猫耳少女と召使の物語@wiki保管庫(戎)

テイルズ オブ コンチェルト

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テイルズ オブ コンチェルト



 目の前の数字を見て、私は頭が痛くなる思いがしました。
 数字は先月のものより確実に大きくなり、先月のものは先々月のものより大きくなっています。
 増加率は減る様子を一向に見せず、むしろ大きくなっている。
 しかも、この数字の意味するところは、出費ではなく、収入です。

 ますます頭が痛くなっていた。
 これが私の手腕によってもたらされたものであればどんなに楽なものでしょうか。
 私でなくとも誰か別の猫であれば、どんなに胃の痛みが軽減されるものでしょうか。
 現実は常に非情で、この数字の伸び率をたたき出したのは、先日私の主人が拾ったヒトなんです。

「ニャーッ!」

 遠くで主人の悲鳴が聞こえてきました。
 続いてどたどたと廊下を走る音が聞こえてきます。
 主人の変な声も、廊下を走る物体とともに近づいてきています。

「にゃぁあああああ!!」

 そして、壁にぶつかりました。
 机の上のものが微かにかたかたと音を立てています。
 ドアの向こう側で何人かの猫が集まり、にゃあにゃあと何か話しているのが聞こえてきました。
 そんな中ドアが開き、ひょっこりと半裸のヒトが私の仕事部屋に入ってきました。

 このオスのヒトが、私の胃を悩ませる張本人。
 イマガワ・ヨリヒト。

「よぅ、ステラ。今日もご苦労さん」
「軽々しく私の名前を呼ばないでください、ワッフルさん」

 ステラとは私の名前のことです。
 私は、猫の国の東南部の一角をおさめる領主クローネ家の主人、アリシア様の秘書にして侍女長です。
 残念ながらクローネ家は落ち目の貴族。
 人材不足のためかここ数年、収入が大幅に支出を下回る始末。
 私は秘書や侍女長だけではなく、クローネ家の財政の総元締めも任されています。
 一応、私も無能と呼ばれるような猫ではないことを自負しておりますが、
 それでもクローネ家の財政を一人で立て直すことは無理。

 毎日毎日そろばんを弾いて、頭を唸らせながら悩んでも出来なかったことを、
 今私の目の前にいる下半身を丸出しのヒトがやってのけそうなのが頭が痛くてたまりません。

「俺はワッフルじゃないっての!」

 ワッフルというのはイマガワ・ヨリヒトのあだ名です。
 なんだか、イマガワ焼きというヒトの国のお菓子があるようで、
 どんなものかをアリシア様が聞いたところ、餡を包んだワッフルみたいなもの、と答え、
 何故か笑いのツボに入ったアリシア様がイマガワ・ヨリヒトのことをワッフルと呼ぶようになったのです。
 本人は頑なにワッフルと呼ばれることを拒否していますが、
 今では屋敷どころか屋敷外でも定着しています。

「それより、何をしてらっしゃったんですか?」

 ワッフルさんは私の仕事部屋の椅子に勝手に座り、私が睨んでいた書類を勝手に奪って目を通しています。
 落ち物であるヒトは、言葉を理解できていてもこの世界の文字は、学ばなければ読めないはず。
 はず……なのだが、このヒトだけは例外中の例外。
 落ちてきて間もなく、この世界の文字を全て識字することができた。
 それこそ古代トラ文字、古代ウサギ文字、
 果ては滅亡した種である、サーベルタイガー語、リョコウバト語までも理解できるんだそうです。
 専門家の話によると、一種の落愕病ではないか、と言われています。
 落愕病は落ちてきたヒトに見られる症状で、一般的な物は高熱を出したり、
 たまに言語障害や記憶障害を起こす個体がいるのだが、極々希に微弱な魔力を持ったり、
 ワッフルさんのようにこの世界の言語を理解できるようになったりするものもいるらしいです。

 ワッフルさんも、この世界の文字を厳密には読めるわけではなく、
 一体どのようなことが書かれているのかだけがわかるらしいです。
 朗読はできないけれど、意訳だけできるというそんな感じなのだとか。

「んー? ちょっとね……」
「さっきアリシア様の悲鳴が聞こえましたけど……」
「うん。それより、これ、もうちょっと支出抑えられそうだな」

 ワッフルさんはそういうと、私がさっきまで頭を痛くさせて睨んでいた書類を突き返しました。
 二、三言口を開くと、ワッフルさんの言うとおり支出を抑える方法を示唆します。

 まったく、賢すぎて忌々しく感じてしまいます。

「で、さっきは何をしてたんですか?」
「手押し車」
「?」
「体位の一つ。
 女の方が四つんばいになっているところを、後ろから挿れて、膝を掴んで持ち上げるやつ。
 当然膝を持ったら、アリシアが手を地面につく。
 リアカーを押す要領で、動く体位」
「……」

 私は唖然としてしまいました。

「あ、アリシア様はどうしたのですか?」
「つい調子のり過ぎちゃって、全速力で走ったら、角を曲がりきれずに壁に激突……」
「アリシア様ーッ!」

 私はワッフルさんをその場に置いて、廊下に飛び出してしました。
 さっきの大きな物音を聞いていましたが、まさかそこまでアリシア様が大変な目にあっているとは思わなかったのです。
 にゃあにゃあと廊下で立ち話をしていたメイドに声をかけ、アリシア様の居場所を聞き出しました。
 アリシア様は医務室に運ばれたとのことを聞き、即座にかけつけました。

「だ、大丈夫でしたか? アリシア様」
「ええ、大丈夫よ」

 運が良かったのでしょうか、怪我一つなさらずに、アリシア様は健やかでした。
 ほっと胸をなで下ろし、私はアリシア様に提言します。

「もっと体を大事にしなきゃ駄目ですよ、アリシア様」
「うん、わかってるわ」
「では、何故……」

 アリシア様。
 典型的な黒猫で、綺麗な黒い髪、透き通るような白い肌。
 私が生涯尽くすことに値する、唯一無二の主人です。
 とても美しく、女性的で、優しいお方……。

「でも、ワッフル様が望むならば」

 そう、その天使のようなお方は、あのヒトに夢中になってらっしゃる。
 いや、ただ夢中になっているだけならばいいのですが、主従関係が完全に逆転しているのです。

 クローネ家の庭に落ちてきたワッフルさんをアリシア様が拾い、
 お優しいアリシア様は手厚く保護することに決めたのですが、
 その日のうちに、ヒトの身でありながらアリシア様に夜這いを掛け……。
 何も知らぬ純なアリシア様を、たぶらかしたのです。
 それから毎日やりたい放題。
 ワッフルさんは荒淫の限りを尽くしました。

 アリシア様は完全に身も心もワッフルさんの虜になり、言われるがまま……。
 本来奴隷であるはずのワッフルさんのことを様付けで呼び、
 自らをワッフルさんの性奴隷であると公言までなさって……。

 ただの暴君であれば、賊として扱えばよかったでしょう。
 しかしワッフルさんは誠に口惜しいことに有能で、傾いたクローネ家を立て直すために必要不可欠な人材です。
 このクローネ家の表でも裏でも実権を握って、やりたい放題。
 それも見境がないわけでもなく、アリシア様とその周囲の猫と交尾をしまくるだけ。
 アリシア様が嫌がるどころか、自ら体をゆだねるほどですから、止めることもできません。

 正直なことを申しますと、私はワッフルさんが憎いです。
 長年長年、お仕えしてきたのは私です。
 アリシア様を陰で日向で支えてきたのは私です。
 アリシア様も私のことを信頼してきて、僭越ながらいつかはそのお美しい体を私にゆだねてくれるだろう、と。
 確かに私も女でアリシア様も女です。
 ですが、アリシア様も私のことを嫌ってはいないはずで……心から忠誠を尽くしていれば、
 いつかはアリシア様も私の気持ちに気付いて、応えてくれると淡い期待を抱いておりましたのに……。

 幾多の害虫みたいな男達を駆除して守り抜いた、アリシア様の処女。
 落ちてきたばかりのヒトなら大丈夫だろう、と過信していたら、呆気なく散らされてしまった。
 そのときの私の味わった落胆は幾ばくか……。

「大丈夫、アリシア?」

 そこへちょうどワッフルさんが来ました。
 このヒトはアリシア様を傷物にしたどころか……。

「はい、ワッフル様」
「だから、俺はワッフルじゃないっつーの」

 そしてアリシア様の輝くような笑顔を、たった一人で受けて。
 うらやましい、ねたましい。
 私とワッフルさんの何が違うのか。

 私はアリシア様に尽くしていて、ワッフルさんはアリシア様をぞんざいに扱っている。
 さっきだって、アリシア様が壁に激突したというのに、ワッフルさんは私の部屋に来ました。
 それなのにアリシア様は責めることもせずに、喜んでいる……。

 くやしい。
 ただ、奪われただけならまだよかった。
 けどそれだけじゃなくて……。

 ワッフルさんの手が私のお尻を軽く撫でました。
 背筋が総毛立つような思いがしましたが、アリシア様に向けた笑顔はなんとか保つことができました。

「さっきステラの部屋で面白いもの見つけたんだ」

 私の名前を不意に呼ばれて、ワッフルさんの方に顔を向けると、ワッフルさんはにやりと笑いました。
 ワッフルさんは背中に隠していた方の手をゆっくりと見せました。
 手には私がいつか使おうと思って隠しておいた物が……。

「だ、駄目ですッ!」

 私はワッフルさんの手の中の物を奪おうとしましたが、ワッフルさんはさっと手を挙げて避けてしまいました。
 ワッフルさんは意地悪そうに笑い、持っている物についた札の文字を読んでいきます。

「七番アイアン、通称『にゃんこスレイヤー』と呼ばれているやつだな」
「か、返してください!」
「いやいや、ちょっとでかすぎるぞ、これは。初心者は三番オークあたりを嗜むべきだ」

 なんとか奪い返したものの、もう手遅れのようでした。
 アリシア様は目を丸くして、私の顔を見ています。

 私がこのような卑猥な物を持っていることがばれてしまった……。
 顔がみるみるうちに熱くなってきました。
 きっと赤くなっていることでしょう。

「あの……ワッフル様、今のは一体なんだったんでしょうか?」
「俺はワッフルじゃない。今のはディルドウだ」
「ディルドウ? はて、一体何なのです?」

 頭が急速回転を始めました。
 アリシア様はディルドウが一体何なのか、わかっていないご様子です。
 純真無垢でなんとかわいらしいのでしょう、と感慨を噛みしめるのは後にしておいて、
 今ならまだ全力でごまかせば、なんとかなりそうです。

「ディルドウっていうのはな。
 まず二人の女を用意して、片方の先端を女のおま……」

 必殺ネコパンチをワッフルさんにぶちかまして黙らせた後、
 私は必死ににゃんこスレイヤーの嘘の説明をしました。

「……と、いうわけで、ディルドウというのは獅子族に伝わる伝統的な武具のことなのです」
「へえ、そうなの」

 前屈みに倒れたワッフルさんを、アリシア様はお胸で受け止めつつ、優しく笑ってくださいました。
 他人を疑うことを知らないアリシア様を騙すことは少々胸が痛みますが、これも要らぬ誤解を防ぐため。
 いえ、誤解ではありませんが、知らなくていいこともこの世界には存在するのです。

「いや、違うぞ、アリシア」

 ようやく一息ついたかと思うと、ワッフルさんの目が覚めたのかすっくと起きあがってきました。
 ワッフルさんはあろうことかアリシア様の背後に立ち、アリシア様の耳元で囁いています。
 さきほどはワッフルさんの影から必殺ネコパンチをお見舞いしましたが、
 ここからではネコパンチを繰り出しても、絶対にアリシア様に見られてしまいます。
 例えネコパンチを繰り出したとしても、ワッフルさんはきっとアリシア様を盾にするつもりでしょう。
 ワッフルさんは確かにアリシア様のことを、大事に思っていますが……というか思いたいですが、
 アリシア様にネコパンチが当たる可能性がほんの少しでも存在していたら、
 私がネコパンチをできないという心理を、ワッフルさんは知り尽くしていました。

「ディルドウというものはな……」

 ワッフルさんはぼそぼそとアリシア様の耳元で何かを囁いていました。
 私は気が気でなくなる思いでしたが、何もできません。
 アリシア様の顔が赤くなる一方、きっと私の顔は青くなっていっているでしょう。

 ワッフルさんがアリシア様のふんわりとした毛が生えた耳から口を離す間際に、
 耳の付け根をこしょこしょと撫で、アリシア様は気持ちよさそうに目を細めます。
 平時であれば、その様子があまりにもかわいすぎて、はふぅと溜息をついていたでしょう。
 しかし今は状況が状況です。

「あ、あの……ステラ?」
「は、はい……」

 アリシア様は顔を真っ赤にしたまま、目を丸くして私を見ています。

 ああっ、もう何もかも終わってしまった……。
 長年積み上げてきたアリシア様の信頼が崩れ落ちていく音が聞こえてきます。

「その、えっと……わ、私とえ、えっちなことがしたいの?」

 どう答えればいいのでしょう?
 はい、とも、いいえ、とも答えることはできません。
 ワッフルさんがアリシア様の背後になって、にやにやと笑っています。
 憎たらしいです。
 今すぐ奇声を上げつつ、ネコパンチ三連打をぶちかましたい衝動にかられましたが、我慢我慢、です。

「は、はい……」

 けれど、私は勇気を出して一歩踏み出しました。
 どうせバレてしまっているのです、最後くらい……自分に正直になりたいです。

「アリシア様と……エッチが……したいです」

 諦めたらそこで試合終了なんです。
 私は、地面に崩れ落ち、手をついて、よよよと泣きつつ告白しました。
 するとアリシア様は中腰になり、私の肩にぽんと手を置いてくれました。
 もしや希望の光が見えたのでは、と顔を上げます。

 アリシア様のお美しい顔が私の目の前に……。

「フツーにだめー」

 私は凍り付きました。
 否! 砂になりました。
 どこからともなく風が吹き、さらさらと体が崩れていきます。

「私の体はワッフル様のものですから」

 またワッフルの野郎か!
 い、いえ、また、ワッフルさんですか……。

 ワッフルさんはそんな様子を見て、大層満足そうにアリシア様を見ました。

「うんうん、アリシアの身も心も俺のものだからな。
 パーフェクトな解答だ、アリシア、今日の夜は楽しみにしておけよ。
 あと俺はワッフルじゃない」
「はい、ワッフル様」
「いい子だアリシア。でも俺はワッフルじゃないぞ」

 ワッフルさんはアリシア様の頭を撫でました。
 アリシア様は大層気持ちよさそうに目を細めて、ワッフルさんに甘えています。
 まるでペットと飼い主のようです。
 本来ならばワッフルさんがペットでアリシア様が飼い主なのですが、
 ラブラブ空間でもってその関係が逆転しています。
 恐るべし、ワッフルさん、です。

 でも、そんなことはもういいんです。
 一世一代の告白で見事玉砕した私は、窓から入る太陽の光でぐずぐず崩れていくんです。
 灰になっていくんです。
 太陽の光がこんなに明るいものだったなんて、知りませんでした。
 ふ、うふふ……うふふふふふ……。

「でもなアリシア。もし俺がステラにエッチなことをさせろ、って言ったらどうする?」

 ワッフルさんの何気ない一言が私の体の細かい粒子を再結集させました。
 もしや、もしやもしや、あの憎たらしいワッフルのあんちくしょうが……
 おっと、失言でした……ワッフルさんが、アリシア様のお体に触れることを許可なさってくだされば、
 ワッフルさんは憎々しいことこの上ないですが、夢に見たアリシア様もお美しいきめの細かい肌に接吻をさせて……
 いえ、それ以上のことをさせてもらえるかもしれません。

「それは……本当は嫌ですけれど、ワッフル様のご命令であれば……」

 本当に嫌と言われて、そこはかとなく心が傷つきましたが、それでも体は反応してしまいました。
 指先に震えが走ってきます。
 何十年も恋いこがれたアリシア様と、ベッドでにゃんにゃんできるという現実が未だ信じ切れません。

「そうか、わかった、アリシア。けどな、俺はワッフルじゃない」

 ああ、今ではワッフルさんの頭上にエンジェルハイロゥが見えてきました。
 本当に昇天してくれれば、どんなにいいだろうか、なんてちょっぴし思ってしまいますけれど、
 ワッフルさん、ありがとうございます。

「じゃーな、ステラ」

 え?

 ワッフルさんはアリシア様をひょいと抱えて、すたすたと廊下へ出てしまいました。
 呆気にとられてしばしその場で呆然としてしまいました。
 話が違います。

 私はその場に転がっていたにゃんこスレイヤーを拾うと、のべつまくなしに廊下に飛び出しました。

「ま、待ってください、ワッフルさん!!」
「しつこいようだが、俺はワッフルじゃない」

 ワッフルさんは何故か廊下を全力で疾走していました。
 どんなにアリシア様に好かれていてもヒトはヒト。
 私はなりふり構わず、走って追いかけました。

「うおっ!」

 ワッフルさんは追いかけてくる私の方を見て驚いたのか、手近な部屋に飛び込みました。
 私も後を追ってその部屋に入ります。
 部屋は昼間だというのに窓に厚手のカーテンが閉められて暗く、じめっとしている部屋でした。
 アリシア様は大きなベッドにちょこんと座り、私をワッフルさんを交互に見ています。

「は、話が違うじゃないですかっ!」
「違うって、何がだ?」
「あ、アリシア様とエッチなことをさせてくれる、って……」
「いや、俺が命令したらアリシアはステラとエッチするかどうかを聞いただけだ。
 別段、本当にそれをやらせるわけじゃない」

 激しく騙されました。
 手に持っているにゃんこスレイヤーで、ワッフルのクソ野郎を刺し殺したくなってきます。
 けれど、それはできません。
 いくら憎くても、アリシア様の大切な人です。
 私が、引導を渡したら、アリシア様は私のことを憎むでしょう。
 もう二度とかなわない恋だとしても、嫌われるようなことはできません。

「しかし、まあ、考えないわけでもないぞ」

 ……にゃんですと?
 もとい、なんですと?

「流石に俺のアリシアに挿入は許可できないが……胸を触るのとキスくらいなら許してやらんこともない」
「そ、それは本当ですか? ワッフルさん」
「まあ、もっと詳しく言うとだな。
 俺とアリシアとステラがこれから三人でエッチするわけだ。
 俺がステラをかわいがっている間、アリシアは当然空き時間になるわけで、
 その間、ステラがアリシアにキスしたり胸にタッチしたりするのは許可してやってもいいという話。
 そして俺はワッフルじゃない」

 ……。
 私は処女ではありません。
 アリシア様に捧げるべくずっと処女であり続けていたのですが、
 とある日に突然現れた男に奪われてしまいました。
 その男は、言うまでもなく今私の目の前にいるヒトです。

 アリシア様の寝室から夜な夜なうめき声のようなものを聞く、という話を聞き、
 夜に寝室に行ったのが運の尽き。
 あれよあれよと服を脱がされ、気付いたときにはアリシア様の体の上で大きく足を開いていました。
 アリシア様は白魚のような指で私の大事な部分を大きく開き、
 「ワッフル様さあどうぞお召し上がり下さいませ」と、妖艶な声でささやきました。
 あろうことか愛しのアリシア様の手によって、私の処女はワッフルさんに捧げられてしまいました。
 そしてワッフルさんはヒト。
 ヒトは私たちの心をかき乱します。
 不思議な力でも働いているのか、処女だった私をワッフルさんは遠慮無く責め立て、
 無理矢理鳴かされてしまいました。

 アリシア様の体を触れることができることと、私自身の貞操のどちらかを取るか、私は悩みました。
 確かに、アリシア様の体に触れられることは素晴らしいことですが、
 ワッフルさんのもたらす暴力的なまでの悦楽を突きつけられるのにはやはり抵抗があります。

 ふと、よくよく考えたら、ここでNOと言ったところでワッフルさんは見逃してくれるでしょうか?
 いえ、きっと見逃してはくれないでしょう。
 ワッフルさんの性格は、わかっています。
 どちらにせよ、私がワッフルさんに犯されてしまうことは決定事項。
 ならば、勿論。

「だが、断る! このステラの最も好きなことの一つは……」

 ではなくて。

「わかりました。本当に、アリシア様のお体に触れてもよろしいのですね?」

 これが大人の選択というものです。
 長いものには巻かれろ。
 状況状況に合わせて、シビアでもベストな選択をした方が頭がいいのです。

 ワッフルさんは鷹揚に頷くと、アリシア様の座るベッドに腰掛けました。
 そこで、アリシア様の腰に手を回し、引き寄せると、そのまま濃密なキスをしました。
 ワッフルさんとアリシア様の荒い息の声が、両者の唾液が混じり合う音とともに響きます。
 お二人の興奮の度合いが手に取るようにわかり、はからずとも私の気分も高まっていきました。

「アリシア……」

 ワッフルさんはアリシア様をベッドの上で押し倒し、本格的にアリシア様の口の中を味わっています。
 二人の舌が口の外で絡まったかと思うと、より深いところに埋まり、果ては頬の内側を動いているのが見えます。
 アリシア様は必死でワッフルさんの首に手を回し、より多くの唾液を獲得しようとしているように見えました。
 実際、そうなのでしょう。
 ワッフルさんの口にむしゃぶりつくアリシア様は、目を細め、まさに感極まっているような表情でした。

「アリシア様……」

 悔しいですが、本当に本当にアリシア様はワッフルさんに取られてしまったようです。
 熱狂的な宗教家が神に心酔するかのように、アリシア様はワッフルさんのことを愛してらっしゃる。
 傍目から見て、そうであることがわかりました。
 アリシア様の周りにピンク色の空間すらできているように見えます。

 濃密であれどただのキスシーンで、私の子宮が収縮してしまいました。
 下腹部に熱がこもり、むずかゆいようなこそばゆさが襲ってきます。

 やがてワッフルさんはアリシア様から顔を離しました。
 アリシア様はまだ味わい足りないとばかりにワッフルさんの頭を引き寄せようとしましたが、
 ワッフルさんは無言で手を振り払います。
 アリシア様もそれに従って、ゆっくり頭を落としました。
 ワッフルさんもアリシア様も、口を大きく開き、舌を突き出しています
 突き出された舌には銀色の糸が二人を繋いでいました。
 銀色の糸は段々と重力によってアリシア様の口の中に落ちていき、ついにはとぎれてしまいます。
 アリシア様はその銀色の糸と口の中に溜められたワッフルさんの体液を、口の中で舌で弄び、
 くちゅくちゅと音を立てた後、ゆっくりと喉を鳴らして飲み干しました。

 思わず私も口を半開きにし、少々涎を垂らして、唾を飲み込んでいたことに気付きました。
 ワッフルさんに組み敷かれるアリシア様は、被虐に酔っているようにも見えます。
 もしアリシア様の上にいるのがワッフルさんではなく私だったら、
 という想像が脳裏によぎり、一個人としての尊厳を踏みにじられて歓ぶアリシア様に対して、
 ぞくぞくするような擬似的な快感が背筋を通り抜けました。

 アリシア様が医務室で纏っていた白いワンピースがワッフルさんによって無理矢理脱がされ、
 絹のように白くきめの細かい肌が晒されます。
 手押し車という体位で貫かれていたせいか、下着は一切つけていませんでした。
 鼻血が出てしまいそうなのを必死に押しとどめ、まばゆいばかりの光景を見ました。

 ワッフルさんはそんなアリシア様の素敵な肌に舌を這わし、
 あろうことか胸の頭頂を口に含みました。
 アリシア様は切れ切れになりつつも、熱い吐息とともに詰まったような声をあげています。

「アリシア、ほらステラが見ているぞ」

 ワッフルさんが私の視線に気付いて、アリシア様に言いました。
 地面にへたり込んで、愛しい人であり、また主人でもある高貴なお方の痴態を見ていた私は、
 はっと我に返り、どうアリシア様に言葉をかければいいのかわかりませんでした。

 アリシア様は、いやいやするように手で顔を隠します。
 その様子は、私の心の奥の嗜虐心をちくりと刺激しました。
 ワッフルさんも、私と同様のものが心の中にあるようで、
 アリシア様の腕を掴んで、顔から引きはがしました。

「恥ずかしがらなくてもいいぞ、アリシア。
 お前の体が綺麗だったから、ステラは思わずみとれていただけだよ」

 アリシア様は涙目になりつつもワッフルさんを見ていました。
 ワッフルさんはアリシア様の耳元に口を寄せ、何かを呟きました。
 何を呟いたのかは聞き取れませんでしたが、ワッフルさんが顔を離すとき、
 ちゅっと音がするついばむようなキスをしていました。

 ワッフルさんは体を起こすと、アリシア様の手をとって優しく起こし、背中に回りました。
 恥ずかしがって力ない抵抗をアリシア様はしておりましたが、ワッフルさんは強行して、
 アリシア様の膝の裏に手を掛けました。

「わ、ワッフル様……やっぱり、私、は、恥ずかしいです……」
「恥ずかしがっているアリシアの顔が見たいな。それはそれとして俺はワッフルじゃない」
「で、でもっ……あ、ああっ……」

 アリシア様の憐れみを抱いてしまうか細い声もワッフルさんには届かないのか、
 膝の裏にかけられたワッフルさんの手は、無情にもアリシア様の足をこじ開けました。

「や、やぁぁぁ、だめ、やっぱりこんなの恥ずかしいですぅ」

 じたばたとアリシア様は足を振って逃げようとしましたが、もう後の祭り。
 ワッフルさんはアリシア様を持ち上げて、ゆっくりとこちらに向きました。
 アリシア様はお大事なところを自らの手で覆い隠していますが、顔は真っ赤。
 のっしのっしとワッフルさんが、アリシア様を持ち上げたまま、歩いてきました。

「ほら、アリシア。隠してたらステラに見えないだろ?」
「だめ、だめです、こんなの、恥ずかしすぎます、ワッフル様ぁ……」

 今や手で隠されたアリシア様のお大事な箇所が眼前に来ました。

「なあ、アリシア。今のお前でも、俺は大好きだけどな。
 お前がもうちょっと勇気を出して、自分を解き放ち、もっとエッチな子になったら、
 俺は今よりもっともっと好きになるぞ」
「ふにゃあ……」
「もちろん、エッチな子っていってもお前は俺のものだ。
 誰かにその肌を必要以上さらけ出す必要はない。
 だけど、ステラに見せて、恥ずかしがるお前の顔を、俺は見たいんだよ。
 ちなみに、俺はワッフルじゃない」

 ワッフルさんはまるで暗示をかけるように囁くと、そっとアリシア様の耳の先を甘噛みしました。
 アリシア様はびくびくと全身を震わせました。
 そして、アリシア様のお大事なところを隠している手の隙間から、透明な液体が漏れてきました。

 こ、これはひょっとして……。
 愛液ですか?
 感じてるんですか、アリシア様?
 私の視線で、感じているんですか? アリシア様。

 一筋だった軌跡は、段々と量を増した液体によって広く長くなり、
 ついにはぽたぽたと床に落ちて黒い染みを作り出しました。

「にゃ、にゃぁん……見ないで、ステラ……」

 は、鼻血ものですよ、アリシア様。
 お大事なところと、その表情!

 アリシア様はゆっくりと手をどかそうとしていますが、それも酷くゆっくりとしていました。
 花弁のように手は開かれ、その奥にある更に美しい花弁が露わになった瞬間、再び閉じてしまいました。
 たまらない、チラリズムです。

 しかしいささか不満でもありました。
 顔を上げて、ワッフルさんの顔を見ると、ワッフルさんは私の意を汲み取ってくれたのか、
 大きく頷いて再びアリシア様の耳をはむはむと噛みました。

「はにゃにゃにゃにゃーん」

 私は思わず床を拳で何度も叩きました。
 はにゃにゃにゃにゃーんとは何ですか、はにゃにゃにゃにゃーんとは。
 私を心臓発作で殺すつもりでしょうか、アリシア様は。

 興奮のしすぎで頭が痛くなってきました。

 顔を上げるとそこには桃源郷。
 まさしく桃色の物体がありました。
 粘度の高い液体にまみれて、テカテカと光を乱反射しているところがとてつもなく艶めかしいです。
 アリシア様は女性としてまず隠さなければならない部位を見られて、顔を真っ赤にして耐えています。

 まさしくここは桃源郷。

「ほら、ステラがじっくり見てるぞ」
「い、いわないでください……」

 この世にこんな美しいものがあったんでしょうか?
 何度も溜息を漏らさずにはいられません。

 そこへ、むくむくと大きくなっていくものがありました。

「じゃあ早速、いれるぞ、アリシア」

 それはワッフルさんの怒張でした。
 アリシア様と、この屋敷で働くメイドの多くを泣かす、ヒトの一物です。
 サイズ的には普通の猫より若干大きいくらいなのですが、比較にならないほどキモチイイ……んだそうです。
 私はオス猫と交わったことがありませんので、飽くまで伝聞ですが。
 ともあれ、あれほど潔癖だったアリシア様が、完全に依存するほどのめりこんでしまった以上、
 少なくともマタタビと同等の威力があるのでしょう。
 かくいう私も、初めてなのに何度も気をやらされてしまいました。

 その怒張が、ワッフルさんの慣れた手つきでアリシア様の急所にあてがわれ、一気に突き込まれました。

「にゃ、あああ、あああっ!」

 アリシア様は獣じみた声を上げ、思いっきりのけぞり震えます。
 何度見ても信じられない光景でした。
 アリシア様のまるでこの世の汚れなぞ一片も知らないような場所に、
 赤黒く、凶悪な形状のものが埋まっていくのです。
 まだにゃんこスレイヤーの方がかわいげがあるのに、です。

 そしてそれを突き込まれているアリシア様は、涙を流し、よだれを垂らし、
 髪の毛を振り乱して、悶えています。
 アリシア様は片足の膝の裏を持ち上げられ、もう片方の足を床についた体勢で後ろから責められていました。
 私の目の前でアリシア様とワッフルさんは交ぐ合っていました。
 ワッフルさんが腰を上下に動かすたびに、アリシア様は悲鳴じみた嬌声をあげ、愛液の飛沫と弾かせます。

 気が付けば私は自分のパンツのボタンを外し、下着の中に手を差し入れていました。
 アリシア様がワッフルさんの体の一部を出し入れされている部分と、同じ部位を、自分の指でいじくっていました。
 既にそこはアリシア様に負けぬくらいに水気を含み、下着を台無しにしていました。
 目の前でアリシア様の鮮やかなピンク色の肉が、まくれ上がったり、巻き込まれて中に入ったりする光景を
 擬似的に……ワッフルさんのものではなく、私は自分の指で再現していました。

 じりじりと弱火であぶられるかのような、くすぶった性欲が私の体の中を満たしていました。
 激しく手を動かして自らを慰めたいのですが、それをすると目の前の痴態に集中ができません。
 ジレンマにさいなまれながら、私はただひたすらにアリシア様のことをかすれた声で呼び続けていました。

「いくっ、ワッフル様、もう賤しいアリシアはイってしまいますっ!」
「いいぞ、アリシア! 存分にイけ! イったところをステラに見せつけてやれっ!」

 アリシア様の上半身が、がくんと下がりました。
 ワッフルさんが持ち上げていた足が地面につき、馬跳びをされるような体勢になったアリシア様。
 ワッフルさんは大きくためをし、アリシア様の上半身を再び持ち上げます。

「いくぞっ!」

 ワッフルさんはアリシア様の腰を掴み、もう既に白旗を揚げているアリシア様に対して、
 とどめの一撃を撃ち込みました。
 今までで一番深く、ワッフルさんの肉の槍が突き込まれ、アリシア様はあらゆる体液を撒き散らします。
 アリシア様は絶頂を迎えて大きく震え、張りつめたように体を硬直させます。
 それが過ぎると、ぐったりと脱力しきり、ワッフルさんに支えられるがままになりました。

「……盛大にイったな……」

 ワッフルさんはアリシア様の耳元で囁きましたが、
 アリシア様は我を失って、何も聞こえないであろう状態であり、ワッフル様もそれをわかっているようで、
 今囁いた言葉は私に向かって言っているように思えました。

 ワッフルさんはそのまま片手でアリシア様の体を支え、もう片方の手を私に差し出してきました。

「立てるか、ステラ」

 私ははっとして、下着から手を抜きました。
 指は大量の愛液に浸り、ふやけてしまっています。
 立ち上がろうとしましたが、うまく腰に力が入りません。

「たっ、立てます」
「なら服を脱いで、ベッドまで来い」

 ワッフルさんは、私に差し出した手を引っ込めて、アリシア様を抱いたままベッドに戻っていきました。
 私はその後を、這うように追いかけ、その最中にパンツを足首まで下ろしました。
 ベッドの縁に手をかけ、ゆっくりと立ち上がると、足にひっかかったパンツを脱ぎます。
 上着を放り投げ、ブラウスのボタンを引きちぎって投げ捨てました。

「やっぱり、ステラはステラでアリシアとは違った趣があるな」

 ワッフルさんは言いました。
 アリシア様の体は非常に女性的で、胸もお尻も大きく、やわらかい体をしています。
 対して私は、線が細く、胸が控えめで、お尻も小振りです。
 ですからあまり自信はないのですが……私は下着を上下とも取り去りました。
 ワッフルさんといえど、見られては恥ずかしいので手で隠しています。

「こっちに来い」

 ワッフルさんの声に誘われるまま、ベッドに膝をつきました。
 ベッドにはアリシア様がうつむせに寝ており、絶頂の余韻に浸っています。
 ワッフルさんは、私の短く切った髪を撫で、そっと引き寄せました。
 私の顔がワッフルさんの顔と接触し、口の中に異物が入ってきます。
 ワッフルさんの舌は巧みに私の歯をくぐり抜けて、私の舌を絡み取りました。

 急な異物感に軽く吐き気を催しましたが、なんなくやりすごし、
 私からもワッフルさんの舌に自分の舌を絡ませていきました。
 つれて私の女性の部分が反応し始めました。
 とはいえ、自慰のときに昂ぶる自然的なものではなく、
 こちらの都合を全く考えずに昂ぶらされる暴力的な快楽。
 ゆっくりと目をつぶり、ワッフルさんのするがままにされ、堪え忍びます。

 ワッフルさんが思う存分私の口の中を味わって、顔を離したときには、
 私の口の中の全ての唾液がワッフルさんの舌によって奪われて、
 代わりにワッフルさんの口の中の全ての唾液を、押しつけられていました。
 私はワッフルさんの唾液を舌で弄び、ゆっくりと飲み干します。
 この唾液は少なからず、アリシア様のものも混じっているはずだからです。

「あんっ」

 ワッフルさんはうつむせに寝ているアリシア様をひっくり返し、
 そのまま振り返ると私の脇の下に手を差し入れ、軽々と私の体を持ち上げました。
 私はアリシア様と抱き合うような格好で、寝かされました。

 眼前にはやや虚ろになった瞳のアリシア様がいます。
 今は少し澱んでいますが、普段は澄み切ったブルーの瞳も、
 高くて、彫りの深い鼻も、
 さくらんぼのようにみずみずしい唇も、
 ちょっと顔を動かすだけでどこにでもキスができる距離にあります。
 そして更に、今はそのキスさえも許可されています。
 アリシア様からキスなさってくれることはありませんが、
 私からキスしてもよい状況です。

 目をつぶり、そっとアリシア様の唇に……。

「ふにゃっ!」

 と思った瞬間に、尻尾を強く引っ張られて、アリシア様の唇から遠ざかってしまいました。
 大いに不満に思った私は、後ろを振り返ります。

「もう、ちょうどよくほぐれているな……」

 私の秘部に指を遠慮無く差し込み、ワッフルさんは楽しそうにこちらを見ました。

「ほらほら、アリシアにキスしていいのは、俺がステラをかわいがっているときだけだぞっ、と」

 わかっています、とばかりに顔をアリシア様に向けようとしましたが、時はもう遅し。
 高潔でまるで天使のようなアリシア様を汚し、堕落させきった凶器を、
 私の……いえ、女性の最大の弱点ともいえる箇所への入り口に添えていました。
 必死に逃れようと、せめてアリシア様にキスしようと、前にすすもうとしましたが、
 ワッフルさんは尻尾を掴んでおり、前に進めません。
 そうこうしているうちに、ついに貫かれてしまいました。

「にゃあ、にゃあぁぁぁん……」

 四肢から力がぬけ、アリシア様の柔らかいお体の上に倒れてしまいました。
 ちょうど顔はアリシア様のお胸の位置に落ちましたが、
 お胸の柔らかい感触を手のひらで感じることはできず、また口で頭頂のポッチを味わうこともできません。
 手足は腱が切れたかのように全く力が入らず、
 口はオスに支配されたメスの、にゃあにゃあと鳴く声と大量の涎だけを垂れ流す窪みになっていました。

「すごい、いい締め付けだぞ、ステラ!」
「ふにゃああぁぁぁ、あぁぁあぁああっ」

 ワッフルさんは遠慮を欠片もせずに、がんがんと突いてきます。
 突き込まれるたびに頭の中に霞みがかかり、体の奥底でくすぶっていた性欲が弾け飛んでいきます。

 ほんの少しのところにアリシア様のお顔があるのに。
 あと少し動けば、夢に見たアリシア様とのキスを堪能できるのに。
 体が一向に言うことを聞かず、心と反してワッフルさんの責めに屈してしまいました。

「あっ、イく、イきます、ワッフルさんッ!!」

 反射的に言葉を発していました。
 完全な高ぶりが眼前に迫ってきているときに、ワッフルさんは意地悪く突くのをやめました。
 私の体内からワッフルさんの存在が消え、後に残ったのは破裂寸前で放置された性欲だけ。

「ぬ、抜いちゃいやですぅ」

 私が懇願の言葉を口にすると同時に、今度は私の下にいるアリシア様が甘い吐息を吐き出しました。

「あぁっ、ワッフル様ぁ!」
「俺はワッフルじゃない」

 絶頂寸前でおあずけを受けて、切なくなりました。

「ワッフルさぁん……はやく、はやく私にもくださぁいっ!」

 はしたなくも尻尾を動かして、ワッフルさんのお腹をつつきました。

「ステラ。こういうときにはどう頼むか、教えたはずだが?
 俺はワッフルじゃないってことも何度も教えているが」
「は、はひぃっ! す、ステラはワッフルさんの性奴隷ですぅっ!」

 私は、以前に辱められていたときに、言わされていた屈辱的な台詞がすらすらと口から出てきました。
 現在と同じような状況でもって、何度も何度も言っていたためにもはや既に暗記しています。

「エッチな命令を聞きますっ、なんでも聞きますからっ、淫乱なステラにお情けをッ!」
「よし、いいぞ、ステラ! 俺がワッフルじゃないことを除けば満点だッ!」

 再び、私は貫かれました。
 最も深く、最も切ない部位が、ワッフルさんのもので圧迫され、目の前が真っ白になりました。

 さざめく絶頂の波が、私の頭の中身を全て押し流し、ゆっくりと意識が戻ってきます。
 そこへ、膣の奥深くで、何かが弾けました。
 膣を灼くかのような、熱い液体が私の中を満たしていきます。

「にゃあ……あっ……」

 私はぐったりとアリシア様の上に倒れ込みました。
 二、三度、ワッフルさんは膣の奥をつついたあと、射精の余韻を味わうような溜息をはきつつ、
 一物を引き抜きました。
 五秒ほど経つと、膣口付近に精液が垂れてきたのがわかりました。

「さーて、俺はまだまだやれるからな。次はアリシアの中に出してやろう」

 私は、絶頂のあとの軽い倦怠感に浸りつつ、明日の朝は腰が痛むだろうな、と
 どうでもいいことを考えていました。

「ひゃあっ、あ、アリシア様、だ、だめぇ……」

 私はベッドの柱に両手を縛られました。
 天蓋に繋っている柱の中頃できつくヒモで縛られて、
 バンザイをするような格好で、ベッドの上に座っていました。
 ワッフルさんの精液の詰められた膣を、アリシア様が舐めています。

「だめっ、ワッフル様の精液は私のものなのっ、ステラには……あげないわ」

 アリシア様は四つんばいになって私の足と足の間に舌を這わせ、
 そして後ろからはワッフルさんに貫かれていました。
 流石は、「ワッフル様の一番の性奴隷」を自称するだけあるのか、
 あの暴力的なまでの快楽を生み出すワッフルさんのもので突かれているのに、
 溺れずに私の中に注がれた精液をすすりだしていました。

「殊勝な心がけだな、アリシア。
 それにしても俺はワッフルじゃないと何度言わせれば気が済むんだ?」

 ワッフルさんはアリシア様を突いている腰を止め、
 上半身をゆっくり前に倒してきました。
 私の胸に顔を寄せ、舌で舐めてきます。
 ヒトの舌は、猫のそれとは違って、柔らかく滑らかです。
 まるで大きななめくじに這われているような感触に、背筋がぞわぞわとしてしまいます。

「ひゃ……」

 それほど大きくない胸の周りをぐるぐると渦を巻くように動いていきます。
 やがて、一番敏感なところの上を通過する直前に、ワッフルさんは舌を引っ込めました。

「ふぇ……」

 期待されていた快楽が訪れず、不満を覚えて、閉じていた目を開きます。

 私の胸のもっとも敏感な部位が、キュッと何かに挟まれました。

「ふっ、んんんんッ!」

 下唇を噛みしめて、激しい快楽の波による嬌声が口から漏れぬよう我慢しました。
 ワッフルさんは私の乳首を甘噛みし、まるでおもちゃを扱うかのように弄びました。

「あはっ……ステラ、ワッフル様に胸をいじられてイっちゃったのね。
 膣が、きゅっと私の舌を締め付けたわよ」

 アリシア様の悪戯な声。
 イくという生理的反応を見破られ、廉恥心が刺激され、
 そして何故か官能が沸き立ちました。

「んっ、あ……」

 私がイってしまったからでしょうか、ワッフルさんは激しく腰を振り、
 アリシア様を強く責め始めました。
 アリシア様のやわらかなお尻の肉が、ワッフルさんのお腹と腰の境目辺りに当たって
 一定のリズムで音を響かせています。
 段々とそのリズムは早くなり、音に混じったアリシア様の喘ぎ声も、
 太く、頻繁に耳に届いてきます。
 アリシア様は、私のお尻の横あたりのシーツを強く掴み、のけぞりました。
 お顔は汗にまみれ、涙にまみれ、涎にまみれ、そして精液がついていましたが、
 それでも美しさは変わらず……いえ、一層、艶めかしさが加わった魅力的なものに……。

「ワッフル様、ワッフル様、ワッフル様、ワッフルさまぁっ!」
「えぇいっ、イくぞ、アリシア! 俺はワッフルじゃない × 5ッ!」

 海老ぞりになったアリシア様とワッフルさんはキスをしました。
 アクロバットな体勢を保ったまま、両者の震えが最高潮を迎えます。
 キスの合間にアリシア様はくぐもったうめき声を漏らしています。

 恐らく、ワッフルさんはアリシア様の中に命の種を放ったのでしょう。
 とはいえ、ヒトと猫の間には子どもはできません。
 ふと、以前アリシア様がワッフルさんとの間に子どもができないことを
 寂しそうに語っていたことを思い出しました。

 アリシア様の心の痛みを再び認識するとともに、
 何故か、その事実に、私自身がどうしようもならない飢餓感のようなものを感じてしまいました。

「ふぅっ……本当、アリシアはさいっこうだな!」

 そんなことなぞ露知らず、ワッフルさんはぺちぺちとアリシア様のお尻を叩きながら言いました。
 満足の溜息をつきながら、ゆっくりと肉の凶器をアリシア様の体の中から引き抜きます。
 赤黒いグロテスクなそれは、さす方、さされた方のどちらともつかない体液にまみれ、
 てかてかと光を反射していました。

「あ、ありがとうございます、にゃあ……」

 アリシア様はくったりとその場に眠ってしまいました。

「アリシアは終わると寝ちゃう癖があるんだ。
 今日は朝からずっとヤってたから、寝かしといてやってくれ、ステラ」

 ワッフルさんはアリシア様の髪をそっと撫でました。
 鬼畜野郎と思っていましたが、アリシア様に向ける慈しみに満ちた目を見ていると、
 ワッフルさんはアリシア様のことが好きなんだ、とわかりました。
 何故か胸がほんの少しだけ痛むような気がしましたが……。

 ワッフルさんはアリシア様にシーツを優しく被せます。

「じゃ、俺、クレアのところ行くから、後よろしくっ!」
「へ?」

 ワッフルさんは自分一人だけ身支度を済ませると、飛ぶように部屋からでていきました。
 呆気にとられていた私は、ろくに反応すらできませんでした。

 クレア、とは、アリシア様の先代が数十年前に孤児を養子として迎えた方です。
 言うなればアリシア様の義理の妹。
 性格もアリシア様と正反対で、明朗で人見知りしない元気な方です。
 落ちてきたヒトという珍しい存在であるワッフルさんのことを好いており、
 ……もちろん、ワッフルさんの数多い情人の一人でもあります。

「あ……そういえば……」

 よくよく考えれば、私はまだ拘束されたまま。
 ベッドの柱にヒモで縛られ、身動きができません。
 無理をすれば抜け出すこともできますが、ベッドを壊してしまいます。
 アリシア様に頼めばヒモをほどいてもらえるでしょうが、今はお休み中。
 ワッフルさんに言われるまでもなく、起こすことなぞできません。


696 名前:16/17 ◆4hcHBs40RQ投稿日:2006/12/14(木)00:20:41ID:8abV+YL9
 ベッドに縛られたまま、アリシア様が自然に起きてくれるか、
 もしくはワッフルさんが戻ってくるか、私はこのままここで拘束され続けなければなりません。

「うー……ワッフルさんったら……」

 あるいは、私が抜け出せないことを計算しておいていったのかも知れません。
 抜け目のなさがあったために、この落ち目のクローネ家の財政を回復させることができたのでしょうが、
 何もこんなところまでそれを発揮してほしくはありませんでした。

 まあ、今回はアリシア様にクンニリングスしてもらえるというラッキーボーナスが……う。
 ……それも含めて全部計算通りだとはいくらなんでも思いたくありませんとも、
 ええ、私は孫悟空ではありません。
 孫悟空というのがどういう由来がある言い回しなのかは知りませんが。

「うにゅん……ワッフル様ぁ……」

 しかしまあ、今こうやってアリシア様の実に幸せそうな満ち足りた寝顔が見られて、私は幸せです。
 めでたしめでたし、じゃないでしょうか?







 ……う、おしっこがしたくなってきました。


 おしまい

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