猫耳少女と召使の物語@wiki保管庫(戎)

春のこちむい祭

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春のこちむい祭り

 やあ (´・ω・`)
   ようこそ、バーボンハウスへ。
   このテキーラはサービスだから、まず飲んで落ち着いて欲しい。

   うん、「また」なんだ。済まない。
   仏の顔もって言うしね、謝って許してもらおうとも思っていない。

   でも、このお知らせを見たとき、君は、きっと言葉では言い表せない
   「ときめき」みたいなものを感じてくれたと思う。
   殺伐とした世の中で、そういう気持ちを忘れないで欲しい
   そう思って、このSSを書いたんだ。

   じゃあ、注文を聞こうか。



























昔まだ地球に居た頃、春というのは何となく心躍る季節であったように思う。
冬が明けて寒さが和らぎ、日は長くなり、色とりどりの花は咲き、様々な動物が冬眠から還ったり新しく子を産んだりする。
まあ、全てが全てめでたいというわけでもなかっただろうが、何せ遠い記憶の中の話であり、この歳になって思い出せるのは何となく華やいでいたという印象だけである。
こちらでもまあ、温かくなったり日が長くなったりするのは変わらないのだが、大きく違う点として猫達が元気になるというバッドイベントが待っている。
猫井の社員達も例外ではなく、冬の間は呼びつけても来ないくせに、春になるとやたらと頻繁に研究所を訪れるようになるのだ。
話としては毎度おなじみ、冬の間から溜まっていたノルマの分の発明品を寄越せと要求してくるわけなのだが、なにせ俺が地球にいたのは遠い昔であり、発明品のネタもそろそろ品切れが近い。
加えて、向こうの世界では驚くほど科学が急速に発展しているらしく、俺の知らない品というのもかなり増えている。
こちらの世界の設備ではリバースエンジニアリングにも限界があり、年々春というのは来て欲しくない季節となりつつある。

嫌だ嫌だとぼやいていても猫達の催促は無くならないわけで、とりあえず何とかしてプレゼン資料をでっち上げなければならない。
とりあえず、今回のネタは自転車である。何故かこの世界では自転車は普及しておらず、未だに乗騎や人力車等が幅を利かせている。
他の国はどうか知らないが猫の国では市街地の道路は舗装されていることが多く、自転車で走行する分には特に問題無いように思えるのだが。
俺自身、何度か図面を引いて提供したりしているのだが、いつも良い所まで行っては没になるらしい。
一度など、試作品を作ったらヘビのお大尽が驚くほどの高値を提示したので図面ごと売ってしまったという、訳の分からない理由でポシャったりしている。
実際作るとなるとチューブラー等の部品を開発するのに年単位で時間が必要と思われるので、この企画が通れば数年は催促地獄から逃れられるはずなのだが……
そんなこんなでうんうん唸っていると、今の季節にふさわしい軽やかな足取りで博士が入ってきた。
眉間にしわを寄せた俺とは違い、まるで春の日差しを具現化したようなにこやかな表情をしている。

「助手君助手君、大っきらい!!」
「……は?」

眉間のしわが一層深くなったのはご容赦願いたい。
只でさえ厄介事の多いこのご時世、これで永年仕えた主人に捨てられたとあっては、俺の寿命ももう長くない。と言うか、まず博士が一人で生きていけるとも思えない。
困り顔の俺に向かって博士は夏を先取りせんばかりの眩しい笑顔を披露している。
今日の朝食はホウレンソウを巻いた卵焼きに博士は大喜びだったし、それ以降は仕事場に篭もっていたので喧嘩をした覚えも無い。
他人を拒絶して喜びを感じるような、歪んだ娘でもなかった筈なのだが。

「……とりあえず、冷蔵庫のプリンは捨ててよろしいですね」
「えっ。ええっ? えええっ!?
助手君ちがうよまってよ、えん罪だよエイプリルフールだよっ!!」

あっさりと白状した博士の言葉を聞いて、ようやっと合点がいく。
あまり嘘を吐くような真似はして欲しくないので教えていなかったが、最近友達も増えて世界が急速に広がっている中で、好ましくない風習も一緒に覚えてきたらしい。

「だからだから、大きらいは大好きってことだしプリンは捨てちゃダメだよっ!!」
「捨てちゃダメって事は捨てて良いんですね?」
「あわわわわっ、助手君えぐいよえげつないよぅ」

先程とは打って変わってオロオロとする博士を見て、溜飲を下げる。
まあ、これを機に『口は災いの元』という言葉の意味を知って貰えれば良いだろう。
と言うか、嘘と反対語はまた別のモノなんだがなぁ。

「はいはい。10時には少し早いですが、おやつにしますか」
「やった、助手君大好き! ……あ、ウソじゃないよホントだよっ!!」
「私もですよ」

慌てる博士に一つ返して、プリンを取りにキッチンに向かう。
途中、窓から見える庭の端に建てられた、小さな小さな石碑が目に入った。
ネズミの死体を受け入れてくれるような墓地が無かったので、今はもう去ってしまった研究員達と作ったささやかな物だ。
まったく、あいつにはいつも苦労させられる。
「お前なんか大嫌いだ」と、口の中で小さく呟いた。

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