猫耳少女と召使の物語@wiki保管庫(戎)

エセ坊主

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だれでも歓迎! 編集
運悪く"落ちた"俺は、たまたま坊主頭だった。
好奇心旺盛なネコに拾われた俺は、たまたま般若心経を暗記していた。
上記2項により、俺は異世界でエセ坊主となった。

「こんにちはー。猫井テレビですー」
珍しいもの好きのネコの間では、噂が広がるのも早い。
ヒトの宗教家が呪文を唱えると聞いて、テレビ局の取材までやって来る始末である。

適当に作った祭壇代わりの台に果物や菓子を並べ、パーティー用のろうそくに火をつける。
「では」
と言って背を向けると、しんと静まり返った。
「ま~か~はんにゃ~は~ら~み~た~しんぎょ~」
木魚と袈裟は俺の飼い主が持ってきた。
一体どっから手に入れたのかは知らない。
木魚はなんか見た目が安っぽいし、袈裟は無駄にキラキラしてて派手。
足袋はない。
草履は歩くたびにピーピー鳴る。幼稚園児か。
「かんじ~ざいぼ~さつぎょ~じんはんにゃ~は~ら~み~た」
木魚を叩く棒はない。だから素手でペシペシ叩いてる。
ありえないけど、別に気にしてない。
こっちの世界の人は本来の使い方知らないんだし。
「じ~しょ~けんご~うんかいく~ど~」
最初はばちがあたると思った。
だけど、やってるうちにだんだんどうでもよくなった。
慣れって怖い。
「いっさいく~やくしゃ~り~し」
足しびれてきた。あぐらにチェンジ。

最後までお経を唱え終わって振り向くと、取材に来たネコが涙ぐんでいた。
「すばらしい。これぞヒトクオリティ!」
とか言っちゃってる。ちょっと罪悪感を感じた。
「今の呪文の意味を教えてください」
とレポーター。
んなもん知るか。むしろ俺が訊きたいわ。
「呪文ではありません。般若心経というお経です。仏様に感謝の意を示しています」
それっぽく言ってみたけど、絶対間違ってる。
本物のお坊さんごめん。

見物客を見送って、お供え物(仮)のリンゴっぽい果物をかじっていると、飼い主がやって来た。
「今日は大漁にゃあ」
現金を手にニヤニヤしている。今夜は酒盛りか。
「ずいぶん気前のいいお布施だな」
「魔除けのおふだも売れたにゃ」
「おふだ?」
「この前、お前が書いたやつにゃ」
「あれ売ったの?」
俺が酔って書いた『冷やし中華はじめました』が、魔除けのおふだ?
「抽選で5名様にプレゼントするって言ってたにゃ」
あと4枚、何書いたんだっけ。酔ってて覚えてない。下ネタじゃなきゃいいけど。
……日本人以外は読めないからいっか。


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