猫耳少女と召使の物語@wiki保管庫(戎)

虹絹の乙女達04

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虹絹の乙女達 第4話 ~ココとアズキと温泉と~(前半)

 

「うーわー……こりゃまた汚い花火だねぇ」

 

 主に赤はあんただろうが。

 

「はにゃぅ」

 

 昨晩、この旅室を赤と白のプレリュードで埋め尽くした張本人達(俺含む)は、
まぁ部屋の掃除はプロに任せといて…というかそのプロのコールにより全員ハダカのまま起こされて…
もう泣きたいくらい恥ずかしいのをこらえ、今日も、前に進む。…青春番組か。

 

「なに難しい顔してるの? アズキくんっ」
 で、こちらがアル様。金髪クセッ毛でショートカットがクリクリ渦を巻いてネコミミがピクピクしている。
それがバスタオルで半身を隠してるのだが少女体型に似合わぬ巨峰がクッキリと浮かび上がっている。
「だからぁ、様は付けないでってばぁ!」
「にーちゃ、ぱりぱりですー」
 こっちのちっこいプニプニ肌の白竜が、ノア。丸くって大きな瞳と空色のモフモフヘアーが……っておい!
なんということだ、よくわからん体液でっゃっゃであるハズの頭髪がパリパリしとるではないか!
「ともかく、お風呂を浴びようよ。さすがに外出れないって~」
「その間にお部屋のほうを片しておきますので、ごゆっくりどうぞ」
 …ルームクリーナーさんがまるで『よくあること』のようにテキパキと精液や血液をモップで拭う姿が非常にアレだが、まあ今はいい。

 

 

 

 そんなわけでして、三人はまとめてバスルーム。
洋室造型(トイレは別部屋タイプ)の風呂付きシャワーで、今は湯をダバダバと張り始めたばかり。
元がエロい部屋を想定して作られていたからか(ベッドからして2人部屋なのにシングルキングだし)
大人が二人くらい肩を並べて浸かろうとも十分に足を伸ばせるサイズだ。
 …ん、待てよ。2人部屋でノアはちっこいからノーカンとしても、俺とカナとアルが寝る予定だったんだよな…
 ふっ、乱戦は避けられたわけだ。…やれやれ。

 

 それまでの累積経験値(精液)を温水で洗い流すべく、俺がシャワーのバルブを捻ると。
「わきゅっ!!」
 おお、ノア! 愛しのノア!(宝塚調)シャワーの出頭が冷たいことも知らず
むしろシャワーの存在に興味を示してプチプチした射出孔をまじまじと見つめていたノア!
でも冷や水をモロ顔面に浴びて飛び跳ねる姿がかわいいよ、かわいいよノア。
「ふえぇぇ…」
「にゃっははは! にゃはっ、ノアったら、にゃはっ、ごほっ、にゃははは!!」
 涙目に咳き込みながらアルが腹を抱え心地よいほど大笑い。
思わず俺もプッと吹き出してしまう。
「…うええええ、いじわる、ふえええ!」
 よーしよしよし、泣くな、泣くな。泣いても微笑ましくて主に俺がニヤけてしまうが泣くな。抱っこしてやるから。
ほれ、涙拭いてな。拭く俺の指がいろんな体液でパリパリだけど。
「にうぅぅぅ……ぐすん」

 

 全身からドロドロと乾燥ワカメがふやけるように汚れが落ちていく。
ノアったらすっかりシャワー嫌いになっちゃってシャワービームから狂ったように逃げ回る。四足ダッシュでドリフト萌え。
ひと通り皆が全身を流した後、話題がアレに移る。

 

 

 

 というわけで、まずはノアの男根を引っこ抜くわけだが。
…いや、双頭ディルドーの事な。
「うにゅー…」
「あー…これ、カナのヤツなんだよね。忘れて行くなんてホント珍しいなぁ」
 ともかく、昨晩から俺の大事な妹のような存在たる白子竜(最近本当に竜なのか微妙になってきた)の
小さな膣が長時間わけのわからん合成魔法化学樹脂に犯されているというのは健康上よろしくない。俺の精神衛生上も。
「はぅ」
 二人の視線を浴びて、おどおどする姿もキャワユイのだが、個人的に一刻も争う自体。だって女の子なのに俺より立派なコレはねーわ。
「どう抜くんだっけなぁ…とりあえず、ノアちゃん動かないでねっ」
「あい」
 そう言うと、俺達の視線に嬲られ剛直している人工擬似男根は
幼女のようなネコミミ女性の手により目一杯の力で引き抜かれようとして、
「うに゜ゃー――――――――――――!!!!?」
「うわっ!?」
 …痛いらしい。飛び跳ね走り回った後、水に足を滑らしてベチっとコケたままうずくまって股間を押さえプルプル震えている。
その痛さはタンスに小指をぶつけて飛び上がった拍子に反対の足ももってかれたようだと容易に想像できた。。
「うぅー…どうやるんだっけ、カナ、抜くときは手際いいからやり方わかんないよぉ…」
 ふんだんに夜のお供を相手しているアル様…いや、アルでも分からないらしい。
まさかここでクソ隊長の呪縛を受けるとは想定の範囲外だ。やっぱり帰ってきたらメシに噛んだガム入れてやる。
「ちょっと触るね?」
「ふにゃっ!」
 今度は、うずくまって股間を隠すノアの隙間を縫って細い手が入り込み、擬似男根を『ふわっ』とつまんでみせた。
「うーん…どこかを揉むと外れる気がするんだけど」
「にゃ、にゃあ!?」
 『ぐにぐに』と表面を擦るように揉みシゴくと、体の影で目認できないとはいえ
ノアの漏れる声、小刻みに震える背中、アルのピストン運動を促す手の動きが俺にもハッキリと見えた。
「にゃぁ…、あっ、はにゃ…!」
「んふー、感じるぅ?♪」
 …目的を忘れていませんか、八重歯だしてニンマリしてるご主人様。
「そ、そんなことないよっ! どっかを何度か揉むと、外れるハズ…」
 なぜか一瞬の動揺を見せ、それを隠すようにちょっと乱暴に手を竿の中ほどから根元にズラすと、

 

『ぞりっ』

 

「はうにゃー――――!!?」
 びくりっ、とノアがエビゾリになり、恥部が晒される。…おお!?
男根がノアの皮膚と同じ真っ白だったのに、黒くなってる!!
「おぉ! そうだ、根元もみまくると取れるんだったよぉ!」
 徐々に揉むペースを上げるアル。ソレはまるで、白いタイルに墨汁が垂らされるかのように染まって行く。
ガクガクとディルドとしての無機質な剛直棒へと変化し、ついにはソレが左右に揺れるたび
子竜の膣が『にちゅっ』っと音を立ててソレに蹂躙されている様子が伺えた。無論、俺は内股。
「よおっしふぁいとおおお、いっぽおおおん!!」
「にゃにゃにゃ、にゃー――――ああっ!!!」
 『ぬっぽーん!』って効果音が聞こえた気がする。勢い良くソレが抜け落ちる拍子に、

 

 つるっ

 

「はえぇ?」

 

 ベキャッ

 

「きゃうんッ!」

 

 …アルが盛大に滑って、風呂のタイルでモロ頭打った。

 

「きぅ~……」

 

 こんな打たれ弱くて国家の兵士やってけるんだろうか。

 

 

 

「大丈夫ですか!? すごい音が…」
 ぬおっ!? 黒のメイド服に身を包むルームクリーナーさんがこちらを覗いているってか風呂はいってくんなバーロー!
「わ、わ!! ごめんなさいっ!!」
 思わずカチューシャが外れそうなのを顔ついでに押さえパタパタと走り去って行った。
「お、お部屋はもうキレイにしましたからぁ~~~……!!」

 

「へくちっ」
 唐突にクシャミをしたのはノアだ。
「うぅ~…」
 ヘビの縦筋みたいな鼻の穴をヒクヒクさせて指でクシクシ擦っている。
ともかく、これじゃ冷える一方だな。……ちょうど湯船が溜まった。

 


 あぁ……ひと仕事をした後の風呂は、いいもんだ。
ってのは、気絶したご主人様を引きずって湯船に誘っただけだが。
主人が気絶したせいか、ヘビが活動を開始している。しかし呼吸の必要がないらしく、揺れる水面の下からこっちを見ている。ちょっと怖い。
「やー、やー――!!」
 そしてお湯を嫌がって手足をパタパタさせるノアの短い四杯が俺を殴らないように気をつけつつ、湯に引きずり込む。
「に゛ゃー――――!!!!」
 クッソそんなに熱いのか、暴れて水飛ばすなんがぁぁあぁああ鼻に湯が入るッ!!

 


「…ぐすん」
 なんとか落ち着きを取り戻してくれた。ふてくされて片頬を膨らましている。
現状を再確認すると、俺はバスタブに足を伸ばして肩までやや熱めの湯に浸かり、左手でノアの濡れてヘニャっとした空色のタテガミを撫でつつ
アルが滑って湯を飲まないように肩に右手を回し支えている。
アルのヘビは相変わらず湯船の中を潜水中。……こいつ、どうも危険感知しないと本体を起こさないらしい。ま、今はムリに起こす必要もないが。
「ぶ~」
 言葉にならない不満を漏らしつつ、湯気の立ち上る水面を軽く払うノア。ぱしゃん、と蒸気を出しつつ跳ね、波紋を作る水面。
「…にゃ?」『パシャン』
 同じように、水面にパンチをかます子竜。
「にゃ」『パシャ』
 フック。
「にゃ」『パシャッ』
 ブロー。
「にゃにゃにゃっ♪」『バシャバシャシャッ』
 乱撃。
「にゃー――――♪」『どぶん。』
 ヘッドダイブ。
驚いたヘビが思わず身を湯の中で引き、威嚇するかのように水中でアゴを開いてみせる。
……グチャグチャの水面でよく見えないし、主人の尾ってことでイマイチ怖くない。

 

 こうして、ノアはお風呂だいすきっ子になった。……あああ泳ぐな、泳ぐなこんな狭いところでッ!!

 

「ふゆ~♪」
 なんとかノアを制して湯船に落ち着かせる。静かな水面に鼻先だけ出して頭のてっぺんに白いタオルのっけてる。萌え。
 とかく、俺たちはまだ体を軽く流したものの、こすっちゃない。ちゃんとアカを取らなくては。
ええと、セッケンセッケン……おお、ボディソープあんのか。意外と近代的。
「にーちゃー、これー?」
 俺がバスタブの壁にあるクボミにセットされた洗剤の品定めをしているのを眺めたノアが、ひとつの容器に興味を持った。
 …ふぅむ、張ってあるプリントから見る限り、泡風呂だな。
ターバンみたいに紫のタオルを頭に巻いた優しそうな三毛猫女性が小奇麗な湯船で泡風呂を堪能している絵が印刷してある。
あーこれが名前かな?『バブルラッシュM200T』。やたら楽しめそうな商品名だな。
 カラカラとキャップを回して、ダバダバと100cc程度のソレを注ぎ……
なんだ? この中フタは。これじゃ1滴づつしか出ないじゃねーか。
へんなの。ツメでねじとって……よし。

 

 ノア。
「にゃ?」
 三回まわってニャン。湯をお前がかき混ぜる姿が見たい。
「あいにゃ!」
 湯船で腰を下ろすと息もできないので、体育座りだったノアがすっくと立ち上がる。
水面が、揺れる。

 

『ボゴォ』

 

 瞬時、『バスタブ全体が泡に包まれる』……非常にマズい予感が。
そこまで思考を進めたとき、ノアは既にぎゅうっっと体をひねっていた。
 ノア! やめ―――

 

 天使が、舞うと。

 

 虹が舞う。

 

 泡が、舞うと。

 

 視界が埋まる。

 

 さぁ、妖怪マシュマロンの襲来だ!(違)

 

 ぬうおおおおお

 


 『ぼふっ』

 

 

 ぐへぇ……うげ……泡のんだ……バスルームとびだし……げふ……。
「だっ、大丈夫!? 私のシッポが危険を感知して起こしてくれたんだけど……」
 アルが俺を抱え、バスタブ出たらお約束の足の水滴取るマットの上に横たえる。
……急激に膨張した泡に飛ばされたのであろう、元凶の容器が目の前に転がっていた。次のような文が見えた。
裏面:魔法性洗剤なので1滴で十分な効果です。一気に使用すると泡立ち過ぎなのでご注意下さい。

 

「とー!」
 軽快な掛け声と共に、泡に占有され1ミリ先も見えないバスルームから変なカンフーポーズでノアが飛び出してきた。

 

「にゃん!」
 招き猫の構え。ふっ……にいちゃん、そんな可愛らしい泡まみれの天使見れたら…心置きなく…がくっ。

 

「にゃにゃー!?」
「わ、わ、アズキくーん!!」

 

 

 

―――まだぁなぁ。
 あと、やたら長風呂になってすっかり日が昇っても戻らない仲間を、ロナさんが寂しげに待っていたのは、まぁ別の話。
退屈しのぎに、鎧竜は、あくびをひとつ。
「フガァ『りぶーと!!』ァァ……」

 

 

 

 

 


 「かったーい! アズキくんせなか、おちんちんよりかったーい!」
 アル様の小さな手により繰り広げられている強制座位前屈攻撃により『あばば』とか言い出しちゃいそうな俺は
物理的ダメージのみならず受け取り方次第でどうとでもマイチキンハートが傷つける発言を実に浴びつつスキンシップ。
つーかこんなイチャイチャシーンすっとばしてベッドインする現代の若者共は一体俺は何歳のオヤジなんだという
自己嫌悪にさいなまれつつ、ご主人様と背中を押し合うはずがずっと俺のターン。
 あばばばばばいたいいたいそれ以上前はむり!!ムリだってば!!!
「人間やめちゃったボクたちほどじゃなくってもいいけど、これは硬すぎでしょっ! ほれほれー!」
 畜生ッ!! 今朝の泡まみれの部屋洗浄代が俺の『週間少年ニャンプ』(ライバル誌は『週間少年ワンデー』)
専用費を押して『マダラ侍』が読めないだけで鬱気味なのに何で俺はこんな!!
「はぅー……ぅー?……みのどー……ん……にゅふへへ……ぅゅー……ゅー……」
 しかしまた幼児化したノアのほんわかほわほわ、うつらうつら眠るかどうか微妙な表情を見ているだけで和むんだけど
これ以上は背中が角度的に無理無理無理無理無理無理無理無理無理MURYYYYYYYYYY!!!
 ボスケテ!! 違ったロナさん助けて!! 俺の体がDIOに乗っ取られるから!!!
―――誰それ? でも直立から前屈して地面に手が届かないのは、ちょっと…
「そーだよっ! もっとカラダやらかーくしないと、キツい体位で耐えられないぞっ♪」
 既にセクロス前提!?
「ぅー♪ うぅー♪ けーる……だく……みっつ……まふぅ……にゃん……♪」
 でもノアが夢の中で口いっぱいミノ丼頬張っているであろう幸せいっぱいの寝顔を意地でも起こすものかこなくそおおおお
「ゆうしゃよ、これがきみの試練だっ♪ そらそらー!!」
 うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 …ん。読書中に昼寝して、今朝方のことを夢に見ていたらしい。カオスな後半もソレだ。
 いやはや、カナがいない朝ってのは別の意味で騒がしいもんだね。
王都からの命を受けて単騎行動中である隊長の帰りを望みつつ次の目的地に向かう虹絹隊の竜車は、
ヒトの俺と白竜のノアと鎧竜のロナさんとキマイラなアル様だけ。…いや、様づけするな、って言われたんだった。
 ガタゴトと進む金属フレームで補強された木製車輪が凹凸を拾い跳ね上がるはずが、
しかし微妙にサスペンションとか近代機構がついちゃって振動を吸収するのが流石のネコ工学技術。
でもいかせん基本原理は馬車で、馬じゃなくって竜などの動力源が必要であり
『城砕種≪シタデルバスター≫』に変身中なご主人様のひとり、ロナさんが牽引している。
本来の姿はネコミミ人間でさらりとしたグレーの長髪でやさしい眼差しを愛読魔道書片手に向けてくる女性。
でも竜モードになると体重とか質量保存の法則そこんとこどうよって感じに巨大化し、
この世界の過半数と人権を占める、ヒトなんてアイアンクロー一発で頭蓋骨粉砕が標準規格の獣人さんだって尾の一薙ぎで吹き飛ばせる。
そんなモ○×ーハ○×ーのボス格がドラクエ級に仲間になっちゃったくらいの今ならお買い得な安心感。

 

 ん、俺は今何をしてるかって? そうだな、ロナさんが思い出にとっといた魔道入門書片手に、もう片手を
ノアのもふもふとした頭髪をチョコラータよろしくヨシヨシしながら暇つぶし兼ねて魔法の勉強中。
「にーに、おなかもー♪」
 そして頭を撫でられ飽きたのかごろーんと万物生物共通の弱点たる腹部を無防備にも俺に差し出す彼女。当然ワシャワシャ。
最近理解したことは、身体年齢によって会話能力ってか呂律が上下するっての。つまり、また蘇生魔法で若干の退行をしてしまった。
つっても今回は俺の体内の異物抜きだから低コストでパッと見じゃ変化ねぇ。大きな傷とか神経ボロボロとかは魔力が多くいるらしいが。
 …俺が死んだり死にかけるたびノアの発育が阻害される。よろしくないことだ。
ん、そんなことより俺が死ぬことが問題なのか? …まあ、どうでもいい。

 

 さすが入門書、基礎の基礎単語から説明されてるから、めっちゃわかる。日本語で。

 

 話は変わるけど、魔法って案外とコンピュータのプログラムに近いね。
『電源』は魔素(マナ)、脳という『CPU』で魔法という『ソフト』を実行、『世界』というハードを操作するわけで。
扱い慣れると脳の中でマクロみたいにアクセラレータの構築が進んで詠唱省略なんて芸当もできるってわけ。
無理に当てはめるとそんな具合である。しかしまあ、俺には『電源』がないから実行不能。
いや、ほんのちょっとだけ、雀の涙ほどにはあるんだけど、そうだな、単三でVistaは動かせれないんだ。

 

「にゃうぅー…♪」
 そして使えなくって悔しくってしょうがない。貴様ら、剣と魔法の世界で剣を握れないヘナチョコが魔法も使えなかったら
『とりえ』の『と』の字もねーってことじゃんか。たまねぎ剣士とかそういうレベルじゃねーぞ。
腹いせにノアのおなかを撫でて撫でて撫でまくる。こそばゆいのか仰向けの背中を俺のあぐらしたフトモモの上に擦り付けてくるノア。
ちびっこい白羽も擦り付けてくるが意外と丈夫で引っかかっても全然痛くなく、むしろゴムみたいに簡単に曲がり俺にも負荷がない。
金魚運動に伴いニャンニャンの構えをした小さな両腕をゆらゆら揺らし真っ白なシッポをハタハタさせてまじかわいい。

ガコン。


「はにゃっ!?」
竜車にブレーキがかかる。ノアが俺の膝から転げ落ちて頭からゴチンという音がした。

 

―――はーい、ご搭乗の皆様、到着ですよ。
 おお、会合場所に付いたらしい。つっても、硫黄の立ち上る草木も少ない荒れ肌岩地だけどな。
ロナさんみたいな鎧竜と普通にエンカウントできそうな背景を催していると思って差し支えない。
なお、ロナさんは自身の声質に自信がないのでいつもテレパシー。射程は通常の声が届くくらいで、やさしいお嬢様みたいな声が脳内に響く。
「うぅ~~~……!」
 む、我が愛しのノアが涙目でシャツの胸にしがみ付いて来た。頭打ったからな。だっこして背中をポンポンしてやる。
 もう一人のご主人様…じゃなかった、呼び捨て希望だったな。
アル、ついたぞ。竜車の屋根は布製だからその上で日光浴しながら昼寝するのは大層に心地が良いだろうけど。
「んー…? ふあぁぁ…」
 痛がるノアの頭をさすりつつ見上げると、天井の布地に写る日光を遮っていた黒い塊がモゾリと動く。
ひゅっ、っとソレが動いて、
「ん、おっはよっ♪」
 ひょっこりと半ちくわ状になってる天井の前方入り口から逆さまになって顔を出すアル。
お昼寝もほどほどにしないと風邪引くぞ?
まぁ小さな影が寝返り打って日光を吸い込んだ布の天井を黒く彩るのは乙ではあったが。
「いーじゃん、光合成、光合成♪ 硫黄もお肌に良いらしいしさっ」
 断っておくが、決してご主人様が合成獣(キメラ)だからって葉緑素は持ってないからな。
つーか見張りって名目で昼寝すんな。
「あははっ、だいじょーぶだよっ。アルが寝てても、アルヘビが起きてるからねーっ♪」
 アルがコウモリよろしく宙吊りに顔を覗かせる横から蛇の頭がロープみたいに垂れて来て、
ひと声シャーっと鳴ってみせた。この人は尻尾が合成獣技術でヘビになっており、
ネコ側が寝ていてもヘビ側が周囲を警戒できるという安心と信頼のアルソック。

 

 

 

「そろそろ、ココちゃんと合流するのかなぁ?」
―――そうよ。って、いつも王都からちゃんとスケジュールが送られてるでしょ?
「小難しいんだもん、ぱぱーっと読んでちゃちゃーっとお仕事こなせばいーじゃんっ♪」
―――ふふ、もー、アルったら…
 ロナさんのテレパシーはもはや無意識レベルで行使してるらしい。だから本人も気がつかない間に
ナチュラルに感情とか笑い声とかを送信してしまう。おかげで竜顔でも表情が伝わってくるようだ。
「んじゃ、アズキくん、お昼ごはんつくってーっ♪ はらごしらえしたいよっ!」
「にーちゃ、つくってー♪」
―――あっ、わ、私も、食べたいかも…
 そんな美女三名からリクエストあるのに断ったら給仕を任されている男としてどうよ。
まぁ隊長の一声でキャンセル決定だが。俺に決定権があればの話だがな。

 

 

 

「つーくねーっ♪ つーくねーっ♪ たーっぷり、つーくねーっ♪」
「つーくにゃーつくーにゃーたーっぷり、つーくにゃーがやーってくる♪」
―――気がつけーば、口のなーか、気がつけーば、夢のなーか♪
 著作権的に微妙なBGMと共に魚肉つくねをキャンプ用のコンロにかけた鍋に投下しつつ、食は進む。
―――あーん、ちっちゃいよぉ。もっとおっきーカタマリにして?
 ロナさんは基本形がネコミミだが、最近は諸事情により竜のまま戻れないらしい。
そのへんは深く掘り下げるとマリアナ海峡くらいディープに雰囲気が暗くなるので触れない。
とにかく、合成獣なご主人様達は新陳代謝が異常に早いためそれに比例して大食いだ。
たぶん俺にとって3人分くらい、それぞれが食べる。あとノアは俺が大食いチャレンジモードの1.5倍が標準量。
しかもロナさんは竜状態だと胃もデカいので、なかなか満腹にならない。太らないか若干心配。
つまり、俺の鮮魚加工業は硫黄と昭和のかほりの中で自分の取り分ももらえないというどこのアフリカ農園だって状態。
しかしまあ、目の前の装盾亜目だかなんだかがが明日の美女と思えばどデカミートボールになっちゃったつくねを
よっこらせと担いで口元に運ぶのも決して悪くはない。むしろ非常にお世話になってる日ごろの感謝感謝。
「ガウ、ハフ、ガフウ…」
 …やっぱ地の声が竜だから漏れる声が割りと怖い。
魚肉を噛むとグッチョグッチョ言うからまさかその勢いで人を飲み込んだりしてないかと若干の不安が過ぎるが忘れておく。

 

「ごちでしたっ♪」
 小学生が九九の表を覚えて意気込んでるみたいな勢いでビシッと手を上げて完食の宣誓をするアル。
「まふー! おにゃか、いっぱーい…」
 今日が臨月なのっておなかの子供をスリスリする母親みたいな満ち足りた表情で空につぶやくノア。
―――ごちそうさま。食べさせてもらって、ちょっと恥ずかしかったけど、良かったよ…えへへ。
 大きな若干タレ気味の目を上目遣いにして口を動かさず見つめているであろう俺の妄想が竜の顔にかぶさって見えてしまうロナさん。

 

―――あ。
 ん? どうしました?
―――きた、きたわよこれは!!
「はうっ!?」
 ビキッ、とロナさんの体に岩盤がきしむような音。変化開始の音。ノアが驚く音。
―――1週間ペース外の予想外にネコモード来たわよっ!
「おお、ついにロナちゃんの可愛らしい容姿が再びくるんだねっ!」
 本人も待ち望んでいた瞬間。
 岩っぽい皮膚より先にどんどん骨格が修正され、今は竜人状態。
―――ごらんの皆様、只今、ロナ帰還しまっす!
 そして嬉しさのあまりか意味不明な発言。
皮膚が徐々に、かさぶたが治るように盾鱗から白いなめらかな人肌へと変化し、
ネコミミがあるべき場所を覆っていた大き目の鱗もひっこんで本来の耳が生えてきた。
―――ネコ、光臨!!
 そこには、つややかな灰色の長髪を朝風にさらりと靡かせ、
ビシっと天に指を突き刺してワンナントフィーバーよろしく腰をひねってこちらに向いているグレーロングヘアなネコの女性。
『おおぉー!!』
 パチパチと三名のよくわからん拍手。
「…で、服は?」

 

―――…

 

「ろなちゃん、はだかんぼですー」

 

 んでもって、ロナさんの程好くふくよかなるラインを描くボディは桜色乳首および頭髪と同じ灰色陰毛を日光の元に晒してひとりフィーバー。

 

―――きゃー―――――!!!!

 

 ぬうおおおおそのさっきまで俺が調理に使ってた熱湯の残ったつくね鍋こっちに投げんなあちちゃちゃちゃほわちゃああああ!!!

 

「あらー、これはー…」
 ロナさんは調理雑巾と内股で大事な場所を隠しつつ包丁を投げ構え、アルはノアを担いで緊急避難を開始し、俺はクリリン一歩手前。
唐突に俺達の後方から響く、のほほーんと間延びした音源。それによりザ・ワールド。

 

「いわゆるー、しゅらばー、ですのー?」
 栗色の、アホ毛一本たずさえた栗色ショートボブの頭に細目をフレームのない丸っこいメガネから覗かせるネコの女性がいた。

 


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「……はぁ」
 ため息。
 一人の、イヌのケダマが吐いた。
 白い綿毛の茂る、川の土手に腰掛けて、彼女は白い体毛を風に流す。

 

「間に合う、かな」
 ひとり、自身に愚痴って、すっと腰を上げる。

 

 

 

 

 

「すまん、そこの者。」
「おー? なんだ、ねーさん?」
「長老さんはどちらかな?」
「あー、あの段々畑の、ふもとさー」
 私は、田舎独特のゆったりとした口調の農夫に感謝の意を表し、示された方向へ向かう。

 

 

 

「さぁさぁカナ様、とりあえずお掛けになられて……」
 私はメタボリックが目に付くオス猫長老に促され、西洋風の客間に招かれた。
といえど、特に大きな屋敷でもない。まぁ貴族にあこがれた成り上がり、ってとこだろうか。メイドも見当たらない。
2ケタ座れるか怪しい長食台の上座を頂いた。
「それで、どのようなご用件でして?」
 上目遣いにこちらの様相を伺う主人。商売人が官僚を伺う目。
「どうもこうも、あんたが呼んだのだろう?」
「へ? あ、あー! そうでしたそうでした!!」
 ……なんだこいつは。殴ってやろうか。
そう思う私の横を、きれいな白いメイド服で着飾ったヒトメスが銀のお盆を運んできた。
「いーやー、実はですね、要請した後、ほんのつい最近にスズメバチの方がいらして
 それはもう華麗によくわからん金属の塊を殴り倒していったもんで」
「……くっ、スズメバチはキライだっ!!」
「うひぃ!?」
 思わず毛を逆立てて後ろに飛びのく主人。
後ろでヒトがよろけ、手の上のもののバランスを取る「わ、た、あたた」って声。
「あーくそっ、ほんの少し前にイヌに加え、なんでまたあんな人の話を聞かずにブツッっと刺すイヤなヤツらを……
いやあいつらの毒を中和する過程で毒の知識が身についたからその点は感謝してでもなぁいちおう私も正義なのにブツブツ」
「独り言こわっ!? と、とりあえず当地方自慢のブッフーステーキなぞ、
 いましがた当屋敷のメイド兼コック兼妻のヒトが作りましたが落ち着いて!?」
「いただきます。」
 いいにおい。

 

 

 

 とりあえず、現場を視察しに行く。わけがわからんでも、報告書が必要だからな。
それはすぐに目についた。なんか金属破片が転がってるし。
「…あー、そこのひと、いいかな?」
 手近にいた、私に背を向けて金属破片を手に取り調べている白毛の男性に声をかけた。
「え、わたし?」
 ふっ、っと振り向いたそいつは、ネコじゃなくってイヌだし、ケダマだった。
「うわっ、イヌか!?」
「あら、何だと思ったの?」
 高い、透き通った、女性の声。悔しいが私よりも女っぽい声。
「むぅ……こんな田舎にイヌがいるとは」
「あはっ、そうよね。イレギュラーよね」
 ふわっと微笑む。……ふむ、まあ、あのイヌとは遠いイメージだ。少し嫌悪感が晴れる。
「しかし、こんなところで何をしている?」
「あぁ……私、傭兵なの」
 なるほど、確かに背中に身長ほど巨大な剣を鞘に収めている。
「あなたもかしら? 長老さん小心者っぽいから、重複で契約したのかしら?」
「ああ、そんなところだ」
 重複契約って意味は正しい。ただ、国家の傭兵って言うとややこしいので割合しといた。
「なんかね、へんな蒸気科学主義の宗教集団が暴れ始めてるって聞いているわ。
 スズメバチの先回りをしているとか。飛び散った破片に、蒸気機関に見られる
 対高圧処理されたパイプなんからあるから、たぶんそれ」
「終わった戦闘なのに分析が詳しいな」
「この先生きのこるには、他の戦いも分析して血肉にしないとね」
 手の中でまるくひしゃげたそれをポンポンと、白毛のケダマはお手玉している。

 

 パシン、と上に投げたそれを勢い良く横から掴む。
「あーあ、これじゃ歩き損だなぁ」
 彼女はふぅ、空にとため息。ふわっとなびく白い毛並みが美しい。
「まったくだ」
 私も肩をすくめてみせる。
「ね、暇?」
「まぁ、やること無いからヒマだな。帰るのも急ぐ必要はない」
「じゃあさ、同じ傭兵のよしみ。手合わせしない?」
 にっこりと微笑む、白犬よりも白狼が似合う優雅な笑みを向けられて。
 抱いてみたく、なった。
「……こういうのはどうだ。
 『キズひとつ先に負わせたら勝ち。』
 『負けたら相手の言うこと、ひとつ聞く』。」
「なるほどね。あなたが勝ったら、条件は?」
 私はにっ、っとしてみせる。
「お前を抱く」
 ちょっとだけ、驚いた表情を見せる。
「どうだ、何かお前は条件があるか?」
 私の給料ならば、まぁ武器の一つ新調してやるのも悪くない。
美人には長生きしてもらいたいからな。
「そうねぇ……」
 ふぅん、と軽く息を漏らし、空を数秒見上げて。

 

「あなたを抱くわ」

 

「いいだろう」

 

 

 

 決闘の腕輪。
 私の、ちょっとした遊び道具。

 

『互いに殺意がない場合のみ、武器の攻撃を極端に防ぐ』
 兎の、実践刃物用のマジックアイテム。

 

 腕につけて。

 

 

 

 土手の下。
 一面、綿毛。

 

 コインを、投げて。
 地面に、ついて。

 

 わたしは、純白の巨剣を。
 ケダマは、漆黒の巨剣を。

 

 抜いて。

 

 共に、駆け抜ける。
 風になる。綿毛が、付きまとう。

 

 刃先を、しっかり狙って彼女の胸へ突く。
 サイドステップで回避される。

 

 そのまま横薙ぎに移る。
 半回転。ケダマは姿勢を低くして回避。

 

 その低い姿勢をバネにして、私の腹の辺りを突こうとする。
 私は薙ぐ勢いをズラして避け。

 

 互いに飛び、薙ぎ、勢いを止めれず、すれ違う。
 距離ができた。振り向け。

 

 振り向く。いない。
 日光が遮られる。

 

 バックステップ。目の前で白狼が地に黒剣を突き刺す。
 攻める。土を蹴り推進する。

 

 彼女は、地面ごと振り払う。土煙。
 私は地に剣を刺し、棒高跳び。

 

 白狼ば数歩下がり土煙から飛び出るはずの私を探していた。
 上から前方宙返りして出てきた私を即座に見つけたが、動揺の様子はない。

 

 わたしは速度と重力と回転に任せ剣を振り下ろす。
 横に構えたマダラと鍔迫(つばぜ)る。
 マダラは体重と地面と腕力に任せ私を吹き飛ばす。

 

 打ち上げられる私。
 回転ベクトルが変更され、バック宙状態で十数メートル後退して着地を目指す。

 

 着地。前方からの突撃に備える。
 いない。

 

 ゴスッ
 「ふぐっ!?」

 

 背中を刺される。
 『決闘の指輪』により守られるものの、腹まで響く。

 

 どさっ。

 

「あたしの勝ち」
「……早すぎだろ」

 

 青空と、さかさまに見える、にっこりと見下ろした白狼の顔だった。

 

 

 

 いいわけがましいが、私が合成獣の能力を使えば痛覚を抑え
腹をブッ刺されたまま相手に迫ることができる。でも、私の人間としての技術は
到底及んでいないことは思い知らされた。……素直に、負けとく。
「はぁっ、はぁっ……」
 彼女は、息が荒い。
「はぁ……ふぅっ……」
 私も、荒い。
「…ここで、しよ?」
「…おう」
 …受身は苦手でも、約束は、守る。

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