猫耳少女と召使の物語@wiki保管庫(戎)

蒼拳のオラトリア 第七話

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
――青龍殿 危険物調査エリア


 薄暗い研究室のような部屋の中で、白衣のヒトの男とシャコの女官が慌しく機械を操作したり、
走り書きをしたりしていた。その部屋の中央では、また気絶したらしいMB-5が診察台のような
ものの上に横たわっている。
 …よく見れば、その診察台を中心とした床に、幾重にも魔方陣が刻まれていた。執拗に、細密に
刻み込まれた術式の集積が、知識のない者にもそれが一種の結界であろうことを匂わせる。
『…どうじゃなあ、検査の方は』
 その空間の中に、寝所に向かったはずの龍王の声が響いた。
 姿なき主の声に、白衣のヒトが驚くでもなく事務的に答える。
「駆動系やセンサー類は、たしかに高度ですが理解できるものですから『別の時代』から落ちた物
というわけでもないようですが…制御系などの重要部位はブラックボックスとして高度なシールド
を施されているらしく、彼女の眼も通りません」
『そうかぁ…うちに務めとる子で一番目のいい娘なんじゃがのぅ』
「申し訳ございません…」
『ええ、ええ。どうせこりゃあ予備検査みたいなものじゃあ』
 恐縮する女官を、主の声がやさしくとりなした。
「それと気になることが……用途不明のコイルが、全身の何箇所にもわたって内蔵されています。
電磁石の類かとも思ったのですが…宇宙作業用だとしても、手足の末端だけで十分のはずですので
目的がわかりません」
『…ふぅむ…』
 声が考え込む様子を見せた。
『…やはり、戦闘用かのぉ』
「おそらくは…かぎりなく黒に近いグレーというところでしょう。これ以上の調査は分解を要する
のですが、もし戦闘用だとするならば何の対処もされていないとは到底思えません」
『もしも、最初から『こちら』に落とすつもりで設計されておるならば……か』
「左様で」
 …検査室の中に沈黙が満ちる。
 沈黙の中、渦中のMB-5はいまだ眠り続けていた。
『…まあ、非破壊検査はここまでじゃな。ご苦労じゃったの、二人とも』
「いえ。それでは彼…は、どうしましょう?」
『ふむ…客間のひとつにでも放りこんどくとええじゃろう。現状は特に危険もなさそうじゃしなあ』
「畏まりました」
 診察台からストレッチャーのようなものに移され、MB-5は検査室から運び出されていった。


 無人となった検査室から意識を戻し、寝所の椅子に腰掛けたまま龍王は静かに呟いた。
「…さて、どうしたもんじゃろうかのぅ…」



  蒼拳のオラトリア 第七話「…これが、最後の経験ね」



「よくあたしを部屋に入れる気になったわね」
 部屋に入るなり寝台に腰掛けたフーラは、あっさり迎え入れた俺への疑念を口にした。
「邪魔になったあんたを始末しにきた、とか考えなかったの?」
 俺も少し離れた椅子に腰掛けると、その疑問に答えた。
「もしそうだったとしても、その前にだいたいの事情を教えてくれるんじゃないかと思ったからさ」
「…なぜそう思うのよ」
「さあ、なんでだろう…」
 俺はここ数日のフーラの様子を思い出していた。
「気落ちしてる俺の様子を見にきたり、ノーマさんに引き合わせたりしたからかな」
「ふん、自惚れがすぎるよ…あたしが来てたのはトリアの元気がなかったからだし、あんたを遣い
にやったのだってトリアと二人でいる時間が欲しかったからだもの」
「そっか」
「…でもね」
 ぎし、と音を立て寝台の上で膝を抱えるフーラ。
「あのでかいのが落ちてきた日、物陰からトリアを見ながら泣いていたあんたを見て……かつての
あたしを重ね合わせて見てしまったのもまた事実」
「…え…」
 そのまま互いに押し黙る。俺はフーラの言った意味を考えながら、次の言葉を待った。
 逡巡するような長い間のあと、フーラは寝台の上に立膝の恰好で座り直してこちらを向いた。
「あたしの境遇についてはこの際省くわよ。常とは違う姿を持った人間が爪弾きにされる…そんな
くだらない出来事、ありふれすぎて触れるにも値しないわ」
 その一言だけで、彼女の苦渋に満ちた過去を垣間見た気がして胸が熱くなる。
 だが、触れたくないものにあえて触れる必要もないだろう。俺はただ頷いて続きをうながした。
「あたしはノーマに引き取られ、あの港町にやってきた。あたしはその頃にはもうすっかり他人を
信じられなくなっていたから、ノーマの工房を昼間抜け出してはくだらない遊びに興じてたの」
 フーラがベッドシーツに手を這わせると、見る間にその膚が色や質感を変え、程なく手とシーツ
との境目がまるでわからなくなった。俺の位置からは、まるでフーラの肘から先が突然なくなって
しまったように見える。…擬態、か。
「こうして自分を消してしまえば、嘲りの目や迫害から逃れるのは簡単だった。むしろ、あたしが
一方的に相手を玩ぶこともできた。あたしはお化けを装って、港町の子供を脅かしてまわったの」
 フーラはくすりと自嘲の笑みを浮かべる。
「まったくくだらない遊びよ。でも…そのおかげで、あたしはトリアに出会えた」


 その日も数人の子供の腰を抜かしたり泣かせたりして溜飲を下げたフーラは、いつも通る裏道を
出てきたところで思わず足を止めた。ちょうど通り道に数人の子供のグループが輪を作っていて、
童歌を唄いながら遊びに興じていたのだ。
 すぐに引き返そうと思ったが、フーラの足は縫い止められたように動かなかった。
 とても楽しそうだった。仲間に入れてもらえたらどんなにか楽しいだろう。
 だけど…これまでの経験を思い出す。自分の奇妙な姿に、奇妙な体に、みな恐れ、嘲り、罵倒を
ぶつけてきた。自分は決して彼らの仲間には入れない。ただこうして物陰から見ているだけだ。
 そう思うと寂しくて、フーラは泣いた。声は出さない。万一うさぎの子が混ざっていたら、この
距離でもすぐに見つかってしまう。身を潜めるために自然と磨かれた知恵だった。

 そのとき、遊びに興じる女の子の一人と目があった。

 びくりと震えそうになる体を必死に抑える。落ちつけ、向こうにはこっちは見えてない。呼吸を
整えじっとしていれば見つからない。単なる偶然、すぐにむこうを向くはずだ。
 けれど、その子は視線を外さない。体が震える。おかしい、どこか擬態し忘れたのだろうか。
 奇妙な子供だった。目のところをおかしな仮面で覆っていて、他の子供たちから明らかに浮いて
みえた。頭からつんと飛び出した触角と、少々派手な色合いのヒレ耳のようなものが、どことなく
自分を引き取ったノーマという男にも似ている。
 やがて、その女の子が輪を外れてこちらに近付いてきた。震えが大きくなる。来るな、離れろ。
 その子が小さく呟いた。
『どうして、ないてるの』
 耐えられなかった。フーラは擬態していた壁から離れると、わき目もふらず逃げた。
 子供は追ってこなかった。

 次の日から、フーラが町に行くと必ずその子がいた。
 誰かを脅かそうと隠れていたフーラを、女の子はあっさり見つけて声をかけようとした。その度
逃げて、隠れて、それでもすぐに見つかる。その繰り返しだった。いつしか、お化けごっこはその
子供とのかくれんぼに変わってしまっていた。
 そしてある日、ついにフーラは逃げる方向を間違って彼女に追いつめられてしまった。
『やめて、ぶたないで』
 怯えきって物陰で震えるフーラを、女の子はやさしく抱きしめた。
『ごめん…もう追いかけないから。明日からはあなたが私を追いかけるの』
 女の子の言葉に驚いて顔を上げると、彼女は微笑んでいた。
『ね、いっしょに遊ぼう?』


「自分を偽って逃げ続けていたあたしを、その女の子は『一緒に遊ぶ友達』として定義し直した。
あたしを見つけるのは上手なのに、隠れるのは全然下手だったわ…絶対触角が飛び出してるのよ」
 くすくすと思い出し笑いをするフーラに、俺はその女の子の正体を察した。
「もうわかったでしょ、その子がトリア…これがトリアとあたしのなれ初めよ。今にして思えば、
彼女に見つかった事であたしはまさしく救われたのよ。脅かすだけだったお化けごっこはそのとき
にはかなりエスカレートしていて、ほどなく誰かを怪我させるか、盗みをはたらいてしまうかして
あたしは道を踏み外していたでしょうね」
 昼間はノーマさんの目が届かないのだ。…もしそうなれば、フーラを助ける人は誰もいなかった
に違いない。
「見えない友達を追いかけていたトリアも、いつしかそれまでの友達のグループとは疎遠になって
しまっていた。あたしたちは二人だけで遊ぶようになった…あたしはそれで構わなかった、トリア
さえそばにいてくれればそれで十分だったから。それに、彼女はたくさんの友達よりあたし一人を
選んでくれたという優越感もあった」
 フーラの目に昏い光が見えた。そのときの独占欲が、フーラの執着の根底にあるのは容易に想像
がついた。
「トリアが青龍殿で蒼拳士として修練を積むと知ったとき、当然あたしも青龍殿に行くことを希望
した。ノーマを説き伏せ、龍王様に誓いをたてて、あたしは蒼拳士の従者としての修練に励んだ。
トリアとずっと一緒にいたかったから…」
 不意に、フーラが立てた膝に向け顔を伏せた。
「…だけど、トリアについた最初の従者はあたしではなかった」
 ぎり、と歯噛みする音が、離れている俺の所まで届いた。
「名を出すのも忌まわしい…あの男だった」


『…納得できないわ』
 胴着姿のフーラが呟くのを聞いて、トリアは苦笑を浮かべた。
『仕方ないよ、フーラはまだ修練半ばだから…』
『そういうことじゃないの』
 トリアをきっと厳しい目で睨み、フーラは自らの疑念を口にする。
『心配なのよ、あいつはよそ者だから。龍王様もどことなくあいつを信用してない感じがする』
『心配はいらないと思う…彼の能力はたしかだし、龍王様だってそれは認めてるはず』
『だけどっ!』

『珍しいな、君らが言い争いとは』

 背後から男の声がかかる。一瞬フーラの身が硬直し、驚きで体色が乱れた。
 即座に気を取り直し振り返る。そこには、鮮やかな鱗を持つウミヘビの男が立っていた。
『×××、もういいの…?』
『ああ。追い出し会だとか言ってたけど、結局あいつらは呑む口実が欲しいのさ。俺がいなくても
気付かないくらい盛りあがってたからお先に失礼させてもらった』
『…今日一日はあたしにくれる約束じゃなかったかしら』
 フーラの冷たい視線を軽くいなし、×××はしれっと言った。
『それは彼女が決めることだよ、フーラ。トリア、僕の準備はもういいよ…どうする?』
『うん…行こう。ごめんねフーラ』
『トリア!』
『次に帰ったときは、きっと時間をとるから…』
 トリアはそういって、申し訳なさそうに『目を細めた』。


「…それが、あたしが遮光器なしのトリアを見た最後になった」
「え、それじゃあ…」
「青龍殿で修練を積んでいた間、トリアは遮光器を着けていなかったのよ。すべてはあいつのせい」
 俺の胸を、ざわざわとした不安が包み始めていた。何が…トリアさんに何があったんだ。
「トリアに実際のところ何があったのか…それはあたしにも知らされていない。彼女も話そうとは
しなかった」
 フーラが、シーツに爪を立てた。波紋のように広がるシーツの乱れが、俺の心もかき乱す。
「出立から半年後…やつの裏切りで、トリアは落ち物ともども売り飛ばされそうになったと。後に
なって聞かされたのはそれだけ」
「っ…!!」
「やつは南の魔海から来た犯罪者だったのよ。魔窟の者たちの協力をとりつけてやつらのアジトを
叩き潰した時、トリアは遮光器もなしで強力な魔洸照明を昼夜問わず当てられ続け、衰弱しきって
いたらしいわ」
 俺はそれを聞いて頭が沸騰するのを感じた。
「…その、裏切り者は…?」
「死んだわ、当然でしょ。龍王様の名において、肉も骨も区別なく完膚なきまでに粉々にしたって、
討伐隊に参加したノーマ本人から聞かされたわ……あたしがやってやりたかったくらいよ」
 吐き捨てるように呟くフーラ。俺も同じ気分だったが、死んでしまったなら怒りのぶつけようが
ない…ただ、そいつの最期が最悪のものであったことを祈った。
「救出されて青龍殿に連れ戻されたトリアは、リハビリのためあの港町周辺をノーマと組んで監視
する任務を言い渡された。本来一組で出来る任務だから、それは蒼拳士としてはどん底ってことよ。
…そしてトリアは、二度と遮光器を外さなくなった」
 そんなことがあったのか…。
「あたしがもっと早く修練を終えていればトリアを傷つけることはなかった。だから、今度こそは
トリアを守ってあげたいのよ、あたしの力で…」
 フーラの気持ちは痛いほど伝わってきた。伝わってきたのだけど…。
「…だから、あんたは消えてよ」
 だからといって、俺の足に絡みつくこの触腕はさすがに無視できなかった。
 いつの間にか擬態で巧妙に隠れた触腕が、寝台と椅子の間の床を伝って俺の足に到達していた。
話してる間にちょっとずつ伸ばしていたらしく、俺はまるで気付けなかった。
「ぐっ…!?」
 凄まじい力で引っ張られ、俺の体が宙を舞う。上下が逆さまになり、長く感じる一瞬の後、背中
にどすんと衝撃を受けて息がつまる。咳き込みながらも目を開くと、俺は寝台の上でフーラにのし
かかられていた。
「約束の時よ。あたしを満足させられなかったら、あんたをバラバラにして青龍殿の外に放り出す。
このへんの深海魚は悪食よ、骨も残さずたいらげてくれるわ…」
「くっ…どうして…! 俺は従者になるなんて言ったつもりはないし、仮になったとしてもフーラ
も従者になればいいじゃないか! 従者が一人だけって決まってるわけじゃないんだろ!?」
「…何もわかってないのね」
 俺のTシャツを乱暴に引き裂き、フーラが俺の胸板に舌を這わせた。ぞくぞくと背筋が震える。
「トリアのそばにいるのはあたしだけでいいの……今までも、これからも」
「う、あ…っ」
 胸板を這うぬるりとした感触が、鎖骨を伝い、首筋に到達した。思わず声が漏れる。
「…だからこれは、あんたが死ぬ前にかけてあげる最後のお情けよ」
 熱い吐息が頬にかかる。俺の顔を掴み、フーラが陶然とした笑みを浮かべて顔を近づけてきた。
 ヤバい、これは…、

――喰われる。

 唇が重なり、舌が侵入してくる。脳髄をまさぐられるようなディープキス。
 歯列を伝い、舌を絡めとり、唾液を搾り取り、流し込まれる。必死に流されまいとする精神が、
快感と酸欠に犯されていく。こ、いつ…舌も自由自在かよ…!
 ずるりと唇が離れた時には、意識は半ば刈り取られ、抵抗する力を失っていた。
 ブラックアウト寸前の視界の隅で、フーラがぺろりと唇を舐めて後ろに下がる。痛いほどに自己
主張を始めていた俺の下半身が剥き出しにされるのを感じて、俺は焦燥感にかられて身を起こそう
とした。…が、ダメだ。体がいうことをきかない。
 かろうじて頭を起こし、視界がフーラをとらえる。フーラは俺のモノの上で膝立ちになっていて、
その顔には捕食者の笑みが浮かんでいた。
 …俺がそっちを見るのを、待ってた…?
「ミナミ…あんた童貞かしら?」
「うっ…」
 つぷりと、先端が触れるのを感じてびくりと震える。そこはすでに熱く潤っていた。
「それとも経験はあるのかしらね……いずれにせよ」
 フーラの腰がじわじわと下りてくる。
「…これが、最後の経験ね」

 ぞぶり。

「うあっ!?」
「はあっ……」
 急に腰を下ろされ、全身を舐め上げられたような感覚をおぼえる。
 俺のモノすべてがフーラの中におさまっていた。
「うふふふ……食べちゃった」
 甘い声が耳を侵す。俺の剛直をやわやわとフーラの中がもてあそぶ。
「ふふ、びくびくしてる…もう果ててしまいそうね。でもダメよ、少しはあたしを愉しませて」
「ぐっ!?」
 俺のわき腹をつねって無理矢理意識を覚醒させると、フーラは俺の上で腰をくねらせはじめた。
「は、あ…はは…さすがお貴族さま御用達ね、なかなかイイわ…」
 俺は息を詰めて耐える。もう今にもフーラの中に吐き出してしまいそうだ。
「ほら、どうしたの…はっ…あたしを満足させないと、本当に死んでしまうわよ…?」
「くっ…!」
 破れかぶれになって、俺はフーラの豊満な胸に手を伸ばした。くにくにと弄ると、フーラの吐息
に甘い物が混じり、膣内が敏感に反応する。
「あっ…そうそこを……いいわ、つねって…ああっ!」
 フーラもまた昂ぶってきたが、俺はもう限界が近付いていた。畜生、どうしようもないのか…!
「ふふ、そろそろ…トドメを、さしてあげる…!」
 フーラは体勢を変えると、強烈に絞め付けながら激しく腰を上下させ始めた。
「あっ…うあああっ!?」
「ふふふ…これで、おしまいよ…!」
 そんなものに、ギリギリまで張り詰めていた俺が耐えられるはずがなかった。
 俺のモノが、フーラの奥で爆ぜる。
「あ……あっつい…」
 陶然とするフーラの顔を下から眺めながら、俺は煮え滾ったものを深奥にどくどくと注ぎ込んだ。
「はふ……ふふ、満足したかしら…?」
 フーラが昂ぶった息で囁いた。そして、首にやさしく手がかかる。
「…じゃあ、未練はもうないわね」

 …満足。
 満足だって?

「ふあっ…!?」
 精液でぐちょぐちょの膣奥を突き上げられ、虚をつかれたフーラの手がゆるんだ。
「ちょっと、おイタは……ひうっ!」
 もう一度。昂ぶった体は簡単には鎮まらず、俺のモノにフーラの体は反応せざるを得ない。

 ふざけるなよ売女(ベイベロン)。
 『最初で最後の経験』がたった一回? どこのぼったくり風俗だよそいつは。

 俺は先の大攻勢の折り、フーラが無意識にこすりつけていた部位を探り当てると、そこに全火力
を集中した。
「あっ…は…そんな、ちょっと…!?」
「…なんだ、攻められるのははじめてか? 愉しめよフーラ」
「ふあああっ!」
 さっきまで自在にカタチを変え、俺を責め苛んでいたカラダはもう見る影もない。俺に突かれる
たび、股間を中心に波紋のように色彩が広がっていく。なんともカラフルでまるで虹のようだ。
「綺麗じゃないか、トリアさんに見せてやりたいな」
「くっ…!」
 トリアさんの名前を出され、怒りの表情を浮かべて再び俺に手をかけようとするフーラ。
「おっと」

 ずむっ!

「ひああっ!」
 あわてず騒がず一番奥を叩いてやると、フーラの抵抗が止まる。同時に強く絞めつけられ、俺は
二度目の射精をした。
「あっ、う、ああああ……っ!」
 最奥に感じるその衝撃で、フーラもまた絶頂を迎えた。身も世もなく全身を震わせ、遂には脱力
して果てる。はあはあと荒い息が俺の耳を愉しませた。
「ひっ…!?」
 だが、俺が容赦なく三度目の律動を開始したため、フーラは絶望の表情を浮かべた。
「俺を迎え入れたのが失敗だったなフーラ。『童貞男のサルっぷり』、舐めんじゃねえよ」
「そ、そんな…これがヒトだ、なんて……うああああっ!」


 かくして、俺はフーラに勝利した。
 戦いはいつも空しい。


「ぜぇ、ぜぇ……とはいえ、さすがにやりすぎた…」
 完全に腰が立たなくなり、俺は気絶したフーラの横に倒れこんだ。寝台は互いの体液で酷いあり
さまだったが、他に移動できないんじゃ我慢するほかない。
「あ、そういえば…」
 ふと、もはやどうでもいいクラスの素朴な疑問が湧いてきた。

「…満足させられたら、俺になんかイイことあんの…?」

 知ってる奴は、俺がすでにフルボッコしてしまい当分目を覚ましそうになかった。
 あー、これでさらに恨まれたら頑張り損だなこりゃあ…。



(つづく)

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

目安箱バナー