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━━ Take.1 純真なだけなんです ━━ 猫井テレビは犬国支社、特派取材部の某班に、 ネタ抜きで普段からござる言葉を使う奇怪な少女がいたそうな。 「ティルちゃん、そう言えばどうしてそんな変な言葉遣いするですか?」「え?」 書類にペンを走らせる手を止め、傍らを行くお茶汲みレディを呼び止めたのは、 就業中とは思えないカジュアルで露出の多い格好をしたナンパトリ野郎。 自分だって相当変な言葉遣いなのを差し置いての不用意な言い草であったが、 しかし装いがおよそ正社員らしからぬ不埒な格好をしてるのは、 背中の羽根のせいでまともな服が着れないからである。 無作法お許しあれ。「……ふふん、鳳也君、よくぞ聞いてくれたでござるな!」 対して、えっへんと胸を張るのはだぼだぼの作業服に身を包んだ女の子。 小耳な垂れ耳も愛らしい、小型種系の雑種イヌ、 猫井TV特派第四班アシスタント・ディレクター、テイルナート・プロキオンである。 「“心”の上に“刃”を乗せて、“ニンジャ”!!」「…それを言うなら“忍(しのぶ)”だろ?」 ビシッとかっこよく決めた少女に対し、しごく冷静なツッコミを入れるのは、 隣の机で分厚い資料を紐解いていたヘビの少年だ。「うっさいでござるなこのヘビ公! お前はちょっと黙ってろでござるよ!」「……。…自分が馬鹿だからって人に当り散らすなよな」「!! テ、テイルナート馬鹿じゃないもん!」「はいはいそこの二人、ケンカしないケンカしない」 うんざりした調子のネコの女性に、手馴れた手つきで引き剥がされる、 犬猿の仲ならく犬蛇の仲。 「と、とにかくティル君はニンジャが好きなんだね? そうなんだね?」「そうでござる! テイルナートニンジャ大好きでござる♪」 どうにか一座の主格らしきイヌの青年に上手い事話を逸らされなだめられて、 途端にごきげんになり大はしゃぎするイヌの少女。「ニンジャ、ニンジャ! ジャパニーズ・ニンジャ!!」「…………」 ぱたぱたと茶色の尻尾を振って喜ぶ姿は可愛らしいが、「……やっぱり馬鹿じゃないか……」「バカ、余計な事言わないの!」 多少頭が緩いのは否定できない。 ○○種と付かないイヌの国の最底辺、正真正銘の雑種イヌとはこのようなもの。 や ま し き 事 は 、 何 一 つ 。
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