽつりと、自然に言葉を零す。
 その言葉に、パルマは盛大に頷いた。
「そうだよ! それでさ、チヒロがアカブの恋人になってあげればいいんだよ!」
 口元まで湯船に沈み込み、ぶくぶくと息を吐くと、パルマが勢いよく湯船から飛び出した。
「子供はさ、チヒロの分も私が産んであげる。アカブの子供がいいって言うなら、そりゃあ誰
か他の人に頼まなきゃいけないけど、私とバラムの子供でもいいでしょ?」
 ふるふると尻尾を振って尻尾を飛ばし、パルマが笑う。
 あまりの気の早さに唖然とした。
「でも、チヒロの寿命って凄く短いんだよね……うーん。先にチヒロの子供作ったほうがいい
のかなぁ。でも、家長は長男ってシキタリだしなぁ……」
「ちょ、ちょちょ、ちょっとパルマ! まだ子供なんて、そんな、き、気が早いよ!」
 一人湯船につかったまま、千宏は慌ててパルマの独り言を遮った。
「大体、アカブだって恋人が出来るかもしれないんだしさ。あたしはヒトで、世間的に見れば
ただのペットで、奴隷だよ?」
「そんなの関係ないよ。チヒロは私達の家族で、私たちはチヒロが好き。アカブは女性不審で
もう恋人なんてゴメンだって思ってるけど、チヒロの事は好きで好きでしょうがないんだもん」
 ばさりと、パルマがかごの中のバスタオルを体にまきつける。
 銀色の髪から滴り落ちる水滴は、それ自体も銀色に見えるのだな――と思った。こうして見
ると、パルマはとてつもない美人だ。
「それに、市場でもチヒロは頭のいい商人だって有名なんだ。だれもチヒロがヒトなんて知ら
ないし、思いもしないよ。フードの下の美貌を知ってるかって噂になってる。アカブがチヒロ
と結婚したって話を聞いたら、きっとみんな物凄く悔しがって祝福するよ」
696とらひとsage2007/10/26(金) 22:08:31 ID:BwYzHaQa
 そういえば――と、ふと思う。
 カブラ達がほぼ軒並み排除しているようだが、商談の折にプレゼントらしき物を渡される事
が何度かあった。
 千宏はそれを“そでのした”として認識していたので全て拒否してきたが、そうか、あれに
はそういう意味があったのか。
 それにしても美貌とは――神秘の美とはよく言ったものである。隠してあるとそれだけで、
それは尊い物になってしまうのだ。
「ま。ぜぇんぶチヒロしだいなんだけどね」
 にんまりと、意味ありげにパルマが笑う。
 あいつの言う事はよくわかんねぇ――と前にアカブが言っていたが、なる程確かによくわか
らない。
 先に上がるね、とのこしてパルマが浴室を去ったあとも、千宏は一人、のぼせそうになるまでぶくぶくと湯船で空気を吐き続けた。


                 ***


 旅行から帰った翌日に市場に出向く――と言うハードスケジュールに果敢にも挑戦したのに
は、それなりの理由がある。
 疲れた体を引きずってバラムについて馬車に乗り込み、千宏はリボンをバラムに差し出すタ
イミングを今か今かと見計らっていた。
 千宏としては、極普通に何気なく差し出すつもりだったのだが、なぜか何気なくバラムと二
人きりになる機会が今まで一度もなかったのだ。
 別に二人きりでなくてもいいのだが、何せバラムは忙しい男である。
 家族が揃う時も食事をしていたり仕事をしていたりアカブと込み入った話をしたりしている
ので、千宏が割ってはいる暇がない。
 となれば、長時間二人きりで行動できるのは市場に向かう日くらいしかなく、千宏はやめて
おいた方がいいんじゃないかというアカブの制止も無視してバラムについていくことを決めた
のである。
 それにしても――と、千宏はじっと窓の外を眺めてみるバラムを盗み見た。
 初めて会ったときから、こんなに威圧感のある男だっただろうか。
 初対面の時は何と言うか――もう少し馬鹿そうと言うか、とっつきやすい印象を覚えたのだ
が、今のバラムは家長然としていて気安さがない。
 もし初めて会った時にバラムがこうだったならば、千宏も耳を引っ張るなどという暴挙には
でなかっただろう。
「――そのフード」
 突然、バラムが会話の口火を切った。
 ぱっと顔を上げると、ちらと投げられた視線に射竦められる。
「いいもんだな――おまえが選んだのか」
「あ、これはアカブが選んでくれたんだ。ほら、フード汚しちゃったって話したじゃん? あ
の時、とりあえず――ってアカブが買ってきたのがこれ」
 黒の無地に、銀に近い白糸で施された花の刺繍。
 可愛いでしょ、と自慢げに笑う千宏に、しかしバラムは笑い返さなかった。
 そうだな、とだけ頷いてまた黙ってしまう。
「でさ。あのね。それでアカブに頼んで衣料品店に連れてってもらったんだけど、そこでいい
もの見つけたんだ」
 しかしその沈黙を好機と見て、千宏はごそごそとフードの裏地に縫い付けられているポケッ
トをまさぐった。
 いいもの? と聞き返したバラムの前に、適度な長さに切って両端を三角に処理した黒のリ
ボンをぴん、と張って見せる。
「ル・ガルの有名なブランドなんだってさ。イヌの国ってこういうシックなデザインが得意な
んだって。見て。この刺繍、すごく細かいんだ。でも全然派手じゃなくて、上品だと思わない?」
「あぁ……そうだな。悪くねぇんじゃねぇかな。おまえ、黒が好きなのか?」
 今着てるのも黒だし――と言うバラムの言葉にきょとんとする。
 黒は――確かに好きだ。第一黒は汚れが目立たないし、何より着こなしにあまり頭を悩ませ
る必要がない。
 だけど、それでもこんなに白と黒に興味を示すようになったのは――。
「……あんた達のトラ柄。白と黒で綺麗だよね」
 たぶんそうなんだろうと思うが、実際は元から好きだったのかもしれない。
697とらひとsage2007/10/26(金) 22:09:17 ID:BwYzHaQa
 だけど今は、たぶんそういうことにしておいた方が都合がいい。
「あたし、バラムやパルマの肌の色と銀髪、すごく綺麗で、うらやましいなって思う。アカブ
の白と黒の毛並みも大好き。だからじゃないかな。たぶん」
 想像もしていなかった――と言うような、アカブそっくりな間抜け顔。
 そこに家長の威厳らしきものは無く、千宏は俄然勇気を出してリボンを持ったままバラムの
隣に移動した。
「これ、バラムに似合うだろうなって思って買ってきたんだ。後ろ向いて。縛ってあげる」
「お……れに?」
「あたりまえじゃん! あたしに縛る髪があるように見える? いつも髪、鬱陶しそうだった
からさ、切るのはダメでも縛る事くらいは出来るでしょ?」
 フードの奥でにまっと笑う。
 バラムはどう反応したらいいのかわからないのか、ただぼんやりと千宏を見下ろし、そして
言われるままに馬車の中で窮屈そうに背を向けた。
 硬い髪質の、実に手ごわいくせっけだ。ブラシを持って来ればよかったな、と思いつつ、何
度も丁寧に手グシですく。
 顔にかかる横髪を耳の上を通して後ろに流し、千宏はひとまとめにしたバラムの髪をくるく
るとリボンで束ね、ぎゅっと固く結んでから飾りに大きく蝶々結びを作って満足げに微笑んだ。
「嫌われてると思ってた」
「――え?」
 ぽつりとバラムが零した言葉に、千宏は思わず聞き返した。
 振り返ったバラムは、鬱陶しい髪が綺麗に束ねられていて――真面目な顔をしていればそれ
なりに知的に見える。
 お、と思った。結構似合う。これで眼鏡などかけた日には、きっとそっち系のお姉様がたが
キャアキャア言うに違いない――と千宏は確信した。
「怯えられてるって思ってた」
 千宏のどこかよこしまな思考をよそに、あくまで真面目にバラムが言う。
「なんだ」
 に、と――それはもう幸せそうに。
「俺の思いすごしか」
 笑う。
 あぁ、あの日と同じだ、と思った。
 ご主人様とはぐれたのか、と、安心させるように微笑んだ温和なバラムだ。
 可愛い。耳が。尻尾が。たまらなく。
「――あのねバラム」
「うん?」
「ごめんね」
「――うん?」
 先に謝って、千宏はぬっとバラムの両耳に手を伸ばした。
 ぎゅっと、容赦なく掴んでぐいぐいと引っ張る。
「ば――馬鹿! よせ、耳を掴むな! よせってこら、やめ――!」
「だまらっしゃい! ええいけしからん耳め! こうしてくれる! こうしてくれる!」
 狭い馬車の中でばたばたと暴れる。
 くすぐったいのか痛いのかバラムは本気で抵抗したが、狭苦しい馬車の中である。
 逃げ場などあるわけもなく、かといってまさかトラの力でヒトの千宏を殴るわけにもいかず、
思い切り振り払うわけにも行かず、じたばたともがきはすれどバラムはほぼ無抵抗である。
 座席に倒れたバラムに圧し掛かってぐにぐにと耳を堪能し、ついでとばかりに尻尾に手を伸
ばすとがっとその腕を掴まれた。
「しまった! 迂闊!」
「てめぇはキツネかイノシシの剣士か! 大人しくしてろ!」
 怒鳴られ、背後から抱きすくめる形で拘束される。
 バラムの腕の中でぎゃあぎゃあと暴れるもその腕は一向に解ける様子も無く、千宏は観念し
てぐったりとバラムの胸に背を預けた。
 さすがに、アカブの膝より座り心地は落ちるが、まあそれほど悪くない。
 うん。よし。これならば大丈夫――と、千宏は満足して頷いた。
 バラムが好きだ。怒ってさえいなければ、この男は怖くない。
「ねぇ、どう? 髪。邪魔じゃない?」
 首を反らせて見上げると、きょとん、としてバラムは後ろで束ねた髪に手をやった。
 それから首を捻って不思議そうに、
「ああ。いいなこれ」
 と呟いた。
698とらひとsage2007/10/26(金) 22:09:52 ID:BwYzHaQa
 その答えに満足し、フードの奥でにまにまと口元を緩める。
「またこんど、可愛いリボンやヘアゴム見つけてあげるね」
 あ、バンダナって手もあるなぁ、と、一人うきうきと千宏がはしゃぐ。
「したら、俺もおまえに新しいローブ見繕ってやらねぇとな」
 ぽんぽんと頭を撫でられ、千宏は「ほんとに? やった!」と手を叩いて喜んだ。

 結局、市場に着くまでバラムは千宏を放してくれなかったが、馬車の座席よりも座り心地が
良かったので千宏は別に構わなかった。
 市場に着くなり駆け寄ってきたブルックに久しぶり、と笑顔を向け、発情期は楽しめたかと
下品な冗談で困らせる。
 その程度には、彼らとももう打ち解けていた。
 どうやら三人組はそろって空振りだったらしく、それなりに楽しめはしたがパートナーは見
つからなかったらしい。
 千宏から見れば三人とも、それなりに見られる容姿はしていると思うのだが――。
「カアシュは性格の問題だよね。押し弱そうだし」
 バラムに店を預けて三人を共につけ、ふらふらと市場を巡りながら、千宏はチクチクとカア
シュをからかった。
「ち、違う! 俺はただ、り、理想が高いんだ! 相手を選びさえしなきゃ、俺だって……!」
「そりゃ、お前みてぇなチビから見りゃまともな女はどれも高嶺の花だろうよ」
 言い訳がましい言葉を並べるカアシュに対し、カブラがげらげらと茶々をいれる。
 なんだと、珍しくカアシュが言い返した。
「カブラだって、イシュに相手にされないからって意地張ってるんじゃねぇか! 好きな女が
いるのに告白できねぇでいるおまえより、相手がみつからねぇだけの俺のがずっとましだろ! 
なぁチヒロ?」
「だ、だ、誰があんな万年発情女! てめぇどこに目ぇつけてんだ!」
 喧嘩になりそうな二人を、まぁまぁとブルックがなだめる。
 自称、温和な博愛主義者である。
「ブルックはどうなの? 好きな人でもいるの?」
 姿勢を低くして唸りあう二人の間に入って双方をなだめていたブルックが、その言葉に驚い
たように目を瞬いた。
「俺は……色恋沙汰とか、よくわかんねぇや」
「よく言うぜ。いい女引っ掛けてはぽいぽい捨ててるくせによ」
 とんだ博愛主義者様だよ、とカブラが舌を出して嫌味を言う。
 その言葉にブルックが憤慨し、結局仲裁役まで喧嘩に混ざるのだから救いようの無い三人組である。
「仲いいねぇ」
 と千宏が零すと、
「どこがだよ!」
 と三人同時に言い返すところなど、完璧なコンビネーションである。
 
 市場を一巡りして結局なんの収穫も無く、千宏は果物ジュースだけを二人分手に入れてバラ
ムのところに戻った。
 髪を結わえたバラムはやはりと言うかイシュに大好評で、それを見て不機嫌そうなカブラの
様子にブルックとカアシュがニヤニヤ笑う。
 そこに千宏も混ざってニヤニヤとやる物だから、とうとうカブラは怒ってどこかに行ってし
まった。
 見た目によらず純真なんだ、とブルックが耳打ちする。
 ふと気がつけば、三メートルの距離はいつの間にか無くなってしまっていたが、三人に対す
る恐怖心がほぼ消えた今となっては別にどうでもよかった。
 馴染んだなぁ――と、バラムと並んで甘ったるいジュースを飲みながらしみじみ思う。
 馴染まなければならなかったのは事実だ。
 馴染もうと努力もした。
 だがそれでも、こんなにも急速に、こんなにも穏やかにこの世界に馴染めたのは、やはり周
囲が千宏を受け入れてくれたからだと思う。
 そう思うとしみじみと、誰も彼もにとにかく感謝がしたくなった。
 だからとりあえず、すぐ隣に座っている男に言ってみる。
「バラム」
「んー?」
「あたしをさ、拾ってくれてありがとね」
699とらひとsage2007/10/26(金) 22:10:37 ID:BwYzHaQa
 あの日、あの夜あの森で、もしバラムが助けてくれなかったら、拾ってくれなかったら千宏
は今ここにいない。
 何を突然――とぎょっとするバラムににこにこと笑いかけると、バラムは訝るような顔をし
て気味悪がった。
 市場で変な物でも食ったのか? と聞くような始末である。
「幸せだなぁ」
 何気なく呟いたその言葉が、すとん、と胸の奥の方に落ちてくる。
 あんなにも恐ろしいと、理不尽だと、立ち向かわなければならないと思った世界に、今自分
はこんなにも馴染んでいる。
 幸せだと、幸運だと千宏は感じていた。実感していた。
 その言葉を、この世界に落ちてきたヒトの何割が一体言えるのだろう。
 それを思うと、少し複雑ではあるのだが――。
 結局、長旅の翌日に市に出るのはやはり千宏には無理があり、気がつけば壁に寄りかかって
すうすうと眠り込んでいた。
 好機とばかりに忍び寄るイシュの魔の手を、バラムが鋭く牽制する。
 誰と比較する事も無く、なにと比較する必要もないその幸福の価値を――しかし千宏はまだ、
よく理解してはいなかった。

                             切らせていただきます。
700名無しさん@ピンキーsage2007/10/26(金) 22:32:01 ID:rw1sVuXE
容量ヤバスなんで一行レスだけどごめん。
ぐっじょぶ。

…それにしても、今スレはこちむい世界のヒトの幸せって何だろうと考えたくなるSSが多かったな。
701名無しさん@ピンキーsage2007/10/26(金) 22:43:31 ID:PS7LsxTZ
GJ。

「不幸な家庭にはそれぞれの原因があるが、幸福な家庭は皆似ている」という言葉があったなあ。
702名無しさん@ピンキーsage2007/10/27(土) 02:00:32 ID:jvVl5iQT
ぐぐぐっじょぶ!
毎回毎回、続きが気になってたまらない。
703名無しさん@ピンキーsage2007/10/27(土) 02:27:25 ID:6aMEfmon
バラムかわいいよバラム。
不器用っぷりがたまらん。
704名無しさん@ピンキーsage2007/10/27(土) 02:31:59 ID:sJ9q4a/T
猫耳少女と召使いの物語14
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1193419733/l50

はい、次スレをどうぞ
705名無しさん@ピンキーsage2007/10/27(土) 15:30:20 ID:v+rhpaxf
虎の威GJ
今までで1番好み
706名無しさん@ピンキーsage2007/10/27(土) 21:54:01 ID:ZYVOGVd+

         *、 *、      。*゚    *-+。・+。-*。+。*
        / ゚+、 ゚+、   *゚ ・゚    \       。*゚
       ∩    *。  *。    +゚    ∩    *
   (´・ω・`)      +。   +。   ゚*     (´・ω・`)
   と   ノ      *゚  *゚    ・     。ヽ、  つ
    と、ノ     ・゚  ・゚     +゚    *  ヽ、 ⊃
     ~∪    *゚  *゚      *    +゚    ∪~   ☆
          +′ +′      +゚   ゚+。*。・+。-*。+。* 
707名無しさん@ピンキーsage2007/10/27(土) 21:55:41 ID:lZPQTcRH
チヒロは天然魔性の女と、心の底から叫びたい。
708名無しさん@ピンキーsage2007/10/28(日) 00:41:51 ID:bJVgMFGc

    r'''"     ゙l,
     `l       `l、__                ,r‐ー-、
     |             ) /" ̄ ̄ ̄\    /     ヽ、
     l   ,r'"" ̄ニ、  .,//        ヽ、 /        i  
    / _,r"∠ニ、'L- l,,/ l   ,rー--−ヽ、 l /      ,,r 、 ゙l
  <" ,,r'" l 、___`_|.   |  / ,,/" ``ヽl l/    ,,,,ノ" ,,ハ ゙l   
  `>i`|.l ヒーーーラli.   |.i´l.|  '⌒ L ⌒ l/    l" ニ= r-‐ l  l
  〈  ゝ'ヘ、\., - 、/.li____ゝ || 、___イ_, 〔   r、 !、   ヽ l 丿
   vヘ、  ヽ、 ヽ==l,,ハ,,   ハミ lーー--ー-//ゝ、 ゝゝ7 、__ ' //   
  ,,_.n ,,ゝ、,,,,,,,゙゙''''^'',,,,,,彡ーく./ ミ \, ‐-‐.//  l`ー‐=ト、`ー' /l ̄\_
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