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<h3>太陽と月と星がある 第21.5話</h3> <p style="line-height:140%;"><br /><br />  小雪のちらつく日、寒さの余りコタツに入ったまま動かなくなっても美形な人を眺めながらミカンを食べていると騒がしい物音と共にジャックさんがやって来ました。<br />  <br />  雪で頭が白くなっているのでタオルを渡そうとしたら、耳をプルプルされ水飛沫が飛びました。<br />  不快です。<br /> 「教育に悪いのでそういう行為は慎んでください」<br /> 「あーうんうん、ごめんごめん」<br />  全然悪く思ってなさそうです。<br />  仕方なく、垂れた耳をタオルで擦ると耳の毛が毛羽立ちました。<br />  ……全部毛羽立てたらどうなるのか興味が有ります。<br />  ゴシゴシしておきます。<br /> 「てゆーか、ジャック何しにきたのさ」<br />  サフがコタツから頭だけを出してそう言うと、チェルも真似して同じように頭だけ出しました。<br />  ちなみに2人とも尻尾がはみだしていますが、可愛いので黙っておくことにします。<br /> 「実はね!今日凄い事を知ったんだよ!なんでキヨちゃん教えてくれなかったんだいっセップンの日だよ!」<br />  実に晴れやかな顔をする顔傷黒ウサギ28歳。<br /> 「セップン?」<br />  興味が湧いたのか、のそのそとコタツから這い出してくるお子様2人。<br />  ……御主人様は、瞼を閉じたまま身動きひとつしません。<br /> 「セップンの日は凄いよー!何せセップンだからね!黒くて太くて長いものを××したり、おマメを歳の数だけ××たりするというスペシャルイベントなんだよ!」<br /> 「××って何」<br />  サフはモコモコの将来が楽しみなイヌ少年ですが、最近視力が落ちているのか目つきが悪いです。<br />  眼鏡の心配をした方がいいかもしれません。<br /> 「それ楽しいの?」<br />  濡れたコートを這い登り、首に手を回し背中に垂れ下がるチェル。<br /> 「そりゃー楽しいよ!ね!キヨちゃん!」 <br /> 「……それ以上曲解したら、ひいらぎで叩きますよ?もしくはいわしの頭でこう……くィっと」<br />  何故かサフの尻尾が内側に丸め込まれました。<br />  <br />  <br /> 「節分とは、無病息災を祈って豆を食べたり恵方巻きを食べる行事です」<br /> 「お前のやる行事は食べるばかりだな」<br />  御主人様がぼそりと呟くのは聞こえなかった事にします。<br />  一方、言いだしっぺのジャックさんはプール開き前のプールの水のような濁りきった眼で目の前のどんぶりを見つめています。<br />  緑色なのでピッタリの表現です。<br />  恵方巻きがいいかと思いましたが、お酢苦手みたいなので豆にしたわけですが。<br /> 「あの…歳の数だけ徹夜でおマメを食べちゃうぞ☆って……」<br /> 「歳の数だけ食べてください。品薄だったので、色々混ざってますけど」<br />  どんぶり山盛りのマメを見て、御主人様は眼を逸らしました。<br />  そら豆そっくりだけど倍以上の大きさのものや、縞模様の豆なんかが混ざってますが、なんら問題ありません。<br />  いや別に投げてもよかったんだけど。<br />  大変関係ないことですが、……御主人様のターバンの下には角があります。<br />  御主人様は別に豆料理が嫌いじゃないのでまったく無関係なんですが!<br /> 「女の子がビキニ姿でダーリンって呼んでくれる行事だよね?」<br /> 「無関係です」<br /> 「今から流行を作ろうよ。春に向けて予約受付中らしいよ?」<br />  何の。<br /> 「ねぇがっくんもしたいよね?マメプレイ」<br />  ぽりぽりと豆を食べながら御主人様を見つめると、御主人様も何も言わずに豆を食べ始めました。<br />  中々、結構な勢いで食べています。<br />  一体いくつ食べる気なんでしょうか。<br />  ていうか、御主人様いくつなんだろう……精々、三十四十ぐらいだと思うんですけど……。<br /> 「サフわん、マメプレイやりたいよね?」<br /> 「ちー食べ過ぎて鼻血出すよ。この前もピーナッツ食べて」<br /> 「うるさいバカフサー!」<br />  チューチューワンワンと大変賑やかです。<br />  可愛いなぁ。<br /> 「キヨカ」<br /> 「なんででしょうか」<br />  なんでしょう。御主人様が真面目な顔です。……美形です。<br /> 「ちゃんと間違いなく歳の数食べるんだぞ」<br /> 「はぁ」<br />  ……御主人様は、じっと私の顔を睨んだあと、再び豆を食べ始めました。<br />  なんなんでしょうか。<br /> 「ねぇキヨちゃん」<br /> 「なんですか?」<br />  今度はジャックさんです。<br /> 「今夜オレとマメプレッ」<br />  最後まで言う前に、座った眼のサフが落花生(殻つき)をジャックさんに投げつけ始め、それに眼を輝かせたチェルが加わりました。<br />  飛び交う落花生。<br />  こぼれる色とりどりのマメ。<br />  ぶつからない様に身を屈めてマメを食べる私と御主人様。<br />  ふと目が合い、どちらともなく笑いがこみ上げてきました。<br /><br />  こんな日がずっと続けばいいのに。</p>

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