猫耳少女と召使の物語@wiki保管庫(戎)

虹絹の乙女達01

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虹絹の乙女達 第1話 ~ノアとアズキと隊長と~

 


 草原の中、俺は地面に大の字で寝そべって、空を見上げる。
やっと煩わしい受験も終わった。結果が返ってくるまで、自由。
 まぁ、第一志望は無理のようだが、それは俺の努力相応の大学に、神様なり仏様なりが導いてくれるさ。
 パソコンにかじりついてばっかの俺だけど、でも、この小さな、町外れの草原は大好きだ。
ここで横になって、時間の浪費をすることが至福の時。
たぶん、小学生のとき町を冒険して、見つけたときから。


 目を閉じ、すぅっ、と深呼吸。

 

 目を開ける。

 

――― 空に、2匹の鳥がいた。

 

――― 一匹は黒い。
――― 一匹は白い。

 

 黒が、白を追いかける。
でも、見たことのない鳥。遠すぎで何か分からない…
二匹は、時に追いかけ、時にすれ違いながら、美しい軌道を描く。
その軌道は平面的でなく、アクロバット飛行のような、複雑で優雅な線。
 そして、黒が、白に追いつく。
 真上に上った太陽が雲の切れ目から現れ、ふたつの鳥が重なった瞬間に俺の視界を潰す。
…まぶしい。目を閉じる。そのまま、陽気と眠気に身を任す…


 バキィィッ
ってえええええええええええええええええええええええああああああああああああああ!!!!!!!

 

 突如頭部に走る鈍器で殴られたような激痛に悶え草の上を転げ回る。
 何?何事?ワッツハペン、この額の激痛はっ!!
俺の頭に十分硬いものが高い力積を保持しながら衝突したっ!!
 正直泣きそうなのを堪え、ぐわんぐわんと響く頭部を押さえながら、状況の把握を試みる。

 

 …卵?

 

 さっきまで俺の側に無かった、その白い球体。
いや、球ってか本当に卵型。
そして、小さくヒビが入っている。
そしてデカい。何だコレは。
ダチョウの卵…?
 もしかして、この卵が頭にぶつかった、とか?
いや、割れるだろ、フツー。
ってか、初速度は? 初期配置は? むしろ誰が?
理系な受験漬けだった俺はそんなことを考えながら、目の前の物体Xをまじまじと見つめる。

 

 パリッ

 

 …お?

 

 バリリィ

 

 卵が、孵り始めた。

 

 俺は、生物に限らず、何かが誕生する瞬間を見たことが無い。
せいぜい、料理の出来上がる瞬間の感動しか、知らなかった。
それが、目の前で発生している。
痛みを忘れ、目を奪われた。

 

 バリッ…

 

 ヒビは、水平方向に卵を分断するように伸び、一週して…

 

 …1分ほど、俺は卵と共に時間が止まった。

 

 ふと、どこで知ったか分からない知識が頭をよぎる。
「卵からヒナが孵る時、殻を割ることを手伝ってはいけない。何故かは不明だが、手伝うとヒナが死んでしまう。
 自力で殻を割れないヒナは死んでしまうが、我々は見守るしか手段がないのだ。」
  というトリビア。

 

 何だろう、少し寂しい気持ちが込み上げる。
そっと、卵の頭に、手を載せる…

 

 バリィッ!

 

 のあぁ!?
「のあー!」
 卵の中から、何かが飛び出してきた!

 


たまごから ようじょ が あらわれた!
コマンド?
 たたかう
 なめる
→しらべる
 にげる

 

 はぃぃ!?
「はいー!」
 驚いて尻餅を突きながら、マトモな人語を出せない俺の言葉を繰り返す、
割れた殻の上にこちらを向いてテディベア座りをしている女の子。
「何だぁ!?」
「なだー!」
 舌ったらずらしい。
 この少女は間違いなく、卵の中から出てきた。
真っ白な肌をしている。雪のように白い。

 

 …驚愕に吹き飛ばされていた常識が、戻ってきたようだ。

 

 雪のように白いと示したが、比喩ではなく本当に白い絵の具をぶちまけたような白さ。
そして、「シッポ」と「ツノ」がある。
 ツノは後頭部から2本、両耳の後ろあたりから、それぞれ一本づつ、アゴと平行に生えている。
っていうか、耳がねぇ。
 そしてシッポは、ニャンコでもワンコでもなく、爬虫類のそれ。
 さらに、全身を調べる。ウロコがある。
微細なウロコが体を隙間なく多い、その細かさはまるでひとつながりの哺乳類的な皮膚を喚起させる。
 その頭部には生まれたてにも関わらず、淡い青の頭髪がふさふさと生えている。
こーいうのを無造作ヘアってのか?
あ、眉毛もあるんだ…爬虫類っぽい目をしてるのに。
そして、何か頬のあたりからヒゲ? なにその突起ふざけてるの?
 …まあ、まとめると人外だった。ブラックアイズホワイトドラゴンですかそうですか。別段に生贄召喚じゃないですよ。

 

 お前、一体何だ…!?
「お、ま。う?」
 元気に俺の言葉を繰り返していた少女は、俺の言葉が難しいのか首をかしげてみせる。
 そして、飛び掛ってきた!
「にーにー♪」
 ぬおおぉあ!!
 胸元に飛び掛られ、思わず押し倒される。
いや、実際はすごい軽い子なんだけど、驚いて身を逸らしたら、そうなった。
「にぅー♪」
 ちょ、ちょっと……
 スリスリと顔を俺の胸元に擦り付けてくる。
 何?え?何お前!?
「のあ!」
 キラキラと目を輝かせながら、胸元から幼い顔が上目遣いに覗いてくる。
 …何だろう、確実に人外を目の前にし、懸念すべき懸案は山積みであるのに。
その一挙一動が、可愛らしく感じてしまう。いや、性的な意味じゃなくって、母性的な…
保護欲ってのか、こーいうの?
「はにゅー♪」
 服にしがみついて、体を擦り付けてくる白ヘビ妖怪?は、なぜか俺に懐いているらしい。
そのまま放置して移動するという発想は、もう俺の中から消え去っていた。
 えーっと…あ、こいつ一応、生まれたてなのか…
 ふと、赤ん坊に必要な物って何だっけなんて、全く興味の無かったことが頭をよぎる。
 あ、名前……そうだ、名前を決めなきゃ
「のあ!」
 そうだ、何事もまずは名前から始まる。ええと、この子は女の子か。股間にアレがないから間違いない。
当然ながらその子は素っ裸なのだが、この時の俺にそーいう趣味はないので、特に何も思わない。
 そうだなぁ、妖怪だから…日本的な名前? きな子とか?
「のーあー!」
 いや、それは最近ウワサのダメカワイイじゃないか。むしろウゴァ!?
「のーーーあーーー!!」
 何かお気に召さないことが御座いますか、お嬢様。分かった、分かったから俺の胸を叩くなっ!
ビジュアル的には「ポカスカ☆」なんだけど、効果深度は「ドガッドゴッ」なんだよおおお!
 ゲホッ、ゲホッ……うぐ、何が気に入らない……
「ぶー! のあ!」
 くそぅ…さりげなーく人外の出力してやがる。

 

 …ん、もしかして?
 お前、『ノア』って名前なのか?
「うにゃーーーー♪」
 ぎゅーっと、抱きついてくる。そうか、『ノア』ってのか…
 ってか、言葉、分かるの? お前。
「ちょっちにゃ!」
 おぃ。
 流石妖怪(暫定的)だぜ。俺達が考え付かない生態を持っていらっしゃる。
そこに痺れる憧れるゥ!

 

 …なんて無茶苦茶なことを考えていたら、この妖怪白ヘビ…じゃねえ、ノアは
「にーにー♪ はむっ」
 うひょあ!? 顔を舐められた、ヘビっぽい長い舌だけど『青い』舌だ、ちょっと気色悪いぞ!?
「にゅにゅー」
 や、やめれっ、そんなペロペロと、ひゃはっ、くすぐってぇ!
「はふ、ふにゅ!」
 あああ、俺の唇を執拗になめるな、そして鼻に呼吸を委託すると吐息に反応して鼻の穴まで舐めてくるっておい!!
「にゅー♪」
 仕方ないから歯を噛んでその隙間から呼吸するんだけど歯まで舐めるの!? なめ過ぎってか歯茎がくすぐったい、うへっ!!
「んー…♪」
 思わず噛み合わせを解いてしまうと細長い舌が俺の中に入ってきて喉の裏側から舌の根まで舐められる!!
かろうじて鼻で呼吸できるけど口の中は異物感よりも『くすぐったさ』に占有されてその上もうなんかこの竜みたいな子は
子犬が調子に乗って舐めすぎるスキンシップを幼女の体から大人顔負けの出力で繰り出してきてマトモに抵抗できんってこれは!!
 うひゃはひゃはは!!!

 

「…んー…ぷふぅ!」
 げほっ、うへっ…やっと解放された…
「ふにゅー……ぅ」
 …思う存分俺の口の中の味を堪能した幼女は、自身の積極行動で疲れたのか、
 俺の胸の上で、寝息を立て始めた。
  やれやれ…

 

 ノアの頭をなぜてやる。
 ふさふさの頭と、カチカチのツノが対照的。

 

 妹が、できたみたいだ。

 


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 ……なーんも無いねぇ。
 私は、その猫耳を片手で掻きつつ、今晩の獲物を探していた。
いつも旅先での食料は、現地調達だ。
無論、人里ならばそこで仕入れるし、今は保存食だってあるのだが、何分味がよろしくない。
しかしどうも、この一体の草原では獲物の気配がしない。
 あーあ、また不味い干し肉かよ……はぁ…。
女性らしくないと我ながら思う口調でガリガリと右手で後頭部を掻き毟りながら独り愚痴る。

 

踵を反してキャンプに戻ろうとした時、『気配』を感知した。
 …む。2時の方向、およそ250メートル。

 

距離が遠くて、人間か獣かすら、それ以上は確定できないが…

 

 何にしろ、確認する必要があるな。
食料なら、調達する。
人間なら、何故真夜中の草原を歩き回るのか調べる。
何にしろ私の背中にある純白の大剣を喉元に押し付ける事には変わりない。

 

私は、距離を詰める。

 

…200。
草の中を、姿勢を低くして。
(幸いに、ここの草は一様に腰の高さまである)

 

…150。
気取られないように、防音壁を展開して。
(…見えた。月光に映るのは人影。逆光で詳細不明)

 

…100。
自身の脚部を、『強化』して。
(戦士ではなさそうだ。武器防具の類はない)

 

…50。
こちらが背中を取った。
(しかし魔道士の可能性は否定できない)

 

ゼロ。
(…ま、私は負けないが)

 


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 もしもーし……ここどこですかー……
 ちょっと神様に電話してみただけだ。
最も、俺の携帯は家で充電中だが。
昨日はうっかり八べえでバッテリー入れ忘れてたからなー。

 

 俺が寝そべっていた野原は、少なくともど真ん中で直立すれば、すべての端が見えるサイズのはずだった。
だが、歩けども歩けども、草原。
 ノアは、相変わらず俺の腕の中で寝息を立てている。
いや、動き回られるよりは楽だと思うけど。
 彼女は非常に軽いため、腕は全く疲れないのだが、
日が真上にあった時から歩き続けているためか運動不足の足がガクガクしてきた。
とりあえず、月の有る方角へ歩き続けてみたが、端が見えない。

 

 …俺、遭難した?
自分がいつもの草原に来ていたと思い込んでいただけで、実は別の草原だったとか?

 

 やれやれ……
 絶望的状況であることを、理解したくない自分が溜息を突く。

 

 その時、背中側から。

 

 ひゅっと。

 

 えーと、マンガサイズの、アレですよ。竜切り? 違うね。クレイモア。ほら、最近アニメ化する、あれ。

 

 それが、月明かりに白く照らされて……暗い草原に、白骨死体のごとく浮き出て。

 

 首の皮に触れて、固定されて。

 

 同時に背中側に、むにっと……やらかい女性の感触が。

 


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 動くな。
 私は警告と共に、その人型の影を動けないようにと
喉元に剣を立て、背中から自身を押し付け動きを封じる。

 

「………」
 ………
「………。」
 ………?

 

 やけに反応がにぶ
「はいぃぃ!?」
 あった。

 

 妙な間に私の思考も停止してしまった。いかん、いかん。
 黙れ。切るぞ。と、私は軽く脅してみる。
「ひぃっ…!」
 影は、両手を上げる。これで仰向けになったらイヌの服従ポーズだな。

 

  さて、真夜中にほっつき歩いてるコイツは何だ?
 今、私は影の背中に密着しているため、後頭部しか見えない。
  …首に毛がない、そして声からして男。マダラだな。
  ちょっと顔が近すぎて種族の確認は取れない。
 まず、その手元に危険な武具や魔法具などが無いかを覗き込んで確認…
 え、おんなのこ……爬虫類のウロコ……?…寝ている。

 

 …お前、人攫いか?
「ち、ちが」
 ウソを吐くな。こんな夜中に幼女を草原に連れ込む輩は、人売りかロリコンかそれに準ずる者に違いない。
「と、というか、これ人じゃないですよ! ほら、見てよ! 肌が白いし、ウロコもあるし!」
 ただのヘビの子じゃないか。アルビノなだけで。
「ただのって…!?」
 まあ、良い。

 

 私は、自らの舌先を噛む。
別に自殺する訳ではない。ただ、出血の必要があるだけ。
 そして、対象の後頭部…脊髄の上。
 血の混じった唾液を、舌で擦り付けて。

 

「うひゃ!?」
 そいつは身を震わせる。ふふ、やはり人が驚く姿は面白い物だ。
 ややSッ気があると言われると、それは事実だ。否定はしない。
「なに……、を………」
 ドサリ、と奴隷商(ううん、知らないけれど絶対そう)は仰向け倒れこむ。
 女の子はというと、腕に抱えられたままそいつの腹の上に落ちて…寝返りを打った。

 

 さて、地元に引き渡す前にアホ顔の確認を…
 …あれ?
 耳がない。爬虫類系?
 …ありゃ?
 ウロコもない。つるっつる。
 …んんん?
 もしかして、いや、これは…『ヒト』だ。

 

 

 

 

 

 …ふむぅ、今、このヒト…社会的には奴隷、貴族には召使いとして使役される存在…
それが、私の目の前でぶっ倒れている。
月明かりの元、白ヘビの女の子を気絶しながらも腕でかばいながら(まだ寝てるよこの女の子)
華奢そうな、ちょっと力を掛ければ折れてしまいそうな四胚。
顔は…ちょっとニキビ跡があるが、まぁ骨格は悪くないほうだ。磨けば良くなるだろう。
そして、なにより首に認識票が、ない。
 …たとえ、既にこいつに心の主人があろうと、首に認識票の無いヒトは、誰の物でもない。
そう、あえて言えば『首輪をはめさせた者のモノ』である。外させる主人はヒトを取られても文句は言えない。

 

 

 


 …ちゃーんっす♪

 

 

 


 ククク、ついに! ついに私にもこのチャンスが来たのか!!!
ああ、この辺境の警備の任を女王様から言い渡され、また人権と特権とかなりの給付を頂いている。
それだけで中途半端な貴族買いかぶりよりも、良いものを買う機会が多い…私の場合は個人的なオモチャに消えるが。
 しかし、しかし、だ。それでもヒトは、高い。娼婦館はともかく、貴族級じゃないと上玉は自力じゃ買えない。
いや、そりゃ豪勢な貴族はひとりふたり飼うが、それでも維持費は使用人レベルといえ、初期投資がハンパない。
 極度の経済成長を続けるネコの国の、有り余って仕方ないがそれの大半を的確に使いこなし
文句の付け所よりも圧倒的に王の資質が勝る、フローラ様ぐらいしか何十人も買い込むことはない。
 ちょいと貴族に毛が生えた私…否、私達は養えても、当然手が出せない。
 だが、拾えば別だ!! 飼い慣らしてしまえば私のモノだ!!! ふっふ、ゆめひろがりんぐ!!

 

 星に、ガッツポーズ。夜風がやたら気持ちいい。

 

 …さて。基本的なヒトを飼うときの知識を、微妙に頭の隅に残っているのをがんばって引きずり出してみた。
食事は、ネコと同じで構わない。ただし、生魚ばかりだとビタミン不足で衰弱するので、野菜と肉を適度に。
睡眠は、ネコと同じで構わない。ただし、ストレスに弱い生物のため、できるだけ良い寝床の環境が必要。
性交は、ネコと同じで構わない。ただし、根本的にスタミナ量が低いため、いきなり無理をすると再起不能の恐れが。
あと、体裁上は衣類とか言葉遣いだとかも整えてやるべきだが、それは貴族のたしなみだ。私には関係ない。風邪引かない程度で十分。

食事は、まあ私とその仲間達はあまり食材にこだわらないほうだが…こいつに料理を仕込んでやるのも良いな。
睡眠は、手馴れの戦士たる私達の横になるんだ、安全だから慣れれば問題ないだろう。
そして性交は…クククククク、染めてやる! 私色に染めてやる!!

 

 月に、ガッツポーズ。私の正義(性技)はウサギにも負けない自信がある。

 

 …まあ、ヒトのほうは良いとして。
こっちのヘビの子。真っ白な、アルビノだろうか。
しかしまあ、変な頭髪の色をしているな。夜が暗くてわかりにくいが、空色だろうか…ん?
 …ツノ? あと、背中に微妙に突起が…よっつ。羽だろうか、いや小さすぎるな。
しかし、それだと…これは…ヘビですらない。
 …何だ、こいつ? …人造生物、であろうか。
この巨大な、近距離だからこそ感じ取れる『魔力』は…数十人分の、上位魔導師のそれだ。
ならば、『兵器』であるべきだ。生物限界を底上げされた『生体兵器』。
しかし…明らかに…ただの子供。
やたら巨大な魔力の容器を持つ、幼女。

 

 

 


 …

 

 

 


 あとで、拷問にかけるか。
 だが。
 しかし、だ。
目の前に美味そうな飯が落ちていて、食わずにいられようか。いや、いられまい(反語)。性的な意味で。
よし、拾い食いしちゃうかな♪

 

 とりあえず、このヒトの容姿をまじまじと再確認する。
中肉中背と言おうか、よくいるタイプだ。太りすぎて丸くもないし、細すぎて骨も見えているわけでもない。
顔立ちは…特徴がないなぁ。しかし、欠点という欠点もない。ニキビ跡は洗えば治るだろう。
服のセンスは…悪い。チェックの上に迷彩ズボンは…いや、こちらとは違う世界なんだ、ノーコメントにしておこう。

 

うーん、「欠点がないタイプ」ってことで、中の上の下くらいかな?

 

まあ最上玉だと街一つになる(例:美形、体力あり、執事などの才能あり、従順etc)お値段なので、
こいつの性格が多少悪いとしても小さな家が数軒は買えると思う。
…どうでもいい。問題はコイツが不細工すぎてヤる気がなくなる、ってのはない。
最低ラインクリアってか? クク。

 


 どんな性格しているのも知りたいが気絶している今は、味見にしておこう。
とりあえず、こいつの顔をペロッと舐めてみる。
…ふむ、やはり人肌は人肌か。女やマダラと同じ、ちょっとしょっぱい。
いちおう、性別も…局所で確認を…
ズボンを下ろさせると、そこには毛の手入れをしていないソレが、あった。
 …ん、皮かむりか。人はムケてると聞いたが? まあ、いい。勃起不全かどうか調べよう。

 

 ふにっ、っとしたソレを、私は指でつまむ。
ふぅん…やっぱネコみたいなトゲがないし…カリがあるんだな。
どれ、揉んでやろう…根元から、尿道を絞るように…うむ、起ってきたな。よしよし。
軽い刺激でグンっと持ち上がる健全なソレ。
すると皮に覆われていた亀頭が、ずりっと剥けてあまり垢の無い亀頭が顕わになった。仮性だな。
…別段デカいワケじゃない。いや、ネコ基準だと…ううん、ヒト…ヒト…? ヒト基準が不明。わからん。
ま、メスを満足させるには十分だ。底には十分届くだろう。
 …これから毎日、コレが私のモノに…はぁ…。いいかも。

 

 さて……味見、味見♪
私は、唇を開き、そのオスを口に導く。
はぁ、と吐息を鬼頭にかけてやると、ピクリと繊細に反応した。
経験は少なそうだな。ううむ、開発できるのか…いいね。ククク。
そのままそっと唇にソレを挟むと、その刺激だけで先走りが溢れ、
甘いような苦いような雄酒が舌に触れ、私はそれを味わった。
あぁ……悪くない味だ。酔える。これなら、問題なく飲める…
唇に挟み込んだまま軽く牙を立てて肉を切らないように挟み込む。
ガジガジしてやるとドクドクと健全なカウパーが私の唇と歯に染み付く。
ソレからそっと顔を離すと、私が挟んでいた唇とコイツの男根の間に唾液と粘液のブリッジがかけられた。
 今度は、その剛直が天を仰いでいる間に、高みから私の唾液を滴らせ、十分に濡らす。
メスを知らないウブで元気なソレは私の唾液がボタリと掛るたびにヒクリと歓喜の律動を示している。
…そっと、ドロドロに濡れたその竿を、私は片手で握る。タンクトップだから袖が汚れる心配は無用。
ギンギンに固まりちょっと根元を締め上げると血管の圧力が上がって浮き彫りになるソレが雄々しくいやらしい。
そのまま唾液と彼自身の粘液を潤滑剤として、擦り上げる。

 

にちゅっ、にちゅっ、ぬちゅっ、ぬちゃっ…

 

 夜の平原、白ヘビ幼女の寝息、鈴虫の声、そしてヌメりシゴかれる雄の音しか聞こえない。
もしコイツが私の毒を必要以上に食らっていなければ喘ぎ声が楽しめるのだが、私のミスだ、致し方ない。
すると手淫に彼自身が限界を示すように精巣が筋肉の痙攣で持ち上がり、限界が近いことを示す。
私はそれを見逃さず、彼の鈴口に指を当てたまま、私の猫独特とされるヤスリ舌でトドメをさしてやる。


 ドプッ! ドプゥッ! ドクドクドク…


 私の指が射精による飛翔を妨害したため、人指し指の先から溢れた白濁が彼自身を伝い、
扱き握る他の四本の指に引っかかっては白濁の輪を私の手とソレの隙間に、唾液や粘液と絡み合い浸透し始める。
 精液を基調とした混合液を指にからめつつ、それを私は口に運ぶ。少しこぼして、唇についた。
…苦く臭みがある。やはり、ヒトといえど精液はこちらの住民と似たようなものか。すこし安心した。
指にからみつくソレを丁寧に舐めとり、最後にソイツ自身の竿を根元まで口に含んで一気に引きぬき、奇麗にしてやった。

 

 …ムラムラするが、無防備にも草原のど真ん中でシてたら…これ以上は注意散漫で策敵が不十分になるなぁ。
残念だが、キャンプまでおあずけ、か。クク。
 ちょっとだけ、こいつの男根の尿道沿いにツメで撫ぜてオスであることを再確認して。そして、服を整えてやり、肩に担いだ。

 

 

 

 

 

 …意外とヒトとは、軽いものだな。

 職務柄、気絶したゴロツキを地元の警備に突き出すために担いでいくことは多々あったが、
こいつはその半分程度だろうか。まぁ、オスはメスの二倍重いと相場が決まっている(ケダマ、マダラ除く)のだが、
それを差し引いても軽い。私は、野生の兎(食用のほうな)でも担いでいるのかと、途中で錯覚したほどだ。
こんなつるっつるの兎は見たことないが。
 そして、白竜のほうはもっと軽い。少女より幼女のほうがしっくりくる大きさであるにしても、だ。
明らかに『魔力』は、はこちらの方が大きい。しかし、戦うことを一としない体の構造だ…幼女だし。

 

 やはり、生体兵器と見るのが自然なのだが、ならば主は?
主がヒトだとしても、守れよ。私から。というか、無防備に眠らないだろ。兵器なら。
足の裏くすぐったら寝たまま「にゅふへへ」とか声出すし。
 ワケの分からん奴らだが、とりあえずキャンプまで担いでいく。

 


 キャンプとは、牛車…否、竜車の事。
私達は基本的に目的地周辺まではこの竜車を利用し、現地解散、各人単独活動に移る。
そして『隊長』である私は、竜車の保全も役目のひとつ。
これで仲間を迎えに行き、そして、互いの無事を確認し合う。それが、生甲斐のひとつ。
 そして、その鎧竜…『ロナ』は、四つ足で岩盤のような肌をして、
それが腹這いになり四胚をぐでーっと広げて大の字になり、目を閉じていた。

 

 …こら、ロナ。だらしない。女らしくせんか。
「ギャウ。」
 不満げな回答と共に重たそうな体を起こし、お座りの体制を取る。
 変なヒトと、人種不明を捕まえた。
どさり、と地面にヒトを投げ出す。子供は反対の肩にひっかかったまま。
―――あれ、その場で尋問しなかったの?

 

  彼女――ロナは人語を発せない。普通の竜の喉だから。
しかしその知能は高く、高度な魔法も会得できる。私の頭に響く声もそう。
 魔力で頭蓋骨に直接振動を送り、音を伝える、
なにやら落ち物の『コツ・デンドゥー』とかいう師範が会得した妙技だとか違うとか。
 …まあ、どうでもいい。

 

 いや、暗くてヒトだとは思わなくてな…獣人規格で毒を盛って、昏睡状態だ。
 体だけ麻痺させるつもりが、脳にも到達したらしい。
…ああ、後遺症はない麻痺毒だ。
 とにかく、しばらく目が覚めないだろうな。
 白ヘビの子をそっとヒトの横に寝かせながら、話を続ける。
―――どうするの?
 とりあえず、私達の『家』に寝かしておく。逃げないように見張る。
―――そっか、分かったわ。外は私が見ておくね。
 …世話をかける。
―――全然。

 

 すっと、岩盤みたいな顔が、綻んだ。最近では、竜と成ったロナの表情も読めるようになった。
…夜風が、冷たい。

 


「はにゅー…?」
 ああ、女の子が目を覚ました。
「…はにゃっ?」
 きょとん、とした顔で、ヒトの顔を見て、そして私の顔を見比べる。
夜風になびく淡い空色の頭髪と、黒い草原で白く輝いている肌が映える。
「…にゃー――!!」
 ああ、状況を理解したらしい。
 …大丈夫だ。何もしないよ。
「にーにー! にーにー!」
 ヒトの体を、純白の短い華奢そうな両手で揺するが、そいつは私の自慢の毒素でもうしばらくは思考できないはずだ。
「にーにー、なにした!」
 けっこー喋れるのな、こいつ。
幼いながらも整った顔立ちで、キッとこちらを睨む。
 私の毒で眠ってもらってる。しばらくは起きない。そう伝えた。
 その子はビシっとこちらに指をさして、言い放った。
「ぶー!! おばにゃん、きやい!」

 

 私の中で何かが切れた。ってかキレた。
 よーし白ヘビにゃんこちゃん、 お・ね・え・さ・ん とあそぼっかぁ♪
 『おねえさん』は、ノアを抱きかかえ、ぎゅーっと、骨よ砕けよと、胸に抱きしめた。
「ギニャー―――!!!」

 

―――あーぁ。スイッチ入ったら止められないよ…

 

 キライなら、スキにさせましょ ホトトギスゥ?
 私は我ながら意味不明な俳句と共に白子蛇? を締めるその手を緩め、顔を覗き込む。
「ふぇ、ふぇぇ」
 涙目だ。やはり、女の涙は美しい。まぁ悪戯するならオスのほうが楽しめるが。
 んふー♪
 その子をぬいぐるみの様に抱え上げ、唇を重ねる。
「~~~にゅぅ!?」
 突然のキスにパニックし、暴れ始める。
 私の頭を引き剥がそうと髪を引っ張るのだが、幼児に大人を突き放せるわけもなく。
 私は舌を進めて唇をこじ空け、この子の舌を絡め取る。
「~~むー!…ぅ……!!」
 彼女は私から逃げ、角に追い詰められた所を捕らえられる。
…甘い味が、舌を占める。

 

―――ごーいんねー。
 すまんな、Sなもんで。

 

 私を口の外へはじき出そうと彼女は押してくるが、無論譲らない。
「~~んー!!ぐ!!」
 そして今度は口への侵入者を噛み切ろうと試みたが、それは無理だ。『強化』してある。
幼児のアゴの力だから、だけでなく、私の体が特別だから。
噛み切ろうとして傷が付いた私の舌からこの子に血が流れ、『制圧』していく。
余興に彼女の中を貪り、唾液を啜り出す。
「~~!?はふ…!ぅ…ゅ」

 

―――それくらいにしたら?仮にも幼な子よ。
 ふぅ…ま、そうだな。

 

 唇を離し、舌を抜き取る。
 だらーんと、私の腕の中で体を仰け反らせて垂れる白ヘビの女の子。
私の血が…毒が巡り、眠りに堕ちている。
唇を舐め取りながら、感想。
 制圧完了♪
―――変なこと教えちゃって…

 


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 …あー…
変な夢を見ていた気がする。
 体を少し起こす。
小部屋のような場所の床に寝そべっていた。
広さはそうだな、ワゴン車から椅子とか全部取っ払ったかんじだ。

 

 足の方向に、月明かりが見える。窓じゃなくって、カーテンみたいな布で作られた入り口。
床は木目があるけど、壁や天井は布なのだろうか、アーチ上の構造をしており、
カーテンではなくテントのように十分の強度を持っていそうだ。

 

 ノアがいる。
俺の左足元で、子犬が寝るその姿勢で丸くなっている。

 

 見知らぬ女性が床に寝そべっているいる。
俺の右手元に彼女の肩があり、二人の体で、この空間の横幅は半分占められている。

 

 …夢なら良かったんだがなぁ。
 どうやら、俺はこの女性に捕まったらしい。つまり、俺の手足は縛られて……? っておぃ。
全然自由じゃんこれ。
俺は非常識な方だが、さすがに捕獲した対象が逃げない様に多少の策は講じれるオツムを持つと自負している。
 だがこの女性はどうだ。この部屋の中にはカーテンのせいで月明かりが入らず彼女の顔は見えないが、
それはそれは相当なブロンドに違いない。とりあえず俺は体を立たせて、ノアをかついで、外へ…

 

「待て。」
 …えーっと。いわゆる、狸寝入りっていうか、うん。
エマージェンシー? ……やれやれ……

 

 

 

 

 

 その女性は、寝かしていた体を起こすと、胡坐をかいて、こちらに向いた。
…指一本で真っ白なナイフの重心を取ったかと思うと、クルクルと指で遊ぶ。
 俺はノアを担いで膝立ちのまま、固まる。
「聞きたいことは多い。座れ」
 …はい。
 俺は、こいつの目の前で体を低くし、正座の姿勢で向き合う。

 

「まず、名は」
 く「うにゅー」ずあき、です、あ、ノア…。
 犬ボール状態からぐぐーっと伸び、ゆっくり瞼を開けて、こちらより先に女性を見る。
 ノアは呼びかけて多少意識がはっきりしたらしい。その女性を見て刹那、硬直し、
「はにゃっ!?」
 そして弾かれたように四つ足で…犬走りで俺の背中側に駆け込む。
「ノア…それが蛇の子の名か」
 女性が俺の呟きから意味を拾う。
「にーにー!」
 ノアは、ぎゅっと、俺の服の裾を掴んで自らの体を寄せた。
ああ、この可愛らしい生物の頭をワシャワシャと撫でて愛でたいところなのだが、
いかせん正面方向に『無視するな危険』と書いてある。ちょっと死ねる雰囲気だ。
…目の前の女は、クスリと笑ったように思えた。

 

「その子は…いや、後にしよう。まず、なんとかアズキ。お前の主人は?」
 白い刃を曲芸しながら尋問する相手に俺の名前を間違えたとか指摘するほど空気を読めない男ではないが、
さすがに質問文が意味不明で思わず聞き返す。
 …え、何ですって?
「ド低脳がッ!」
 殺気。暗闇に浮かぶ目に明らかに不快な形に歪む。
俺は思わず後ずさり。

 

「ギニャ!」
 おお、ごめんよノア。俺はお前を尻で轢いちまったのだが、
俺は人生という道が目の前から崩れ落ちる予感のためじっくりと後方確認をする余裕が無いのだ。
「待て…落ち着け、自分…」
 女性はコメカミに手を当ててぐっと抑える。
一瞬、俺も一息吐いて、まばたきをしたたのが悪かったのだろう、
 …目を開けたら女性の顔が鼻息が掛かるほど目の前で、
どうもナイフは近すぎて分からないが喉元に入刀するため婚姻相手を待つ状態と思われる。
「…トボけるな。主人ぐらい居るのだろう」
 ひいい、いや何のことかってナイフ怖いですごめんなさい知りません!!
「…むう…やはり、いないのか?落ちてきたばかりか…だとしたら、何故…」
女性が意味不明な小言を呟く。

 

「その子は?」
 …この質問は、何で真夜中に女の子を抱いているのだとか、何その生物ふざけてるのとか、
いろいろと広義的に質問を展開したと容易に予測がつくのだが、
なんせこの電波的な…俺もまだ信じてねぇ…奇跡の遭遇を信じる人物が居たら
それはSFマニアか宗教的にヤバい境地に至られた方ではないかと思われる。
 …でーもこれ説明しないとクビチョンパーなんだなこれが!
 人間とは困ると目線が泳ぐ。これは精神的な不安の証明というか軽い現実逃避なので
人類は総じて引きこもり症候群と言えることとか、別にどーでもいいことばかり頭に浮かぶ。
 …何なんでしょうね? この子。
「ド畜生がッ!!」
 覇気。眼前に迫った顔に少しだけ当たっている月明かりで犬歯が見える。
フォースに吹き飛ばされそうだ。俺に加護あれ。

 

「にゃぅ!」
 おお、我が娘(違)は学習能力が高いらしく、ちょっと横に飛びのいて
俺の閻魔ハイウェイからの後ずさりロードを譲ってくれた。
 で、閻魔女王様いわく、
「……落ち着け…落ち着くんだ。今まで食ってきた男の数を数えるんだ…1…2…たくさん。よし」
 …うーわー。引くわー。それは小言と言えど引くわー。
でも死ねるから言わないわー。

 

 質問に俺は紳士に答えようとするも、なんせ質問文が意味不明なことと
こっちも自分の状況を把握できてない等で、一向に話が進まない。
 そのたびというか、時間の経過に伴って相手の息は荒くなり、体が近づいてくる。
ぶっちゃけ胸が当たってキス直前というかお姉さんそれは青少年にはキツいっす。
…まぁ全身から血の気が引きっぱなしなのでアソコも血の気が無いのが救いか。

 

「…じゃあ、何でお前はあそこを…草原のど真ん中を歩いていた?」
 …分かりません。
 …もうこれ以上、接近できない。いや、貫くことはできると思うけどねー。
何だか軽く自暴自棄になりそう。いや、いっそ死にてぇ。
 あぁ、でもそーすると、さっき発見したノアをもふもふできないのかー。

 

 …なんて追い詰められて壊れそうだから一周して元に戻っちゃったこと考えてると、
予想外にも女性は、俺から距離を取り、ナイフをトスン、と床に刺す。
 そして、初めて、感性的な質問をぶつけてきた。
「…ところで、何故その子と共に居る?」
 …はい?
「その子は…お前とは異なる生物だ。普通は恐れるだろう? 意味不明なものを」
 たしかに、妖怪というか化け物を見たら、言われなくってもスタコラサッサなべきなのだが…
ここはアレか、ノアは実はバイオテクノロジーの実験体なんだぴょんとか答えたほうがいいのか?
どーせ途中でネタが切れて首と体が赤い涙で泣き別れになるんだろうが。
もっと直感的に、答えてしまおう。ウソはないし、これ以上手が無い。
 …かわいいと、思ってしまったから…じゃ、だめですか?
「……はぁ?」
「え、そ、その」

 

 

 

 …

 

 

 

「ハハ…つまり、何だ。その子が、卵が孵るところを見て。
 感動して。そして、懐かれて。ほっとけなくなった、と?」
 …仰るとおりで。
 さく、とナイフが床から抜かれて
「死ぬか?」
 喉元の直前で止められる。

 

 ちょ、えええ!?
「にゃー!!」
 何故かノアも一緒に驚く。ああ、説明してる間にまた背中側にいたんだな。かわいいやつめ。
「常識的に考えて、卵をそのへんにほっぽりだす親がど・こ・に・い・る」
 この女性の息も非常に荒い。俺、そんなにストレスフルな奴か?
確かに、意味不明で適当にはぐらかしているように思われても仕方ないな~って考えつつ
もうひとつの自分は完全にパニック大恐慌時代に突入。
 えええ、だってアンタ、いや一言づつナイフで喉突付かないで、ノアは人外だって…!
「ヒトデナシにも親がいるわ、バカモンが!」
 ひいいいごめんなさいいいい!!

 

 …ふと、女性は目線を俺から逸らして、何かを考えているように虚空を見上げた。
「…そうだな。ヒトデナシでも、子作りができることぐらい、証明してみるか?」
 そして、にやりと、獲物を狙うハンターの目をする。
…性的な意味で、なんて俺には縁の無い単語だと思っていた時期がありました。

 

 

 

 

 

「…そうだな。自己紹介がまだだったか」
 俺は蹴倒されて仰向けになり、かろうじて肘で上体を起こし、その女を見上げる。
「にゃ、にゃー――!!」
 俺を守ろうとして女に飛び掛ったノアは、首を片手で掴まれて持ち上げられ、宙を泳いでいる。
 …ここで初めて気がついた。ノアって背中にアルビノコウモリみたいな羽があるのな。しかも二枚じゃねえ、四枚。
抱えて歩いているときは仰向けに持っていたから手が当たってもおかしくないのだが、何故気がつかない、俺。
肩の高さに背骨から左右に生えている。そして同じく腹筋と同じ高さだろうか、そこからも少し下を向いて生えており、
それが暴れる手足とともにハタハタと動く姿は駄天使の逆、そうドジ悪魔ちゃんみたいな?
 なんて危機的状況ほど思考が明後日に期待を寄せる自身を再確認していると、
女性はワゴンサイズの部屋を夜風から守るカーテンを、ちび白竜を掴み上げるのと逆の手で払う。

 

 …白い髪。キリっとした顔立ち。ヘアバンのようなもので額から髪を上げ、左右に分けている。
そして、皮のような軽装の鎧…ゲームでしか見た事無いやつ…を着込んでいた。
この新入生歓迎すら始まらない時期にタンクトップはキツいとは思うが。
腰のベルトには、何本もの鞘に納まった、柄の無い真っ白な小刀がいくつも刺さっている。
 ついでに言えば、草原で俺の喉を冷やしたあの巨大な白剣は、部屋の奥に転がっていた。

 

「地方特殊治安部隊、部隊長バジリスクのカナ。隊長と呼べ。奴隷」
 小難しい単語を並べられても困る。…奴隷?
「そうだ、ヒト。私達ネコは、生まれながらにヒトを支配する権利がある」
 女性…カナとか言ったか、このアマは俺の人生におけるあらゆる権利を一行で否定した。
…ん、ネコ?
「…貴様の目はどこに着いている? 耳だ、耳。私の耳を見ろ」
「に゛ゅ~!」
 ノアに腕を噛まれてもまるで痛くないかのように話し続けるカナ。
 耳ってアンタ、そんなもんピアスか羽根突きの敗者的勲章にしか特徴付けられない場所を…
えーと、コスプレ? アキバ近い? そのヘアバン。
「アキバとは何だ? 悪いが、地で生えている。後で触らせてやる」
 おお、そりゃどうも。俺は犬とか猫とかカワイイ動物の耳に目がない。あと肉球もな。

 

「まあ、話が長くなるから、シながら説明するか」
 おお、ついに質問は拷問に変わっているのか。でも俺を絞るくらいならミカンの皮絞ったほうが有益な気がする。
「そうだな。イヌ避けにはなるやもしれん」 
 我が家のトイプードルがコタツのミカンに興味を持って匂いを確かめては
情けない声を出して飛んで逃げたことを思い出し、イヌって柑橘系に弱いとか脳みそを無駄遣いしていると

 

 すとととん、と乾いた音が、俺の周囲からほぼ同時にして、
それが衣類の端をあの腰に刺してあったナイフで俺を昆虫標本のごとく留めたと理解するのにしばらく要した。
「天、地、猫。解毒逆行」
 カナは聞き取りづらい何かを発音し、
 ぐっと、体が重くなる。ああ、さっきの気を失ったときと同じ感覚だ…
「はにゃぅ!? にゃぅ…ぅぅ…」
 ノアも俺と同時に、全身を一瞬震えさせ、首をつかまれたまま人形のように動かなくなる。
 …何あんた、魔法使い?
「正解。最初にお前を眠らせた毒を復活させた。喋れる程度にな。貴様、意外と飲み込みが良いな」
 ありえねー。
「それが常識な世界だ。我々から見れば、魔法なしで生活する貴様らがありえない」
 ああ、カニバルな人々の言い分もそんなんだろうなぁ。食われる方は蹴り倒してでも逃げるべきだが。
「蹴られたくないもんでね」
 なるほど。

 

 …俺、危機的状況であるほど対応がアレだな。死にたがってるよな。達観してるみたいな?

 

「さて、私が気になった点はだな」
 へい、身包み剥がれて全身麻酔状態なんで何でも聞きますよ。
でもミゾオチ踏むのは止めてくださいませんかいたいいたいたい!!
「まず、お前が主人がいないクセにこの世界で生きていたこと。
 あそこの平原は野竜が出る。地元の住民ですら恐れる。一般人は数秒でエサになるからな」
 聞いちゃいねぇ。
 腹筋を踏んだまま、カナは姿勢を低くして仰向けに倒れた俺の目の前に迫る。
「そして、この子をお前が抱いて歩いていたこと」
 ずいと動けないノアを俺の目の前…頭の上に突き出す。
 よく見ると気を失っているのではなく、発声すらできないだけで
泣き出しそうな丸い目が俺のほうを見つめている。
「お前がこの世界に来たばかりで、『かわいい』とか適当なことを考えている場合じゃないだろう」
 いや、そーなんだけど。
「もっと自分の状況を認識しているはずだ。お前は十分冷静に振舞っている」
 どっちかってーとパニック過ぎて考えるの放棄してると言うべきか。

 

「最後に、この子竜自体。これは人造生物だ。それが…その卵がそのへんに落ちているワケないだろう」
 …待ってくれ、人造生物?
「そうだ。普通のヘビの変種かと思ったが、唾液の成分が異なる」
 どう異なる。
「催淫性物質。端的に言えば『ホレ薬』」
 はぁ?
「寝かすために悪戯…じゃない、私の毒を口移しで飲ませようとした。
 そのとき、この子の唾液を私も飲んだが、その効能を確認した」
 あんた幼女食っちゃったの!?
 …哀れなノア、いっそのこと俺が生まれたての時に食っちゃえば良かったのか?
「それも正しかっただろうな。この子は、生まれて初めて見た人に『恋』をして、忠誠を誓うタイプらしい」
 マジかよ。そりゃ俺を知ったその時からノアの地獄に音楽が絶えないのなら、一生物だな。

 

「さて、最後に、個人的な意見…命令だが」
 へい、何でしょう。
「催淫性物質で、私の体が火照っている。お前、静めろ」
 はぁ?
「貴様らヒトは、我々獣人の『オトナのオモチャ』だからな。お前の役割を果たしてもらおう」
 にっと、持ち上げたノア越しに、白髪の女が笑う。
そして、またさっきの魔法と似た言葉を呟く。
「天、地、猫。破衣」
 その刹那、俺の衣類が派手にはじけ飛ぶ。
のおおお!?俺は数秒間の間にイリュージョナルに裸だ!
 ざんねん!わたしのはだかはみられてしまった!
とやたら難易度の高いRPG系ゲームの死亡フラグを思い出すと
「にゃ…にゃぁ…!」
 ノア、そうかお前に見られてしまったのか、俺の裸体。そして死にたい。
「…朝まで寝かせるつもりで毒を流したが、また解毒されたか。
 対応速度が異常に早い、やはり普通じゃないな」
 ああ、俺の知らないところで二人は人外してるのね。
「このまま、また寝かせるのも芸がないか…」
 ふむ、と俺の顔とぶら下がったノアとを見比べて、
 すっと、俺の視界からカナが消える。


ほとんど動かない体だが、力を振り絞って首を持ち上げて、下半身を見る。

 俺の足元に仁王立ちしながら、ノアの両足を掴んで宙吊りにして…
「ふあ…あぁ…!?」
 カナの舌は、ノアの幼い縦筋を捕らえている。
まるで主人に足から捕まったニワトリのように持ち上げられ、
逆さ釣りのまま俺に見せ付けるように、舌をスリットに押し込んでいく。
反対の手でカナ自身の着衣…タンクトップの皮の鎧を解いて行く。
「にゃ、にゃああぁぁ……!!」
 いや、おい、ちょ、ノアに何を…!?
「何って、慣らしてやってるのさ。生まれたてなんだろう?」
 幼女に変なこと教えるんじゃねぇ! ってか何でノアに!?
「にーにー!にーにーぃぃ!!」
 俺の事を叫びながら、抵抗できないノア。
とりあえずこのアマをぶん殴りたいのだが、痺れる体は見ていることしかできない。
 …そして俺を呼びながら、涙を目に浮かべるノアと、
淫悦の表情で幼女の割れ目を開いていくカナを見て
俺の股間は情けなくも反応してきた。
「うむ、起てばそれほど悪くもなさそうだな♪」
 上半身を脱ぎ終え、胸をこぼすカナ。小ぶりでその…微乳だった。
 上機嫌な目付きでこちら…のイチモツを見ながら、その舌は執拗だった。
こいつ、舐めながら話すなんて器用なことできるとは…慣れているのか?
「うむ。女隊員ばかりだが、スキンシップは欠かしてないぞ」
 ド外道だった。

 

「あぅあ、あああ……っ!!!」
 ノアは目を見開いて、がくがくと震え、くたっと抵抗を止めた。
 ほぼ同時にカナが下半身のレザー装束を脱ぎ終える。
…あそこの毛は剃ってあるらしい。
「…達したか、こっちの準備は十分だな。」
 一連の幼女と百合属性に不覚にも俺の体は、
それを否定する頭と反して反り返っていた。
「お前の準備もしないと、な…」
「ぎゃむぅ!」
 ぼとん、と乱暴に俺の胸の上に投げらてたノアが悲痛の声を上げ、へっちゃりと動かなくなった。
…ノアのウロコは、案外暖かい。人肌と変わらないだろうか。俺の股間に腕を伸ばしているコイツよりは暖かそうだ。
そしてカナは、獲物に飛び掛る寸前の猫のような姿勢で俺の股間部へと顔を近づける。
 片手で俺の根元を掴み、ふんふんと鼻を鳴らして俺の匂いを嗅いでいる。…鼻先がモノにつんつん当たる。
「ふぅん…やはり童貞か」
 うるせぇ。最近のいろいろと過程すっ飛ばしてベッドイン目指す男女が普通なこの社会が間違ってるんだよ。
だから俺は高卒童貞彼女居ない暦イコールグレゴリウス暦だ文句あっか。
 しかしまあ、興味が無いわけじゃない。無論ウホッでもない。
そんな俺の聳え立っている我が息子に顔を押し付けて…舌を伸ばしているワイルドな女性に、
興奮を覚えていることは事実である。

 

「ん……まだ大きくなるかな……」
 ざらり、とヤスリのような舌がカリ首を擦る。
 スタンガンとか痛そうな経験はしたことないし、したくもないが、
電撃が体に走るってのはこーいうことか。背筋からぐっと、何か快感が伝わってくる。
前立腺液が麻痺した体で唯一元気なそこから溢れ出し、そしてカナが舌を這わせ上げる。
潤った下唇が舌の後から付いて俺を撫ぜる感覚がする。
「よし、なかなかイケそうだな」
 唇を離して、少し頭を下げて俺の陰茎を見下ろす。
「仕上げ」
 ぐっと大きく開いたアゴで、それをくわえ込む。
ズルリ、ズルリと舌が、俺を上顎に押し付けて、潤して行く。
 …もう腰が抜けて声も出ない。
 5、6巡ほどそこを絞ると、ぐぼり、と音を立てて口から抜き出す。
月の光を受けて、輪郭が白く、亀頭が闇に浮かんでいた。
 
「じゃあ、そろそろ本番でいいかねぇ」
「はぅ…?」
 そんな俺の様子を見ながら、カナは俺の胸の上でばたんきゅーして
俺の腹筋上に愛液を零していたノアをむんずと掴み上げ、
俺の肉棒の上に右手で羽交い絞めにして、持ち上げる。
 …俺にとっては、二人は騎乗位。
二人にとっては、ノアが上の背面座位。
「にゃ…にゃぁ……!」
「さあ、ご主人様のハツモノ頂いちゃいな♪」
 そのままそっと、俺の剛直にノアを下ろして、
俺はノアを貫いてしまった。
「うにゃああぁぁー―――!!!」
 空に吼えるノア。雪色の割れ目から俺へ血が……蒼い血が……伝う。
とてつもなくキツい締め付け。目がチカチカする。

 

二名の童貞と処女喪失を観察しているカナは、
右手だけで白竜の子を揺さぶりながら、
逆の手で自らの溢れ出す蜜壷に指を入れ掻き回している。
「いい見世物だ、あぁ男のハダカなんて十日ぶりかな、我ながら新記録♪」
 こいつは男も女も食っちまうらしい。
「ほら、忠実なシモベなんだろ? ご主人様を満足させてあげなよ、ノアちゃん?」
「にゃ、にゃあああ、いや、いやい、いやい!!」
 たとえお前の血が何色だろうと、舌ったらずだろうと、ノアに痛覚はあるようだ。
…クソ、未経験の俺でも涙を浮かべて痛がる女の子を慰める自信はあるのに、
この体は股間と頭部以外は、微動たりともしない…無念。
 白い羽根の生えた幼女を、ぐっと持ち上げるネコミミ女。
ずるりと引き抜かれ、しかし圧力で俺も引き上げられてしまいそうな感覚に襲われる。

 

 猫女は白竜の子に、そっと呟く。
「ご主人様、黙り込んじゃったねぇ? キモチヨクないのかな?」
「…!?」
 ノアがハッとしてカナを見つめ、すぐさま俺のほうへ振り向く。
俺の表情はきっと地獄の底でも見たように虚ろだったのだろう、
驚きの表情でこちらを見ていたノアの表情が、一瞬で悲しそうに変わる。

 

 …ノアは、生まれながらにして俺に恋するよう作られているらしい。つまり、この状況は…

 

 どすん、とノアが俺の剛直を飲み込みながら落ちてくる。
いや、正確にはカナが押し込んだ。ノアの体重だと俺は彼女を貫けない。
「ひぎぃっ…!!」
 痛みに白竜の顔がまた歪む。しかし、先ほどとは異なり耐えている。
がくがくと俺の上で震え、歯を食いしばりながら空を見ながら涙を目に溜めている。
耐えていた体を落ち着けるためか、はふ、と一呼吸した後、幼女はこちらを見つめなおす。
「…にーに、きもちいい?」
 涙で潤んだ目がこちらを一心不乱に向けられ、呆けている俺に質問を出す。
 …当然、既に俺の頭はお花畑に三回転半宙返りで頭からドボンと突入寸前なのだが、
そこで幼女を貫いている背徳心が空中で俺の脚を掴み、急に地中から現れた羞恥心が受け止める。
つまり、俺はフリーズしてしまう。
「…にーに、ノア、きやい…?」
 潤んでいた瞳の雫は今にも溢れ出しそうになり、
それによる罪悪感殿が背徳心さんと羞恥心くんをバックドロップなさり、俺はふっきれお花畑にダイブした。
 …キモチイイよ、ノア。
「にーに!」
 暗く闇に消え入りそうなノアの白い肌が、
カーテンから入るスキマ月光にぱあっと照らされたような気がした。

 

「はい、よくできましたー♪」
 一瞬存在を忘れていたこのクソ猫は、
お絵かき上手にできた幼稚園児を褒めるような口調で言い放ちつつ
白い天使を俺の上で揺さぶり始めた。
「にゃ、あ、あ、あ、あ!!」
 どすん、どすん、と俺の竿半分で天井に達してしまうノアが息も絶え絶えに喘ぐ。
その表情は、ほんの短時間の間に屈辱と悲嘆の顔から快楽と歓喜のものへと変貌していた。
「にーに、にーにー!!」
 その声も最初にカナに貪られていた震える声ではなく、
暖かい何かを求める女性に変化を始めていた。
「ほらほら、最後まであんたの『おにーちゃん』を満足させてあげなっ!」
 親指以外を全てを自身の蜜壺に飲み込みその手を男児のセンズリのごとく
激しくピストン運動させながら、ノアと俺の交尾を全力で進めさせるカナ。
「にーに、にーちゃ! すきっ、すきっ!!」
 …俺も好きだ、ノア…っ!
もう頭の中は真っ白だ。そして、俺は完全な意味で童貞を喪失した。
「にゃあ、あ、あああっあああ♪」
 白濁を結合部から漏らしながらノアは俺と同時に達し、
歓喜の雄叫び…メスだから雌叫び? を放ち、俺の上に崩れ落ちる。
小さい体のため、繋がったまま失神しても俺のミゾオチまでしか頭が届かない。

 

「さて、やっと私の番かな♪」
 気を失ったノアを剥がし、俺の顔とノアの唇が重なる場所までどかし、
ついにカナが俺の上に来た。
 …すんません、楽しいもの見て心中お察ししますが、
さすがに初心者が二連射はキツいと思います…
「大丈夫だろ。この子の体液…しかも血液を直に浴びたんだぞ、お前のここは」
 ああ、そういやノアの体からはエッチな気分になる液がしたたるんだっけな。
自身のそれに酔っ払うため、最初に見た俺に恋をして付いてくるんだとか。
 …そのノアを破瓜させて蒼い返り血を浴びたのは、俺の分身君。
「感覚がないのか? まだ物欲しそうにヒクついてるぞ♪」
 少しだけ回復した腕の力を振り絞り、視界を埋めるノアのやらかそうな顔を
申し訳ないがすこし右にずらし、全力で腹筋して下腹部を覗く。

 

「…も、もう、我慢できない…」

 

 …その動作を終えたのは、確かに臨戦態勢を維持したままの肉棒を
カナの濡れそぼった肉壷が咥え込む瞬間だった。
「我慢できないよぉっ、こんな、こんなエッチなモノ見せられてぇぇっ!」
 カナの体はノアのウロコ肌と異なり、まさに普通の女性だ。
ただし、モデル雑誌における基準ランク以上の整ったラインをしている。
「お前達、卑怯だぞっ! 生まれながらに愛されてて、しかも即日繋がってっ!」
 悔しいがモデル顔負けの猫耳女は、俺の上で跳ねるように俺を沈み込める。
 月明かりで見えてきたのは、赤いような茶色のような、
全身をかけ巡る幾何学模様。イレズミであろうか…
「お前らヒトなんか、ヒトなんか、あたし達のオモチャでしかないクセにッ!」
 とにかくキツいノアとは対照的に緩いが、それは優しく包み込むような包容力で、
締めるのではなく包んで濡らし内壁は凶器のようだ。このヒダヒダが男を何人も昇天させたのだろう。
「なのに、なのにあたしをこんなに焦らして! 濡れさせて! ひとりエッチさせて!」
 俺はその全身を紋で包まれた女性の指、首、腰、股間も、すべてを観察してしまい、引き込まれる。
 その間にも、…根元まで包み込まれて、そして初性交では無かった
ひねりとか、圧力の変化とか、男慣れってこういうことか、ってのを実感させられて。
「こんなに興奮させて、それであたしを満足させないなんて、許さないんだから!!」
 憎たらしくも淫妖な猫の中に、二発目を放ってしまう。
「にゃうぅぅ♪ あったかぁぃ♪」
 びくん、と冷たい風に吹かれていたようなカナの尾は、一瞬伸び切った。
 はぁ、はあっ、と息を荒くする彼女は、射精直後で萎えてもおかしくないのに、
変な成分でそれを許されていない俺の上でピストンを絞り続ける。

 

「…ねえあんた、アズキ、本当に主人いないんだよね? そうだよね?」
 ふっと、ああ、これそーいえば拷問だったと思い出す。
「じゃあさ、あんたこの世界で、生きてけないよね。ヒト売りに捕まって、
 次の環境が幸せかわかんないよねっ!」
 休むことなく腰を前後させつつ、俺の上にかぶさってくるカナ。
「あたしが、飼ってあげるよっ。毎日ごはんもあげるし、服もきれいなの用意してあげるし、
 お小遣いで本とか買ってあげるし、ちゃんと世話をしてあげるからさっ!!」
 白髪の美女がペッティング宣言。ああ、こんな憎たらしい感情を抱く前なら
俺はホイホイついていった。間違いない。
 …てか、どうも質問の方向性が拷問として間違っている気もする。
「ノアちゃんも、ちゃんと幼児具とか買ってあげて!きれいにしてあげるからさっ!」
 俺から見て顔のすぐ右前で幸せそうに気を失っているノアの横に、ずいと顔を進めてくる。
…ああ、くそぅ、キレイだ。ワイルドな女性って好みだ。でも憎たらしいぞコンチクショウ!
「ひとりじゃ、この世界じゃ、生きてけないでしょ? ノアちゃんも養ってけないでしょ?」
 うぐ、確かにここは別世界と認めるべきだし、
この女の言うようにヒトが奴隷ってのもマユツバじゃなさそうだ。
「あんたは毎日、私とエッチしてれば、安全にしてやるからさぁっ!」 
 俺の胸に顔をぎゅっと押し付けながら、強気だった女性が腰を休めることなくどんどん崩れていく。
 …ちょっと待て、俺じゃなくってもそのへんの別の男でもいいじゃんかよ。
男の100人切りとかしてんだろ?誰でもいいんじゃないのか?
「ムリだよぉ!この『永遠の初恋薬』に、私もかかっちゃって! 処女膜破った血から直に飲んで!!
 アンタ見てたら、もう欲しくてしょうがないのおぉ!」
 血中にあるモノは膣液より非常に強力なモノらしい。
「よく出来たシモベだよ、敵まで魅了するなんてぇぇ!」
 いや、それはアンタの自業自得な気もするが。
「お願いだよぉ、一緒にいてよぉ、夜がさみしくなるよぉ!!」
 もはや俺を拷問してるんじゃない、彼女自身が淫薬との戦いに屈し肉欲を求めている結果だと悟った。

 

 天秤にかけたのは、俺の自由とノアの命。
別に、さっき拾ったばっかの意味不明な生物に情をかける必要なんて、無いんだけど。
スキになっちゃったからなぁ、兄としても、男としても。
 ここで守れなくっちゃ、男が廃る。
 守れる力もないし。
 でも、一番の決め手は。

 

「にー…ちゃ…すきー…」
 ノアの寝言は、そりゃもう天使の勅命さ。

 

 …俺とノアを養ってくれるって、本当か?
「ちゃんとするよぉ…だから、だから、どこにもいくなよぉ!!」
 何だかこのネコミミ女から、こんなにも熱烈アプローチを受けたら、
どうにも傾いてしまう。悲しいかな男の性。
 …分かった、お願いするよ。
「にゃああっ♪」
 …だけど、イキそうです。
「にゃ、私も、イクぞっ、イク、あああっ…!!」
 ドクン、ドクンと、精巣の底から最後の一滴まで送り出す。
それと共にカナの膣はキツく締まり、一滴たりとも種子をこぼさまいと吸い付く。
「はうあ、ああああん…っ」
 全ての精液はカナに飲み込まれ、そしてぽつり、と呟く。
「赤ちゃん、できちゃいそ…♪」
 …非常に困る。
「もぉ、雰囲気だせないヤツだなぁ…デキないぞ、ヒトとケモノの間には…ふぅん」
 …非常に助かる。
「あたしは寝る…アンタも寝な…ああ、逃げようとしたら…わかってるな?」
 語尾がマジでした。

 

 

 …確かにいろいろと契約して、俺は奴隷となる。
仕事は、エッチ。
報酬は、日々の安全と、お小遣い少々。

 

 

 …唯一の契約違反は、隊員のメシを毎日俺が作るハメになるって、ことだ。それは後の話。

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