猫耳少女と召使の物語@wiki保管庫(戎)

わたしのわるいひと 外伝01

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「ヨー! 黒いウサギとネズミの幼女がこうアレなことを!」
「落ち着いてください。ご主人様」
枯れた喉が言葉の邪魔をする。
転がるように寝室に現れたご主人様はこんな短距離なのに息が上がっている。
その様子の理由を尋ねようとしたが、代わりに咳がげほげほと出た。


「嫌です」
おれは断言した
「どうしてそんな得体の知れないウサギに診察されなきゃいけないんですか」
「えー!」
不満そうなご主人様の顔。
「何か悪い病気だったらどうするのー!?」
すがりつかんばかりに抗議するご主人様。かわいい。
熱で少しぼんやりする頭を振りながら、おれは答える。
「ほんとにただの風邪ですから。ご主人様をもふもふしてる間に治りますよ」
ご主人様のしっぽを捕まえようとすると、するりと手から逃げ出す。
ベッドの上から無理やり身を乗り出して、モフモフモフモフ。
「やー!」
ご主人様は珍しく毅然とした拒否を示した。おれはちょっと傷つく。
「これは命令なんだからね!」
「はあ」
おれはしぶしぶ手を離す。
めったにない「命令」が出たから従うとするか。


そして、泥のような目をした黒いウサギはふらふらとおれの前に現れる。
「もふもふ充……許すまじ……」
「…………」
聞いていたのか。
早急に防音手段を考える必要があるな。
「はい脱いでねー別に野郎の裸なんて見たくないけどねー」
目が死んでる。
まあ逆に生き生きされても困るからいいか。
おとなしく服のボタンを外す。
黒ウサギの視線が固まった。
「……何それ」
びびられたか。
おれ中古だからなー傷がひどいんだよな。普段見えるところにはないけど。
と思ったのだが、続くウサギの反応はおれの想像を超えていた。
「何その縫合! 何その再生魔法の構成! 全然なってないよこんなのヒトにやるもんじゃないよ! ひどいよこうなったら徹底抗戦だよ!」
おれにとっては意味不明な言葉を立て続けに吐きながら、おれに襲い掛かってきた。(ように見えた)


「うわあああああ何すっ」
「やめろぉぉぉぉおおおおお」
「ギブギブ! ギブだって!」
「……もう、勘弁してくれ……」
(※注 性的な意味ではありません)


「これで十年は寿命が伸びたからね。感謝してよねぇ。あ、これ薬ね」
「……十年寿命が縮んだ気がするんですが」
たぶん今おれレ○プ目になってると思う。
これでもこっちのヒトとしては長生きしてるほうなんだけどな……恐ろしいものはまだあるものだ。
「よかったね! ヨー」
ご主人様はにこにこ喜んでいる。おれの様子がわからないのか……わからなくていいけど。
「それで、お代はどうします?」
ふっかけられなきゃいいんだが。
「ライカさんをもふもふさせてくれたらただでいいよぉ!」
「えっ……じゃあ……」
「却下」
おれは即答した。
「ど、どーして。ヨー。それだけで済むなら……」
「どうしてもです」
ご主人様はおれのモフモフだ。おれがモフモフするんだ。
「じゃあ、頼んどいたアレの他に、ヒトの喜びそうなものある?」
おれはしばらく考えた。仕方ない。あれを出すか。
「ご主人様、あの棚に、縞々の袋あるから持ってきてください」
ご主人様はとてとてと棚に近づく。そして戻ってくると頼んだものを持ってきた。
「何それ」
「チキンラーメン。猫井のコピー製品じゃないですよ」
「ウサギに安藤百福の偉大さはわかりませんよね……」
「何ーバカにしてるの?」
「え、えっと、喧嘩はやめようね……」
間に入るご主人様。険悪な空気を無視しておれは続けた。
「そこのネズミさんにはこれをあげましょう」
おれは『縁結び』と書いたお守りを取り出した。
「あんなウサギよりもっといい人を見つけるんですよ」
「はっはーキミの正体窓から大声でばらすよ」
「や、やめてください……お願い……」
おれよりおろおろするご主人様。ネズミ娘はおれの手からお守りを取ってこう言った。
「おじちゃんありがとー」
おじちゃん……。
「はい。もう用が済んだので帰っていいですよ」
「言われなくても帰るっての!」
ネズミ娘を引きずるウサギ。幼女は手を振る。
「じゃあねーおねーちゃんおじちゃん」
おじちゃん……。


「何ともなくてよかったねーヨー」
薬を飲んでベッドの中でうとうとしていたおれにご主人様が話しかけた。
おれはご主人様のほっぺをぺたぺたなでてせがむ。
「ごほうび」
ご主人様はおれの唇にそっとキスした。
そのままご主人様の顔を捕まえて長期戦に持ち込もうとしたが、結局すぐ離した。
「……どうしたの?」
「鼻詰まってて息ができないんです」
「……おかしい」
ご主人様はくすくす笑った。
それにしても思い出す。あのネズミ幼女――
「ご主人様」
「なあに?」
「おれおっさんですか?」
「隙あらば触ろうとするところはそうかな」
それを聞いてご主人様に伸ばしかけていた手を下ろした。

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